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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】電池管理装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/367 20190101AFI20240722BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20240722BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240722BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240722BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/387
G01R31/382
G01R31/392
H01M10/48 P
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023518859
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 KR2021014592
(87)【国際公開番号】W WO2022139143
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0183970
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ボ・ミ・イム
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-053564(JP,A)
【文献】特開2020-106470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0170802(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111693882(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルの電圧に対する容量の微分値を算出する算出部と、
前記微分値に対する統計分析を行う分析部と、
前記統計分析に基づいて前記電池セルの容量を判定する判定部と、
を含み、
前記分析部は、前記電池セルの充放電サイクル間の前記微分値の偏差に基づいて代表値を選定し、前記代表値に対して統計分析を行う、電池管理装置。
【請求項2】
前記分析部は、前記電池セルの充放電サイクル間の前記微分値の偏差のうち最も大きい値を代表値に選定し、前記代表値に対して統計分析を行う、請求項1に記載の電池管理装置。
【請求項3】
前記分析部は、前記代表値に対する近似式を算出し、前記近似式の係数に対して統計分析を行う、請求項2に記載の電池管理装置。
【請求項4】
前記分析部は、前記近似式の係数に対してK-meansクラスタリングを行う、請求項3に記載の電池管理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記電池セルが複数のクラスタのうち予め決められたクラスタに属する場合、前記電池セルの容量が正常であると判定する、請求項4に記載の電池管理装置。
【請求項6】
前記予め決められたクラスタは、前記代表値に対する近似式の傾きが基準値未満である電池セルを含む、請求項5に記載の電池管理装置。
【請求項7】
前記複数のクラスタに関する情報を格納する格納部をさらに含む、請求項5又は6に記載の電池管理装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記電池セルが前記予め決められたクラスタに属しない場合、既に設定されたサイクル数まで前記電池セルの充放電を行った後に前記電池セルの容量を判定する、請求項5に記載の電池管理装置。
【請求項9】
前記近似式は、一次または二次多項式である、請求項3又は4に記載の電池管理装置。
【請求項10】
電池管理方法であって、
電池セルの電圧に対する容量の微分値を算出するステップと、
前記微分値に対する統計分析を行うステップと、
前記統計分析に基づいて前記電池セルの容量を判定するステップと、
を含み、
前記電池管理方法は、前記電池セルの充放電サイクル間の前記微分値の偏差に基づいて代表値を選定するステップをさらに含み、
前記統計分析を行うステップは、前記代表値に対して統計分析を行う、電池管理方法。
【請求項11】
前記電池セルの充放電サイクル間の前記微分値の偏差のうち最も大きい値を代表値に選定するステップをさらに含み、
前記統計分析を行うステップは、前記代表値に対して統計分析を行う、請求項10に記載の電池管理方法。
【請求項12】
前記代表値に対する近似式を算出するステップをさらに含み、
前記統計分析を行うステップは、前記近似式の係数に対して統計分析を行う、請求項11に記載の電池管理方法。
【請求項13】
前記近似式の係数に対してK-meansクラスタリングを行うステップをさらに含む、請求項12に記載の電池管理方法。
【請求項14】
前記電池セルの容量を判定するステップは、前記電池セルが複数のクラスタのうち予め決められたクラスタに属する場合、前記電池セルの容量が正常であると判定する、請求項13に記載の電池管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2020年12月24日付けの韓国特許出願第10-2020-0183970号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
本文書に開示された実施形態は、電池管理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池に対する研究開発が活発に行われている。ここで、二次電池は、充放電が可能な電池であり、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などと、最近のリチウムイオン電池とをいずれも含む意味である。二次電池の中でも、リチウムイオン電池は、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などに比べて、エネルギー密度が遥かに高いという長所がある。また、リチウムイオン電池は、小型、軽量に作製することができるため、移動機器の電源として用いられる。また、リチウムイオン電池は、電気自動車の電源にまでその使用範囲が拡張され、次世代エネルギー貯蔵媒体として注目を浴びている。
【0003】
また、二次電池は、一般的に複数の電池セルが直列および/または並列に連結された電池モジュールを含む電池ラックとして用いられる。そして、電池ラックは、電池管理システムにより、状態および動作が管理および制御される。
【0004】
このような電池セルの容量を計算するためには、通常、電池セルの充電および放電が全て終わった後、Ah Countingなどの計算式を用いる。また、このような電池セルを出荷する場合、予め電池セルを300サイクルまで充放電させ、容量劣化率を点検した後に出荷がなされる。しかし、電池セルを300サイクルまで充放電させることは、時間および費用が多くかかるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本文書に開示された実施形態は、電池セルの充電および放電中にリアルタイムで測定された状態データを統計的に分析することで、電池セルの容量を早期に予測することができる電池管理装置および方法を提供することを1つの目的とする。
【0006】
本文書に開示された実施形態の技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及していないまた他の技術的課題は、下記の記載から当業者にに明らかに理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本文書に開示された一実施形態に係る電池管理装置は、電池セルの電圧に対する容量の微分値を算出する算出部と、前記微分値に対する統計分析を行う分析部と、前記統計分析に基づいて前記電池セルの容量を判定する判定部と、を含むことができる。
【0008】
一実施形態に係る、前記分析部は、前記電池セルの充放電サイクル間の前記微分値の偏差のうち最も大きい値を代表値に選定し、前記代表値に対して統計分析を行うことができる。
【0009】
一実施形態に係る、前記分析部は、前記代表値に対する近似式を算出し、前記近似式の係数に対して統計分析を行うことができる。
一実施形態に係る、前記近似式の係数に対してK-meansクラスタリングを行うことができる。
【0010】
一実施形態に係る、前記判定部は、前記電池セルが複数のクラスタのうち予め決められたクラスタに属する場合、前記電池セルの容量が正常であると判定することができる。
【0011】
一実施形態に係る、前記予め決められたクラスタは、前記代表値に対する近似式の傾きが基準値未満である電池セルを含むことができる。
一実施形態に係る、前記複数のクラスタに関する情報を格納する格納部をさらに含むことができる。
【0012】
一実施形態に係る、前記判定部は、前記電池セルが前記予め決められたクラスタに属しない場合、既に設定されたサイクル数まで前記電池セルの充放電を行った後に前記電池セルの容量を判定することができる。
一実施形態に係る、前記近似式は、一次または二次多項式であってもよい。
【0013】
本文書に開示された一実施形態に係る電池管理方法は、電池セルの電圧に対する容量の微分値を算出するステップと、前記微分値に対する統計分析を行うステップと、前記統計分析に基づいて前記電池セルの容量を判定するステップと、を含むことができる。
【0014】
一実施形態に係る、前記電池セルの充放電サイクル間の前記微分値の偏差のうち最も大きい値を代表値に選定するステップをさらに含み、前記統計分析を行うステップは、前記代表値に対して統計分析を行うことができる。
一実施形態に係る、前記近似式の係数に対してK-meansクラスタリングを行うことができる。
【0015】
一実施形態に係る、前記判定部は、前記電池セルが複数のクラスタのうち予め決められたクラスタに属する場合、前記電池セルの容量が正常であると判定することができる。
【0016】
一実施形態に係る、前記予め決められたクラスタは、前記代表値に対する近似式の傾きが基準値未満である電池セルを含むことができる。
一実施形態に係る、前記複数のクラスタに関する情報を格納する格納部をさらに含むことができる。
【0017】
一実施形態に係る、前記判定部は、前記電池セルが前記予め決められたクラスタに属しない場合、既に設定されたサイクル数まで前記電池セルの充放電を行った後に前記電池セルの容量を判定することができる。
一実施形態に係る、前記近似式は、一次または二次多項式であってもよい。
【0018】
本文書に開示された一実施形態に係る電池管理方法は、電池セルの電圧に対する容量の微分値を算出するステップと、前記微分値に対する統計分析を行うステップと、前記統計分析に基づいて前記電池セルの容量を判定するステップと、を含むことができる。
【0019】
一実施形態に係る、前記電池セルの充放電サイクル間の前記微分値の偏差のうち最も大きい値を代表値に選定するステップをさらに含み、前記統計分析を行うステップは、前記代表値に対して統計分析を行うことができる。
【0020】
一実施形態に係る、前記代表値に対する近似式を算出するステップをさらに含み、前記統計分析を行うステップは、前記近似式の係数に対して統計分析を行うことができる。
一実施形態に係る、前記近似式の係数に対してK-meansクラスタリングを行うステップをさらに含むことができる。
【0021】
一実施形態に係る、前記電池セルの容量を判定するステップは、前記電池セルが複数のクラスタのうち予め決められたクラスタに属する場合、前記電池セルの容量が正常であると判定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本文書に開示された一実施形態に係る電池管理装置および方法は、電池セルの充電および放電中にリアルタイムで測定された状態データを統計的に分析することで、電池セルの容量を早期に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一般的な電池ラックの構成を示すブロック図である。
図2】本文書に開示された一実施形態に係る電池管理装置の構成を示すブロック図である。
図3】本文書に開示された一実施形態に係る電池セルの代表値の選定過程を説明するための図である。
図4】本文書に開示された一実施形態に係る、電池セルの代表値に対して算出された近似式のグラフを例示的に示す図である。
図5】本文書に開示された一実施形態に係る、算出された電池セルの代表値に対する近似式の係数に対してK-meansクラスタリングを行うことを示す図である。
図6】本文書に開示された一実施形態に係る、K-meansクラスタリングにより分類された各クラスタに属した電池セルのSOHおよび代表値を例示的に示す図である。
図7】本文書に開示された一実施形態に係る電池セルの代表値に対するグラフをクラスタ別に分類して示す図である。
図8】本文書に開示された一実施形態に係る、算出された各クラスタに属した電池セルに対する容量劣化度をサイクルに応じて示す図である。
図9】本文書に開示された一実施形態に係る電池管理方法を示すフローチャートである。
図10】本文書に開示された一実施形態に係る電池管理方法を実行するコンピューティングシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本文書に開示された多様な実施形態について詳しく説明する。本文書において、図面上の同一の構成要素に対しては同一の参照符号を付し、同一の構成要素に対して重複した説明は省略する。
【0025】
本文書に開示されている多様な実施形態に対し、特定の構造的ないし機能的説明は、単に実施形態を説明するための目的で例示されたものであり、本文書に開示された多様な実施形態は、種々の形態で実施されてもよく、本文書に説明された実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。
【0026】
多様な実施形態で用いられた「第1」、「第2」、「1番目」、または「2番目」などの表現は、多様な構成要素を、順序および/または重要度に関係なく修飾してもよく、当該構成要素を限定しない。例えば、本文書に開示された実施形態の権利範囲から逸脱せずに、第1構成要素は第2構成要素と命名してもよく、それと同様に、第2構成要素も第1構成要素に変更して命名してもよい。
【0027】
本文書で用いられた用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであって、他の実施形態の範囲を限定しようとするものではない。単数の表現は、文脈上、明らかに他を意味しない限り、複数の表現を含んでもよい。
【0028】
技術的または科学的な用語を含めてここで用いられる全ての用語は、本文書に開示された実施形態の技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同一の意味を有してもよい。一般的に用いられる辞書に定義された用語は、関連技術の文脈上の意味と同一または類似の意味を有するものと解釈されてもよく、本文書において明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。場合によっては、本文書で定義された用語であっても、本文書に開示された実施形態を排除するように解釈されてはならない。
【0029】
図1は、一般的な電池ラックの構成を示すブロック図である。
具体的に、図1は、本文書に開示された一実施形態に係る電池ラック10と、上位システムに含まれている上位制御器20と、を含む電池制御システム1を概略的に示す。
【0030】
図1に示されたように、電池ラック10は、複数の電池モジュール12、センサ14、スイッチング部16、および電池管理システム2を含むことができる。この際、電池ラック10には、電池モジュール12、センサ14、スイッチング部16、および電池管理システム2が複数備えられることができる。
【0031】
複数の電池モジュール12は、充放電可能な少なくとも1つの電池セルを含むことができる。
センサ14は、電池ラック10に流れる電流を検出することができる。この際、検出信号は、電池管理システム2に伝達されることができる。
【0032】
スイッチング部16は、電池モジュール12の(+)端子側または(-)端子側に直列に連結され、電池モジュール12の充放電電流の流れを制御することができる。例えば、スイッチング部16は、電池ラック10の仕様に応じて少なくとも1つのリレー、電磁接触器などを用いることができる。
【0033】
電池管理システム2は、電池ラック10の電圧、電流、温度などをモニターし、過充電および過放電などを防止するように制御管理することができ、例えば、RBMSを含むことができる。
【0034】
電池管理システム2は、上述した各種パラメータを測定した値の入力を受けるインターフェースであり、複数の端子、およびこれらの端子と連結され、入力を受けた値の処理を行う回路などを含むことができる。また、電池管理システム2は、スイッチング部16、例えば、リレーまたは接触器などのON/OFFを制御することもでき、電池モジュール12に連結され、電池モジュール12それぞれの状態を監視することができる。
【0035】
一方、本文書に開示された電池管理システム2においては、以下に後述するように、別のプログラムを介して測定された電池セルの電圧に対する容量の微分値を算出し、それを統計的に分析して電池セルの容量を予測することができる。
【0036】
上位制御器20は、電池モジュール12を制御するための制御信号を電池管理システム2に伝送することができる。これにより、電池管理システム2は、上位制御器20から印加される制御信号に基づいて動作が制御されることができる。また、電池モジュール12は、ESS(Energy Storage System)に含まれた構成であってもよい。この場合、上位制御器20は、複数の電池ラック10を含む電池バンクの制御器(BBMS)または複数のバンクを含むESS全体を制御するESS制御器であってもよい。ただし、電池ラック10は、このような用途に限定されるものではない。
このような電池ラック10の構成および電池管理システム2の構成は公知の構成であるため、より具体的な説明は省略することにする。
【0037】
図2は、本文書に開示された一実施形態に係る電池管理装置の構成を示すブロック図である。
図2を参照すると、本文書に開示された一実施形態に係る電池管理装置100は、算出部110、分析部120、判定部130、および格納部140を含むことができる。
【0038】
算出部110は、電池セルの電圧に対する容量の微分値を算出することができる。具体的に、算出部110は、電池セルそれぞれの充放電サイクル(cycle)ごとの電圧および電流に基づいて、電池セルの電圧に対する容量の微分値であるdQ/dVを算出することができる。また、算出部110は、電池セルそれぞれに対して算出された充放電サイクルごとのdQ/dV値を格納部140に格納することができる。
【0039】
分析部120は、算出部110を介して算出された微分値に対する統計分析を行うことができる。具体的に、分析部120は、電池セルの充放電サイクル間の微分値の偏差のうち最も大きい値を代表値(以下、nonfixV dQ/dVと説明する)に選定し、選定された代表値に対して統計分析を行うことができる。また、分析部120は、電池セルそれぞれに対し、充放電サイクルごとに算出されたそれぞれの代表値を格納部140に格納することができる。
【0040】
分析部120は、代表値に対する近似式を算出し、近似式の係数に対して統計分析を行うことができる。例えば、代表値に対する近似式は、一次または二次多項式であってもよい。また、近似式は、任意の数の充放電サイクル数に対して近似して算出されることができる。例えば、近似式は、電池セルそれぞれに対し、1~4サイクルまでのデータに基づいて算出されるか、または1~100サイクルまでのデータに基づいて算出されることができる。分析部120を介して算出される近似式が二次式である場合には、代表値に対する概形にさらに近く近似させることができるため、概形自体に重点を置いて分析する場合に有用であり、近似式が一次式である場合には、代表値の傾きが浮き彫りになるように近似させることができるため、変化量にさらに重点を置いて分析することができる。
【0041】
また、分析部120は、算出された近似式の係数に対してK-meansクラスタリングを行い、既に設定された数のクラスタに分類することができる。この際、各クラスタは、電池セルの代表値の傾きに基づいて分類されることができる。これについては、図5を参照して後述する。
【0042】
判定部130は、統計分析に基づいて電池セルの容量を判定することができる。具体的に、判定部130は、電池セルが分析部120を介して算出された複数のクラスタのうち予め決められたクラスタに属する場合には、電池セルの容量が正常であると判定することができる。この場合、予め決められたクラスタは、代表値の傾きが基準値未満である電池セルを含むことができる。一方、判定部130は、電池セルが予め決められたクラスタに属しない場合には、既に設定されたサイクル数(例えば、300サイクル)まで電池セルの充放電を行った後に電池セルの容量を判定することができる。
【0043】
格納部140は、複数のクラスタに関する情報を格納することができる。例えば、格納部140は、分析部120を介してK-meansクラスタリングにより予め算出されたクラスタに関する情報を格納することができる。また、格納部140は、電池セルそれぞれに対して算出された微分値および代表値に関するデータを格納することができる。
【0044】
一方、図1では本文書に開示された一実施形態に係る電池管理装置100が格納部140を含むものとして説明したが、電池管理装置100は、格納部140の代わりに通信部(図示せず)を含むことができる。この場合、電池管理装置100は、電池セルそれぞれに対する微分値データ、代表値、複数のクラスタに関する情報などの各種データを外部サーバに格納しておき、通信部を介して送受信する方式で動作することができる。
【0045】
このように、本文書に開示された一実施形態に係る電池管理装置100によると、電池セルの充電および放電中にリアルタイムで測定された状態データを統計的に分析することで、電池セルの容量を早期に予測することができる。
【0046】
図3は、電池セルの充放電サイクル間の微分値の偏差のうち最も大きい値を代表値に選定することを例示的に説明するための図である。
図3を参照すると、x軸は、電池セルの電圧(V)を示し、y軸は、電池セルの電圧に対する容量の微分値(dQ/dV)を示す。また、図3の各グラフは、電池セルの充放電サイクル別に微分値を算出して示したものである。
【0047】
図3に示したように、本文書に開示された一実施形態に係る電池管理装置100は、電池セルの充放電サイクル間の微分値の偏差のうち最も大きい値を代表値に選定することができる。このように算出された代表値は、以下に説明するように電池セルの容量との相関性が高いため、電池セルの充放電サイクルを多く行わなくても早期に電池セルの容量を予測するのに好適である。
【0048】
図4は、電池セルの代表値に対して算出された近似式のグラフを例示的に示す図である。
図4を参照すると、x軸は、電池セルの充放電サイクル数を示し、y軸は、電池セルの代表値nonfixV dQ/dVを示す。この際、y軸の代表値は、電池セルのdQ/dVのうち充放電サイクル間の偏差が最も大きい値であってもよい。図4は、電池セルの代表値のグラフ(A)と、代表値に対する近似式を二次多項式(ax2+bx+c)により算出してグラフ(B)で示したものである。図4に示したように、代表値は、充放電サイクルが行われるほど減少して近似式と類似した形態で現れることが分かる。
【0049】
図5は、電池セルの代表値に対する近似式の係数に対してK-meansクラスタリングを行うことを示す図である。
図5に示した座標空間において、それぞれの座標軸は、代表値の近似式の係数であるa、b、およびc軸を示す。また、図5の各ポイントは、電池セルそれぞれの代表値に対する近似式の係数を示す。図5の例示においては、各電池セルをK-meansクラスタリングにより3個のクラスタ(Cluster1~3)に分類している。しかし、本実施形態はこれに制限されず、各電池セルのクラスタは任意の数に決められてもよい。
【0050】
図6は、K-meansクラスタリングにより分類された各クラスタに属した電池セルのSOHおよび代表値を例示的に示す図である。
図6を参照すると、図5に示した座標空間上のクラスタ1~3に対するグラフを示している。また、図6のCluster1~3において、薄く表示したグラフは、電池セルの容量が正常範囲に属する場合(Pass)を示し、濃く表示したグラフは、電池セルの容量に異常がある部分(Fail)を示す。
【0051】
具体的に、図6は、前述した代表値をK-meansクラスタリングにより分類した後、各クラスタに対して容量劣化テストを行い、正常または異常を判定して示したものである。この際、図6に示したCluster1の場合は、242個の電池セルのうち、正常(Pass)が226個、異常(Fail)が16個であり、Cluster2の場合は、197個の電池セルのうち、正常(Pass)が154個、異常(Fail)が43個であった。これに対し、Cluster3の場合は、11個の電池セルのいずれも正常であった。
【0052】
このように、K-meansクラスタリングにより分類したCluster3の場合は、電池セルの微分値のうち最大値を示す代表値の傾きが他のクラスタに比べて小さいため、初期代表値と対比して一定サイクル後の変化量が小さいことが分かる。したがって、本文書に開示された一実施形態に係る電池管理装置によると、電池セルの微分値に関する代表値に対してK-meansクラスタリングを行って各クラスタを事前に算出した後、電池セルが特定のクラスタ(例えば、Cluster3)に属する場合に劣化度が正常範疇(Pass)であると判断することで、従来のように300サイクルまで行わなくても早期に電池セルの容量を推定することができる。
【0053】
図7は、電池セルの代表値に対するグラフをクラスタ別に分類して示す図である。
図7を参照すると、x軸は、電池セルの充放電サイクル数であり、y軸は、電池セルの微分値に関する代表値を示す。図7から分かるように、Cluster1および2と比べてCluster3の場合が、微分値に関する代表値のサイクルに対する傾きが緩やかであることを確認することができる。すなわち、Cluster3に属する電池セルの場合、SOHと相関性が高い代表値の変化が少ないため、相対的に小さい正極の容量劣化を示すことができる。したがって、本文書に開示された電池管理装置を介して統計分析を行った結果、特定の電池セルがCluster3に属する場合、直ちに充放電実験を中断し、劣化度が正常な電池セルと判断することができる。
【0054】
図8は、各クラスタに属した電池セルに対する容量劣化度をサイクルに応じて示す図である。
図8を参照すると、電池セルの電圧に対する容量の微分値のサイクル間の最大偏差値である代表値に対し、それぞれ一次多項式と二次多項式で近似させた後、容量劣化度の正常(Pass)または異常(Fail)有無を示した。図8に示したように、電池セルの充放電サイクルの初期には正常/異常の判定結果が拡散または振動しており、サイクルが一定回数以上行われた後には次第に結果値が収斂していくことが分かる。
【0055】
特に、図8を参照すると、電池セルの代表値に対して概形に重点を置いて二次多項式で近似させた場合には、相対的に容量劣化度の結果値が正常と異常の両方で拡散または振動することがが分かる。これに対し、電池セルの代表値に対して傾きを極大化した一次多項式で近似させた場合には、容量劣化度の結果値が初期段階から収斂することが分かる。すなわち、図8に示したように、一次多項式の場合には、Cluster3の場合、約36サイクルから正常と異常が収斂し、特に異常(Fail)の場合が36サイクル以後には0を示しており、二次多項式に比べて安定的に容量劣化有無を区分することができる。
【0056】
このように、本文書に開示された一実施形態に係る電池管理装置によると、電池セルの代表値に対する統計分析により電池セルの正極劣化による容量の正常有無を早期に判定することができる。
【0057】
図9は、本文書に開示された一実施形態に係る電池管理方法を示すフローチャートである。
図9を参照すると、本文書に開示された一実施形態に係る電池管理方法は、先ず、電池セルの電圧に対する容量の微分値を算出する(S110)。具体的に、ステップS110においては、電池セルそれぞれの充放電サイクルごとの電圧および電流に基づいて、電池セルの電圧に対する容量の微分値であるdQ/dVを算出することができる。
【0058】
そして、電池セルの充放電サイクル間の微分値の偏差のうち最も大きい値を代表値に選定し(S120)、選定された代表値に対する近似式を算出する(S130)。この際、近似式は、一次または二次多項式であってもよい。前述したように、近似式が二次式である場合には、代表値に対する概形にさらに近似させることができるため、概形自体に重点を置いて分析する場合に有用であり、近似式が一次式である場合には、代表値の変化量にさらに重点を置いて分析することができる。
【0059】
次に、ステップS130で算出された近似式の係数に対してK-meansクラスタリングを行う(S140)。したがって、既に設定されたクラスタ数に応じて各電池セルをクラスタ別に分類することができる。また、電池セルが予め決められたクラスタに含まれるか否かを判断する(S150)。
【0060】
仮に、電池セルが予め決められたクラスタに含まれる場合(YES)、当該電池セルの容量が正常であると判定する(S160)。この場合、予め決められたクラスタは、代表値に対する近似式の傾きが基準値未満である電池セルを含むことができる。例えば、予め決められたクラスタは、前述したCluster3に該当することができる。これに対し、電池セルが予め決められたクラスタに含まれない場合(NO)、既に設定されたサイクル数(例えば、300サイクル)まで電池セルの充放電を行った後に電池セルの容量を判定する(S170)。
【0061】
このように、本文書に開示された一実施形態に係る電池管理方法によると、電池セルの充電および放電中にリアルタイムで測定された状態データを統計的に分析することで、電池セルの容量を早期に予測することができる。
【0062】
図10は、本文書に開示された一実施形態に係る電池管理方法を実行するコンピューティングシステムを示すブロック図である。
図10を参照すると、本文書に開示された一実施形態に係るコンピューティングシステム30は、MCU32、メモリ34、入出力I/F36、および通信I/F38を含むことができる。
【0063】
MCU32は、メモリ34に格納されている各種プログラム(例えば、微分値の算出プログラム、容量予測プログラムなど)を実行させ、このようなプログラムを介して電池セルの電圧、電流、容量などを含む各種データを処理し、前述した図2に示した電池管理装置の機能を行うようにするプロセッサであってもよい。
【0064】
メモリ34は、電池セルの微分値の算出および容量予測に関する各種プログラムを格納することができる。また、メモリ34は、電池セルそれぞれの電圧、電流、微分値、代表値データなどの各種データを格納することができる。
【0065】
このようなメモリ34は、必要に応じて複数備えられてもよい。メモリ34は、揮発性メモリであってもよく、不揮発性メモリであってもよい。揮発性メモリとしてのメモリ34は、RAM、DRAM、SRAMなどが用いられることができる。不揮発性メモリとしてのメモリ34は、ROM、PROM、EAROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリなどが用いられることができる。上記で列挙したメモリ34の例は単なる例示にすぎず、これらの例に限定されるものではない。
【0066】
入出力I/F36は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置(図示せず)と、ディスプレイ(図示せず)などの出力装置と、MCU32との間を連結してデータを送受信できるようにするインターフェースを提供することができる。
【0067】
通信I/F340は、サーバと各種データを送受信できる構成であり、有線または無線通信を支援できる各種装置であってもよい。例えば、通信I/F38を介して、別に備えられた外部サーバから電池セルの微分値および代表値の算出や容量予測のためのプログラムや各種データなどを送受信することができる。
【0068】
このように、本文書に開示された一実施形態に係るコンピュータプログラムは、メモリ34に記録され、MCU32により処理されることで、例えば、図2に示した各機能を行うモジュールとして実現されてもよい。
【0069】
以上、本文書に開示された実施形態を構成する全ての構成要素が1つに結合するかまたは結合して動作するものと説明されたからといって、本文書に開示された実施形態が必ずしもこのような実施形態に限定されるものではない。すなわち、本文書に開示された実施形態の目的の範囲内であれば、その全ての構成要素が1つ以上に選択的に結合して動作してもよい。
【0070】
また、以上に記載された「含む」、「構成する」、または「有する」などの用語は、特に反対の記載がない限り、当該構成要素が内在できることを意味するため、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいものと解釈されなければならない。技術的または科学的な用語を含む全ての用語は、他に定義しない限り、本文書に開示された実施形態が属する技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。辞書に定義された用語のように一般的に用いられる用語は、関連技術の文脈上の意味と一致するものと解釈されなければならず、本文書において明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。
【0071】
以上の説明は本文書に開示された技術思想を例示的に説明したものにすぎず、本文書に開示された実施形態が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本文書に開示された実施形態の本質的な特性から逸脱しない範囲内で多様な修正および変形が可能である。したがって、本文書に開示された実施形態は本文書に開示された実施形態の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであって、このような実施形態により本文書に開示された技術思想の範囲が限定されるものではない。本文書に開示された技術思想の保護範囲は後述の特許請求の範囲により解釈されなければならず、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は本文書の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10