(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】組立式紙容器、組立式紙容器の製造方法、及び組立式紙容器の製造装置
(51)【国際特許分類】
B65D 5/28 20060101AFI20240722BHJP
B65D 5/56 20060101ALI20240722BHJP
B31B 50/74 20170101ALI20240722BHJP
B29C 51/12 20060101ALI20240722BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20240722BHJP
B31B 100/00 20170101ALN20240722BHJP
B31B 110/30 20170101ALN20240722BHJP
B31B 120/40 20170101ALN20240722BHJP
【FI】
B65D5/28 ZAB
B65D5/56 A
B31B50/74
B29C51/12
B29C51/10
B31B100:00
B31B110:30
B31B120:40
(21)【出願番号】P 2023506718
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2021033662
(87)【国際公開番号】W WO2022195923
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2021046363
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】山口 勝
(72)【発明者】
【氏名】成田 廣大
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-249961(JP,A)
【文献】特表2015-528762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/28
B65D 5/56
B31B 50/74
B29C 51/12
B29C 51/10
B31B 100/00
B31B 110/30
B31B 120/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を主材料とするブランクシートから組み立てられ、収容部を有した容器本体と、前記容器本体の内面に被覆された樹脂製フィルムと、を備えた組立式紙容器であって、
前記容器本体は、
底面と、
前記底面から立ち上がる複数の側面と、
前記複数の側面の上端部と連続しているとともに、組み立て後に前記収容部の外側に向けて延設されるフランジ部と、
を有し、
前記フランジ部の上面には、組み立て後に前記ブランクシートの折返片同士が重なり合うように貼り合わせられることで生じる、前記収容部側から外側に向けて延びた段差があり、
前記樹脂製フィルムは、前記容器本体の前記フランジ部の上面に被覆される部分において、前記段差の上方に、前記段差を横断する突起部を有すること
を特徴とする組立式紙容器。
【請求項2】
前記容器本体は、1枚のブランクシートから組み立てられていること
を特徴とする請求項1に記載の組立式紙容器。
【請求項3】
前記樹脂製フィルムの前記突起部は、前記段差の上方に、前記段差を横断する少なくとも1つの角部又は円弧部を有する断面形状であること
を特徴とする請求項1又は2に記載の組立式紙容器。
【請求項4】
前記フランジ部の上面に被覆された前記樹脂製フィルムに貼着されて前記収容部を被覆するトップシールを、さらに備え、
前記トップシールは、前記フランジ部の上面の上方において、前記突起部を押し潰しつつ前記段差を横断して、前記樹脂製フィルムに貼着されていること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の組立式紙容器。
【請求項5】
前記樹脂製フィルムは、前記突起部が、前記トップシールに押し潰され、前記突起部の周辺部を含め、3層以上に折り重なるように形成されていること
を特徴とする請求項4に記載の組立式紙容器。
【請求項6】
紙を主材料とするブランクシートから組み立てられ、収容部を有した容器本体と、前記容器本体の内面に被覆された樹脂製フィルムと、を備えた組立式紙容器の製造方法であって、
前記ブランクシートの底面から複数の側面を立ち上げて前記容器本体の前記収容部を形成し、これら複数の側面の上部を折り返すとともに、前記ブランクシートの折返片同士を重なり合うように貼り合わせ、その上面に前記収容部から外側に向けて延びた段差があり、前記収容部の外側に向けて延設されたフランジ部を形成して、前記容器本体を組み立てる製函工程と、
前記製函工程で組み立てた前記容器本体の内面に、前記樹脂製フィルムを配置し、前記樹脂製フィルムの前記段差を横断する突起部形成領域の表面を吸引し、前記樹脂製フィルムの前記段差の上方に、前記段差を横断する突起部を形成するとともに、前記容器本体と前記樹脂製フィルムとの間の空気を、両者の周囲の隙間から抜出し、前記容器本体の内面に前記樹脂製フィルムを被覆する突起部形成・樹脂製フィルム被覆工程と、を備えること を特徴とする組立紙容器の製造方法。
【請求項7】
前記突起部形成・樹脂製フィルム被覆工程において、前記樹脂製フィルムの前記段差を横断する突起部形成領域の表面を吸引する吸引開始のタイミングを、前記容器本体と前記樹脂製フィルムとの間の空気を抜出す抜出開始のタイミングよりも早くすること
を特徴とする請求項6に記載の組立紙容器の製造方法。
【請求項8】
前記突起部形成・樹脂製フィルム被覆工程の後に、前記フランジ部の上面に被覆された前記樹脂製フィルムに、前記フランジ部の上面の上方において、前記突起部を押し潰しつつ前記段差を横断するようにトップシールを貼着するトップシール貼着工程を、さらに備えること
を特徴とする請求項6又は7に記載の組立紙容器の製造方法。
【請求項9】
紙を主材料とするブランクシートから組み立てられ、収容部を有した容器本体と、前記容器本体の内面に被覆された樹脂製フィルムと、を備えた組立式紙容器の製造装置であって、
前記容器本体が載置される下型と、
前記下型に設けられ、前記樹脂製フィルムとの間の空気を吸引し、前記樹脂製フィルムを前記容器本体の内面に被覆させる吸引被覆部と、
前記下型と対向し、前記下型との間に前記樹脂製フィルムが挟まれる上型と、
前記上型に収容され、前記容器本体のフランジ部と前記フランジ部上の樹脂製フィルムとを押さえるフランジ押え部と、
前記フランジ押え部に設けられ、前記フランジ部上の前記樹脂製フィルムの突起部形成領域を吸引し、前記樹脂製フィルムに、前記ブランクシートの折返片同士が重なり合うように貼り合わせられることで生じた前記収容部側から外側に向けて延びた段差を横断する突起部を成形する成形部と、
を備えたこと
を特徴とする組立紙容器の製造装置。
【請求項10】
前記樹脂製フィルムの突起部形成領域において、前記成形部による吸引方向は、前記吸引被覆部による吸引方向と反対方向であるとともに、前記成形部による吸引力の方が前記吸引被覆部による吸引力よりも大きくなるように設定されていること
を特徴とする請求項9記載の組立紙容器の製造装置。
【請求項11】
前記成形部による吸引開始のタイミングは、前記吸引被覆部による吸引開始のタイミングよりも早くなるように設定されていること
を特徴とする請求項9又は10に記載の組立紙容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、組立式紙容器、この組立式紙容器の製造方法、及びこの組立式紙容器の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上端にフランジ部を有するトレー状の容器本体を、紙を主原料とするブランクシートから組み立てた組立式紙容器が知られている。この組立式紙容器には、フランジ部の上面を含む容器本体の内面に、樹脂性を有する熱可塑性の樹脂製フィルムを貼り付けたものがある(特許文献1,2等参照)。この樹脂製フィルム付きの組立式紙容器は、樹脂性を有することから、主に食品等を収容するトレーやボールとして利用されている。
【0003】
また、組立式紙容器は、プラスチック容器と比較して、例えば、環境中で生じる二次マイクロプラスチックの発生等を抑制でき、環境に配慮できる製品である。さらに、樹脂製フィルムは、容器本体から剥がすことも可能であり、樹脂製フィルムと紙製の容器本体との分別も可能であり、樹脂製フィルム及び容器本体のそれぞれのリサイクルも可能である。これらの利点から、組立式紙容器に、例えばMAP(Modified Atmosphere Packaging)を適用し、食品等の包装容器及び食品等の保存容器としての利用も期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-293334号公報
【文献】特開2019-172339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の組立式紙容器の容器本体には、その成形上、フランジ部の上面に、ブランクシートの端面どうしが近接して生じた隙間ができる。現状、この隙間は、フランジ部の上面を含む容器本体の内面を樹脂製フィルムで被覆しても、完全に埋めることは難しい。さらに、樹脂製フィルムは薄く、この樹脂製フィルムを、例えば真空圧空により、フランジ部の上面を含む容器本体の内面に被覆した場合、樹脂製フィルムは、隙間の中に吸引されるため、この樹脂製フィルムだけで、隙間を塞ぐことは難しい。
【0006】
また、容器本体の収容部の中の空気を、食品に適した食品ガスに置換して包装する包装方法が開発されている(例えばMAP)。このような包装方法を、樹脂製フィルム付きの組立式紙容器に適用した場合、トップシールが、フランジ部の上面上の樹脂製フィルムに貼着される。しかし、トップシールも薄いため、トップシールを樹脂製フィルムに貼着したとしても、樹脂製フィルムの上面とトップシールの下面との間に、隙間に沿った空洞ができてしまう。すなわち、トップシールをもってしても、空洞を完全に塞ぐことは難しい。しかも、空洞は、両端が開放されている。そのため、容器本体の収容部は、この空洞を介して、容器本体の外に通じてしまう。
【0007】
以上のことから、樹脂製フィルム付きの組立式紙容器には、トップシールで収容部を被覆したとしても、空洞を介して、収容部から収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しが発生してしまうおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点を鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、容器本体の収容部からの収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しを抑制することが可能な組立式紙容器、この組立式紙容器の製造方法、及びこの組立式紙容器の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る組立式紙容器は、紙を主材料とするブランクシートから組み立てられ、収容部を有した容器本体と、前記容器本体の内面に被覆された樹脂製フィルムと、を備えた組立式紙容器であって、前記容器本体は、底面と、前記底面から立ち上がる複数の側面と、前記複数の側面の上端部と連続しているとともに、組み立て後に前記収容部の外側に向けて延設されるフランジ部と、を有し、前記フランジ部の上面には、組み立て後に前記ブランクシートの折返片同士が重なり合うように貼り合わせられることで生じる、前記収容部側から外側に向けて延びた段差があり、前記樹脂製フィルムは、前記容器本体の前記フランジ部の上面に被覆される部分において、前記段差の上方に、前記段差を横断する突起部を有することを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る組立式紙容器は、第1発明において、前記容器本体は、1枚のブランクシートから組み立てられていることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る組立式紙容器は、第1発明又は第2発明において、前記樹脂製フィルムの前記突起部は、前記段差の上方に、前記段差を横断する少なくとも1つの角部又は円弧部を有する断面形状であることを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る組立式紙容器は、第1発明~第3発明の何れかにおいて、前記フランジ部の上面に被覆された前記樹脂製フィルムに貼着されて前記収容部を被覆するトップシールを、さらに備え、前記トップシールは、前記フランジ部の上面の上方において、前記突起部を押し潰しつつ前記段差を横断して、前記樹脂製フィルムに貼着されていることを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る組立式紙容器は、第4発明において、前記樹脂製フィルムは、前記突起部が、前記トップシールに押し潰され、前記突起部の周辺部を含め、3層以上に折り重なるように形成されていることを特徴とする。
【0014】
第6発明に係る組立紙容器の製造方法は、紙を主材料とするブランクシートから組み立てられ、収容部を有した容器本体と、前記容器本体の内面に被覆された樹脂製フィルムと、を備えた組立式紙容器の製造方法であって、前記ブランクシートの底面から複数の側面を立ち上げて前記容器本体の前記収容部を形成し、これら複数の側面の上部を折り返すとともに、前記ブランクシートの折返片同士を重なり合うように貼り合わせ、その上面に前記収容部から外側に向けて延びた段差があり、前記収容部の外側に向けて延設されたフランジ部を形成して、前記容器本体を組み立てる製函工程と、前記製函工程で組み立てた前記容器本体の内面に、前記樹脂製フィルムを配置し、前記樹脂製フィルムの前記段差を横断する突起部形成領域の表面を吸引し、前記樹脂製フィルムの前記段差の上方に、前記段差を横断する突起部を形成するとともに、前記容器本体と前記樹脂製フィルムとの間の空気を、両者の周囲の隙間から抜出し、前記容器本体の内面に前記樹脂製フィルムを被覆する突起部形成・樹脂製フィルム被覆工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
第7発明に係る組立紙容器の製造方法は、第6発明において、前記突起部形成・樹脂製フィルム被覆工程において、前記樹脂製フィルムの前記段差を横断する突起部形成領域の表面を吸引する吸引開始のタイミングを、前記容器本体と前記樹脂製フィルムとの間の空気を抜出す抜出開始のタイミングよりも早くすることを特徴とする。
【0016】
第8発明に係る組立紙容器の製造方法は、第6発明又は第7発明において、前記突起部形成・樹脂製フィルム被覆工程の後に、前記フランジ部の上面に被覆された前記樹脂製フィルムに、前記フランジ部の上面の上方において、前記突起部を押し潰しつつ前記段差を横断するようにトップシールを貼着するトップシール貼着工程を、さらに備えることを特徴とする。
【0017】
第9発明に係る組立紙容器の製造装置は、紙を主材料とするブランクシートから組み立てられ、収容部を有した容器本体と、前記容器本体の内面に被覆された樹脂製フィルムと、を備えた組立式紙容器の製造装置であって、前記容器本体が載置される下型と、前記下型に設けられ、前記樹脂製フィルムとの間の空気を吸引し、前記樹脂製フィルムを前記容器本体の内面に被覆させる吸引被覆部と、前記下型と対向し、前記下型との間に前記樹脂製フィルムが挟まれる上型と、前記上型に収容され、前記容器本体のフランジ部と前記フランジ部上の樹脂製フィルムとを押さえるフランジ押え部と、前記フランジ押え部に設けられ、前記フランジ部上の前記樹脂製フィルムの突起部形成領域を吸引し、前記樹脂製フィルムに、前記ブランクシートの折返片同士が重なり合うように貼り合わせられることで生じた前記収容部側から外側に向けて延びた段差を横断する突起部を成形する成形部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
第10発明に係る組立紙容器の製造装置は、第9発明において、前記樹脂製フィルムの突起部形成領域において、前記成形部による吸引方向は、前記吸引被覆部による吸引方向と反対方向であるとともに、前記成形部による吸引力の方が前記吸引被覆部による吸引力よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【0019】
第11発明に係る組立紙容器の製造装置は、第9発明又は第10発明において、前記成形部による吸引開始のタイミングは、前記吸引被覆部による吸引開始のタイミングよりも早くなるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上述した構成からなる本発明によれば、容器本体の収容部からの収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しを抑制することが可能な組立式紙容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る組立式紙容器を示す平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の組立式紙容器を示す側面図であり、
図1(c)は、
図1(a)の組立式紙容器を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の組立式紙容器に用いられるブランクシートを示す展開図である。
【
図3】
図3は、
図1におけるA-A線矢視部分の拡大断面図であって、突起部の一例を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の組立式紙容器の収容部を、トップシールで被覆した態様を示す平面図である。
【
図5】
図5(a)は、
図4の組立式紙容器において、理論上想定していた押し潰された突起部周辺の断面図であり、
図5(b)は、実際の押し潰された突起部周辺の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る組立式紙容器の製造方法における工程を示すフローチャートである。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、本発明の実施形態に係る組立式紙容器の製造装置の一例を示す模式断面図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、突起部の形成の様子を示す模式断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る組立式紙容器の製造システムの一例を示す模式ブロック図である。
【
図10】
図10(a)は、先発明の実施形態に係る組立式紙容器を示す平面図であり、
図10(b)は、
図10(a)の組立式紙容器を示す側面図であり、
図10(c)は、
図10(a)の組立式紙容器を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明に係る組立式紙容器と先発明に係る組立式紙容器との実験的検証の比較結果表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用して例示した実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
[実施形態]
本発明の実施形態に係る組立式紙容器1は、
図1(a)~
図1(c)に示すように、容器本体11と、容器本体11の内面に被覆された樹脂製フィルム3と、を備えている。
【0024】
容器本体11は、収容部12と、フランジ部13と、を有する。そして、この容器本体11は、
図2に示した紙を主材料とする1枚のブランクシート2から組み立てられている。
図2において、点線は「谷折り」を示し、一点鎖線は「山折り」を示す。谷折り線及び山折り線は、例えば、ミシン目、ハーフカット、罫線等からなっている。また、ブランクシート2内の実線は「切込み」を示す。ブランクシート2に「谷折り」及び「山折り」を施すとともに、折返片13a,13b同士がそれぞれ重なり合うように貼り合わせることで、容器本体11が構成される。
【0025】
収容部12は、この実施形態では、底面121から立ち上がる8つの側面122を有するものとした。なお、収容部12は、側面122が3つ以上あれば構成することができる。
【0026】
フランジ部13は、それぞれの側面122の上端部と連続しているとともに、収容部12の外側に向けて延設されている。このフランジ部13の上面131には、組み立て後にブランクシート2の折返片13a,13b同士がそれぞれ重なり合うように貼り合わせられることで生じる、収容部12側から外側に向けて延びた段差22が四隅に2つずつある。
【0027】
樹脂製フィルム3は、フランジ部13の上面131を含む容器本体11の内面に被覆されている。樹脂製フィルム3は、容器本体11のフランジ部13の上面131に被覆される部分において、段差22の上方に、段差22を横断する突起部31を有する。この実施形態の組立式紙容器1では、段差22は8つあり、それぞれの段差22に対して、突起部31が形成されている。なお、突起部31は、1つの段差22に対して、複数設けて実施してもよい。
【0028】
突起部31は、
図3に一例を示すように、段差22の上方で、上面313の左右両端に2つの第1角部31aと第2角部31bとを有する四角形状の断面形状である。なお、突起部31の断面形状は、このような四角形状に限定されず、三角形状や半円形状等いかなる形状で実施してもよい。
【0029】
なお、容器本体11の内面への被覆に好適で、且つ、突起部31を成形可能な樹脂製フィルム3に用いられる樹脂の例としては、熱可塑性樹脂である、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブテン、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。樹脂製フィルム3は、上記材料いずれかの単一フィルムであってもよく、上記材料を複数混合したフィルムであってもよい。また、樹脂製フィルム3は、単層のフィルムであってもよく、複数の層を積層した積層フィルムであってもよい。
【0030】
次に、上記した態様から、収容部12をトップシール4で被覆した態様の組立式紙容器1について説明する。
【0031】
組立式紙容器1は、
図4に示すように、トップシール4で収容部12を被覆することにより、食品等の収容物を包装して収容することができる。トップシール4は、フランジ部13の上面131上の樹脂製フィルム3に貼着される。これにより、トップシール4は、収容部12を被覆する。この実施形態では、トップシール4は、フランジ部13の上面131の上方において、段差22を横断して、突起部31を押し潰しつつ樹脂製フィルム3に貼着される。トップシール4を樹脂製フィルム3に貼着する際、トップシール4は、点線で示した押圧領域32において、押圧機により加熱しながら押圧される。この実施形態では、突起部31は、突起部31の全体が押圧領域32の幅の中に収まるように設計されている。これにより、突起部31は、押圧機によって、確実に押し潰すことができる。
【0032】
ここで、突起部31周辺の断面は、
図5(a)に示すようになっていることを理論上想定していたが、実際に確認したところ、
図5(b)に示すようになっていた。
【0033】
しかしながら、
図5(b)に示すようになっていても、段差22の上方において、トップシール4の下面41を、樹脂製フィルム3の上面に十分熱圧着することができ、トップシール4を、樹脂製フィルム3の上面に、段差22により生ずる空洞5を遮るように貼着することができることを確認した。
【0034】
また、突起部31が押し潰され、3層以上の複数層に折り重なった樹脂製フィルム3は、押圧中のトップシール4に対して反力を与え、トップシール4の下面41を、樹脂製フィルム3の上面に熱圧着させやすくなっていることも確認した。
【0035】
次に、
図6を用いて、本発明の実施形態に係る組立式紙容器1の製造方法について説明する。
【0036】
先ず、本発明の実施形態に係る組立式紙容器1の製造方法では、上述のブランクシート2を切断形成するブランクシート切断工程S1を行い、ブランクシート2を製造する。
【0037】
続いて、ブランクシート切断工程S1で切り出して製造したブランクシート2から容器本体11を組み立てる製函工程S2を行う。
【0038】
続いて、製函工程S2で組み立てられた容器本体11の内面に、樹脂製フィルム3を配置し、樹脂製フィルム3の段差22を横断する突起部形成領域の表面を吸引し、樹脂製フィルム3の段差22の上方に、段差22を横断する突起部31を形成するとともに、例えば、真空圧空により、容器本体11と樹脂製フィルム3との間の空気を両者の周囲の隙間から抜出しつつ、樹脂製フィルム3の上部より加圧することで、容器本体11の内面に樹脂製フィルム3を被覆する突起部形成・樹脂製フィルム被覆工程S3を行う。なお、樹脂製フィルム3を容器本体11に被覆する方法として、真空圧空を例示したが、容器本体11と樹脂製フィルム3との間の空気を両者の隙間から吸引することのみ、または樹脂製フィルム3の上部から加圧することのみで、容器本体11と樹脂製フィルム3との間の空気を抜出しても良い。
【0039】
この際、突起部形成・樹脂製フィルム被覆工程S3では、樹脂製フィルム3の段差22を横断する突起部形成領域の表面を吸引する吸引開始のタイミングを、容器本体11と樹脂製フィルム3との間の空気を抜出す抜出開始のタイミングよりも早くする。
【0040】
続いて、突起部形成・樹脂製フィルム被覆工程S3で製造されたトップシール4が貼着されていない状態の組立式紙容器1の収容部12内に、食品等の収容物を収容する収容物収容工程S4を行う。
【0041】
続いて、収容物収容工程S4で収容部12内に食品等の収容物が収容された状態の組立式紙容器1のフランジ部13の上面に被覆された樹脂製フィルム3に、フランジ部13の上面の上方において、突起部31を押し潰しつつ段差22を横断するように、押圧機を用いて、トップシール4を貼着するトップシール貼着工程S5を行う。
【0042】
最後に、組立式紙容器1周囲の余分な樹脂製フィルム3を取り除くトリミングをするトリミング工程S6を行うことで、組立式紙容器1が製造され、この実施形態に係る組立式紙容器1の製造方法が完了する。
【0043】
次に、
図7を用いて、本発明の実施形態に係る組立式紙容器1の製造装置600について説明する。
【0044】
本発明の実施形態に係る組立式紙容器1の製造装置600は、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、この実施形態に係る組立式紙容器1を製造することが可能な新規な製造装置である。この製造装置600は、樹脂製フィルム3を、フランジ部13付きの容器本体11に被覆するとともに、被覆する際に、突起部31を樹脂製フィルム3に成形することができる。
【0045】
この製造装置600は、下型610と、吸引被覆部611と、上型620と、フランジ押え部630と、成形部631と、を備えている。
【0046】
下型610には、容器本体11が載置される。
【0047】
吸引被覆部611は、下型610に設けられており、真空ポンプ640に接続されている。吸引被覆部611は、下型610に載置された容器本体11を介して樹脂製フィルム3を、容器本体11の周囲との隙間から空気が抜けるように吸引する構成である。
【0048】
上型620は、下型610と対向し、上下動可能である。樹脂製フィルム3は、下型610と上型620との間に挟まれ、上型620が、下型610に、樹脂製フィルム3を間に挟んで密着されたとき、ほぼ密閉状態の処理空間が形成される。この処理空間の中で、樹脂製フィルム3は、例えば真空圧空により、収容部12及びフランジ部13に被覆される。
【0049】
フランジ押え部630は、上型620内に収容されている。フランジ押え部630は、上型620の天板部621に、スプリング等の伸縮可能な弾性部材632により支持されている。フランジ押え部630は、例えば真空圧空の間、フランジ部13とフランジ部13上の樹脂製フィルム3とを押さえる。
【0050】
成形部631は、フランジ押え部630に設けられており、真空ポンプ640に接続されている。成形部631は、フランジ部13上の樹脂製フィルム3の突起部形成領域を吸引する。突起部形成領域は、段差22を横断するように設定される。突起部31の形成は、例えば樹脂製フィルム3を容器本体11の内面に被覆する間に行われる。成形部631による吸引方向は、貼着部611の吸引方向と反対である。この実施形態では、吸引被覆部611は、樹脂製フィルム3を容器本体11に向かう方向に吸引する。成形部631は、樹脂製フィルム3を容器本体11から離す方向に吸引する。
【0051】
ここで、突起部31を形成する様子について説明する。
【0052】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、突起部31を吸引により成形すると、吸引前後で、樹脂製フィルム3の厚さTが変わる。例えば、吸引後は、突起部31の樹脂製フィルム3の厚さTが薄くなる。突起部31の樹脂製フィルム3の厚さTが薄くなると、厚さTが厚い場合と比較して、突起部31を折り畳みやすくなる又は押し潰しやすくなる。これは、突起部31を、樹脂製フィルム3を吸引することにより成形した場合の利点の1つである。
【0053】
ここで、製造装置600の動作例について、説明する。
【0054】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、上型620を下型610から離した状態で、加熱した樹脂製フィルム3を、上型620と下型610との間に導く。
【0055】
続いて、下型610に、容器本体11を載置する。
【0056】
続いて、上型620を下降させ、上型620で樹脂製フィルム3を押さえる。さらに、フランジ押え部630でフランジ部13及びフランジ部13上の樹脂製フィルム3を押さえる。
【0057】
続いて、吸引被覆部611及び成形部631のそれぞれにより、樹脂製フィルム3を吸引する。これにより、樹脂製フィルム3は、収容部12の底面121、収容部12の側面122及びフランジ部13の上面131のそれぞれに被覆される。さらに、フランジ部13上で段差22の上方に、フランジ部13に対して凸となる突起部31が成形される。
【0058】
また、成形部631による吸引開始のタイミングは、吸引被覆部611による吸引開始のタイミングよりも早くなるように設定されているとよい。このように吸引開始のタイミングをずらすと、樹脂製フィルム3がフランジ部13の上面131に被覆される前に、突起部31を成形することができる。このため、突起部31を成形しやすい、という利点が得られる。
【0059】
また、成形部631による吸引方向は、吸引被覆部611による吸引方向と反対方向であるとともに、成形部631による吸引力の方が吸引被覆部611による吸引力よりも大きくなるように設定されているとよい。このように吸引力の大きさを異ならせると、突起部形成領域が外側に向けて吸引されやすいので、突起部31を形成しやすい、という利点が得られる。
【0060】
そして、上型620を上昇させ、組立式紙容器1を、製造装置600から離脱させる。
【0061】
最後に、組立式紙容器1周囲の余分な樹脂製フィルム3を取り除くトリミングを行うと、組立式紙容器1が完成する。
【0062】
このように、この実施形態に係る組立式紙容器1の製造装置600によれば、組立式紙容器1を製造することが可能である。
【0063】
次に、
図9を用いて、本発明の実施形態に係る組立式紙容器1の製造システム700について説明する。
【0064】
本発明の実施形態に係る組立式紙容器1の製造システム700は、送給ローラー710に巻かれた樹脂製フィルム3を巻取りローラー720で巻取りながら、フランジ部13付きの容器本体11に、樹脂製フィルム3を被覆する。
【0065】
図9に示すように、この製造システム700は、送給ローラー710と、巻取りローラー720と、加熱機730と、製造装置600と、トリミング機740と、を備えている。
【0066】
送給ローラー710には、1巻の帯状の樹脂製フィルム3が取り付けられる。
【0067】
巻取りローラー720には、帯状の樹脂製フィルム3の一端が取り付けられ、帯状の樹脂製フィルム3を巻き取る。帯状の樹脂製フィルム3は、送り方向Wに沿って、送給ローラー710から巻取りローラー720へ向かって進む。
【0068】
加熱機730は、送給ローラー710と巻取りローラー720との間に配置され、帯状の樹脂製フィルム3を加熱する。
【0069】
製造装置600は、上述したものであり、加熱機730と巻取りローラー720との間に配置される。
【0070】
トリミング機740は、製造装置600と巻取りローラー720との間に配置され、製造装置600で製造された組立式紙容器1のトリミングをする。これにより、組立式紙容器1は、帯状の樹脂製フィルム3から離脱される。
【0071】
このように、この実施形態に係る組立式紙容器1の製造システム700は、製造装置600を備える。したがって、この製造システム700によれば、組立式紙容器1を製造することが可能である。しかも、この製造システム700によれば、組立式紙容器1を、帯状の樹脂製フィルム3から連続して製造することができる。
【0072】
以上説明した本発明の実施形態によれば、段差22の上方において、トップシール4を、樹脂製フィルム3の上面に熱圧着することができ、段差22の上方において、トップシール4を、樹脂製フィルム3の上面に、段差22により生ずる空洞5を遮るように被覆することができる。
【0073】
また、突起部31が押し潰される結果、樹脂製フィルム3の突起部31の側壁が畳み込まれ、複数層に折り重なり、段差22の上方においても、トップシール4を、樹脂製フィルム3の上面に熱圧着させやすくなる。
【0074】
このように、この実施形態によれば、樹脂製フィルム3とトップシール4とによって、容器本体11の収容部12からの収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しを抑制することが可能な組立式紙容器1を提供することができる。
【0075】
[実施例]
以下、本発明の効果を確認するために行った実験的検証結果について説明をする。
【0076】
この実験的検証では、本発明に係る組立式紙容器1と、本出願人による先発明(特願2019-235300)に係る組立式紙容器100とを、条件を複数変え、いずれもトップシール4を貼着して、内部の収容物の漏れ確認検査を行い、それぞれ比較した。
【0077】
ここで、先発明に係る組立式紙容器100は、
図10(a)~
図10(c)に示すように、紙を主材料とするブランクシートから組み立てられ、収容部12を有した容器本体11と、収容部12の内面を被覆した樹脂製フィルム3と、を備えた組立式紙容器であって、容器本体11は、底面121と、底面121から立ち上がる複数の側面122と、複数の側面122と接続して組み立て後に上面が面一となるフランジ部13と、を有し、フランジ部13の上面には、ブランクシートの端面どうしが近接して生じた、収容部12から容器本体11の外側へ向けて延びた隙間220があり、樹脂製フィルム3はフランジ部13の上面を被覆し、隙間220の上方に、隙間220を横断する突起部31を有する構成である。
【0078】
本発明に係る組立式紙容器1と、先発明に係る組立式紙容器100とを比較する条件として、突起部31の断面形状を、四角形状、台形状、三角形状、M字形状、及び半円形状の5種類とした。また、突起部31の幅は、四角形状では2mmとし、台形状では2mmと3mmとし、三角形状では2mmとし、M字形状では2mmとし、半円形状では2mmとした。さらに、突起部31の高さは、いずれも1mmと2mmとに分けた。
【0079】
その結果、本発明に係る組立式紙容器1は、
図11に示すように、いずれの条件でも、漏れがないことを確認した。
【0080】
これに対し、先発明に係る組立式紙容器100では、
図11に示すように、突起部31の断面形状が、四角形状で、幅が1mm、高さ1mmのものと、半円形状で、幅が2mm、高さ2mmのものと、に漏れが発生してしまった。
【0081】
これにより、本発明に係る組立式紙容器1は、先発明に係る組立式紙容器100と比較して優位性を有することが分かった。
【0082】
さらに、追加して、本発明に係る組立式紙容器1で、突起部31の断面形状を、四角形状とし、幅2mmとし、高さ2mmとしたものを、トップシール4の押圧領域32からずれた位置に設けたサンプルを5つ用意して同様な漏れ確認検査を行った。
【0083】
その結果、5つのサンプルのうち、3つのサンプルで漏れが発生してしまった。
【0084】
このことから、本発明に係る組立式紙容器1も、先発明に係る組立式紙容器100と同様に、突起部31を設ける位置は、トップシール4の押圧領域32内に収めることが好ましいことが分かった。
【0085】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 組立式紙容器
11 容器本体
12 収容部
121 底面
122 側面
13 フランジ部
131 上面
13a 折返片
13b 折返片
2 ブランクシート
22 段差
3 樹脂製フィルム
31 突起部
31a 第1角部
31b 第2角部
313 四角形の上面
32 押圧領域
4 トップシール
41 下面
5 空洞
600 製造装置
610 下型
611 吸引被覆部
620 上型
621 天板部
630 フランジ押え部
631 成形部
632 弾性部材
640 真空ポンプ
700 製造システム
710 送給ローラー
720 巻取りローラー
730 加熱機
740 トリミング機
S1 ブランクシート切断工程
S2 製函工程
S3 突起部形成・樹脂製フィルム被覆工程
S4 収容物収容工程
S5 トップシール貼着工程
S6 トリミング工程
T 厚さ
W 送り方向