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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】バイアルアダプター
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A61J1/20 314B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023102722
(22)【出願日】2023-06-22
(62)【分割の表示】P 2020570868の分割
【原出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2023120377
(43)【公開日】2023-08-29
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】62/686,144
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514221366
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン アンド カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール パイア マリシ
(72)【発明者】
【氏名】ウェストン エフ.ハーディング
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0367931(US,A1)
【文献】特表2016-531607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0065486(US,A1)
【文献】特開2016-096846(JP,A)
【文献】特開2011-167230(JP,A)
【文献】国際公開第2005/032623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部材を有するバイアルに、および/またはバイアルから流体を移送するためのバイアルアダプターであって、
コンポーネント接続インターフェースおよびバイアル接続インターフェースを有する本体における、嵌合コンポーネントの接続インターフェースと係合するように構成された前記コンポーネント接続インターフェースと、
第1の容積から前記第1の容積よりも大きい第2の容積に拡張するように構成されたチャンバーを含む圧力均等化アセンブリと、
前記本体に接続された第1の端部と、前記第1の端部の反対側に配置された第2の端部とを有するピアシング部材であって、前記ピアシング部材および前記本体が流体通路および圧力均等化通路を規定し、前記流体通路は前記コンポーネント接続インターフェースと流体連絡し、前記圧力均等化通路は前記圧力均等化アセンブリの前記チャンバーと流体連絡し、前記ピアシング部材が前記流体通路と流体連絡する第1および第2の流体ポートと、前記圧力均等化通路と流体連絡する圧力均等化ポートとを規定し、
前記ピアシング部材の前記第2の端部はバイアルの閉鎖部を貫通するように構成されたピアシングポイントを含み、前記バイアル接続インターフェースは、前記ピアシング部材がバイアルのシール部材を通して押されたときに前記バイアルの縁に係合する突起を含み、
前記第1および第2の流体ポートは、前記ピアシング部材の長手方向軸の実質的に反対側に配置され、
前記第1の流体ポートおよび第2の流体ポート、ならびに前記ピアシング部材の一部を組み合わせて、前記第1の流体ポートおよび第2の流体ポートに流体を向ける前記ピアシング部材の前記第2の端部のV字形プロファイルを規定する、バイアルアダプター。
【請求項2】
前記第1および第2の流体ポートは、前記ピアシング部材の前記第1および第2の端部の中間の位置から前記ピアシング部材の前記第2の端部まで延びている、請求項1に記載のバイアルアダプター。
【請求項3】
前記V字形プロファイルの底部が、前記ピアシング部材の前記ピアシングポイントと交差する、請求項に記載のバイアルアダプター。
【請求項4】
前記第1および第2の流体ポートは、前記第1および第2の流体ポートの最大寸法が、前記ピアシング部材の第1の端部から前記ピアシング部材の第2の端部までの方向に延びる、請求項1に記載のバイアルアダプター。
【請求項5】
前記第1の流体ポートは第1の軸に沿って延在し、前記第2の流体ポートは第2の軸に沿って延在し、前記第1の軸は前記第2の軸と交差するように構成され、前記バイアルから引き出される前記流体の量を最大にするために、前記第1の流体ポートおよび前記第2の流体ポートは半径方向内側に先細になる、請求項1に記載のバイアルアダプター。
【請求項6】
前記ピアシング部材は、前記第1の流体ポートから前記ピアシングポイントまで延びる第1の刃先と、前記第2の流体ポートから前記ピアシングポイントまで延びる第2の刃先とを規定する、請求項1に記載のバイアルアダプター。
【請求項7】
前記第1の流体ポートは、前記ピアシング部材の第2の端部に配置された仕切り壁によって前記第2の流体ポートから分離され、前記第1および第2の刃先は、前記仕切り壁から離間している、請求項に記載のバイアルアダプター。
【請求項8】
前記第1の刃先は、第1の平面部分によって前記仕切り壁から離間され、前記第2の刃先は、第2の平面部分によって前記仕切り壁から離間される、請求項に記載のバイアルアダプター。
【請求項9】
コンポーネント接続インターフェースおよびバイアル接続インターフェースを有する本体における、嵌合コンポーネントの接続インターフェースと係合するように構成された前記コンポーネント接続インターフェースと、
第1の容積から前記第1の容積よりも大きい第2の容積に拡張するように構成されたチャンバーを含む圧力均等化アセンブリと、
前記本体に接続された第1の端部と、前記第1の端部の反対側に配置された第2の端部とを有するピアシング部材であって、前記ピアシング部材および前記本体が流体通路および圧力均等化通路を規定し、前記流体通路は前記コンポーネント接続インターフェースと流体連絡し、前記圧力均等化通路は前記圧力均等化アセンブリの前記チャンバーと流体連絡し、前記ピアシング部材が前記流体通路と流体連絡する第1および第2の流体ポートと、前記圧力均等化通路と流体連絡する圧力均等化ポートとを規定し、前記ピアシング部材の前記第2の端部はバイアルの閉鎖部を貫通するように構成されたピアシングポイントを含み、前記第1および第2の流体ポートは前記ピアシング部材の前記第1および第2の端部の中間の位置から前記ピアシング部材の前記第2の端部まで延びる、前記ピアシング部材と、を含み、
前記第1の流体ポートおよび第2の流体ポート、ならびに前記ピアシング部材の一部を組み合わせて、前記第1の流体ポートおよび第2の流体ポートに流体を向ける前記ピアシング部材の前記第2の端部のV字形プロファイルを規定し、
前記ピアシング部材は、前記第1の流体ポートから前記ピアシングポイントまで延びる第1の刃先と、前記第2の流体ポートから前記ピアシングポイントまで延びる第2の刃先とを規定する、バイアルアダプター。
【請求項10】
前記第1の流体ポートは、前記ピアシング部材の第2の端部に配置された仕切り壁によって前記第2の流体ポートから分離されている、請求項に記載のバイアルアダプター。
【請求項11】
前記第1および第2の刃先は、前記仕切り壁から離間している、請求項10に記載のバイアルアダプター。
【請求項12】
前記仕切り壁の一部が、前記ピアシング部材の外面に対して半径方向内側に凹んでいる、請求項10に記載のバイアルアダプター。
【請求項13】
前記V字形プロファイルの開放端が、前記ピアシング部材に対して半径方向外向きの方向を向いている、請求項に記載のバイアルアダプター。
【請求項14】
前記V字形プロファイルの底部が、前記ピアシング部材の前記ピアシングポイントと交差する、請求項に記載のバイアルアダプター。
【請求項15】
前記第1および第2の流体ポートは、前記第1および第2の流体ポートの最大寸法が、前記ピアシング部材の第1の端部から前記ピアシング部材の第2の端部までの方向に延びる、請求項に記載のバイアルアダプター。
【請求項16】
前記第1の流体ポートは第1の軸に沿って延在し、前記第2の流体ポートは第2の軸に沿って延在し、前記第1の軸は前記第2の軸と交差するように構成され、前記バイアルから引き出される前記流体の量を最大にするために、前記第1の流体ポートおよび前記第2の流体ポートは半径方向内側に先細になる、請求項に記載のバイアルアダプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材を有する流体容器との間で流体を移送するためのバイアルアダプターに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2018年6月18日に出願された「バイアルアダプターのピアスメンバー」と題された米国仮出願シリアル番号62/686,144の優先権を主張し、その開示全体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
医薬品や溶剤は、多くの場合、ガラス製またはプラスチック製の容器(バイアル(vial)、ボトル、バッグなど)で提供され、ゴム、プラスチック、またはエラストマーの栓、ストッパー、メンブレン(membrane)、または穿刺(piercing)可能なキャップで密封されている。このようなシール部材は、薬剤の劣化や汚染を防ぎ、振とうによる容器の内容物の混合を可能にし、容器の内容物が漏れて周囲を汚染するのを防ぐ。フローチャネルおよびフローチャネルと連絡する開口部を規定するカニューレまたは中空スパイクは、通常、そのようなシーリング部材を通して挿入されて、流体を容器に供給し、そこから流体を引き出す。
【0004】
容器にアクセスするために使用される従来の装置は、容器の密封部材を貫通し、ピアシング部材の遠位端に開口部を設けるピアシング部材を利用する。典型的には、ピアシング部材がバイアルにアクセスした後、バイアルを逆さにして、薬剤を容器から引き出す。流体容器の内容物が、ピアシング(piercing)部材の開口部の最も外側の縁のすぐ下のレベルまで排出されると、ピアシング部材がわずかに引き出されない限り、それ以上の流体は流体容器から排出することができない。したがって、多くの場合、薬剤の最後の数滴(非常に高価および/または有毒である可能性がある)が容器から完全に除去されないため、廃棄物が発生し、容器の洗浄/廃棄が必要になる。ピアシング部材が容器の密封部材を通して引っ込められて容器内の残りの薬剤を除去する場合、有毒な薬剤または薬剤がそのような手順中に漏れ出して周囲の環境を汚染し、花粉、細菌、または粉塵などの望ましくない粒子を含む濾過されていない空気がピアシング部材に引き込まれ、その中の薬剤を汚染する可能性がある。したがって、多くの従来の装置は、ピアシング部材が完全にバイアルに入った後、容器またはバイアルにロックされるであろう。場合によっては、容器には、すべての薬剤が容器から取り出されるわけではないという事実を考慮して、取り出される余分な量の薬剤が提供される。その後、ユーザーは容器から推奨用量数を引き出すことができるが、そうすると、医療用液体の各容器のコストが増加し、廃棄物が増加し、容器の洗浄または廃棄がより複雑になる。シーリング部材は多種多様な構成、サイズ、および厚さで利用可能であるため、安全かつ便利な方法でバイアル内の薬物の使用を最適化しながら、複数の異なるシーリング部材での使用に適したスパイク(spike)を設計することは困難である。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、バイタルアダプターは、コンポーネント接続インターフェースおよびバイアル接続インターフェースを有する本体における、嵌合コンポーネントの接続インターフェースと係合するように構成されたコンポーネント接続インターフェースと、第1の容積から第1の容積よりも大きい第2の容積に拡張するように構成されたチャンバーを含む圧力均等化アセンブリと、前記本体に接続された第1の端部と、前記第1の端部の反対側に配置された第2の端部とを有するピアシング部材と、を含んでいる。前記ピアシング部材および前記本体が流体通路および圧力均等化通路を規定する。前記流体通路は、前記コンポーネント接続インターフェースと流体連絡通信し、前記圧力均等化通路は、前記圧力均等化アセンブリの前記チャンバーと流体連絡し、前記ピアシング部材が前記流体通路と流体連絡する第1および第2の流体ポートと、前記圧力均等化通路と流体連絡する圧力均等化ポートとを規定する。前記ピアシング部材の前記第2の端部は、バイアルの閉鎖部を貫通するように構成されたピアシングポイントを含み、前記第1および第2の流体ポートは、前記ピアシング部材の前記第1および第2の端部の中間の位置から前記ピアシング部材の前記第2の端部まで延びる。前記第1および第2の流体ポート、ならびに前記ピアシング部材の一部が前記ピアシング部材の前記第2の端部のV字形のプロファイルを規定する。
【0006】
V字形プロファイルの開放端は、ピアシング部材に対して半径方向外向きの方向を向いていてもよい。V字形プロファイルの底部は、ピアシング部材のピアシングポイントと交差する場合がある。前記第1の流体ポートは、前記ピアシング部材の第2の端部に配置された仕切り壁によって前記第2の流体ポートから分離されていてもよい。前記仕切り壁の一部が、前記ピアシング部材の外面に対して半径方向内側に凹んでいてもよい。前記第1および第2の流体ポートは、前記ピアシング部材に対して半径方向外向きに流体を向けるように構成されてもよい。前記第1および第2の流体ポートは、前記第1および第2の流体ポートの最大寸法が、前記ピアシング部材の第1の端部から前記ピアシング部材の第2の端部までの方向に延びてもよい。前記第1および第2の流体ポートは、バイアルから流体の少なくとも98%を引き出すように構成されてもよい。前記第1および第2の流体ポートは、バイアルから98%から99.2%の流体を引き出すように構成されてもよい。
【0007】
一態様では、バイタルアダプターは、コンポーネント接続インターフェースおよびバイアル接続インターフェースを有する本体における、嵌合コンポーネントの接続インターフェースと係合するように構成されたコンポーネント接続インターフェースと、第1の容積から第1の容積よりも大きい第2の容積に拡張するように構成されたチャンバーを含む圧力均等化アセンブリと、本体に接続された第1の端部と、第1の端部の反対側に配置された第2の端部とを有するピアシング部材とを含み、前記ピアシング部材および前記本体が流体通路および圧力均等化通路を規定する。前記流体通路は前記コンポーネント接続インターフェースと流体連絡し、前記圧力均等化通路は前記圧力均等化アセンブリの前記チャンバーと流体連絡する。前記ピアシング部材が前記流体通路と流体連絡する第1および第2の流体ポートと、前記圧力均等化通路と流体連絡する圧力均等化ポートとを規定する。前記ピアシング部材の前記第2の端部はバイアルの閉鎖部を貫通するように構成されたピアシングポイントを含み、前記第1および第2の流体ポートは前記ピアシング部材の前記第1および第2の端部の中間の位置から前記ピアシング部材の前記第2の端部まで延びる。前記第1および第2の流体ポートは、バイアルから少なくとも98%の流体を引き出すように構成されている。
【0008】
前記第1および第2の流体ポートは、バイアルから98%から99.2%の流体を引き出すように構成されてもよい。前記第1および第2の流体ポートならびに前記ピアシング部材の一部が、前記ピアシング部材の第2の端部にV字形のプロファイルを規定してもよい。前記V字形プロファイルの開放端が、前記ピアシング部材に対して半径方向外向きの方向を向いていてもよい。前記V字形プロファイルの底部が、前記ピアシング部材の前記ピアシングポイントと交差する場合がある。前記第1の流体ポートは、前記ピアシング部材の第2の端部に配置された仕切り壁によって前記第2の流体ポートから分離されていてもよい。前記仕切り壁の一部が、前記ピアシング部材の外面に対して半径方向内側に凹んでいてもよい。前記第1および第2の流体ポートは、前記ピアシング部材に対して半径方向外向きに流体を向けるように構成されてもよい。前記第1および第2の流体ポートは、前記第1および第2の流体ポートの最大寸法が、前記ピアシング部材の第1の端部から前記ピアシング部材の第2の端部までの方向に延びてもよい。前記バイアルアダプターは、前記ピアシング部材の少なくとも一部を受け入れる格納式スリーブをさらに含み得る。前記格納式スリーブが、前記ピアシング部材の第1の端部から前記ピアシング部材の第2の端部まで延びてもよい。
【0009】
さらなる一態様では、バイタルアダプターは、コンポーネント接続インターフェースおよびバイアル接続インターフェースを有する本体における、嵌合コンポーネントの接続インターフェースと係合するように構成されたコンポーネント接続インターフェースと、第1の容積から第1の容積よりも大きい第2の容積に拡張するように構成されたチャンバーを含む圧力均等化アセンブリと、本体に接続された第1の端部と、第1の端部の反対側に配置された第2の端部とを有するピアシング部材とを含んで、前記ピアシング部材および前記本体が流体通路および圧力均等化通路を規定する。前記流体通路は前記コンポーネント接続インターフェースと流体連絡し、前記圧力均等化通路は前記圧力均等化アセンブリの前記チャンバーと流体連絡する。前記ピアシング部材が前記流体通路と流体連絡する第1および第2の流体ポートと、前記圧力均等化通路と流体連絡する圧力均等化ポートとを規定する。前記ピアシング部材の前記第2の端部はバイアルの閉鎖部を貫通するように構成されたピアシングポイントを含み、前記第1および第2の流体ポートは前記ピアシング部材の前記第1および第2の端部の中間の位置から前記ピアシング部材の前記第2の端部まで延びる。前記第1および第2の流体ポートは、バイアルアダプターおよび前記バイアルアダプターに接続されたバイアルから少なくとも98%の流体を引き出すように構成されている。
【0010】
別の一態様では、バイタルアダプターは、コンポーネント接続インターフェースおよびバイアル接続インターフェースを有する本体における、嵌合コンポーネントの接続インターフェースと係合するように構成されたコンポーネント接続インターフェースと、第1の容積から第1の容積よりも大きい第2の容積に拡張するように構成されたチャンバーを含む圧力均等化アセンブリと、本体に接続された第1の端部と、第1の端部の反対側に配置された第2の端部とを有するピアシング部材とを含み、前記ピアシング部材および前記本体が流体通路および圧力均等化通路を規定する。前記流体通路は前記コンポーネント接続インターフェースと流体連絡し、前記圧力均等化通路は前記圧力均等化アセンブリの前記チャンバーと流体連絡し、前記ピアシング部材が前記流体通路と流体連絡する第1および第2の流体ポートと、前記圧力均等化通路と流体連絡する圧力均等化ポートとを規定する。前記ピアシング部材の前記第2の端部はバイアルの閉鎖部を貫通するように構成されたピアシングポイントを含み、前記第1および第2の流体ポートは前記ピアシング部材の前記第1および第2の端部の中間の位置から前記ピアシング部材の前記第2の端部まで延びる。前記第1の流体ポートは、前記ピアシング部材の前記第2の端部に配置された仕切り壁によって前記第2の流体ポートから分離され、前記ピアシング部材は、前記第1の流体ポートから前記ピアシングポイントまで延びる第1の刃先と、前記第2の流体ポートから前記ピアシングポイントまで延びる第2の刃先とを規定する。前記第1および第2の刃先は前記仕切り壁から離間している。
【0011】
前記第1の刃先は、第1の平面部分によって前記仕切り壁から離間され得、前記第2の刃先は、第2の平面部分によって前記仕切り壁から離間され得る。前記第1および第2の平面部分がV字形のプロファイルを形成し得る。前記仕切り壁が、前記ピアシング部材の長手方向軸に沿って延びる方向に前記ピアシングポイントと整列した尖った端部を含む。前記尖った端部に隣接する前記仕切り壁が丸みを帯びている場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一態様によるシリンジアダプターの斜視図である。
図2図2は、図1のバイアルアダプターの正面図である。
図3図3は、図2の線3-3に沿ったバイアルアダプターの断面図である。
図4図4は、図1のバイアルアダプターの正面図であり、ピアシング部材を示している。
図5図5は、図1のバイアルアダプターの部分的な左下斜視図であり、ピアシング部材を示している。
図6図6は、図1のバイアルアダプターの背面下部斜視図であり、ピアシング部材を示している。
図7図7は、図1のバイアルアダプターの正面図であり、ピアシング部材を示している。
図8図8は、図1のバイアルアダプターの背面下部斜視図であり、ピアシング部材を示している。
図9図9は、図1のバイアルアダプターの背面下部斜視図であり、ピアシング部材を示している。
図10A図10Aは、従来のバイアルアダプターの左側面図であり、流体の流れの方向を示している。
図10B図10Bは、流体の流れ方向を示す、図1のバイアルアダプターの左側面図である。
図11図11は、可能性のある気泡架橋を示す、図1の従来のバイアルアダプターの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、説明の目的のために、用語「上部(upper)」、「下部(lower)」、「右(right)」、「左(left)」、「垂直の(vertical)」、(水平の(horizontal)」、「上(top)」、「下(bottom)」、「横の(lateral)」、「縦の(longitudinal)」、およびそれらの派生語は、図面において配向されるように、本発明に関するものとする。しかしながら、本発明は、それとは反対に明示的に特定されない限り、代替的な変形を前提としてもよいことは理解されよう。また、添付の図面に示され、および以下の明細書に記載される具体的なデバイスおよびプロセスは、単に本発明の例示的な実施形態であることも理解されるべきである。そのため、本明細書に開示される実施形態に関連する具体的な寸法および他の物理的な特徴は、制限的であるとしてみなされるべきではない。しかしながら、本発明は、それとは反対に明示的に特定されない限り、代替的な変形を前提としてもよいことは理解されよう。
【0014】
図1~9を参照すると、バイアルアダプター10は、コンポーネント接続インターフェース14およびバイアル接続インターフェース16を有する本体12を含み、第1の容積からその第1の容積より大きな第2の容積に拡張するように構成されたチャンバー20を含む圧力均等化アセンブリ18と、本体12に接続された第1の端部24、および、第1の端部24の反対側に配置された第2の端部26を有するピアシング部材22とを含んでいる。バイアルアダプター10は、シール部材を有する流体容器(図示せず)から流体を移送するように構成される。流体容器は、バイアル(vial)、ボトル、および注入バッグなどのバッグを含み得るが、これらに限定されない。
【0015】
一態様では、バイアルアダプター10は、ピアシング部材22を取り囲む格納式(retractable)スリーブ28を含む。格納式スリーブ28は、ピアシング部材22の第1の端部24からピアシング部材22の第2の端部26まで延びることができる。格納式スリーブ28は、格納式スリーブ28がバイアルと係合すると収縮し、バイアルアダプター10をバイアルに取り付けている間に流体または蒸気が漏れるのを防ぐように構成される。格納式スリーブ28は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,919,826号に示され、記載されている格納式スリーブ28と同じであり得る。しかしながら、バイアルアダプター10は、他の任意の適切なスリーブ配置を利用することができる。格納式スリーブ28は、ピアシング部材22に関する明確さのために、図4~9には示されていない。
【0016】
図3~9および11を参照すると、ピアシング部材22および本体12は、流体通路30および圧力均等化通路32を規定し、流体通路30は、コンポーネント接続インターフェース14と流体連絡し、圧力均等化通路32は、圧力均等化アセンブリ18のチャンバー20と流体連絡する。ピアシング部材22は、流体通路30と流体連絡する第1および第2の流体ポート34、36と、圧力均等化通路32と流体連絡する圧力均等化ポート38とを規定する。ピアシング部材22の第2の端部26は、バイアルの閉鎖部を貫通するように構成されたピアシングポイント(貫通点)40を含む。第1および第2の流体ポート34、36は、ピアシング部材22の第1および第2の端部24、26の中間の位置から、ピアシング部材22の第2の端部26まで延びる。以下でより詳細に論じられるように、第1および第2の流体ポート34、36、およびピアシング部材22の一部は、ピアシング部材22の第2の端部26にV字形のプロファイル42を規定する。図11に示すように、従来のバイアルアダプターでは、流体ポートとベント/圧力均等化ポートの間で気泡がブリッジする可能性があり、圧力均等化ボリュームを介してシリンジに空気のみが吸引されるため、バイアルから流体を引き出すことができなくなる可能性がある。対照的に、バイアルアダプター10では、圧力均等化ポート38の少なくとも一部は、第1および第2の流体ポート34、36の任意の部分よりもピアシングポイント40の近くに配置され、流体通路30と圧力均等化通路32との間の気泡架橋の可能性を最小限に抑える。
【0017】
再び図1~6を参照すると、コンポーネント接続インターフェース14は、注射器アダプターなどの嵌合構成要素の接続インターフェースと係合するように構成される。コンポーネント接続インターフェース14は、2018年1月15日に出願された米国特許出願第15/871,330号に示され、記載されている接続インターフェースと同じであり得る。しかしながら、バイアルアダプター10は、他の任意の適切な接続インターフェースを利用することができる。上で論じた流体通路30は、コンポーネント接続インターフェース14を通って延びる。コンポーネント接続インターフェース14は、流体通路30を密封し、バイアルアダプター10を利用する流体の閉じた移送を容易にするための膜44を含む。
【0018】
図1~5を参照すると、圧力均等化アセンブリ18は、圧力均等化ポート38、圧力均等化通路32、および圧力均等化アセンブリ18のチャンバー20を使用することにより、流体移送中にバイアル内の圧力を均等化するように構成される。圧力均等化通路32は、バイアルアダプター10を使用してバイアルに導入された空気または流体がバイアル内の空気を置換し、チャンバー20を第1の容積から第2の容積に拡張するように、チャンバー20と流体連絡している。特に、バイアルアダプター10の使用中、圧力均等化アセンブリ18は、バイアル内の圧力を調節するために利用され、バイアルアダプター10内およびバイアル内に薬剤およびその蒸気を含む。圧力均等化アセンブリ18は、米国特許第8,523,838号に示されるバルーンまたは膜の配置(membrane arrangement)であり得、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるが、濾過されたベント出口などのこれに限定されない他の適切な圧力均等化構成が利用され得る。さらに、圧力均等化アセンブリ18は、チャンバー20と圧力均等化通路32との間に配置された、疎水性フィルタなどのフィルタ46を含み得る。流体通路30および圧力均等化通路32は、円形、楕円形、楕円形、半円形、および正方形を含むがこれらに限定されない任意の適切な断面を有することができる。
【0019】
図1~9を参照すると、バイアル接続インターフェース16は、バイアルアダプター10をバイアルなどの容器に固定するように構成される。バイアル接続インターフェース16は、ピアシング部材22が流体容器のシール部材を通して押されたときに流体容器の縁に係合する突起50を有する複数の弾性アーム48を含むが、バイアル接続インターフェース16の他の適切な構成は利用することができる。バイアルアダプター10およびバイアル接続インターフェース16のサイズは、バイアルのサイズに応じて変化する。一態様では、バイアルアダプター10は、13mmバイアル、20mmバイアル、28mmバイアル、32mmなどのように、各バイアルサイズに対して特定のサイズおよび寸法を有する。弾性アーム48は、バイアルアダプター10が流体容器に取り付けられる過程にあるときに半径方向外向きに偏向し、容器に完全に固定された後、元の位置に戻る。
【0020】
図4~9を参照すると、ピアシング部材22のV字形プロファイル42は、開放端52および底部54を含む。V字形のプロファイル42は、容器のシール部材の貫通を容易にするために、第1および第2の刃先56、58を規定する。V字形のプロファイル52および刃先56、58は、ピアシング部材22がシーリング部材を貫通するときのシーリング部材のコアリングおよび断片化を最小限に抑える。V字形プロファイル42の開放端52は、ピアシング部材22に対して半径方向外向きの方向を向いている。V字形プロファイル42の底部54は、ピアシング部材22のピアシングポイント40と交差している。V字形プロファイル42の底部54はフィレットを定義(明確に)するが、他の適切な構成を利用することもできる。ピアシング部材22のV字形プロファイル42は、バイアルの密封部材の穿刺を支援し、流体を第1および第2の流体ポート34、36に向けて、バイアルから引き出すことができる流体の量を最大化するのを支援するように構成される。第1の流体ポート34は、ピアシング部材22の第2の端部26に配置された仕切り壁60によって第2の流体ポート36から分離されている。仕切り壁60は平面であるが、他の適切な形状および構成を利用することができる。仕切り壁60の一部は、ピアシング部材22の外面62に対して半径方向内側に凹んでいる。仕切り壁60の一部は、ピアシング部材22の第2の端部26に隣接するピアシング部材22の外面62と同一平面上にある。V字形プロファイル42と仕切り壁60との間の遷移はフィレット(filleted)されているが、他の適切な遷移が利用され得る。ピアシング部材22は、断面が円形であり得るが、他の適切な形状および構成が利用され得る。第1および第2の刃先56、58は、ピアシングポイント40まで延在し、第1および第2の刃先56、58は、仕切り壁60から離間している。第1の刃先56は、第1の平面部分64によって仕切り壁60から離間されている。第2の刃先58は、第2の平面部分66によって仕切り壁60から離間されている。第1および第2の平面部分は、V字形プロファイル42の少なくとも一部を形成する。仕切り壁60は、ピアシング部材22の長手方向軸に沿って延びる方向にピアシングポイント40と位置合わせされた尖った端部68を含む。先の尖った端部に隣接する仕切り壁60の一部は丸みを帯びている。
【0021】
第1および第2の流体ポート34、36は、流体をピアシング部材22に対して半径方向外向きに向けるように構成される。特に、注射器アダプター(図示せず)を介してコンポーネント接続インターフェース14に接続された注射器(図示せず)からの流体は、流体通路30を通過し、第1および第2の流体ポート34、36を通って半径方向外向き、そして容器(container)の壁に通過する。図10Aに示されるように、従来のバイアルアダプターでは、流体は下向きに向けられ、流体の乱流作用のために泡立ちおよび気泡を形成し、それによりバイアル内容物をさらに使用する前に待機期間を必要とする。図10Bに示されるように、第1および第2の流体ポート34、36は、流体が容器の底部に向かって流れ落ちるのではなく、容器の壁に流体を向けるように構成される。そのような構成は、液体が粉末薬剤に強制的に当たって、アダプター10をさらに使用する前に消散するために追加の時間を必要とし得る乱れた気泡を生成することを防ぐ。
【0022】
再び図4~9を参照すると、第1および第2の流体ポート34、36は細長く、第1および第2の流体ポート34、36の最大寸法は、ピアシング部材22の第1の端部24からピアシング部材22の第2の端部26までの方向に延びる。第1および第2の流体ポート34、36は、他の適切な構成が利用され得るが、ピアシング部材22の長さの約50%にわたって延びることができる。第1の流体ポート34は第1の軸に沿って延在し、第2の流体ポート36は第2の軸に沿って延在し、第1の軸は第2の軸と交差するように構成される。言い換えれば、第1および第2の流体ポート34、36はそれぞれ、ピアシング部材22がピアシング部材22の第1の端部24からピアシング部材22の第2の端部26に向かって延びる方向に先細になるにつれて、半径方向内側に先細になる。第1および第2の流体ポート34、36の上部からバイアル接続インターフェース16の突起50の上部までの距離Hは、バイアルアダプター10を利用する引き抜き中のバイアル内の薬物損失を最小にするように選択される。特に、ピアシング部材22および第1および第2の流体ポート34、36の形状および構成、ならびに距離Hにより、バイアルアダプター10は、容器内のほぼすべての流体を抜き取り、それによって薬物の損失および無題を最小限に抑えるように構成される。一態様では、第1および第2の流体ポート34、36は、バイアルから流体の少なくとも98%を引き出すように構成される。さらなる態様では、第1および第2の流体ポート34、36は、バイアルから流体の98%から99.2%の間を引き出すように構成される。別の態様では、第1および第2の流体ポート34、36は、バイアルから97.4%から99.16%の間の流体を引き出すように構成される。一態様では、第1および第2の流体ポート34、36は、バイアルから流体の少なくとも98.3%を引き出すように構成される。
【0023】
一例では、バイアルアダプター10を試験して、バイアルから流体を引き出すための注射器および注射器アダプターに関連してバイアルアダプター10を利用して、残留薬物損失を決定した。20mlのガラス製薬剤バイアルに10mlの脱イオン水を入れた。充填されたバイアル、バイアルアダプター10、およびシリンジ/シリンジアダプターの重量を記録した。バイアルを逆さにし、バイアルアダプター10、シリンジアダプター、およびシリンジを使用して、バイアル内の水を抜き取った。液体を抜いた後、すべての成分を秤量して、バイアルに残っている残留水を計算した。残留流体損失を決定するために、10個のサンプルがテストされた。サンプルサイズ(N=10)の場合、バイアルアダプター10を使用して流体を引き出すと、バイアル内の平均残留流体損失は0.1701ml、バイアル内の最大流体損失は0.2524、バイアル内の最小流体損失は0.0838となった。同じテストで、バイアルアダプター10およびシステムとしてのバイアルの平均残留流体損失は合わせて0.1870mlであり、バイアルアダプター10およびバイアルの最大流体損失は0.2662mlであり、バイアルアダプター10およびバイアルの最小流体損失は0.0987mlのバイアルであった。
【0024】
本発明の特定の例示的な実施形態は、その特定の好ましい実施形態を参照して本明細書に示され、説明されており、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更を行うことができることが当業者によって理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11