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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ポリオレフィンエラストマー製造設備
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20240722BHJP
   B01D 3/14 20060101ALI20240722BHJP
   C08F 6/00 20060101ALI20240722BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C08F2/01
B01D3/14 A
C08F6/00
C08F210/16
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023521652
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 KR2021009672
(87)【国際公開番号】W WO2022080635
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0132190
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522318173
【氏名又は名称】ハンファ トータルエナジーズ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANWHA TOTALENERGIES PETROCHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】103,Dokgot-2-ro, Daesan-eup, Seosan-si, Chungcheongnam-do 31900, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パク チャン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ハ ジョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】コ ミン ス
(72)【発明者】
【氏名】オー サン ジュン
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-503891(JP,A)
【文献】特表2013-515107(JP,A)
【文献】特開2011-137073(JP,A)
【文献】特表2017-519084(JP,A)
【文献】特表2018-517554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、6/00-246/00、301/00
B01D 1/00-8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒及び原料が供給される反応器と、
前記反応器から排出される生成物を脱揮発し、未反応物を1次脱揮発回収の流れとして去し、その残りを1次脱揮発製造の流れとして出する1次脱揮発機と、
前記1次脱揮発機から排出される前記1次脱揮発製造の流れを再度脱揮発し、未反応物を2次脱揮発回収の流れとしてさらに除去し、その残りを2次脱揮発製造の流れとして出する2次脱揮発機と、
水を用いて、前記2次脱揮発機から排出される前記2次脱揮発製造の流れをスクラブすることにより、未反応物及び水が気化し、高分子製品が残留するフィニッシャーと、
前記フィニッシャーで除去される未反応物及び水から水を除去し、その残りをフィニッシャー反応処理の流れとして出する水除去装置と、
前記2次脱揮発機で除去される前記2次脱揮発回収の流れ及び前記水除去装置から排出される前記フィニッシャー反応処理の流れを蒸留する1次蒸留塔であって前記1次蒸留塔の中間部から分離される流れ前記反応器に回収される前記1次蒸留塔と、を含む、ポリオレフィンエラストマー製造設備。
【請求項2】
前記1次蒸留塔の中間部は、前記1次蒸留塔の上端から10~50%に該当する地点である、請求項1に記載のポリオレフィンエラストマー製造設備。
【請求項3】
前記1次脱揮発機で除去される前記1次脱揮発回収の流れから不純物除去の流れとして低分子物質を除去し、その残りを前記反応器に回収するフラッシュドラム及び
前記フラッシュドラムで除去される前記不純物除去の流れ及び前記1次蒸留塔の上部から分離される流れを蒸留する2次蒸留塔であって前記2次蒸留塔の下部から分離される流れ前記反応器に回収される前記2次蒸留塔を含む、請求項1に記載のポリオレフィンエラストマー製造設備。
【請求項4】
前記原料は、エチレンと前記溶媒より沸点が低い炭化水素のうち二重結合または三重結合を有し、エチレンと共重合して高分子を形成できる炭化水素を含む、請求項3に記載のポリオレフィンエラストマー製造設備。
【請求項5】
前記原料は、1-ブテンを含む、請求項3に記載のポリオレフィンエラストマー製造設備。
【請求項6】
前記1次蒸留塔の上部から分離される流れは、前記1次蒸留塔の中間部から分離される流れに比べて質量流速が最小0.1倍、最大9倍となるように維持される、請求項3に記載のポリオレフィンエラストマー製造設備。
【請求項7】
前記1次蒸留塔の上部から分離される流れは、35~140℃、2~10barに維持される、請求項3に記載のポリオレフィンエラストマー製造設備。
【請求項8】
前記1次蒸留塔の下部から分離される流れを蒸留する3次蒸留塔であって前記3次蒸留塔の上部または中間部から分離される流れ前記反応器に回収される前記3次蒸留塔をさらに含む、請求項3に記載のポリオレフィンエラストマー製造設備。
【請求項9】
前記3次蒸留塔の中間部は、前記3次蒸留塔の上端から30~70%に該当する地点である、請求項8に記載のポリオレフィンエラストマー製造設備。
【請求項10】
前記原料は、前記溶媒より沸点が高い炭化水素のうち二重結合または三重結合を有し、エチレンと共重合して高分子を形成できる炭化水素を含む、請求項8に記載のポリオレフィンエラストマー製造設備。
【請求項11】
前記原料は、1-オクテンを含む、請求項8に記載のポリオレフィンエラストマー製造設備。
【請求項12】
前記溶媒は、炭素数が5個~7個の炭化水素のうち二重結合を有さず、沸点が常圧で60~100℃である炭化水素を含む混合物を含む、請求項1に記載のポリオレフィンエラストマー製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンエラストマー製造設備に関し、より詳細には、ポリオレフィンエラストマー製造設備において溶媒及び未反応物を回収する工程に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンエラストマー(POE:Polyolefin Elastomer)は、ポリオレフィン系製品の中で低い密度を持つエチレンとアルファオレフィンの共重合体で、差別化された衝撃補強、高弾性特性と低い熱封合温度などの特性を示すため、自動車内外装材、遮音材、靴用品、食品用フィルム、封止材などに用いられている。
【0003】
前記のようなPOEの製造のため、メタロセン触媒が主に使用されており、その他にチーグラナッタ系の触媒を開発するか、または工場を増設してPOE製造工程の歩留まりや効率性を改善させる研究がなされてきたが、原料及び工程運営において所要の費用及び原料を用いる効率性の側面で改善の余地があった。
【0004】
POEの製造時、溶媒及び未反応物の分離は、主に2つの脱揮発機(devolatilizer)と1つのフィニッシャー(または押出機(extruder))から構成され、温度上昇及び減圧を通じて工程中に溶媒及び未反応物は気化して抜け出すが、このうち相対的に高圧の最初の1次脱揮発機では、最も多い量の溶媒と未反応物が分離して排出され、相対的に沸点の低いエチレンなどの物質組成が高く現れる。また、フィニッシャーでは、気化した水が残留炭化水素ガスを伴って排出されるストリッピング(stripping)を通じて前記水とともに最終残留物が排出され、この残留物は水を除去した後、回収工程として再循環流に含まれて投入されることになる。
【0005】
従来、POEは、主に1-オクテンまたは1-ブテンから製造され、殆どが2つのフィード(feed)を変えながら生産した。すなわち、POE生産工程時、1-オクテンの代わりに1-ブテンを注入する場合に対する考慮が必要であった。
【0006】
また、前記のようなPOE工程において使用される溶媒は、高純度のn-ヘキサンや高純度のメチルシクロヘキサンを使用した。従来、最初の1次脱揮発機から出る流れの全体を回収することにより、エチレンに含まれたエタンなどのように分子量が小さく沸点が低くて蒸気圧の高い物質である軽い物質が濃縮され、1次蒸留塔でn-ヘキサンを前記1次蒸留塔の上端から分離することにより多くのエネルギーが消費され、1-オクテンを3次蒸留塔の上端から分離することにより多くのエネルギーが消費され、原料に含まれている溶媒として-オクテンに対して沸点が低く、n-ヘキサンに対して沸点の高い物質を除去する方法がなかったという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術で製造されるPOE製造工程において発生する上述のような問題点を解決するとともに、溶媒として高純度99%以上のn-ヘキサンを使用せず、炭素数が5個~7個の炭化水素化合物のうち二重結合がなくて反応に影響を与えずに沸点が常圧で60~100℃の範囲を有する物質の混合物(n-ヘキサン含量が63wt%の混合物など、以下、C6化合物という)を使用しながらも、未反応モノマーであるエチレン及び未反応コモノマーである1-オクテンまたは1-ブテンの回収率を高め、前記工程に使用されるエネルギーを最小化できる溶媒回収工程(SRU:Solvent Recovery Unit)を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるポリオレフィンエラストマー製造設備は、溶媒及び原料が供給される反応器、前記反応器から排出される生成物を脱揮発し、未反応物を除去(1次脱揮発回収の流れ)し、その残りを排出(1次脱揮発製造の流れ)する1次脱揮発機、前記1次脱揮発機から排出される1次脱揮発製造の流れを再度脱揮発し、未反応物をさらに除去(2次脱揮発回収の流れ)し、その残りを排出(2次脱揮発製造の流れ)する2次脱揮発機、水を用いて、前記2次脱揮発機から排出される2次脱揮発製造の流れをストリッピングすることにより、未反応物及び水が気化し、高分子製品が残留するフィニッシャー、前記フィニッシャーで除去される未反応物及び水から水を除去し、その残りを排出(フィニッシャー反応処理の流れ)する水除去装置及び前記2次脱揮発機で除去される2次脱揮発循環流及び前記水除去装置から排出されるフィニッシャー反応処理の流れを蒸留し、その中間部から分離される流れを前記反応器に回収する1次蒸留塔を含むポリオレフィンエラストマー製造設備を含んでもよい。
【0009】
また、前記1次蒸留塔の中間部は、前記1次蒸留塔の上端から10~50%に該当する地点であってもよい。
【0010】
また、前記1次脱揮発機で除去される1次脱揮発回収の流れから低分子物質を除去(不純物除去の流れ)し、その残りを前記反応器に回収するフラッシュドラム及び前記フラッシュドラムで除去される不純物除去の流れ及び前記1次蒸留塔の上部から分離された流れを蒸留し、その下部から分離される流れを前記反応器に回収する2次蒸留塔を含んでもよい。
【0011】
また、前記原料は、エチレンと溶媒よりも沸点が低い物質を含んでもよい。
【0012】
また、前記原料は、1-ブテンを含んでもよい。
【0013】
また、前記1次蒸留塔の上部から分離される流れは、前記1次蒸留塔の中間部から分離される流れに比べて質量流速が最大9倍になるように維持されてもよい。
【0014】
また、前記1次蒸留塔の上部から分離された流れは、35~140℃、2~10barに維持されてもよい。
【0015】
また、前記1次蒸留塔の下部から分離される流れを蒸留し、その中間部から分離された流れを前記反応器に回収する3次蒸留塔をさらに含んでもよい。
【0016】
また、前記3次蒸留塔の中間部は、前記3次蒸留塔の上端から30~70%に該当する地点であってもよい。
【0017】
また、前記原料は、エチレンと溶媒より沸点が高い物質を含んでもよい。
【0018】
また、前記原料は、1-オクテンを含んでもよい。
【0019】
また、前記溶媒は、炭素数が5個~7個の炭化水素化合物のうち二重結合がなく、沸点が常圧で60~100℃の物質を含む混合物を含んでもよい。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本発明によるポリオレフィンエラストマー製造設備において溶媒及び未反応物を回収するための工程は、従来のPOE工程の溶媒及び未反応物の回収方法を改善するものであって、
(1)1次脱揮発機から排出される未反応物の回収時、蒸気圧が高く沸点が低い物質を除去できる段階を追加して物質の濃縮を防ぎ、
(2)C6化合物を1次蒸留塔の中間部から分離し、全体のPOE工程のエネルギー消費を減らすことができ、
(3)1-オクテン用蒸留塔として3次蒸留塔を通じて1-オクテンに対して沸点が低い不純物と沸点が高い不純物の両方を再循環流から除去しうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備の概要図である。
図2】本発明の他の実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備の概要図である。
図3】本発明の比較例によるポリオレフィンエラストマー製造設備の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して本発明の実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10,10’について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10の概要図である。
【0024】
本発明の一実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10は、エチレン-ブテンゴム(EBR:Ethylene-Butene Rubber)を製造するためのもので、図1を参照すると、反応器11、1次脱揮発機12、2次脱揮発機13、フィニッシャー14、気液分離器と吸着塔を含む水除去装置15、フラッシュドラム16、1次蒸留塔17及び2次蒸留塔18を含む。
【0025】
反応器11は、溶媒及び原料が供給されて重合反応物を生成する。ここで、溶媒は、炭素数が5個~7個の炭化水素化合物のうち二重結合がないので反応に影響を及ぼさず、沸点が常圧で60~100℃の物質を含む混合物を含んでもよく、例えば、n-ヘキサン(n-hexane)を含んでもよく、より具体的には、n-ヘキサン約63~71.2wt%、シクロヘキサン(cyclohexane)約0.016~0.63wt%、メチルシクロペンタン(methylcyclopentane)約6~28.7wt%、2-メチルペンタン(2-methylpentane)約0.57~5.7wt%、3-メチルペンタン(3-methylpentane)約5.4~22.3wt%などを含んでもよい。また、原料は、例えば、エチレン(ethylene)及びエチレンと溶媒より沸点が低い物質、例えば1-ブテン(1-butene)を含んでもよい。
【0026】
1次脱揮発機12は、反応器11から排出される生成物(すなわち、重合反応物、未反応物として溶媒、モノマー及びコモノマーなど)を脱揮発し、未反応物を除去する。以下、未反応物として1次脱揮発機12で除去される流れ102を「1次脱揮発循環流102」といい、その残りとして1次脱揮発機12から排出される流れ103を「1次脱揮発製造の流れ103」という。
【0027】
2次脱揮発機13は、1次脱揮発機12から排出される1次脱揮装置製造の流れ103を再度脱揮発し、未反応物をさらに除去する。以下、未反応物として2次脱揮発機13で除去される流れ104を「2次脱揮発循環流104」といい、その残りとして2次脱揮発機13から排出される流れ105を「2次脱揮発製造の流れ105」という。一般に2次脱揮発製造の流れ105は、例えば、ポリマー約90~95wt%及びその他に未反応物を含んでもよい。
【0028】
フィニッシャー(finisher)14は、水を用いて2次脱揮発機13から排出される2次脱揮発機製造の流れ105をストリッピングする。これにより、2次脱揮発製造の流れ105のうち未反応物及び水が気化し、高分子製品が最終的に残留することになる。
【0029】
水除去装置15は、前記未反応物及び水としてフィニッシャー14で除去された流れ106から水を除去する。以下、説明の便宜のため、これによる流れ107を「フィニッシャー反応処理の流れ107」という。
【0030】
このような反応器11、1次脱揮発機12、2次脱揮発機13、フィニッシャー14及び水除去装置15は、この技術分野で公知のものと実質的に同一であるか、または通常の技術者であれば、それから容易に導き出すことができるので、これについて追加的な説明は、省略する。
【0031】
フラッシュドラム(flash drum)16は、1次脱揮発機12で除去された1次脱揮発循環流102から相対的に沸点が低く、蒸気圧が高い(より具体的には、エタン(ethane)を含む)低分子物質を除去する。以下、このようにエタンを含む低分子物質としてフラッシュドラム16で除去される流れ108を「不純物除去の流れ108」という。一方、フラッシュドラム16は、その残りとしてフラッシュドラム16から排出される流れ109を反応器11に回収する。
【0032】
1次蒸留塔17は、2次脱揮発機13から排出される2次脱揮発循環流104及び水除去装置15から排出されるフィニッシャー反応処理の流れ107を蒸留し、その中間部から分離される(より具体的には、n-ヘキサンを含む)流れ110は、反応器11に回収し、重質物としてその下部から分離される流れ111は、外部に放出する。ここで、1次蒸留塔17の中間部は、例えば、その上端から約30~70%に該当する地点であってもよい。また、1次蒸留塔17の上部から分離される(より具体的には、C6化合物及び1-ブテンを含む)流れ112は、1次蒸留塔17の中間部分から分離される流れ110に比べて質量流速が最小0.1倍、最大9倍になるように維持されてもよい。好ましくは、1次蒸留塔17の上部から分離される流れ112は、35~140℃、2~10barに維持されてもよい。特に好ましくは、1次蒸留塔17の上部から分離される流れ112は、例えば、約50℃内外に維持されてもよい。ここで、温度が50℃以上に高くなる場合、多くのn-ヘキサンを上部に分離するので、消費するエネルギーが多くなり、50℃以下の場合、冷却水ではない他の冷媒を使用しなければならないので、コストの面で高くなることがあるが、このような部分が設備の本質的な機能を害するわけではないので、温度を変えることによって本発明を侵害しないわけではない。
【0033】
2次蒸留塔18は、フラッシュドラム16で除去される不純物除去の流れ108及び1次蒸留塔17の上部から分離される流れ112を蒸留し、その下部から分離される(より具体的には、C6化合物及び1-ブテンを含む)流れ113は、反応器11に回収され、エチレン及び1-ブテンパージとしてその上部から分離される流れ114は、外部に放出する。
【0034】
本発明の一実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備において各流れごとの温度、圧力及び流量は、例えば、以下の表1の通りである(実施例1)。
【0035】
【表1】
【0036】
図2は、本発明の他の実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10’の概要図である。
【0037】
本発明の他の実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備は、エチレン-オクテンゴム(EOR:Ethylene-Octene Rubber)を製造するためのもので、図2を参照すると、反応器11’、1次脱揮発機12’、2次脱揮発機13’、フィニッシャー14’、水除去装置15’、フラッシュドラム16’、1次蒸留塔17’、2次蒸留塔18’及び3次蒸留塔19’を含む。
【0038】
反応器11’は、溶媒及び原料が供給されて重合反応物を生成する。ここで溶媒は、炭素数5個~7個を持つ炭化水素化合物のうち二重結合がないので反応に影響を与えず沸点が常圧で60~100℃の物質を含む混合物を含んでもよく、例えば、n-ヘキサンを含んでもよく、より具体的には、n-ヘキサン約63~71.2wt%、シクロヘキサン約0.016~0.63wt%、メチルシクロペンタン約6~28.7wt%、2-メチルペンタン約0.57~5.7wt%、3-メチルペンタン約5.4~22.3wt%などを含んでもよい。また、原料は、例えば、エチレン及びエチレンと溶媒より沸点が高い物質、例えば、1-オクテン(1-octene)を含んでもよい。
【0039】
1次脱揮発機12’、2次脱揮発機13’、フィニッシャー14’、水除去装置15’及びフラッシュドラム16’は、本発明の一実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10と実質的に同一であるか、または通常の技術者であれば、EBR/EOR特性上、差異に対応して当然変更されるものと予想される程度であるため、これについて繰り返しの説明は、省略する。
【0040】
1次蒸留塔17’は、2次脱揮発機13’から排出される2次脱揮発循環流104’及び水除去装置15’から排出されるフィニッシャー反応処理の流れ107’を蒸留し、その中間部から分離される(より具体的には、n-ヘキサンを含む)流れ110’を反応器11’に回収する。ここで、1次蒸留塔17’の中間部は、例えば、その上端から約10~50%に該当する地点であってもよい。また、1次蒸留塔17’の上部から分離される流れ112’は、1次蒸留塔17’の中間部から分離される流れ110’に比べて質量流速が最小0.1倍、最大9倍となるように維持されてもよい。好ましくは、1次蒸留塔17’の上部から分離される流れ112’は、35~80℃、5~10barに維持されてもよい。特に好ましくは、1次蒸留塔17の上部から分離される流れ112は、例えば、約50℃であってもよい。ここで温度が50℃以上に高くなる場合、多くのn-ヘキサンを上部に分離するので、消費するエネルギーが多くなり、50℃以下の場合、冷却水以外の冷媒を使用しなければならないので、コストの面で高くなることがあるが、このような部分が設備の本質的な機能を害するわけではないので、温度を変えることによって本発明を侵害しないわけではない。
【0041】
2次蒸留塔18’は、フラッシュドラム16’で除去される不純物除去の流れ108’及び1次蒸留塔17’の上部から分離される流れ112’を蒸留し、その下部から分離される(より具体的には、C6化合物を含む)流れ113’は、反応器11’に回収し、エチレンパージとしてその上部から分離される流れ114’は、外部に放出する。
【0042】
3次蒸留塔19’は、1次蒸留塔17’の下部から分離される流れ111’を蒸留し、その中間部から分離される(より具体的には、1-オクテンを含む)流れ116’は、反応器11’に回収され、重質物としてその下部から分離される流れ117’及びパージとしてその上部から分離される流れ118’は、外部に放出する。ここで、3次蒸留塔19’の中間部は、例えば、その上端から約30~70%に該当する地点であってもよい。
【0043】
本発明の他の実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10’において各流れごとの温度、圧力及び流量は、以下の表2の通りである(実施例2)。
【0044】
【表2】
【0045】
図3は、本発明の比較例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10’’の概要図である。
【0046】
本発明の比較例によるポリオレフィンエラストマー製造設備は、エチレン-オクテンゴム(EOR)を製造するためのもので、図3を参照すると、反応器11’’、1次脱揮発機12’’、2次脱揮発機13’’、フィニッシャー14’’、水除去装置15’’、1次蒸留塔17’’、2次蒸留塔18’’及び3次蒸留塔19’’を含む。
【0047】
本発明の他の実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10’と比較すると、本発明の比較例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10’’は、フラッシュドラム16’が省略され、1次脱揮発循環流102’’をそのまま反応器11’’に回収するという差異がある。
【0048】
また、本発明の他の実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10’は、1次蒸留塔17’の上部から分離される流れ112’がC6化合物の一部を含み、中間部で分離される流れ116’がC6化合物の残りを含む。一方、本発明の比較例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10’’は、1次蒸留塔17’’の上部から分離される流れ112’’、すなわち、2次蒸留塔18’’に注入される流れ112’’が、C6化合物の全体を含むという差異がある。ここで、1次蒸留塔17’’の上部から分離される流れ112’’のための温度は、例えば、約70~150℃であってもよい。
【0049】
さらに、本発明の比較例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10’’は、3次蒸留塔19’’の上部から分離される(より具体的には、1-オクテンを含む)流れ118’’を反応器11’’に回収するという差異がある。
【0050】
その他の事項は、本発明の他の実施例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10’と実質的に同一であるか、または通常の技術者であれば、前記差異に対応して当然変更されるものと予想される程度であるので、これについて具体的な説明は、省略する。
【0051】
本発明の比較例によるポリオレフィンエラストマー製造設備10’’において各流れごとの温度、圧力及び流量は、以下の表3の通りである(比較例)。
【0052】
【表3】
【0053】
前記比較例及び実施例2について溶媒(n-ヘキサン)、モノマー(エチレン)及びコモノマー(1-オクテン)の含量の和を同一に設定したとき、原料の補充量(makeup)と蒸留塔17’,18’,19’;17’’,18’’,19’’の熱負荷(heat duty)の和を比較した。ここで、原料の補充量とは、該工程を正常状態に駆動するため、反応器11’;11’’に回収される原料の量の他に、さらに反応器11’;11’’に補充しなければならない原料の量のうち、高分子製品の合成に消費される量を除いた量(すなわち、廃棄される量と同じ)を意味する。
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
表4及び表5は、それぞれ1-オクテンが15wt%、24wt%、35wt%の場合、ASPEN PLUS模擬結果として、mass balanceを示したものである。このとき、base caseで反応器(11’;11’’)に注入される流れ101’;101’’において溶媒、モノマー及びコモノマーの含量の和は、92.2wt%に設定した。
【0057】
比較例では、1次蒸留塔17’’の上部を介してn-ヘキサンを全量回収したが、実施例2では、1次蒸留塔17’の中間部を介してn-ヘキサンを回収することにより、より効率的に溶媒及び未反応物を回収できることを確認した(これは実施例1も同様である)。
【0058】
また、比較例では、3次蒸留塔19’’の上部を介して1-オクテンを抽出するため、n-ヘキサンに対して沸点が高く、1-オクテンに対して沸点の低い不純物(メチルシクロヘキサンなど)を除去できなかったが、実施例2では、3次蒸留塔19’の中間部を介して1-オクテンを抽出することにより、3次蒸留塔19’の上部を介して1-オクテンに対して沸点の低い不純物を除去しうる。
【0059】
また、比較例では、1次脱揮発機12’’で除去される1次脱揮発循環流102’’をそのまま反応器11’’に回収するため、エタンなどの沸点が非常に低い物質の濃縮時、これを除去することができず、1次蒸留塔17’’の上端を介してn-ヘキサンを分離するため、エネルギーの消費が増える。これに対して実施例2では、1次脱揮発機12’から排出される未反応物の回収時、沸点の低い物質を除去することにより、前述した物質濃縮を防ぐことができるだけでなく、1次蒸留塔17’の中間部を介してC6化合物を分離することにより、エネルギー消費を減らすことができる(これは実施例1も同様である)。また、3次蒸留塔19’により1-オクテンに対して沸点が低い不純物と沸点が高い不純物の両方を除去することができ、工程効率を改善できる。
【0060】
以上で説明したポリオレフィンエラストマー製造工程10,10’は、本発明の様々な実施例によるポリオレフィンエラストマー製造工程のうち一つに過ぎない。本発明の技術的思想は、前記実施例に限定されず、請求範囲の記載により、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に変更できる範囲まですべて含む。
【符号の説明】
【0061】
10,10’,10’’:ポリオレフィンエラストマー製造工程
11,11’,11’’:反応器
12,12’,12’’:1次脱揮発機
13,13’,13’’:2次脱揮発機
14,14’,14’’:フィニッシャー
15,15’,15’’:水除去装置
16,16’:フラッシュドラム
17,17’,17’’:1次蒸留塔
18,18’,18’’:2次蒸留塔
19’,19’’:3次蒸留塔
図1
図2
図3