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特許7524370セルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】セルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/48 20060101AFI20240722BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20240722BHJP
   H01M 50/126 20210101ALI20240722BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240722BHJP
【FI】
B29C65/48
B29C65/02
H01M50/126
H01M50/105
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023009313
(22)【出願日】2023-01-25
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】517220885
【氏名又は名称】ユルチョン ケミカル カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ソン ノク ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ヒ シク
(72)【発明者】
【氏名】キム ジン ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ ジ ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク ハン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジョン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】チェ ヒョン ロク
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-026152(JP,A)
【文献】特開2010-015695(JP,A)
【文献】中国実用新案第209593800(CN,U)
【文献】特開2017-204362(JP,A)
【文献】特開平08-300549(JP,A)
【文献】特開平04-201237(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111438929(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/48
B29C 65/02
H01M 50/126
H01M 50/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱加圧ラミネートステップの前に、ベースシートの一側面に接着剤を塗布する接着層形成ステップと、
前記接着層を硬化させる接着層乾燥ステップと、
前記硬化させた接着層の一側面に素材シートを熱加圧してラミネートする熱加圧ラミネートステップと、
前記ラミネートされたものを無圧力状態で熱処理する無圧力熱処理ステップと、
無圧力熱処理ステップの後に、前記熱処理されたラミネート物を冷却するラミネート物冷却ステップと、を含み、
前記無圧力熱処理ステップは、
少なくとも1つの誘導加熱ロールを用いて、ラミネート物の移送速度に対応する熱エネルギーを該ラミネート物に供給することを特徴とする、セルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記無圧力熱処理ステップは、
前記ラミネート物の移送速度に対応して誘導加熱ロールの個数を調節することを特徴とする、請求項1に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記無圧力熱処理ステップは、
前記誘導加熱ロールとラミネート物との接触面積を調節して、該ラミネート物に供給する熱エネルギーを調節することを特徴とする、請求項1に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記無圧力熱処理ステップは、
前記ラミネート物に供給するエネルギーを熱処理目標温度まで漸次上昇させる温度上昇過程と、
前記ラミネート物の温度が熱処理目標温度まで上昇すると、前記ラミネート物に供給する熱エネルギーを熱処理目標温度から漸次下降させる温度下降過程と、を含む、請求項1に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記無圧力熱処理ステップは、
複数の誘導加熱ロールを用いて、前記ラミネート物に熱エネルギーを供給し、
前記温度上昇過程に配置された誘導加熱ロールの温度は漸次上昇するように制御し、
前記温度下降過程に配置された誘導加熱ロールの温度は漸次下降するように制御することを特徴とする、請求項4に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記無圧力熱処理ステップは、
前記誘導加熱ロールの位置を調節して、前記ラミネート物と誘導加熱ロールとの接触面積及びラミネート物の移送経路のうちの少なくとも一つを調節することを特徴とする、請求項5に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。
【請求項7】
ベースシートと素材シートとを熱加圧方式で接着してラミネートする少なくとも一対のサーマルロール(Thermal roll)を有するラミネートモジュールと、
前記ラミネートモジュールで接着されたラミネート物が流入すると、流入したラミネート物と無圧力方式で面接触して当該ラミネート物を熱処理する少なくとも1つの誘導加熱ロールを有する無圧力熱処理モジュールと、
前記誘導加熱ロールのオン/オフ動作及び温度を制御する発熱制御部と、を含み、
前記無圧力熱処理モジュールは、
前記ラミネート物の移送速度、前記無圧力熱処理モジュールの内部に構成された誘導加熱ロールの個数及び配置、前記ラミネート物との接触面積のうちの少なくとも一つに基づいて、当該誘導加熱ロールのオン/オフ動作及び温度を制御する前記発熱制御部を含むことを特徴とする、セルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造装置。
【請求項8】
前記無圧力熱処理モジュールは、
複数の誘導加熱ロールがラミネート物と面接触するように配置され、
前記発熱制御部は、
複数の誘導加熱ロールを少なくとも2つの区域に区分し、各区域別に当該誘導加熱ロールの温度を制御することを特徴とする、請求項に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造装置。
【請求項9】
前記発熱制御部は、
前記ラミネート物が流入する流入側に隣接する少なくとも一部の誘導加熱ロールは流入側から順次温度が上昇するように制御し、
前記ラミネート物が排出される排出側に隣接する少なくとも他の一部の誘導加熱ロールは排出側に向かって順次温度が下降するように制御することを特徴とする、請求項に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造装置。
【請求項10】
前記無圧力熱処理モジュールは、
位置が一定に固定されるように構成された少なくとも1つの固定式誘導加熱ロールと、
往復移動可能に構成された少なくとも1つの移動式誘導加熱ロールと、を含み、
前記発熱制御部は、
前記移動式誘導加熱ロールの位置を制御して、
前記ラミネート物と面接触する誘導加熱ロールの個数及び前記ラミネート物の移送距離のうちの少なくとも一つを調節することを特徴とする、請求項に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法及び装置に関し、より詳細には、パウチ状のバッテリーセルの製造に使用するパウチ用フィルムの製造技術に関する。
【0002】
特に、本発明は、パウチ用フィルムをドライラミネーション工程で製造する上で、発熱制御が可能な誘導加熱ロールを用いて、サーマルロールを用いたラミネーションの後に熱処理工程を行うことにより、製造されたパウチの熟成期間を短縮するか、或いはラミネートされたフィルムの物理的特性を無熟成工程で向上させることができるSDL(Solvent Dry Lamination)設備におけるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法及び装置に関する。
【0003】
[本発明を支援する国家研究機関開発事業]
[課題固有番号]0020013574
[課題番号]20013574
[部処名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名]韓国産業技術評価管理院
[研究事業名]素材部品技術開発-パッケージ型
[研究課題名]非公開
[寄与率]1/1
[課題遂行機関名]ユルチョン化学株式会社
[研究期間]2020.08.01 - 2022.07.31
【背景技術】
【0004】
最近、環境汚染などの問題により化石燃料の使用を減らすために努力しており、特に、自動車の場合には、石油を精製した化石燃料を使用せず、環境にやさしい電気エネルギーを利用する電気自動車が開発されており、この他にも様々な分野で電気を利用した製品が開発されている。
【0005】
このように電気を利用した製品は、充放電が可能な二次電池を備えており、特に、電気自動車などに適用される大容量の二次電池は、外装材の種類によってパウチ型、円筒型、角型などに分類することができる。
【0006】
これらの二次電池のうち、パウチ型バッテリーは、電極組立体が金属ラミネートシートのパウチケースに内蔵されている形態であって、製造が容易であり、製造コストが低く、特に複数の単位セルを直列又は並列に連結して大容量のバッテリーパックを製造しやすいという利点があるため、主に電気自動車のように大容量の二次電池が必要な分野で活用されている。
【0007】
このようにパウチ状のバッテリーセルに用いられるパウチ用フィルムを製造するSDL(Solvent Dry Lamination)設備は、加熱ロール(サーマルロール)を用いて、熱加圧方式で互いに異なる材質のシートをラミネート(Laminating)して当該フィルムを製造する。
【0008】
このような方式の技術のうちの一つで、下記の先行技術文献である韓国登録特許公報第10-2142600号の「バッテリーセルパウチフィルム及びその製造方法」(以下、「先行技術」という)は、相対的に低い温度のドライロールを用いてドライラミネートし、その後、相対的に高い温度のサーマルロールを用いてサーマルラミネートした後、冷却過程を経て、互いに異なるシートを1枚のフィルムに製造する。
【0009】
しかし、先行技術のようにサーマルロールを用いたラミネート方式は、加熱ロールが対象シートと先接触して熱を伝達するので、所望の熱接着強度物性を得るためには、非常に高い温度を加えなければならず、加熱ロールから発生する熱エネルギーを対象シートに十分に供給するためには、ラミネーション工程を行う過程で設備運行速度を著しく低げなければならず、これは、生産性を低下させる要因になれる。
【0010】
一方、パウチ用フィルムの各層をなすシートは、その材質によって熱膨張係数が変わるが、低温による一次ラミネートの際には、各シートの熱膨張係数が異なっても、ラミネートするのに大きな困難はない。
【0011】
これをより詳しく考察すると、先行技術の場合、ドライロールに流入する各シートは、まだ接着される前であるので、ドライロールに流入する過程でシートの流入速度が自然に調節でき、これにより、一次ラミネートでは、互いに異なる2枚のシートが円滑にラミネートできる。
【0012】
しかし、低温によって一次にライネートされたシートを再び高温でラミネートする場合、一度ラミネートされたものに再び熱を加えて圧着するので、サーマルロールを用いて圧着する過程で熱膨張係数の高いシートが押し付けられる現象が発生するおそれがあり、これによりラミネートされたフィルムにシワやめくり、浮き上がり、変形、反り現象などが発生するという問題点がある。
【0013】
その結果、先行技術のような従来のパウチ用フィルムの製造方法は、十分な熱エネルギーの供給のためにシートの移送速度を遅らせなければならないので、生産性が低下するだけでなく、二次にわたるラミネートにより不良率が増加するという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる問題点を解決するために、その目的は、大容量のパウチ型バッテリーセルのパウチ用フィルムをドライラミネーション工程で製造する上で、発熱制御が可能な誘導加熱ロールを用いて、一回のラミネーション工程によって、所望の物理的特性を満足するパウチ用フィルムを製造することができるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法及び装置を提供することにある。
【0015】
特に、本発明の目的は、誘導加熱ロールを用いたラミネーション工程の後に、無圧力方式の未加圧熱処理工程を行うことにより、製造されたパウチの熟成期間を大幅に短縮することができ、場合によっては、無熟性工程で、ラミネートされたフィルムの物理特性を向上させることができるSDL(Solvent Dry Lamination)設備におけるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法及び装置を提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、熟成期間短縮のための熱処理工程において、発熱量を制御することが可能な誘導加熱ロールを用いて、熱処理されるシートの温度を漸進的に変化させるステップ熱処理方式を適用することにより、急激な温度変化によるフィルムの損傷、シワ発生、フィルムが要求する物性の顕著な低下などを予め防止することができるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明によるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法は、ベースシートの一側面に素材シートを熱加圧してラミネートする熱加圧ラミネートステップと、前記ラミネートされたものを無圧力状態で熱処理する無圧力熱処理ステップと、を含む。
【0018】
また、前記熱加圧ラミネートステップの前に、前記ベースシートの一側面に接着剤を塗布する接着層形成ステップと、前記接着層を硬化させる接着層乾燥ステップと、をさらに含み、前記熱加圧ラミネートステップは、前記素材シートを硬化した接着層に積層して熱加圧ラミネートし、前記無圧力熱処理ステップの後に、前記熱処理されたラミネート物を冷却するラミネート物冷却ステップと、をさらに含むことができる。
【0019】
また、前記無圧力熱処理ステップは、少なくとも1つの誘導加熱ロールを用いて、前記ラミネート物の移送速度に対応する熱エネルギーを当該ラミネート物に供給することができる。
【0020】
また、前記無圧力熱処理ステップは、前記ラミネート物の移送速度に対応して誘導加熱ロールの個数を調節することができる。
【0021】
また、前記無圧力熱処理ステップは、前記誘導加熱ロールとラミネート物との接触面積を調節して、当該ラミネート物に供給する熱エネルギーを調節することができる。
【0022】
また、前記無圧力熱処理ステップは、前記ラミネート物に供給するエネルギーを熱処理目標温度まで漸次上昇させる温度上昇過程と、前記ラミネート物の温度が熱処理目標温度まで上昇すると、前記ラミネート物に供給する熱エネルギーを熱処理目標温度から漸次下降させる温度下降過程と、を含むことができる。
【0023】
また、前記無圧力熱処理ステップは、複数の誘導加熱ロールを用いて、前記ラミネート物に熱エネルギーを供給し、前記温度上昇過程に配置された誘導加熱ロールの温度は漸次上昇するように制御し、前記温度下降過程に配置された誘導加熱ロールの温度は漸次下降するように制御することができる。
【0024】
また、前記無圧力熱処理ステップは、前記誘導加熱ロールの位置を調節して、前記ラミネート物と誘導加熱ロールとの接触面積及びラミネート物の移送経路のうちの少なくとも一つを調節することができる。
【0025】
また、本発明によるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造装置は、ベースシートと素材シートとを熱加圧方式で接着してラミネートする少なくとも一対のサーマルロール(Thermal roll)を有するラミネートモジュールと、前記ラミネートモジュールで接着されたラミネート物が流入すると、流入したラミネート物と無圧力方式で面接触して当該ラミネート物を熱処理する少なくとも1つの誘導加熱ロールを有する無圧力熱処理モジュールと、を含む。
【0026】
また、前記無圧力熱処理モジュールは、前記ラミネート物の移送速度、前記無圧力熱処理モジュールの内部に構成された誘導加熱ロールの個数及び配置、前記ラミネート物との接触面積のうちの少なくとも一つに基づいて、当該誘導加熱ロールのオン/オフ動作及び温度を制御する発熱制御部をさらに含むことができる。
【0027】
また、前記無圧力熱処理モジュールは、複数の誘導加熱ロールがラミネート物と面接触するように配置され、前記発熱制御部は、複数の誘導加熱ロールを少なくとも2つの区域に区分し、各区域別に当該誘導加熱ロールの温度を制御することができる。
【0028】
また、前記発熱制御部は、前記ラミネート物が流入する流入側に隣接する少なくとも一部の誘導加熱ロールは流入側から順次温度が上昇するように制御し、前記ラミネート物が排出される排出側に隣接する少なくとも他の一部の誘導加熱ロールは排出側に向かって順次温度が下降するように制御することができる。
【0029】
また、前記無圧力熱処理モジュールは、位置が一定に固定されるように構成された少なくとも1つの固定式誘導加熱ロールと、往復移動可能に構成された少なくとも1つの移動式誘導加熱ロールと、を含み、前記発熱制御部は、前記移動式誘導加熱ロールの位置を制御して、前記ラミネート物と面接触する誘導加熱ロールの個数及び前記ラミネート物の移送距離のうちの少なくとも一つを調節することができる。
【発明の効果】
【0030】
上述した解決手段によって、本発明は、大容量のパウチ型バッテリーセルのパウチ用フィルムをドライラミネーション工程で製造する上で、発熱制御が可能な誘導加熱ロールを用いて、一回のラミネーション工程によって、所望の物理的特性を満足するパウチ用フィルムを製造することができるという利点がある。
【0031】
特に、本発明は、SDL(Solvent Dry Lamination)設備において誘導加熱ロールを用いたラミネーション工程の後に、無圧力方式の未加圧熱処理工程を行うことにより、製造されたパウチの熟成期間を大幅に短縮することができ、場合によっては、ラミネートされたフィルムの物理的特性を無熟成工程で向上させることができるという利点がある。
【0032】
また、本発明は、熟成期間短縮のための熱処理工程において、発熱量を制御することが可能な誘導加熱ロールを用いて熱処理されるシートの温度を漸次変化させるステップ熱処理方式を適用することにより、急激な温度変化に伴うフィルムの損傷、シワ発生、フィルムが要求する物性の顕著な低下などを予め防止することができるという効果がある。
【0033】
上述したように、本発明は、熟成工程を大幅に減縮するか或いは適用しないようにすることができるので、パウチ用フィルムの生産性を大きく向上させることができ、製品の製造コストも大幅に下げることができるので、製品の価格競争力を大きく向上させることができるという利点がある。
【0034】
また、本発明は、熱処理をしようとするラミネート物の移送速度に応じて熱エネルギーの供給量を調節することにより、パウチ用フィルムの製造に対する最適な環境を提供することができるという利点がある。
【0035】
また、本発明は、熱エネルギーの供給量を調節する上で、誘導加熱ロールの個数調節、誘導加熱ロールとラミネート物との接触面積の調節、熱処理工程におけるラミネート物の移送距離の調節などの多様な方式を提供することにより、多様な方式のSDLに容易に適用して活用することができるという利点がある。
【0036】
したがって、大容量の二次電池分野、特にパウチ型バッテリーセル分野及びパウチ用フィルム製造分野だけでなく、これに類似又は連関した分野において信頼性及び競争力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明によるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図2図1のステップ「S400」の具体的な一実施形態を示すフローチャートである。
図3図2を説明するための実施形態を示す図である。
図4図2を説明するための実施形態を示す図である。
図5図1のステップ「S400」の他の具体的な一実施形態を示すフローチャートである。
図6図5を説明するための実施形態を示す図である。
図7】本発明によるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルム製造装置の一実施形態を示すブロック図である。
図8図7に示した無圧力熱処理モジュールの実施形態を説明する図である。
図9図7に示した無圧力熱処理モジュールの実施形態を説明する図である。
図10図1によって製作されたラミネートフィルムと一般的なラミネートフィルムとの物理的特性を比較する表である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明によるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法及び装置に対する例は、様々に適用することができ、以下では、添付図面を参照して最も好適な実施形態について説明する。
【0039】
図1は、本発明によるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【0040】
図1を参照すると、セルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法は、接着層形成ステップ(S100)、接着層乾燥ステップ(S200)、熱加圧ラミネートステップ(S300)、無圧力熱処理ステップ(S400)、及びラミネート物冷却ステップ(S500)を含むことができる。
【0041】
接着層形成ステップ(S100)は、ベースシートの一側面に接着剤を塗布する過程であって、ロール状のベースシートが供給されると、当該ベースシートの一側面に液状の接着剤を噴射して接着層を形成することができる。ここで、ベースシートは、パウチ型バッテリーセルのパウチを構成する金属シートを含むことができ、当該金属シートは、アルミニウム材質で形成できる。
【0042】
接着層乾燥ステップ(S200)は、ベースシートに塗布された接着層を硬化させる過程であって、熱乾燥又は熱風乾燥方式などで行われることができる。このとき、接着層は、当業者の要求に応じてゲル状に半乾燥させるか、或いは完全乾燥させて硬化させることができる。
【0043】
熱加圧ラミネートステップ(S300)は、ベースシートの一側面、好ましくはゲル化又は硬化した接着層に素材シートを熱加圧してラミネート(Laminating)する過程であって、ロール状の素材シートが接着層の形成された面に密着するように供給できる。ここで、素材シートは、パウチ型バッテリーセルのパウチを構成するCPP(Casting Poly Propylene)又はナイロンなどを含むことができる。
【0044】
このような熱加圧ラミネートステップ(S300)は、一定の熱が放出されるサーマルロールを用いてベースシートと素材シートの両側を加圧しながらラミネートする。
【0045】
無圧力熱処理ステップ(S400)は、ラミネートされた物を無圧力状態で熱処理する過程であって、一定時間の間、一定の量の熱エネルギーを供給することができる。
【0046】
このような無圧力熱処理ステップ(S400)については、より具体的に後述する。
【0047】
最後に、ラミネート物冷却ステップ(S500)は、熱処理されたラミネート物を冷却する過程であって、冷却ロールを用いて、移送されるラミネート物を冷却させることができる。
【0048】
図2は、図1のステップ「S400」の具体的な一実施形態を示すフローチャートであり、図3及び図4は、図2を説明するための実施形態を示す図である。
【0049】
図2を参照すると、無圧力熱処理ステップ(S400)は、少なくとも1つの誘導加熱ロールを用いて、ラミネート物の移送速度に対応する熱エネルギーを当該ラミネート物に供給することができる。
【0050】
これを具体的に参照すると、まず、移送されるラミネート物の移送速度を確認した後(S401)、当該移送速度に応じてラミネート物に供給する熱量(熱エネルギー)を確認することができる(S402)。例えば、ラミネート物の移送速度は、ラミネートを行うサーマルロール、ラミネート物の移送方向を案内するガイドロール、又は誘導加熱ロールの回転速度を測定して確認することができる。
【0051】
確認の結果、ラミネート物に供給される熱エネルギーを調節する必要がある場合(S403)、供給する熱エネルギーの調節方法を確認することができる(S404)。
【0052】
一例として、熱量を直接調節する場合、誘導加熱ロールに供給される電流を制御して、ラミネート物に供給される熱エネルギーを調節することができる(S405)。
【0053】
他の例として、誘導加熱ロールの個数を調節する場合(S404)、図3の(a)~(c)に示すように、熱処理に用いられる誘導加熱ロール610の個数を2個~6個等に加減して構成することにより、当該ラミネート物に供給する熱エネルギーを調節することができる(S406)。
【0054】
別の例として、誘導加熱ロール610とラミネート物との接触面積を調節する場合(S404)、図4の(a)及び(b)に示すように、固定式誘導加熱ロール611の位置が固定された状態で移動式誘導加熱ロール612の位置を変更して、誘導加熱ロールとラミネート物とが接する面積の大きさを調節することにより、当該ラミネート物に供給する熱エネルギーを調節することができる(S407)。
【0055】
具体的に、図4の(a)は、移動式誘導加熱ロール612の移動によって接触面積が減少した場合であり、図4の(b)は、移動式誘導加熱ロール612の移動によって接触面積が増加した場合であり、各場合別に移動式誘導加熱ロール612が反対方向に移動すると、接触面積の増減も逆になるのは当たり前である。
【0056】
もし、ラミネート物に供給される熱エネルギーを調節する必要がない場合(S403)、過程「405」~「407」のうちのいずれか一つによって調節された状態を維持することができる(S408)。
【0057】
図5は、図1のステップ「S400」の具体的な他の一実施形態を示すフローチャートであり、図6の(a)、(b)は、図5を説明するための実施形態を示す図である。
【0058】
図5を参照すると、無圧力熱処理ステップ(S400)は、温度上昇過程(S410)及び温度下降過程(S420)を含むことができる。
【0059】
前述したように、ベースシートと素材シートとをラミネートする過程で、ラミネート物に供給する熱エネルギーの量が急激に変化する場合、当該ラミネート物に変形等が発生して不良率が増加する要因になれる。
【0060】
そこで、本発明の無圧力熱処理ステップ(S400)では、ラミネート物に供給する熱エネルギーを熱処理目標温度まで漸次上昇させる温度上昇過程(S410)と、熱処理目標温度まで上昇した温度を漸次下降させる温度下降過程(S420)と、を含むことができる。
【0061】
例えば、図6の(a)に示すように、熱処理過程で4つの誘導加熱ロール610a~610dが構成された場合、第2及び第3の誘導加熱ロール610b、610cは、熱処理目標温度(例えば、200℃)まで上昇させ、第1の誘導加熱ロール610aは、ラミネート過程での温度(例えば、100℃)と熱処理目標温度との中間温度(例えば、150℃)に設定し、第4の誘導加熱ロール610dは、熱処理目標温度と冷却工程での冷却ロール温度(例えば、0℃)との中間温度(例えば、100℃)に設定することができる。
【0062】
同様の方法で、図6の(b)に示すように、複数の誘導加熱ロールを用いてラミネート物に熱エネルギーを供給する場合、温度上昇過程に配置された誘導加熱ロール(図6の(b)における左側の3つ)の温度は漸次上昇するように制御することができ、温度下降過程に配置された誘導加熱ロール(図6bにおける右側の3つ)の温度は漸次下降するように制御することができる。
【0063】
また、無圧力熱処理ステップ(S400)は、図4の(a)、(b)を参照して前述したように誘導加熱ロール510の位置を調節して、ラミネート物と誘導加熱ロールとの接触面積及びラミネート物の移送経路のうちの少なくとも一つを調節して、位置別誘導加熱ロールの温度を個別に制御することができる。
【0064】
以下、前述したセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法が適用された装置(設備)の実施形態を説明する。
【0065】
図7は、本発明によるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造装置の一実施形態を示すブロック図であり、図8及び図9は、図7に示した無圧力熱処理モジュールの実施形態を説明する図である。
【0066】
図7を参照すると、セルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造装置は、ベースシート供給モジュール100、接着剤供給モジュール200、乾燥モジュール300、素材シート供給モジュール400、ラミネートモジュール500、無圧力熱処理モジュール600、冷却モジュール700、及び巻取モジュール800を含むことができる。
【0067】
ベースシート供給モジュール100は、アルミニウム等の金属材で形成されたベースシートを供給するものであって、ベースシートが巻き取られた供給ロール、該供給ロールを回動させる駆動部、及びベースシートの供給を案内する複数のガイドロールなどを含んで構成できる。
【0068】
接着剤供給モジュール200は、ベースシートの一側面に液状の接着剤を噴射するためのものであって、液状の接着剤を貯蔵する貯蔵タンク、貯蔵タンクに貯蔵された液状の接着剤を供給する供給管、及び該供給管の終端部に設けられて液状の接着剤を噴射する噴射ノズルなどを含んで構成できる。
【0069】
乾燥モジュール300は、接着剤が塗布されたベースシートを熱乾燥又は熱風乾燥させるものであって、ベースシートが移送される移送ローラ、ベースシートに熱又は熱風を供給するオーブン型ハウジング、熱を発生させる発熱部、及び熱風を供給する熱風ファンなどを含んで構成できる。
【0070】
素材シート供給モジュール400は、ベースシートに塗布された接着層に素材シート(CPP等)を供給するためのものであって、前述したベースシート供給モジュール100と同様に、素材シートが巻き取られた供給ロール、該供給ロールを回動させる駆動部、及び素材シートの供給を案内する複数のガイドロールなどを含んで構成できる。
【0071】
ラミネートモジュール500は、ベースシートと素材シートとを熱加圧方式で接着してラミネートするものであって、ベースシートと素材シートとを熱加圧する少なくとも一対のサーマルロール(Termal roll)を含むことができる。
【0072】
無圧力熱処理モジュール600は、ラミネートモジュール500で接着されたラミネート物が流入すると、流入したラミネート物と無圧力方式で面接触して当該ラミネート物を熱処理するものであって、少なくとも1つの誘導加熱ロール610を含むことができ、好ましくは、図3の(a)~(c)、図4の(a)及び(b)、並びに図6の(a)及び(b)に示すように複数の誘導加熱ロール610を含んで構成できる。
【0073】
冷却モジュール700は、無圧力熱処理モジュール600で熱処理されたラミネート物を冷却させるためのものであって、少なくとも1つの冷却ロールを含むことができ、必要に応じて、当該冷却ロールに冷媒を供給する冷媒供給部を含んで構成できる。
【0074】
巻取モジュール800は、冷却されたラミネート物を巻き取るものであって、ラミネート物が巻かれる巻取ロールと、ラミネート物の移送を案内する少なくとも1つのガイドロールと、を含んで構成できる。
【0075】
このように、ラミネートして熱処理されたパウチ用フィルムは、巻取ロールに巻き取られた状態で熟成工程を経るか、或いはバッテリーセルパウチを製作するための工程へ直ちに移送できる。
【0076】
図8を参照すると、無圧力熱処理モジュール600は、発熱制御部630をさらに含むことができる。
【0077】
発熱制御部630は、図4の(a)及び(b)に示すように移動式誘導加熱ロール612の位置を制御するか、或いは図6の(a)及び(b)に示すように誘導加熱ロール610の温度を制御することができる。
【0078】
例えば、発熱制御部630は、ラミネート物の移送速度、無圧力熱処理モジュール600の内部に構成された誘導加熱ロール610の個数及び配置、ラミネート物との接触面積のうちの少なくとも一つに基づいて、当該誘導加熱ロールのオン/オフ動作及び温度を制御することができる。
【0079】
特に、発熱制御部630は、図6の(a)及び(b)に示すように、複数の誘導加熱ロール610を少なくとも2つの区域(温度上昇区域及び温度下降区域)に区分し、各区域別に当該誘導加熱ロール610の温度を制御することができる。
【0080】
より具体的には、発熱制御部630は、ラミネート物が流入する流入側に隣接する少なくとも一部の誘導加熱ロールは流入側から順次温度が上昇するように制御することができ、ラミネート物が排出される排出側に隣接する少なくとも他の一部の誘導加熱ロールは排出側に向かって順次温度が下降するように制御することができる。
【0081】
また、無圧力熱処理モジュール600に構成された複数の誘導加熱ロール610は、アキュムレータ(Accumulator)として機能するように構成できる。
【0082】
より具体的には、複数の誘導加熱ロール610は、図9に示すように、位置が一定に固定されるように構成された少なくとも1つの固定式誘導加熱ロール611と、往復移動可能に構成された少なくとも1つの移動式誘導加熱ロール612と、を含むように構成できる。
【0083】
これにより、発熱制御部630は、図9の下部に示すように、移動式誘導加熱ロール612の位置を制御して、ラミネート物と面接触する誘導加熱ロール610の個数及びラミネート物の移送距離のうちの少なくとも一つを調節することにより、熱処理過程を行うためのラミネート物が無圧力熱処理モジュール600に留まる時間を加減させることができる。
【0084】
図10は、図1によって製作されたラミネートフィルムと一般的なラミネートフィルムとの物理的特性を比較する表である。
【0085】
図10を参照すると、アルミニウムとCPPとがラミネートされた状態での熱接着強度を測定したものであって、先行技術のような従来技術は、無熟成時の熱接着強度が0N/15mmであるのに対し、本発明は、無熟成時の熱接着強度が70N/15mmであって、両者は非常に大きな差があることが分かる。
【0086】
また、一日の熟成期間が経過した後を比較すると、従来技術の熱接着強度が30N/15mmであるのに対し、本発明の熱接着強度は80N/15mmであって、大幅に向上したことを確認することができる。
【0087】
このように従来の加熱ロール方式の二次ラミネートによって製作したパウチ製品と、本発明の誘導加熱ロールを用いたステップ熱処理によって製作したパウチ製品とを比較したところ、本発明は、フィルム間熱接着強度、熟成時間による熱接着強度の物性が従来の熱処理方式に比べて向上した結果を得ることができた。
【0088】
以上、本発明によるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法及び装置について説明した。このような本発明の技術的構成は、本発明の属する技術分野における当業者が本発明のその技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解することができるであろう。
【0089】
したがって、上述した実施形態は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0090】
100 ベースシート供給モジュール
200 接着剤供給モジュール
300 乾燥モジュール
400 素材シート供給モジュール
500 ラミネートモジュール
600 無圧力熱処理モジュール
610 誘導加熱ロール
611 固定式誘導加熱ロール
612 移動式誘導加熱ロール
620 ガイドロール
630 発熱制御部
700 冷却モジュール
800 巻取モジュール
【要約】
【課題】パウチ用フィルムをドライラミネーション工程で製造する上で、発熱制御が可能な誘導加熱ロールを用いて、一回のラミネーション工程によって、所望の物理的特性を満足するパウチ用フィルムを製造することができるセルタイプバッテリーパウチ用合ラミネートフィルムの製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明によるセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法は、ベースシートの一側面に素材シートを熱加圧してラミネートする熱加圧ラミネートステップと、前記ラミネートされたものを無圧力状態で熱処理する無圧力熱処理ステップと、を含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10