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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】スピーカユニット
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/20 20060101AFI20240722BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H04R1/20 310
H04R1/40 310
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023507784
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2021071285
(87)【国際公開番号】W WO2022029005
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/071790
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20205819.4
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519100170
【氏名又は名称】ソノス・マイティ・ホールディングス・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Sonos Mighty Holdings BV
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】シーク,ティモシー ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】ファン アペルドールン,ナプル
【審査官】毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-205886(JP,A)
【文献】国際公開第2019/086357(WO,A1)
【文献】特開平11-234781(JP,A)
【文献】特開平11-341595(JP,A)
【文献】特開平09-187091(JP,A)
【文献】特表2018-510557(JP,A)
【文献】米国特許第05821471(US,A)
【文献】国際公開第02/052892(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/012384(WO,A1)
【文献】米国特許第10631096(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0232637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカユニット(1)であって:
スピーカフレーム(9)と;
スピーカフレーム(9)に配置された2枚の膜(7、8)と、ここで、2枚の膜の内、一方の第1膜(7)はスピーカユニット(1)の主面(9a)に対して実質的に垂直な主音響放射方向(A)を有し、他方の第2膜(8)は主音響放射方向(A)とは異なる二次音響放射方向(B)を有し;
スピーカフレーム(9)内に配置され、第1及び第2膜(7、8)にそれぞれ取り付けられた2つの駆動ユニット(2)と、
ここで、第1及び第2膜(7、8)は、スピーカフレーム(9)において対向配置され、二次音響放射方向(B)は、主音響放射方向(A)と反対であり、
ここで、第1および第2膜(7、8)は、主および反対の二次音響放射方向(A、B)に沿うように同軸に整列され、
また、ここで、2つの駆動ユニット(2)は、スピーカフレーム(9)において同じ高さで互いに同軸に配置され、膜(7、8)から横方向にずれて、サイドバイサイドの横並びで配置され;
前記第2膜(8)から前記二次音響放射方向(B)に向かい、前記スピーカユニット(1)の二次表面(6a)までの閉じた音響経路を提供する音響ダクト(6)であって、
前記二次音響放射方向(B)に沿って配置された第1部分(6b)、
スピーカフレーム(9)の少なくとも1つの側面に配置された第2部分(6c)、
及び
前記第2膜(8)から所定の距離をおいて対向配置された第3部分(6d)を有する
音響ダクト(6)と;
を備え
前記音響ダクト(6)は、前記第2膜(8)と主音響放射方向(A)における前記スピーカフレーム(9)との間に気密状態での接続を形成する、
スピーカユニット(1)。
【請求項2】
前記第3部分(6d)は、前記スピーカユニット(1)の背面壁を形成し、前記第2膜(8)と実質的に平行に延在する、請求項に記載のスピーカユニット(1)。
【請求項3】
前記第3部分(6d)は、前記第1及び第2部分(6b、6c)に接続されている、請求項1~2のいずれかに記載のスピーカユニット(1)。
【請求項4】
前記二次表面(6a)は、前記スピーカフレーム(9)の前面に隣接して配置されている、請求項1~3のいずれかに記載のスピーカユニット(1)。
【請求項5】
前記二次表面(6a)は、前記スピーカフレーム(9)の前面と共通の位置にある、請求項1~4のいずれかに記載のスピーカユニット(1)。
【請求項6】
前記第1膜(7)及び前記第2膜(8)は、円錐台形状又は平坦な面状である、請求項1~5のいずれかに記載のスピーカユニット(1)。
【請求項7】
前記音響ダクト(6)は、音響波をガイドするように配置された内面を有する、請求項1~6のいずれかに記載のスピーカユニット(1)。
【請求項8】
前記音響ダクト(6)は、顕著な音響効果を与えることなく、音響ダクト(6)を介して音響波をガイドするように構成された音響特性を有する材料で構成されている、請求項に記載のスピーカユニット(1)。
【請求項9】
前記音響ダクト(6)は、プラスチック材料から形成されている、請求項7又はに記載のスピーカユニット(1)。
【請求項10】
スピーカユニット(1)は、スピーカフレーム(9)と2つの膜(7、8)とによって区画された内部空間を有し、2つの駆動ユニット(2)は、内部空間に配置される、請求項1~9のいずれかに記載のスピーカユニット(1)。
【請求項11】
前記音響ダクト(6)の最小断面積が1平方センチメートルより大きい、請求項1~10のいずれかに記載のスピーカユニット(1)。
【請求項12】
前記音響ダクト(6)の最小幅は、5mmよりも大きい、請求項1~11のいずれかに記載のスピーカユニット(1)。
【請求項13】
前記二次表面(6a)の前面の面積は、前記第2膜(8)の前面の面積の10%以上である、請求項1~12のいずれかに記載のスピーカユニット(1)。
【請求項14】
前記音響ダクト(6)の少なくとも一部は、熱伝導性材料から作られている、請求項1~13のいずれかに記載のスピーカユニット(1)。
【請求項15】
前記熱伝導性材料は、少なくとも100W/m*Kの熱伝導率を示す、請求項14に記載のスピーカユニット(1)。
【請求項16】
前記2つの駆動ユニット(2)を駆動するための1つ以上の電子部品(10a、10b、10c)をさらに備え、前記1つ以上の電子部品(10a、10b、10c)は前記音響ダクト(6)と熱的に接触して取り付けられる、請求項14又は15に記載のスピーカユニット(1)。
【請求項17】
前記第1部分(6b)、前記第2部分(6c)及び/又は前記第3部分(6d)は熱伝導性材料からなる、請求項14~16のいずれかに記載のスピーカユニット(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカフレームと、スピーカフレーム内に配置された2枚の膜と、2枚の膜のうち、スピーカユニットの主要面に対して実質的に垂直な主要音響放射方向を有する第1膜と、2枚の膜のうち主要音響放射方向とは異なる副音声放射方向を有する第2膜と、スピーカフレーム内に配置されて第1膜および第2膜にそれぞれ取り付けられた2つの駆動ユニットと、を備えるスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許公開公報US2010/0232637は、スピーカボックス内に配置された2つの対向するスピーカを有するスピーカ装置を開示し、2つのスピーカは機械的に結合され、スピーカボックスは開口部を備えている。
【0003】
米国特許公開公報US2007/0154044は、複数の球状のエンクロージャを有し、それぞれが一対の(対向する)トランスデューサを収容するラウドスピーカシステムを開示する。
【0004】
米国特許公開公報US2012/237077は、対向するデュアルベントウーファーシステムを開示する。ダストキャップによって覆われていないベントをその中に構成するポールピースを有するスピーカドライバを利用する、ベント付きスピーカドライバアセンブリが記載されている。スピーカドライバのフレームは、ドライバのポールピースが構造物の内部空間内に位置するように、構造物の表面に取り付けられるように構成される。ベント式スピーカドライバは、バック・トゥ・バックのベント式ドライバアセンブリに利用されるように構成されており、1つ以上のスピーカドライバのサウンドが、1つだけのドライバのフットプリントで、アセンブリからの物理的振動の生成を最小限に抑えて実現されている。
【0005】
米国特許開公報US5,821,471には、ハウジング内のメンブレンからスピーカの前面に向けて後方指向の音を導くためなど、様々な構成を有するスピーカハウジングが開示されている。
【0006】
国際特許公開公報WO2019/086357は、2つの対向する移動膜を有するスピーカユニットを開示している。
【0007】
国際特許公開公報WO02/052892は、エアダクトを備えた駆動部を有するスピーカユニットを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許公開公報US2010/0232637
【文献】米国特許公開公報US2007/0154044
【文献】米国特許公開公報US2012/237077
【文献】米国特許開公報US5,821,471
【文献】国際特許公開公報WO2019/086357
【文献】国際特許公開公報WO02/052892
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、既存のスピーカユニットと比較して、スペース効率、パワー、空気置換の自由度の高い指向性において改善された性能を有するスピーカユニットを提供する。スピーカユニットは、さらなる実施形態のグループにおいて、スピーカユニットの電子部品の冷却を改善することをさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記に定義されるようなスピーカユニットであって、第1および第2の膜がスピーカフレームに対向配置され、二次音響放射方向が主音響放射方向と逆方向であり、第1および第2の膜が、主及び反対方向である二次音響放射方向に沿った同軸に整列されており、2つの駆動ユニットは、スピーカフレーム内の同じ高さで互いに同軸に配置され、膜から横方向にずらされてサイドバイサイドの横並びに配置されているものが提供される。スピーカユニットは更に音響ダクトを備え、音響ダクトは、二次音響放射方向における第2の膜からスピーカユニットの二次面に至る閉じた音響流路を提供し、二次面は、スピーカユニットの主面と同一平面上に配置される。
【0011】
本発明の実施形態は、空気置換方向に制約があるデュアルメンブレンユニット(例えば、車両のドア、天井埋め込み型スピーカ、テレビ、または片側空気置換の制約があるあらゆるスピーカ)に対して、セルフバランスでよりスペース効率の良いスピーカユニットを提供することを可能にする構造および相互要素の向きを有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
図1】本発明の一実施形態に係るスピーカユニットの斜視図。
図2図1に示すスピーカユニットの実施形態を示す上面図。
図3図2に示すスピーカユニットの実施形態のIII-III線に沿った断面図。
図4】本発明のさらなる実施形態に係るスピーカユニットの側面図。
図5図4に示したスピーカユニットの実施形態を示す上面図。
図6図5に示すスピーカユニットの実施形態の線VI-VIに沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示すいくつかの例示的な実施形態を参照して本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の実施形態を示すことを意図しているに過ぎず、範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその技術的な均等物によって定義される。当業者であれば、本発明を説明するために明示的に使用された特徴、構成要素、要素等は、特に断らない限り、技術的均等物で代用できることを理解することができる。さらに、異なる実施形態の別々の特徴は、そのような組み合わせが物理的に不可能でない限り、図面に明示的に示されていないか、または明細書に説明されていないとしても、組み合わせることができる。以下、いくつかの図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。本明細書に記載された実施例および実施形態は、本発明を限定するのではなく、説明するためのものである。当業者であれば、特許請求の範囲から逸脱することなく、代替の実施形態を設計することができるであろう。特許請求の範囲において括弧内に示された参照符号は、特許請求の範囲の範囲を限定するものと解釈してはならない。特許請求の範囲又は明細書において別個の存在として記載された項目は、記載された項目の特徴を組み合わせた単一又は複数のハードウェア項目として実装することができる。
【0014】
本発明は、添付の特許請求の範囲及びその技術的均等物のみによって限定されることを理解されたい。本書及び特許請求の範囲において用いられる動詞「構成する」及びその活用例は、その語に続く項目が含まれるが、特に言及されていない項目を除外する意味ではなく、非限定的な意味で使用されている。また、不定冠詞「a」または「an」による要素への言及は、文脈上明らかに要素が1つだけであることを要求しない限り、その要素が2つ以上存在する可能性を排除しない。不定冠詞「a」または「an」は、このように通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0015】
図1図6に2つの例を示し、以下に説明する本発明のスピーカユニットの実施形態では、以下の主要な要素が存在する(参照数字は示した通り、括弧の間には同義語を付した)。
1.スピーカユニット(スピーカ、ラウドスピーカ、ラウドスピーカ装置)
2.駆動ユニット(ドライバ、モータ)
3.ボイスコイル
4.マグネットアセンブリ(少なくとも2個のマグネットを含む)
5.膜サスペンション(サラウンド、サラウンドロール、フレキシブルエッジ)
6.音響ダクト(膜ダクト)
7.第1膜
8.第2膜
9.スピーカフレーム
一般に、本発明は、スピーカフレーム9、(少なくとも)2つの膜7,8、(少なくとも)2つの駆動ユニット2、及び音響ダクト6を含むスピーカユニット1に関する。2つの膜7,8は、スピーカフレーム9に配置され、2つの膜のうち第1膜7は、スピーカユニット1の主面9aに対して実質的に垂直な主音響放射方向Aを有し、2つの膜のうち第2膜8は、主音響放射方向Aとは異なる二次音響放射方向Bを有する。なお、このように第1及び第2膜7,8は、指示された音響放射方向A,Bに上下動するが、スピーカからの音は膜7,8から離れる方向を有する。2つの駆動ユニット2は、スピーカフレーム9内に配置され、2つの膜7,8に取り付けられており、2つの駆動ユニット2は、スピーカフレーム9内の同じ高さで互いに同軸上に配置されている。音響ダクト6が存在し、これにより第2膜8から二次音響放射方向Bの方向にスピーカユニット1の二次面6aに至るまで閉じた音響経路が提供され、二次面6aはスピーカユニット1の主面9aと同一平面上に配置される。このように、音響ダクト6は、第2膜8からの音響波を、第1膜7と同一平面上から放射するように方向転換するように配置される。
【0016】
より具体的な実施形態では、2つの膜7,8がスピーカフレームに対向配置され、二次音響放射方向Bが主音響放射方向Aと逆方向(すなわち180度)になるように構成されている。
【0017】
図1~3は、本発明のスピーカユニット1の第1の例示的な実施形態を示している。図1は、スピーカユニット1の外観を示す斜視図である。
【0018】
図2は上面図、図3図2のIII-III線に沿ったスピーカユニットの実施形態の断面図である。第1幕7は、第1膜7の主音響放射方向Aへの上下動を可能とする膜サスペンション5(またはサラウンド、サラウンドロール、フレキシブルエッジ)を用いてスピーカフレーム9(スピーカユニット1の前面)にフレキシブルに接続される。第2膜8も同様に膜サスペンション5’を用いて柔軟に接続されており、第2膜8の二次音響放射方向Bへの動きが可能である。
【0019】
スピーカフレーム9は、図1および図3に示すように、スピーカユニット1の全体的な重量を減らすために、任意に開口部を設けた上壁、下壁および4つの側壁の組み合わせで構成することができる。あるいは、スピーカフレーム9は、スピーカユニット1の要素に対する適切な取り付け手段を備えた、足場のような要素の組み合わせとして提供されることもある。図1において示される主面9aは、スピーカユニット1の前面と一致するように、すなわち、示された3次元軸x、y、zのx-y平面内と一致する。
【0020】
本実施形態では、二次面6aは、スピーカフレーム9の前面に隣接して配置されている。第2膜8から発せられる音響エネルギーは、二次面6aに方向転換され、第1膜7から発せられる音響エネルギーと隣接して提供されるので、両者共に主音響放射方向Aで発せられる。
【0021】
図3の断面図では、さらなる実施形態が示されており、音響ダクト6は、第2膜8から二次音響放射方向Bに沿って所定の距離において配置された第1部分6bと、スピーカフレーム9の1つ以上の側面にある第2部分6cとを有する。図示の実施形態では、単一の第2部分6cが示されているが、代替的に、第2部分6cは、スピーカフレーム9の2つの側面、3つの側面、または4つすべての側面に存在してもよい。これらの煙突のような実施形態は、スピーカユニット1の非常に限られた寸法を維持しながら、高効率の前面放射配置を提供することを可能にする。
【0022】
図4図6は、本発明のスピーカユニット1の第2の例示的な実施形態を示す。図4は、側面図であり、図5は、図4に示すスピーカユニット1の上面図である。図6は、図5に示すスピーカユニット1の線VI-VIに沿った断面図である。
【0023】
図4図6に示す実施形態と同様の実施形態群では、二次面6aは、スピーカフレーム9の前面と共通の位置に配置される。第2膜8から発せられる音響エネルギーは、複数の二次面6a、6a’に方向転換されるため、第1膜7から発せられる音響エネルギーと隣接して提供され、共に主音響放射方向Aに提供される。図5に示す実施形態では、4つの二次面6a、6a’が第1膜7の周囲に均等に分散して設けられており、スピーカユニット1の限られた前面積を依然として使用することが可能である。
【0024】
図6の断面図に最も明確に示されているように、さらなる実施形態では、(少なくとも)2つの駆動ユニット2のうちの1つ以上が内孔2aを有し、音響ダクト6の一部は、2つの駆動ユニット2のうちの1つ以上の内孔2aにより形成されている。図5の上面図および図6の断面図から明らかなように、本実施形態では、第1膜7を駆動するために、対角線上に配置された2つの駆動ユニット2が存在し、二次表面6aと連通する内孔2aを提供する。さらに、第2膜8を駆動するために、2つの対角線上に配置された駆動ユニット2'が存在し、二次表面6a’と連通する内孔2a’を提供する。このようにして、第2膜8の表面(二次音響放射方向Bに向けられる)、第1部分6b、内孔2a、2a’、および二次開口6a、6a’は、この例示的実施形態において音響ダクト6を形成する。
【0025】
図6に示す例示的な実施形態では、駆動ユニット2、2’はそれぞれ、ボイスコイル3、3’とマグネットアセンブリ4、4’から構成される。ボイスコイル3、3’は、機械的な連結部3a、7a;3a’、8aを介して、それぞれ第1膜7および第2膜8を機械的に駆動する。この実施形態では、膜7,8は平坦な面状の膜として実装されているが、ボイスコイル3,3’への適切な機械的連結手段を有する他のタイプの膜(例えば、図1~3の実施形態で示されたものと同様のコーン形状の膜)が利用できることは明らかであろう。
【0026】
従来技術のスピーカシステムは、古くからあるデュアル対向型ドライバ原理が使用されており、ドライバは背中合わせに配置されている。この構造上の利点は、対向するドライバにより、スピーカユニットの筐体の機械的振動を打ち消すことである。このキャンセルにより、筐体が比較的軽く、剛性が低く、ドライバに対して小さい場合でも、筐体はドライバの動きによる影響を大幅に軽減することができる。これらの従来技術では、背中合わせに配置されたドライバを採用するため、フットプリントが同一のドライバの奥行きの少なくとも2倍に制限されるという欠点がある。
【0027】
ドライバを同軸に配置された駆動ユニット2に収束させることは、例えば、参照することにより本願明細書に組み込まれるべき本出願人の特許公開公報WO2019/086357に記載されているように、スピーカ設計において必要な最小限の容積を減少させる効率的な方法である。低プロファイルを有する可能性のあるスピーカ装置のさらなる改良が、本出願人の国際特許公報WO2019/117706に記載されており、この公報に記載の内容は、ここで参照することにより本書に組み込まれものである。本願の実施形態で採用される駆動ユニット2は、参照することにより本願明細書にも組み込まれるべき国際特許公報WO2018/056814に記載のユニットであってもよい。
【0028】
現在採用されているダンパーとポートソリューションは、上記のコンバージドドライバ構造では使用できないことに留意する必要がある。膜7が内側に(互いに向かい合う方向に)変位、すなわち振動、する場合、膜7間の距離が変化すると、例えば米国特許公開US8452041から知られているような静的中心ポートにとって問題のある状況が発生する。
【0029】
本願の実施形態で使用される音響ダクト6は、低音性能を高める方法としてポートを使用したり、バンドパスフィルタを提供したりする、ポート付きスピーカーエンクロージャーとは音響的および機械的に異なる機能を有することに留意されたい。また、方向転換される空気変位、すなわち空気振動は、自由空気、すなわち自由空間、の中で動く他の膜7の側とは音響的には同位相で機械的には位相がずれている、膜8の動きの側から来る。音響ダクト6の目的は、膜による空気変位を方向転換する際、音響出力にできるだけ影響を与えずに、第2膜8による空気変位を方向転換することである。
【0030】
スピーカユニット1は、図5に示すように、例えばスピーカフレーム9の天板として機能する、通気性のあるフレーム要素を含むことができる。このような通気性フレーム要素は、通気性フレーム要素に最も近い第1膜7の外側への変位方向Aに向かって、自由空気の空間において空気振動を発するための空間を提供する。音響ダクト6またはエアガイドは、第2膜8からの空気変位を、第2膜8の外側(スピーカユニット1から離れる方向への変位を意味する)への変位方向Bと等しくない側へ方向転換するために設けられる。音響ダクト6は、第2幕8と、その外側の変位方向の向かった先にある自由空気との間に完全な気密状態での接続を提供する。音響ダクト6は、自由空気に向かった前面開口部(二次表面(複数)6aの総開口面積)を有しており、顕著な音響効果(バンドパス効果や低音増強効果)を与えることなく十分な空気振動を提供することが可能である。
【0031】
本発明によれば、スピーカユニット1の様々な実施形態が提供され、複数の駆動ユニット2の各々は、少なくとも1つのボイスコイル3と、少なくとも2つのマグネットを有するマグネットアセンブリ4とから構成される。全ての空気変位の向きを、単一の又は複数の表面が向いている主音響放射方向Aに向けるために、2つの膜7、8の少なくとも一方からの、音響的に同位相とすべき、空気変位は、音響ダクト6を使用して、膜8からの音響的に同位相とすべき外側への変位方向と等しくない、表面6aに向かって方向転換される。
【0032】
本発明の実施形態のスピーカフレーム9、2つの膜7、8および駆動ユニット2、2’の組み合わせは、両方の膜7、8が自由空気(すなわちスピーカユニット1外部)に空気変位を発することを可能にする少なくとも1つの音響ダクト6を有するラウドスピーカキャビネットに配置され、少なくとも一方の膜8からの空気変位が音響ダクト6を介して、膜8の外側への変位方向と等しくない、スピーカユニット1の側に向かって方向転換される。
【0033】
さらなる実施形態では、第1膜7及び第2膜8は、円錐形である(図1~3の実施形態参照)。これにより、得られる音圧レベルやさらなるスピーカ特性の点で効率の良いスピーカユニット1が得られる。さらに、軽い材料のメッシュまたはプレーンな表面の形の平らな形状の保護シールドを追加することもできる。代替の実施形態では、第1膜7および第2膜8は平坦である(図4図6実施形態参照)。
【0034】
さらに効率的なスピーカユニット1を得るために、さらなる実施形態では、音響ダクト6は、音響波をガイドするように配置された内面を有する。これは、例えば、適切な音響特性を有する適切な(プラスチックの)材料を使用することによって得ることができる。
【0035】
さらなる実施形態では、スピーカユニット1は、スピーカフレーム9と2つの膜7,8とによって区画された内部空間を有し、2つの駆動ユニット2は、内部空間に配置される。そして、駆動ユニット2のボイスコイル3およびマグネットアセンブリ4は、周りの空間、および膜7、8によって発生する音響波から隔離される。
【0036】
第2膜8もスピーカユニット1で生成された音に大きく寄与するので、効率の良いスピーカユニット1を得るために、さらなる実施形態では、音響チャネル6の断面積は1平方センチメートルより大きくする。このような寸法制限により、音響減衰を十分に低くすることができ、二次表面6aから発せられる音圧レベルを十分に高くすることができる。
【0037】
代替的に、または追加的に、さらなる実施形態において、音響チャネル6の幅を5mmより大きくなるように選択する。例えば図1の実施形態で示した二次表面6aの幅wや、図5の実施形態における二次表面6a,6a’の直径dは、5mmより大きくなるように選択する。音響波の場合、十分に低い音響減衰を得るためには、音響ダクトの最小寸法が最も重要である。
【0038】
先に説明した2つの実施形態に関して、スピーカユニット1が非常に小さいスピーカユニットである代替の実施形態では、最小の断面積および/または最小の幅は、さらに小さくすることができる。
【0039】
さらなる実施形態では、二次表面6aの正面面積は、第2膜8の正面面積の少なくとも10%である。これにより、第2膜8で生成された音エネルギーの十分高い部分がスピーカユニット1の前面側へ導かれ、スピーカユニット1で生成可能な全音圧レベルに寄与する効果がある。
【0040】
本発明のスピーカユニット1を、車両のドア内、天井埋め込み型スピーカ、テレビジョン装置など、多くの用途に適用できるように、スピーカユニット1の高さh(図1および図4に示す実施形態参照)は、(少なくとも)2枚の膜7,8のそれぞれの最大ピーク・ツー・ピークの変位の4倍と実質的に同じかそれより小さいものである。同軸に配置された(すなわち、膜7,8から横方向にずれて、サイドバイサイド配置された)駆動ユニット2を用いた本発明の実施形態の具体的な構造により、スピーカユニット1の厚さ寸法をこのように限定することができる。
【0041】
さらに有利な実施形態では、本発明のスピーカユニット1は、スピーカユニット1の内部または外部のコンポーネント、例えば(少なくとも)2つの駆動ユニット2だけでなく、例えば2つの駆動ユニット2を駆動するための1つまたは複数の電子コンポーネントの冷却効果も改善することが可能である。この効果を得るために、音響ダクト6の少なくとも一部を熱伝導性の高い材料で構成する。
【0042】
上述した図3及び図6を参照すると、音響ダクト6は、二次音響放射方向Bに沿って第2膜8から所定の距離に配置された第1部分6bと、スピーカフレーム9の一又は複数の側部に設けられた第2部分6cとを有する。単一の第2部分6cが示されているが、第2部分6cは、スピーカフレーム9の2面、3面、あるいは4面すべてに設けても良い。
【0043】
スピーカユニット1の動作時にスピーカフレーム9内に過度の熱がこもらないように、音響ダクト6(例えば第1部分6b及び/又は第2部分6c)が熱伝導性材料で構成されている実施形態が提供される。この実施形態では、例えば2つの駆動ユニット2によってスピーカフレーム9に発生する熱は、音響ダクト6の第1及び第2部分6b,6cの熱伝導率の向上により、放熱させることができる。代替的または追加的に、音響ダクト6は、動作中に音響ダクト6内の移動する空気を利用して、外部実装部品(例えば電子部品)の冷却にも使用できる(実際の体積が制限されていても、音響ダクト6内を移動する空気を介して熱エネルギーの交換が可能である)。そこで、この実施形態では、第1及び第2部品6b,6cが、スピーカユニット1の熱ヒートシンクとしても機能する。
【0044】
第2部分6bは、スピーカフレーム9の1面、2面、3面又は4面すべてを構成することができるので、1面、2面、3面および/または4面のうちのどれを熱伝導性材料で構成するかを選択することによって、所望のレベルの放熱を達成できる。
【0045】
図3及び図6に示すように、音響ダクト6が第3部分6dをさらに有し、第3部分6dが第2膜8と所定の距離をおいて対向又は前方に配置される実施形態においては、スピーカユニット1の熱性能が向上し得る。この第3部分6dは、第2膜8と実質的に平行に延びるスピーカユニット1の裏面/壁であり、裏面が第1及び第2部分6b,6cとその周縁部でつながっているとみなすことができる。そして、好ましい実施形態では、第3部分6dは、熱伝導性材料からなり、スピーカユニット1、または第3部分6dに取り付けられた外部部品によって発生する熱をさらに放散するための熱ヒートシンクとして機能することもできる。
【0046】
以上を考慮すると、音響ダクト6が、第2膜8と所定の距離をおいて対向配置された第3部6dをさらに有し、第1部6b、第2部6cおよび/または第3部6dが熱伝導性材料からなる複合された実施形態が想定され得る。
【0047】
例示的な実施形態において、熱伝導性材料は、少なくとも100W/m*Kの熱伝導率を示す。そのため、第1部分6b、第2部分6cおよび/または第3部分6dが、例えばアルミニウムまたは銅からなる場合、少なくとも100W/m*Kの熱伝導率が達成されるであろう。
【0048】
図3及び図6に示す実施形態では、スピーカユニット1は、例えば2つの駆動ユニット2を駆動するための1つ又は複数の電子部品10a、10b、10cを含んで構成され得る。これら1つ以上の電子部品10a、10b、10cは、スピーカユニット1に必要なスピーカアンプ、フィルタ回路、電源および/または他の任意の電子部品を含むことができる。構成要素10a、10b、10cは、内部に取り付けられた構成要素(すなわち、音響ダクト6内)として示されているが、さらなる実施形態では、構成要素10a、10b、10c、は、音響ダクト6の外面に取り付けられることも可能である。
【0049】
1つまたは複数の電子部品10a、10b、10cは発熱する可能性があるため、1つまたは複数の電子部品10a、10b、10cが音響ダクト6と熱的に接触した形態(例えば、熱伝導性材料からなる第1部分6b、第2部分6cおよび/または第3部分6dに搭載される形態)で、実施形態が考え出される。この実施形態では、1つ以上の電子部品10a、10b、10cにとって音響ダクト6が熱ヒートシンクとして使用されることを効果的に可能にし、1つ以上の電子部品10a、10b、10cからの熱は、熱伝導性の第1部分6b、第2部分6cおよび/または第3部分6dを介して放熱される。
【0050】
1つまたは複数の電子部品10a、10b、10cが、音響ダクト6の内部であって、熱伝導性の第1部分6b、第2部分6cおよび/または第3部分6d上に取り付けられている実施形態では、1つまたは複数の電子部品10a、10b、10cの空冷も起こり得る。よって、スピーカユニット1の使用時には、音響ダクト6を通る空気の移動により、そこに配置された1つ以上の電子部品10a、10b、10cが冷却される。なお、この空冷は、第1部分6b、第2部分6c及び/又は第3部分6dのいずれもが熱伝導性を有しない場合にも行われる。
【0051】
さらなる実施形態では、音響ダクト6と熱的に接触するスピーカユニット1のさらなる部分、例えばスピーカフレーム9の前面などを、熱伝導性材料から作ることができ、冷却が必要とされる外部コンポーネントをその上に取り付けることができる。
【0052】
以上、本発明を図面に示すような多数の例示的な実施形態を参照しながら説明した。いくつかの部品や要素の変更および代替的な実装は可能であり、それらの変更や代替的な実装は、添付の特許請求の範囲で特定される保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6