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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】血管内カッティング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3207 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A61B17/3207
【請求項の数】 26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023074106
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2021550154の分割
【原出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2023093719
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1 Becton Drive Franklin Lakes NEW JERSEY 07417 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】チャンダスズコ,アンジェイ・ジェイ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0272612(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0099581(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0193196(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0116715(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内の病変部をスライスまたはスコアリングするための装置であって、
少なくとも2つの拡張可能アームを有する枝分かれ部分を有する単一のシャフトを有するカッターと、前記少なくとも2つの拡張可能アームのうちの第1のアームが、拡張時に前記病変部をスライスまたはスコアリングするための少なくとも1つのブレードを備え、
前記少なくとも2つの拡張可能アームが共通の分岐点において前記単一のシャフトに接続され、
前記少なくとも2つの拡張可能アームが前記単一のシャフトに接続された部分同士が、直接接している、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記カッターを受けるためのシースをさらに有する、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記少なくとも2つの拡張可能アームと前記単一のシャフトとが前記単一のシャフトの遠位端にY形を形成する、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、
前記第1のアームが一対のブレードを有する、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、
前記少なくとも2つの拡張可能アームのうち前記第1のアームではない拡張可能アームが少なくとも1つのブレードを有する、装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
前記少なくとも2つの拡張可能アームのうち前記第1のアームではない拡張可能アームがブレードを一切有さない、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、
前記第1のアームが前記カッターの切込み深さを制限するためのリミッタを有する、装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、
前記カッターが、前記単一のシャフトに接続された3つの拡張可能アームを備える、装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置であって、
前記カッターが、前記単一のシャフトに接続された4つの拡張可能アームを備える、装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置であって、
前記カッターが、前記単一のシャフトに接続された5つの拡張可能アームを備える、装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置であって、
前記血管内で前記カッターを固定するためのアンカーをさらに有する、装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、
前記アンカーが拡張可能要素を備える、装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、
前記拡張可能要素が膨張可能バルーンまたは拡張可能ケージを備える、装置。
【請求項14】
請求項11に記載の装置であって、
前記アンカーが直接前記カッターに接続された、装置。
【請求項15】
請求項11に記載の装置であって、
前記アンカーが直接シースに接続された、装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の装置であって、
前記カッターが形状記憶材料を含む、装置。
【請求項17】
血管内の病変部をスライスまたはスコアリングするための装置であって、
カテーテルと、
前記カテーテルから突出するためのカッターであって、前記カッターは単一のシャフトと、拡張時に前記病変部をスライスまたはスコアリングするための第1のブレードを有する第1の拡張可能アーム、およびブレードを一切有さない第2の拡張可能アームを有する、カッターと、
前記血管内で前記カッターを固定するためのアンカーと
を備え
前記第1の拡張可能アームおよび前記第2の拡張可能アームが共通の分岐点において前記単一のシャフトに接続され、
前記第1の拡張可能アームおよび前記第2の拡張可能アームが前記単一のシャフトに接続された部分同士が、直接接している、装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置であって、
前記アンカーが拡張可能要素を備える、装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置であって、
前記拡張可能要素が膨張可能バルーンまたは拡張可能ケージを備える、装置。
【請求項20】
請求項17に記載の装置であって、
前記アンカーが直接前記カッターに接続された、装置。
【請求項21】
請求項17に記載の装置であって、
前記アンカーが直接前記カテーテルに接続された、装置。
【請求項22】
請求項17に記載の装置であって、
前記カッターが形状記憶材料を含む、装置。
【請求項23】
請求項17に記載の装置であって、
前記カテーテルが、前記カッターを受けるためのシースを備える、装置。
【請求項24】
請求項17に記載の装置であって、
前記第1および第2の拡張可能アームと前記単一のシャフトとが、前記単一のシャフトの遠位端にY形を形成する、装置。
【請求項25】
請求項17に記載の装置であって、
前記第1の拡張可能アームが一対のブレードを有する、装置。
【請求項26】
請求項17に記載の装置であって、
前記第1の拡張可能アームが、前記カッターの切込み深さを制限するためのリミッタを有する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本明細書で言及されるすべての刊行物および特許出願は、各々の個別の刊行物または特許出願を参照により組み込まれるものとして具体的にかつ個別に示す場合と同じ程度で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、血管内治療を実現するためのデバイスに関し、より詳細には、血管壁に付随する病変部をスライスまたはスコアリング(切り込みを入れること)することなどのための、制御下で血管壁を切断(または、カッティング)するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]血管形成術などにより血管内の病変部を治療するのに、バルーン拡張カテーテルが使用される。脈管構造内での多様な用途においてまたは脈管構造内の多様な位置において成功裏に使用される間においても、一部の状況では、形状変化に対する組織の本質的な抵抗および変形後に元の形状に戻ろうとする組織の傾向として説明される「弾性反発」の可能性を考慮した異なるアプローチが必要となる。さらに、一部の用途では、また具体的には「膝下(BTK:below the knee)」の用途では、バルーン血管形成術のみでは禁忌を示す可能性がある硬化石灰化(hard calcification)が伴う。さらに、治療を増強するために病変部に薬剤を使用することが一部の例において望ましい可能性があり、適用前に能動的にカッティングすることにより効率が向上する可能性がある。
【0004】
[0004]したがって、血管壁をカッティングするための、また具体的には血管壁に付随する病変部をスライスまたはscoreするための、単純ではあるが効果的である装置を提供することが望ましい。このようなデバイスは、具体的には硬化石灰化の症状が現れている可能性がある場所を含めて、脈管構造内の多様な位置で容易に有用となり、条件によっては、既知の提案よりもより高い信頼性を有しかつより効果的であるアプローチが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]本発明の目的は、上述の制限および、場合によってはまだ見出されていない他の制限に対処してその制限を解消する、血管内でのカッティングのための装置、また具体的には、血管壁(より具体的には、プラーク、病変部、または他の障害物)をカッティングするためのカッターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]本開示の一態様によると、血管内の病変部をスライスまたはscoreするための装置が提供され、この装置が、シースと、病変部をスライスまたはscoreするための配備位置においてシースから突出するためのカッターとを備える。カッターが、カッターの配備位置において、病変部をスコアリングまたはスライスするための少なくとも1つのブレードを有する第1の拡張可能アームを含む複数の拡張可能アームに接続された単一のシャフトを有する。
【0007】
[0007]いくつかの実施形態では、複数の拡張可能アームが、単一のシャフトの遠位端にY形を形成している少なくとも2つの拡張可能アームを含む。第1の拡張可能アームが一対のブレードを有することができる。第2の拡張可能アームが少なくとも1つのブレードを有してよいが、全く有さなくてもよい。拡張可能アームのうちの任意の拡張可能アーム
が、配備位置においてカッターの切込み深さを制限するためのリミッタを有することができる。
【0008】
[0008]複数の拡張可能アームが、共通の分岐点において単一のシャフトに接続された少なくとも2つの拡張可能アームを含む。カッターが、単一のシャフトに接続された、3つ、4つ、5つ、またはそれを超える数の拡張可能アームを備えることができる。
【0009】
[0009]血管内でカッターを固定するためのアンカーが提供され得る。いくつかの実施形態では、アンカーが拡張可能要素を備える。拡張可能要素が膨張可能バルーンまたは拡張可能ケージを備えることができる。アンカーがカッターまたはシースに取り付けられ得る。
【0010】
[0010]本開示の別の態様によると、血管内の病変部をスライスまたはスコアリングするための装置が提供される。装置が、少なくとも2つの拡張可能アームを有する枝分かれ部分を有する単一のシャフトを有するカッターを備え、拡張可能アームのうちの第1の拡張可能アームが拡張時に病変部をスライスまたはスコアリングするための少なくとも1つのブレードを有する。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態では、装置が、カッターを受けるためのシースをさらに有する。少なくとも2つの拡張可能アームが単一のシャフトの遠位端にY形を形成することができる。第1の拡張可能アームが一対のブレードを有し、少なくとも1つのブレードを有してよいが、全く有さなくてもよい。第1の拡張可能アームは、カッターの切込み深さを制限するためのリミッタを有することができる。
【0012】
[0012]少なくとも2つの拡張可能アームが共通の分岐点において単一のシャフトに接続され得る。カッターが、3つ、4つ、5つ、またはそれを超える数の拡張可能アームを備えることができる。
【0013】
[0013]血管内でカッターを固定するためのアンカーが提供され得る。アンカーは拡張可能要素を備えることができる。拡張可能要素は膨張可能バルーンまたは拡張可能ケージを備えることができる。アンカーはカッターまたは付随のシースに接続され得る。
【0014】
[0014]任意の実施形態で、カッターは形状記憶材料を含むことができる。
[0015]添付図面と併せて以下の説明を参照することにより、本開示による本発明の上記の利点および別の利点がより良好に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】[0016]本開示によるカッターの一実施形態を示す図である。
図1A】[0017]図1の線1A-1Aに沿う図である。
図2】[0018]本開示によるカッターの別の実施形態を示す図である。
図3】[0019]本開示によるカッターの別の実施形態を示す図である。
図4】[0020]本開示によるカッターの代替的実施形態を示す図である。
図5】本開示によるカッターの代替的実施形態を示す図である。
図6】本開示によるカッターの代替的実施形態を示す図である。
図7】本開示によるカッターの代替的実施形態を示す図である。
図8】[0021]開示されるカッターのうちの任意のまたはすべてのカッターに関連して使用されるためのアンカーの実施形態を示す図である。
図9】開示されるカッターのうちの任意のまたはすべてのカッターに関連して使用されるためのアンカーの実施形態を示す図である。
図10】開示されるカッターのうちの任意のまたはすべてのカッターに関連して使用されるためのアンカーの実施形態を示す図である。
図11】開示されるカッターのうちの任意のまたはすべてのカッターに関連して使用されるためのアンカーの実施形態を示す図である。
図12】[0022]代替的実施形態を示す図である。
図13】代替的実施形態を示す図である。
図14】代替的実施形態を示す図である。
図15】代替的実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0023]図面は必ずしも適切な比率または正確な縮尺で描かれていない。例えば、要素のうちのいくつかの要素の寸法が、分かり易さのために、他の要素を基準として誇張されている可能性があるか、または複数の物理的な構成要素が1つの機能的ブロックまたは要素に含まれ得る。さらに、対応する要素または同様の要素を示すために場合によっては複数の図面にわたって参照符号が繰り返され得る。
【0017】
[0024]以下の詳細な記述では、開示される概念を完全に理解するのを可能にするために多くの具体的な詳細が説明される。当業者であれば、開示される本発明がこれらの具体的な詳細なしでも実施され得ることを分かるであろう。さらに、開示される本発明を不明瞭にしないようにするために、よく知られている方法、手技、構成要素、または構造が詳細には説明されていない。
【0018】
[0025]図に関連する以下に提供される記述は特に明記しない限りすべての実施形態に適用され、各実施形態に共通の特徴は同様に示され、同様の参照符号を付される。
[0026]最初に図1を参照すると、本開示によるカッター10が示されている。カッター10は、近位端12aおよび遠位端12bを有する細長いボディまたはシャフト12を有し、遠位端12bは血管壁をカッティングするように適合された先端部分14を有することができる。シャフト12は、長手方向軸Xに沿って対応する長手方向において細長であるが、単に説明を容易にするためにコンパクトな形態で示されており、通常は相当な長さを有することになる(例えば、50~150センチメートル、または近位端12aを脈管構造の外部でアクセス可能な状態に留めながら遠位端12bが脈管構造内の対象の治療エリアに到達させるのに適切である他の長さ)。
【0019】
[0027]継続して図1を、さらに図1Aを参照すると、単一のシャフト12の遠位端12bが、共通の分岐点Bから出ている少なくとも2つの径方向に延在可能であるアーム16、18を有することが認識されよう(しかし、後で説明されるように、単一のアームが存在してもよい)。アーム16、18はカッティングのための配備位置で示されており、したがって先端部分14でカッター10にY形構成が提供される。しかし、アーム16、18は、通常、弛緩位置または非配備位置において長手方向軸Xに実質的に位置合わせされることになり、弛緩位置または非配備位置では径方向の拡張が行われない。
【0020】
[0028]図1の第1のアームまたは上側アーム16などの、アームのうちの少なくとも1つは、正確なカッティングを実現するための多様な形状(平坦形状、凸形形状、チゼル形状、シングルべベル形状、ダブルべベル形状、など)の薄いブレード・エッジ20aを有するブレード20を有する遠位側ヘッド16aを有する。ブレード・エッジ20aはさらに、特定の使用に応じて、鋸歯状(単鋸歯または二重鋸歯)、ホタテガイ状、面取り形状、波形、あるいは他の形状または形態であってもよく、2つ以上のブレード・エッジが設けられてもよい(ヘッド16aの遠位側および近位側の両方に設けられるかまたはヘッド16aの側方側にも設けられる、などである)。
【0021】
[0029]使用時、ここでさらに図2を参照すると、カッター10は、カテーテルまたはシ
ースSなどの被覆物により送達中に保護された状態で、スコアリングまたはスライスを必要とする病変部Lを有する可能性がある治療部位まで、血管Vの中へと前進させることができる。この部位において、カッター10はシースSの遠位端から軸Xに沿って前進させることができ、アーム16、18は、後退状態(想像線で示される)から、スライス機能またはスコアリング機能を実行するための、径方向において軸からより離れている配備状態16’、18’まで、径方向に拡張される。カッター10は、付随のボディの外部の位置から手動で操作されるなどして、必要に応じてまたは望まれる場合に、スライスまたはスコアリング機能を実行するために血管V内で様々な方向に移動させることができる。
【0022】
[0030]認識され得るように、図1の実施形態の第2のアーム18は、ヘッド16aに付随のブレード20の反対側で血管内でスコアリングまたはスライスするのに使用され得る、ブレード20を有するヘッド18aをさらに有する。しかし、図2の示された実施形態の第2のアーム18はカッターを有さず、拡張時にスコアリング作業またはスライス作業を実現するための反作用の力または平衡力(counterbalancing force)を提供するために血管Vの内壁の別の部分に接触することができる。認識され得るように、カッター10はさらに、血管内で他の病変部などをスコアリングまたはスライスすることが必要であるかまたは望まれる場合に血管Vを中心として回転させることができ、必要である場合には延伸または後退させることができる(また、認識され得るように、蛍光透視法下でまたは他の生体内可視化テクノロジで発見性(locatability)を向上させるために、通常、放射線不透過性材料で形成されるかまたは放射線不透過性マーカーを有する)。
【0023】
[0031]遠位側部分または先端部14の径方向の拡張が、温度変化(シースSを介して流体を供給することによって達成され得るかまたは体温に基づいて達成され得る)に基づいて特定の構成をとる形状記憶材料(例えば、ニチノール)などの、周囲条件の変化に基づいて形状を変化させる材料から少なくともアーム16、18を形成することによって達成され得る。具体的には、超弾性ニチノールを使用することが可能であり、これは流体の注入を必要としない。認識され得るように、したがって、弾性反発を回避するために血管を拡張させることなく、一般的な直径を有する血管内の病変部をスライスまたはスコアリングするためにカッター10、具体的にはブレード・エッジ20aが確実に機能できるように、拡張の程度を正確に制御することができる。後退させることが所望される場合、カッター10は簡単にシースSの中に引っ込められ得、結果としてアーム16、18が畳まれる。次いで、シースSは、望まれる場合、引っ込められ得るかまたは位置を変更され得る。
【0024】
[0032]認識され得るように、血管の直径は、一定程度は可変であってよい。具体的には弾性反発を引き起こすように血管を拡張させることなく、適切な切込み深さを確実に達成するために、カッター10、具体的にはブレード・エッジ20aを有するアーム16が、任意選択で、リミッタ22を装備することができる。図1および2に示される実施例では、リミッタ22は、対応するアーム16のヘッド16aのすぐ近位側に過大部分を備え、病変部または石灰化部位などの、血管内の物質に接触するときにはカッティング機能が得られないようにするために滑らかであってよいかまたは丸みを有してよい。特定の用途に応じて所望の切込み深さを達成するようにリミッタ22の位置が選定され得る。リミッタ22は、図3に示すように概略球形のビーズ24などの、他の形態をとってもよく、図3はさらに、第2のアーム18がそのヘッド端部にブレード20を有することを示している。
【0025】
[0033]複数のブレード20が含まれる場合の上記の枝分かれ(分岐)構成を考慮すると、カッター10を使用して血管の複数の側で病変部のカッティングまたはスコアリングが同時に行われ得る。しかし、認識され得るように、単一のシャフト12から出ている追加のアームを提供することにより、追加のカッティング能力が達成され得る。したがって、図4および5に示すように、三叉のカッター10を作り出すために第3のアーム26が提供され得る。図6は第4のアーム28が提供され得ることを示しており、図7は第5のアーム30が提供され得ることを示している。もちろん、空間によって許容される範囲で任意の数のアームを提供することが可能であり、述べたように、提供されたアームのうちのすべてのアーム、一部のアーム、または1つのアームのみが、病変部をスライスまたはスコアリングするように適合され得る。
【0026】
[0034]この作業を容易にするために、および高い信頼性での血管内での適切な位置決めを保証するために、カッター10はアンカーを有することができる。一実施形態では、図8に示すように、アンカーは拡張可能(膨張可能)バルーン32を備え、このバルーン32はアーム16、18(存在する場合はより多くのアーム)を形成するために枝分かれ点の近位側でシャフト12に取り付けられ得る。バルーン32のための膨張流体が、シャフト12内のルーメンを介して、バルーン32の内部コンパートメント内の出口Oに、提供され得る。したがって、バルーン32は、畳まれた構成または折り畳まれた構成でシースSを通って移動させられ得、拡張後に付随のカッター10のための位置決め機能を提供するように血管内で拡張させられ得る。バルーン32は柔軟性を有しても有さなくてもよく、または半柔軟性を有してもよい。
【0027】
[0035]図9に示すように、拡張可能バルーン32はさらにシースS上に設けられてもよく、シースSは膨張ルーメン(図示せず)をさらに有してもよい。図10および11はさらに、膨張可能バルーン32の代わりに、アンカーが自己拡張ケージ34を備えることができることを示す。このケージ34はカッター10(図10)またはシースS(図11)上に設けられ得る。
【0028】
[0036]図12、13、14、および15は代替的実施形態を示す。図12では、カッター10が、上述したようにブレードおよびリミッタを有することができる単一の拡張可能アーム16のみを有し、さらに、拡張時にスコアリングまたはスライスを行うためにアームを定位置で保持することができる、拡張可能(膨張可能)バルーン32などの、アンカーを有する。同様に、アーム16の径方向の拡張(位置16’を参照されたい)が、温度変化(シースSを介して流体を供給することによって達成され得るかまたは体温に基づいて達成され得る)に基づいて特定の構成をとる形状記憶材料(例えば、ニチノール)などの、周囲条件の変化に基づいて形状を変化させる材料を使用することによって達成され得る。具体的には、超弾性ニチノールを使用することが可能であり、これは流体の注入を必要としない。
【0029】
[0037]上述したように、拡張可能要素をシャフト12に取り付けることができ、バルーン32のための膨張流体を、シャフト12内のルーメンを介して、バルーン32の内部コンパートメント内の出口Oに、提供することができる。したがって、バルーン32を、畳まれた構成または折り畳まれた構成でシースSを通るように移動させることができ、次に、拡張後に付随のカッター10のための位置決め機能を提供するように血管内で拡張させることができる。別法として、図13に示すように、バルーン32はカテーテルまたはシースSに取り付けてもよい。別法として、図14および15に示すように、拡張可能ケージ34を使用してもよい。
【0030】
[0038]要約すると、血管壁をカッティングするための、具体的には血管内の病変部をスコアリングまたはスライスするための、カッター10が提供される。単一のシャフト12が少なくとも2つのアーム16、18を有し、それらのアームのうちの少なくとも1つは病変部をスコアリングまたはスライスするためのブレード20を有する。両方のアーム16、18がブレード20を装備することができ、達成される切込み深さを制限するための、および信頼性が高く再現可能な結果を保証するための、リミッタが提供され得る。可能性として、治療を受ける血管内でカッター10をセンタリングするのを補助するためのアンカーとして、3つ以上のアーム16、18が提供されてもよい。
【0031】
[0039]本開示は以下の項目に関連するものであるとみなされ得る:
1.血管内の病変部をスライスまたはスコアリングするための装置であって、
シースと、
病変部をスライスまたはスコアリングするための配備位置においてシースから突出するように構成されたカッターであって、この配備位置において、病変部をスコアリングまたはスライスするための少なくとも1つのブレードを有する第1の拡張可能アームを含む複数の拡張可能アームに接続された単一のシャフトを有する、カッターと
を備える、装置。
2.項目1の装置であって、複数の拡張可能アームが、単一のシャフトの遠位端にY形を形成する少なくとも2つの拡張可能アームを含む、装置。
3.項目1または2の装置であって、第1の拡張可能アームが一対のブレードを有する、装置。
4.項目1から3のいずれか一項目の装置であって、第2の拡張可能アームが少なくとも1つのブレードを有する、装置。
5.項目1から3のいずれか一項目の装置であって、第2の拡張可能アームがブレードを一切有さない、装置。
6.項目1から5のいずれか一項目の装置であって、第1の拡張可能アームが、配備位置においてカッターの切込み深さを制限するように構成されたリミッタを有する、装置。
7.項目1から6のいずれか一項目の装置であって、複数の拡張可能アームが、共通の分岐点において単一のシャフトに接続された少なくとも2つの拡張可能アームを含む、装置。
8.上記項目のいずれか一項目の装置であって、カッターが、単一のシャフトに接続された3つの拡張可能アームを備える、装置。
9.上記項目のいずれか一項目の装置であって、カッターが、単一のシャフトに接続された4つの拡張可能アームを備える、装置。
10.上記項目のいずれか一項目の装置であって、カッターが、単一のシャフトに接続された5つの拡張可能アームを備える、装置。
11.項目1から10のいずれか一項目の装置であって、血管内でカッターを固定するように構成されたアンカーをさらに有する、装置。
12.項目11の装置であって、アンカーが拡張可能要素を備える、装置。
13.項目12の装置であって、拡張可能要素が膨張可能バルーンまたは拡張可能ケージを備える、装置。
14.項目11から13のいずれか一項目の装置であって、アンカーがカッターに接続された、装置。
15.項目11から14のいずれか一項目の装置であって、アンカーがシースに接続された、装置。
16.血管内の病変部をスライスまたはスコアリングするための装置であって、
少なくとも2つの拡張可能アームを有する枝分かれ部分を有する単一のシャフトを有するカッターと、拡張可能アームのうちの第1の拡張可能アームが拡張時に病変部をスライスまたはスコアリングするための少なくとも1つのブレードと
を備える、装置。
17.項目16の装置であって、カッターを受けるように構成されたシースをさらに有する、装置。
18.項目16または17の装置であって、少なくとも2つの拡張可能アームが単一のシャフトの遠位端にY形を形成する、装置。
19.項目16または17の装置であって、第1の拡張可能アームが一対のブレードを有
する、装置。
20.項目16から19のいずれか一項目の装置であって、第2の拡張可能アームが少なくとも1つのブレードを有する、装置。
21.項目16から19のいずれか一項目の装置であって、第2の拡張可能アームがブレードを一切有さない、装置。
22.項目16から19のいずれか一項目の装置であって、第1の拡張可能アームがカッターの切込み深さを制限するように構成されたリミッタを有する、装置。
23.項目16から22のいずれか一項目の装置であって、少なくとも2つの拡張可能アームが共通の分岐点において単一のシャフトに接続された、装置。
24.項目16から23のいずれか一項目の装置であって、カッターが、単一のシャフトに接続された3つの拡張可能アームを備える、装置。
25.項目16から23のいずれか一項目の装置であって、カッターが、単一のシャフトに接続された4つの拡張可能アームを備える、装置。
26.項目16から23のいずれか一項目の装置であって、カッターが、単一のシャフトに接続された5つの拡張可能アームを備える、装置。
27.項目16から26のいずれか一項目の装置であって、血管内でカッターを固定するように構成されたアンカーをさらに有する、装置。
28.項目27の装置であって、アンカーが拡張可能要素を備える、装置。
29.項目28の装置であって、拡張可能要素が膨張可能バルーンまたは拡張可能ケージを備える、装置。
30.項目27から29のいずれか一項目の装置であって、アンカーがカッターに接続された、装置。
31.項目27から30のいずれか一項目の装置であって、アンカーがシースに接続された、装置。
32.上記項目のいずれか一項目の装置であって、カッターが形状記憶材料を含む、装置。
33.血管内の病変部をスライスまたはスコアリングするための装置であって、
カテーテルと、
カテーテルから突出するように構成されたカッターであって、拡張時に病変部をスライスまたはスコアリングするための第1のブレードを有する第1の拡張可能アームを有する、カッターと、
血管内でカッターを固定するように構成されたアンカーと
を備える、装置。
34.項目33の装置であって、アンカーが拡張可能要素を備える、装置。
35.項目33または34の装置であって、拡張可能要素が膨張可能バルーンまたは拡張可能ケージを備える、装置。
36.項目33から35のいずれか一項目の装置であって、アンカーがカッターに接続された、装置。
37.項目33から36のいずれか一項目の装置であって、アンカーがカテーテルに接続された、装置。
38.項目33から37のいずれか一項目の装置であって、カッターが、第2のブレードを有する第2の拡張可能アームを備える、装置。
39.項目38の装置であって、第1および第2の拡張可能アームが単一のシャフトの遠位端にY形を形成する、装置。
40.項目33から39のいずれか一項目の装置であって、第1の拡張可能アームが一対のブレードを有する、装置。
41.項目33から40のいずれか一項目の装置であって、カッターが、少なくとも1つのブレードを有する第2の拡張可能アームを有する、装置。
42.項目33から41のいずれか一項目の装置であって、カッターが、ブレードを一切有さない第2の拡張可能アームを有する、装置。
43.項目33から42のいずれか一項目の装置であって、第1の拡張可能アームが、カッターの切込み深さを制限するように構成されたリミッタを有する、装置。
44.項目33から43のいずれか一項目の装置であって、カッターが形状記憶材料を含む、装置。
45.項目33から44のいずれか一項目の装置であって、カテーテルが、カッターを受けるように構成されたシースを備える、装置。
【0032】
[0040]本明細書で使用される、文法的に単数の形態で記載される以下の用語、「а(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」の各々は、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味する。本明細書で「1つまたは複数」というフレーズが使用される場合、「а(1つの)」、「an(1つの)」、または「the(その)」の意図される意味においても、これは変わらない。したがって、本明細書で使用される「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」という用語は、本明細書において他の意味で特に定義されたり言及されたりしない限り、あるいは文脈により明らかに異なる意味を示されない限り、言及される実在物または物体の複数も意味し、包含する。例えば、「a unit(1つのユニット)」、「a device(1つのデバイス)」、「an assembly(1つのアセンブリ)」、「a mechanism(1つの機構)」、「a component(1つの構成要素)」、「an element(1つの要素)」、および「a step or procedure(1つのステップまたはプロシージャ)」というフレーズは、本明細書で使用される場合、それぞれ、複数のunit、複数のdevice、複数のassembly、複数のmechanism、複数のcomponent、複数のelement、および複数のstepまたはprocedureも意味することができ、包含することができる。
【0033】
[0041]以下の各々の用語:「includes(含む)」、「including(含む)」、「has(有する)」、「having(有する)」、「comprises(備える)」、および「comprising(備える)」、ならびにそれらの言語学的/文法的な変化形、派生語、および/または同根語は、本明細書で使用される場合、「限定されないが、・・・を含む」を意味し、言及される構成要素、特徴、特性、パラメータ、整数、またはステップを明示するものとして解釈され、1つまたは複数の追加の構成要素、特徴、特性、パラメータ、整数、ステップ、またはそれらのグループを追加することを排除するものとして解釈されない。これらの用語の各々が、「実質的に・・・からなる」というフレーズと同等の意味を有するとみなされる。「cosisting of(からなる)」および「consists of(からなる)」というフレーズの各々は、本明細書で使用される場合、「・・・を含みかつ・・・に限定される」ことを意味する。「実質的に・・・からなる」というフレーズは以下のことを意味する:開示される本発明の例示の実施形態の全体または一部でありならびに/あるいは開示される本発明の例示の実施形態を実施するのに使用される、言及する実在物または項目(システム、システムユニット、システムサブユニットデバイス、アセンブリ、サブアセンブリ、機構、構造、構成要素または要素、周辺機器の設備、アクセサリ、あるいは、材料、方法またはプロセス、ステップまたはプロシージャ、サブステップまたはサブプロシージャ)は、システムユニット、システムサブユニットデバイス、アセンブリ、サブアセンブリ、機構、構造、構成要素または要素、周辺機器の設備、アクセサリ、あるいは、材料、ステップまたはプロシージャ、サブステップまたはサブプロシージャ、である「少なくとも1つの追加の特徴または特性」を含むことができるが、これが、このような追加の特徴または特性の各々が、特許請求される項目の新規のかつ発明性のある基本の特性または特別な技術的特徴を実質的に改変しない場合に限られる。
【0034】
[0042]本明細書で使用される「方法」という用語は、限定しないが、開示される本発明の技術分野の専門家によって知られているか、あるいは既知のステップ、プロシージャ、
手法、手段、および/またはテクニックから専門家によって容易に開発される、ステップ、プロシージャ、手法、手段、および/またはテクニックを含む、所与のタスクを達成するための、ステップ、プロシージャ、手法、手段、および/またはテクニックを意味する。
【0035】
[0043]「about(約)」、「substantially(実質的に)」、「approximately(およそ)」などの、近似の用語は、本明細書で使用される場合、言及される数値の±10%を意味する。
【0036】
[0044]分かり易いように、複数の別個の実施形態の文脈またはフォーマットで例証的に説明および提示される本発明の特定の態様、特性、および特徴は、単一の実施形態の文脈またはフォーマットにおいて任意適切な組合せでまたは任意適切な下位の組合せで例証的に説明および提示されてもよいことを完全に理解されたい。逆に、単一の実施形態の文脈またはフォーマットにおいて組合せでまたは下位の組合せで例証的に説明および提示される本発明の種々の態様、特性、および特徴は、複数の別個の実施形態の文脈またはフォーマットで例証的に説明および提示されてもよい。
【0037】
[0045]本発明を特定の例示の実施形態およびその実施例により例証的に説明および提示してきたが、その多くの代替形態、修正形態、および/または変形形態が当業者には明らかとなることは明白である。したがって、これらのすべての代替形態、修正形態、および/または変形形態は、添付の特許請求の範囲の精神の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲の広い範囲に包含される、ことを意図される。
図1
図1A
図2
図3
図4
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図15