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特許7524405医用画像処理装置および医用画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】医用画像処理装置および医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240722BHJP
   G06T 5/00 20240101ALI20240722BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240722BHJP
【FI】
A61B5/055 376
G06T5/00 700
G06T7/00 350C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023081651
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2018109558の分割
【原出願日】2018-06-07
(65)【公開番号】P2023101568
(43)【公開日】2023-07-21
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】井田 孝
(72)【発明者】
【氏名】五十川 賢造
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0061620(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0171727(US,A1)
【文献】特開2016-093494(JP,A)
【文献】特開平09-305757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0100292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G06T 5/00 - 5/94
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴データから生成された1つの磁気共鳴画像または前記1つの磁気共鳴画像を生成する前段の1つの中間画像と、前記磁気共鳴データの収集に関するRFコイルの空間感度を示すコイル感度および前記磁気共鳴データに対応するgファクタのいずれか一方または組み合わせに対応するノイズ相関データと、に基づいて前記1つの磁気共鳴画像のノイズまたは前記1つの中間画像のノイズを低減したデノイズ画像を生成する学習済みモデルを記憶する記憶部と、
前記ノイズ相関データと、前記1つの磁気共鳴画像または前記1つの中間画像とを前記学習済みモデルに入力する入力部と、
前記学習済みモデルを用いて、前記1つの磁気共鳴画像のノイズまたは前記1つの中間画像のノイズが低減された前記デノイズ画像を生成するノイズ低減部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記学習済みモデルは、ニューラルネットワークであって、
前記入力部は、前記ニューラルネットワークにおける入力層の互いに別のチャンネルに、前記1つの磁気共鳴画像または前記1つの中間画像と、前記ノイズ相関データとを入力する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記学習済みモデルは、ニューラルネットワークであって、
前記入力部は、
前記ニューラルネットワークにおける入力層に、前記1つの磁気共鳴画像または前記1つの中間画像を入力し、
前記ニューラルネットワークにおける複数の中間層のうち少なくとも一つに、前記ノイズ相関データを入力する、
請求項1または請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記1つの磁気共鳴画像または前記1つの中間画像に基づいて前記ノイズ相関データを生成するように機能付けられた第2の学習済みモデルをさらに記憶し、
前記入力部は、前記1つの磁気共鳴画像または前記1つの中間画像を前記第2の学習済みモデルに入力し、
前記第2の学習済みモデルを用いて、前記ノイズ相関データを生成する相関データ生成部をさらに具備する、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
磁気共鳴データから生成された1つの磁気共鳴画像または前記1つの磁気共鳴画像を生成する前段の1つの中間画像と、前記磁気共鳴データの収集に関するRFコイルの空間感度を示すコイル感度および前記磁気共鳴データに対応するgファクタのいずれか一方または組み合わせに対応するノイズ相関データと、に基づいて前記1つの磁気共鳴画像のノイズまたは前記1つの中間画像のノイズを低減したデノイズ画像を生成する学習済みモデルを用い、
前記ノイズ相関データと、前記1つの磁気共鳴画像または前記1つの中間画像とを前記学習済みモデルに入力するステップと、
前記学習済みモデルを用いて、前記1つの磁気共鳴画像のノイズまたは前記1つの中間画像のノイズが低減された前記デノイズ画像を生成するステップと、
を有する医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置および医用画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
写真や映像を撮像したときの画像に含まれるノイズは、印刷したりディスプレイに表示したりする際に見栄えが悪くなるだけでなく、防犯カメラや医用診断装置では視認性の低下、各種画像認識装置では認識率の低下など様々な悪影響を及ぼすことがある。このため、画像表示等の事前にノイズを除去することが望ましい。
【0003】
画像処理によるノイズ除去は、基本的には、平滑化によってノイズの振幅を抑制することで実現される。このとき、例えば、ノイズと共に画像信号本来のエッジ(輝度が急峻に変化する部分)やテクスチャ(細かい図柄)がぼやけないように、画像のパターンに適応する複雑な工夫が実行されることがある。一方、近年、単純な構成の畳み込みニューラルネットワーク(以下、CNN(Convolutional Neural Network)と呼ぶ)を用いた画像ノイズ除去方式が、信号の復元精度が高いものとして提案されている。
【0004】
しかしながら、上記CNNを用いた画像ノイズの除去方法では、平滑化の強弱の制御ができず全画面で同じ処理を行うため、例えば写真の暗部などノイズが多い部分ではノイズが残り、写真の明部などノイズが少ない部分では本来の信号まで平滑化されることがある。すなわち、上記CNNでは、入力画像の全領域に亘って同じ重み係数を用いて畳み込みを行うため、CNNから出力される画像において、学習時において想定されたノイズより多いノイズを有する領域ではノイズが残り、学習時において想定されたノイズより少ないノイズを有する領域では本来の画素値まで平滑化される問題がある。かといって、広い範囲のノイズ量を用いてCNNを学習させた場合、画像におけるノイズ低減の精度が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】“Beyond a Gaussian Denoiser: Residual Learning of Deep CNN for Image Denoising,” IEEE Trans. Image Proc., vo.26, no.7, pp.3142-3155, July 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、ノイズ低減の精度を向上可能な医用画像処理装置および医用画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る医用画像診断装置は、記憶部と、入力部と、ノイズ低減部とを有する。記憶部は、磁気共鳴データから生成された磁気共鳴画像または前記磁気共鳴画像を生成する前段の中間画像と、前記磁気共鳴データの収集に関するRFコイルの空間感度を示すコイル感度および前記磁気共鳴データに対応するgファクタのいずれか一方または組み合わせに対応するノイズ相関データと、に基づいて前記磁気共鳴画像のノイズまたは前記中間画像のノイズを低減したデノイズ画像を生成する学習済みモデルを記憶する。入力部は、前記ノイズ相関データと、前記磁気共鳴画像または前記中間画像とを前記学習済みモデルに入力する。ノイズ低減部は、前記学習済みモデルを用いて、前記磁気共鳴画像のノイズまたは前記中間画像のノイズが低減された前記デノイズ画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る医用画像診断装置に搭載される処理回路の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態におけるノイズ低減機能において実行される学習済みモデルの概要の一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態の入力層における組み合わせデータと出力層において生成される出力ベクトルとの一例を示す図である。
図4図4は、本実施形態における畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の構成の一例を示す図である。
図5図5は、本実施形態における活性化関数の一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態の第1の応用例における処理回路の構成例を示すブロック図である。
図7図7は、本実施形態の第1の応用例において、データの入力の一例を示す図である。
図8図8は、本実施形態の第2の応用例において、データの入力の一例を示す図である。
図9図9は、本実施形態の第2の応用例において、ノイズ相関マップが入力される第1の中間層の一例を示す図である。
図10図10は、本実施形態の第1の適用例における医用MRI装置の構成の一例を示す図である。
図11図11は、本実施形態の第1の適用例におけるデノイズ処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、本実施形態の第1の適用例における再構成機能により生成された感度マップの一例を示す図である。
図13図13は、本実施形態の第1の適用例において、再構成機能により生成されたデノイズ前画像の一例を示す図である。
図14図14は、本実施形態の第2の適用例における医用X線CT装置の構成の一例を示す図である。
図15図15は、本実施形態の第2の適用例におけるデノイズ処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図16図16は、本実施形態の第2の適用例において、デノイズ前サイノグラムの一例を示す図である。
図17図17は、本実施形態の第2の適用例に関し、ビュー角が0°において複数の素子番号にそれぞれ対応する複数の透過長の一例を示す図である。
図18図18は、本実施形態の第2の適用例において、透過長マップの一例を示す図である。
図19図19は、本実施形態の第2の適用例の変形例において、デノイズ処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、略同一の構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
図1は、本実施形態に係る医用画像診断装置に搭載される処理回路141の構成例を示すブロック図である。医用画像診断装置は、例えば、医用磁気共鳴イメージング(以下、MRI(Magnetic Resonance Imaging)と呼ぶ)装置および医用X線コンピュータ断層撮影(以下、CT(Computed Tomography)と呼ぶ)装置などである。これらの医用装置で本実施形態を実現する場合については、適用例として後程説明する。
【0011】
処理回路141は、ハードウェア資源として図示していないプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ等を有する。処理回路141は、入力機能1415とノイズ低減機能1417とを有する。入力機能1415、ノイズ低減機能1417にて行われる各種機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で不図示の記憶装置、メモリ等の各種記憶回路へ記憶されている。処理回路141は、これら各種機能に対応するプログラムを記憶回路から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路141は、図1の処理回路141内に示された各機能を有することになる。処理回路141が有する入力機能1415およびノイズ低減機能1417は、それぞれ入力部、ノイズ低減部の一例である。
【0012】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0013】
プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0014】
以下、図2乃至図5を参照して、処理回路141において実行される入力機能1415およびノイズ低減機能1417について説明する。
【0015】
図2は、ノイズ低減機能1417において実行される学習済みモデル105の概要の一例を示す図である。学習済みモデル105は、多くの学習データから学習した順伝播型ネットワークの学習済み機械学習モデルである。学習済みモデル105は、例えば、深層ニューラルネットワーク(以下、DNN(Deep Neural Network)と呼ぶ)である。以下、説明を具体的にするために、DNNとして畳み込みニューラルネットワーク(以下、CNN(Convolution Neural Network)と呼ぶ)を例にとり、説明する。学習済みモデル105は、不図示の記憶装置、メモリ等の各種記憶回路へ記憶される。なお、学習済みモデル105は、DNNおよびCNNに限定されず、他の機械学習モデルであってもよい。なお、図2に示すCNN105は、入力層103と、出力層107とを有していてもよい。CNN105は、複数の中間層を有する。以下、説明を簡単にするために、CNN105は、3つの中間層を有するものとして説明する。なお、CNN105における中間層の数は、3つに限定されず、CNNの学習前において任意に設定可能である。
【0016】
図2に示すように、ノイズ低減機能1417において実行される処理は、入力層103における処理と、CNN105における処理と、出力層107における処理とを有する。入力層103には、ノイズ低減対象画像などの処理対象信号101と、処理対象信号101におけるノイズ量の空間分布に相関するノイズ相関マップなどの参照信号102とが、入力機能1415により設定される。以下、説明を具体的にするために、画像のノイズ低減を例にとり説明する。このとき、処理対象信号101はノイズ低減対象画像に対応し、参照信号が102はノイズ相関マップを示す画像に対応する。
【0017】
ノイズ低減対象画像101におけるノイズ量が既知のとき、ノイズ相関マップにおける複数の画素値各々は、ノイズの局所的な分散や標準偏差に相当する。また、画像の部分領域ごとに異なる特性のコントラスト補正が、ノイズ低減対象画像101に対して実施されていた場合、ノイズ相関マップ102における複数の画素値各々は、コントラスト補正における補正値に相当する。
【0018】
入力層103は、ノイズ低減対象画像101とノイズ相関マップ102とを組み合わせたデータ(以下、組み合わせデータと呼ぶ)104をCNN105に出力する。CNN105は、組み合わせデータ104の変換を再帰的に繰り返し、すなわち組み合わせデータ104を入力として順伝搬処理を実行し、変換後の信号106を出力層107に出力する。出力層107は、変換後の信号106を用いて、ノイズ低減対象画像101のノイズを低減させた信号(以下、デノイズ画像と呼ぶ)108を出力する。
【0019】
具体的には、処理回路141は、入力機能1415により、ノイズ低減対象画像101と、ノイズ相関マップ102とを、入力層103に入力する。すなわち、処理回路141は、入力層103の互いに別のチャンネルに、ノイズ低減対象画像101と、ノイズ相関マップ102とを入力する。図3は、入力層103における組み合わせデータ104と出力層107において生成される出力ベクトル107aとの一例を示す図である。図3において、組み合わせデータ104は、入力ベクトルとして示されている。なお、組み合わせデータ104はベクトル形式に限定されず、例えば、行列形式であってもよい。説明を簡単にするために、ノイズ低減対象画像101およびノイズ相関マップ102における画素数は、N(Nは自然数)個であるものとする。
【0020】
処理回路141は、ノイズ低減機能1417により、入力層103において、ノイズ低減対象画像101における複数の画素値と、ノイズ相関マップ102における複数の画素値とを組み合わせて、組み合わせデータ104を生成する。具体的には、処理回路141は、入力ベクトル104における第1の入力範囲104aに、ノイズ低減対象画像における複数の画素値(y、y、…、y)を割り当てる。また、処理回路141は、入力ベクトル104における第2の入力範囲104bに、ノイズ相関マップ102における複数の画素値(x、x、…、x)を割り当てる。処理回路141は、入力ベクトル104を、CNN105に出力する。処理回路141は、入力層103からCNN105への出力時において、入力ベクトル104に対して畳み込み処理を実行する。処理回路141は、CNN105において畳み込み処理を再帰的に実行する。これらの畳み込み処理等については、図4を用いて後程詳細に説明する。なお、ノイズ低減対象画像101における画素数とノイズ相関マップにおける画素数とが異なる場合、処理回路141は、ノイズ相関マップ102における画素数を、ノイズ低減対象画像における画素数に、既存の方法で適宜調整する。
【0021】
処理回路141は、ノイズ低減機能1417により、CNN105から出力された信号106を、出力層107において、デノイズ画像108における画素値(z、z、…、z)を表すベクトル形式107aとして保持する。処理回路141は、ベクトル形式107aにおける複数の成分を複数の画素として再配列することにより、デノイズ画像108を生成する。処理回路141は、デノイズ画像108を、記憶装置等に出力する。
【0022】
図4は、CNN105の構成の一例を示す図である。図4において、入力層103、CNN105、第1の中間層204および出力層107は、説明の便宜上、斜視図として示されている。まず、処理回路141は、ノイズ低減機能1417により、ノイズ低減対象画像における複数の画素値を、入力層103における第1の入力範囲104aに含まれる複数のノードに設定する。また、処理回路141は、ノイズ相関マップ102における複数の画素値を、入力層103における第2の入力範囲104bに含まれる複数のノードに設定する。図4において、第1の入力範囲104aおよび第2の入力範囲104b各々における9つのノードを示す丸印以外の複数のノードは、煩雑となるため省略している。第1の入力範囲104aおよび第2の入力範囲104bにおける複数のノードは、ノイズ低減対象画像の画素数だけ用意される。
【0023】
次に、処理回路141は、ノイズ低減機能1417により、ノイズ低減対象画像101とノイズ相関マップ102とに対して、学習済みの複数の重み係数を有するフィルタを用いて畳み込み処理を行う。処理回路141は、畳み込み処理により、入力層103から第1の中間層204に入力されるデータを生成する。フィルタにおける重み係数の総数(以下、タップと呼ぶ)は、フィルタが適用される画素数より少ない。例えば、図4の入力層103において、フィルタが適用される画素数は、横3画素×縦3画素×2枚(ノイズ低減対象画像101と参照画像102)であるため、タップは18となる。なお、タップは、図4に示す18に限定されず、学習時において適宜設定されてもよい。
【0024】
処理回路141は、ノイズ低減機能1417により、タップが18個の重み係数を有するフィルタを用いて、ノイズ低減対象画像101における9画素と、ノイズ相関マップ102における9画素とに対して積和演算を実行する。処理回路141は、第1の中間層204において、積和演算に用いられたフィルタの位置に対応するノード205に、積和演算の結果の値(以下、積和値と呼ぶ)を設定する。処理回路141は、ノイズ低減対象画像101及びノイズ相関マップ102に対するフィルタの適用位置を変えながら、第1の中間層204における全ノードに対して積和値を設定する。第1の中間層204における全ノードの数は、ノイズ低減対象画像101およびノイズ相関マップ102における画素の総数と同数である。なお、全ノードの数は、ノイズ低減対象画像101およびノイズ相関マップ102における画素の総数と異なっていてもよい。また、フィルタに含まれる複数の重み係数の値は、ノイズ低減対象画像101及びノイズ相関マップ102に対するフィルタの適用位置によらず一定である。
【0025】
処理回路141は、ノイズ低減機能1417により、フィルタからの出力結果、すなわち積和値Xを、活性化関数と称される非線形関数を用いて変換(活性化)する。図5は、活性化関数f(X)の一例を示す図である。処理回路141は、活性化関数として、図5に示すReLU(Rectified Linear Unit)関数を用いる。図5に示す活性化関数f(X)は、X≦0である場合0を出力し、X>0である場合Xを出力する関数である。なお、活性化関数は、ReLU関数に限定されず、CNN105の学習時において適宜設定可能である。なお、CNN105における複数の中間層各々は、画像の枚数に相当する複数のチャンネルを有していてもよい。例えば、図4に示すように、第1の中間層204におけるチャンネル数が8である場合、入力層103から第1の中間層204への変換において、処理回路141は、3×3×2タップのフィルタを、チャンネルごとに8種類用いる。8種類のフィルタにおいては、重み係数はそれぞれ異なる。なお、中間層各々において用いられるフィルタのタップは異なっていてもよい。
【0026】
以降同様に、処理回路141は、ノイズ低減機能1417により、第i(iは、1乃至(n-1)の自然数:nは中間層の総数)の中間層から第(i+1)の中間層においてチャンネル数が8であれば、8個の3×3×8タップのフィルタと活性化関数とを用いて、画像の変換を(n-1)回繰り返す。例えば、図4に示すように中間層の総数が3である場合、処理回路141は、中間層から中間層への積和値の変換を2回実行する。
【0027】
出力層107のチャンネル数は、学習時において1に設定される。例えば、図4に示すような場合、処理回路141は、ノイズ低減機能1417により、出力層107において、第3の中間層206における8チャンネル分の積和値に対して、3×3×8タップの1つのフィルタを用いて積和演算を行う。処理回路141は、この積和演算で得られた結果(積和値)を、出力層107のチャンネルに、活性化関数を用いずに画素値として設定する。処理回路141は、出力層107で設定された画素値を用いて、デノイズ画像を生成する。
【0028】
なお、CNN105において用いられる複数のフィルタ各々における複数の重み係数は、ノイズ低減機能1417の実装前に、多くの学習データを用いて、誤差逆伝播法とよばれる方法で学習される。具体的には、複数の重み係数は、ノイズを有する画像(以下、ノイズ含有画像と呼ぶ)とノイズ相関マップとを入力したときの出力画像がデノイズされた画像に近づくように、学習される。多くの学習データ各々は、例えば、以下の手順により生成される。まず、ノイズがない画像(以下、非ノイズ画像と呼ぶ)とノイズ相関マップ102とを用意する。次いでノイズ相関マップ102の画素値を標準偏差とするガウスノイズを非ノイズ画像における複数の画素値に加えてノイズ含有画像を生成する。非ノイズ画像とノイズ相関マップ102とノイズ含有画像とが、一つの組の学習データとして生成される。
【0029】
なお、本実施形態における処理回路141は、図4の構成に加えて、中間層における畳み込みの後にバッチ正規化とよばれる処理を行ってもよい。また、処理回路141は、ノイズ低減機能1417により、デノイズ画像を出力するのではなく、ノイズ画像を出力し、次いでノイズ画像をノイズ低減対象画像101から減じることで、デノイズ画像を生成してもよい。このとき、複数の重み係数は、ノイズ含有画像とノイズ相関マップとを入力したときの出力画像がノイズを示す画像(以下、ノイズ画像と呼ぶ)に近づくように、学習される。ノイズ画像は、ノイズ相関マップの画素値を標準偏差とするガウスノイズを示す画像に相当する。
【0030】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態における処理回路141によれば、入力層103に、処理対象信号101に加えて参照信号102も入力されるため、CNN105の学習において、入力層103から第1の中間層204に向けて、同じ重み係数でもノイズ量に応じて出力が変化する自由度が生まれる。これにより、本実施形態によれば、入力層103にノイズ低減対象画像だけを入力した場合に比べて、ノイズ低減対象画像101におけるノイズ量が画像の複数の領域各々において異なる場合であっても、処理対象信号101における部分領域ごとのノイズ量に応じた強度で、処理対象信号101におけるノイズを低減することができる。
【0031】
(第1の応用例)
本応用例と本実施形態との相違は、第2の学習済みモデルを用いて、ノイズ低減対象画像101に基づいてノイズ相関マップ102を生成することにある。図6は、本応用例における処理回路141の構成例を示すブロック図である。図6に示す処理回路141は、図1に示す処理回路141における各種機能に加えて、相関データ生成機能1419をさらに有する。処理回路141が有する相関データ生成機能1419は、相関データ生成部の一例である。
【0032】
処理回路141は、相関データ生成機能1419により、第2の学習済みモデルを実行する。第2の学習済みモデルは、多くの学習データから学習した順伝播型ネットワークの学習済み機械学習モデルである。第2の学習済みモデルは、例えば、入力層、複数の中間層および出力層を有するCNNである。第2の学習済みモデルは、不図示の記憶装置、メモリ等の各種記憶回路へ記憶される。なお、第2の学習済みモデルは、入力層、複数の中間層および出力層を有するDNNであってもよい。本応用例における第2の学習済みモデルは、CNNまたはDNNであるため、詳細な説明は省略する。
【0033】
本応用例におけるCNNにおいて用いられる複数のフィルタ各々における複数の重み係数は、相関データ生成機能1419の実装前に、多くの学習データを用いて、誤差逆伝播法とよばれる方法で学習される。多くの学習データ各々は、ノイズ含有画像とノイズ相関マップとを一つの組の学習データとして、複数の重み係数を学習させるために用いられる。すなわち、複数の重み係数は、ノイズ含有画像を入力したときの出力画像がノイズ相関マップに近づくように、学習される。
【0034】
図7は、本応用例においてデータの入力の一例を示す図である。以下、図7を用いて、本応用例と実施形態との相違に関する処理について説明する。
【0035】
処理回路141は、入力機能1415により、ノイズ低減対象画像101を、入力層103と、相関データ生成機能1419における第2の学習済みモデルの入力層103とに入力する。また、処理回路141は、相関データ生成機能1419から出力されたノイズ相関マップ102を、入力層103に入力する。
【0036】
処理回路141は、相関データ生成機能1419により、ノイズ低減対象画像101が入力された第2の学習済みモデルを実行することにより、ノイズ相関マップ102を生成する。ノイズ低減機能1417における処理内容は、本実施形態と同様なため、説明は省略する。なお、相関データ生成機能1419における処理は、ノイズ低減機能1417に組み込まれてもよい。
【0037】
以上に述べた構成によれば、本実施形態における効果に加えて以下の効果を得ることができる。
本応用例における処理回路141によれば、参照信号102を処理対象信号101から生成できるため、参照信号102を処理対象画像101とは別に用意する必要がない。すなわち、本処理回路141によれば、参照信号102を収集する必要がないため、処理対象画像101のデノイズ処理に関する効率を向上させることができる。
【0038】
(第2の応用例)
本応用例と本実施形態との相違は、入力層103にノイズ低減対象画像101だけを入力し、ノイズ相関マップ102をCNN105における少なくとも一つの中間層に入力することにある。すなわち、本応用例における入力層103は、第1の入力範囲104aのみを有する。また、本応用例においてノイズ相関マップ102が入力される中間層は、活性化関数により活性化された積和値が入力されるチャンネルに加えて、ノイズ相関マップ102が入力されるチャンネルを有する。
【0039】
図8は、本応用例におけるデータの入力の一例を示す図である。以下、図8を用いて、本応用例と本実施形態との相違に関する処理について説明する。本応用例におけるCNN105に対する学習は、入力層103への入力がノイズ低減対象画像101のみであること、およびCNN105へのノイズ相関マップ102の入力が中間層であることを除いて、本実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0040】
処理回路141は、入力機能1415により、ノイズ低減対象画像101を、入力層103に入力する。処理回路141は、ノイズ相関マップ102を、CNN105における中間層に入力する。説明を具体的にするために、ノイズ相関マップ102が入力される中間層は第1の中間層204であるものとする。なお、ノイズ相関マップ102が入力される中間層は、第1の中間層204に限定されず、複数の中間層のうちいずれの中間層に入力されてもよい。
【0041】
図9は、本応用例において、ノイズ相関マップ102が入力される第1の中間層204の一例を示す図である。図9に示すように、第1の中間層204は、畳み込みされかつ活性化されたデータ2041が入力層103から入力される畳み込み後入力範囲204aと、ノイズ相関マップ102が入力されるマップ入力範囲204bと、を有する。畳み込み後入力範囲204aにおける複数のノードは、第1の入力範囲104aにおける複数のノードと同様である。また、マップ入力範囲204bにおける複数のノードは、第2の入力範囲104bにおける複数のノードと同様である。すなわち、本応用例における第1の中間層204は、本実施形態に記載のチャンネルに加えて、ノイズ相関マップ102が入力されるチャンネルを有する。このため、処理回路141は、ノイズ低減機能1417により、第2の中間層への出力として、追加されたチャンネルの分だけチャンネル方向のタップが多いタップで畳み込みを行う。例えば、図4および図9を参照すると、処理回路141は、3×3×9タップのフィルタを用いて畳み込み処理を実行する。
【0042】
なお、ノイズ相関マップ102の中間層への入力は、ノイズ相関マップ用のチャンネル、上の例ではマップ入力範囲204bを用いずに、畳み込みをしてきたデータに単純に加算してもよい。すなわち、入力範囲204aに設定した値に、各ノードに対応するノイズ相関マップの値を加算してもよい。また、204aが2チャンネル以上ある場合には、入力層103と同様の構成にノイズ相関マップを入力し、1チャンネルから増やした出力を204aの各チャンネル、各ノードに加算してもよい。
【0043】
以上に述べた構成によれば、本応用例において、本実施形態における効果と同様に、参照信号102が入力される中間層において、ノイズ量に応じて出力が変化する自由度が得られるため、処理対象信号101における部分範囲ごとのノイズ量に応じた強度で、処理対象信号101のノイズを低減することができる。
【0044】
以下、本実施形態における処理回路141を搭載した医用画像診断装置として、医用MRI装置および医用X線CT装置について、第1の適用例および第2の適用例において説明する。ノイズ低減対象画像101およびノイズ相関マップ102は、医用画像診断装置におけるモダリティの種別によって異なる。このため、入力機能1415により入力層103に入力されるノイズ低減対象画像101およびノイズ相関マップ102については、医用MRI装置および医用X線CT装置各々において説明する。
【0045】
(第1の適用例)
本適用例における医用画像診断装置は、本実施形態における処理回路141を搭載した医用MRI装置である。本適用例において、ノイズ低減対象画像101は、医用画像に相当する。また、ノイズ相関マップ102は、医用画像におけるノイズ量の空間分布に相関する画像に相当する。
【0046】
具体的には、本適用例における医用画像は、図1におけるノイズ低減機能1417によるデノイズの処理前であって、被検体Pに対して実行された本スキャンにより収集された磁気共鳴(以下、MR(Magnetic Resonance)と呼ぶ)データに基づいて再構成されたMR画像(以下、デノイズ前画像と呼ぶ)に対応する。また、本適用例におけるノイズ相関マップ102は、本スキャンの実行前に実行されたスキャン(以下、プリスキャンと呼ぶ)により取得された感度マップまたはgマップに対応する。なお、ノイズ相関マップ102は、感度マップまたはgマップに限定されず、MR画像におけるノイズ量に相関する画像であれば、いずれの画像であってもよい。また、プリスキャンは、本スキャンの後に実行されてもよい。
【0047】
例えば、感度マップとgマップとを用いて処理回路141により生成されたマップ(以下、複合マップと呼ぶ)が、ノイズ相関マップ102として用いられてもよい。このとき、複合マップは、感度マップおよびgマップにおける特徴を有するものとなる。複合マップは、例えば、感度マップとgマップとを掛け合わせた画像、感度マップとgマップとの加算画像、畳み込み画像、または重畳画像などである。また、ノイズ相関マップ102として、RFパルスを発生させることなく実行されたプリスキャンにより生成された画像(以下、RF非送信マップと呼ぶ)が用いられてもよい。RF非送信マップは、例えば、受信コイル127および受信回路129における暗電流等に起因する電気的な白色ノイズに相関する。また、複数回に亘る本スキャンにより生成された複数の時系列画像各々に対応するノイズ相関マップ102として、複数の時系列画像により計算された平均画像から時系列画像各々を差分することにより生成された差分画像が用いられてもよい。また、ノイズ相関マップ102として用いられる差分画像は、複数の時系列画像において基準時刻のMR画像から時系列画像各々を差分することにより生成されてもよい。また、ノイズ相関マップ102として用いられる差分画像は、複数の時系列画像において隣接する2つのMR画像を差分することにより生成されてもよい。また、ノイズ相関マップ102として用いられる差分画像は、本スキャンにより生成されたMR画像に対してメジアンフィルタ処理が実行されたメジアンフィルタ処理画像と当該MR画像との差分画像であってもよい。
【0048】
感度マップは、本スキャンにおいて用いられた受信コイルの感度の空間分布(空間感度)を示す画像である。gマップは、パラレルイメージングに関する展開処理において雑音が増幅する程度を示すgファクタ(g-factor)を、複数の画素ごとに示した画像である。
【0049】
本適用例において、第1の応用例および第2の応用例に関する処理内容については、ノイズ低減対象画像101をMR画像に読み替え、ノイズ相関マップ102を感度マップ(またはgマップや複合マップ)に読み替えることで理解できるため、説明は省略する。
【0050】
図10を参考にして、本実施形態における医用MRI装置110の全体構成について説明する。図10は、医用MRI装置110の構成の一例を示す図である。図10に示すように、医用MRI装置110は、静磁場磁石111と、傾斜磁場コイル113と、傾斜磁場電源115と、寝台117と、寝台制御回路119と、送信回路(送信部)123と、送信コイル125と、受信コイル127と、受信回路(受信部)129と、撮像制御回路(撮像制御部)131と、インタフェース(インタフェース部)135と、ディスプレイ(表示部)137と、記憶装置(記憶部)139と、処理回路(処理部)141とを備える。処理回路141は、図10に示すように、システム制御機能1411、再構成機能1413、入力機能1415、およびノイズ低減機能1417を有する。
【0051】
なお、本適用例において、第1の応用例に記載のようにデノイズ前画像からノイズ相関マップを生成する場合、医用MRI装置110における処理回路141は、図6に示すように、相関データ生成機能1419をさらに有する。
【0052】
処理回路141が有するシステム制御機能1411、再構成機能1413、入力機能1415、ノイズ低減機能1417、および相関データ生成機能1419は、それぞれシステム制御部、再構成部、入力部、ノイズ低減部、および相関データ生成部の一例である。なお、相関データ生成機能1419において実行される処理は、ノイズ低減機能1417において実行されてもよい。なお、被検体Pは、医用MRI装置110に含まれない。
【0053】
静磁場磁石111は、中空の略円筒状に形成された磁石である。静磁場磁石111は、内部の空間に略一様な静磁場(B)を発生する。静磁場磁石111としては、例えば、超伝導磁石等が使用される。
【0054】
傾斜磁場コイル113は、中空の略円筒状に形成されたコイルである。傾斜磁場コイル113は、静磁場磁石111の内側に配置される。傾斜磁場コイル113は、互いに直交するX、Y、Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成される。Z軸方向は、静磁場の方向と同方向であるとする。また、Y軸方向は、鉛直方向とし、X軸方向は、Z軸及びY軸に垂直な方向とする。傾斜磁場コイル113における3つのコイルは、傾斜磁場電源115から個別に電流供給を受けて、X、Y、Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。
【0055】
傾斜磁場コイル113によって発生されるX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場、位相エンコード用傾斜磁場および周波数エンコード用傾斜磁場(リードアウト傾斜磁場ともいう)を形成する。スライス選択用傾斜磁場は、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じてMR信号の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。また、傾斜磁場コイル113によって発生されるX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、グラジエントエコー法において、X-Y平面上のスピンの位相を再収束させるために、傾斜磁場の方向を2回反転させた再収束パルスとして用いられる。加えて、傾斜磁場コイル113によって発生されるX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、静磁場の1次シミングのオフセットとして用いられる。
【0056】
傾斜磁場電源115は、撮像制御回路131の制御により、傾斜磁場コイル113に電流を供給する電源装置である。
【0057】
寝台117は、被検体Pが載置される天板1171を備えた装置である。寝台117は、寝台制御回路119による制御のもと、被検体Pが載置された天板1171を、ボア121内へ挿入する。寝台117は、例えば、長手方向が静磁場磁石111の中心軸と平行になるように、検査室内に設置される。
【0058】
寝台制御回路119は、寝台117を制御する回路である。寝台制御回路119は、インタフェース135を介した操作者の指示により寝台117を駆動することで、天板1171を長手方向および上下方向、場合によっては左右方向へ移動させる。
【0059】
送信回路123は、撮像制御回路131の制御により、ラーモア周波数で変調された高周波パルスを送信コイル125に供給する。
【0060】
送信コイル125は、傾斜磁場コイル113の内側に配置されたRFコイルである。送信コイル125は、送信回路123からの出力に応じて、高周波磁場に相当するRF(Radio Frequency)パルスを発生する。送信コイル125は、例えば、複数のコイルエレメントを有する全身用コイル(以下、WB(Whole Body)コイルと呼ぶ)である。WBコイルは、送受信コイルとして使用されてもよい。また、送信コイル125は、1つのコイルにより形成されるWBコイルであってもよい。
【0061】
受信コイル127は、傾斜磁場コイル113の内側に配置されたRFコイルである。受信コイル127は、高周波磁場によって被検体Pから放射されるMR信号を受信する。受信コイル127は、受信されたMR信号を受信回路129へ出力する。受信コイル127は、例えば、1以上、典型的には複数のコイルエレメントを有するコイルアレイである。なお、図10において送信コイル125と受信コイル127とは別個のRFコイルとして記載されているが、送信コイル125と受信コイル127とは、一体化された送受信コイルとして実施されてもよい。送受信コイルは、被検体Pの撮像部位に対応し、例えば、頭部コイルのような局所的な送受信RFコイルである。
【0062】
受信回路129は、撮像制御回路131の制御により、受信コイル127から出力されたMR信号に基づいて、デジタルのMR信号(以下、MRデータと呼ぶ)を生成する。具体的には、受信回路129は、受信コイル127から出力されたMR信号に対して各種信号処理を施した後、各種信号処理が施されたデータに対してアナログ/デジタル(A/D(Analog to Digital))変換を実行する。受信回路129は、A/D変換されたデータを標本化(サンプリング)する。これにより、受信回路129は、MRデータを生成する。受信回路129は、生成されたMRデータを、撮像制御回路131に出力する。
【0063】
撮像制御回路131は、処理回路141から出力された撮像プロトコルに従って、傾斜磁場電源115、送信回路123及び受信回路129等を制御し、被検体Pに対する撮像を行う。撮像プロトコルは、検査に応じた各種パルスシーケンスを有する。撮像プロトコルには、傾斜磁場電源115により傾斜磁場コイル113に供給される電流の大きさ、傾斜磁場電源115により電流が傾斜磁場コイル113に供給されるタイミング、送信回路123により送信コイル125に供給される高周波パルスの大きさや時間幅、送信回路123により送信コイル125に高周波パルスが供給されるタイミング、受信コイル127によりMR信号が受信されるタイミング等が定義されている。
【0064】
撮像制御回路131は、プリスキャンを実行し、プリスキャンにより収集されたMRデータ(以下、プリスキャンMRデータと呼ぶ)を、処理回路141に出力する。感度マップおよびgマップに関するプリスキャンMRデータを取得するための撮像方法は、既知の各種撮像プロトコルが用いられる。また、撮像制御回路131は、本スキャンを実行し、本スキャンにより収集されたMRデータ(以下、本スキャンMRデータと呼ぶ)を、処理回路141に出力する。
【0065】
インタフェース135は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける回路を有する。インタフェース135は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスに関する回路を有する。なお、インタフェース135が有する回路は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品に関する回路に限定されない。例えば、インタフェース135は、本医用MRI装置110とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路を有していてもよい。
【0066】
ディスプレイ137は、処理回路141におけるシステム制御機能1411による制御のもとで、ノイズ低減機能1417により生成された各種MR画像に対応するデノイズ画像、撮像および画像処理に関する各種情報などを表示する。ディスプレイ137は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LED(Light-Emitting Diode)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイ、モニタ等の表示デバイスである。
【0067】
記憶装置139は、再構成機能1413を介してk空間に充填された各種MRデータおよびデノイズ前画像、ノイズ低減機能1417により生成されたデノイズ画像に対応する画像データ、各種撮像プロトコル、撮像プロトコルを規定する複数の撮像パラメータを含む撮像条件等を記憶する。具体的には、記憶装置139は、本スキャンMRデータに基づいて生成されたMR画像(デノイズ前画像)と、MR画像に含まれるノイズに相関するノイズ相関マップ(感度マップ、gマップ、または複合マップ)とに基づいてMR画像のノイズを低減したデノイズ画像を生成するように機能付けられた学習済みモデルを記憶する。記憶装置139は、学習済みモデルに用いられるデノイズ前画像101とノイズ相関マップ102とを記憶する。また、記憶装置139は、処理回路141において実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。例えば、記憶装置139は、上述の学習済みモデルに対応するCNN105を実行するためのプログラム(以下、ノイズ低減プログラムと呼ぶ)を記憶する。
【0068】
記憶装置139は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive)、光ディスク等である。また、記憶装置139は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。
【0069】
処理回路141は、本医用MRI装置110を制御する。処理回路141は、システム制御機能1411、再構成機能1413、入力機能1415、ノイズ低減機能1417、相関データ生成機能1419を有する。システム制御機能1411、再構成機能1413、入力機能1415、ノイズ低減機能1417、相関データ生成機能1419にて行われる各種機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶装置139に記憶されている。処理回路141は、これら各種機能に対応するプログラムを記憶装置139から読み出し、読み出したプログラムを実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路141は、図10の処理回路141内に示された複数の機能を有する。
【0070】
なお、図10においては単一の処理回路141にてこれら各種機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路141を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、寝台制御回路119、送信回路123、受信回路129、撮像制御回路131等も同様に、上記プロセッサなどの電子回路により構成される。
【0071】
処理回路141は、システム制御機能1411により、医用MRI装置110を制御する。具体的には、処理回路141は、記憶装置139に記憶されたシステム制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開されたシステム制御プログラムに従って本医用MRI装置110の各回路を制御する。例えば、処理回路141は、インタフェース135を介して操作者から入力された撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを記憶装置139から読み出す。なお、処理回路141は、撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを生成してもよい。処理回路141は、撮像プロトコルを撮像制御回路131に送信し、被検体Pに対する撮像を制御する。
【0072】
処理回路141は、再構成機能1413により、リードアウト傾斜磁場の強度に従って、k空間のリードアウト方向に沿ってMRデータを充填する。処理回路141は、k空間に充填されたMRデータに対してフーリエ変換を行うことにより、MR画像を生成する。具体的には、処理回路141は、感度マップに関するプリスキャンMRデータに基づいて感度マップを再構成する。処理回路141は、gファクタの算出に関する信号雑音比(以下、SNR(Signal-to-Noise Ratio)と呼ぶ)を得るためのプリスキャンMRデータに基づいてSNRに関するMR画像(以下、SNR画像と呼ぶ)を、再構成する。処理回路141は、再構成されたSNR画像を複数用いて、画素ごとのgファクタを算出する。処理回路141は、複数の画素各々に対応するgファクタを用いて、gマップを生成する。なお、処理回路141は、感度マップとgマップとを用いて複合マップを生成してもよい。また、処理回路141は、RFパルスを発生させることなく実行されたプリスキャンにより受信された受信信号に基づいて、RF非送信マップを生成してもよい。また、処理回路141は、上述した差分画像を生成してもよい。なお、上記複合マップ、RF非送信マップ、差分画像の生成等のノイズ相関マップの生成は、処理回路141における不図示の画像処理機能(画像処理部)により実行されてもよい。
【0073】
以上が本実施形態に係る医用MRI装置110の全体構成についての説明である。以下、本実施形態における入力機能1415、ノイズ低減機能1417について、以下のデノイズ処理の説明において詳述する。
【0074】
(デノイズ処理)
本適用例におけるデノイズ処理は、デノイズ前画像101と、ノイズ相関マップ102とを用いたノイズ低減プログラムの実行により、デノイズ画像を生成する処理である。図11は、本適用例におけるデノイズ処理の手順の一例を示すフローチャートである。説明を具体的にするために、ノイズ相関マップ102は感度マップであるものとして説明する。
【0075】
(ステップSa1)
プリスキャンにより収集されたMRデータに基づいて、感度マップ102が生成される。具体的には、撮像制御回路131は、被検体Pに対してプリスキャンを実行する。撮像制御回路131は、プリスキャンにより収集されたプリスキャンMRデータを、処理回路141に出力する。処理回路141は、再構成機能1413により、プリスキャンMRデータに対してフーリエ変換を実行することにより、感度マップ102を再構成する。なお、処理回路141は、パラレルイメージングに用いられる複数の受信コイル127各々に関するプリスキャンMRデータに基づいて、複数の受信コイル127にそれぞれ対応する複数の感度マップを生成し、生成された複数の感度マップを合成することにより、入力層103に入力される感度マップ102を再構成してもよい。
【0076】
図12は、再構成機能1413により生成された感度マップ102の一例を示す図である。図12に示すハッチングの濃い領域は、感度が低いことを示している。すなわち、感度マップ102の中心部分ほど受信コイル127から遠いため、感度が低いことを示している。低感度の領域は、MR信号の信号強度が低下するため、ハッチングが薄い高感度の領域に比べて相対的にノイズが多い領域に対応する。
【0077】
(ステップSa2)
本スキャンにより収集されたMRデータに基づいて、MR画像が生成される。具体的には、撮像制御回路131は、被検体Pに対して本スキャンを実行する。撮像制御回路131は、本スキャンにより収集された本スキャンMRデータを、処理回路141に出力する。処理回路141は、再構成機能1413により、本スキャンMRデータに対してフーリエ変換を実行することにより、デノイズ前画像101としてのMR画像を再構成する。
【0078】
図13は、再構成機能1413により生成されたデノイズ前画像101の一例を示す図である。図13に示すようにデノイズ前画像101の中央部分は、中央部分の周囲の領域(端部分)に比べて、ノイズのため不鮮明になっていることを示している。
【0079】
(ステップSa3)
デノイズ前画像101であるMR画像と感度マップ102とが学習済みモデルに入力される。具体的には、処理回路141は、入力機能1415により、デノイズ前画像101と感度マップ102とを入力層103に入力する。より詳細には、処理回路141は、ステップSa2により生成されたMR画像101における複数の画素値を、入力層103の第1の入力範囲104aにおける複数のノードに入力する。処理回路141は、ステップSa1により生成された感度マップ102における複数の画素値を、入力層103の第2の入力範囲104bにおける複数のノードに入力する。
【0080】
処理回路141は、ノイズ低減機能1417により、入力層103において、デノイズ前画像101における複数の画素値と、感度マップ102における複数の画素値とを組み合わせて、組み合わせデータ104を生成する。処理回路141は、組み合わせデータ104を、CNN105に出力する。
【0081】
なお、第2の応用例が本適用例に用いられる場合、処理回路141は、デノイズ前画像101を入力層103に入力し、感度マップ102をCNN105における少なくとも一つの中間層に入力する。
【0082】
(ステップSa4)
デノイズ前画像101であるMR画像のノイズが低減されたデノイズ画像108が生成される。具体的には、処理回路141は、ノイズ低減機能1417により、デノイズ前画像101と、ノイズ相関マップ102とを用いたノイズ低減プログラムの実行により、デノイズ画像108を生成する。デノイズ画像108は、例えば、デノイズ前画像101におけるノイズが低減された画像に相当する。
【0083】
パラレルイメージングにおいて、ステップSa1乃至ステップSa4における処理を適用する場合、デノイズ処理は、好適には、複数の受信コイル各々に対応する感度マップ102およびデノイズ前画像101を用いて実行される。このとき、処理回路141は、再構成機能1413により、複数の受信コイルにそれぞれ対応する複数のデノイズ画像および複数の感度マップを用いて展開処理を実行することで、ノイズが低減されたMR画像を生成する。なお、パラレルイメージングに関するデノイズ処理は上述した方法に限定されず、例えば、デノイズ処理前であって展開処理後のMR画像をデノイズ前画像として用い、複数の感度マップを合成したマップをノイズ相関マップとして用いて、デノイズ画像が生成されてもよい。
【0084】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本適用例における医用MRI装置110によれば、被検体Pに対して収集された本スキャンMRデータに基づいて生成された医用画像(MR画像)と、医用画像に含まれるノイズに相関するノイズ相関マップ(感度マップ、gマップ、または複合マップ)とに基づいて医用画像のノイズを低減したデノイズ画像を生成するように機能付けられた学習済みモデルを記憶し、医用画像とノイズ相関マップとを学習済みモデルに入力し、学習済みモデルを用いて、医用画像のノイズが低減されたデノイズ画像を生成することができる。
【0085】
また、本医用MRI装置110によれば、学習済みモデルとしてのニューラルネットワークにおける入力層103の互いに別のチャンネルに、MR画像101と、ノイズ相関マップ102とを入力することができる。
【0086】
また、本医用MRI装置110によれば、学習済みモデルとしてのニューラルネットワークにおける入力層103に、MR画像を入力し、ニューラルネットワークにおける複数の中間層のうち少なくとも一つに、ノイズ相関マップを入力することができる。これにより、ノイズ相関マップ102が入力される中間層において、ノイズ量に応じて出力が変化する自由度が得られるため、医用画像101における部分領域ごとのノイズ量に応じた強度でノイズを低減することができる。
【0087】
また、本医用MRI装置110によれば、MR画像に基づいてノイズ相関マップを生成するように機能付けられた第2の学習済みモデルを記憶装置139に記憶させ、MR画像を第2の学習済みモデルに入力し、第2の学習済みモデルを用いてノイズ相関マップを生成することができる。これにより、ノイズ相関マップ102をデノイズ前のMR画像101から生成できるため、ノイズ相関マップ102をデノイズ前画像101とは別に用意する必要がない。すなわち、本医用MRI装置110によれば、ノイズ相関マップ102に関する画像を収集する必要がないため、デノイズ画像の生成に関する検査時間を短縮することができ、被検体に対する負荷を低減することができる。
【0088】
(第2の適用例)
本適用例における医用画像診断装置は、本実施形態における処理回路141を搭載した医用X線CT装置である。本適用例において、ノイズ低減対象画像101に相当する医用画像は、図1におけるノイズ低減機能1417によるデノイズ処理前であって、被検体Pに対するCTスキャンに関して生成された前処理後の投影データに基づいて再構成されたX線CT断層撮影画像(以下、デノイズ前CT画像と呼ぶ)に対応する。また、ノイズ低減対象画像101に相当する中間画像は、投影データに基づいて生成されたサイノグラム(以下、デノイズ前サイノグラムと呼ぶ)に相当する。
【0089】
また、本適用例において、入力層103に入力されるノイズ低減対象画像101がデノイズ前サイノグラムである場合、ノイズ相関マップ102は、デノイズ前CT画像において、ビューごとに被検体Pを透過するX線のレイに沿った被検体Pの透過長を示すマップ(以下、透過長マップと呼ぶ)に対応する。透過長マップは、X線管においてX線が発生する焦点位置からX線検出素子に入射するX線のレイに沿った透過長を、例えば、ビュー数を縦軸、チャネル方向に配列された複数のX線検出素子の素子番号を横軸として配列させたデータに相当する。以下、説明を具体的にするために、素子番号は、1乃至M(Mは自然数)であるものとする。なお、ノイズ相関マップ102は、透過長マップに限定されず、CT画像におけるノイズ量に相関する画像であれば、いずれの画像であってもよい。
【0090】
また、本適用例において、入力層103に入力されるノイズ低減対象画像101がデノイズ前CT画像である場合、ノイズ相関マップ102は、透過長マップを用いて再構成された画像(以下、透過長再構成画像と呼ぶ)に対応する。
【0091】
本適用例において、デノイズ前CT画像を用いてデノイズを行う場合の処理内容については、後程説明する。また、本適用例において、第1の応用例および第2の応用例に関する処理内容については、ノイズ低減対象画像101をデノイズ前サイノグラムに読み替え、ノイズ相関マップ102を透過長マップに読み替えることで理解できるため、説明は省略する。
【0092】
医用X線CT装置には、第3世代CT、第4世代CT等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本適用例へ適用可能である。ここで、第3世代CTは、X線管と検出器とが一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Typeである。第4世代CTは、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Typeである。
【0093】
図14は、本適用例に係る医用X線CT装置1の構成を示す図である。医用X線CT装置1は、X線管11から被検体Pに対してX線を照射し、照射されたX線をX線検出器12で検出する。医用X線CT装置1は、X線検出器12からの出力に基づいて被検体Pに関するデノイズ前CT画像を生成する。
【0094】
図14に示すように、医用X線CT装置1は、架台10、寝台30及びコンソール40を有する。なお、図14では説明の都合上、架台10が複数描画されている。架台10は、被検体PをX線CT撮影するための構成を有するスキャン装置である。寝台30は、X線CT撮影の対象となる被検体Pを載置し、被検体Pを位置決めするための搬送装置である。コンソール40は、架台10を制御するコンピュータである。例えば、架台10及び寝台30はCT検査室に設置され、コンソール40はCT検査室に隣接する制御室に設置される。架台10、寝台30及びコンソール40は互いに通信可能に有線または無線で接続されている。なお、コンソール40は、必ずしも制御室に設置されなくてもよい。例えば、コンソール40は、架台10及び寝台30とともに同一の部屋に設置されてもよい。また、コンソール40は、架台10に組み込まれてもよい。
【0095】
図14に示すように、架台10は、X線管11、X線検出器12、回転フレーム13、X線高電圧装置14、制御装置15、ウェッジ16、コリメータ17及びデータ収集回路(DAS:Data Acquisition System)18を有する。
【0096】
X線管11は、X線を被検体Pに照射する。具体的には、X線管11は、熱電子を発生する陰極と、陰極から放出される熱電子を受けてX線を発生する陽極と、陰極と陽極とを保持する真空管とを含む。X線管11は、高圧ケーブルを介してX線高電圧装置14に接続されている。陰極と陽極との間には、X線高電圧装置14により管電圧が印加される。管電圧の印加により陰極から陽極に向けて熱電子が放出される。陰極から陽極に向けて熱電子が放出されることにより管電流が流れる。X線高電圧装置14からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子が放出され、熱電子が陽極に衝突することによりX線が発生される。例えば、X線管11には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0097】
なお、X線を発生させるハードウェアはX線管11に限られない。例えば、X線管11に代えて、第5世代方式を用いてX線を発生させることにしても構わない。第5世代方式は、電子銃から発生した電子ビームを集束させるフォーカスコイルと、電磁偏向させる偏向コイルと、被検体Pの半周を囲い偏向した電子ビームが衝突することによってX線を発生させるターゲットリングとを含む。
【0098】
X線検出器12は、X線管11から照射され被検体Pを通過したX線を検出し、検出されたX線の線量に対応した電気信号をDAS18に出力する。X線検出器12は、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向)に複数配列された構造を有する。X線検出器12は、例えば、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは、入射X線量に応じた光量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射面側に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光の光量に応じた電気信号に変換する機能を有する。光センサとしては、例えば、フォトダイオード、光電子増倍管等が用いられる。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であってもよい。X線検出器は、X線検出部の一例である。
【0099】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを回転軸(Z軸)回りに回転可能に支持する円環状のフレームである。具体的には、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持する。回転フレーム13は、不図示の固定フレームに回転軸回りに回転可能に支持される。制御装置15により、回転フレーム13は、回転軸回りに回転する。これにより、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを回転軸回りに回転させる。回転フレーム13は、制御装置15の駆動機構からの動力を受けて回転軸回りに一定の角速度で回転する。回転フレーム13の開口部19には、画像視野(FOV)が設定される。また、回転フレーム13は、回転部の一例である。
【0100】
なお、本適用例では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し床面に対し水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し床面に対し垂直である軸方向をY軸方向と定義する。
【0101】
X線高電圧装置14は、高電圧発生装置及びX線制御装置を有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有する。高電圧発生装置は、X線管11に印加する高電圧及びX線管11に供給するフィラメント電流を発生する。X線制御装置は、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行う。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。また、X線高電圧装置14は、架台10内の回転フレーム13に設けられてもよいし、架台10内の固定フレーム(図示しない)に設けられても構わない。X線高電圧装置14は、X線高電圧部の一例である。
【0102】
ウェッジ16は、被検体Pに照射されるX線の線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線の線量が予め定められた分布になるようにX線を減衰する。例えば、ウェッジ16としては、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)等のアルミニウム等の金属板が用いられる。金属板は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるように予め加工される。
【0103】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を限定する。コリメータ17は、X線を遮蔽する複数の鉛板をスライド可能に支持する。コリメータ17は、複数の鉛板により形成されるスリットの形態を調節する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
【0104】
DAS18は、X線検出器12により検出されたX線の線量に応じた電気信号をX線検出器12から読み出す。DAS18は、読み出した電気信号を増幅する。DAS18は、ビュー期間に亘り、増幅された電気信号を積分することにより当該ビュー期間に亘るX線の線量に応じたデジタル値を有する検出データを収集する。DAS18は、例えば、検出データを生成可能な回路素子を搭載した特定用途向け集積回路(ASIC)等により実現される。検出データは、非接触データ伝送装置等を介してコンソール40に転送される。非接触データ伝送装置は、回転フレーム13に設けられた送信機と、架台10の非回転部分(例えば、不図示の固定フレーム)に設けられた受信機とを有する。送信機は、発光ダイオード(LED)を有する。受信機は、フォトダイオードを有する。送信機は、発光ダイオードを介して、検出データを受信機に送信する。受信機は、フォトダイオードを介して検出データを受信する。受信機は、受信した検出データを、コンソール40に伝送する。これにより、非接触データ伝送装置は、光通信を介して検出データをコンソールに伝送する。なお、回転フレーム13から架台10の非回転部分への検出データの送信方法は、前述の光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0105】
制御装置15は、コンソール40の処理回路44におけるシステム制御機能441に従いX線CT撮影を実行するためにX線高電圧装置14やDAS18を制御する。制御装置15は、CPUあるいはMPU等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路44は、ハードウェア資源として、CPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。また、制御装置15は、ASICやフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイにより実現されてもよい。また、制御装置15は、他の複合プログラマブル論理デバイス又は単純プログラマブル論理デバイスにより実現されてもよい。制御装置15は、コンソール40若しくは架台10に取り付けられた後述の入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台10及び寝台30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台10をチルトさせる制御、及び寝台30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台10をチルトさせる制御は、架台10に取り付けられた入力インターフェース43によって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は架台10に設けられてもよいし、コンソール40に設けられても構わない。制御装置15は、架台制御部の一例である。
【0106】
寝台30は、基台31、支持フレーム32、天板33及び寝台駆動装置34を備える。基台31は、CT検査室の床面に設置される。基台31は、支持フレーム32を、床面に対して垂直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体である。支持フレーム32は、基台31の上部に設けられるフレームである。支持フレーム32は、天板33を中心軸(Z軸)に沿ってスライド可能に支持する。天板33は、被検体Pが載置される柔軟性を有する板である。
【0107】
寝台駆動装置34は、寝台30の筐体内に収容される。寝台駆動装置34は、被検体Pが載置された支持フレーム32と天板33とを移動させるための動力を発生するモータ又はアクチュエータである。寝台駆動装置34は、コンソール40等による制御に従い作動する。なお、寝台駆動装置34は、天板33に加え、支持フレーム32を天板33の長軸方向に移動させてもよい。
【0108】
コンソール40は、メモリ41、ディスプレイ42、入力インターフェース43及び処理回路44を有する。メモリ41とディスプレイ42と入力インターフェース43と処理回路44との間のデータ通信は、バス(BUS)を介して行われる。なお、コンソール40は架台10とは別体として説明するが、コンソール40又はコンソール40の各構成要素の一部が架台10に含まれてもよい。なお、本適用例において、第1の応用例に記載のようにデノイズ前画像からノイズ相関マップを生成する場合、医用X線CT装置1における処理回路44は、図6に示す相関データ生成機能をさらに有する。
【0109】
メモリ41は、種々の情報を記憶するHDDやSSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ41は、例えば、前処理機能442により生成された投影データや再構成処理機能443により生成されたデノイズ前CT画像のデータ、ノイズ低減機能1417により生成されたデノイズ画像(以下、デノイズサイノグラムと呼ぶ)108のデータ等を記憶する。本適用例において、デノイズサイノグラムは、デノイズ画像108に対応する。また、メモリ41は、デノイズ前サイノグラム101と透過長マップ102とに基づいてデノイズ前サイノグラム101におけるノイズを低減したデノイズサイノグラム108を生成するように機能付けられた学習済みモデルを記憶する。メモリ41は、学習済みモデルに用いられる透過長マップ102とを記憶する。メモリ41は、デノイズサイノグラム108に基づいて再構成されたCT画像(以下、デノイズCT画像と呼ぶ)を記憶する。また、メモリ41は、処理回路44において実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。例えば、メモリ41は、上述の学習済みモデルに対応するCNN105を実行するためのノイズ低減プログラムを記憶する。
【0110】
メモリ41は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体であってもよい。なお、メモリ41は、フラッシュメモリ、RAM等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ41の保存領域は、医用X線CT装置1内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。
【0111】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44における再構成処理機能443によって生成されたデノイズCT画像や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。ディスプレイ42としては、種々の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。例えばディスプレイ42として、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイ又はプラズマディスプレイが使用可能である。また、ディスプレイ42は、架台10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0112】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、デノイズCT画像およびデノイズ前CT画像を再構成する際の再構成条件、デノイズCT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。入力インターフェース43としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。なお、本適用例において、入力インターフェース43は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。また、入力インターフェース43は、架台10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0113】
処理回路44は、入力インターフェース43から出力される入力操作の電気信号に応じて本医用X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路44は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、システム制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、画像処理機能444、入力機能1415、ノイズ低減機能1417等を実行する。なお、上記複数の機能は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより上記複数の機能を実現するものとしても構わない。
【0114】
処理回路44は、システム制御機能441により、X線CT撮影を行うために、X線高電圧装置14と制御装置15とDAS18とを制御する。システム制御機能441を実行する処理回路44は、システム制御部の一例である。
【0115】
処理回路44は、前処理機能442により、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施す。これにより、処理回路44は、複数のビュー角各々に対応する投影データを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)および前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。処理回路44は、複数のビュー角に亘る投影データを用いて、サイノグラムを生成する。なお、サイノグラムの生成は、再構成処理機能443により実行されてもよい。前処理機能442を実行する処理回路44は、前処理部の一例である。
【0116】
処理回路44は、再構成処理機能443により、前処理後であってデノイズ処理前の投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行い、デノイズ前CT画像のデータを生成する。また、処理回路44は、デノイズ画像に対応するデノイズサイノグラム108に対して再構成処理を行い、デノイズCT画像のデータを生成する。再構成処理機能443を実行する処理回路44は、再構成処理部の一例である。
【0117】
処理回路44は、画像処理機能444により、ノイズ低減機能1417によって生成されたデノイズCT画像のデータを、任意断面の断面画像データや任意視点方向のレンダリング画像データに変換する。変換は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて行われる。例えば、処理回路44は、当該デノイズCT画像のデータにボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して、任意視点方向のレンダリング画像データを生成する。なお、任意視点方向のレンダリング画像データの生成は再構成処理機能443が直接行っても構わない。
【0118】
なお、コンソール40は、単一のコンソールにて複数の機能を実行するものとして説明したが、複数の機能を別々のコンソールが実行することにしても構わない。例えば、前処理機能442、再構成処理機能443等の処理回路44の機能を分散して有しても構わない。
【0119】
なお、処理回路44は、コンソール40に含まれる場合に限らず、複数の医用画像診断装置にて取得された検出データに対する処理を一括して行う統合サーバに含まれてもよい。
【0120】
なお、後処理は、コンソール40又は外部のワークステーションのどちらで実施することにしても構わない。また、コンソール40とワークステーションの両方で同時に処理することにしても構わない。
【0121】
なお、本適用例に係る技術は、一管球型の医用X線CT装置にも、X線管と検出器との複数のペアを回転リングに搭載した、いわゆる多管球型の医用X線CT装置にも適用可能である。
【0122】
以上が本適用例に係る医用X線CT装置1の全体構成についての説明である。以下、本適用例における入力機能1415、ノイズ低減機能1417について、以下のデノイズ処理の説明において詳述する。
【0123】
(デノイズ処理)
本適用例におけるデノイズ処理は、デノイズ前サイノグラム101と、透過長マップ102とを用いたノイズ低減プログラムの実行により、デノイズサイノグラム108を生成する処理である。図15は、本適用例におけるデノイズ処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0124】
(ステップSb1)
被検体Pに対するCTスキャンにより、投影データが生成される。具体的には、処理回路44は、前処理機能442により、DAS18から出力された検出データに対して前処理を行うことで、投影データを生成する。
【0125】
(ステップSb2)
投影データに基づいて医用画像が再構成される。具体的には、処理回路44は、再構成処理機能443により、投影データに対して再構成処理を行い、デノイズ前CT画像を再構成する。
【0126】
(ステップSb3)
投影データに基づいてサイノグラムが生成される。具体的には、処理回路44は、前処理機能442により、被検体Pに対するCTスキャンにおける複数のビュー角に亘る投影データを用いて、デノイズ前サイノグラム101を生成する。
【0127】
図16は、デノイズ前サイノグラム101の一例を示す図である。図16に示すように、デノイズ前サイノグラム101は、ビュー数を縦軸、チャネル方向に配列された複数のX線検出素子の素子番号を横軸として、ビュー数および素子番号に対応付けられた投影データを配列することにより生成される。図16に示すように、デノイズ前サイノグラム101は、ノイズのため不鮮明となっている。
【0128】
(ステップSb4)
医用画像に基づいてデノイズ前サイノグラム101に対応するノイズ相関マップが生成される。具体的には、処理回路44は、画像処理機能444により、デノイズ前CT画像を用いて、複数のビュー角に各々において、複数のX線検出素子各々に入射するX線のレイに沿った透過長を算出する。処理回路44は、複数のビュー角各々および複数の素子番号各々に対応付けられた透過長をビュー角および素子番号に沿って配列することで、ノイズ相関マップとしての透過長マップ102を生成する。なお、透過長マップ102の生成は、処理回路44における他の機能において実施されてもよい。
【0129】
図17は、ビュー角が0°において、複数の素子番号にそれぞれ対応する複数の透過長の一例を示す図である。図17におけるデノイズ前CT画像BdnCTに示すように、焦点位置TFから素子番号ch1に向かうX線のレイr1は、透過長L1で被検体Pを通過する。同様に、焦点位置TFから素子番号ch2およびch3に向かうX線のレイr2、レイr3、レイrMは、透過長L2、透過長L3、および透過長LMで被検体Pをそれぞれ通過する。
【0130】
図18は、透過長マップ102の一例を示す図である。図18に示すように、透過長マップ102は、例えば、ビュー数を縦軸、素子番号を横軸として、透過長を配列させた画像である。
【0131】
(ステップSb5)
デノイズ前サイノグラム101と、透過長マップ102とが学習済みモデルに入力される。具体的には、処理回路44は、入力機能1415により、デノイズ前サイノグラム101と透過長マップ102とを入力層103に入力する。より詳細には、処理回路44は、ステップSb3において生成されたデノイズ前サイノグラム101における複数の画素値を、入力層103の第1の入力範囲104aにおける複数のノードに入力する。処理回路44は、ステップSb4により生成された透過長マップ102における複数の画素値を、入力層103の第2の入力範囲104bにおける複数のノードに入力する。
【0132】
処理回路44は、ノイズ低減機能1417により、入力層103において、デノイズ前サイノグラム101における複数の画素値と、透過長マップ102における複数の画素値とを組み合わせて、組み合わせデータ104を生成する。処理回路141は、組み合わせデータ104を、CNN105に出力する。
【0133】
なお、第2の応用例が本適用例に用いられる場合、処理回路44は、デノイズ前サイノグラム101を入力層103に入力し、透過長マップ102をCNN105における少なくとも一つの中間層に入力する。
【0134】
(ステップSb6)
サイノグラムのノイズが低減されたデノイズ画像が生成される。具体的には、処理回路44は、ノイズ低減機能1417により、デノイズ前サイノグラム101と透過長マップ102とを用いたノイズ低減プログラムの実行により、デノイズサイノグラム108を生成する。デノイズサイノグラム108は、デノイズ前サイノグラム101におけるノイズが低減された画像である。
【0135】
(ステップSb7)
デノイズ画像であるデノイズサイノグラム108に対して再構成処理を実行することにより、ノイズが低減された医用画像が生成される。具体的には、処理回路44は、再構成処理機能443により、デノイズサイノグラム108に対して再構成処理を実行することにより、デノイズCT画像を再構成する。
【0136】
以下、本適用例の変形例として、医用画像101としてデノイズ前CT画像を用いた場合のデノイズ処理について説明する。図19は、本適用例の変形例におけるデノイズ処理の手順の一例を示すフローチャートである。ステップSc1およびステップSc2は、ステップSb1およびステップSb2と同様な処理なため、説明を省略する。
【0137】
(ステップSc3)
医用画像に基づいてデノイズ前サイノグラムに対応する透過長を示すデータが生成される。透過長を示すデータは、図18に示す透過長マップに対応する。
【0138】
(ステップSc4)
透過長を示すデータを再構成することにより、ノイズ相関マップが生成される。具体的には、処理回路44は、再構成処理機能443により、透過長を示すデータに対して再構成処理を実行することで、透過長再構成画像を生成する。透過長再構成画像は、ノイズ相関マップ102に相当する。
【0139】
(ステップSc5)
デノイズ前CT画像101と透過長再構成画像102とが学習済みモデルに入力される。具体的には、処理回路44は、入力機能1415により、デノイズ前CT画像101と透過長再構成画像102とを入力層103に入力する。より詳細には、処理回路44は、ステップSc2において生成されたデノイズ前再構成画像101における複数の画素値を、入力層103の第1の入力範囲104aにおける複数のノードに入力する。処理回路44は、ステップSc4により生成された透過長再構成画像102における複数の画素値を、入力層103の第2の入力範囲104bにおける複数のノードに入力する。
【0140】
処理回路44は、ノイズ低減機能1417により、入力層103において、デノイズ前CT画像101における複数の画素値と、透過長再構成画像102における複数の画素値とを組み合わせて、組み合わせデータ104を生成する。処理回路141は、組み合わせデータ104を、CNN105に出力する。
【0141】
なお、第2の応用例が本適用例に用いられる場合、処理回路44は、デノイズ前CT画像101を入力層103に入力し、透過長再構成画像102をCNN105における少なくとも一つの中間層に入力する。
【0142】
(ステップSc6)
デノイズ前CT画像101のノイズが低減されたデノイズ画像108が生成される。デノイズ画像は、デノイズCT画像に対応する。具体的には、処理回路44は、ノイズ低減機能1417により、デノイズ前CT画像101と透過長再構成画像102とを用いたノイズ低減プログラムの実行により、デノイズCT画像108を生成する。
【0143】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本適用例における医用X線CT装置1によれば、被検体Pに対して収集された投影データに基づいて生成された医用画像(デノイズ前CT画像)または医用画像を生成する前段の中間画像(デノイズ前サイノグラム)と、医用画像または中間画像に含まれるノイズに相関するノイズ相関マップ(透過長マップまたは透過長再構成画像)とに基づいて医用画像のノイズまたは中間画像のノイズを低減したデノイズ画像を生成するように機能付けられた学習済みモデルを記憶し、医用画像または中間画像とノイズ相関マップとを学習済みモデルに入力し、学習済みモデルを用いて、医用画像のノイズまたは中間画像のノイズが低減されたデノイズ画像を生成することができる。
【0144】
また、本医用X線CT装置1によれば、学習済みモデルとしてのニューラルネットワークにおける入力層103の互いに別のチャンネルに、デノイズ前CT画像またはデノイズ前サイノグラムと、ノイズ相関マップ102とを入力することができる。
【0145】
また、本医用X線CT装置1によれば、学習済みモデルとしてのニューラルネットワークにおける入力層103に、デノイズ前CT画像またはデノイズ前サイノグラムとを入力し、ニューラルネットワークにおける複数の中間層のうち少なくとも一つに、ノイズ相関マップを入力することができる。これにより、ノイズ相関マップ102が入力される中間層において、ノイズ量に応じて出力が変化する自由度が得られるため、デノイズ前CT画像またはデノイズ前サイノグラム101における部分領域ごとのノイズ量に応じた強度でノイズを低減することができる。
【0146】
また、本医用X線CT装置1によれば、デノイズ前CT画像またはデノイズ前サイノグラムに基づいてノイズ相関マップを生成するように機能付けられた第2の学習済みモデルを記憶装置139に記憶させ、デノイズ前CT画像またはデノイズ前サイノグラムを第2の学習済みモデルに入力し、第2の学習済みモデルを用いてノイズ相関マップを生成することができる。
【0147】
以上のことから、被検体Pが厚い部分ではX線の透過量が少なくなるため、X線の検出信号に対するノイズが相対的に増え、サイノグラムや断層画像の中央部でノイズが多くなる場合においても、本医用X線CT装置1によれば、サイノグラムや断層画像を処理対象信号101、およびX線が被検体Pを通過した長さから算出したノイズ相関マップを参照信号102を用いることで、被検体Pの断層画像のノイズを効果的に低減することができる。
【0148】
本実施形態および各種応用例の変形例として、本医用画像診断装置の技術的思想は、ノイズ低減プログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、ノイズ低減プログラムは、コンピュータに、被検体に対して収集されたデータに基づいて生成された医用画像または医用画像を生成する前段の中間画像と、医用画像または中間画像に含まれるノイズに相関するノイズ相関マップとに基づいて医用画像のノイズまたは中間画像のノイズを低減したデノイズ画像を生成するように機能付けられた学習済みモデルに、ノイズ相関マップと、医用画像または中間画像とを入力し、学習済みモデルを用いて、医用画像のノイズまたは中間画像のノイズが低減されたデノイズ画像を生成することを実現させる。コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどの各種可搬型記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0149】
以上に説明した実施形態、応用例、適用例等の医用画像診断装置によれば、ノイズ低減の精度を向上させることができる。すなわち、本実施形態、応用例、適用例等によれば、ノイズ除去対象画像などの処理対象信号101に加えて、ノイズ量の空間分布を表すノイズ量マップなどの参照信号102もCNN105に入力することで、ノイズ低減の精度を向上させることができる医用画像診断装置を提供することができる。
【0150】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0151】
1…医用X線CT装置
10…架台
11…X線管
12…X線検出器
13…回転フレーム
14…X線高電圧装置
15…制御装置
16…ウェッジ
17…コリメータ
18…DAS
19…開口部
30…寝台
31…基台
32…支持フレーム
33…天板
34…寝台駆動装置
40…コンソール
41…メモリ
42…ディスプレイ
43…入力インターフェース
44…処理回路
101…処理対象信号
102…ノイズ相関マップ
104…組み合わせデータ
105…学習済みモデル
104a…第1の入力範囲
104b…第2の入力範囲
105…畳み込みニューラルネットワーク(CNN)
106…信号
107…出力層
108…デノイズ画像
110…医用MRI装置
111…静磁場磁石
113…傾斜磁場コイル
115…傾斜磁場電源
117…寝台
119…寝台制御回路
121…ボア
123…送信回路
125…送信コイル
127…受信コイル
129…受信回路
131…撮像制御回路
135…インタフェース
137…ディスプレイ
139…記憶装置
141…処理回路
204…第1の中間層
204a…畳み込み後入力範囲
204a…マップ入力範囲
205…ノード
206…第3の中間層
441…システム制御機能
442…前処理機能
443…再構成処理機能
444…画像処理機能
1171…天板
1411…システム制御機能
1413…再構成機能
1415…入力機能
1417…ノイズ低減機能
1419…相関データ生成機能
2041…活性化されたデータ

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