(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】システム、基地局間制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/024 20170101AFI20240722BHJP
H04W 16/32 20090101ALI20240722BHJP
H04W 88/08 20090101ALI20240722BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20240722BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H04B7/024
H04W16/32
H04W88/08
H04W92/20
H04B7/08 420
(21)【出願番号】P 2023017169
(22)【出願日】2023-02-07
【審査請求日】2023-02-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和4年3月1日に、EiC電子情報通信学会 2022年総合大会講演論文集(DVD及びWEB公開),B-5-19(一般社団法人電子情報通信学会)にて公開 (2)令和4年3月15日に、EiC電子情報通信学会 2022年総合大会,オンライン開催にて発表 (3)令和4年8月18日に、電子情報通信学会技術研究報告,Vol.122,No.164,RCS2022-98,pp.6-11(一般社団法人電子情報通信学会)にて公開 (4)令和4年8月25日に、電子情報通信学会 無線通信システム研究会,函館市亀田交流プラザ(北海道函館市美原1丁目26-12)にて発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「移動通信三次元空間セル構成」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】金田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝也
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】金田 拓也 他,三次元空間HetNet構成におけるネットワーク連携上り回線対応マクロセル及びスモールセル基地局間干渉キャンセラー,電子情報通信学会技術研究報告 [online] ,日本,電子情報通信学会,2022年08月18日,Vol.122 No.164,pp.6~11
【文献】金田 拓也 他,三次元空間HetNet構成におけるマクロセル基地局上り回線干渉キャンセラーの処理量削減,電子情報通信学会2022年総合大会講演論文集 通信1 ,2022年03月01日,p.330
【文献】金田 拓也 他,三次元空間HetNet構成における上り回線干渉キャンセラーの処理量削減 ,電子情報通信学会技術研究報告 [online] ,日本,電子情報通信学会,2022年01月13日, Vol.121 No.327 ,pp.282~287
【文献】SENO,Ryuma et al.,“Interference Alignment in Heterogeneous Networks Using Pico Cell Clustering”,2015 IEEE 82nd Vehicular Technology Conference (VTC2015-Fall),2015年09月,DOI:10.1109/VTCFall.2015.7390989
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/024
H04W 16/32
H04W 88/08
H04W 92/20
H04B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基地局が形成する第1セルと一又は複数の第2基地局が前記第1セル内に形成する一又は複数の第2セルとを含む同一の周波数帯が用いられるHetNet(異種ネットワーク)がセルラー状に複数配置された複数
のHetNet構成における端末から基地局への干渉を抑圧するシステムであって、
前記複数のHetNetのそれぞれにおいて、前記HetNetの第1セルの第1基地局の上り回線の受信信号に対する前記第2セルに在圏する端末からの上り回線の干渉信号を抑圧する複数の第一段階目の干渉抑圧装置と、
前記複数のHetNetのそれぞれについて、前記第一段階目の干渉抑圧装置による前記干渉信号の抑圧が行われた後の一のHetNetの第1セルの第1基地局の上り回線の受信信号に対する他のHetNetの第1セルに在圏する端末からの上り回線の干渉信号を抑圧する第二段階目の干渉抑圧装置と、
を備える、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記複数の第一段階目の干渉抑圧装置はそれぞれ、
前記第2セルに在圏する端末から前記第1セルの第1基地局のアンテナへの第1伝搬路応答を推定し、前記第1伝搬路応答を要素として含む第1伝搬路応答行列を作成し、前記第2セルに在圏する端末から前記第2セルの第2基地局のアンテナへの第2伝搬路応答を推定し、前記第2伝搬路応答を要素として含む第2伝搬路応答行列を作成する第一段階目の行列作成部と、
前記第2伝搬路応答行列の逆行列を計算し、前記第2伝搬路応答行列の逆行列と前記第1伝搬路応答行列とに基づいて、前記第2セルの第2基地局のアンテナで受信した受信信号に適用する第一段階目の受信ウェイトを計算する第一段階目のウェイト計算部と、
前記第1セルの第1基地局のアンテナで受信した受信信号と、前記第2セルの第2基地局のアンテナで受信した複数の受信信号と、前記第一段階目の受信ウェイトとに基づいて、前記第1セルの第1基地局の上り回線の受信信号に対する前記第2セルに在圏する端末からの上り回線の干渉信号の干渉を抑圧する第一段階目の受信信号処理部と、を備え、
前記第二段階目の干渉抑圧装置は、
前記他のHetNetの第1セルに在圏する端末から前記一のHetNetの第1セルの第1基地局のアンテナへの第3伝搬路応答を推定し、前記第3伝搬路応答を要素として含む第3伝搬路応答行列を作成し、前記他のHetNetの第1セルに在圏する端末から前記他のHetNetの第1セルの第1基地局のアンテナへの第4伝搬路応答を推定し、前記第4伝搬路応答を要素として含む第4伝搬路応答行列を作成する第二段階目の行列作成部と、
前記第4伝搬路応答行列の逆行列を計算し、前記第4伝搬路応答行列の逆行列と前記第3伝搬路応答行列とに基づいて、前記他のHetNetの第1セルの第1基地局のアンテナで受信した受信信号に適用する第二段階目の受信ウェイトを計算する第二段階目のウェイト計算部と、
前記一のHetNetの第1セルの第1基地局のアンテナで受信した受信信号と、前記他のHetNetの第1セルの第1基地局のアンテナで受信した受信信号と、前記第二段階目の受信ウェイトとに基づいて、前記一のHetNetの第1セルの第1基地局の上り回線の受信信号に対する前記他のHetNetの第1セルに在圏する端末からの上り回線の干渉信号の干渉を抑圧する第二段階目の受信信号処理部と、を備える、
ことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2のシステムにおいて、
前記HetNetの数は2以上であり、
前記第二段階目の行列作成部は、前記逆行列を計算する前の前記第4伝搬路応答行列に含まれる複数の第4伝搬路応答のうち、所定の閾値以下又は前記閾値未満の大きさの電力を有する第4伝搬路応答をゼロにする、
ことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3のシステムにおいて、
前記第二段階目の行列作成部は、
前記逆行列を計算する前の第4伝搬路応答行列に含まれる複数の第4伝搬路応答それぞれの電力を計算し、
前記電力の計算値が所定の閾値γ
th以下又は閾値γ
th未満の第4伝搬路応答をゼロに修正する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項3のシステムにおいて、
前記第二段階目の行列作成部で作成される前記第4伝搬路応答行列の複数の第4伝搬路応答のうち、前記干渉への寄与が小さいと予想される第4伝搬路応答を予めゼロに設定しておき、
前記第二段階目の行列作成部は、
前記第4伝搬路応答行列の複数の第4伝搬路応答のうち、前記予めゼロに設定した第4伝搬路応答の推定を行わず、
前記予めゼロに設定していない複数の第4伝搬路応答のうち、前記第4伝搬路応答の電力の計算値が所定の閾値Γ
th以下又は閾値Γ
th未満の第4伝搬路応答をゼロに修正する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項3のシステムにおいて、
前記第二段階目の行列作成部で作成される前記第4伝搬路応答行列の複数の第4伝搬路応答のうち、前記干渉への寄与が小さいと予想される第4伝搬路応答を予めゼロに設定しておき、
前記第二段階目の行列作成部は、前記第4伝搬路応答行列の複数の第4伝搬路応答のうち、前記予めゼロに設定した第4伝搬路応答の推定を行わない、
ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6のシステムにおいて、
前記
複数のHetNet構成における複数の第1基地局の運用開始前に前記複数の第4伝搬路応答の推定を行い、前記複数の第4伝搬路応答のうち、前記第4伝搬路応答の電力の計算値が所定の閾値Γ
th以下又は閾値Γ
th未満の第4伝搬路応答をゼロに設定しておく、
ことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6のシステムにおいて、
前記複数のHetNetにおけ
る複数の第1基地局
の間の位置関係又は前記
複数の第1基地局の複数の第1セル
の間の位置関係に基づいて、前記予めゼロに設定しておく第4伝搬路応答を決定しておく、
ことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかのシステムにおいて、
前記複数のHetNetのそれぞれにおいて、前記HetNetの第1セルの第1基地局の上り回線の受信信号に対する前記第2セルに在圏する端末からの上り回線の干渉信号の電力が所定の閾値以下又は前記閾値未満の場合、前記第一段階目の干渉抑圧装置による前記干渉信号の抑圧を行わない、
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種セルサイズ混在型のヘテロジニアスセルラネットワーク(HetNet)構成における干渉抑圧技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の移動通信システムにおけるトラフィックの急増に対応すべく、従来のマクロセル基地局よりもセル(無線通信エリア)が狭いスモールセル基地局(「極小セル基地局」、「ピコセル基地局」、「フェムトセル基地局」などとも呼ばれる)の需要が高まっている。例えば、都市部では中・高層ビル屋内(大規模なオフィス内)における局所的に急増するトラヒックに対応するために、地上のマクロセル内に位置する中・高層ビルの各フロアにスモールセルを配置して構成する三次元空間セル構成(3D HetNet構成)が注目されている(非特許文献1、2、3参照)。特に、マクロセルとスモールセルが同一周波数を用いる場合、地上にスモールセルを配置した二次元空間HetNet構成に比べて、マクロセルとスモールセルと間の干渉やスモールセル間の干渉が問題となり、それらを回避又は抑圧する必要がある。
【0003】
非特許文献4には、三次元空間HetNet構成における上り回線干渉対策として、マクロセルと各スモールセルが連携して、スモールセルに在圏する端末からマクロセル基地局への上り回線干渉をマクロセル基地局で抑圧する「ネットワーク連携マクロセル基地局受信干渉キャンセラー」が開示されている。この受信干渉キャンセラーは、同一リソースブロック内において、各スモールセル基地局の受信信号をもとにマクロセル基地局で各スモールセル干渉信号を除去するためのレプリカ信号を生成し、マクロセル基地局の受信信号からそれらを差し引く線形干渉キャンセラーである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】A. Nagate, M. Mikami, T. Okamawari, T. Fujii, "Layered Cell Configuration for 3D Dense Cell Structure", International Workshop on Smart Wireless Communications (SmartCom2016), vol. 116, no. 29, SR2016-5, pp. 9-14, Oulu, Finland, May 2016.
【文献】A. Nagate, S. Nabatame, K. Hoshino and T. Fujii, "Experimental Evaluations of Coordinated Interference Control for Co-channel Overlaid Cell Structure", Proceedings of IEEE VTC2015-Spring, Glasgow, May 2015.
【文献】T. Okamawari, S. Shiobara, Y. Nagai and T. Fujii, "Field evaluation of eICIC using highly accurate GPS based synchronization scheme", Proceedings of IEEE VTC2015- fall, Boston, USA, Sep 2015.
【文献】金田拓也,藤井輝也,"HetNet構成 における ネットワーク連携上り回線干渉キャンセラー",電子情報通信学会論文誌 B, Vol.J104-B,No.8,pp.723-726.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の受信干渉キャンセラーでは、同一の周波数帯が用いられる複数のHetNetの構成をセルラー状に拡張した構成(以下、「複数HetNet構成」又は「HetNetセルラー構成」ともいう。)においてHetNet間の上り回線の干渉を抑圧することができない、という課題がある。例えば、HetNetのマクロセル基地局のアンテナには、当該HetNetのスモールセルに在圏する端末からの上り回線の信号だけでなく、周辺のHetNetのマクロセルに在圏する端末からの上り回線の信号が干渉信号として到達する。上記従来の受信干渉キャンセラーでは、これらのHetNet内の上り回線の干渉信号及びHetNet間の上り回線の干渉信号の両方を抑制することができない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るシステムは、第1基地局が形成する第1セルと一又は複数の第2基地局が前記第1セル内に形成する一又は複数の第2セルとを含む同一の周波数帯が用いられるHetNet(異種ネットワーク)がセルラー状に複数配置された複数HetNet構成における端末から基地局への干渉を抑圧するシステムである。このシステムは、前記複数のHetNetのそれぞれにおいて、前記HetNetの第1セルの第1基地局の上り回線の受信信号に対する前記第2セルに在圏する端末からの上り回線の干渉信号を抑圧する複数の第一段階目の干渉抑圧装置と、前記複数のHetNetのそれぞれについて、前記第一段階目の干渉抑圧装置による前記干渉信号の抑圧が行われた後の一のHetNetの第1セルの第1基地局の上り回線の受信信号に対する他のHetNetの第1セルに在圏する端末からの上り回線の干渉信号を抑圧する第二段階目の干渉抑圧装置と、を備える。
【0007】
前記システムにおいて、前記複数の第一段階目の干渉抑圧装置はそれぞれ、前記第2セルに在圏する端末から前記第1セルの第1基地局のアンテナへの第1伝搬路応答を推定し、前記第1伝搬路応答を要素として含む第1伝搬路応答行列を作成し、前記第2セルに在圏する端末から前記第2セルの第2基地局のアンテナへの第2伝搬路応答を推定し、前記第2伝搬路応答を要素として含む第2伝搬路応答行列を作成する第一段階目の行列作成部と、前記第2伝搬路応答行列の逆行列を計算し、前記第2伝搬路応答行列の逆行列と前記第1伝搬路応答行列とに基づいて、前記第2セルの第2基地局のアンテナで受信した受信信号に適用する第一段階目の受信ウェイトを計算する第一段階目のウェイト計算部と、前記第1セルの第1基地局のアンテナで受信した受信信号と、前記第2セルの第2基地局のアンテナで受信した複数の受信信号と、前記第一段階目の受信ウェイトとに基づいて、前記第1セルの第1基地局の上り回線の受信信号に対する前記第2セルに在圏する端末からの上り回線の干渉信号の干渉を抑圧する第一段階目の受信信号処理部と、を備えてもよい。更に、前記システムにおいて、前記第二段階目の干渉抑圧装置は、前記他のHetNetの第1セルに在圏する端末から前記一のHetNetの第1セルの第1基地局のアンテナへの第3伝搬路応答を推定し、前記第3伝搬路応答を要素として含む第3伝搬路応答行列を作成し、前記他のHetNetの第1セルに在圏する端末から前記他のHetNetの第1セルの第1基地局のアンテナへの第4伝搬路応答を推定し、前記第4伝搬路応答を要素として含む第4伝搬路応答行列を作成する第二段階目の行列作成部と、前記第4伝搬路応答行列の逆行列を計算し、前記第4伝搬路応答行列の逆行列と前記第3伝搬路応答行列とに基づいて、前記他のHetNetの第1セルの第1基地局のアンテナで受信した受信信号に適用する第二段階目の受信ウェイトを計算する第二段階目のウェイト計算部と、前記一のHetNetの第1セルの第1基地局のアンテナで受信した受信信号と、前記他のHetNetの第1セルの第1基地局のアンテナで受信した受信信号と、前記第二段階目の受信ウェイトとに基づいて、前記一のHetNetの第1セルの第1基地局の上り回線の受信信号に対する前記他のHetNetの第1セルに在圏する端末からの上り回線の干渉信号の干渉を抑圧する第二段階目の受信信号処理部と、を備えてもよい。
【0008】
前記システムにおいて、前記HetNetの数は2以上であり、前記第二段階目の行列作成部は、前記逆行列を計算する前の前記第4伝搬路応答行列に含まれる複数の第4伝搬路応答のうち、所定の閾値以下又は前記閾値未満の大きさの電力を有する第4伝搬路応答をゼロにしてもよい。
【0009】
前記システムにおいて、前記第二段階目の行列作成部は、前記逆行列を計算する前の第4伝搬路応答行列に含まれる複数の第4伝搬路応答それぞれの電力を計算し、前記電力の計算値が所定の閾値γth以下又は閾値γth未満の第4伝搬路応答をゼロに修正してもよい。
【0010】
前記システムにおいて、前記第二段階目の行列作成部で作成される前記第4伝搬路応答行列の複数の第4伝搬路応答のうち、前記干渉への寄与が小さいと予想される第4伝搬路応答を予めゼロに設定しておき、前記第二段階目の行列作成部は、前記第4伝搬路応答行列の複数の第4伝搬路応答のうち、前記予めゼロに設定した第4伝搬路応答の推定を行わず、前記予めゼロに設定していない複数の第4伝搬路応答のうち、前記第4伝搬路応答の電力の計算値が所定の閾値Γth以下又は閾値Γth未満の第4伝搬路応答をゼロに修正してもよい。
【0011】
前記システムにおいて、前記第二段階目の行列作成部で作成される前記第4伝搬路応答行列の複数の第4伝搬路応答のうち、前記干渉への寄与が小さいと予想される第4伝搬路応答を予めゼロに設定しておき、前記第二段階目の行列作成部は、前記第4伝搬路応答行列の複数の第4伝搬路応答のうち、前記予めゼロに設定した第4伝搬路応答の推定を行わないようにしてもよい。
【0012】
前記システムにおいて、前記複数の第1基地局の運用開始前に前記複数の第4伝搬路応答の推定を行い、前記複数の第4伝搬路応答のうち、前記第4伝搬路応答の電力の計算値が所定の閾値Γth以下又は閾値Γth未満の第4伝搬路応答をゼロに設定しておいてもよい。
【0013】
前記システムにおいて、前記複数のHetNetにおける前記複数の第1基地局間の位置関係又は前記複数の第1セル間の位置関係に基づいて、前記予めゼロに設定しておく第4伝搬路応答を決定しておいてもよい。
【0014】
前記システムにおいて、前記複数のHetNetのそれぞれにおいて、前記HetNetの第1セルの第1基地局の上り回線の受信信号に対する前記第2セルに在圏する端末からの上り回線の干渉信号の電力が所定の閾値以下又は前記閾値未満の場合、前記第一段階目の干渉抑圧装置による前記干渉信号の抑圧を行わないようにしてもよい。
【0015】
前記システムにおいて、前記第1セルはマクロセルであり、前記第2セルはスモールセルであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1セル内に小さいサイズの一又は複数の第2セルが配置されたHetNetがセルラー状に複数配置された構成において、HetNet内の第1セルの基地局のアンテナが受信する上り回線の受信信号に対する第2セルに在圏する端末からの干渉の抑制することができるとともに、HetNetの第1セルの基地局のアンテナが受信する上り回線の受信信号に対する周辺のHetNetの第1セルに在圏する端末からの干渉の抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係るシステムを適用可能な複数HetNet構成に備えるHetNetの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、複数HetNet構成における中央のHetNetのマクロセル(第1セル)を形成するマクロセル基地局(第1基地局)に周辺の端末から干渉が到来する様子の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る複数HetNet構成に備える複数のHetNetそれぞれの上り回線干渉キャンセラーの機能を有する協調制御ネットワークを用いたシステムの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る複数HetNet構成に有する単一のHetNetにおける基地局の受信干渉キャンセラーの機能を有するシステムの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る複数HetNet構成の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る複数HetNet構成における信号のモデルの一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る複数HetNet構成における複数の基地局の受信干渉キャンセラーの機能を有するシステムの構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図7のシステムにおける一段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、一段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)の適用効果の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、
図7のシステムにおける二段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るシステムの複数HetNet構成における一段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)及び二段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)の適用効果の一例を示す図である。
【
図12】
図12(a)は、周辺マクロセル数N
Mが6の場合の複数HetNet構成の一例を示す図である。
図12(b)は、周辺マクロセル数N
Mが18の場合の複数HetNet構成の一例を示す図である。
【
図13】
図13(a)は、実施形態に係るシステムの二段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)の第1の信号処理量低減方法におけるマクロセル間が近い場合の端末からマクロセル基地局のアンテナへの信号の送受信の一例を示す図である。
図13(b)は、第1の信号処理量低減方法におけるマクロセル間が遠い場合の端末からマクロセル基地局のアンテナへの信号の送受信の一例を示す図である。
【
図14】
図14(a)~
図14(c)は、第1の信号処理量低減方法において互いに異なる第1閾値γ
th
Mを設定した場合の伝搬路応答h
ji
Mの近似の具体例を示す図である。
【
図15】
図15(a)は、実施形態に係るシステムの二段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)の第2の信号処理量低減方法におけるマクロセル間が近い場合の端末からマクロセル基地局のアンテナへの信号の送受信の一例を示す図である。
図15(b)は、第2の信号処理量低減方法におけるマクロセル間が遠い場合の端末からマクロセル基地局のアンテナへの信号の送受信の一例を示す図である。
【
図16】
図16(a)~
図16(d)は、第2の信号処理量低減方法において互いに異なる第2閾値Γ
th
Mを設定した場合の伝搬路応答h
ji
Mの事前設定の具体例を示す図である。
【
図17】
図17は、HetNet構成におけるマクロセル基地局に周辺のスモールセルの端末から干渉が到来する様子の一例を示す図である。
【
図18】
図18(a)は、実施形態に係るシステムにおけるスモールセルとマクロセル基地局のアンテナとの間が近い場合のスモールセル端末からマクロセル基地局のアンテナへの信号の送受信の一例を示す図である。
図18(b)は、スモールセルとマクロセル基地局のアンテナとの間が遠い場合のスモールセル端末からマクロセル基地局のアンテナへの信号の送受信の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係るシステムにおけるスモールセル端末からマクロセル基地局のアンテナへの干渉が小さい場合の一段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)の処理の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、実施形態に係るシステムにおける一段階目の干渉抑圧装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図21】
図21は、実施形態に係るシステムにおける二段階目の干渉抑圧装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して様々な実施形態について説明する。なお、各図は本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎず、従って、本発明は各図で例示された形状、大きさ及び位置関係のみに限定されるものではない。また、後述において例示する数値は、本発明の好適な例に過ぎず、従って、本発明は例示された数値に限定されるものではない。
【0019】
本書において実施形態の例として開示されたシステムは、第1セル(マクロセル)内に同一周波数帯を用いた一又は複数の第2セル(スモールセル)を設置して構成する周波数利用効率の高い異種セルサイズ混在型のヘテロジニアスセルラネットワーク(HetNet)構成(例えば、二次元空間のHetNet構成、又は、三次元空間に拡張したHetNet構成)がセルラー状に複数配置された複数HetNet構成(HetNetセルラー構成)における端末から基地局への上り回線の干渉を抑圧する複数段のネットワーク連携上り回線干渉キャンセラーを備えたシステムである。特に、本開示の実施形態に係るシステムは、複数の第一段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラ-)と第二段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラー)を備える。複数の第一段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラ-)は、複数のHetNetのそれぞれにおいて、HetNetの第1セル(マクロセル)の第1基地局(マクロセル基地局)の上り回線の受信信号に対する第2セル(スモールセル)に在圏する端末からの上り回線の干渉信号を抑圧する。第二段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラー)は、複数のHetNetのそれぞれについて、第一段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラー)による干渉信号の抑圧が行われた後の一のHetNetの第1セル(マクロセル)の第1基地局(マクロセル基地局)の上り回線の受信信号に対する他のHetNetの第1セル(マクロセル)に在圏する端末からの上り回線の干渉信号を抑圧する。
【0020】
図1は、実施形態に係るシステムを適用可能な複数HetNet構成に備えるHetNetの構成の一例を示す図である。
図1において、本実施形態のシステムは、移動通信の複数の基地局(「eNodeB」、「eNB」、「gNodeB」、「gNB」等と呼ばれる。)として、第1セルとしてのマクロセル200を形成する第1セル基地局としてのマクロセル基地局20と、マクロセル200よりもセルサイズが小さい複数の第2セルとしてのスモールセル300(1)~300(3)を形成する複数の第2基地局としての複数のスモールセル基地局30(1)~30(3)とを備えている。マクロセル基地局20は、アンテナ21を介して、マクロセル200に在圏する端末10(0)と無線通信することができる。マクロセル基地局20のマクロセル200内には複数のスモールセル基地局30(1)~30(3)それぞれの少なくともアンテナ31が配置されている。複数のスモールセル基地局30(1)~30(3)はそれぞれ、アンテナ31を介して、スモールセル300(1)~300(3)に在圏する端末10(1)~10(3)と無線通信することができる。
【0021】
図1の構成は、マクロセル200内のホットスポット等の多くのトラフィックが集中しているエリアにスモールセル300(1)~300(3)を配置した、トラフィック対策として有効な「HetNet構成」である。本システムではマクロセルとスモールセルは同一周波数を利用する。特に、
図1に示すようなビル90が立ち並ぶ市街地などでは、高層階の大規模オフィス内でトラフィックが集中的に発生するケースが多々あり、そのような場所にスモールセルを配置する「三次元空間HetNet構成(三次元空間セル構成)」が非常に有効である。
図1の三次元空間セル構成では、面方向に屋外スモールセル300(1)が配置され、高さ方向に複数の屋内スモールセル300(2),300(3)が配置されている。なお、
図1の構成において、スモールセル300の数は単数であってもよく、又は、2若しくは4以上の複数であってもよい。
【0022】
HetNet構成では、広範囲の通信を行うマクロセル200の中の特に通信量の多い場所にスモールセル300(1)~300(3)を配置することにより、全体の通信品質を安定させることができる。
【0023】
なお、
図1において、マクロセル基地局及びスモールセル基地局それぞれの数は任意であり、例えば、マクロセル基地局は2箇所以上に設けてもよいし、スモールセル基地局はマクロセル内において一箇所、又は、2箇所若しくは4箇所以上の複数箇所に設けてもよい。また、マクロセル基地局及びスモールセル基地局は互いに時間同期制御されている。
【0024】
マクロセル基地局20は、移動通信網において屋外に設置されている通常の半径数百m乃至数km程度の広域エリアであるマクロセルをカバーする広域の基地局である。マクロセル基地局20は、回線終端装置及び光回線や専用回線などの通信回線を介して移動通信網のコアネットワークに接続され、コアネットワーク上のサーバ装置などの各種ノードとの間で所定の通信インターフェースにより通信可能である。
【0025】
スモールセル基地局30(1)~30(3)はそれぞれ、広域のマクロセル基地局とは異なり、無線通信可能距離が例えば数十m乃至数百m程度であり、一般家庭、店舗、オフィス等の屋内にも設置することができる小容量の基地局である。スモールセル基地局30(1)~30(3)は、移動通信網における広域のマクロセル基地局がカバーするエリアよりも小さなエリアをカバーするように設けられる。スモールセル基地局30(1)~30(3)は、回線終端装置及び光回線や専用回線などの通信回線を介して移動通信網のコアネットワークに接続され、コアネットワーク上のサーバ装置などの各種ノードとの間で所定の通信インターフェースにより通信可能である。
【0026】
マクロセル基地局20及びスモールセル基地局30(1)~30(3)のそれぞれと端末との間の無線通信には、同一無線伝送方式及び同一周波数帯が使用されている。同一周波数帯を使用することにより、マクロセルとスモールセルとの間で異なる周波数帯を使用する場合よりも周波数帯域を圧迫しないようにすることができる。
【0027】
無線伝送方式としては、例えば、LTE(Long Term Evolution)やLTE-Advancedの通信方式、第4世代携帯電話の通信方式、第5世代、又は第6世代等の次世代の携帯電話の通信方式などを採用することができる。
【0028】
端末10は、携帯電話機、スマートフォン、移動通信機能を有する携帯パソコン等であり、ユーザ装置(UE)、移動局、移動機、携帯型の通信端末とも呼ばれている。端末10(0)は、マクロセル200内に在圏し、マクロセル200に対応するマクロセル基地局20を介して移動通信網側と通信する。また、端末10(1)~10(3)はそれぞれ、スモールセル300(1)~300(3)に在圏し、スモールセル基地局30(1)~30(3)を介して移動通信網側と通信する。
【0029】
端末10は、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、無線通信部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることによりマクロセル基地局20及びスモールセル基地局30(1)~30(3)との間の無線通信等を行うことができる。また、マクロセル基地局20及びスモールセル基地局30(1)~30(3)はそれぞれ、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、コアネットワークに対する外部通信インターフェース部、無線通信部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより、端末10との間の無線通信やコアネットワーク側との通信を行ったりすることができる。
【0030】
端末10は、自動車やドローンなどの移動体に組み込まれたモジュール状の移動局であってもよいし、IoT(Internet of Things)向けデバイスの端末装置であってもよい。
【0031】
図2は、
図1のHetNetがセルラー状に配置された複数HetNet構成(HetNetセルラー構成)における中央のHetNetのマクロセル(第1セル)を形成するマクロセル基地局(第1基地局)に周辺の端末から干渉が到来する様子の一例を示す図である。
図2において、図中の実線に示すように、マクロセル端末10(0)はマクロセル基地局20と通信を行い、各スモールセル端末10(1),10(2)は各スモールセル基地局30(1),30(2)と通信を行っている。しかし、図中の1点鎖線及び2点差線で示すように、スモールセル300(1),300(2)に在圏する端末10(1),10(2)から送信された信号がマクロセル基地局20のアンテナ21に到達し、マクロセルの上り回線にスモールセルからの信号が干渉し、マクロセルの通信品質が低下するおそれがある。特に
図1に例示する三次元空間のHetNet構成では、図中矢印で示すように、セル間における予干渉及び被干渉の推定が非常に複雑である。また、空間的にセル間の離隔距離を取ることで、相互に干渉を回避する三次元空間セル構成の構築は極めて困難である。三次元空間セル構成を実現するためには、高度な干渉制御が不可欠である。
【0032】
上記マクロセルの上り回線の干渉を回避するために、スモールセル300(1),300(2)に在圏する端末10(1),10(2)の送信電力を低減させる方法が考えられる。しかし、この方法では、スモールセル300(1),300(2)内の通信品質が低下してしまう。
【0033】
また、上記HetNet構成に適用可能なセル間干渉制御技術として、前述のLTE-Advanced標準に準拠したeICIC(enhanced Inter Cell Interference Coordination)と呼ばれるセル間干渉制御技術が知られている。このセル間干渉制御技術(eICIC)では、同一周波数帯の無線リソースを時分割して、マクロセル及びスモールセルそれぞれにおける端末からの送信に互いに異なる時間スロットを割り当てることにより、マクロセルとスモールセルとの間の同一周波数帯における干渉を回避することができる。しかしながら、セル間干渉制御技術(eICIC)では、マクロセル及びスモールセルそれぞれにおいて無線リソース(時間スロット)を分割し、相互にその一部を使用しないため、各基地局が全帯域の無線リソース(時間スロット)を使用することができず、マクロセル及びスモールセルの最大伝送レート(ピークスループット)が低下する。
【0034】
本実施形態のシステムでは、複数HetNet構成に備えるHetNet構成における上り回線干渉対策として、マクロセルとスモールセルとが連携して協調制御を行う「協調制御ネットワーク」を用いて上り回線の干渉を抑圧する干渉抑圧装置である「上り回線干渉キャンセラー」の機能を備えている。
【0035】
図3は、実施形態に係る複数HetNet構成に備える複数のHetNetそれぞれの上り回線干渉キャンセラーの機能を有する協調制御ネットワーク400を用いたシステムの一例を示す図である。
図3において、マクロセル基地局20のアンテナ21には、マクロセル端末10(0)から送信された上り回線の所望信号(成分s0)が到達するとともに、スモールセル端末10(1),10(2)から送信された上り回線の信号が干渉信号(成分s1,s2)として到来する。干渉信号s1,s2が所望信号s0に干渉すると、マクロセル基地局20における上り回線(マクロセル上り回線)の通信品質が低下する。
【0036】
本実施形態のシステムは、複数のHetNetのそれぞれにおけるマクロセル上り回線干渉キャンセラーの機能を有する協調制御ネットワーク400を備えることにより、スモールセルからの干渉信号によるマクロセル上り回線の通信品質の低下を防止することができる。マクロセル上り回線干渉キャンセラーでは、各基地局20、30(1)、30(2)に接続された協調制御ネットワーク400において、各スモールセル基地局30(1)、30(2)の受信信号に干渉キャンセルウェイト(受信ウェイト)を重畳し、マクロセル基地局20の受信信号から減算することにより(マクロセル基地局20の受信信号の干渉信号成分に対して逆相で加算することにより)、マクロセル基地局20における上り回線の干渉を抑圧している。すなわち、実施形態のマクロセル上り回線干渉キャンセラーは、各スモールセル基地局30(1),30(2)の受信信号をもとにマクロセル基地局20で各スモールセルからの干渉信号を除去するためのレプリカ信号を生成し、そのレプリカ信号をマクロセル基地局20の受信信号から差し引く線形干渉キャンセラーであり、大きな干渉抑圧効果が得られる。
【0037】
[単一のHetNetにおける上り回線受信キャンセラーの基本構成]
図4は、実施形態に係る複数HetNet構成に有する単一のHetNetにおける基地局の受信干渉キャンセラーの機能を有するシステムの構成例を示す図である。なお、
図4の移動通信システムは、C-RAN(集中型無線アクセスネットワーク)構成を基本とした例を示しているが、D-RAN(分散型無線アクセスネットワーク)などの他の構成の移動通信システムであってもよい。
【0038】
図4において、マクロセル基地局20及びスモールセル基地局30(1)、30(2)はそれぞれ、広帯域の光ファイバ、基地局間インターフェース(例えばLTEではx2インターフェース)等の有線通信回線又は無線通信回線などの通信回線50を介して互いに接続された、RRH(遠隔無線ヘッダ)(「張り出し基地局」、「光張り出し装置」ともいう。)と、ベースバンド信号処理部と受信機と送信機とを含むBBU(ベースバンドユニット)と、を備える。各基地局20,30(1)、30(2)のBBUは、1箇所に設置された共通のベースバンド処理部である集中BBU40に集約されている。各基地局20,30(1)、30(2)のRRHは例えばアンテナ21,31の近くに設けられ、通信回線50を介して集中BBU40に接続され、更に、集中BBU40内の協調制御ネットワーク400を介して各受信機420,430(1),430(2)に接続されている。各基地局のRRHは、集中BBU40からの送信信号を無線信号に変換して所定の送信電力でアンテナ21、31から送信したり、アンテナ21、31で受信した無線信号を受信信号に変換して集中BBU40に送ったりする。集中BBU40内の協調制御ネットワーク400は、後述の一段階目のマクロセル上り回線受信干渉キャンセラーやスモールセル上り回線受信干渉キャンセラーを実行することができる。
【0039】
各基地局20,30(1)、30(2)と集中BBU40と間の伝搬距離差や信号処理時間差等は、集中BBU40でのデジタル信号処理により補償することができる。
【0040】
図4のHetNetにおける干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)410は、マクロセル基地局20の受信号のうち干渉信号(成分S1、成分S2)が各スモールセル基地局30(1),30(2)の受信信号に含まれていることを利用する。
図4において、例えば、マクロセル基地局20は、スモールセル300(1),300(2)に在圏する端末10(1)、10(2)からの干渉信号S1、S2により受信品質(SINR特性)が劣化する。干渉抑圧装置410は、それらの端末10(1)、10(2)からの干渉信号を抑圧(キャンセル)するために、集中BBU40内の協調制御ネットワーク400にマクロセル基地局20及びスモールセル基地局30(1),30(2)の受信信号X1,X2が転送され、これらに干渉キャンセルウェイト(以下、「受信ウェイト」又は「ウェイト」ともいう。)w
1
C,w
2
Cを重畳し、ウェイトw
1
C,w
2
Cを重畳した信号を用いてマクロセル基地局20の干渉信号レプリカとなる信号(以下、「干渉キャンセル信号」ともいう。)を生成する。干渉抑圧装置410は、マクロセル基地局20の受信信号X0から干渉キャンセル信号を差し引く受信干渉キャンセラー処理を実行する。これにより、マクロセル基地局20の上り回線における干渉を抑圧することができる。
【0041】
単一のHetNetにおける干渉抑圧装置410で用いる干渉キャンセルウェイトは、例えば、次の(1)~(4)の手順で求めることができる。
【0042】
(1)複数のスモールセル基地局30はそれぞれ、他のスモールセル300に在圏する端末10(1)、10(2)、・・・からの伝搬路応答を測定する。例えばスモールセルの数がNsであれば、各スモールセル基地局30はNs個の伝搬路応答を測定する必要がある。
【0043】
(2)干渉抑圧装置410は、スモールセル300間の伝搬路応答h
jiを集めて伝搬路応答行列Hを作成する。なお、端末10(i)と基地局30(j)の伝搬路応答をh
jiとしている。例えばスモールセルの数Ns=4であれば、次式(1)の伝搬路応答行列Hが作成される。
【数1】
【0044】
(3)また、干渉抑圧装置410は、スモールセル300に在圏する端末10(1)、10(2)、・・・からマクロセル基地局20への伝搬路応答h
0iを集めて伝搬路応答行列h0を作成する。例えばスモールセルの数Ns=4であれば、次式(2)の伝搬路応答行列h0が作成される。
【数2】
【0045】
(4)干渉抑圧装置410は、スモールセル間の伝搬路応答行列Hとスモールセルからマクロセルへの伝搬路応答h
0iを用いて、干渉キャンセルウェイトW
Cを次式(3)で決定する。例えばスモールセルの数Ns=4であれば、次式(4)の干渉キャンセルウェイトW
Cが決定される。
【数3】
【数4】
【0046】
干渉キャンセルウェイトW
Cを用いて干渉が抑圧された干渉キャンセル後の受信信号S0は、次式(5)で表すことができる。ここで、式(5)中のx
0はマクロセル基地局20の受信信号、Xは各スモールセル基地局から通信回線50により干渉抑圧装置410に転送された参照信号の行列、Tは転置を表している。
【数5】
【0047】
次に、複数のHetNetがセルラー状に配置された複数HetNet構成(HetNetセルラー構成)におけるセル間の干渉抑圧について説明する。
【0048】
図5は、実施形態に係る複数HetNet構成の一例を示す説明図である。複数HetNet構成は、HetNet(異種ネットワーク)構成をセルラー状に拡張した構成であり、複数のHetNetがセルラー状に配置されている。
図5の複数HetNet構成の例では、7つのHetNet1Sが、セルラー状に配置されている。複数の各HetNet1Sはそれぞれ、マクロセル基地局20が形成するマクロセル200と、一又は複数のスモールセル基地局30がマクロセル200内に形成する一又は複数のスモールセル300とを含む。
図5の例では、マクロセル200の内部に4つのスモールセル300を含む。
【0049】
図5に例示する複数HetNet構成では、それぞれのHetNet1Sに含まれるセル200、300間で干渉が発生する。干渉の本数は、単一のHetNetのみの場合やセルラー構成のみの場合と比べて増大する。
【0050】
図6は、実施形態に係る複数HetNet構成における信号のモデルの一例を示す説明図である。なお、
図6は、複数HetNet構成におけるHetNet1Sの数が3の場合について例示しているが、HetNet1Sの数は2又は4以上であってもよい。また、各HetNet1Sにおいて、マクロセル200内に形成されるスモールセル300の数は1であるが、スモールセル300の数は2以上であってもよい。
【0051】
図6の複数HetNet構成の信号モデルにおいて、中央のHetNet1S(1)の対象のマクロセル200(1)の基地局20(1)のアンテナ21には、中央のマクロセル200(1)に在圏するマクロセル端末(以下「中心マクロセル端末」ともいう。)10(1-1)から所望信号(希望信号)S1が到来するとともに、周辺の端末から次の3種類の干渉信号S2,S3,S4が到来する。
【0052】
干渉信号S2は、対象のマクロセル200(1)の内部に形成されたスモールセル300(1)に在圏するスモールセル端末(中心スモールセル端末)10(1-2)からの干渉信号である。干渉信号S3は、周辺のマクロセル200(2)、200(3)に在圏するマクロセル端末(以下「周辺マクロセル端末」ともいう。)10(2-1),10(3-1)からの干渉信号である。干渉信号S4は、周辺のマクロセル200(2)、200(3)の内部に形成された周辺のスモールセル300(2),300(3)に在圏するスモールセル端末(以下「周辺スモールセル端末」ともいう。)10(2-2),(3-2)からの干渉信号である。
【0053】
図6の複数HetNet構成では、単一HetNet構成のみの場合と比べて、周辺のマクロセル200(2)、200(3)に在圏する周辺マクロセル端末10(2-1),10(3-1)からの干渉信号S3と、周辺のスモールセル300(2),300(3)に在圏する周辺スモールセル端末10(2-2),(3-2)からの干渉信号S4が増えるため、中心のマクロセル基地局20(1)の上り回線の通信品質が低下する。
【0054】
本実施形態の複数HetNet構成干渉キャンセルシステムでは、前述の
図4のシステムによる中心スモールセル端末からの干渉に加えて、送信電力の大きい周辺の端末である周辺マクロセル端末10(2-1),10(3-1)からの干渉を抑圧している。
【0055】
図7は、実施形態に係る複数HetNet構成における複数の基地局の受信干渉キャンセラーの機能を有するシステムの構成例を示す図である。なお、
図7のシステムにおいて、前述の
図4のシステムと構成と同様な部分については説明を省略する。
【0056】
図7のシステムは、周辺マクロセル端末からの干渉を低減するための二段階干渉キャンセラーを備える。二段階干渉キャンセラーは、複数HetNet構成のHetNet1S(1)~1S(3)のそれぞれにおいて中心スモールセル端末からの干渉信号S2を抑圧するための複数の一段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラー)411(1)~411(3)と、複数HetNet構成において周辺マクロセル端末からの干渉信号S3を抑圧するための二段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラー)412とを備える。
【0057】
複数の一段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラー)411(1)~411(3)にはそれぞれ、前述の
図4の単一HetNet構成用干渉キャンセラーを適用できる。一段階目の干渉抑圧装置411(1)~411(3)は、HetNet1S(1)~1S(3)それぞれの集中BBU40(1)~40(3)の協調制御ネットワーク401(1)~401(3)に設けられ、各マクロセル基地局20(1)~20(3)に対するスモールセル端末10(1-2),10(2-2),10(3-2)からの干渉を抑圧する。協調制御ネットワーク401(1)~401(3)はそれぞれ、マクロセル基地局20(1)~20(3)とスモールセル基地局と30(1)~30(3)が互いに通信を行って協調制御を行うためのネットワークである。スモールセル端末からの干渉が抑圧された受信信号は、集中BBU40(1)~40(3)に設けられた一段階目の受信機421(1)~421(3)で受信される。
【0058】
二段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラー)412には、前述の
図4の単一HetNet構成用干渉キャンセラー適用後のマクロセル基地局上り回線信号に対して、周辺マクロセル端末からの上り回線干渉信号を抑圧する干渉キャンセラーを適用できる。二段階目の干渉抑圧装置412は、HetNet間の協調制御ネットワーク402に設けられ、一段階目の干渉キャンセル後の各マクロセル基地局の20(1)~20(3)の受信信号を用いて周辺マクロセル端末10(2-1),10(3-1)からの干渉信号を抑圧する。協調制御ネットワーク402は、複数のHetNetのマクロセル基地局20(1)~20(3)の集中BBU40(1)~40(3)が互いに通信を行って協調制御を行うためのネットワークである。
【0059】
図8は、
図7のシステムにおける一段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)での一例を示す図である。複数の一段階目の干渉抑圧装置411(1)~411(3)ではそれぞれ、前述の単一HetNet構成の場合の干渉抑圧装置410と同様の処理が行われ、マクロセル200(1)~200(3)内のスモールセル端末10(1-2)~10(3-2)からの干渉が抑圧される。一段階目の受信機421(1)~421(3)はそれぞれ、スモールセル端末10(1-2)~10(3-2)からの干渉が抑圧された中間信号S1',S2',S3'を出力する。例えば、
図8の中央の一段階目の受信機421(1)は、中間信号S1'(=h
33
Ms
3
M+(h
31
Ms
1
M+h
32
Ms
2
M))を出力する。
図8の右側の一段階目の受信機421(2)は、中間信号S2'(=h
22
Ms
2
M+(h
21
Ms
1
M+h
23
Ms
3
M))を出力する。
図8の左側の一段階目の受信機421(3)は、中間信号S3'(=h
33
Ms
3
M+(h
31
Ms
1
M+h
32
Ms
2
M))を出力する。中間信号S1',S2',S3'の括弧で囲んだ信号成分は、残留している周辺マクロセルからの干渉信号である。
【0060】
図9は、一段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)の適用効果の一例を示す図である。一段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)411(1)~411(3)の適用により、各マクロセル基地局20(1)~20(3)にてスモールセル端末10(1-2)~10(3-2)からの干渉が抑圧されるので、複数
のHetNet構成を、スモールセル300(1)~300(3)が無く、マクロセル200(1)~200(3)のみが存在するセル構成とみなすことができる。各マクロセル基地局20(1)~20(3)には、周辺マクロセルに在圏しているマクロセル端末からの干渉信号のみが到達していると
みなすことができる。例えば、
図9に例示するように、中央のマクロセル基地局20(1)のアンテナ21には、自セル200(1)に在圏するマクロセル端末10(1-1)からの所望信号h
11
Mが到達するとともに、周辺マクロセル200(2),200(3)に在圏しているマクロセル端末10(2-1),10(3-1)からの干渉信号h
12
M
,h
13
Mが到達しているとみなすことができる。
【0061】
図10は、
図7のシステムにおける二段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)の一例を示す図である。
図10に例示するように、二段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)412では、一段階目の干渉キャンセル後のマクロセル基地局の信号を利用し、中心マクロセル基地局20(1)にて周辺マクロセル基地局20(2),20(3)からの干渉を抑圧する。
【0062】
二段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)412で用いる干渉キャンセルウェイトは、例えば、次の(1)~(4)の手順で求めることができる。
【0063】
(1)各マクロセル基地局20(1)~20(3)はそれぞれ、周辺マクロセルからの伝搬路応答を測定する。例えば周辺マクロセルの数がNMであれば、各マクロセル基地局はNMの伝搬路応答を測定する必要がある。
【0064】
(2)干渉抑圧装置412は、周辺マクロセル間の伝搬路応答h
ji
Mを集めて伝搬路応答行列H
Mを作成する。例えば周辺マクロセルの数N
M=4であれば、次式(6)の伝搬路応答行列H
Mが作成される。
【数6】
【0065】
(3)また、干渉抑圧装置412は、周辺マクロセルから中心マクロセルへの伝搬路応答h
1i
Mを集めて伝搬路応答行列h
0
Mを作成する。例えば周辺マクロセルの数N
M=4であれば、次式(7)の伝搬路応答行列h
0
Mが作成される。
【数7】
【0066】
干渉抑圧装置412は、周辺マクロセル間の伝搬路応答行列H
Mと周辺マクロセルから中心マクロセルへの伝搬路応答行列h
0
Mを用いて、干渉キャンセルウェイト(受信ウェイト)W
MCを次式(8)で決定する。例えば周辺マクロセルの数N
M=4であれば、次式(9)の干渉キャンセルウェイトW
MCが決定される。
【数8】
【数9】
【0067】
干渉キャンセルウェイトW
MCを用いて干渉が抑圧された干渉キャンセル後の受信信号S0は、次式(10)で表すことができる。ここで、式(10)中のx
0
Mは中心マクロセル基地局20(1)から干渉抑圧装置412に転送された受信信号、Xは周辺マクロ基地局から干渉抑圧装置412に転送された参照信号の行列、Tは転置を表している。
【数10】
【0068】
図11は、実施形態に係るシステムの複数HetNet構成における一段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)及び二段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)の適用効果の一例を示す図である。
図11に示すように、本実施形態の複数の一段階目の干渉抑圧装置411(1)~411(3)及び二段階目の干渉抑圧装置412を備える干渉キャンセルシステムを適用することにより、各マクロセル基地局の自セル内のスモールセル端末からの干渉信号S2及び周辺マクロセル端末からの干渉信号S3を抑圧し、マクロセル基地局の受信SINRを大幅に改善することができる。
【0069】
次に、本実施形態のシステムにおける二段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)412における信号処理量の削減について説明する。
【0070】
周辺マクロセル数の増大により、二段階目の干渉抑圧装置412における信号処理量が増大する。例えば、
図12(a)に示すように複数HetNet構成における周辺マクロセル数N
Mが6の場合、干渉キャンセルウェイト(受信ウェイト)W
MCは次式(11)で決定される。この場合、6×6の逆行列の計算を含む信号処理を行うことになる。
【数11】
【0071】
図12(b)に示すように複数HetNet構成における周辺マクロセル数が任意のN
Mの場合、干渉キャンセルウェイト(受信ウェイト)W
MCは次式(12)で決定される。この場合、N
M×N
Mの逆行列の計算を含む信号処理を行うことになる。周辺マクロセル数N
Mの増加により、二段階目の干渉抑圧装置412において干渉キャンセルウェイト(受信ウェイト)W
MCを決定するときにN
M×N
Mの逆行列の計算を含む信号処理量が増大する。すなわち、干渉キャンセルウェイト(受信ウェイト)のウェイト行列W
MCを生成するためにN
M×N
Mの伝搬路応答行列Hの逆行列H
-1を解く必要あり、周辺マクロセル数N
Mが大きくなるにつれ、逆行列H
-1の演算処理時間が増大する。
【数12】
【0072】
本実施形態のシステムでは、以下に示すように干渉キャンセルウェイト(受信ウェイト)WMCを決定するときの伝搬路を削減することによって信号処理量を低減している。
【0073】
本実施形態では、マクロセル間の距離及び伝搬路条件により、電力が届かないことがある点に着目し、次式(13)に示すように、電力が届かない伝搬路について、二段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)における干渉キャンセルウェイト(受信ウェイト)W
MCを決定するときの処理から省いている。
【数13】
【0074】
干渉キャンセルウェイト(受信ウェイト)WMCを決定するときの処理から削減する伝搬路の判定法としては、例えば次の判定法1~3がある。
判定法1:伝搬路応答の瞬時設定
判定法2:伝搬路応答の事前設定
判定法3:伝搬路応答の瞬時設定+伝搬路応答の事前設定
【0075】
[信号処理量低減方法1]
第1の信号処理量低減方法では、上記判定法1(伝搬路応答の瞬時設定)を用い、一定時間ごとに伝搬路応答を測定し、その電力の大きさにより伝搬路応答を設定する。
【0076】
例えば、
図13(a)に示すようにマクロセル200(i)、200(j)の間の距離が近い場合など、マクロセル間の干渉が大きい状況では、その干渉をキャンセルする必要があるため、干渉キャンセルウェイトの計算に用いる伝搬路応答行列における当該マクロセル間に対応する伝搬路応答h
jiは、推定時(測定時)の値をそのまま用いる。
【0077】
一方、
図13(b)に示すようにマクロセル200(i)、200(j)の間の距離が遠い場合など、マクロセル間の干渉が小さい状況では、干渉をキャンセルする必要がないため、干渉キャンセルウェイトの計算に用いる伝搬路応答行列における当該マクロセル間に対応する伝搬路応答h
jiを0(ゼロ)で近似する。
【0078】
図14(a)~
図14(c)は、第1の信号処理量低減方法において互いに異なる第1閾値γ
th
Mを設定した場合の伝搬路応答h
ji
Mの近似の具体例を示す図である。なお、
図14(a)~(c)は周辺マクロセルの数が4の場合の例であるが、周辺マクロセルの数は2、3又は5以上であってもよい。
【0079】
第1の信号処理量低減方法の具体例では、受信電力に対する所定の第1閾値γth
Mを設定しておき、関連する伝搬路応答hji
Mが測定され、伝搬路応答hji
Mの電力が第1閾値γth
Mより小さい場合又は第1閾値γth
M以下の場合、hji
M=0に近似する。
【0080】
図14(a)の例では、第1閾値γ
th
M=0[dB]が設定され、2番目のマクロセル基地局20(2)のアンテナには、3、4、5番のマクロセル200(3)、200(4)、200(5)に在圏する端末10(3-1)、10(4-1)、10(5-1)から信号が到来して干渉していると判定される。そのため、伝搬路応答h
23
M、h
24
M、h
25
Mの0(ゼロ)への近似は行われない。
【0081】
図14(b)の例では、第1閾値γ
th
M=10[dB]が設定され、2番目のマクロセル基地局20(2)のアンテナには、4番のマクロセル200(4)に在圏する端末10(4-1)から信号が到来していないと判定される。すなわち、|h
24
M|
2<γ
th
Mと判定されるため、伝搬路応答h
24
M=0(ゼロ)と近似される。一方、2番目のマクロセル基地局20(2)のアンテナには、3、5番のマクロセル200(3)、200(5)に在圏する端末10(3-1)、10(5-1)から信号が到来して干渉するため、伝搬路応答h
23
M、h
25
Mの0(ゼロ)への近似は行われない。
【0082】
図14(c)の例では、第1閾値γ
th
M=20[dB]が設定され、2番目のマクロセル基地局20(2)のアンテナには、4、5番のマクロセル200(4)、200(5)に在圏する端末10(4-1)、10(5-1)から信号が到来していないと判定される。すなわち、|h
24
M|
2<γ
th及び|h
25
M|
2<γ
thと判定されるため、伝搬路応答h
24
M=0(ゼロ)及びh
25
M=0(ゼロ)と近似される。一方、2番目のマクロセル基地局20(2)のアンテナには、3番のマクロセル200(3)に在圏する端末10(3-1)から信号が到来して干渉するため、伝搬路応答h
23
Mの0(ゼロ)の近似は行われない。
【0083】
図14(a)~(c)のように周辺マクロセルの数が4である複数HetNet構成において第1の信号処理量低減方法を適用しない場合、次式(14)に示す逆行列を計算するマクロセル間の伝搬路応答h
jiの伝搬路応答行列H
Mの逆行列を含む干渉キャンセルウェイトW
MCの計算式は、例えば次式(15)に示すようになる。
【数14】
【数15】
【0084】
一方、周辺マクロセルの数が4である複数HetNet構成において第1の信号処理量低減方法を適用した場合、干渉キャンセルウェイトW
MCの計算式は、例えば次式(16)に示すように疎行列になる。
【数16】
【0085】
上記式(16)中の伝搬路応答行列H
Mのような疎行列(0の要素が多い行列)では、逆行列を求める計算量が、次式(17)に示す元の行列(フル行列)よりも削減できる。0の要素数が多いほど逆行列を求める計算量の削減が可能である。このように、伝搬路応答行列H
Mの中の要素の多くを0に近似することにより、干渉キャンセルウェイト生成の計算量を削減することができる。
【数17】
【0086】
第1閾値γ
th
Mが小さい場合は、次式(18)の伝搬路応答行列Hに示すように、|h
ji|
2<γ
th
Mを満たす伝搬路応答が少なく、h
ji
M=0の近似ができる伝搬路応答が少ない。
【数18】
【0087】
第1閾値γ
th
Mを大きくしていくと、次式(19)の伝搬路応答行列H
Mに示すように、|h
ji
M|
2<γ
th
Mを満たす伝搬路応答が増加していき、h
ji
M=0の近似ができる伝搬路応答が増加し、伝搬路応答行列H
Mは疎行列になる。
【数19】
【0088】
更に第1閾値γ
th
Mを大きくしていくと、次式(20)の伝搬路応答行列H
Mに示すように、|h
ji
M|
2<γ
th
Mを満たす伝搬路応答が多くなり、h
ji
M=0の近似ができる伝搬路応答が増加し、伝搬路応答行列H
Mは更にゼロ要素が多い疎行列である対角行列になる。伝搬路応答行列H
Mが対角行列である場合、次式(21)に示すように伝搬路応答行列H
Mの逆行列の演算量を大幅に削減することができる。
【数20】
【数21】
【0089】
[信号処理量低減方法2]
第2の信号処理量低減方法では、マクロセル200間の距離及び伝搬路条件により、周辺マクロセルに在圏する端末から送信された信号が対象のマクロセルの基地局アンテナに十分な電力で届かないことがある点に着目し、端末10からの信号が十分な電力で届かない伝搬路については伝搬路応答の推定(測定)を行わないように、伝搬路応答の推定(測定)を行うマクロセルの組み合わせを予め決定しておく。
【0090】
例えば、
図15(a)に示すようにマクロセル200(i)、200(j)の間の距離が近い場合など、マクロセル端末から所定電力で信号が届くマクロセル間では、当該マクロセル間の伝搬路を無視できないので、伝搬路応答h
ji
Mを逐一推定(測定)する。
【0091】
一方、
図15(b)に示すようにマクロセル200(i)、200(j)の間の距離が遠い場合など、マクロセル端末から所定電力で信号が届きにくいマクロセル間では、当該マクロセル間の伝搬路応答h
ji
Mの推定(測定)を行わず、当該伝搬路応答h
ji
Mを予め0(ゼロ)に設定しておく。例えば、マクロセル間であらかじめ測定した干渉電力が小さい状況では、伝搬路応答h
ji
Mの推定を常時行わず、当該伝搬路応答h
ji
Mを予め0(ゼロ)に設定しておく。
【0092】
図16(a)~
図16(d)は、第2の信号処理量低減方法において互いに異なる第2閾値Γ
th
Mを設定した場合の伝搬路応答h
ji
Mの事前設定の具体例を示す図である。
図16(a)のセル設計時に、第2閾値Γ
th
M=0[dB]が設定された状態で、マクロセル基地局の受信信号に基づいて、マクロセル基地局とマクロセル端末との間の伝搬路応答h
ji
Mが予め推定される。図示の例では、マクロセル基地局20(2)とマクロセル端末との間の4つの伝搬路応答h
22
M、h
23
M、h
24
M、h
25
Mのうち、自セル以外の伝搬路応答h
23
M、h
24
M、h
25
Mが推定される。この推定された伝搬路応答h
23
M、h
24
M、h
25
Mそれぞれの電力の計算値(25[dB],12[dB]、15[dB])と予め設定した第2閾値Γ
th
Mとの比較結果に基づいて、運用開始時において当該伝搬路応答h
ji
Mの常時測定を行うか否かが決定される。なお、
図16(a)~(d)は周辺マクロセルの数が4の場合の例であるが、周辺マクロセルの数は2、3又は5以上であってもよい。
【0093】
図16(b)の例は、第2閾値Γ
th
M=10[dB]が設定された例である。本例では、セル設計時に推定したマクロセル基地局20(2)とマクロセル端末との間の伝搬路応答h
23
M、h
24
M、h
25
Mの電力がすべて第2閾値Γ
th(=0[dB])以上である。そのため、運用開始後においては、伝搬路応答h
22
M、h
23
M、h
24
M、h
25
Mのすべての常時測定が行われる。
【0094】
図16(c)の例は、第2閾値Γ
th
M=20[dB]が設定された例である。本例では、セル設計時に推定したマクロセル基地局とマクロセル端末との間の伝搬路応答h
23
M、h
24
M、h
25
Mのうち、伝搬路応答h
23
Mの電力が第2閾値Γ
th(=20[dB])以上であり、残りの伝搬路応答h
24
M、h
25
Mの電力が第2閾値Γ
th(=20[dB])未満である。そのため、運用開始後においては、2つの伝搬路応答h
22
M、h
23
Mの常時測定を行い、残りの伝搬路応答h
24
M、h
25
Mの常時測定は行わない。
【0095】
図16(d)の例は、第2閾値Γ
th
M=30[dB]が設定された例である。本例では、セル設計時に推定したマクロセル基地局とマクロセル端末との間の伝搬路応答h
23
M、h
24
M、h
25
Mのすべての電力が第2閾値Γ
th(=30[dB])未満である。そのため、運用開始後においては、伝搬路応答h
22
Mについてのみ常時測定を行い、伝搬路応答h
23
M、h
24
M、h
25
Mの常時測定は行わない。
【0096】
周辺マクロセルの数が4である複数HetNet構成において、
図16(a)~
図16(d)の第2の信号処理量低減方法を適用した場合、セル設計時に推定した自セル以外の伝搬路応答h
23
M、h
24
M、h
25
Mのうち、伝搬路応答h
23
M、h
24
M、h
25
Mそれぞれの電力の計算値が未満の伝搬路応答h
ji
Mを常時ゼロ(0)に設定することにより、当該伝搬路においてはパイロット信号を逐一測定する必要はない。また、常時ゼロ(0)に設定する伝搬路応答h
ji
Mの数が多くなるほど、測定(推定)すべき伝搬路応答h
ji
Mの総数が減り、複数HetNet構成全体での伝搬路応答の測定(推定)のための信号処理量が減る。
【0097】
第2の信号処理量低減方法において、第2閾値Γthが小さい場合は、|hji
M|2<Γthを満たす伝搬路応答が少なく、hji
M=0の設定が少ない。一方、第2閾値Γthが大きい場合は、hji
M<Γthを満たす伝搬路応答が多く、hji
M=0の設定が多い。
【0098】
例えば、周辺マクロセルの数が4である複数HetNet構成において、第2閾値Γ
thが小さい場合、次式(22)の伝搬路応答行列H
Mに示すように、要素数16の伝搬路応答のうち4個の伝搬路応答の推定(測定)処理を削減できる。すなわち、25%の伝搬路応答の推定(測定)処理を削減できる。
【数22】
【0099】
第2閾値Γ
thを大きくしていくと、次式(23)の伝搬路応答行列H
Mに示すように、要素数16の伝搬路応答のうち8個の伝搬路応答の推定(測定)処理を削減できる。すなわち、50%の伝搬路応答の推定(測定)処理を削減できる。
【数23】
【0100】
更に第2閾値Γ
thを大きくしていくと、次式(24)の伝搬路応答行列H
Mに示すように、要素数16の伝搬路応答のうち12個の伝搬路応答の推定(測定)処理を削減できる。すなわち、75%の伝搬路応答の推定(測定)処理を削減できる。
【数24】
【0101】
なお、上記信号処理量低減方法2の例では、セル設計時におけるマクロセル基地局の運用開始前に推定したマクロセル基地局とマクロセル端末との間の伝搬路応答hji
Mの電力の計算値が第2閾値Γth
M以下又は第2閾値Γth
M未満の伝搬路応答hji
Mをゼロに設定しているが、複数HetNet構成におけるマクロセル基地局20間の位置関係又はマクロセル200間の位置関係に基づいて、予めゼロに設定しておく伝搬路応答hji
Mを決定しておいてもよい。
【0102】
[信号処理量低減方法1、2の組み合わせ]
本実施形態のシステムにおいて、上記第1の信号処理量低減方法及び上記第2の信号処理量低減方法を組み合わせて実行してもよい。この場合は両者の相乗効果を得ることができる。
【0103】
まず、前述の信号処理量低減方法2により、セル設計時に、干渉電力が小さいマクロセルの伝搬路応答の推定を行わないで、伝搬路応答の推定(測定)を行うマクロセルの組み合わせを予め決定しておく。
【0104】
例えば、周辺マクロセルの数が4の場合、次式(25)に示すフル行列からなる伝搬路応答行列H
Mの16個の要素のうち、セル設計時に推定した伝搬路応答h
ji
Mの電力が第2閾値Γth以下の要素については、次式(26)に示すように該当する要素の伝搬路応答h
ji
Mをゼロ(h
ji=0)にし、運用開始後に当該伝搬路応答h
ji
Mの推定(測定)処理を行わないようにする。
【数25】
【数26】
【0105】
次に、運用開始後に、前述の信号処理量低減方法2により決められた組み合わせのマクロセルの伝搬路についてマクロセル端末からの受信電力Pを測定し、その受信電力Pが所定の第1閾値γth
Mよりも小さい場合は、該当する伝搬路応答をゼロ(0)で近似する前述の信号処理量低減方法1を実行する。
【0106】
例えば、運用開始後の所定の時間間隔Δtごとに、上記式(26)の伝搬路応答行列においてゼロ(0)以外の13個の要素について伝搬路応答h
ji
Mの推定(測定)処理を行い、その伝搬路応答h
ji
Mの電力が第1閾値γ
th
M以下の要素について、次式(27)に示すように該当する要素の伝搬路応答h
ji
Mをゼロ(h
ji
M=0)に近似する。
【数27】
【0107】
このように前述の第1の信号処理量低減方法及び第2の信号処理量低減方法を組み合わせることにより、各方法を単独で行う場合よりも伝搬路応答の推定(測定)のための信号処理量及び干渉キャンセルウェイトの生成の計算量を削減し、全体の計算量を削減することができる。
【0108】
[一段階目干渉キャンセラーの適宜利用]
図17は、複数HetNet構成におけるマクロセル基地局に周辺のスモールセルの端末から干渉が到来する様子の一例を示す図である。
図17において、マクロセル200(2)の内部にスモールセル300が無い場合やマクロセル基地局20(1)とスモールセル端末10(1-2)と間の距離が遠い場合、スモールセル端末10(1-2)からマクロセル基地局20に干渉電力が届かないことがある。この場合、スモールセル端末10(1-2)からマクロセル基地局20(1)への干渉を抑圧する一段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラー)411(1)を適用する必要はない。
【0109】
本実施形態の複数HetNet構成における複数のHetNetのそれぞれにおいて、HetNetのマクロセル基地局20の上り回線の受信信号に対するスモールセル300に在圏するスモールセル端末からの上り回線の干渉信号の電力が所定の閾値以下又は前記閾値未満の場合、前述の第一段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラー)411による干渉信号の抑圧を行わないようにしてもよい。
【0110】
例えば、
図18(a)に示すようにマクロセル基地局20(j)のアンテナ21とスモールセル300(i)のスモールセル端末10(i-2)との間の距離が近い場合など、マクロセル-スモールセル間の干渉が大きい状況では、その干渉をキャンセルする必要があるため、前述の第一段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラー)411を適用して干渉信号の抑圧を行う。
【0111】
一方、
図18(b)に示すようにマクロセル基地局20(j)のアンテナ21とスモールセル300(i)のスモールセル端末10(i-2)との間の距離が遠い場合など、マクロセル-スモールセル間の干渉が大きい状況では、干渉をキャンセルする必要がないため、前述の第一段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラー)411を適用しない。この場合、マクロセル基地局20(j)の受信信号は、そのまま二段階目の干渉抑圧装置(干渉キャンセラー)に用いられる。
【0112】
図19は、実施形態に係るシステムにおけるスモールセル端末からマクロセル基地局のアンテナへの干渉が小さい場合の一段階目の干渉抑圧装置(受信干渉キャンセラー)の処理の一例を示す図である。
図19において、あらかじめスモールセル端末10(1-2)からマクロセル基地局20(1)への干渉電力を測定する。スモールセル端末10(1-2)からの干渉が周辺マクロセル200(2)に在圏する周辺マクロセル端末10(2-1)からの干渉よりも小さい場合、一段階目の干渉抑圧装置411(1)で用いるウェイトを1に設定して一段階目キャンセラーを適用せず、マクロセル基地局20(1)の受信信号をそのまま二段階目の干渉抑圧装置412に入力して二段階目キャンセラーに適用する。
【0113】
図20は、実施形態に係るシステムにおける一段階目の干渉抑圧装置411の構成の一例を示すブロック図である。
図20において、一段階目の干渉抑圧装置411は、複数HetNet構成の各HetNet1Sにおいて、対象マクロセルの基地局20に対する一又は複数のスモールセル300に在圏する端末からの干渉を抑圧する装置である。干渉抑圧装置411は、例えばコンピュータ又はプロセッサで所定のプログラムが実行されることにより、対象のマクロセル基地局20に対する一又は複数(N)のスモールセル300(i)(i=1~N)に在圏する端末10(i-2)からの干渉を抑圧する。干渉抑圧装置411は、行列作成部4111とウェイト計算部4112と受信信号処理部4113とを備える。
【0114】
行列作成部4111は、一又は複数のスモールセル300に在圏する端末から対象のマクロセル基地局20のアンテナ21への第1伝搬路応答を推定し、その第1伝搬路応答を要素として含む第1伝搬路応答行列を作成し、一又は複数のスモールセル300に在圏する端末から一又は複数のスモールセル基地局30のアンテナ31への第2伝搬路応答を推定し、その第2伝搬路応答を要素として含む第2伝搬路応答行列を作成する。
【0115】
例えば、行列作成部4111は、複数のスモールセル300(i)のそれぞれに在圏する複数のスモールセル端末10(i-2)から送信されたパイロット信号を受信したマクロセル基地局20の受信信号(参照信号)に基づいて、複数のスモールセル端末10(i-2)からマクロセル基地局20のアンテナ21への複数の第1伝搬路応答hiを推定し、その複数の第1伝搬路応答hiを要素として含む第1伝搬路応答行列hを作成する。
【0116】
更に、行列作成部4111は、複数のスモールセル端末10(i-2)から送信されたパイロット信号を受信した複数のスモールセル基地局30(i)の受信信号(参照信号)に基づいて、複数のスモールセル端末10(i-2)から複数のスモールセル300(j)(j=1~N)の基地局30(j)のアンテナ31への複数の第2伝搬路応答hjiを推定し、その複数の第2伝搬路応答hjiを要素として含む第2伝搬路応答行列Hを作成する。
【0117】
更に、行列作成部4111は、前記逆行列H-1を計算する前の第2伝搬路応答行列Hに含まれる複数の第2伝搬路応答hjiのうち、所定の閾値γth以下又は閾値γth未満の大きさの電力を有する第2伝搬路応答をゼロにする。
【0118】
また、行列作成部4111で作成される第2伝搬路応答行列Hの複数の第2伝搬路応答hjiのうち、マクロセル上り回線の受信信号に対する干渉への寄与が小さいと予想される第2伝搬路応答hjiを予めゼロに設定しておいてもよい。例えば、複数のスモールセル基地局30(i)の運用開始前に複数の第2伝搬路応答hjiの推定を行い、その複数の第2伝搬路応答hjiのうち、第2伝搬路応答hjiの電力Pjiの計算値が所定の閾値Γth以下又は閾値Γth未満の第2伝搬路応答hjiをゼロに設定しておく。また例えば、複数のスモールセル基地局30(i)間の位置関係又は複数のスモールセル300(i)間の位置関係に基づいて、予めゼロに設定しておく第2伝搬路応答hjiを決定しておいてもよい。行列作成部41111は、第2伝搬路応答行列Hの複数の第2伝搬路応答hjiのうち、前記予めゼロに設定した第2伝搬路応答hjiの推定を行わない。
【0119】
また、前記マクロセル上り回線の受信信号に対する干渉への寄与が小さいと予想される第2伝搬路応答hjiを予めゼロに設定した場合、行列作成部4111は、更に、第2伝搬路応答行列Hの複数の第2伝搬路応答hjiのうち、前記予めゼロに設定した第2伝搬路応答hjiの推定を行わず、前記予めゼロに設定していない複数の第2伝搬路応答のうち、前記第2伝搬路応答の電力の計算値が所定の閾値γth以下又は閾値γth未満の第2伝搬路応答をゼロに修正してもよい。
【0120】
ウェイト計算部4112は、第2伝搬路応答行列Hの逆行列H-1を計算し、その第2伝搬路応答行列の逆行列H-1と第1伝搬路応答行列hとに基づいて、一又は複数のスモールセルの基地局のアンテナで受信した受信信号に適用する一又は複数の受信ウェイトWを計算する。
【0121】
例えば、ウェイト計算部4112は、第2伝搬路応答行列Hの逆行列H-1を計算し、その第2伝搬路応答行列の逆行列H-1と第1伝搬路応答行列hとに基づいて、複数のスモールセルの基地局30(i)のアンテナ31で受信した受信信号に適用する複数の受信ウェイトWiを計算する。
【0122】
受信信号処理部4113は、対象のマクロセルの基地局のアンテナで受信した受信信号と、一又は複数のスモールセルの基地局のアンテナで受信した複数の受信信号と、前記一又は複数の受信ウェイトとに基づいて、前記一又は複数のスモールセルに在圏する一又は複数の端末から対象のマクロセルの基地局の上り回線への干渉を抑圧する。
【0123】
例えば、受信信号処理部4113は、対象のマクロセル基地局20のアンテナ21で受信した受信信号X(0)と、複数のスモールセル基地局30(i)のアンテナ31で受信した複数の受信信号X(i)と、複数の受信ウェイトWiとに基づいて、複数のスモールセル端末10(i-2)から対象のマクロセル基地局20の上り回線への干渉を抑圧する。
【0124】
図21は、実施形態に係るシステムにおける二段階目の干渉抑圧装置412の構成の一例を示すブロック図である。
図21において、干渉抑圧装置412は、複数HetNet構成において、対象マクロセルの基地局20に対する一又は複数の周辺マクロセルに在圏する端末からの干渉を抑圧する装置である。干渉抑圧装置412は、例えばコンピュータ又はプロセッサで所定のプログラムが実行されることにより、対象のマクロセル基地局20に対する一又は複数(N)の周辺マクロセル200(i)(i=1~N)に在圏する端末10(i-1)からの干渉を抑圧する。干渉抑圧装置412は、行列作成部4121とウェイト計算部4122と受信信号処理部4123とを備える。
【0125】
行列作成部4121は、一又は複数の周辺マクロセルのそれぞれに在圏するマクロセル端末から対象のマクロセルの基地局のアンテナへの第3伝搬路応答を推定し、その第3伝搬路応答を要素として含む第3伝搬路応答行列を作成し、一又は複数の周辺マクロセルに在圏するマクロセル端末から一又は複数の周辺マクロセルの基地局のアンテナへの第4伝搬路応答を推定し、その第4伝搬路応答を要素として含む第4伝搬路応答行列を作成する。
【0126】
例えば、行列作成部4121は、複数の周辺マクロセル(他セル)200(i)のそれぞれに在圏する複数のマクロセル端末10(i-1)から送信されたパイロット信号を受信した対象のマクロセル基地局20の受信信号(参照信号)に基づいて、複数のマクロセル端末10(i-1)から対象のマクロセル基地局20のアンテナ21への複数の第3伝搬路応答hiを推定し、その複数の第3伝搬路応答hiを要素として含む第3伝搬路応答行列hを作成する。
【0127】
更に、行列作成部4121は、複数のマクロセル端末10(i-1)から送信されたパイロット信号を受信した複数の周辺マクロセル基地局20(i)の受信信号(参照信号)に基づいて、複数のマクロセル端末10(i-1)から複数のマクロセル200(j)(j=1~N)の基地局20(j)のアンテナ21への複数の第4伝搬路応答hjiを推定し、その複数の第4伝搬路応答hjiを要素として含む第4伝搬路応答行列Hを作成する。
【0128】
更に、行列作成部4121は、前記逆行列H-1を計算する前の第4伝搬路応答行列Hに含まれる複数の第4伝搬路応答hjiのうち、所定の閾値γth以下又は閾値γth未満の大きさの電力を有する第4伝搬路応答をゼロにする。
【0129】
また、行列作成部4121で作成される第4伝搬路応答行列Hの複数の第4伝搬路応答hjiのうち、マクロセル上り回線の受信信号に対する干渉への寄与が小さいと予想される第4伝搬路応答hjiを予めゼロに設定しておいてもよい。例えば、複数の周辺マクロセル基地局20(i)の運用開始前に複数の第4伝搬路応答hjiの推定を行い、その複数の第4伝搬路応答hjiのうち、第4伝搬路応答hjiの電力Pjiの計算値が所定の閾値Γth以下又は閾値Γth未満の第4伝搬路応答hjiをゼロに設定しておく。また例えば、複数の周辺マクロセル基地局20(i)間の位置関係又は複数のマクロセル200(i)間の位置関係に基づいて、予めゼロに設定しておく第4伝搬路応答hjiを決定しておいてもよい。行列作成部4121は、第4伝搬路応答行列Hの複数の第4伝搬路応答hjiのうち、前記予めゼロに設定した第4伝搬路応答hjiの推定を行わない。
【0130】
また、前記マクロセル上り回線の受信信号に対する干渉への寄与が小さいと予想される第4伝搬路応答hjiを予めゼロに設定した場合、行列作成部4121は、更に、第4伝搬路応答行列Hの複数の第4伝搬路応答hjiのうち、前記予めゼロに設定した第4伝搬路応答hjiの推定を行わず、前記予めゼロに設定していない複数の第4伝搬路応答のうち、前記第4伝搬路応答の電力の計算値が所定の閾値γth以下又は閾値γth未満の第4伝搬路応答をゼロに修正してもよい。
【0131】
ウェイト計算部4122は、第4伝搬路応答行列Hの逆行列H-1を計算し、その第4伝搬路応答行列の逆行列H-1と第3伝搬路応答行列hとに基づいて、一又は複数の周辺マクロセルの基地局のアンテナで受信した受信信号に適用する一又は複数の受信ウェイトWを計算する。
【0132】
例えば、ウェイト計算部4122は、第4伝搬路応答行列Hの逆行列H-1を計算し、その第4伝搬路応答行列の逆行列H-1と第3伝搬路応答行列hとに基づいて、複数の周辺マクロセルの基地局20(i)のアンテナ21で受信した受信信号に適用する複数の受信ウェイトWiを計算する。
【0133】
受信信号処理部4123は、対象のマクロセルの基地局のアンテナで受信した受信信号と、一又は複数の周辺マクロセルの基地局のアンテナで受信した複数の受信信号と、前記一又は複数の受信ウェイトとに基づいて、前記一又は複数の周辺マクロセルに在圏する一又は複数の端末から対象のマクロセルの基地局の上り回線への干渉を抑圧する。
【0134】
例えば、受信信号処理部4123は、対象のマクロセル基地局20のアンテナ21で受信した受信信号X(0)と、複数の周辺マクロセルの基地局20(i)のアンテナ21で受信した複数の受信信号X(i)と、複数の受信ウェイトWiとに基づいて、複数の周辺マクロセルの端末10(i-1)から対象のマクロセル基地局20の上り回線への干渉を抑圧する。
【0135】
以上、本実施形態によれば、マクロセル200内に一又は複数のスモールセル300を配置したHetNet1Sがセルラー状に複数配置された構成において、HetNet1S内のマクロセル基地局20のアンテナ21が受信する上り回線の受信信号に対するスモールセル300に在圏する端末10からの干渉の抑制することができるとともに、HetNet1Sのマクロセル基地局20のアンテナ21が受信する上り回線の受信信号に対する周辺のHetNet1Sのマクロセル200に在圏する端末10からの干渉の抑制することができる。
【0136】
また、本実施形態によれば、干渉の抑制のための受信ウェイト計算のための信号処理量を低減、また計算に必要なセル全体での第2伝搬路応答の測定数を削減することができる。
【0137】
本発明は、マクロセル内に一又は複数のスモールセルを配置したHetNetがセルラー状に複数配置された構成においてマクロセル上り回線受信干渉を抑制可能なシステムを提供できるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0138】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにシステム、干渉抑圧装置、無線装置、基地局、無線中継局(フィーダ局)及び端末(ユーザ装置、移動局、移動機)の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの処理工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0139】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種の無線通信装置、無線中継装置、NodeB、サーバ、ゲートウェイ、交換機、コンピュータ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0140】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0141】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であれよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0142】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0143】
10 :端末
20 :マクロセル基地局
20(1) :中心マクロセル基地局
20(2),20(3) :周辺マクロセル基地局
21 :アンテナ
30 :スモールセル基地局
31 :アンテナ
40 :集中BBU
50 :通信回線
200 :マクロセル
300 :スモールセル
400 :協調制御ネットワーク
401(1)~401(3) :一段階目の協調制御ネットワーク
402 :二段階目の協調制御ネットワーク
410 :干渉抑圧装置
411(1)~411(3) :一段階目の干渉抑圧装置
4111 :行列作成部
4112 :ウェイト計算部
4113 :受信信号処理部
412 :二段階目の干渉抑圧装置
4121 :行列作成部
4122 :ウェイト計算部
4123 :受信信号処理部
420 :受信機
421(1)~421(3) :一段階目の受信機
430 :受信機
【要約】
【課題】第1セル内に小さいサイズの一又は複数の第2セルが配置されたHetNetがセルラー状に複数配置された構成において、HetNet内及びHetNet間の上り回線の干渉を抑制することができるシステムを提供する。
【解決手段】システムは、複数のHetNetのそれぞれにおいてHetNetの第1セルの第1基地局の上り回線の受信信号に対する第2セルに在圏する端末からの上り回線の干渉信号を抑圧する複数の第一段階目の干渉抑圧装置と、複数のHetNetのそれぞれについて、第一段階目の干渉抑圧装置による干渉信号の抑圧が行われた後の一のHetNetの第1セルの第1基地局の上り回線の受信信号に対する他のHetNetの第1セルに在圏する端末からの上り回線の干渉信号を抑圧する第二段階目の干渉抑圧装置とを備える。
【選択図】
図7