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特許7524397駐車場システム、駐車場システムの運用方法、及び駐車場システムの運用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】駐車場システム、駐車場システムの運用方法、及び駐車場システムの運用プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240722BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240722BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240722BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240722BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240722BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20240722BHJP
   B60L 53/80 20190101ALI20240722BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20240722BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20240722BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240722BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240722BHJP
   G16Y 20/30 20200101ALI20240722BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240722BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H02J7/00 P
H01M10/44 P
H01M10/48 P
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L53/14
B60L53/80
B60L58/13
B60L58/16
G16Y40/20
G16Y20/20
G16Y20/30
G16Y10/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023071420
(22)【出願日】2023-04-25
(62)【分割の表示】P 2019168411の分割
【原出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2023099559
(43)【公開日】2023-07-13
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有美
(72)【発明者】
【氏名】森田 朋和
(72)【発明者】
【氏名】杉山 暢克
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/087018(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/124070(WO,A1)
【文献】特開2017-130417(JP,A)
【文献】特開2013-074703(JP,A)
【文献】特開2002-092140(JP,A)
【文献】特開2012-247308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
B60L 3/00
B60L 50/60
B60L 53/14
B60L 53/80
B60L 58/13
B60L 58/16
G16Y 40/20
G16Y 20/20
G16Y 20/30
G16Y 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に接続された二次電池に対して充電及び放電を行うことが可能な充放電回路、及び、前記充放電回路を制御するプロセッサを備え、駐車場に設置される電池制御装置と、
前記二次電池として第1の二次電池が搭載され、前記駐車場に駐車した後に前記第1の二次電池が前記充放電回路に電気的に接続される第1の車両と、
を具備し、
前記プロセッサは、
前記充放電回路に電気的に接続されている前記第1の二次電池について、SOC(State Of Charge)を含む前記第1の二次電池に関する情報を取得し、
前記第1の二次電池の前記SOCが第1の閾値以下であることを含む前記第1の二次電池に関する診断実施条件を満足するか否かを、前記第1の二次電池に関する情報に基づいて判定し、
前記診断実施条件が満足すると判定された場合に、前記第1の二次電池を前記第1の閾値以下に設定される充電開始SOCまで放電又は充電してから、前記充電開始SOCまでの放電又は充電に連続させて充電するよう前記充放電回路を制御し、
前記第1の二次電池が前記充電開始SOCから充電されている間に前記第1の二次電池の電圧と電流との計測データを取得し、
前記計測データに基づいて前記第1の二次電池の内部状態パラメータを推定し、
前記第1の二次電池の内部状態パラメータの推定値に基づいて前記第1の二次電池の劣化状態を診断
前記診断実施条件が満足すると判定され、かつ前記充放電回路に前記第1の車両とは異なる第2の車両に搭載された第2の二次電池が電気的に接続されている場合に、前記充電開始SOCまで前記第1の二次電池から放電された電力によって前記第2の二次電池を充電するよう前記充放電回路を制御する、
駐車場システム
【請求項2】
前記プロセッサは、前記第1の二次電池の前記SOCが前記第1の閾値以下であるか否かに加えて、前記第1の二次電池に対する劣化状態の診断の実施履歴に基づいて前記診断実施条件を満足するか否かを判定する、請求項1に記載の駐車場システム
【請求項3】
前記診断実施条件は、前記第1の二次電池の前記SOCが前記第1の閾値以下であることに加えて、前記第1の二次電池に対する劣化状態の診断が最後に行われてからの経過時間が第2の閾値を超えることを含む、請求項1に記載の駐車場システム
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第1の二次電池が少なくとも1つの診断項目について基準を満たさないと診断された場合に、前記第1の二次電池の使用停止又はリユースが推奨されることを報知する、請求項1に記載の駐車場システム
【請求項5】
前記リユースが推奨されることを報知することは、前記第1の二次電池のリユースプログラムを報知することを含む、請求項に記載の駐車場システム
【請求項6】
前記リユースプログラムは、リユースの種別、リユースに関わる金額、及びリユースの期限のうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の駐車場システム
【請求項7】
前記第1の二次電池が搭載される第1の車両は、利用者に貸し出され、
前記第1の二次電池は、前記第1の車両が前記利用者から返却された後に前記充放電回路に電気的に接続され、
前記プロセッサは、前記第1の二次電池が少なくとも1つの診断項目の各々について基準を満たすと診断された場合に、前記第1の車両の貸し出し準備が整ったことを報知する、
請求項に記載の駐車場システム
【請求項8】
前記プロセッサは、前記計測データによって表される前記第1の二次電池の充電曲線を解析して前記内部状態パラメータを推定する、請求項1に記載の駐車場システム
【請求項9】
第1の二次電池が搭載された第1の車両が駐車場に駐車された後、前記駐車場に設置され、かつ電気的に接続された二次電池に対して充電及び放電を行うことが可能な充放電回路に、前記第1の二次電池が電気的に接続されている状態において、前記第1の二次電池について、SOCを含む前記第1の二次電池に関する情報を取得することと、
前記第1の二次電池の前記SOCが閾値以下であることを含む前記第1の二次電池に関する診断実施条件を満足するか否かを、前記第1の二次電池に関する情報に基づいて判定することと、
前記診断実施条件が満足すると判定された場合に、前記第1の二次電池を前記閾値以下に設定される充電開始SOCまで放電又は充電してから、前記充電開始SOCまでの放電又は充電に連続させて充電するよう前記充放電回路を制御することと、
前記第1の二次電池が前記充電開始SOCから充電されている間に前記第1の二次電池の電圧と電流との計測データを取得することと、
前記計測データに基づいて前記第1の二次電池の内部状態パラメータを推定することと、
前記第1の二次電池の内部状態パラメータの推定値に基づいて前記第1の二次電池の劣化状態を診断することと
前記診断実施条件が満足すると判定され、かつ前記充放電回路に前記第1の車両とは異なる第2の車両に搭載された第2の二次電池が電気的に接続されている場合に、前記充電開始SOCまで前記第1の二次電池から放電された電力によって前記第2の二次電池を充電するよう前記充放電回路を制御することと、
を具備する、駐車場システムの運用方法
【請求項10】
コンピュータに、
第1の二次電池が搭載された第1の車両が駐車場に駐車された後、前記駐車場に設置され、かつ電気的に接続された二次電池に対して充電及び放電を行うことが可能な充放電回路に、前記第1の二次電池が電気的に接続されている状態において、前記第1の二次電池について、SOCを含む前記第1の二次電池に関する情報を取得させ、
前記第1の二次電池の前記SOCが閾値以下であることを含む前記第1の二次電池に関する診断実施条件を満足するか否かを、前記第1の二次電池に関する情報に基づいて判定させ、
前記診断実施条件が満足すると判定された場合に、前記第1の二次電池を前記閾値以下に設定される充電開始SOCまで放電又は充電してから、前記充電開始SOCまでの放電又は充電に連続させて充電するよう前記充放電回路を制御させ、
前記第1の二次電池が前記充電開始SOCから充電されている間に前記第1の二次電池の電圧と電流との計測データを取得させ、
前記計測データに基づいて前記第1の二次電池の内部状態パラメータを推定させ、
前記第1の二次電池の内部状態パラメータの推定値に基づいて前記第1の二次電池の劣化状態を診断させ、
前記診断実施条件が満足すると判定され、かつ前記充放電回路に前記第1の車両とは異なる第2の車両に搭載された第2の二次電池が電気的に接続されている場合に、前記充電開始SOCまで前記第1の二次電池から放電された電力によって前記第2の二次電池を充電するよう前記充放電回路を制御させる、
駐車場システムの運用プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、駐車場システム、駐車場システムの運用方法、及び駐車場システムの運用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車分野では、ガソリン車から、より環境負荷が小さいとされる電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV)への転換が世界的に推進されている。このため、EV市場は拡大し、充電インフラも拡充されていくと見込まれる。他方、シェアリングエコノミーが世界的に広がりつつある。例えば、自動車分野では、カーシェアリング、ライドシェアリングが注目を集めている。これらを勘案すると、将来的に、EVを対象とするカーシェアリング、すなわちEVシェアリングが普及する可能性がある。
【0003】
EVは、例えばリチウムイオンバッテリ(LIB)などの二次電池から放電される電力をエネルギー源として走行する。LIBは、サイクル劣化に伴い安全性が低下する事例が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-156739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、二次電池の劣化状態を適時に診断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、駐車場システムは、電池制御装置及び第1の車両を備え、電池制御装置は、電気的に接続された二次電池に対して充電及び放電を行うことが可能な充放電回路と、充放電回路を制御するプロセッサとを含む。電池制御装置は、駐車場に設置される。第1の車両には、二次電池として第1の二次電池が搭載され、第1の車両が駐車場に駐車した後に第1の二次電池が充放電回路に電気的に接続される。プロセッサは、充放電回路に電気的に接続されている第1の二次電池について、SOCを含む第1の二次電池に関する情報を取得し、第1の二次電池のSOCが第1の閾値以下であることを含む第1の二次電池に関する診断実施条件を満足するか否かを、第1の二次電池に関する情報に基づいて判定し、診断実施条件が満足すると判定された場合に、第1の二次電池を第1の閾値以下に設定される充電開始SOCまで放電又は充電してから、充電開始SOCまでの放電又は充電に連続させて充電するよう充放電回路を制御し、第1の二次電池が充電開始SOCから充電されている間に第1の二次電池の電圧と電流との計測データを取得し、計測データに基づいて第1の二次電池の内部状態パラメータを推定し、第1の二次電池の内部状態パラメータの推定値に基づいて第1の二次電池の劣化状態を診断する。プロセッサは、診断実施条件が満足すると判定され、かつ充放電回路に第1の車両とは異なる第2の車両に搭載された第2の二次電池が電気的に接続されている場合に、充電開始SOCまで第1の二次電池から放電された電力によって第2の二次電池を充電するよう充放電回路を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る電池制御装置を例示するブロック図。
図2図1の電池制御装置を含む駐車場システムの外観を例示する図。
図3】EV搭載二次電池を定置用蓄電池としてリユースする二次電池リユースシステムを例示する図。
図4図1の電池制御装置の動作を例示するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態の説明を述べる。なお、以降、説明済みの要素と同一又は類似の要素には同一又は類似の符号を付し、重複する説明については基本的に省略する。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る電池制御装置を例示するブロック図である。図1に例示されるように、実施形態に係る電池制御装置100は、充放電回路101と、電池情報取得部102と、診断実施条件判定部103と、診断実施履歴記憶部104と、充放電制御部105と、計測データ取得部106と、内部状態推定部107と、パラメータ記憶部108と、安全性診断部109と、基準データ記憶部110と、管理情報報知部111とを有する。
【0010】
充放電回路101は、当該充放電回路101に電気的に接続された二次電池に対して充電及び放電を行うことが可能である。具体的には、充放電回路101は、充放電制御部105からの制御に従って、かかる二次電池に対して充電又は放電を行う。充放電回路101は、図示されない外部電源と電気的に接続されており、外部電源から二次電池へ、又はその逆に流れる電流を制御することで、二次電池を充放電する。ある一例では、充放電回路101に、接続された二次電池の正極端子及び負極端子の間の電圧を測定可能な電圧計、及び、接続された二次電池を流れる電流を測定可能な電流計が、設けられる。また、充放電回路101に、接続された二次電池の温度を測定可能な温度センサが設けられてもよい。また、別のある一例では、充放電回路101に接続された二次電池が搭載される機器に、前述の電流計、電圧計及び温度センサが、設けられる。
【0011】
ここで、二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池、又は複数の非水電解質二次電池を有する組電池を意味し得る。また、二次電池は、機器から取り外されてから充放電回路101に電気的に接続されてもよい(交換式)し、機器に搭載されたまま充放電回路101に電気的に接続されてもよい。
【0012】
二次電池を搭載する機器は、典型的には、当該二次電池から放電される電力をエネルギー源とする車両であるが、これに限られず例えばドローン、スマートフォンであってもよい。車両は、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、電動バイク、などであり得る。
【0013】
二次電池を搭載する機器がこれらの車両である場合に、電池制御装置100は図2に例示されるように駐車場に設置される充電インフラ、例えば充電スタンド、に含まれ得る。図2は、図1の電池制御装置を含む駐車場システムの外観を例示する図である。この電池制御装置100は、EV 10が駐車場に駐車して当該EV 10に搭載された二次電池が充放電回路101に電気的に接続された後に、当該二次電池に対して充電を行い、さらに条件付きで当該二次電池の安全性及び劣化状態を診断する。このように駐車場に設置された単体又は複数の電池制御装置100を駐車場システムと呼ぶこともできる。複数の電池制御装置100の充放電回路101は電力網を共有してもよく、ある充放電回路101から他の充放電回路101へ電力を融通してもよい。
【0014】
なお、駐車場は、例えばコインパーキング又は無料駐車場などの広く一般利用者向けの駐車場に限られず、例えば、ショッピングセンター、マンション、工場、タクシーの営業所、バスの操車場などの特定の利用者向けの駐車場を含み得る。
【0015】
また、二次電池を搭載する機器は、複数の利用者への貸し出しサービスに用いられてもよい。一例として、二次電池を搭載する機器は、EVシェアリングサービスに用いられるEVであり得る。この場合に、二次電池は、当該二次電池を搭載する機器が利用者から返却された後に、充放電回路101に電気的に接続されることになる。
【0016】
なお、充放電回路101は、複数の二次電池を電気的に接続可能であってもよい。かかる場合に、充放電回路101は、充放電制御部105からの制御に従って、一方の二次電池から放電される電力によって他方の二次電池を充電することもできる。
【0017】
電池情報取得部102は、充放電回路101による充放電の対象となる二次電池に関する情報(以降、電池情報と称する)を取得する。電池情報は、例えば、二次電池を識別する識別子、及び/又は二次電池のSOC(State Of Charge)若しくはこれを推定するための材料となる情報を含み得る。電池情報取得部102は、取得した電池情報を診断実施条件判定部103へ送る。なお、二次電池のSOCを推定するための材料となる情報としては、前述した電流計によって測定される電流、及び、二次電池の充放電の履歴等が挙げられる。
【0018】
二次電池、又は当該二次電池を搭載した機器(例えば車両)に、当該二次電池の識別子をコード化したバーコードが貼り付け又は印刷されていてもよい。この場合に、電池情報取得部102は、例えばカメラによって撮影された画像データに映ったバーコードをデコードすることで、二次電池の識別子を取得できる。
【0019】
或いは、バーコードの代わりに識別子そのものが二次電池、又は当該二次電池を搭載した機器に、貼り付け又は印刷されていてもよい。この場合に、電池情報取得部102は、例えばカメラによって撮影された画像データに映った識別子に対してOCR(Optical Character Recognition)処理を行うことで、二次電池の識別子を取得できる。
【0020】
また、二次電池、又は当該二次電池を搭載した機器に、当該二次電池の識別子を送信するRFIDタグが取り付けられていてもよい。この場合に、電池情報取得部102は、例えば通信I/F(インタフェース)によって受信された二次電池の識別子を取得できる。
【0021】
二次電池のSOCは、例えば、当該二次電池に接続されたコントローラ、又は当該二次電池を搭載した機器(例えば車両)によって算出され、外部装置へ送信され得る。この場合に、電池情報取得部102は、例えば通信I/Fによって受信された二次電池のSOCを取得できる。
【0022】
或いは、二次電池のSOCの代わりに、当該二次電池を搭載した機器の駆動時間、走行距離、などの機器の運用履歴に関する情報が当該機器に保存され、外部装置へ送信され得る。この場合に、電池情報取得部102は、例えば通信I/Fによって受信された機器の運用履歴に関する情報に基づいて、二次電池のSOCを推定してもよい。電池情報取得部102は、二次電池のSOCを推定するために、例えば二次電池を搭載した機器の駆動時間又は走行距離と、当該二次電池のSOCとの関係を表す関数を利用してもよい。かかる関数は、例えば実験及び/又はシミュレーションの結果に基づいて予め定義され得る。
【0023】
診断実施条件判定部103は、充放電回路101に電気的に接続されている二次電池(以降、対象電池とも称する)の電池情報を電池情報取得部102から受け取り、当該対象電池に関する診断実施条件が満足するか否かを当該電池情報に基づいて判定する。診断実施条件判定部103は、対象電池に関する診断実施条件の満足/不満足の判定結果を充放電制御部105へ送る。
【0024】
後述されるように、対象電池の安全性診断に先立って行われる内部状態パラメータの推定は、当該対象電池を所定の充電開始SOCから充電したときの計測データを用いる。故に、充電開始SOCを低く設定するほど、計測データが充実するので、後述するパラメータを精度良く推定し、信頼性の高い安全性診断を行うことができる。他方、対象電池のSOCが充電開始SOCを超える場合には、両者の差の分だけ対象電池を放電する必要があり、電力の無駄が生じ得る。また、二次電池は例えば1日に1度程度の周期で充電されるであろうが、二次電池は通常はかかる周期に比べて緩やかに劣化するので、二次電池の安全性診断はその充電の度に行わずとも十分である可能性がある。
【0025】
具体的には、診断実施条件判定部103は、診断実施条件が満足する否かを、対象電池に対する安全性診断の実施履歴、及び/又は対象電池のSOCに基づいて判定し得る。診断実施条件は、対象電池に対する安全性診断が最後に行われてからの経過時間が閾値、例えば3ヶ月、を超えること、を含んでもよい。また、診断実施条件は、対象電池のSOCが閾値、例えば20%、以下であること、を含んでもよい。さらに、診断実施条件は、対象電池に対する安全性診断が最後に行われてからの経過時間が閾値、例えば1ヶ月/2ヶ月、を超え、かつ、対象電池のSOCが閾値、例えば30%/40%、以下であること、を含んでもよい。なお、一例として、このような経過時間及びSOCの両方に関する診断実施条件は、経過時間に関する閾値が大きいほど、SOCに関する閾値も大きくなるように定められ得る。
【0026】
診断実施条件判定部103は、診断実施履歴記憶部104から対象電池に対する安全性診断の実施履歴を読み出してもよい。ここで、診断実施履歴記憶部104は、二次電池の識別子と、当該二次電池に対する安全性診断の実施履歴とを関連付けるデータベースを保存し得る。この場合に、診断実施条件判定部103は、対象電池の識別子をキーとして、当該対象電池に対する安全性診断が最後に行われた日、又は時間を表すデータを診断実施履歴記憶部104から検索できる。
【0027】
ここで、実施履歴は、少なくとも二次電池に対する安全性診断が最後に行われた日、又は時間を含む。その他、実施履歴は、二次電池に対して過去に行われた安全性診断の結果、当該安全性診断の元となる内部状態パラメータ/電池特性パラメータの推定結果、当該内部状態パラメータ/電池特性パラメータの推定の元となる計測データ、後述される管理情報報知部111によって提示された情報、などを含んでもよい。
【0028】
診断実施履歴記憶部104は、前述のように、二次電池の識別子と、当該二次電池に対する安全性診断の実施履歴とを関連付けるデータベースを保存し得る。なお、診断実施履歴記憶部104は、電池制御装置100からネットワーク経由で接続可能なサーバに設けられてもよい。この場合に、電池制御装置100は、この診断実施履歴記憶部104に、所望の識別子に対応付けられる二次電池に対する安全性診断の実施履歴の検索をネットワーク経由で要求してもよい。これにより、異なる電池制御装置100によって実施された安全性診断の履歴を集中管理することが可能となる。診断実施履歴記憶部104に保存される安全性診断の実施履歴は、電池制御装置100に含まれる種々の機能部によって更新され得る。
【0029】
充放電制御部105は、診断実施条件判定部103から対象電池に関する診断実施条件の満足/不満足の判定結果を受け取る。診断実施条件が満足すると判定された場合に、充放電制御部105は、対象電池を所定の充電開始SOCまで放電してから充電するように充放電回路101を制御する。なお、対象電池のSOCが所定の充電開始SOCより低い場合は、放電が行われなれず、所定の充電開始SOCまで対象電池が充電される。他方、診断実施条件が満足しないと判定された場合に、充放電制御部105は、対象電池を単に充電するように充放電回路101を制御してもよい。
【0030】
ここで、充電開始SOCは、例えば20%などに定められる。充電開始SOCは、対象電池に関わらず共通であってもよいし、対象電池間で異なっていてもよい。後者の場合に、充電開始SOCは、対象電池の種別(例えば活物質の構成)、対象電池に対する安全性診断の実施履歴、などに依存して可変であってもよい。また、所定の充電開始SOCからの充電は、例えば電流値1C以下のように定められる。充電開始SOCおよび充電電流の条件は、二次電池の特性および内部状態推定部の方法が許容できる範囲内で決定される。
【0031】
また、対象電池に関する診断実施条件が満足すると判定され、かつ充放電回路101に充電を必要とする別の二次電池が電気的に接続されている場合に、充放電制御部105は、当該対象電池を所定の充電開始SOCまで放電するときに、当該対象電池から放電された電力によってこの別の二次電池を充電するように充放電回路101を制御してもよい。これにより、対象電池の放電に伴う電力の浪費を抑制することができる。例えば、駐車場システムに含まれる電池制御装置100の診断実施条件判定部103が、あるEVに搭載された対象電池に関する診断条件が満足すると判定し、かつ当該電池制御装置100の充放電回路101に充電を必要とする、別のEVに搭載された二次電池が電気的に接続されている場合に、当該電池制御装置100の充放電制御部105は、当該対象電池を所定の充電開始SOCまで放電するときに、当該対象電池から放電された電力によってこの別の二次電池を充電するように充放電回路101を制御してもよい。なお、駐車場システムにおいて電池制御装置100が行う前述の充放電回路101の制御は、二次電池が搭載される機器が車両以外である場合でも、適用可能である。すなわち、二次電池がそれぞれに搭載される複数の機器が設けられる充放電システムであれば、電池制御装置100が行う前述の充放電回路101の制御は、適用可能である。
【0032】
さらに、かかる効率的な充電の実施率を高めるために、例えば、第1の二次電池に関する診断実施条件が満足しないと判定された場合に、充放電制御部105は、診断実施条件が満足すると判定される第2の二次電池が出現するまで第1の二次電池の充電を待機してもよい。なお、この待機時間には、第1の二次電池の充電に要する時間、第1の二次電池の次の使用予定、などに基づいて上限が定められてよい。これにより、第1の二次電池に求められる使用サイクルを乱すことなく、第2の二次電池から放電される電力を積極的に利用して第1の二次電池を充電することが可能となる。
【0033】
計測データ取得部106は、例えば、対象電池が充電されている間の複数時点における当該対象電池の電気的特性の計測結果を表す計測データを、当該対象電池から又は充放電回路101を介して取得する。充電開始SOCから対象電池が充電されている間に計測データ取得部106によって取得される計測データには、対象電池の電圧と電流の充電時間に対する関係を表す計測データが含まれる。ここで、電気的特性は、電圧計によって測定可能な対象電池の正極端子及び負極端子の間の電圧と、電流計によって測定可能な対象電池を流れる電流とを含む。また、電気的特性は、温度センサによって測定可能な対象電池の温度を含む。計測データの取得は、二次電池を充放電回路に接続した時点から、所定の充電開始SOCまで放電または充電し、充電が完了後に充放電回路から取り外すまでの間で必要に応じて適宜行うことができる。計測データ取得部106は、取得した計測データを内部状態推定部107へ送る。
【0034】
内部状態推定部107は、計測データ取得部106から計測データを受け取り、これに基づいて対象電池の内部状態パラメータを推定する。具体的には、内部状態推定部107は、対象電池の電圧と電流の充電時間に対する関係を表す計測データを解析する。ある一例では、内部状態推定部107は、計測データによって表される対象電池の充電曲線に対する解析、すなわち充電曲線解析、を行い得る。内部状態パラメータは、例えば、正極容量(又は正極質量)、負極容量(又は負極質量)、正極の初期充電量、負極の初期充電量、及び内部抵抗の一部又は全部を含み得る。
【0035】
さらに、内部状態推定部107は、推定した内部状態パラメータに基づいて対象電池の電池特性パラメータを推定してもよい。電池特性パラメータは、例えば、開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)、OCV曲線、及び電池容量の一部又は全部を含み得る。さらに、前述の内部抵抗は、電池特性パラメータにも含められてよい。ここで、OCV曲線は、対象電池のOCV以外の何らかの指標、例えば内部状態パラメータ又は電池特性パラメータ、と、対応するOCVとの関係を示す関数を表す。電池容量は、正極容量の範囲、すなわち正極の初期充電量から上限充電量までの範囲、と、負極容量の範囲、すなわち負極の初期充電量から上限充電量までの範囲、との重複部分に対応する。
【0036】
内部状態推定部107は、必要なパラメータをパラメータ記憶部108から読み出し、内部状態パラメータ及び電池特性パラメータの推定に用いてもよい。例えば、正極のSOCに対応する正極の開回路電位(OCP:Open Circuit Potential)を返す関数、負極のSOCに対応する負極のOCPを返す関数、OCVに課される上限電圧及び下限電圧、対象電池のパラメータの最終的な推定結果を得るためのパラメータの中間的な推定値、などが内部状態推定部107によって読み出され得る。また、内部状態推定部107は、推定したパラメータのうち、その後のパラメータの推定に必要なものをパラメータ記憶部108に保存し得る。
【0037】
なお、充電曲線解析は、例えば特開2017-166874号公報などにより公知であり、内部状態推定部107は公知の技法を利用して、対象電池の内部状態パラメータ、さらに必要であれば対象電池の電池特性パラメータを推定できる。
【0038】
内部状態推定部107は、推定した内部状態パラメータ及び電池特性パラメータのうち、対象電池の安全性診断に必要とされるパラメータを安全性診断部109へ送る。
【0039】
パラメータ記憶部108は、内部状態推定部107が内部状態パラメータ及び電池特性パラメータを推定するために必要なパラメータを保存する。パラメータ記憶部108の記憶内容の具体例は前述の通りである。
【0040】
安全性診断部109は、内部状態推定部107から対象電池のパラメータの推定結果を受け取り、これに基づいて対象電池の安全性、残存寿命等を診断し、対象電池の劣化状態を診断する。具体的には、安全性診断部109は、基準データ記憶部110から対象電池の安全性に関する少なくとも1つの診断項目の各々に対応する基準を示す基準データを読み出す。そして、安全性診断部109は、診断項目毎に、対象電池のパラメータの推定結果が基準を満たすか否かを診断する。安全性診断部109は、対象電池の安全性の診断結果を管理情報報知部111へ送る。
【0041】
安全性診断部109は、対象電池の安全性の診断結果に基づいて、当該対象電池の寿命を予測してもよい。安全性診断部109は、対象電池の寿命として、例えば3年などの具体的な数値を予測してもよいし、例えば5段階などの階級分けを行ってもよい。安全性診断部109は、対象電池の予測寿命を、当該対象電池の診断結果とともに管理情報報知部111へ送ってもよい。さらに、対象電池の予測寿命は、例えば、後述するリユースプログラムの策定などのために外部装置へ送信されてもよい。
【0042】
ここで、基準データは、対応するパラメータの正常な数値範囲を示し得る。この場合に、安全性診断部109は、ある診断項目について、パラメータの推定結果が基準データの示す数値範囲を逸脱している場合に、当該診断項目について対象電池は基準を満たさないと診断し得る。他方、安全性診断部109は、ある診断項目について、パラメータの推定結果が基準データの示す数値範囲に収まっている場合に、当該診断項目について対象電池は基準を満たすと診断し得る。
【0043】
診断項目は、例えば、正極容量、負極容量、正極の初期充電量と負極の初期充電量との差、などの一部又は全部を含み得る。安全性診断部109は、対象電池の正極容量の推定結果が、正極容量についての基準データの示す閾値未満である場合に、対象電池は正極容量についての基準を満たさないと診断し得る。また、安全性診断部109は、対象電池の負極容量の推定結果が、負極容量についての基準データの示す閾値未満である場合に、対象電池は負極容量についての基準を満たさないと診断し得る。さらに、安全性診断部109は、対象電池の正極の初期充電量の推定結果と負極の初期充電量の推定結果の差が、正極の初期充電量と負極の初期充電量との差についての基準データの示す閾値を超える場合に、対象電池は正極の初期充電量と負極の初期充電量との差についての基準を満たさないと診断し得る。
【0044】
基準データ記憶部110は、診断項目毎の基準データを保存する。基準データは、対象電池の種別(例えば活物質の構成)、対象電池の搭載機器の種別(例えばEVか定置用蓄電池か)、対象電池に対する安全性診断の実施履歴、などに依存して可変であってもよい。
【0045】
管理情報報知部111は、安全性診断部109から対象電池の安全性の診断結果、すなわち、対象電池の劣化状態の診断結果を受け取り、これに基づいて対象電池又はその搭載機器に関する管理情報を、例えば対象電池又はその搭載機器のオーナ、管理者などに向けて報知する。例えば、管理情報報知部111は、電池制御装置100に接続された出力装置、例えば、ディスプレイ、スピーカ、などに、管理情報を報知するためのコンテンツ、例えば、テキスト、静止画、動画、音声、などを出力させてもよい。或いは、管理情報報知部111は、通信I/Fを介して、例えば対象電池又はその搭載機器に関連付けられる連絡先へ管理情報を報知するためメッセージ、例えば、電子メール、SNSメッセージ、などを送ってもよい。
【0046】
管理情報報知部111は、対象電池が少なくとも1つの診断項目について基準を満たさないと診断された場合に、対象電池の使用停止が推奨されることを報知してもよい。これにより、対象電池の継続使用をそのオーナ又は管理者に思いとどまらせ、対象電池の劣化に伴う事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0047】
また、管理情報報知部111は、対象電池が少なくとも1つの診断項目について基準を満たさないと診断された場合に、対象電池の使用停止が推奨されることの代わりに、又はこれに加えて、対象電池のリユースが推奨されることを報知してもよい。
【0048】
例えばEVなどの車両に搭載される二次電池はその不具合により重大な事故を引き起こすことがないよう安全性に関する基準が厳しく定められる一方で、定置用蓄電池等の車両以外の電池製品に搭載される二次電池には同水準の基準は要求されない可能性がある。そこで、例えば図3に示すように、EVに搭載されている二次電池のうち予測寿命が一定水準以上である、すなわち劣化がそれほど進んでいない二次電池を選定して回収し、定置用蓄電池として再製品化する、というビジネスモデルが成立し得る。図3は、EV搭載二次電池を定置用蓄電池としてリユースする二次電池リユースシステムを例示する図である。かかる定置用蓄電池は、例えば大規模蓄電システムにおいて風力、太陽光などのグリーンエネルギーの蓄電に用いることができる。
【0049】
また、管理情報報知部111は、対象電池のリユースが推奨されることを報知する場合に、当該対象電池に関して提供可能なリユースプログラムをさらに報知してもよい。この場合、管理情報報知部111によって、対象電池のリユースプログラムが、対象電池のオーナ等の電池制御装置100の外部に提供される。このリユースプログラムは、例えば、リユースの種別(対象電池の完全な買い取りか、対象電池をダウングレードして差額を受け取るか、対象電池をアップグレードして差額を支払うか)、リユースに関わる金額(買い取り金額、ダウングレード/アップグレード時に生じる差額)、リユースの期限、などを含み得る。管理情報報知部111は、対象電池に関して提供可能なリユースプログラムを外部装置、例えばネットワーク経由で接続可能な外部装置(サーバ)に問い合わせてもよい。そして、この外部装置は、問い合わせに応じて、対象電池に提供可能なリユースプログラムを電池制御装置100へ送信(回答)してもよい。対象電池のオーナがリユースプログラムに同意した場合に、当該対象電池は回収され、例えば大規模蓄電システムにおける定置用蓄電池として再製品化される。管理情報報知部111は、この問い合わせに対象電池の安全性及び劣化状態の診断結果及び/又は予測寿命を含めてもよい。ここで、管理情報報知部111は、対象電池のオーナがリユースプログラムに同意したことを示す情報を取得可能であってもよい。また、管理情報報知部111は、リユースプログラムに同意したことを示す情報を取得したことに基づいて、対象電池が定置用蓄電池等の電池製品に搭載される二次電池として再製品化されることを報知してもよい。
【0050】
なお、管理情報報知部111は、リユースが困難な程度に対象電池の劣化が進行している場合には、対象電池のリユースが推奨されることを報知しなくてもよい。具体的には、管理情報報知部111は、安全性診断部109から受け取った対象電池の予測寿命が閾値未満である場合には、当該対象電池のリユースが推奨されることを報知せずに当該対象電池の使用停止が推奨されることを報知してもよい。
【0051】
さらに、管理情報報知部111は、対象電池が診断項目の各々について基準を満たすと診断された場合に、当該対象電池の充電が終了したこと、当該対象電池又はその搭載機器の使用又は貸し出し準備が整ったことなどを報知してもよい。管理情報報知部111は、対象電池に関する診断実施条件が満足しないと判定された場合にも、当該対象電池の充電終了後に同様の管理情報を報知してもよい。
【0052】
以下、図4を用いて、図1の電池制御装置100の動作例を説明する。図4は、図1の電池制御装置の動作を例示するフローチャートである。図4は、例えばEV 10に搭載された対象電池が充放電回路101に電気的に接続されてから充電が完了するまでの電池制御装置100の動作の一例を示す。
【0053】
図4の動作が開始すると、電池情報取得部102は、対象電池の電池情報を取得する(ステップS201)。次に、診断実施条件判定部103は、ステップS201において取得された電池情報に基づいて、当該対象電池に関する診断実施条件が満足するか否かを判定する(ステップS202)。ステップS202において診断実施条件が満足すると判定されれば処理はステップS205へ進み、そうでなければ処理はステップS203へ進む。
【0054】
ステップS203において、充放電制御部105は、対象電池を充電するよう充放電回路101を制御する。ステップS203の後に、処理はステップS204へ進む。
【0055】
ステップS204において、管理情報報知部111は対象電池又はその搭載機器の貸し出し準備が整ったことを報知し、それから図4の動作は終了する。なお、管理情報報知部111は、かかる管理情報の代わりに又は加えて、対象電池の充電が終了したこと、又は対象電池又はその搭載機器の使用準備が整ったこと、などを報知してもよい。
【0056】
ステップS205において、充放電制御部105は、対象電池を充電開始SOCまで放電又は充電するよう充放電回路101を制御する。
【0057】
ステップS205において、充放電回路101に他の二次電池が電気的に接続されている場合には、充放電制御部105は対象電池から放電される電力によって当該他の二次電池を充電するよう充放電回路101を制御する(ステップS206及びステップS207)。
【0058】
ステップS205乃至ステップS207の後に、充放電制御部105は、対象電池を充電するよう充放電回路101を制御する(ステップS208)。そして、計測データ取得部106は、ステップS208における対象電池の充電中の計測データを取得する(ステップS209)。
【0059】
内部状態推定部107は、ステップS209において取得された計測データに基づいて、対象電池の内部状態パラメータ、必要であればさらに対象電池の電池特性パラメータを推定する(ステップS210)。
【0060】
安全性診断部109は、ステップS210において推定されたパラメータの少なくとも一部に基づいて、少なくとも1つの診断項目の各々について対象電池が基準を満足するか否かを診断する(ステップS211)。
【0061】
ステップS211において対象電池が各診断項目について基準を満足するとの診断結果が得られれば処理はステップS204へ進み、そうでなければ処理はステップS213へと進む。
【0062】
ステップS213において、管理情報報知部111は対象電池の使用停止及び/又はリユースが推奨されることを報知し、それから図4の動作は終了する。
【0063】
以上説明したように、実施形態に係る電池制御装置は、充放電回路に電気的に接続されている二次電池に関する診断実施条件を満足するか否かを判定し、この条件が満足する場合に当該二次電池を放電してから充電する。そして、この電池制御装置は、この充電時の二次電池の計測データに基づいて当該二次電池に関するパラメータを推定し、この推定結果に基づいて当該二次電池の安全性を診断する。故に、この電池制御装置によれば、安全性の診断が適時、例えば、SOCが閾値以下である時、および/または前回の安全性診断が最後に行われてからの経過時間が閾値を超える時、に実施されるので、二次電池の放電が過度に頻繁には行われない。すなわち、この電池制御装置によれば、二次電池の放電に伴う電力の無駄を抑制しながら、十分な長さの充電範囲を確保して充実した計測データを取得し、パラメータの推定精度及び安全性診断の信頼性を高めることができる。
【0064】
さらに、この電池制御装置は、オプションとして、二次電池から放電される電力によって、充放電回路に電気的に接続されている他の二次電池を充電してもよい。これにより、二次電池の放電に伴う電力の無駄をさらに抑制できる。
【0065】
上述の実施形態では、いくつかの機能部を説明したが、これらは各機能部の実装の一例に過ぎない。例えば、1つの装置に実装されると説明された複数の機能部が複数の別々の装置に亘って実装されることもあり得るし、逆に複数の別々の装置に亘って実装されると説明された機能部が1つの装置に実装されることもあり得る。
【0066】
上記各実施形態において説明された種々の機能部は、回路を用いることで実現されてもよい。回路は、特定の機能を実現する専用回路であってもよいし、プロセッサのような汎用回路であってもよい。
【0067】
上記各実施形態の処理の少なくとも一部は、例えば汎用のコンピュータに搭載されたCPU及び/又はGPU、マイコン、FPGA、又はDSP、などのプロセッサを基本ハードウェアとして用いることでも実現可能である。上記処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して提供されてもよい。プログラムは、インストール可能な形式のファイル又は実行可能な形式のファイルとして記録媒体に記憶される。記録媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなどである。記録媒体は、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能であれば、何れであってもよい。また、上記処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【0068】
具体的には、実施形態に係る電池制御装置100は、コンピュータによって実現可能である。かかるコンピュータは、プロセッサ及びメモリを含み、さらに、通信I/F、補助記憶装置、I/O(Input/Output)などを含み得る。プロセッサは、メモリに展開されたプログラムを実行することで、例えば、電池情報取得部102、診断実施条件判定部103、充放電制御部105、計測データ取得部106、内部状態推定部107、安全性診断部109、及び/又は管理情報報知部111として機能し得る。また、メモリ及び/又は補助記憶装置には、診断実施履歴記憶部104、パラメータ記憶部108、及び/又は基準データ記憶部110が含まれ得る。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0070】
以下に、本願の原出願の当初の特許請求の範囲に記載された事項を付記する。
[1]電気的に接続された二次電池に対して充電及び放電を行うことが可能な充放電回路と、
充放電回路を制御するプロセッサと
を具備し、
前記プロセッサは、
前記充放電回路に電気的に接続されている第1の二次電池に関する情報を取得し、 前記第1の二次電池に関する診断実施条件を満足するか否かを前記第1の二次電池に関する情報に基づいて判定し、
前記診断実施条件が満足すると判定された場合に、前記第1の二次電池を充電開始SOC(State Of Charge)まで放電又は充電してから充電するよう前記充放電回路を制御し、
前記第1の二次電池が前記充電開始SOCから充電されている間に前記第1の二次電池の電圧と電流との計測データを取得し、
前記計測データに基づいて前記第1の二次電池の内部状態パラメータを推定し、
前記第1の二次電池の内部状態パラメータの推定値に基づいて前記第1の二次電池の劣化状態を診断する、
電池制御装置。
[2]前記プロセッサは、前記第1の二次電池に対する劣化状態の診断の実施履歴、及び前記第1の二次電池のSOCの少なくとも一方に基づいて前記診断実施条件を満足するか否かを判定し、
前記第1の二次電池のSOCは、前記第1の二次電池に関する情報に含まれ、又は前記第1の二次電池に関する情報に基づいて推定される、
[1]に記載の電池制御装置。
[3]前記プロセッサは、前記診断実施条件が満足すると判定され、かつ前記充放電回路に前記第1の二次電池とは異なる第2の二次電池が電気的に接続されている場合に、前記充電開始SOCまで前記第1の二次電池から放電された電力によって前記第2の二次電池を充電するよう前記充放電回路を制御する、[1]に記載の電池制御装置。
[4]前記診断実施条件は、(a)前記第1の二次電池に対する劣化状態の診断が最後に行われてからの経過時間が第1の閾値を超えること、(b)前記第1の二次電池のSOCが第2の閾値以下であること、及び(c)前記第1の二次電池に対する劣化状態の診断が最後に行われてからの経過時間が第3の閾値を超え、かつ、前記第1の二次電池のSOCが第4の閾値以下であること、の少なくとも1つを含む、[1]に記載の電池制御装置。
[5]前記プロセッサは、前記第1の二次電池が少なくとも1つの診断項目について基準を満たさないと診断された場合に、前記第1の二次電池の使用停止又はリユースが推奨されることを報知する、[1]に記載の電池制御装置。
[6]前記リユースが推奨されることを報知することは、前記第1の二次電池のリユースプログラムを報知することを含む、[5]に記載の電池制御装置。
[7]前記リユースプログラムは、リユースの種別、リユースに関わる金額、及びリユースの期限のうちの少なくとも1つを含む、[6]に記載の電池制御装置。
[8]前記第1の二次電池は、利用者に貸し出される機器に搭載され、
前記第1の二次電池は、前記機器が前記利用者から返却された後に前記充放電回路に電気的に接続され、
前記プロセッサは、前記第1の二次電池が少なくとも1つの診断項目の各々について基準を満たすと診断された場合に、前記機器の貸し出し準備が整ったことを報知する、
[5]に記載の電池制御装置。
[9]前記プロセッサは、前記計測データによって表される前記第1の二次電池の充電曲線を解析して前記内部状態パラメータを推定する、[1]に記載の電池制御装置。
[10][1]乃至[9]のいずれか1項に記載の電池制御装置と、
前記第1の二次電池が搭載され、前記充放電回路に接続可能な第1の機器と
を具備する、充放電システム。
[11]前記プロセッサは、前記診断実施条件が満足すると判定され、かつ前記充放電回路に前記第1の機器とは異なる第2の機器に搭載された第2の二次電池が電気的に接続されている場合に、前記充電開始SOCまで前記第1の二次電池から放電された電力によって前記第2の二次電池を充電するよう前記充放電回路を制御する、[10]に記載の充放電システム。
[12]駐車場に設置された、[1]乃至[9]のいずれか1項に記載の電池制御装置と、
前記第1の二次電池が搭載される第1の車両と
を具備し、
前記第1の二次電池は、前記第1の車両が前記駐車場に駐車した後に前記充放電回路に電気的に接続される、
駐車場システム。
[13]前記プロセッサは、前記診断実施条件が満足すると判定され、かつ前記充放電回路に前記第1の車両とは異なる第2の車両に搭載された第2の二次電池が電気的に接続されている場合に、前記充電開始SOCまで前記第1の二次電池から放電された電力によって前記第2の二次電池を充電するよう前記充放電回路を制御する、[12]に記載の駐車場システム。
[14][1]乃至[9]のいずれか1項に記載の電池制御装置を具備し、
前記プロセッサは、前記第1の二次電池が少なくとも1つの診断項目について基準を満たさないと診断された場合に、前記第1の二次電池のリユースプログラムを外部に提供する、
二次電池リユースシステム。
[15]前記プロセッサは、前記第1の二次電池のオーナが前記リユースプログラムに同意したことを示す情報を取得したことに基づいて、前記第1の二次電池が電池製品に搭載される二次電池として再製品化されることを報知する、[14]に記載の二次電池リユースシステム。
[16]サーバをさらに具備し、
前記プロセッサは、さらに、前記第1の二次電池に関して提供可能なリユースプログラムを前記サーバに問い合わせ、前記問い合わせに応じて前記サーバによって送信されたリユースプログラムを提供する、
[14]に記載の二次電池リユースシステム。
[17]電気的に接続された二次電池に対して充電及び放電を行うことが可能な充放電回路に電気的に接続されている第1の二次電池に関する情報を取得することと、
前記第1の二次電池に関する診断実施条件を満足するか否かを前記第1の二次電池に関する情報に基づいて判定することと、
前記診断実施条件が満足すると判定された場合に、前記第1の二次電池を充電開始SOCまで放電又は充電してから充電するよう前記充放電回路を制御することと、
前記第1の二次電池が前記充電開始SOCから充電されている間に前記第1の二次電池の電圧と電流との計測データを取得することと、
前記計測データに基づいて前記第1の二次電池の内部状態パラメータを推定することと、
前記第1の二次電池の内部状態パラメータの推定値に基づいて前記第1の二次電池の劣化状態を診断することと
を具備する、電池制御方法。
[18]コンピュータに、
電気的に接続された二次電池に対して充電及び放電を行うことが可能な充放電回路に電気的に接続されている第1の二次電池に関する情報を取得させ、
前記第1の二次電池に関する診断実施条件を満足するか否かを前記第1の二次電池に関する情報に基づいて判定させ、
前記診断実施条件が満足すると判定された場合に、前記第1の二次電池を充電開始SOCまで放電又は充電してから充電するよう前記充放電回路を制御させ、
前記第1の二次電池が前記充電開始SOCから充電されている間に前記第1の二次電池の電圧と電流との計測データを取得させ、
前記計測データに基づいて前記第1の二次電池の内部状態パラメータを推定させ、
前記第1の二次電池の内部状態パラメータの推定値に基づいて前記第1の二次電池の劣化状態を診断させる、
電池制御プログラム。
【符号の説明】
【0071】
10・・・EV
100・・・電池制御装置
101・・・充放電回路
102・・・電池情報取得部
103・・・診断実施条件判定部
104・・・診断実施履歴記憶部
105・・・充放電制御部
106・・・計測データ取得部
107・・・内部状態推定部
108・・・パラメータ記憶部
109・・・安全性診断部
110・・・基準データ記憶部
111・・・管理情報報知部
図1
図2
図3
図4