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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】環境にやさしい靴素材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 1/14 20060101AFI20240722BHJP
   B29D 35/02 20100101ALI20240722BHJP
   C08J 9/33 20060101ALI20240722BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20240722BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
A43B1/14
B29D35/02
C08J9/33 CER
C08J9/33 CEZ
B29C43/34
C08J9/04 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022579060
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 CN2020111074
(87)【国際公開番号】W WO2022040913
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】512288097
【氏名又は名称】馳▲緑▼國際股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】許智仁
(72)【発明者】
【氏名】許佳鳴
(72)【発明者】
【氏名】▲コウ▼承恩
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1310081(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1220853(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/14
B29D 35/02
C08J 9/33
B29C 43/34
C08J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境にやさしい靴素材の製造方法であって、
第一混合物を提供するようにスクラップ、触媒、及び熱硬化性ポリウレタンエラストマーを混合するステップと、
靴素材混合物を提供するように水と前記第一混合物とを混合し、前記触媒、前記水、及び前記熱硬化性ポリウレタンエラストマーを混合して発泡材料を製造するステップであって、前記発泡材料において、前記触媒の含有量は15~20重量%の間の範囲であり、前記水の含有量は10~20重量%の間の範囲であり、前記熱硬化性ポリウレタンエラストマーの含有量は60~70重量%の間の範囲であり、前記スクラップはペットボトルを圧砕することで形成されたペットボトルスクラップを含み、前記靴素材混合物における前記スクラップの含有量は30~60重量%の間の範囲であるステップと、
前記靴素材混合物を金型に入れ、前記金型を室温で、又は最高150℃の温度まで加熱して圧縮成形し、前記環境にやさしい靴素材を製造するステップと、
前記環境にやさしい靴素材を前記金型から脱型するステップと、を含むことを特徴とする環境にやさしい靴素材の製造方法。
【請求項2】
前記スクラップは、紙屑、木屑、植物残渣、コーヒー粕、廃棄された発泡プラスチックの破片、またはそれらの組み合わせを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の環境にやさしい靴素材の製造方法。
【請求項3】
前記発泡材料において、前記触媒、前記水、及び前記熱硬化性ポリウレタンエラストマーの比率は20:20:60または15:10:75であることを特徴とする請求項に記載の環境にやさしい靴素材の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性ポリウレタンフィルムを前記金型に入れるステップと、
前記熱可塑性ポリウレタンフィルムに前記靴素材混合物を被覆させ、圧縮成形を行って前記環境にやさしい靴素材を製造するステップと、を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の環境にやさしい靴素材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に関し、特には、環境にやさしい靴素材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の進歩と環境保護意識の高まりにより、市場では製品を製造するための材料としてリサイクルした資源またはリサイクルした廃棄物を利用するメーカーが増え続けている。
しかしながら、例えば、運動靴、サンダル、スリッパ、カジュアルシューズ等の現在市場に出回っている従来の靴の多くは、その靴底は単一の材料を採用して製造しており、例えば、耐摩耗性及び弾性が高いゴムで製造している。
このため、リサイクルした廃棄物を靴の靴底に如何に応用して靴底のうちの一種の材料を製造するかが、現在解決が待たれる課題であった。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、必要な機能を維持しつつ、環境保護を兼ね備えた環境にやさしい靴素材とその製造方法を提供することである。
【0004】
本発明の一実施例に係る環境にやさしい靴素材の製造方法は、靴素材混合物を提供するようにスクラップと発泡材料とを混合し、前記スクラップはペットボトルを圧砕することで形成されたペットボトルスクラップを含むステップと、前記靴素材混合物を金型に入れ、圧縮成形し、前記環境にやさしい靴素材を製造するステップと、前記環境にやさしい靴素材を前記金型から脱型するステップと、を含む。
【0005】
他の実施形態では、上述の製造方法は、前記金型に対し加熱するステップを更に含む。
【0006】
他の実施形態では、上述のスクラップは、紙屑、木屑、植物残渣、コーヒー粕、廃棄された発泡プラスチックの破片、またはそれらの組み合わせを更に含む。
【0007】
他の実施形態では、前記靴素材混合物を提供するように前記スクラップと前記発泡材料とを混合する前記ステップは、第一混合物を提供するように前記スクラップ、触媒、及び熱硬化性ポリウレタンエラストマーを混合するステップと、前記靴素材混合物を提供するように水と前記第一混合物とを混合し、前記触媒、前記水、及び前記熱硬化性ポリウレタンエラストマーを混合して前記発泡材料を製造するステップと、を含む。
【0008】
他の実施形態では、上述の発泡材料において、前記触媒の含有量は15~20重量%の間の範囲であり、前記水の含有量は10~20重量%の間の範囲であり、前記熱硬化性ポリウレタンエラストマーの含有量は60~70重量%の間の範囲である。または、前記触媒、前記水、及び前記熱硬化性ポリウレタンエラストマーの比率は20:20:60または15:10:75である。
【0009】
他の実施形態では、前記発泡材料は液体ゴムである。
【0010】
他の実施形態では、上述の製造方法は、熱可塑性ポリウレタンフィルムを前記金型に入れるステップと、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムに前記靴素材混合物を被覆させ、圧縮成形を行って前記環境にやさしい靴素材を製造するステップと、を更に含む。
【0011】
本発明の一実施例に係る環境にやさしい靴素材を更に提供する。前記環境にやさしい靴素材は靴の部材を製造するのに適し、前記環境にやさしい靴素材はスクラップ及び弾性材料を含み、前記スクラップはペットボトルを圧砕することで形成されたペットボトルスクラップを含む。
【0012】
他の実施形態では、前記環境にやさしい靴素材は紙屑を更に含む。
【0013】
他の実施形態では、前記弾性材料はゴムまたは熱硬化性ポリウレタンエラストマーを含む。
【0014】
本発明の他の実施形態では、前記スクラップの含有量は30~60重量%の間の範囲である。
【0015】
本発明の他の実施形態では、前記ペットボトルスクラップのサイズは2~8 mmの間の範囲である。
【0016】
本発明の他の実施形態では、環境にやさしい靴素材は前記環境にやさしい靴素材の表面とする熱可塑性ポリウレタン弾性層を更に含む。
【0017】
このように、本発明に係る環境にやさしい靴素材は、必要な機能性を維持するのみならず、環境保護も兼ね備えている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例に係る環境にやさしい靴素材の製造方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施例に係る環境にやさしい靴素材の製造方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施例に係る環境にやさしい靴素材の製造方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施例に係る環境にやさしい靴素材の製造方法を示すフローチャートである。
図5A】本発明の一実施例に係る靴素材がソールに適用されるの平面図である。
図5B図5Aの5B-5B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の技術方法について説明する。以降に説明する実施例は本発明の一部分の実施例であり、全部の実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、本技術分野の通常の技術者が創造性を働かせない前提で獲得した全ての他の実施例は、全て本発明の保護範囲に含まれる。
【0020】
以下、詳細な説明において、本発明の徹底的な理解を促すため、多くの具体的な仔細について説明する。
但し、本技術分野の通常の技術者ならば、これらの具体的な仔細がなくとも本発明を実施できる。他の状況では、本発明が不明瞭になるのを避けるため、周知の方法、過程及び/または部材については詳細に説明しない。
【0021】
以下では、例示した図面を参照しながら本発明の実施例についいて説明する。
本発明を理解させるために添付した図面は正しい比率に基づいて表示していない。
【0022】
本発明に係る環境にやさしい靴素材の製造方法は靴の部材の製造に応用可能である。
例えば、本発明に係る環境にやさしい靴素材の製造方法は、靴の靴底の製造に応用可能である。
本発明の精神を明確に説明するため、以下、製造方法を靴の靴底の製造に応用する例について説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施例に係る環境にやさしい靴素材の製造方法を示すフローチャートである。
この製造方法において、まず、ステップS10では、靴素材混合物を提供するようにスクラップと発泡材料とを混合する。
本実施形態または他の実施形態では、ここで言うスクラップとは、例えば、環境にやさしいリサイクル材料で製造されたスクラップであり、例えば、プラスチックのスクラップ、紙屑、木屑、植物残渣、コーヒー粕、他の環境にやさしいリサイクル材料のスクラップ、またはそれらの任意の組み合わせである。
プラスチックのスクラップは、例えば、ペットボトル、ボトルキャップ、または前述の両者を圧砕したもの、或いは廃棄された発泡プラスチック(例えば、エチレン酢酸ビニル(Ethylene-Vinyl Acetate Copolymer,EVA))を圧砕したものである。
プラスチックのスクラップのサイズは、例えば、2~8mmの間の範囲のような肉眼で見える大きさであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
発泡材料は、例えば、液体ゴムである。
スクラップの含有量は、例えば、30~60重量%の間の範囲であり、発泡材料の含有量は、例えば、70~40重量%の間の範囲である。
添加した発泡材料とスクラップとを混合し、スクラップを粘着させると共に発泡材料中に均一または不均一に分散させる。
【0024】
続いて、ステップS12において、上述の靴素材混合物を金型に入れ、圧縮成形を行い、靴素材を製造する。
さらに、金型を室温(即ち、加熱しない状況)で圧縮成形する。
最後に、ステップS14において、靴素材を金型から脱型する。
【0025】
上述の製造方法により製造された靴底(図5A図5B参照)は、弾性材料10及びスクラップ20を含む。
弾性材料10は上述のステップS10において、発泡材料として添加する液体ゴムを硬化して形成したゴムである。
スクラップはステップS10において添加するスクラップである。
図から分かるように、ステップS10では、スクラップを発泡材料に分散して発泡材料を硬化した後、形成された弾性材料10によりスクラップ20を被覆し、且つスクラップ20を靴底に均一または不均一に分布する。
靴底に分布したスクラップ20は肉眼で見える。
【0026】
他の実施形態では、上述の製造方法は、金型に対し更に加熱する(図2のステップS11参照)。
例えば、金型を50~60度に加熱する。
これにより、靴素材の成形効率を加速させ、製品の安定性を強化する。
図2のステップS11はステップS10の後に実行するが、本発明はこれに限定されるものではない。
他の実施形態では、ステップS11をステップS10の前に実行しても、ステップS12と同時に実行してもよい。
【0027】
上述の実施例は液体ゴムを発泡材料とする例について説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
上述の発泡材料は他の材料に代替可能である。
一例を挙げると、図3に示す如く、まず、ステップS20において、靴素材混合物を提供するようにスクラップと発泡材料とを混合する。詳しくは、ステップS20には、以下のステップが含まれる。
【0028】
ステップS201において、第一混合物を提供するようにスクラップ、触媒、及び熱硬化性ポリウレタンエラストマー(Thermeset Polyurethane Elastomer,TSU)を混合する。
スクラップは、例えば、環境にやさしいリサイクル材料で製造されたスクラップであり、例えば、プラスチックのスクラップ、紙屑、他の環境にやさしいリサイクル材料のスクラップ、またはそれらの任意の組み合わせである。
プラスチックのスクラップは、例えば、ペットボトル、ボトルキャップ、または前述の両者を圧砕したものである。
プラスチックのスクラップのサイズは、例えば、2~8mmの間の範囲のような肉眼で見える大きさであるが、本発明はこれに限定されるものではない。触媒は、例えば、トリエチレンジアミン(Triethylenediamine)である。
【0029】
続いて、ステップS202において、靴素材混合物を提供するように水と第一混合物とを混合する。
上述の発泡材料を製造するように触媒、水、及び熱硬化性ポリウレタンエラストマーを混合する。
発泡材料において、触媒の含有量は、例えば、15~20重量%の間の範囲であり、水の含有量は、例えば、10~20重量%の間の範囲であり、熱硬化性ポリウレタンエラストマーの含有量は、例えば、60~70重量%の間の範囲である。
具体的には、触媒、水、及び熱硬化性ポリウレタンエラストマーの比率(含有量)は、例えば、20:20:60または15:10:75(重量%)である。
スクラップの含有量は、例えば、30~60重量%の間の範囲であり、発泡材料の含有量は、例えば、70~40重量%の間の範囲である。
添加する発泡材料とスクラップとを混合し、スクラップを粘着させると共に発泡材料に均一または不均一に分散させる。
【0030】
靴素材混合物を形成した後、ステップS22において、上述の靴素材混合物を金型に入れ、且つ圧縮成形を行って靴素材を製造する。
さらに、金型を室温(即ち、加熱しない状況)で圧縮成形を行う。最後に、ステップS24において、靴素材を金型から脱型する。
【0031】
他の実施形態では、上述の製造方法は、金型に対し更に加熱する(図4のステップS21参照)。
例えば、金型を約80度以上の温度まで加熱し、最高150度の温度まで加熱する。金型を100度まで加熱する例では、圧縮成形に1.5時間を要する。金型を150度に加熱する例では、圧縮成形に1時間を要する。
これにより、靴素材の成形効率を加速させ、製品の安定性を強化する。図4では、ステップS21はステップS20の後に実行しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
他の実施形態では、ステップS21をステップS20の前に実行しても、ステップS22と同時に実行してもよい。
【0032】
本発明の他の実施形態では、上述のステップS12(またはS22)は、以下のステップを含む。まず、熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethane,TPU)フィルムを金型に入れる。
続いて、上述の靴素材混合物を金型の熱可塑性ポリウレタンフィルムに添加し、且つ熱可塑性ポリウレタンフィルムにより靴素材混合物全体を被覆する。
最後に、圧縮成形を行い、靴素材を製造する。
これにより、靴素材製品の表面に熱可塑性ポリウレタン層を有し、図5Bに示す熱可塑性ポリウレタン層30である。
よって、成型された靴素材が更に脱型し易くなり、靴素材製品の耐摩耗性及び屈曲性が更に強化されている。
【0033】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
10 弾性材料
20 スクラップ
30 熱可塑性ポリウレタン層
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B