(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】硫黄を含有する構造的に強化された脂肪酸の非アルコール性脂肪性肝炎の予防及び/又は治療のための使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/19 20060101AFI20240722BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240722BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240722BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
A61K31/19
A61P1/16
A61P3/06
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2023092036
(22)【出願日】2023-06-05
(62)【分割の表示】P 2020177683の分割
【原出願日】2016-04-21
【審査請求日】2023-07-04
(32)【優先日】2015-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】517264144
【氏名又は名称】プロノヴァ バイオファーマ ノルゲ エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステインガー,ヒルデ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-526094(JP,A)
【文献】国際公開第2010/128401(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/132134(WO,A1)
【文献】British Journal of Pharmacology,2014年,Vol.171,pp.723-734
【文献】Toxicology and Applied Pharmacology,2008年,Vol.230,pp.327-337
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルオキシ)ブタン酸
【化1】
を含む医薬であって、該医薬が、非アルコール性脂肪性肝炎の治療を必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を治療するために使用される、前記医薬。
【請求項2】
さらに、対象における糞便中胆汁酸含有量を減少させるために使用される、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
さらに、対象における肝臓コレステロールを減少させるために使用される、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
1日1回対象に投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項5】
2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルオキシ)ブタン酸
【化2】
を含む医薬であって、該医薬が、脂肪肝及び肝臓の炎症の低下を必要とする対象における脂肪肝及び肝臓の炎症を低下させるために使用され、且つ該対象が非アルコール性脂肪性肝炎を有する、前記医薬。
【請求項6】
さらに、対象における糞便中胆汁酸含有量を減少させるために使用される、請求項5に記載の医薬。
【請求項7】
さらに、対象における肝臓コレステロールを減少させるために使用される、請求項5に記載の医薬。
【請求項8】
1日1回対象に投与される、請求項5に記載の医薬。
【請求項9】
2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルオキシ)ブタン酸
【化3】
を含む医薬であって、該医薬が、肝臓の炎症の低下を必要とする対象における肝臓の炎症を低下させるために使用され、且つ該対象が非アルコール性脂肪性肝炎を有する、前記医薬。
【請求項10】
さらに、対象における糞便中胆汁酸含有量を減少させるために使用される、請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
さらに、対象における肝臓コレステロールを減少させるために使用される、請求項9に記載の医薬。
【請求項12】
1日1回対象に投与される、請求項9に記載の医薬。
【請求項13】
非アルコール性脂肪性肝炎を治療するための医薬の製造における、2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルオキシ)ブタン酸の使用であって、肝臓の炎症を低下させる、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、式(II):
【化1】
(式中、
R
1は、3~6個の二重結合を有するC
10~C
22アルケニルから選択され;
R
2及びR
3は、同一であるか又は異なっており、R
2及びR
3が同時に水素原子になることができないという条件で、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、及びアルキルアミノ基からなる置換基の群から選択されてもよく;又は、R
2及びR
3は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン若しくはシクロヘキサンのようなシクロアルカンを形成するために結合することができ;
Yは、硫黄、スルホキシド、及びスルホンから選択され;
Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、カルボキサミド、又はリン脂質である)
の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物の薬学的有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療する方法に関する。
【0002】
本開示は、式(I):
【化2】
(式中、R
2及びR
3は、R
2及びR
3が同時に水素にはならないという条件で、独立して水素原子、並びに直鎖、分岐、及び/又は環状C
1~C
6アルキル基の群から選択され;Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、カルボキサミド、又はリン脂質である)
の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物の薬学的有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療する方法に関する。
【0003】
更に、本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎の治療的及び/又は予防的処置のための式(I)及び(II)の化合物を開示する。
【背景技術】
【0004】
オメガ3脂肪酸を含む食物性多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、通常の健康及び慢性疾患、例えば血漿脂質レベル、心臓血管機能及び免疫機能、インスリン作用、神経発達、並びに視覚機能の調節に影響を与える多様な生理学的なプロセスに影響を及ぼす。
【0005】
オメガ3脂肪酸、例えば、(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン酸(EPA)及び(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエン酸(DHA)は、血漿脂質レベル、心臓血管機能及び免疫機能、インスリン作用及び神経発達、並びに視覚機能を調節する。オメガ3脂肪酸は、心疾患、例えば高血圧及び高トリグリセリド血症(HTG)の危険因子に対して有益な効果があることが示されている。
【0006】
先行技術では、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療するためのオメガ3化合物、例えばEPA及びDHAの使用が示唆されている。一例として、MochidaのWO2014/057522は、NASHの症状の治療又は緩和に使用するためのイコサペント酸エチルを含む組成物に関する。
【0007】
Dignity Science LTD(WO2014/118097)は、脂肪肝障害、例えば非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療するための改質オメガ3化合物、例えば15-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(15-OHEPA)の使用を示唆している。Krisani Biosciences(WO2014/045293)も、非アルコール性脂肪性肝炎を含む様々な疾患を治療するための改質オメガ3化合物の使用を提案している。
【0008】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、NAFLDが単純な脂肪肝(組織学的に肝細胞の5%超)を含むより広範囲の肝疾患を包含するという事実にも関わらず、区別せずに使用されることが多い。脂肪肝は、炎症反応及び細胞障害を伴わない場合、比較的良性の障害である可能性が最も高い。しかし、NAFLD患者のサブグループは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)として知られる状態である脂肪肝に加えて肝細胞損傷及び炎症を有する。NASHは、組織学的にアルコール性脂肪性肝炎(ASH)と事実上区別ができない。NAFLDにみられる単純な脂肪変性は、短期罹患率又は致死率の上昇とは相関しないが、NASHは、肝硬変、肝不全、及び肝細胞がん(HCC)のリスクを劇的に増加させる。NASHに起因する肝硬変は、肝臓移植の理由として増加している。肝臓が原因の罹患率及び致死率は、NASHの患者では大幅に上昇するが、心疾患による罹患率及び致死率とは更に強く相関する。
【0009】
NASHの診断及び病期分類のための統一基準は、依然として議論されている(後の節の詳細参照)。NASHの主要な組織要素は、脂肪変性、肝細胞肥大、及び小葉の炎症であり、線維症は、NASHの組織学的な定義の一部ではない。しかし、肝生検の線維症の程度(ステージ)は予後の予測となるのに対し、肝生検の炎症及び壊死の程度(グレード)は、予後の予測とはならない。
【0010】
様々な組織要素に関し、オメガ3脂肪酸を用いた治療は、NAFLDの患者の脂肪肝を効果的に低下させることが示されており(Scorletti Eら、Effects of purified eicosapentaenoic and docosahexanoic acids in non-alcoholic fatty liver disease: Results from the *WELCOME study, Hepatology.2014年7月4日1)、疾患の初期段階で治療が確立されていれば、おそらく疾患のより重篤な段階への進行を遅らせることができる。しかし、オメガ3脂肪酸が顕著な組織学的/炎症性変化が生じたNASHの治療及び/又は逆転に十分に効果がある否かについては、疑問がある(Sanyal AJら;EPE-A Study Group, Gastroenterology.2014年8月;147(2):377-84.e1. doi:10.1053/j.gastro.2014.04.046. Epub 2014年5月9日)。
【0011】
NASHの治療におけるオメガ3脂肪酸の適度な有効性は、NASHの発症機序の根底にある他の経路に対するその穏やかな作用に続発し得る。NASHのヒト及び動物のモデル両方における研究は、独立した脂肪肝とは対照的に、脂肪性肝炎の発症に関与する多数の因子があることを、説得力を持って実証している。それには、インスリン抵抗性、酸化ストレス、炎症、腸由来内毒素、並びに過剰な肝臓コレステロール及び胆汁酸が含まれる。これらの因子は全て、遺伝的に感受性の高い個体において重要な寄与因子の役割を果たすことが示されており、これらの経路を標的とする薬物がNASHの治療のために開発途上にある。
【0012】
確立されたNASHの治療における合成ファルネソイドX受容体(FXR)作用薬、例えばオベチコール酸の有効性は、コレステロール/胆汁酸の産生及びクリアランスに関与する経路が疾患の発症機序において極めて重要な役割を果たすことを示唆する。しかし、FXR作用薬は、肝臓が過剰なコレステロールを排出する主要な経路(胆汁酸への変換及び胆汁中排泄)を阻害するため、血漿コレステロールに対する悪影響が観察される。
【0013】
肝細胞コレステロール濃度の上昇は、また、泡沫細胞形成の原因となるコレステロール結晶蓄積及び細胞死をもたらす可能性がある。酸化コレステロール(血漿由来又はin situで形成)の増加も、肝臓の炎症反応及びNASHの発症を誘発する可能性がある。
【0014】
肝臓コレステロールレベルの低下を目的とした治療は、結晶形成及び酸化の両方の基質を制限することだけでなく、肝臓の胆汁酸合成のための基質の利用率を低下させることによるNASHの予防及び治療における魅力的な目標である。この川上療法の利点は、NASHに関係する主要な炎症誘発成分に対処することに加え、肝臓疾患に伴うことが多いアテローム発生性血漿脂質に対しても有益な効果がみられるはずである。
【0015】
WO2010/008299は、2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸及びその誘導体を含む構造的に強化された脂肪酸が、とりわけ血漿トリグリセリド、血漿コレステロール、血漿インスリンなどを低下させることにより、脂質プロフィールに良い影響を与えることを開示する。これらの結果は、2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸及びその誘導体が、様々な症状の予防又は治療に有用となり得ることを実証している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】WO2014/057522
【文献】WO2014/118097
【文献】WO2014/045293
【文献】WO2010/008299
【非特許文献】
【0017】
【文献】Scorletti Eら、Effects of purified eicosapentaenoic and docosahexanoic acids in non-alcoholic fatty liver disease: Results from the *WELCOME study, Hepatology.2014年7月4日1
【文献】Sanyal AJら;EPE-A Study Group, Gastroenterology.2014年8月;147(2):377-84.e1. doi:10.1053/j.gastro.2014.04.046. Epub 2014年5月9日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
驚くべきことに、2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸及びその誘導体は、非アルコール性脂肪性肝炎の予防及び/又は治療に有用であることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本開示は、式(II):
【化3】
(式中、R
1は、3~6個の二重結合を有するC
10~C
22アルケニルから選択され;
R
2及びR
3は、同一であるか又は異なっており、R
2及びR
3が同時に水素原子になることができないという条件で、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、及びアルキルアミノ基からなる置換基の群から選択されてもよく;又は、R
2及びR
3は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン若しくはシクロヘキサンのようなシクロアルカンを形成するために結合することができ;
Yは、硫黄、スルホキシド、及びスルホンから選択され;
Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、カルボキサミド、又はリン脂質である)
の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物の薬学的有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療する方法に関する。
【0020】
本開示の同等の態様は、それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療するための薬剤の製造における式(II):
【化4】
(式中、R
1は、3~6個の二重結合を有するC
10~C
22アルケニルから選択され;
R
2及びR
3は、同一であるか又は異なっており、R
2及びR
3が同時に水素原子になることができないという条件で、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、及びアルキルアミノ基からなる置換基の群から選択されてもよく;又は、R
2及びR
3は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン若しくはシクロヘキサンのようなシクロアルカンを形成するために結合することができ;
Yは、硫黄、スルホキシド、及びスルホンから選択され;
Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、カルボキサミド、又はリン脂質である)
の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物の薬学的有効量の使用に関する。
【0021】
本開示の同等の態様は、非アルコール性脂肪性肝炎の治療的及び/又は予防的処置のための式(II):
【化5】
(式中、R
1は、3~6個の二重結合を有するC
10~C
22アルケニルから選択され;
R
2及びR
3は、同一であるか又は異なっており、R
2及びR
3が同時に水素原子になることができないという条件で、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、及びアルキルアミノ基からなる置換基の群から選択されてもよく;又は、R
2及びR
3は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン若しくはシクロヘキサンのようなシクロアルカンを形成するために結合することができ;
Yは、硫黄、スルホキシド、及びスルホンから選択され;
Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、カルボキサミド、又はリン脂質である)
の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物に関する。
【0022】
少なくとも一実施形態において、R2及びR3は、同一であるか又は異なっており、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基からなる置換基の群から選択されてもよく;又は、R2及びR3は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン若しくはシクロヘキサンのようなシクロアルカンを形成するために結合することができ;Yは、硫黄から選択され;Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、若しくはリン脂質であり;又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物である。
【0023】
より詳細には、一態様において、本開示は、式(I):
【化6】
(式中、R
2及びR
3、並びにXは、式(II)について定義した通りであり、好ましくは、
R
2及びR
3は、R
2及びR
3が同時に水素にはならないという条件で、独立して水素原子、並びに直鎖、分岐、及び/又は環状C
1~C
6アルキル基の群から選択され;Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、又はリン脂質である)
の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物の薬学的有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療する方法に関する。
【0024】
同様に、別の態様において、本開示は、それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療するための薬剤の製造における式(I):
【化7】
(式中、R
2及びR
3、並びにXは、式(II)について定義した通りであり、好ましくは、
R
2及びR
3は、R
2及びR
3が同時に水素にはならないという条件で、独立して水素原子、並びに直鎖、分岐、及び/又は環状C
1~C
6アルキル基の群から選択され;Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、又はリン脂質である)
の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物の薬学的有効量の使用に関する。
【0025】
同様に、別の態様において、本開示は、非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療するための式(I):
【化8】
(式中、R
2及びR
3、並びにXは、式(II)について定義した通りであり、好ましくは、
R
2及びR
3は、R
2及びR
3が同時に水素にはならないという条件で、独立して水素原子、並びに直鎖、分岐、及び/又は環状C
1~C
6アルキル基の群から選択され;Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、又はリン脂質である)
の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物に関する。
【0026】
式(I)について、Xがグリセリドである場合、これは、トリグリセリド、1,2-ジグリセリド、1,3-ジグリセリド、1-モノグリセリド、及び2-モノグリセリドの群から選択され得る。
【0027】
本開示は、それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を治療及び/又は予防する方法であって、2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸:
【化9】
又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの薬学的有効量を対象に投与することを含む方法を更に含む。
【0028】
同様に、本開示は、それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を治療及び/又は予防するための薬剤の製造における2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸(化合物N)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの薬学的有効量の使用を更に含む。
【0029】
本開示は、更に、非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療するための2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸(化合物N)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルに関する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】肝臓コレステロールに対する化合物Nの効果を開示する。
【
図2】肝臓の炎症に対する化合物Nの効果を開示する。
【
図3】大滴性脂肪変性に対する化合物Nの効果を開示する。
【
図4】糞便中胆汁酸含有量に対する化合物Nの効果を開示する。
【
図5】肝線維症(コラーゲン含有量)に対する化合物Nの効果を開示する。
【
図6】総血漿コレステロールに対する化合物Nの効果を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の一態様の文脈において記載される実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも適用されることに留意されたい。特に、本開示による非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療する方法に適用される実施形態は、非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療するための薬剤の製造における化合物の薬学的有効量の使用にも適用され、同様に非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療するための化合物の態様に適用され、これらはいずれも本開示によるものである。
【0032】
本開示の特定の態様を以下により詳細に記載する。本出願において使用され本明細書において明確化される用語及び定義は、本開示内での意味を表すことを意図している。
【0033】
単数形である「a」、「an」及び「the」は、文脈上別段の指示がない限り、複数形への言及を含む。
【0034】
「およそ」及び「約」という用語は、言及した数又は値とほぼ同じであることを意味する。本明細書において使用する場合、「およそ」及び「約」という用語は、規定の量、頻度、又は値の±5%を包含すると一般に理解すべきである。
【0035】
「治療する」「治療すること」及び「治療」という用語は、ヒト又はヒト以外の哺乳動物に有益となり得る任意の治療的適用を含む。ヒト及び獣医学的治療の両方が本開示の範囲内である。治療は、既存の状態に対応するものでも、予防的、即ち、予防するものであってもよい。
【0036】
「投与する」、「投与」及び「投与すること」という用語は、本明細書において使用された場合、(1)医師若しくはその委任代理人により、又はその指示の下、本開示による化合物又は組成物を提供すること、与えること、服用させること、及び/又は処方すること、並びに(2)ヒト患者若しくはヒト自身、又はヒト以外の哺乳動物により、本開示による化合物又は組成物を投入すること、取り込むこと、又は消費することを指す。「予防及び/又は治療すること」及び「治療的及び/又は予防的処置」という用語は、区別せずに使用し得る。典型的には、式(I)の化合物が、NASHの治療、即ち、治療的処置に使用される。しかし、場合によっては、例えば、患者がNASHを発症した家族歴を有する場合には、式(I)の化合物がNASHの予防又は予防的処置に使用されることも予測される。
【0037】
「薬学的有効量」という用語は、所望の薬理学的及び/又は治療的効果を達成するのに十分な量、即ち、意図した目的に効果的な開示された化合物の量を意味する。個々の対象/患者の必要性は変化し得るが、開示された化合物の有効量の最適範囲の判断は、当該技術分野の技能の範囲内である。一般に、ここに開示する化合物による疾患及び/又は状態を治療するための投薬計画は、様々な要因、例えば対象/患者のタイプ、年齢、体重、性別、食事、及び/又は医学的状態に応じて決定することができる。
【0038】
「医薬組成物」という用語は、医療用途に適した任意の形態の本開示による化合物を意味する。
【0039】
式(I)及び(II)の化合物は、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの混合物を含む様々な立体異性体形態で存在してもよい。当然ながら、本発明は、式(I)及び(II)の化合物の全ての光学異性体、並びにそれらの混合物を包含する。従って、ジアステレオマー、ラセミ化合物、及び/又はエナンチオマーとして存在する式(I)及び(II)の化合物は、本開示の範囲内である。
【0040】
本開示は、式(I):
【化10】
(式中、R
2及びR
3は、R
2及びR
3が同時に水素にはならないという条件で、独立して水素原子、並びに直鎖、分岐、及び/又は環状C
1~C
6アルキル基の群から選択され;Xは、カルボン酸又はカルボン酸エステルを表す)
の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物の薬学的有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療する方法に関する。
【0041】
少なくとも一態様において、本開示は、それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療するための式(I):
【化11】
(式中、R
2及びR
3は、R
2及びR
3が同時に水素にはならないという条件で、独立して水素原子、並びに直鎖、分岐、及び/又は環状C
1~C
6アルキル基の群から選択され;Xは、カルボン酸又はカルボン酸エステルを表す)
の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物の薬学的有効量の使用に関する。
【0042】
少なくとも一態様において、本開示は、非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療するための式(I):
【化12】
(式中、R
2及びR
3は、R
2及びR
3が同時に水素にはならないという条件で、独立して水素原子、並びに直鎖、分岐、及び/又は環状C
1~C
6アルキル基の群から選択され;Xは、カルボン酸又はカルボン酸エステルである)
の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物に関する。
【0043】
式(I)の化合物、それらの使用、及びそれらを投与する方法について、以下の開示事項が含まれる。
R2及びR3が異なる場合、式(I)の化合物は、立体異性体形態で存在することができる。当然ながら、本発明は、式(I)の化合物の全ての光学異性体、及びそれらの混合物を包含する。
【0044】
少なくとも一実施形態において、R2及びR3は、独立して水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基から選択される。
【0045】
少なくとも一実施形態において、R2及びR3は、水素原子、メチル基、及びエチル基から選択される。
【0046】
少なくとも一実施形態において、R2及びR3の一方は水素原子であり、R2及びR3の他方はC1~C3アルキル基から選択される。一実施形態において、R2及びR3の一方は水素原子であり、R2及びR3の他方はメチル基又はエチル基から選択される。
【0047】
少なくとも一実施形態において、R2及びR3は、独立してC1~C6アルキル基である。一実施形態において、R2及びR3は、共にC1~C3アルキル基である。一実施形態において、R2及びR3は、同一であるか又は異なっており、それぞれ独立してメチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソプロピル基から選択される。一実施形態において、R2及びR3は同一であり、一対のメチル基、一対のエチル基、一対のn-プロピル基、及び一対のイソプロピル基から選択される。少なくとも好適な一実施形態において、R2及びR3はエチル基である。一実施形態において、R2及びR3の一方はメチル基であり、他方はエチル基である。一実施形態において、R2及びR3の一方はエチル基であり、他方はn-プロピル基である。
【0048】
少なくとも一実施形態において、Xはカルボン酸である。一実施形態において、Xがカルボン酸エステルである場合、それはC1~C6アルキルエステルである。これは、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n-ブチルエステル、及びtert-ブチルエステルから選択されてもよい。好ましくは、エステルは、メチルエステル及びエチルエステルから選択される。
【0049】
少なくとも一実施形態において、化合物は、様々な立体異性体形態で、例えばエナンチオマー(R又はS)、ジアステレオマー、又はそれらの混合物の形態で存在してもよい。
【0050】
少なくとも一実施形態において、化合物は、ラセミ形態で存在する。一実施形態において、化合物は、そのR型で存在する。別の実施形態において、化合物は、そのS型で存在する。
【0051】
式(I)による化合物が少なくとも1つの立体中心を持つ対イオンの塩、又は少なくとも1つの立体中心を持つアルコールのエステルである場合、化合物は、複数の立体中心を有し得る。そのような状況では、本開示の化合物は、ジアステレオマーとして存在し得る。従って、少なくとも一実施形態において、本開示の化合物は、少なくとも1種のジアステレオマーとして存在する。
【0052】
少なくとも一実施形態において、本開示の化合物は、2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸:
【化13】
である。
【0053】
動物実験及びヒト組織サンプルから確立されたNASHの肝臓コレステロールに対する副作用を考慮すると、記載した実施例は、式(I)の化合物、例えば化合物Nが、NASHの予防及び/又は治療に有益な効果があり得ることを明らかに示唆する。
【0054】
化合物N及び参照A(WO2010/128401の実施例2に従って調製した(2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルオキシ)ブタン酸)が共に、APOE*3Leiden.CETPダブルトランスジェニックマウスにおいて血漿コレステロールを有意に減少させることができたことが以前に示された。両化合物によって達成された絶対的減少は同等であり、これらの減少が達成される提案された機構は類似しているように見える(SREPB-2の活性化及び肝LDL-Rの発現増加)。従って、実施例に記載されたように、NASHの多くの重要な構成要素において化合物間に観察される明確な差異を発見したことは、驚くべきことであった。肝臓コレステロールエステルレベルの差異が肝臓コレステロール摂取の増加では説明できない(両化合物の摂取速度は同一、データは示されず)ため、これらの差異は、肝臓コレステロールの生合成に対する効果が異なることに関係している可能性がある。
【0055】
このモデルでは糞便中胆汁酸含有量のみが測定されたが、肝臓コレステロールエステル含有量の減少に伴う胆汁酸排泄の減少は、胆汁酸合成に利用可能な細胞コレステロールが少ないことを示唆している。FXR作用薬の有益な効果によって裏付けられるように(これらの化合物が作用する別の機構が存在するが)、胆汁酸合成の減少は、ヒトNASHにおいて抗炎症効果及び抗線維化効果の両方を有するはずである。肝臓コレステロールの利用可能性の低下は、コレステロール結晶の形成及び酸化コレステロール含有量を低下させるはずであり、両者ともにヒトにおけるNASHの潜在的に重要なメディエータである。以前の研究(データは示さず)において実証された有意に低下したコレステロールの血漿滞留時間も、酸化コレステロールの摂取を減少させ得る。
【0056】
肝臓コレステロールの減少は、NASHの動物モデルにおいて抗炎症効果を有するが、肝臓コレステロールの差異が、化合物Nが参照Aに比べて肝臓の炎症に対して優れた効果がある(実施例に示すように)ことを説明できるか否かは、不明である。参照Aではなく、化合物Nが大滴性脂肪変性を軽減する機構も不明であるが、脂肪酸のベータ酸化の増加によってもたらされるものではないように思われる(データは示さず)。
【0057】
前述のように、複数の独立した、互いに依存する代謝性、炎症性、かつ最終的に線維性となる成分がヒトNASHの発症に収束する。いずれの治療も、成功には、好ましくは上流の代謝/炎症性標的を介してNASHのあらゆる態様に対処する必要があるように思われる。添付の実施例に記載した独特で広範な代謝効果、炎症効果及び組織学的効果は、NASHを有するヒト対象における化合物Nの有効性の試験を正当化する。
【0058】
式(I)の化合物は、例えば、2009年7月13日出願のPCT出願WO2010/008299、及び以下の実施例に記載されているようにして製造することができる。
【0059】
実施例1~13は例示的であり、当業者であればこれらの一般的方法を適用して式(I)の範囲内の他の化合物に到達する方法を理解する。本開示の化合物は、薬学的に許容される塩又はエステルの形態であってもよい。例えば、式(I)の化合物は、エステル、例えばリン脂質、グリセリド、又はC1~C6アルキルエステルの形態であってもよい。少なくとも一実施形態において、エステルは、グリセリド、又はC1~C6アルキルエステルから選択される。少なくとも一実施形態において、エステルは、トリグリセリド、1,2-ジグリセリド、1,3-ジグリセリド、1-モノグリセリド、2-モノグリセリド、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、n-ブチルエステル、及びtert-ブチルエステルから選択される。少なくとも一実施形態において、式(I)の化合物は、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n-ブチルエステル、又はtert-ブチルエステルとして、例えばメチルエステル又はエチルエステルとして存在する。典型的には、式(I)で表されるエステル(例えば、エチルエステル)は、消化管内で加水分解される。
【0060】
本開示に適する塩としては、NH
4+;金属イオン、例えばLi
+、Na
+、K
+、Mg
2+、又はCa
2+;プロトン化第1級アミン、例えばtert-ブチルアンモニウム、(3S,5S,7S)-アダマンタン-1-アンモニウム、1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-アンモニウム、プロトン化アミノピリジン(例えば、ピリジン-2-アンモニウム);プロトン化第2級アミン、例えばジエチルアンモニウム、2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシ-N-メチルヘキサン-1-アンモニウム、N-エチルナフタレン-1-アンモニウム、プロトン化第3級アミン、例えば4-メチルモルホリン-4-イウム、プロトン化第4級アミン、例えば2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタン-1-アミニウム、及びプロトン化グアニジン、例えばアミノ((4-アミノ-4-カルボキシブチル)アミノ)メタンイミニウム、又はプロトン化複素環、例えば1H-イミダゾール-3-イウムの塩が挙げられるが、これに限らない。適する塩の更なる例としては、ジプロトン化ジアミン、例えばエタン-1,2-ジアンモニウム、又はピペラジン-1,4-ジイウムの塩が挙げられる。本開示による他の塩は、プロトン化キトサン:
【化14】
を含んでもよい。
【0061】
少なくとも実施形態において、塩は、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びコリン塩から選択される。一実施形態において、塩は、ナトリウム塩又はカルシウム塩である。
【0062】
本開示は、式(I)の化合物の薬学的有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象におけるNASHを予防又は治療する方法を提供する。対象は、ヒト又はヒト以外の哺乳動物であってもよい。ここに開示する化合物は、薬剤として、例えば医薬組成物において投与されてもよい。従って、本発明の別の態様は、非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療するための式(I)の化合物を含む組成物、例えば医薬組成物である。
【0063】
ここに開示する組成物は、少なくとも1種の式(I)の化合物を含んでもよく、場合により少なくとも1種の非活性医薬成分、即ち、賦形剤を含んでもよい。非活性成分は、活性成分が、安全、好都合、及び/又はその他使用のために許容されるものとなるよう、活性成分を適用可能かつ有効な調製物へと可溶化、懸濁、増粘、希釈、乳化、安定化、保存、保護、着色、香味付け、及び/又は調合することができる。賦形剤の例としては、溶媒、担体、希釈剤、結合剤、充填剤、甘味料、芳香剤、pH調整剤、粘度調整剤、酸化防止剤、増量剤、保湿剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤、滑沢剤、着色剤、分散剤、及び保存料が挙げられるが、これに限らない。賦形剤は、2つ以上の役割又は機能を有してもよく、2以上の群に分類してもよい。分類は単に説明のためであり、限定を意図したものではない。一部の実施形態において、例えば、少なくとも1種の賦形剤は、トウモロコシデンプン、ラクトース、グルコース、微晶質セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、エタノール、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース、及び脂肪性物質、例えば硬質脂肪、又はそれらの適切な混合物から選択されてもよい。一部の実施形態において、ここに開示する組成物は、少なくとも1種の式(I)の化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容される抗酸化剤、例えば、トコフェロール、例えばα-トコフェロール、βトコフェロール、γ-トコフェロール、及びδ-トコフェロール、又はそれらの混合物、BHA、例えば2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、及び3-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、又はそれらの混合物、並びにBHT(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン)、又はそれらの混合物を含む。
【0064】
ここに開示する組成物は、経口投与形態、例えば、錠剤、又はゼラチン軟質若しくは硬質カプセルに製剤化してもよい。剤形は、経口投与に適した任意の形状、例えば球形、長円形、楕円形、立方体、規則的、及び/又は不規則形状とすることができる。当技術分野で公知の従来の製剤化技法を使用して本開示による化合物を製剤化してもよい。一部の実施形態において、組成物は、ゼラチンカプセル又は錠剤の形態であってもよい。
【0065】
式(I)の化合物の適切な日用量は、約5mgから約2gの範囲であり得る。例えば、一部の実施形態において、日用量は、約10mgから約1.5g、約50mgから約1g、約100mgから約1g、約150mgから約900mg、約50mgから約800mg、約100mgから約800mg、約100mgから約600mg、約150から約550mg、又は約200から約500mgの範囲である。少なくとも一実施形態において、日用量は、約200mgから約600mgの範囲である。少なくとも一実施形態において、日用量は、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、又は約900mgである。化合物は、1日当たり例えば、1回、2回、又は3回投与してもよい。少なくとも一実施形態において、式(I)の化合物は、用量当たり約200mgから約800mgの範囲の量が投与される。少なくとも一実施形態において、式(I)の化合物は、1日1回投与される。
【0066】
本発明者らは、式(I)の化合物、例えば2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸が、注目すべきほど良好な医薬活性を有することを見出している。驚くべきことに、ここに開示する式(I)の化合物は、NASHを予防及び/又は治療するための天然に存在するオメガ3脂肪酸、例えばEPA及びDHAと比較して、改善された生物学的活性を示す。
【0067】
本発明の一部の特定の実施形態を以下に列挙する。
式(I):
【化15】
(式中、R
2及びR
3は、R
2及びR
3が同時に水素にはならないという条件で、独立して水素原子、並びに直鎖、分岐、及び/又は環状C
1~C
6アルキル基の群から選択され;Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、又はリン脂質である)の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物の薬学的有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療する方法。より具体的には、R
2及びR
3は、独立して水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基から選択される。より具体的には、R
2及びR
3は、独立してC
1~C
6アルキル基であり、例えば、R
2及びR
3は、同一であるか又は異なっており、それぞれ独立してメチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソプロピル基から選択される。好ましくは、R
2及びR
3は、どちらもエチル基である。一実施形態において、Xはカルボン酸である。別の実施形態において、Xはカルボン酸エステル、例えばC
1~C
6アルキルエステルであり、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n-ブチルエステル、及びtert-ブチルエステルから選択され、例えば、メチルエステル及びエチルエステルから選択される。グリセリドが、トリグリセリド、1,2-ジグリセリド、1,3-ジグリセリド、1-モノグリセリド、及び2-モノグリセリドから選択される、上記方法。一実施形態において、化合物は、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの混合物の形態で存在する。化合物が、そのR形態で存在する上記方法。一実施形態において、化合物は、そのS形態で存在する。別の実施形態において、化合物は、ラセミ形態で存在する。好適な実施形態において、本発明は、R
2及びR
3がエチル基であり、Xがカルボン酸である上記方法を提供する。式(I)の化合物の薬学的有効量は、用量当たり約5mgから約2gの範囲、例えば用量当たり約200mgから約800mg、例えば約600mgである。方法の一実施形態において、対象はヒトである。化合物は、好ましくは毎日、例えば1日1回投与される。化合物が、経口投与のための医薬組成物として、例えば、ゼラチンカプセル又は錠剤の形態で製剤化される、開示された方法。医薬組成物は、少なくとも1種の結合材、賦形剤、希釈剤、又はそれらの任意の組合せを更に含んでもよい。医薬組成物は、例えばトコフェロール、BHA、及びBHT、又はそれらの混合物から選択される抗酸化剤を更に含む。それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を治療及び/又は予防する方法であって、2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸:
【化16】
又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの薬学的有効量を対象に投与することを含む、方法。
【0068】
それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療するための薬剤の製造における式(I):
【化17】
(式中、R
2及びR
3は、R
2及びR
3が同時に水素原子にはならないという条件で、独立して水素原子、並びに直鎖、分岐、及び/又は環状C
1~C
6アルキル基の群から選択され;Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、又はリン脂質である)の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物の薬学的有効量の使用。それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を治療及び/又は予防するための薬剤の製造における2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸:
【化18】
又は、その薬学的に許容される塩若しくはエステルの薬学的有効量の使用。薬学的有効量が、用量当たり約200mgから約800mgの範囲である、上記使用。2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸が、1日1回投与される、上記使用。
【実施例】
【0069】
本開示は、以下の非限定的実施例により更に説明することができ、ここでは、熟練した化学者に公知の標準的な技法及びこれらの実施例に記載した技法に類似の技法を必要に応じて使用し得る。当然ながら、当業者は、本明細書で提供される開示と矛盾しない更なる実施形態を想定する。
【0070】
特に明記しない限り、反応は、室温、典型的には18~25℃の範囲で、HPLCグレードの溶媒を用い、無水条件下にて行った。蒸発は、真空中でロータリーエバポレーションにより行った。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル40~63μm(Merck)上でのフラッシュ操作によって、又は予充填シリカゲルカラム「MiniVarioFlash」、「SuperVarioFlash」、「SuperVarioPrep」又は「EasyVarioPrep」(Merck)を使用したArmen Spotflashによって実施した。核磁気共鳴(NMR)シフト値は、Bruker Avance DPX200又は300装置で記録し、ピーク多重度は、以下のように記載した:s、一重項;d、二重項;dd、双二重項;t、三重項;q、四重項;p、五重項;m、多重項;br、広幅。質量スペクトルは、LC/MS分光計で記録した。分離は、Agilent 1100シリーズモジュールを使用し、Eclipse XDB-C18 2.1×150mmカラムで勾配溶離を用いて実施した。溶離剤として、0.01%トリフルオロ酢酸又は0.005%ギ酸ナトリウムを含有する緩衝液中5~95%アセトニトリルの勾配を使用した。質量スペクトルは、正イオン化モードと負イオン化モードが切り替わるGl956A質量分光計(エレクトロスプレー、3000V)を用いて記録した。報告された収率は、例示的であり、必ずしも達成可能な最大値を表すものではない。
【0071】
中間体の調製:
[実施例1]
S-(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルエタンチオアートの調製
【0072】
【0073】
不活性雰囲気下、トリフェニルホスフィン(21.0g、80mmol)を、乾燥THF(170mL)に0℃にて溶解させ、DIAD(15.8mL、80mmol)に滴加した。0℃にて40分後、白色懸濁液を(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン-1-オール(11.5g、40mmol)とチオ酢酸(5.7mL、80mmol)の乾燥THF(50mL)溶液に15分かけて滴加した。得られた混濁混合物を0℃にて30分間、その後周囲温度にて1.5時間撹拌した。ヘプタンを添加し(200mL)、混合物を10分間撹拌し、沈殿した白色固体をろ過により取り出してヘプタン(150mL)ですすいだ。残渣を濃縮してTHFの大部分を除去し、周囲温度にて18時間撹拌した。混合物をろ過し、濃縮してヘプタン(200mL)に添加した。得られた混合物を2時間撹拌し、ろ過し、蒸発させた。残渣を、EtOAc:ヘプタン(2:98)、次いでEtOAc:ヘプタン(4:96)、最後にEtOAc:ヘプタン(5:95)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分の濃縮により、11.0g(収率79%)の表題化合物を油状物として得た。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.95 (t, 3H, J=7.5 Hz), 1.40 (m, 2H), 1.58 (m, 2H), 2.06 (m, 4H), 2.29 (s, 3H), 2.77 - 2.87 (m, 10H), 5.25 - 5.42 (m, 10H); MS (CI (CH4)): 387 [M+C3H5]+, 375 [M+C2H5]+, 347 [M+H]+, 333 [M-CH2]+, 305 [R-SH]+.
【0074】
[実施例2]
(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン-1-チオールの調製
【0075】
【0076】
S-(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルエタンチオアート(7.00g、20.2mmol)をMeOH(100mL)に、油滴が溶解するまで10分間撹拌して溶解させた後、無水炭酸カリウムK2CO3(2.79g、20.2mmol)を一度に添加した。混合物を周囲温度にて1時間20分撹拌し、1MのHCl(50mL)と水(150mL)の添加によりクエンチした。白濁混合物をEt2O(250mL)に添加し、相を分離した。水相をEt2O(2×250mL)で抽出した。合わせた有機相を塩水(250mL)で洗浄し、乾燥させた(MgSO4)。ろ過と蒸発により表題化合物が油状物(5.99g、収率97%)として得られ、これを更に精製することなく使用した。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.96 (t, 3H, J=7.5 Hz), 1.31 (t, 1H, J=7.8 Hz), 1.44 (m, 2H), 1.61 (m, 2H), 2.06 (m, 4H), 2.51 (m, 2H), 2.77-2.85 (m, 8H), 5.28-5.41 (m, 10H); MS (CI (CH4)): 345 [M+C3H5]+, 333 [M+C2H5]+, 305 [M+H]+, 271 [M-SH]+.
【0077】
[実施例3]
(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルメタンスルホン酸塩の調製
【0078】
【0079】
Et3N(1.50mL、10.8mmol)と塩化メタンスルホニル(402μL、5.20mmol)を、0℃に保持した(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン-1-オール(1.15g、4.0mmol)のCH2Cl2(40mL)溶液に窒素下で添加した。混合物を0℃にて1時間撹拌し、氷水(100g)に注ぎ、水相をEt2O(50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を0.5MのH2SO4(35mL)に添加し、有機相をNaHCO3(飽和水溶液)(25mL)で洗浄した後、乾燥させた(Mg2SO4、10グラム)。真空中でのろ過及び濃度により、1.24グラムの粗油状物が得られた。30グラムの15~40μmMerckシリカを充填したArmenのSVP D26カラム上、流速20mL/min、UV210nmで15mL画分を収集する精製を、勾配溶離(ヘプタン:EtOAc(100:0)で開始し、10分で10%EtOAcに増加させ、次いで5分で20%EtOAcに増加させ(10分保持)、次いで5分で40%EtOAcに増加させる(0分保持))を使用して実施した。画分6~14から1.16g(収率79%)の表題化合物が油状物として得られた。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.97 (t, 3H), 1.50 (m, 2H), 1.75 (m, 2H), 2.03-2.15 (m, 4H), 2.76-2.86 (m, 8H), 2.99 (s, 3H), 4.22 (t, 2H), 5.27-5.40 (m, 10H); MS (エレクトロスプレー): 389.2 [M+Na]+.
【0080】
[実施例4]
(4S,5R)-3-((S)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オン、及び(4S,5R)-3-((R)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オンの調製
【0081】
【0082】
窒素下、0℃に保持した2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸(3.0g、7.9mmol)を乾燥ジクロロメタン(40mL)に投入した混合物を、DMAP(1.0g、9.5mmol)と1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.8g、8.7mmol)に添加した。得られた混合物を0℃にて20分間撹拌し、(4S,5R)-4-メチル-5-フェニル-2-オキサゾリジノン(1.7g、9.5mmol)を添加し、得られた混濁混合物を周囲温度にて24時間撹拌した。混合物をろ過し、減圧下で濃縮すると、2種のジアステレオマーの混合物として所望の生成物を含有する粗生成物が得られた。残渣を、Armen Spotflash装置で、ヘプタン中2%酢酸エチルを溶離剤として使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。2種のジアステレオマーを分離し、適切な画分を濃縮した。(4S,5R)-3-((R)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オンが最初に溶離され、油状物として0.95g(収率47%)が得られた。1.47g(収率67%)の(4S,5R)-3-((S)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オンが、油状物として得られた。(4S,5R)-3-((R)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オン (E1):1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.93-1.06 (m, 9H), 1.45-1.60 (m, 4H), 1.75-1.85 (m, 1H), 2.05-2.15 (m, 5H), 2.55-2.70 (m, 2H), 2.87 (m, 8H), 4.69 (t, 1H), 4.79 (p, 1H), 5.30-5.45 (m, 10H), 5.72 (d, 1H), 7.32 (m, 2H), 7.43 (m, 3H). (4S,5R)-3-((S)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オン:1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.93 (d, 3H), 0.99 (t, 3H), 1.05 (t, 3H), 1.40-1.56 (m, 4H), 1.50-1.75 (m, 1H), 2.00-2.15 (m, 5H), 2.47-2.65 (m, 2H), 2.83 (m, 8H), 4.62 (t, 1H), 4.85 (p, 1H), 5.25-5.45 (m, 10H), 5.70 (d, 1H), 7.32 (m, 2H), 7.43 (m, 3H).
【0083】
標的分子の調製:
[実施例5]
エチル2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)プロパノアートの調製
【0084】
【0085】
不活性雰囲気下、(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン-1-チオール(305mg、1.00mmol)を、0℃に保持したNaH(鉱油中60%、44mg、1.10mmol)の乾燥DMF(10mL)溶液に添加した。10分後、ブロモプロピオン酸エチル(136μL、1.05mmol)を添加し、混合物を0℃にて1.5時間撹拌した。反応混合物を飽和NH4Cl水溶液(20mL)とヘプタン(50mL)に添加した。相を分離し、水相をヘプタン(2×25mL)で抽出した。合わせた有機物を塩水(25mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、蒸発させると、376mgの表題化合物が粗油状物として得られた。勾配溶離(純粋なヘプタンで開始し、ヘプタン:EtOAc95:5へと段階的に増加させる)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、318mg(収率79%)の表題化合物が油状物として得られた。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.95 (t, 3H), 1.25 (t, 3H), 1.41 (d, 3H), 1.44 (m, 2H), 1.58 (m, 2H), 2.06 (m, 4H), 2.60 (m, 2H), 2.71 - 2.85 (m, 8H), 3.36 (d, 1H), 4.17 (m, 2H), 5.25 - 5.40 (m, 10H); MS (CI (CH4)): 445 [M+C3H5]+, 433 [M+C2H5]+, 405 [M+H]+, 359 [M-OEt]+, 331 [M-CO2Et]+, 303 [R-S]・+.
【0086】
[実施例6]
エチル2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノアートの調製
【0087】
【0088】
不活性雰囲気下、0℃にて、(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン-1-チオール(305mg、1.00mmol)の乾燥DMF(10mL)溶液に、NaH(鉱油中60%、44mg、1.1mmol)を添加した。15分後、ブロモ酪酸エチル(154μL、1.05mmol)を添加した。混合物を0℃にて1時間撹拌した。飽和NH4Cl水溶液(20mL)、水(20mL)、及びヘプタン(50mL)を添加した。相を分離し、水相をヘプタン(2×25mL)で抽出した。合わせた有機物を水(25mL)と塩水(25mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、蒸発させると、379mgの表題化合物が粗油状物として得られた。勾配溶離(純粋なヘプタンで開始し、ヘプタン:EtOAc95:5へと段階的に増加させる)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、345mg(収率82%)の表題化合物が油状物として得られた。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.93 - 1.00 (m, 6H), 1.25 (t, 3H), 1.44 (m, 2H), 1.59 (m, 2H), 1,68 (m, 1H), 1.87 (m, 1H), 2.07 (m, 4H), 2.57 (m, 2H), 2.73 - 2.88 (m, 8H), 3.12 (m, 1H), 4.17 (m, 2H), 5.27 - 5.46 (m, 10H); MS (CI (CH4)): 459 [M+C3H5]+, 447 [M+C2H5]+, 419 [M+H]+, 373 [M-OEt]+, 345 [M-CO2Et]+, 303 [R-S]・+.
【0089】
[実施例7]
2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸の調製
【0090】
【0091】
エチル2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノアート(209mg、0.50mmol)をエタノール(2.5mL)に溶解させ、LiOH×H2O(168mg、4.0mmol)の水(2.5mL)溶液に添加した。得られた混濁溶液を、不活性雰囲気下、70℃にて2時間撹拌し、冷却し、水(10mL)と1MのHCl(5mL)をpH=1~2になるまで添加した。混合物をヘプタン(2×20mL)とジエチルエーテル(20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、減圧下で濃縮すると、154mgの表題化合物が粗油状物として得られた。勾配溶離(純粋なヘプタンで開始し、ヘプタン:EtOAc(HOAcを5%含む)80:20へと段階的に増加させる)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、151mg(収率77%)の表題化合物が油状物として得られた。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.95 (t, 3H), 1.02 (t, 3H), 1.46 (m, 2H), 1.52 - 1.78 (m, 3H), 1.90 (m, 1H), 2.05 (m, 4H), 2.63 (m, 2H), 2.75 - 2.90 (m, 8H), 3.14 (t, 1H) (m, 1H), 4.17 (m, 2H), 5.27 - 5.46 (m, 10H).
【0092】
[実施例8]
(S)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸の調製
【0093】
【0094】
窒素下、過酸化水素(水中30%、0.71mL、6.91mmol)と水酸化リチウム一水和物(0.15g、3.46mmol)を、0℃に保持した(4S,5R)-3-((S)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オン(0.95g、1.73mmol)のテトラヒドロフラン(12mL)と水(4mL)の溶液に添加した。反応混合物を0℃にて30分間撹拌した。10%Na2SO3(水溶液)(30mL)を添加し、5MのHClでpHを約2に調整し、混合物をヘプタン(30mL)で2回抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、濃縮した。残渣を、ヘプタンと酢酸エチルの漸増極性混合物(98:8→1:1)を溶離剤として使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにかけた。適切な画分の濃縮により、0.15g(収率17%)の表題生成物が油状物として得られた。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 1.00 (t, 3H), 1.07 (t, 3H), 1.46 (m, 2H), 1.60-1.75 (m, 3H), 1.85 (m, 1H), 2.10 (m, 4H), 2.66 (m, 2H), 2.80-2.90 (m, 8H), 3.21 (t, 1H), 5.35-5.45 (m, 10H); MS (エレクトロスプレー): 389.3 [M-H]-; [α]D -49o (c=0.12, エタノール).
【0095】
[実施例9]
(R)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸の調製
【0096】
【0097】
窒素下、過酸化水素(水中30%、1.04mL、10.2mmol)と水酸化リチウム一水和物(0.21g、5.09mmol)を、0℃に保持した(4S,5R)-3-((R)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オン(1.40g、2.55mmol)のテトラヒドロフラン(15mL)と水(5mL)の溶液に添加した。反応混合物を0℃にて45分間撹拌した。10%Na2SO3(水溶液)(35mL)を添加し、5MのHClでpHを約2に調整し、混合物をヘプタン(35mL)で2回抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、濃縮した。残渣を、ヘプタンと酢酸エチルの漸増極性混合物(98:8→1:1)を溶離剤として使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにかけた。適切な画分の濃縮により、0.17g(収率22%)の表題生成物が油状物として得られた。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 1.00 (t, 3H), 1.07 (t, 3H), 1.46 (m, 2H), 1.60-1.75 (m, 3H), 1.85 (m, 1H), 2.10 (m, 4H), 2.66 (m, 2H), 2.80-2.90 (m, 8H), 3.21 (t, 1H), 5.35-5.45 (m, 10H); MS (エレクトロスプレー): 389.3 [M-H]-; [α]D +50o (c=0.14, エタノール).
【0098】
[実施例10]
エチル2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)-2-メチルプロパノアートの調製
【0099】
【0100】
不活性雰囲気下、0℃にて、(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン-1-チオール(305mg、1.00mmol)の乾燥DMF(10mL)溶液に、NaH(鉱油中60%、44mg、1.1mmol)を添加した。15分後、エチル2-ブロモ-2-メチルブチラート(154μL、1.05mmol)を添加し、混合物を0℃にて1.5時間撹拌した。飽和NH4Cl水溶液(20mL)の添加により、反応混合物をクエンチした。水(20mL)とヘプタン(50mL)を添加し、相を分離した。水相をヘプタン(2×25mL)で抽出した。合わせた有機物を水(25mL)と塩水(2×25mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、蒸発させると、377mgの表題化合物が粗油状物として得られた。定組成溶離(ヘプタン:EtOAc 98:2)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、307mg(収率77%)の表題化合物が油状物として得られた。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.95 (t, 3H), 1.28 (t, 3H), 1.42 (m, 2H), 1.48 (s, 6H), 1.54 (m, 2H), 2.06 (m, 4H), 2.58 (m, 2H), 2.71 - 2.85 (m, 8H), 4.15 (m, 2H), 5.22 - 5.48 (m, 10H); MS (CI (CH4)): 459 [M+C3H5]+, 447 [M+C2H5]+, 419 [M+H]+, 373 [M-OEt]+, 345 [M-CO2Et]+, 303 [R-S]・+.
【0101】
[実施例11]
2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)-2-メチルプロパン酸の調製
【0102】
【0103】
エチル2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)-2-メチルプロパノアート(209mg、0.50mmol)をエタノール(2.5mL)に溶解させ、LiOH×H2O(168mg、4.0mmol)の水(2.5mL)溶液に添加した。得られた混濁溶液を不活性雰囲気下、70℃にて2時間撹拌し、冷却し、水(10mL)と1MのHCl(5mL)をpH=1~2になるまで添加した。混合物をヘプタン(3×20mL)で3回抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、減圧下で濃縮すると、101mgの表題化合物が粗油状物として得られた。勾配溶離(純粋なヘプタンで開始し、ヘプタン:EtOAc(HOAcを5%含む)80:20へと段階的に増加させる)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、78mg(40%)の表題化合物が油状物として得られた。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.95 (t, 3H), 1.35-1.66 (m, 4H), 1.50 (s, 6H), 2.07 (m, 4H), 2.63 (t, 3H), 2.70-2.92 (m, 8H), 5.13-5.50 (m, 10H).
【0104】
[実施例12]
エチル1-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)シクロブタンカルボキシラートの調製
【0105】
【0106】
不活性雰囲気下、0℃にて、(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン-1-チオール(305mg、1.00mmol)の乾燥DMF(10mL)溶液に、NaH(鉱油中60%、44mg、1.1mmol)を添加した。15分後、エチル2-ブロモ-シクロブタンカルボキシラート(170μL、1.05mmol)を添加し、混合物を0℃にて1.5時間撹拌した。飽和NH4Cl水溶液(20mL)の添加により、反応をクエンチした。ヘプタン(50mL)を添加し、相を分離した。水相をヘプタン(2×25mL)で抽出した。合わせた有機物を水(25mL)と塩水(25mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、蒸発させると、409mgの表題化合物が粗油状物として得られた。定組成溶離(ヘプタン:アセトン98:2)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、243mg(収率56%)の表題化合物が油状物として得られた。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.95 (t, 3H), 1.27 (t, 3H), 1.42 (d, 3H), 1.54 (m, 2H), 1.84 (m, 1H), 1.96-2.23 (m, 7H), 2.51 (m, 2H), 2.60 (m, 2H), 2.73-2.90 (m, 8H), 4.18 (m, 2H), 5.23-5.43 (m, 10H); MS (CI (CH4)): 471 [M+C3H5]+, 459 [M+C2H5]+, 431 [M+H]+, 385 [M-OEt]+, 357 [M-CO2Et]+, 303 [R-S]・+.
【0107】
[実施例13]
2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸(化合物N)の調製
【0108】
【0109】
不活性雰囲気下、NaOEt(EtOH中21wt.%、0.37mL、0.98mmol)を、0℃に保持した2-メルカプト-2-エチル酪酸(0.08g、0.49mmol)の乾燥EtOH(7mL)溶液に滴加した。得られた混合物を0℃にて30分間撹拌した後、(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルメタンスルホナート(0.15g、0.41mmol)の乾燥EtOH(3mL)溶液を滴加した。得られた混濁混合物を周囲温度にて24時間撹拌し、飽和NH4Cl水溶液(15mL)に注ぎ、pHが約2になるまで3MのHClを添加した後、EtOAc(2×20mL)で2回抽出した。合わせた有機抽出物を塩水(10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、真空中で蒸発させた。残渣を、溶離剤としてヘプタン中10~25%酢酸エチルの勾配を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分の濃縮により、0.12g(収率70%)の表題化合物を油状物として得た。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.88-1.02 (m, 9H), 1.45-1.58 (2xm, 4H), 1.72 (m, 2H), 1.82 (m, 2H) 2.09 (m, 4H), 2.53 (t, 2H), 2.76-2.86 (m, 8H), 5.29-5.39 (m, 10H. MS (エレクトロスプレー): 417.3 [M-H]-.
【0110】
[生物学的実施例]
食餌誘発NAFLD/NASHマウスモデル(APOE*3Leiden.CETPダブルトランスジェニックマウス)における化合物Nの評価
APOE*3Leiden.CETPダブルトランスジェニックマウスは、ヒトアポリポタンパク質C1(APOC1)及びCETPに加え、ヒトアポリポタンパク質E3(APOE3)の変異体であるAPOE*3Leidenを発現している。APOE*3Leiden.CETPダブルトランスジェニックマウスは、主にVLDL/LDLサイズのリポタンパク分画に限定される血漿コレステロール及びトリグリセリドレベルの上昇を示す。このモデルでは、食餌のコレステロール含有量を増加させることにより、ヒトNASHの特徴が全て発症する。
【0111】
コレステロール含有量(0.25~1%コレステロールw/w)が異なる高脂肪食餌(24%脂肪w/w)で飼育されたAPOE*3Leiden.CETPマウスにおいて試験を実施した。一試験(1%コレステロールw/wを使用)では、3週間の導入期間後、17匹(20%)の低応答マウスを試験から除去し、残りの65匹のマウスを血漿コレステロール、トリグリセリド、血液グルコース、体重、及び年齢(t=0)を一致させた12匹ずつの群(対照群は+5匹)に細分し、処置を開始した。マウスには、毎日07hr00と10hr00の間に、化合物N、参照A、又は対照(トウモロコシ油)のいずれかを強制経口投与した。4、8、12、16、及び20週間の処置後、5時間の絶食期間(更に化合物又はビヒクル投与後5時間)後に血液サンプルを採取した。血漿コレステロールとトリグリセリドを測定した。14週間の処置後、NASH発症を評価し、試験の結果を判定するために対照群からの代表的なマウス5匹を屠殺した。20週間の処置後、マウスをCO2窒息により屠殺し、ヘパリン心臓血液をサンプリングし、組織を収集した。肝臓の脂肪変性、炎症、及びコラーゲン含有量を分析した。
【0112】
高脂肪食餌(24%脂肪及び0.25%コレステロールの食餌、いずれもw/w)で飼育したマウスの中の4週間の積極的処置群のAPOE*3Leiden.CETPマウスにおいて、更なる試験を実施して追加の代謝データを収集した。
【0113】
[生物学的実施例1]
肝臓コレステロール含有量に対する化合物Nの効果
ApoE
*3L-CETPマウス(0.25%コレステロール食餌w/w)に投与した化合物Nは、肝臓コレステロールエステルの有意な減少を誘発した(p<0.001)。参照Aでは、コレステロールエステルの軽度の減少も観察された(p<0.05)。総肝臓コレステロールは43%減少した(統計は実施せず)。肝臓コレステロールに対する化合物Nの効果を表1及び
図1に示す。
【0114】
【0115】
[生物学的実施例2]
肝臓の炎症に対する化合物Nの効果
ApoE
*3L-CETPマウスに投与した化合物Nは、およそ85%という炎症性の病巣の数の有意な減少(p<0.001)を誘発し、総炎症スコアの有意な低下をもたらした。参照Aは、炎症性の病巣の軽度の減少(p<0.01)を誘発した。化合物Nは、参照A(p<0.01)よりも肝臓の炎症に対して有意に良好な効果を有する。肝臓の炎症に対する化合物Nの効果を表2及び
図2に示す。
【0116】
【0117】
[生物学的実施例3]
大滴性脂肪変性に対する化合物Nの効果
ApoE
*3L-CETPマウスに投与した化合物Nは、大滴性脂肪変性を消失させた(対照に対してp<0.001)。参照A又はロシグリタゾンでは、大滴性脂肪変性に対する有意な効果は認められなかった。化合物Nは、参照A及びロシグリタゾン(いずれも<0.001)とは、有意に異なっていた。大滴性脂肪変性に対する化合物Nの効果を表3及び
図3に示す。
【0118】
【0119】
[生物学的実施例4]
糞便中胆汁酸含有量に対する化合物Nの効果
ApoE
*3L-CETPダブルトランスジェニックマウスに投与した化合物Nは、糞便中胆汁酸排泄の有意な50%の減少(対照に対してp=0.006)を示した。参照Aは、より軽度ではあるが有意な減少(対照に対してp<0.05)を誘発した。糞便中胆汁酸含有量に対する化合物Nの効果を表4及び
図4に示す。
【0120】
【0121】
[生物学的実施例5]
肝線維症(コラーゲン含有量)に対する化合物Nの効果
ApoE
*3L-CETPダブルトランスジェニックマウスに投与した化合物Nは、対照動物と比較して、肝臓のコラーゲン含有量の有意な30%の減少(p<0.005)を示した。肝線維症に対する化合物Nの効果を表5及び
図5に示す。
【0122】
【0123】
[生物学的実施例6]
総血漿コレステロールに対する化合物Nの効果
ApoE
*3L-CETPダブルトランスジェニックマウスに投与した化合物Nは、4週間後に対照(p<0.001)と比較して、総血漿コレステロールの52%の減少を示した。血漿HDLコレステロール値は倍増(p<0.001、データは示さず)し、血漿コレステロールの減少は、アテローム生成促進性apoB粒子関連コレステロール画分に特異的であるという事実の根拠となった。総血漿コレステロールに対する化合物Nの効果を表6及び
図6に示す。
【0124】
【表6】
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療するための式(I)
【化32】
(式中、R
2
及びR
3
は、R
2
及びR
3
が同時に水素にはならないという条件で、独立して水素原子、並びに直鎖、分岐及び/又は環状C
1
~C
6
アルキル基の群から選択され、
Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、又はリン脂質である)
の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物。
(実施形態2)
R
2
及びR
3
が、独立して水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基から選択される、実施形態1に記載の使用のための実施形態1に記載の化合物。
(実施形態3)
R
2
及びR
3
が、独立してC
1
~C
6
アルキル基から選択される、実施形態1に記載の使用のための実施形態1に記載の化合物。
(実施形態4)
R
2
及びR
3
がエチル基である、実施形態1に記載の使用のための実施形態1から3のいずれか一項に記載の化合物。
(実施形態5)
Xがカルボン酸である、実施形態1に記載の使用のための実施形態1に記載の化合物。
(実施形態6)
XがC
1
~C
6
アルキルエステルである、実施形態1に記載の使用のための実施形態1に記載の化合物。
(実施形態7)
Xが、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n-ブチルエステル、及びtert-ブチルエステルの群から選択される、実施形態1に記載の使用のための実施形態1又は6に記載の化合物。
(実施形態8)
Xが、メチルエステル及びエチルエステルから選択される、実施形態1に記載の使用のための実施形態1、6又は7に記載の化合物。
(実施形態9)
Xが、トリグリセリド、1,2-ジグリセリド、1,3-ジグリセリド、1-モノグリセリド、及び2-モノグリセリドから選択されるグリセリドである、実施形態1に記載の使用のための実施形態1に記載の化合物。
(実施形態10)
前記化合物が、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの混合物の形態で存在する、実施形態1に記載の使用のための実施形態1から9のいずれか一項に記載の化合物。(実施形態11)
前記化合物が、そのR形態、そのS形態、又はラセミ形態で存在する、実施形態1に記載の使用のための実施形態10に記載の化合物。
(実施形態12)
R
2
及びR
3
がエチル基であり、Xがカルボン酸である、実施形態1に記載の使用のための実施形態1に記載の化合物。
(実施形態13)
前記化合物が、用量当たり約5mg~約2gの間の用量で投与される、実施形態1に記載の使用のための実施形態1から12のいずれか一項に記載の化合物。
(実施形態14)
前記化合物が、用量当たり約200mg~約800mgの間の用量で投与される、実施形態1に記載の使用のための実施形態2から13のいずれか一項に記載の化合物。
(実施形態15)
前記化合物が、1日1回投与される、実施形態1に記載の使用のための実施形態1から14のいずれか一項に記載の化合物。
(実施形態16)
前記化合物が、経口投与のための医薬組成物として製剤化される、実施形態1に記載の使用のための実施形態1から15のいずれか一項に記載の化合物。
(実施形態17)
前記医薬組成物が、ゼラチンカプセル又は錠剤の形態である、実施形態1に記載の使用のための実施形態16に記載の化合物。
(実施形態18)
前記医薬組成物が、少なくとも1種の結合材、賦形剤、希釈剤、又はそれらの任意の組合せを更に含む、実施形態1に記載の使用のための実施形態16に記載の化合物。
(実施形態19)
前記医薬組成物が、抗酸化剤を更に含む、実施形態16に記載の使用のための実施形態16に記載の化合物。
(実施形態20)
前記抗酸化剤が、トコフェロール、BHA、及びBHT、又はそれらの混合物から選択される、実施形態1に記載の使用のための実施形態19に記載の化合物。
(実施形態21)
非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療するための2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸
【化33】
又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
(実施形態22)
用量当たり約200mg~約800mgの間の用量で投与される、実施形態21に記載の使用のための実施形態21に記載の化合物。
(実施形態23)
それを必要とする対象における非アルコール性脂肪性肝炎を予防及び/又は治療する方法であって、式(I)
【化34】
(式中、R
2
及びR
3
は、R
2
及びR
3
が同時に水素にはならないという条件で、独立して水素原子、並びに直鎖、分岐及び/又は環状C
1
~C
6
アルキル基の群から選択され;
Xは、カルボン酸又はその誘導体であって、該誘導体は、カルボン酸エステル、グリセリド、又はリン脂質である)
の化合物、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくはそのような塩の溶媒和物の薬学的有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
(実施形態24)
R
2
及びR
3
がエチル基であり、Xがカルボン酸である、実施形態23に記載の方法。