(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】対基板作業機の作業ヘッド、および対基板作業機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
(21)【出願番号】P 2023504890
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2021009002
(87)【国際公開番号】W WO2022190172
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 和也
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第6108414(JP,B2)
【文献】特許第6037584(JP,B2)
【文献】国際公開第2020/174815(WO,A1)
【文献】特開平06-164196(JP,A)
【文献】特開2008-060437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータによるメンテナンスが実施されるメンテナンス実施部位と、
被写体を撮像するカメラと、
前記被写体に照明光を照射する光源と、
前記光源と直流電源の高圧側とを接続する高圧側配線内に直列接続され、前記メンテナンスが実施される時間帯を通して開路され、少なくとも前記カメラの撮像動作が行われる時間帯に閉路される高圧側スイッチと、
前記光源と前記直流電源の低圧側とを接続する低圧側配線内に直列接続され、前記カメラの前記撮像動作に同期して閉路される撮像用スイッチと、
を備える対基板作業機の作業ヘッド。
【請求項2】
前記メンテナンス実施部位は、少なくとも一部分が導電材料で形成されて、部品装着具を保持するとともに、前記作業ヘッドに対して取り付けおよび取り外しの前記メンテナンスが実施される装着具保持体であり、
前記被写体は、前記部品装着具および前記装着具保持体の少なくとも一方を含み、
前記対基板作業機は、部品装着機である、
請求項1に記載の対基板作業機の作業ヘッド。
【請求項3】
前記光源、前記高圧側スイッチ、および前記撮像用スイッチが基板に実装されている、請求項1または2に記載の対基板作業機の作業ヘッド。
【請求項4】
前記光源は、LEDライトであり、
前記作業ヘッドは、前記高圧側配線内または前記低圧側配線内に直列接続されて前記LEDライトに流れる電流を制限する電流制限抵抗であって、抵抗値が可変に制御される前記電流制限抵抗を備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の対基板作業機の作業ヘッド。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載された作業ヘッドを備える対基板作業機。
【請求項6】
オペレータによるメンテナンスが実施されるメンテナンス実施部位、および、被写体に照明光を照射する光源を有する作業ヘッドと、
前記被写体を撮像するカメラと、
前記光源と直流電源の高圧側とを接続する高圧側配線内に直列接続され、前記メンテナンスが実施される時間帯を通して開路され、少なくとも前記カメラの撮像動作が行われる時間帯に閉路される高圧側スイッチと、
前記光源と前記直流電源の低圧側とを接続する低圧側配線内に直列接続され、前記カメラの前記撮像動作に同期して閉路される撮像用スイッチと、
を備える対基板作業機。
【請求項7】
前記対基板作業機は、開閉可能に前記作業ヘッドを覆うとともに、前記メンテナンスが実施される時間帯を通して前記オペレータにより開状態に維持される保護カバーを備え、
前記高圧側スイッチは、前記保護カバーの前記開状態において開路され、前記保護カバーの閉状態において閉路される、
請求項5または6に記載の対基板作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、対基板作業を担当する作業ヘッド、および、作業ヘッドを備えた対基板作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線が施された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。さらに、対基板作業を実施する対基板作業機を複数台並べて、対基板作業ラインを構成することが一般的となっている。多くの対基板作業機は、対基板作業を担当する作業ヘッドを備える。例えば、部品の装着作業を実施する部品装着機は、複数の吸着ノズルを保持したオートツール(装着具保持体)の着脱が可能な装着ヘッドを備える。一部の装着ヘッドは、吸着ノズルに吸着された部品を被写体として側方から撮像するカメラ、および被写体に照明光を照射する光源を備える。この種の作業ヘッドおよび対基板作業機に関連する技術例が特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された部品装着機は、小型部品用吸着装置と大型部品用吸着装置とを交換して取り付けるように構成され、小型部品用吸着装置に吸着された小型部品を側方から撮像する撮像装置、および、撮像装置の光学系ユニットを撮像位置と退避位置の間で移動させる位置切換装置を備える。この構成では、光学系ユニットを撮像位置に移動させて小型部品を撮像することにより、小型部品の吸着姿勢を画像認識する。また、安定して吸着される大型部品の撮像を省略し、光学系ユニットを退避位置に移動させて大型部品への干渉を回避する。これにより、撮像装置を小型・軽量化することができる、とされている。
【0004】
また、特許文献2に開示された部品装着機は、上記の小型部品用吸着装置に相当する部品吸着装置をヘッド移動機構によって移動させる構成を有する。部品吸着装置は、回転ヘッドと、回転ヘッドに保持された複数のノズルホルダと、各ノズルホルダに下向きに保持される複数の吸着ノズルと、R軸の回りに回転ヘッドを回転させるR軸駆動機構と、複数のノズルホルダをそれぞれ軸心線の回りに回転させるQ軸駆動機構と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6108414号公報
【文献】特許第6037584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の構成において、部品吸着装置(小型部品用吸着装置または大型部品用吸着装置)および撮像装置は、共通の作業ヘッドに接近して設けられる。したがって、メンテナンス等の際に交換する部品吸着装置を誤って撮像装置に接触させてしまうことが起こり得る。一方、撮像装置は、小型・軽量化を実現しつつコストを低廉化するために、照明用の光源に電源を供給する配線が露出した構成となっている。また、部品吸着装置の交換を始めとするメンテナンス作業の際、安全を確保する目的で部品装着機の可動部用の駆動電源は遮断されるが、状況確認やメンテナンスの便宜を考慮して光源用の制御電源は活きたままとなっている。このため、部品吸着装置を誤って配線などに接触させてしまうと、短絡故障により光源が焼損するなどの電気故障のおそれが生じる。
【0007】
それゆえ、本明細書では、メンテナンス実施中における光源周りの電気故障のおそれを解消することができる対基板作業機の作業ヘッド、および対基板作業機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、オペレータによるメンテナンスが実施されるメンテナンス実施部位と、被写体を撮像するカメラと、前記被写体に照明光を照射する光源と、前記光源と直流電源の高圧側とを接続する高圧側配線内に直列接続され、前記メンテナンスが実施される時間帯を通して開路され、少なくとも前記カメラの撮像動作が行われる時間帯に閉路される高圧側スイッチと、前記光源と前記直流電源の低圧側とを接続する低圧側配線内に直列接続され、前記カメラの前記撮像動作に同期して閉路される撮像用スイッチと、を備える対基板作業機の作業ヘッドを開示する。
また、本明細書は、上記した作業ヘッドを備える対基板作業機を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で開示する作業ヘッドや対基板作業機では、オペレータがメンテナンス実施部位のメンテナンスを実施している時間帯を通して高圧側スイッチおよび撮像用スイッチが開路されるので、光源周りの配線が直流電源から切り離される。このため、メンテナンスに使用される交換用器具や工具などが仮に光源周りの配線に接触しても、電気故障は発生しない。したがって、メンテナンス実施中における光源周りの電気故障のおそれが解消される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の作業ヘッドおよび対基板作業機の一例として、装着ヘッドを備えた部品装着機の全体構成を示す平面図である。
【
図2】装着ヘッドに設けられたオートツール、側視カメラ、および光源を下側から見上げた平面図である。
【
図3】カメラ本体および光路形成部の構成を示す側面図である。
【
図4】光源の電源回路の構成、および装着ヘッドの制御の構成を模式的に示す図である。
【
図5】従来技術における光源の電源回路の構成、および装着ヘッドの制御の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.部品装着機1の全体構成
本明細書では、実施形態の対基板作業機の一例に相当する部品装着機1、および、実施形態の作業ヘッドの一例に相当する装着ヘッド8について詳述する。まず、装着ヘッド8を備えた部品装着機1の全体構成について、
図1を参考にして説明する。
図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面下側(前側)から紙面上側(後側)に向かう方向がY軸方向、鉛直方向がZ軸方向となる。部品装着機1は、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、部品認識用カメラ49、および制御装置5(
図4参照)などが基台10に組み付けられて構成される。
【0012】
基板搬送装置2は、一対のガイドレール21を備える。一対のガイドレール21は、基台10上でX軸方向に延在しており、互いに平行しつつY軸方向に離隔して配置される。一対のガイドレール21の離隔距離は、基板Kの幅寸法に合わせて調整可能となっている。基板搬送装置2は、水平姿勢の基板Kをガイドレール21に沿って作業実施位置まで搬送する。作業実施位置の下側に設けられた位置決め機構(図略)は、基板Kの位置決めおよび解放を行う。
【0013】
部品供給装置3は、X軸方向に並んで配列された複数のフィーダ31により構成される。各フィーダ31は、多数の部品が一列に収納されたキャリアテープを、先端側の供給位置32に向けて送り出す。キャリアテープは、供給位置32で部品を採取可能に供給する。
【0014】
部品移載装置4は、Y軸移動体41、X軸移動体42、装着ヘッド8、および基板認識用カメラ46などで構成される。Y軸移動体41は、直動機構に駆動されてY軸方向に移動する。X軸移動体42は、Y軸移動体41に装架され、直動機構に駆動されてX軸方向に移動する。装着ヘッド8は、X軸移動体42の前面に設けられた図略のクランプ機構に取り付けられ、X軸移動体42と共に水平二方向に移動する。
【0015】
装着ヘッド8の下側に、オートツール81が設けられる。オートツール81は、図略の回転駆動機構に駆動されて回転する。オートツール81の下側に、複数(
図1の例では8本)の吸着ノズル83が交換可能に保持される。吸着ノズル83は、図略の昇降駆動機構に駆動されて昇降するとともに、図略の回転駆動機構に駆動されて回転する。さらに、吸着ノズル83は、図略のエア供給機構から負圧エアおよび正圧エアが選択的に供給される。これにより、吸着ノズル83は、部品供給装置3の供給位置32から部品を吸着して保持し、基板Kに装着する。吸着ノズル83は、部品の採取および基板Kへの装着を行う部品装着具の一形態である。
【0016】
オートツール81は、少なくとも一部分が鉄などの導電材料で形成されている。オートツール81は、保持する吸着ノズル83の大きさや本数が相違する複数の種類がある。複数種のオートツール81は、オペレータのメンテナンスによって装着ヘッド8の下側に選択的に取り付けられる。したがって、オートツール81は、装着ヘッド8に対して取り付けおよび取り外しのメンテナンスが実施される装着具保持体の一形態である。かつ、オートツール81は、オペレータによるメンテナンスが実施されるメンテナンス実施部位に相当する。
【0017】
側視カメラ88は、装着ヘッド8の下側のオートツール81の前側に設けられる。側視カメラ88は、吸着ノズル83に保持された部品を吸着ノズル83の下部と一緒に側方から撮像して認識する。装着ヘッド8の構成については、後で詳述する。
【0018】
基板認識用カメラ46は、装着ヘッド8と並んでX軸移動体42に設けられる。基板認識用カメラ46は、光軸が下向きとなるように配設され、基板Kに付設された位置基準マークを上方から撮像する。取得された画像データは画像処理され、基板Kの作業実施位置が正確に求められる。
【0019】
部品認識用カメラ49は、基板搬送装置2と部品供給装置3の間の基台10上に設けられる。部品認識用カメラ49は、光軸が上向きとなるように配置される。部品認識用カメラ49は、装着ヘッド8が部品供給装置3から基板Kに移動する途中で、吸着ノズル83に保持された部品を下方から撮像して認識する。側視カメラ88や基板認識用カメラ46、部品認識用カメラ49として、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置を例示することができる。
【0020】
制御装置5は、基台10に組み付けられており、配置される位置は特に限定されない。制御装置5は、CPUを有してソフトウエアで動作するコンピュータ装置を用いて構成される。なお、制御装置5は、複数のCPUが機内に分散配置され、かつ通信接続されて構成されてもよい。制御装置5は、基板Kの種類ごとのジョブデータに基づいて、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、および部品認識用カメラ49を制御して、部品の装着作業を進める。ジョブデータは、装着作業の詳細な手順や実施方法などを記述したデータである。
【0021】
基台10の上方に、開閉操作可能な保護カバー11が設けられる(
図4参照、
図1では省略)。保護カバー11は、装着ヘッド8をはじめとする部品移載装置4の可動部の全体を覆う。保護カバー11は、オペレータによって開閉操作される。オペレータは、装着ヘッド8に対するオートツール81の取り付けおよび取り外しのメンテナンスを実施する時間帯を通して、保護カバー11を開状態に維持する。
【0022】
保護カバー11は、オペレータの安全を確保する目的で設けられている。保護カバー11の開閉状態は、安全接点12を用いて出力される。保護カバー11の開状態において、可動部用の駆動電源は遮断される。一方、制御装置5やその他の制御部、側視カメラ88などに用いられる制御電源は、保護カバー11の開状態においても、状況確認やメンテナンス作業の便宜を考慮して活きたままとされる。
【0023】
2.装着ヘッド8の構成
次に、装着ヘッド8の構成について、
図2および
図3を参考にして詳細に説明する。前述したように、装着ヘッド8の下側に、オートツール81が着脱可能に取り付けられる。オートツール81は、中心線の周りに概ね回転対称に形成されており、かつ中心線の周りに回転可能に支持される。
【0024】
オートツール81の中心線から離れた円周上に等間隔で、複数のノズル保持部が設けられる。ノズル保持部は、上下方向に延在する円柱状の内部空間によって形成される。ノズル保持部の各々は、吸着ノズル(83、83Y、83Z)を着脱可能に、かつ回転動作可能に保持する。装着ヘッド8の前側寄りおよび後側寄りの2箇所に、ノズル昇降位置が設定されている。オートツール81の回転によってノズル昇降位置に位置した吸着ノズル83Zは、図略の昇降駆動機構に駆動されて昇降動作する。
【0025】
また、装着ヘッド8の下側に、側視カメラ88が設けられる。側視カメラ88は、ノズル昇降位置にある2本の吸着ノズル83Zを被写体とせず、その両隣に位置する4本の吸着ノズル83Yを被写体とする。側視カメラ88は、吸着ノズル83Yが部品を吸着しているか否かを確認し、さらには部品の吸着姿勢を確認する目的で設けられる。側視カメラ88は、カメラ本体89に加えて、背景部材8Bおよび光路形成部8Cが付属されて構成される。
【0026】
カメラ本体89は、装着ヘッド8の下側において、オートツール81よりも前側に配置される。カメラ本体89は、下向きで撮像動作を行う。カメラ本体89は、光路形成部8Cを経由した撮像により、4本の吸着ノズル83Yを側方から同時に撮像して、一つの画像データを取得する。カメラ本体89は、露光時間がミリ秒オーダーと短く設定されており、高速の撮像動作が可能となっている。カメラ本体89が短い露光時間で済むように、適正な光源8Aが併用される。
【0027】
背景部材8Bは、円柱状に形成され、オートツール81の下側の中央に配置される。背景部材8Bは、円筒状の外周面で紫外線を吸収して可視光を放射する。背景部材8Bは、画像内で吸着ノズル83Yの背景となる。これにより、吸着ノズル83Yの画像が背景部材8Bから際立つので、後の画像処理の精度が向上する。
【0028】
光路形成部8Cは、4本の吸着ノズル83Yとカメラ本体89とを光学的に結ぶ光路を形成する。光路形成部8Cは、3個の対物ミラー8C1、8C2、8C3の4セット、2個のサイドプリズム8C4、2個の第一サイドミラー8C5、2個の第二サイドミラー8C6、中央プリズム8C7、および中央ミラー8C8で構成される。6種類のミラー(8C1、8C2、8C3、8C5、8C6、8C8)は、吸着ノズル83Yの画像を反射する。サイドプリズム8C4および中央プリズム8C7は、左右両側から入射する二つの吸着ノズル83Yの画像を90°だけ屈折させつつ反射させて、二つの画像の光路を平行させる。
【0029】
カメラ本体89に近い側の吸着ノズル83Yの画像は、
図2および
図3に一点鎖線で示される光路8D1を経由して、カメラ本体89に入射する。カメラ本体89から離れた側の吸着ノズル83Yの画像は、破線で示される光路8D2を経由して、カメラ本体89に入射する。光路8D1および光路8D2は、吸着ノズル83Yを始点とし、それぞれ3個の対物ミラー8C1、8C2、8C3で順番に反射され、サイドプリズム8C4に入射する。サイドプリズム8C4で平行になった光路8D1および光路8D2は、第一サイドミラー8C5、第二サイドミラー8C6、中央プリズム8C7、および中央ミラー8C8で順番に反射され、終点のカメラ本体89に達する。なお、
図3の下側半分に例示された光路8D1および光路8D2は、上側半分にも同様に存在する。
【0030】
光源8Aは、カメラ本体89が撮像動作を行う際に、被写体の吸着ノズル83Yに照明光を照射する。光源8Aは、三原色の光源のいずれかまたは組み合わせでもよいし、白色光源でもよい。本実施形態において、光源8Aは、被写体となる4本の吸着ノズル83Yの各々に対して1セットずつ、合計で4セット設けられる。光源8Aの各セットは、複数のLEDランプの直列接続により構成される。光源8Aは、
図2に示されるように、オートツール81の外周面に近接して配置され、効果的な照明効果を発揮する。仮に、光源8Aをオートツール81から離して配置すると、照明効果が減少するとともに、装着ヘッド8の大型化を招来するおそれがある。
【0031】
したがって、オペレータは、オートツール81の取り付けおよび取り外しのメンテナンスを実施する際に、注意深くオートツール81を鉛直上下方向に操作する必要がある。仮に、誤ってオートツール81を傾けたり、水平方向に移動させたりした場合、オートツール81が光源8Aや、光源8A周りの部材(後述する高圧側配線72および低圧側配線73を含む)に接触するおそれが生じる。
【0032】
3.光源8Aの電源回路7の構成
次に、光源8Aの電源回路7の構成について、
図4を参考にして説明する。電源回路7は、直流電源71、高圧側配線72、低圧側配線73、高圧側スイッチ75、撮像用スイッチ76、および電流制限抵抗77などで構成される。
図4において、光源8Aの1セットが例示されている。
図4には省略されているが、光源8Aの4セットは並列接続される。光源8Aを構成する複数のLEDランプは、直流電源71から電源供給される。直流電源71は、装着ヘッド8の外部、例えば基台10に配置される。
【0033】
高圧側配線72は、複数のLEDランプが直列接続された一端に相当するアノード端8AAと直流電源71の高圧端子71Hの間を接続する。一方、低圧側配線73は、複数のLEDランプが直列接続された他端に相当するカソード端8AKと直流電源71の低圧端子71Lの間を接続する。また、X軸移動体42のクランプ機構および装着ヘッド8には、相互に嵌合するコネクタ74が設けられている。これにより、装着ヘッド8がX軸移動体42に取り付けられたとき、コネクタ74が自動的に嵌合して、高圧側配線72および低圧側配線73の接続状態が確保される。
【0034】
高圧側スイッチ75は、高圧側配線72内に直列接続される。高圧側スイッチ75は、装着ヘッド8に対するオートツール81の取り付けおよび取り外しのメンテナンスが実施される時間帯を通して開路される。また、高圧側スイッチ75は、少なくとも側視カメラ88の撮像動作が行われる時間帯に閉路される。本実施形態において、高圧側スイッチ75は、後述するように、オペレータによるメンテナンスが終了して保護カバー11が閉操作されるのに同期して閉路される。したがって、高圧側スイッチ75は、側視カメラ88の撮像動作が行われる時間帯には必ず閉路されている。つまり、高圧側スイッチ75の閉路状態は、光源8Aが点灯する前提条件となっている。
【0035】
高圧側スイッチ75は、オペレータがメンテナンスを実施する際の安全性を高める目的で設けられる。高圧側スイッチ75は、高速開閉性能を必要としない。高圧側スイッチ75として、例えば電磁リレーが用いられる。これに限定されず、高圧側スイッチ75として、高速開閉性能を有する半導体スイッチが用いられてもよい。
【0036】
撮像用スイッチ76は、低圧側配線73内に直列接続される。撮像用スイッチ76は、側視カメラ88のカメラ本体89の撮像動作に同期して閉路される。つまり、撮像用スイッチ76は、カメラ本体89のミリ秒オーダーの露光時間に対応するように光源8Aを点灯状態にする。したがって、撮像用スイッチ76は、高速開閉性能を必要とし、例えば、高速開閉性能を有する半導体スイッチが用いられる。
【0037】
電流制限抵抗77は、低圧側配線73内に直列接続され、撮像用スイッチ76との位置関係に制約はない。電流制限抵抗77は、光源8A(複数のLEDライト)に流れる電流を制限して、焼損を防止する。さらに、電流制限抵抗77は、その抵抗値が可変に制御されて、電流の大きさを一定に保つ。これにより、光源8Aの明るさが一定に保たれる。なお、撮像用スイッチ76と電流制限抵抗77を組み合わせたLEDドライバが市販されており、これを利用することが可能である。
【0038】
光源8A、高圧側スイッチ75、撮像用スイッチ76、および電流制限抵抗77は、基板78に実装される。高圧側配線72および低圧側配線73は、基板78に印刷された回路パターンによって形成される。高圧側配線72および低圧側配線73のうち少なくとも部品類を装着するランド(電極)の部位は、露出した状態となっている。基板78は、可撓性を有する板状の部材を用いて構成されており、変形可能なフレキシブル基板である。基板78は、平板の形態で部品類の実装作業が実施される。その後、基板78は、適宜変形されて装着ヘッド8に装備される。基板78をフレキシブル基板としたことにより、生産性が向上して、生産コストが低廉化される。
【0039】
なお、部品類の実装作業が実施された後の基板78の表面に、絶縁層を形成する絶縁加工を施すことができる。それでも、オートツール81が衝突して高圧側配線72や低圧側配線73に接触するおそれを皆無にすることは難しい。
【0040】
4.装着ヘッド8の制御の構成
次に、装着ヘッド8の制御の構成について、
図4を参考にして説明する。装着ヘッド8は、ヘッド制御部8Hを有する。ヘッド制御部8Hは、コンピュータ装置を用いて構成される。ヘッド制御部8Hは、通信接続された上位の制御装置5からの指令に基づいて、装着ヘッド8の内部の制御を行う。また、ヘッド制御部8Hは、制御状況を制御装置5に報告する。ヘッド制御部8Hは、保護カバー11の開閉状態を表す安全接点12の接点情報が入力される。
【0041】
ヘッド制御部8Hは、オートツール81に関する制御を行う。具体的に、ヘッド制御部8Hは、オートツール81の回転制御、吸着ノズル(83、83Y、83Z)の昇降制御および回転制御、吸着ノズル(83、83Y、83Z)に供給する負圧エアおよび正圧エアの制御を行う。また、ヘッド制御部8Hは、側視カメラ88の撮像動作を制御する。さらに、ヘッド制御部8Hは、電源回路7に関する次の制御を行う。
【0042】
すなわち、ヘッド制御部8Hは、安全接点12の接点情報に基づいて、高圧側スイッチ75を制御する。詳述すると、ヘッド制御部8Hは、安全接点12の接点情報によって示される保護カバー11の閉状態において、高圧側スイッチ75を閉路する。オペレータがメンテナンスを開始するために保護カバー11を開操作するのに同期して、ヘッド制御部8Hは、高圧側スイッチ75を開路する。オペレータが保護カバー11を開状態に維持している間を通して、ヘッド制御部8Hは、高圧側スイッチ75を開状態に維持する。オペレータによるメンテナンスが終了して保護カバー11が閉操作されるのに同期して、ヘッド制御部8Hは、高圧側スイッチ75を閉路する。
【0043】
また、ヘッド制御部8Hは、側視カメラ88の撮像動作に同期して、撮像用スイッチ76を閉路する。これにより、高圧側スイッチ75および撮像用スイッチ76の両方が閉状態となって、直流電源71の電源電圧が光源8Aに供給される。光源8Aは、少なくともカメラ本体89の露光時間の間、点灯状態を維持する。
【0044】
さらに、ヘッド制御部8Hは、撮像用スイッチ76が閉じて光源8Aが点灯しているときに、電流値が一定となるように電流制限抵抗77の抵抗値を可変に制御する。これによれば、光源8Aの温度特性変化や長期にわたる経時特性変化、直流電源71の電源電圧の変動などに影響されず、光源8Aの明るさが一定に保たれる。
【0045】
5.実施形態の部品装着機1および装着ヘッド8の作用および効果
次に、実施形態の部品装着機1および装着ヘッド8の作用および効果について、
図5に示された従来技術と比較して説明する。従来技術の装着ヘッド8Xは、電源回路7Xの高圧側スイッチ75が無く、安全接点12の接点情報がヘッド制御部8Jに入力されていない。このため、ヘッド制御部8Jは、電源回路7Xに関して、撮像用スイッチ76と電流制限抵抗77の制御を行う。
【0046】
従来技術において、撮像用スイッチ76が開路された状態で、光源8A周りの高圧側配線72は、直流電源71の高圧端子71Hに導通している。さらに、光源8Aと撮像用スイッチ76の間の低圧側配線73の一部範囲は、光源8Aを介して高圧側配線72に導通している。したがって、高圧側配線72および低圧側配線73の一部範囲は、通常時に直流電源71の電源電圧に相当する対地電圧が誘起される。
【0047】
このため、オペレータがオートツール81の取り付けおよび取り外しのメンテンナンスを実施する際に、オートツール81を誤って高圧側配線72や低圧側配線73に接触させると短絡故障のおそれが生じる。つまり、オートツール81が導電性の構成部材やオペレータの体内抵抗などによってアース電位に維持されているため、直流電源71からみて電流制限抵抗77を介さない短絡状態となるおそれが生じる。
【0048】
例えば、低圧側配線73の一部範囲や、光源8Aの直列接続された複数のLEDランプの途中位置で短絡故障が発生すると、少なくとも一部のLEDランプに大きな短絡電流が流れる。実際に、短絡電流によって光源8Aが焼損した事例が生じている。また、高圧側配線72で短絡故障が発生すると、特に大きな短絡電流が流れるため、高圧側配線72の溶断や光源8Aへの波及故障のおそれが生じる。
【0049】
これに比較して、本実施形態では、高圧側スイッチ75が有り、かつ、オペレータがオートツール81の取り付けおよび取り外しのメンテンナンスを実施する時間帯を通して、高圧側スイッチ75が開路されている。したがって、撮像用スイッチ76が開路された状態において、光源8A周りの高圧側配線72および低圧側配線73は、直流電源71から切り離される。このため、メンテナンスに使用されるオートツール81が仮に高圧側配線72や低圧側配線73に接触しても、短絡故障などの電気故障は発生しない。
【0050】
なお、従来技術において、電流制限抵抗77の位置を高圧側配線72内に移動することはできるが、撮像用スイッチ76の位置を高圧側配線72内に移動することは難しい。その理由は、直流電源71の電源電圧に相当する対地電圧が常時誘起されているという阻害要因があるためである。例えば、撮像用スイッチ76としての半導体スイッチを高圧側配線72内に用いる場合、対地電圧に対する半導体スイッチの長期的な絶縁性能を確保する制約が生じる。これに比較して、本実施形態では、高圧側配線72に設ける高圧側スイッチ75として、絶縁性能の確保が容易な電磁リレーを用いることができる。
【0051】
実施形態の部品装着機1および装着ヘッド8では、オペレータがメンテナンス実施部位のメンテナンスを実施している時間帯を通して高圧側スイッチ75および撮像用スイッチ76が開路されるので、光源8A周りの高圧側配線72および低圧側配線73が直流電源71から切り離される。このため、メンテナンスに使用される装着ヘッド8が仮に光源8A周りの高圧側配線72や低圧側配線73に接触しても、電気故障は発生しない。したがって、メンテナンス実施中における光源8A周りの電気故障のおそれが解消される。
【0052】
6.実施形態の応用および変形
なお、側視カメラ88が撮像する吸着ノズル83の本数は、4本に限定されず、2本あるいは1本でもよい。また、光源8Aは、装着ヘッド8と別体の基板認識用カメラ46が撮像する基板Kに向けて照明光を照射するように、装着ヘッド8の下側に下向きに配置されてもよい。さらに、高圧側スイッチ75、撮像用スイッチ76、および電流制限抵抗77のうち一つ以上は、装着ヘッド8の外部の直流電源71に近い位置に配置されていてもよい。また、ヘッド制御部8Hから制御される電流制限抵抗77は、自律的に電流値を一定化する定電流回路に置き換えられてもよい。
【0053】
さらに、開状態の高圧側スイッチ75を閉路する条件は、保護カバー11の閉操作に限定されず、例えば、部品装着機1の稼働開始指令が制御装置5に入力される条件であってもよい。また、オペレータによるメンテナンスは、オートツール81の取り付けおよび取り外しのメンテナンスに限定されない。例えば、オペレータが工具を用いてオートツール81に保持された吸着ノズル83の取り付け高さ位置を調整する構成や、オペレータが清掃具を用いてオートツール81の清掃作業を行う構成にも、本実施形態を応用することができる。応用形態において、工具や清掃具が仮に高圧側配線72や低圧側配線73に接触しても、短絡故障などの電気故障は発生しない。また、本実施形態は、部品装着機1と異なる種類の対基板作業機、例えば検査ヘッドを備える基板検査機にも応用することができる。本実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:部品装着機 11:保護カバー 12:安全接点 2:基板搬送装置 3:部品供給装置 4:部品移載装置 5:制御装置 7、7X:電源回路 71:直流電源 72:高圧側配線 73:低圧側配線 75:高圧側スイッチ 76:撮像用スイッチ 77:電流制限抵抗 78:基板 8、8X:装着ヘッド 81:オートツール 83、83Y、83Z:吸着ノズル 88:側視カメラ 89:カメラ本体 8A:光源 8C:光路形成部 8H、8J:ヘッド制御部