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特許7524478複数の表面境界を有するビームフォーマICチップ付き集積アンテナアレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】複数の表面境界を有するビームフォーマICチップ付き集積アンテナアレイ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 23/00 20060101AFI20240722BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240722BHJP
   H01P 5/08 20060101ALI20240722BHJP
   H01Q 3/36 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H01Q23/00
H01L23/12 301Z
H01P5/08 L
H01Q3/36
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023528047
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 US2020060599
(87)【国際公開番号】W WO2022103402
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-08-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513180451
【氏名又は名称】ヴィアサット,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ViaSat,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】フランソン,スティーヴン ジェイ.
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/014527(WO,A1)
【文献】特開2013-110434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0207274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 23/00
H01L 23/12
H01P 5/08
H01Q 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ装置(100、100’)であって:
対向する第1(113)および第2(111)の面を有するアンテナ基板(110)と;
前記アンテナ基板の前記第1の面(113)に配設されている少なくとも1つのアンテナ素子(125)と;
前記アンテナ基板の前記第2の面に取り付けられた下面を有する少なくとも1つの無線周波数集積回路(RFIC)チップ(150_j)であって、前記下面は、前記アンテナ基板を通して前記少なくとも1つのアンテナ素子に結合されたRFコンタクト(157)を有し、前記RFICチップは、その上面(341)にRF信号導体(151_s、551_s)を有し、前記RFコンタクトと前記RF信号導体との間に結合されたビーム形成回路(130_i、153)を有する、少なくとも1つの無線周波数集積回路(RFIC)チップ(150_j)と;
前記アンテナ基板の前記第2の面に取り付けられた下面を有し、上面配線(141)を通して、伝送線路導体(181_s)が前記RFICチップの前記RF信号導体に配設および電気的に接続される上面を有する、伝送線路部(180)と;を備えるアンテナ装置(100、100’)。
【請求項2】
前記アンテナ基板は、前記第2の面に近接または少なくとも一部を形成するアンテナ接地面(210)を含み、前記アンテナ接地面は前記RFICチップの接地接点(347)に電気的に接続されており、
前記RFICチップの前記RFコンタクトは前記アンテナ接地面の開口部(371)を通して前記少なくとも1つのアンテナ素子に結合されている、請求項1に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項3】
前記アンテナ基板は、前記RFICチップにDC電圧および/または制御信号を提供するために、前記アンテナ接地面と前記第2の面との間に再分配層(220)をさらに備える、請求項2に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項4】
前記RFICチップの前記上面は前記RFICチップのアクティブダイ側(340)である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項5】
前記RFICチップは、前記RFコンタクトを前記アクティブダイ側に接続するビア(355)を備える、請求項4に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項6】
前記アンテナ基板は、前記アンテナ基板内に形成されたビア(155)を含み、前記ビアは前記RFコンタクト(157)を前記少なくとも1つのアンテナ素子(125_i)に電気的または電磁気的に結合する、請求項1~5のいずれか1項に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項7】
前記RFICチップの前記下面は、複数の電気接続ジョイント(363)を通して前記アンテナ基板の前記第2の面に取り付けられ、前記電気接続ジョイントの1つは前記RFコンタクトを前記ビアに結合する、請求項6に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項8】
前記複数の電気接続ジョイント(363)は、はんだバンプ、銅ピラー、金バンプ、導電性エポキシジョイント、または熱圧着ジョイントを含む、請求項7に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項9】
前記アンテナ基板の前記第2の面と前記RFICチップの前記下面との間の前記電気接続ジョイントを囲む空間にアンダーフィル材料(364)をさらに含む、請求項7または8のいずれか1項に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項10】
前記上面配線(141)は、ワイヤボンド、リボンボンド、またはエッジ端子対である、請求項1~9のいずれか1項に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項11】
前記ビーム形成回路(130_i、153)は、前記RFICチップと前記少なくとも1つのアンテナ素子との間で通信される信号を調整するために、送信アンプ(512)、受信アンプ(502)、位相シフト器(504、514)のうち少なくとも1つを備える、請求項1~10のいずれか1項に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項12】
前記伝送線路部(180)は、入力送信信号を、前記アンテナ基板に取り付けられた複数のRFICチップ(150_1、150_K)の1つにそれぞれ提供される複数の分割送信信号に分割し、かつ/または複数の受信信号をそれぞれ前記複数のRFICチップから受信し、前記受信信号を結合して出力信号を形成する、ビーム形成ネットワーク(BFN)(700)の少なくとも一部を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項13】
前記伝送線路部(180)は前記アンテナ基板の前記第2の面に取り付けられたアルミナ基板を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項14】
前記伝送線路部の前記伝送線路導体は、コプレーナ伝送線路の信号導体(181_s)であり、前記コプレーナ伝送線路は前記信号導体の反対側に第1および第2の接地導体(181_g1、181_g2)を有し、
前記RFICチップの前記上面にある前記RFICチップの第3(151_g1、551_g1)および第4(151_g2、551_g2)の接地導体は、それぞれ各上面配線(141)を通して前記コプレーナ伝送線路の前記第1および第2の接地導体と相互接続している、請求項1~13のいずれか1項に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項15】
前記RFICチップの前記ビーム形成回路は、前記RFICチップの前記下面にマイクロストリップ接地面(438)を含むマイクロストリップ媒体に構成され、
前記RFICチップは、それぞれ前記第3および第4の接地導体を前記マイクロストリップ接地面に接続する第1(655_g1)および第2(655_g2)の接地ビアをさらに備える、請求項1~14のいずれか1項に記載のアンテナ装置(100’)。
【請求項16】
前記伝送線路部は、誘電体基板(185)と;前記誘電体基板の上面にある前記伝送線路導体と;前記誘電体基板の下面にあるマイクロストリップ接地面(433)と;を含むマイクロストリップ伝送線路である、請求項1~13のいずれか1項に記載のアンテナ装置(100)。
【請求項17】
前記少なくとも1つのアンテナ素子はマイクロストリップパッチ素子である、請求項1~16のいずれか1項に記載のアンテナ装置(100、100’)。
【請求項18】
前記少なくとも1つのアンテナ素子は、複数のN個のアンテナ素子(125_1~125_N)を含み、
前記RFICチップは、それぞれアンプおよび位相シフト器のうち少なくとも1つを含むN個のビーム形成回路(130_1~130_M)を含み、前記N個のビーム形成回路はそれぞれ、前記アンテナ基板内に形成されたN個のビア(155)を通して前記N個のアンテナ素子に結合される、請求項1~17のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項19】
フェーズドアレイアンテナ(100、100’)であって、
対向する第1(113)および第2(111)の面を有するアンテナ基板(110)と;
前記アンテナ基板の前記第1の面に配設された複数のアンテナ素子(125_1~125_N)と;
それぞれ前記アンテナ基板の前記第2の面に取り付けられた下面を有する複数の無線周波数集積回路(RFIC)チップ(150)であって、前記下面はそれぞれ、前記アンテナ基板を通して前記複数のアンテナ素子のうちの少なくとも1つのアンテナ素子に結合されたRFコンタクト(157)を有し、前記RFICチップは、それぞれその上面(341)にRF信号導体(151_s、551_s)を有し、前記各RFコンタクトと前記RF信号導体との間に結合されたビーム操作用ビーム形成回路(130_i、153)を有する、複数の無線周波数集積回路(RFIC)チップ(150)と;
前記RFICチップの間に配設され、前記アンテナ基板の前記第2の面に取り付けられた下面と、複数の分岐アーム導体(181_s)を含むビーム形成ネットワーク(BFN)(700)の一部が配設される上面とを含む、少なくとも1つの伝送線路部(180)であって、各分岐アーム導体は上面配線(141)を通して前記RFICチップの1つのそれぞれのRF信号導体に相互接続している、少なくとも1つの伝送線路部(180)と;を備える、フェーズドアレイアンテナ(100、100’)。
【請求項20】
前記BFNはさらに、複数のアンプ(502、512)および複数の位相シフト器(504、514)を備え、それぞれの前記RFICチップの前記ビーム形成回路は少なくとも1つの前記アンプと少なくとも1つの前記位相シフト器を備え、
前記アンテナ基板はさらに、アンテナ接地面(210)と前記第2の面との間に、各位相を制御してビーム操作を実施するためにDC電圧を前記アンプに送り、制御信号を前記位相シフト器に送る複数の導電線路(304、306)を含む前記アンテナ接地面および層領域(220)を備え、
前記フェーズドアレイアンテナはさらに、少なくとも1つの前記制御信号を提供するために、前記アンテナ基板の前記第2の面に取り付けられ、かつ前記層領域に結合された複数の集積回路(IC)チップ(160)を備える、請求項19に記載のフェーズドアレイアンテナ(100、100’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、分散型ビームフォーマ集積回路(IC)チップ一体型アンテナアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
今日アンテナアレイは、航空機、衛星、車両、船舶、および汎用地上ベース通信用基地局などにおいて、マイクロ波およびミリ波周波数における様々な用途に広く使用されている。このようなアンテナアレイは、典型的には、位相シフトビーム形成回路によって駆動されるマイクロストリップ放射素子を備え、ビーム操作用フェーズドアレイを生成する。典型的には、アンテナアレイおよびビーム形成回路を備えたアンテナシステム全体は、薄型で最小限のスペースを占めることが望ましい。
【0003】
集積アンテナアレイはコンパクトな構造において無線周波数(RF)集積回路(RFIC)チップ(「ビームフォーマIC」(BFIC)とも呼ばれる)と一体化されたアンテナ素子で構成されたアンテナアレイと定義してよい。集積アンテナアレイは、アンテナ素子が外装部品層に配設され、RFICがアンテナ素子層の後ろの近接平行部品層内の有効アンテナ開口全体に分散されているサンドイッチ型構成を有してもよい。RFICは、送信用RFパワーアンプ(PA)、受信用低雑音アンプ(LNA)、および/またはビーム操作用位相シフト器を含んでもよい。このようにPA/LNAを分散することにより、送信においてより高効率、および/または受信において改善されたノイズ性能、加えて非分散型IC設計に比べて高い信頼性を達成することができる。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様では、アンテナ装置は、対向する第1および第2の面を有するアンテナ基板を備える。少なくとも1つのアンテナ素子は、アンテナ基板の第1の面に配設されている。少なくとも1つの無線周波数集積回路(RFIC)チップは、アンテナ基板の第2の面に取り付けられた下面を有し、アンテナ基板を通して少なくとも1つのアンテナ素子に結合されたRFコンタクトを有する。少なくとも1つのRFICチップは、上面にRF信号導体を有し、RFコンタクトとRF信号導体との間に結合されたビーム形成回路を有する。伝送線路部はアンテナ基板の第2の面に取り付けられた下面を有し、ワイヤボンド、リボンボンド、またはエッジ接触子対などの上面配線を通して、伝送線路導体がRFICチップのRF信号導体に配設および接続される上面を有する。
【0005】
これにより、集積アンテナ構造内の少なくとも1つのRFICチップは複数の表面境界を有し、アンテナ装置にとって性能および製造上の利点をもたらし得る。
【0006】
フェーズドアレイアンテナの実施形態はアンテナ基板の第1の面に配設された複数のアンテナ素子と、アンテナ基板の第2の面に取り付けられた下面およびそれぞれがアンテナ素子の少なくとも1つに結合されたRFコンタクトとを有する複数のRFICチップと、を備える。各RFICチップはその上面にRF信号導体を有し、各RFコンタクトとRF信号導体との間に結合されたビーム操作用ビーム形成回路を有する。少なくとも1つの伝送線路部はRFICチップの間に配設され、その上面にビーム形成ネットワーク(BFN)の複数の分岐アーム導体を有し、各分岐アーム導体は上面配線を通して各RFICチップのRF信号導体に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
開示される技術の上記および他の態様および特徴は、同様の参照文字が同様の要素または特徴を示す添付の図面と併せて、以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。同一のまたは類似の種類の様々な要素は、同一/類似の要素(例えば、_1、_2)の中で区別する下線/ダッシュおよび第2のラベルで参照ラベルを付加することによって、または第2のラベルで参照ラベルを直接付加することによって区別され得る。しかしながら、所与の説明が第1の参照ラベルのみを使用する場合、このラベルは、第2のラベルに関係なく、同じ第1の参照ラベルを有する同一/類似の要素のうちのいずれか1つに適用可能である。要素および特徴は、図面で縮尺どおりに描画されていない場合がある。
【0008】
図1図1は、一実施形態による例示的なアンテナ装置の平面図である。
図2図2は、図1のアンテナ装置の前側面図である。
図3図3Aは、図1の3A-3A線に沿ってとったアンテナ装置の部分断面図であり、CPW RFICチップとCPW伝送線路部との間に適している例示的な配線構造を示している。図3Bは、アンテナ装置内の例示的な配線構造の、図3Aに示した平面に直交する平面に沿ってとった断面図である。
図4図4Aは、マイクロストリップチップおよびマイクロストリップ伝送線路部を用いた一実施形態において、図1の3A-3A線に沿ってとったアンテナ装置の部分断面図である。図4Bは、図4Aのアンテナ装置内の例示的な配線構造の、図4Aに示した平面に直交する平面に沿ってとった断面図である。
図5図5Aは、マイクロストリップRFICチップおよびCPW伝送線路部を用いたアンテナ装置の他の実施形態の平面図である。図5Bは、図5Aのアンテナ装置のRFICチップの一部を示した平面図である。図5Cは、図5Aの5C-5C線に沿ってとった例示的な配線構造の断面図である。
図6図6Aは、アンテナ装置の他の実施形態のマイクロストリップRFICチップの一部を示した平面図で、RFICチップのアクティブダイ側がアンテナ基板に面している。図6Bは、アンテナ装置の他の実施形態のCPWチップの一部を示した平面図で、RFICチップのアクティブダイ側がアンテナ基板に面している。
図7図7A~Cは例示的なアンテナ装置内の各能動回路ユニット(ACU)の概略図である。
図8図8は、RFICチップ内に複数のACUを備える例示的なビーム形成回路を示した模式図である。
図9図9は、アンテナ装置内のビーム形成ネットワークを示した模式図である。
図10図10は、アンテナ装置を製造する例示的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
説明の目的で本明細書に開示される技術の特定の例示的な実施形態の包括的な理解を支援するために、添付の図面を参照しながら以下の説明が提供される。説明は、当業者が技術を理解するのを助けるための様々な具体的な詳細を含むが、これらの詳細は、単なる例示とみなされるべきである。単純化および明確化の目的で、周知の機能および構造の説明は、それらの包含が、当業者による技術の理解を曖昧にする可能性がある場合には、省略される場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態による例示的なアンテナ装置100の平面図であり、図2はアンテナ装置100の前側面図である。図1および図2を合わせて参照すると、アンテナ装置100(以下、「アンテナ100」)は、複数の無線周波数集積回路(RFIC)チップ150_1~150_Kが取り付けられた上面111を有するアンテナ基板110を含む。(なお、RFICチップ150はビームフォーマIC(BFIC)チップとも呼ばれる。)平面アレイ122を形成するN個のアンテナ素子125_1~125_Nは、アンテナ基板110の下面113に配設され得る。各アンテナ素子125_iは、ビア155(プローブ給電を形成)およびRFICチップ150_jの下面にあるRFコンタクト157を通してRFICチップ150_j(i,j=任意の整数)に結合されている。次に、各RFコンタクト157は、130_1、130_2などの1つまたは複数の能動回路ユニット(ACU)を含むビーム形成回路を通して、RFICチップ150_jの上面おいてRF信号導体151_sに結合されている。整数KおよびNの値は用途によって実施形態ごとに異なり得る。以下の議論において(また、図1図2に示すように)、理解を容易にするために、K=4およびN=8である「小型アレイ」の例について論じる。
【0011】
アンテナ基板110は誘電体層190と、アンテナ素子125からの信号エネルギーを反射させるための接地面210と、RFICチップ150に供給されるDCおよび/または制御信号用の導電線路を含む層領域220(「再分配層(RDL)」)とを含み得る。少なくとも1つの伝送線路(「TL」)部180は、アンテナ基板110の上面111に取り付けられた下面を有する。TL部180は、伝送線路の信号導体181_sが配設され、各上面配線(USIN)141を通してK位置においてRF信号導体151_sに結合される、上面を有する。(信号導体181_sの各K位置は、コンバイナ/ディバイダの分岐アームと呼ばれ得る。)USIN141は、RFICチップ150の上面にある導体とTL部180との間に直接作成された配線である。したがって、USIN141は、上面においてアンテナ基板110内の導電素子を通して導体151、181を相互接続するためのビアをRFICチップ150およびTL部180のどちらにも含まない。USIN141のいくつかの例は、ワイヤボンド、リボンボンド、およびエッジ接触子対(TL部180上のエッジ接触子と溶着されたRFICチップ150上のエッジ接触子)を含む。
【0012】
TL部180は、全体K:1コンバイナ/ディバイダを形成するウィルキンソンまたはハイブリッドカプラなどの、2:1RFカプラ118_1、118_2、および118_3を含み得る。例示された実施形態において、TL部180およびRFICチップ150の伝送線路媒体はともにコプレーナ導波路(CPW)である。CPW媒体において、一対の接地導体181_g1および181_g2は信号導体181_sの反対側に配置され、一対の接地導体151_g1および151_g2は信号導体151_sの反対側に配置されている。各接地導体151_g1および151_g2は、USIN141を通して接地導体181_g1および181_g2の隣接部分とそれぞれ相互接続されている。また、RFICチップ150およびTL部180における伝送線路媒体はマイクロストリップであり、この場合は接地導体151および181は省略される。ここで、CPWビーム形成回路を有するRFICチップ150はCPWチップと呼び、マイクロストリップビーム形成回路を有するRFICチップ150はマイクロストリップチップ150と呼ぶ。似たような用語をTL部180についても用い得る。図1で例示された他の実施形態において、マイクロストリップチップ150はマイクロストリップチップ150内のハイブリッド遷移を通してCPW TL部180と相互接続され得る。本実施形態は図5A図6と関連して後ほど説明する。いずれの場合も、TL部180の誘電体基板185の材料の一例はアルミナである。中型または大型素子アレイにおいて、アンテナ100は、製造、特にもろいアルミナ基板の取り扱いを容易にするための複数のTL部180を含み得る。複数のTL部180は、必要であればワイヤボンドなどで相互接続されてよい。
【0013】
配線構造およびアンテナ100のレイアウトとともに、RFICチップ150の上部はチップのアクティブダイ側(活性領域)にあり、ここにアンプおよび/または位相シフト器を備えるビーム形成回路がある。例えば、ドーピング領域およびビーム形成回路トランジスタの金属配線、ならびにコンバイナ/ディバイダ153導体は活性領域に配置されている。RFIC150と伝送線路部180との間の上面配線141を使用して上面の導体を相互接続することにより、RFIC150とTL部180との間のRF接続を形成するためのアンテナ基板110内の余分な伝送線路層を回避することができる。したがって、別の伝送線路層を形成する工程を省略することでアンテナ基板110の製造は容易になり得る。それゆえアンテナ基板110は誘電体190の単層が形成されてよく、ここでは「単一RF層」基板と呼ぶ。一方、層領域220のポリマー層はアンテナ基板110の最表面111を形成してよい。図2で例示された他の実施形態において、RFIC150は、アクティブダイ側がアンテナ基板に面するように裏返してもよい。これによりポリマー層が近接することで損失の大きい界面となり、接続ジョイントを囲むアンダーフィルを塗布する場合がある。図2に示すようにアクティブダイ側が上を向いている場合は、アンテナ接地面210から比較的遠く離れている。これにより接地面210とアクティブダイ側との間の反射による振動を起こしにくくなる。
【0014】
各ACU130は、アンプおよび/または位相シフト器を含み、アンテナ素子125への/からの送信信号および/または受信信号を調整する。RFICチップ150はアンテナ100の有効開口に分散され、それぞれ1つまたは複数のアンテナ素子125に結合されおり、アンテナ100はアクティブアンテナアレイとみなしてよい。ACU130が信号の動的位相シフトのための位相シフト器を含む実施形態において、アンテナ100はフェーズドアレイとして機能する。そのようなフェーズドアレイの実施形態では、アンテナ10によって形成されたビームは、主に位相シフト器の位相シフトに従って設定された所望のビーム指向角に操作される。アンテナパターンを調整するために、RFIC150内の追加の振幅調整性能がさらに含まれる場合もある。いずれの場合も、アンテナ100は送信アンテナシステム、受信アンテナシステム、または送受信両方のアンテナシステムとして構成されてよい。
【0015】
コネクタ170は側面実装または表面実装され、信号導体181_sに接続してよい。送信方向において、入力RF送信信号がコネクタ170に適用され、カプラ118によりK個の分割送信信号に分けられ、K個の分割送信信号はそれぞれRFICチップ150_1~150_Kに適用される。(信号の流れの模式図は図9に示しており、後述する。)RFIC150_jが複数M個のACU130を含む場合、RFIC150_jは、分割送信信号をM個のさらなる分割信号に分けるM:1コンバイナ/ディバイダ153をさらに含み、さらなる分割信号はそれぞれACU130の1つに適用される。一度ACU130により調整されると、調整された信号は「素子信号」となり、それぞれアンテナ素子125の1つに適用される。
【0016】
受信方向においては逆の信号流が発生し、素子信号はアンテナ素子125からACU130により受信され、受信アンプおよび/または位相シフト器により調整される(そして典型的にはフィルタリングされる)。調整された受信信号はコンバイナ/ディバイダ153および118を通して送られ、コネクタ170において複合受信信号が生成される。ここで、ビーム形成ネットワーク(BFN)は信号コネクタ170とアンテナ素子125_1~125_Nとの間のすべての信号経路を含むとみなしてよい。BFNにおいて、単一の入力送信信号はN個の素子信号に分割され、かつ/またはアンテナ素子125から受信されたN個の素子信号は単一の複合受信信号にまとめられる。
【0017】
図2はまた、アンテナ100が少なくとも上側を外部要素から保護するカバー107(図1では図示せず)を含んでよいことを例示する。USIN141は壊れやすい場合があるので、埃や水分などから保護すべきであり、カバー107はそのような保護を提供するため残りのアセンブリに適切に取り付けられる。他の例では、カバー107の代わりにプリント配線アセンブリ(PWA)がアンテナ100の上側に取り付けられ、外部要素からの所望の保護を提供する。レドームもアンテナ素子125を保護するために下面に提供されてよい。
【0018】
図1および図2において、2つのアンテナ素子125がそれぞれRFIC150に結合されているのが例として示されている。他の例では、各RFICチップ150は単一のアンテナ素子125または3つ以上のアンテナ素子125に結合されている。アンテナ100は、シリアル周辺インターフェース(SPI)チップなどの追加のチップ160_1および160_2も含むことが示されている。チップ160はアンテナ基板110の層領域220内に形成された、304_1、308_1などの信号線路を通してDC信号および/または制御信号をRFIC150に提供するように機能し得る。DC信号はアンプにバイアスをかけ、かつ/またはACU130内のスイッチの切り替え状態を制御してよい。制御信号はACU130内の位相シフト器の位相シフトを制御し得る。
【0019】
アンテナ素子125はそれぞれ、アンテナ基板190上にプリントされたマイクロストリップパッチアンテナ素子であってよい。双極子またはモノポールなどの他の種類のアンテナ素子に置き換えられてもよい。アンテナ素子125は、マイクロストリップパッチとして具体化される場合、円形(図1に例示)、正方形、長方形または楕円形などの任意の好適な形状を有してもよく、所望の分極、例えば、円形、線形、または楕円形、を達成するのに十分な方法で給電され、構成されてもよい。アンテナ素子125の数、種類、大きさ、形状、素子間間隔、および給電メカニズムは、用途の性能目標に応じて実施形態ごとに変わり得る。8個のアンテナ素子125とともにアンテナ100の例が示されているが、狭アンテナビームを達成するための典型的な実施形態は、数百または数千のアンテナ素子125を含み得る。以下に記載される実施形態では、各アンテナ素子125は、単一プローブ給電で給電されるマイクロストリップパッチである。プローブ給電は、入出力(I/O)パッドとも呼ばれる、RFIC150のRFコンタクト157に電気的に接続するビア155として実装され得る。I/Oパッドは、信号がRFIC150に入るまたはそこから出ることを可能にするインターフェースである。別の例では、各アンテナ素子125は、異なる円偏波給電方法を用いた2つのオフセットビア155により給電される。他の例では、ビア155の代わりに電磁給電メカニズムが使用され、各アンテナ素子125は、近接電界エネルギーでそれぞれの給電点から励起される。
【0020】
ある例では、アンテナ100は、一般に、30GHz~300GHzの範囲内の帯域として定義される、ミリメートル(mm)の波動周波数帯域にわたって動作するように構成される。他の例では、アンテナ100は、約1GHz~30GHzのマイクロ波範囲、または1GHz未満のサブマイクロ波範囲で動作する。ここで、高周波(RF)信号は、1GHz未満~300GHzまであたりの周波数の信号を示す。なお、マイクロ波またはミリメートル波周波数で動作するよう構成されたRFICは、しばしばモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)と呼ばれ、典型的にはリン酸インジウム(InP)またはガリウムヒ素(GaAs)などのIII‐V族半導体材料、あるいはシリコン‐ゲルマニウム(SiGe)などの他の材料によって構成されている。
【0021】
図3Aは、図1の3A-3A線に沿ってとったアンテナ装置の部分断面図であり、CPWチップ150およびCPW伝送線路部180を有する一実施形態に適している例示的な配線構造を示している。アンテナ素子125_iは、RFICチップ150_j(i,j=任意の整数)のアクティブダイ側340内に形成されたACU130_iのビーム形成回路に結合されている。そのような結合は第1のビア155、キャッチパッド369、導電性ジョイント363、RFコンタクト157、第2のビア355、および導体342を通して作成されてもよい。(図3Bに表示および下記で議論するように、ノイズ軽減のため、第2のビア355とともにGSまたはGSG接続セットを形成する1つまたは複数の接地ビアも含まれてよい。)第1のビア155はアンテナ素子125_i用のプローブ給電の少なくとも一部を形成し得る。第1のビア155は誘電体190内に形成され、アンテナ素子125_iをアンテナ基板110の上面111上に形成されたキャッチパッド369に電気的に接続する。第1のビア155は、接地面210に形成された開口部371を通過して接地面へのショートを防止する。開口部371は、接地面210の深さレベルにおいてポリマーなどの絶縁材料373によって環状に囲まれ得る。絶縁材料373は、層領域220の絶縁層内の材料と同じ材料で構成されてよい。
【0022】
層領域220は、上面111から接地面210、第1の絶縁層302、第1の導電層304、第2の絶縁層306、第2の導電層308、第3の絶縁層310の順に含み得る。第1および第2の導電層304、308は、例えばSPIチップ160_1、160_2からDCおよび/または制御信号をRFICチップ150に送るために使用される304_1および308_1などの信号線路を形成するようにパターン化されてよい。導電層304および308は、金属または他の導電性材料で構成される。開口部は、例えば各層の形成中に開口部の領域に導電性材料を堆積させないことにより、導電層304、308内に形成されていてよい。開口部は、第1のビア155が開口部を横切り、導電層304、308にショートしないように絶縁材料により環状に囲まれてよい。なお、層領域220内の各層302、304などは、誘電体190より少なくとも1桁薄くてよい。例えば、これらの層のそれぞれは、2~10μmオーダの厚さ(z方向)を有してもよく、一方、誘電体190は、250μmオーダの厚さであってもよい。第1および第2の導電層304および308は、それぞれ、12μmオーダの幅を有し、12μmオーダの間隔で互いに離間している、x‐y平面内の信号/接地線路を形成し得る。層304および308のそれぞれは、アンテナ100の典型的な実施形態において、数十、数百または数千個の信号線路および接地線路を形成するようにエッチング、あるいはパターン化されておいてもよい。しかし、他の実施形態において、層領域220は省略されてもよく、そのような場合においてはバイアス電圧および信号は他の手段を通してRFIC150に送られる。
【0023】
コンタクトパッド369は、はんだキャップ、熱圧着剤、または導電性エポキシとともに、はんだボール、金バンプ、銅ピラーなどの導電性ジョイント363を通してRFコンタクト157に電気的に接続されている。次に、RFコンタクト157は、例えばInPまたはGaAsなどのチップ材料345通してRFICチップ150_j内に形成されている第2ビア355を通して導体342に接続されている。導体342は、ビーム形成回路のトランジスタ端子または他の回路素子の金属配線に直接接続またはその一部を形成し得る。導体342は、RFICチップ150_jの上面341にプリントされた金属配線であってよく、その場合、第2のビア355はチップ材料345を完全に貫通して延在する貫通基板ビア(TSV)として形成されてよい。また、導体342は最表面341の下に配置され、第2のビア355はその上端においてチップ材料345内の導体342に接続するブラインドビアとして形成される。導体342はビーム形成回路の回路点pに一致し、回路点pはACU130の入力ノードであってよい。ACU130の出力は回路点wに一致するが、コンバイナ/ディバイダ153の分岐アームポート(出力ポート)(もしあれば)に接続してよい。
【0024】
コンバイナ/ディバイダ153の入力ポートは回路点「q」において導体151_sに電気的に接続する。USIN141は導体151_sをTL部180の導体181_sに接続する。USIN141がワイヤボンドの場合、断面は円筒形または円形であってよい。USIN141がリボンボンドの場合、断面は楕円形または長方形であってよい。導体181_sはTL部180の誘電体185の上面にプリントされた金属配線であってよい。TL部180がコプレーナ導波路の場合、誘電体185の下面は、非導電性または導電性のエポキシ333を用いてアンテナ基板110の最表面111(ポリマー層302の上面)に接着されてよい。
【0025】
典型的な実施形態において、RFICチップ150_jは、その下面において357、367などの電気接点を数十または100超有してよい。これらの接点は第1および第2の導電層304および308に形成された信号線路から導電性ジョイント363を有する配線を通してバイアス電圧および/または制御信号を受信してよい。例えば、第1の導電層304に形成された信号線路をRFICチップ150_jの電気接点357に接続するため、第1の絶縁層302に開口部を作成して第1の導電層304の信号線路を露出していてよく、導電性ウェル387を開口部に形成していてよい。第1の絶縁層302内の開口部は、次の開口部の位置において層304上にレジスト材料を配置し、その後レジスト材料を含まない領域に絶縁層302の絶縁材料を堆積させることで作成していてよい。コンタクトパッド379はウェル387上に形成されていてよく、加熱/冷却工程により形成された導電性ジョイント363はコンタクトパッド379と接点357を接続してよい。また、コンタクトパッド379は省略され、導電性ジョイント363はウェル387に導電的に接着されている。
【0026】
同様に、第2の導電層308に形成された信号線路をRFICチップ150_jの電気接点367に接続するため、第1の絶縁層302、第1の導電層304、および第2の絶縁層306のそれぞれにおいて開口部が形成されていてよい。開口部を形成する工程は、同様に、対応する層材料が堆積されている間、次の開口部の位置において一度に一層レジスト材料を配置することを含んでいてよい。追加の絶縁材料391(例えば絶縁層302、306と同じ材料)が第1の導電層304の開口部の周りの環状領域に堆積されていてもよい。この材料は一連の開口部により作成されたキャビティ内で、堆積等により形成された次の導電性ウェル377へのショートを防止する。コンタクトパッド379は導電性ウェル377上に形成されていてよい。導電性ジョイント363は電気接点367をコンタクトパッド359に、またはコンタクトパッド359が省略されている場合は電気接点367を直接導電性ウェル377に接続する。
【0027】
RFIC150の電気接点とアンテナ接地面210との間の直接電気接続を形成することが望ましい場合がある。例えば、電気接点347は接続ジョイント363、コンタクトパッド399、および導電性ウェル372を通して接地面210に電気的に接続される(コンタクトパッド399が省略されている場合は、接続ジョイント363は導電性ウェル372と直接接続してよい)。接地面338がRFICチップ150の下面に存在してよく、接点347に導電的に接着してよい。接地面338は直流接地および/または伝送線路接地であってよい(例えば、マイクロストリップ、CPWまたはストリップライン接地導体)。なお、異なる種類の伝送線路媒体が単一のRFICチップ150に存在する場合がある。導電性ウェル372は、第2の導電層308および第3の絶縁層310を通り、接地面210の表面を露出する追加の開口部を形成する工程を有する導電性ウェル377と同様の方法で形成されていてよい。追加の絶縁材料392は、次に形成される導電性ウェル372へのショートを防止するために第2の導電層308の開口部を囲む環状領域に堆積されていてよい。
【0028】
アンダーフィル材料364は少なくともいくつかの接続ジョイント363を囲み、接続ジョイントを機械的に支持することでその信頼性を向上し得る。典型的には、アンダーフィル材料364は主に非晶質溶融シリカで構成される混合材料であってよい。
【0029】
図3Bは、アンテナ100内の例示的な配線構造の、図3Aに示した平面に直交する平面に沿ってとった断面図である。図3B(y-z平面図)は、第1のビア155および第2のビア355を横切り(両者は図3Aのx-z平面に示されている)、接地面210からRFICチップ150_jの上面のコプレーナ導波路への接地-信号-接地(GSG)遷移を示している。GSG遷移は第2のビア355からの放射線がビーム形成回路の性能に影響を与えるのを防止し得る。
【0030】
RFICチップ150_jの上面のコプレーナ導波路は信号導体342と、その反対側に第1および第2の接地導体344_1、344_2とを含む。第1の接地ビア356_1は第1の接地導体344_1に接続された上端を有し、第1の接地点g1(下記で図式で議論する)を定義する。第1の接地ビア356_1は、その下端において、RFICチップ150_jの下面にあるキャッチパッド327_1に接続してよい。キャッチパッド327_1と第1のビア155の片側における接地面210の接続点との間の配線は、導電性ジョイント363、キャッチパッド369_1、および導電性ウェル374_1を含んでよい。同様に、第2の接地ビア356_2は第2の接地導体344_2に接続された上端を有し、第2の接地点g2を定義する。第2の接地ビア356_2は、その下端において、キャッチパッド327_2に接続してよい。キャッチパッド327_2と第1のビア155の反対側における接地面210の接続点との間の配線は、導電性ジョイント363、キャッチパッド369_2、および導電性ウェル374_2を含んでよい。
【0031】
絶縁材料373は、第1のビア155と、第1および第2の導電性ウェル374_1、374_2との間の領域を環状に囲み、第1のビア155が接地にショートするのを防止する。この構成により、プローブ給電は接地面210の(z方向における)高さから始められ、接地面210とRFICチップ150_jの上面との間の不要な放射線を最小限に抑えることができると理解され得る。なお、ここで、他の構成では接地-信号(GS)遷移を形成する1つの接地ビア356のみ、または第2のビア355を囲む3つ以上の接地ビア356を用いてよい(これもGSG遷移であると考えられる)。さらに別の構成では、第2のビア355および第1と第2の接地ビア356_1、356_2の代わりにスロットライン遷移を用いる。
【0032】
図4Aは、マイクロストリップチップおよびマイクロストリップ伝送線路部を用いた一実施形態において、図1の3A-3A線に沿ってとったアンテナ100の部分断面図である。本例では、接地導体151_g1、151_g2、181_g1、および181_2は省略され、信号導体151_sおよび181_sはマイクロストリップ信号導体であるとする。マイクロストリップ接地面438はRFICチップ150_jの下面に存在してよい。マイクロストリップ接地面438は、151_sなどの信号導体とACU130のビーム形成回路の他の信号導体とを有するマイクロストリップ媒体、および活性領域340内のコンバイナ/ディバイダ153のための接地面であってよい。マイクロストリップ接地面438は、上述のコンタクトパッド347、導電性ジョイント363、コンタクトパッド399、および導電性ウェル373を通してアンテナ接地面210に電気的に接続してよい。図4Aの伝送線路部180は上面にマイクロストリップ内部導体181_s、下面に接地面433を含む。接地面433は同様に、導電性ジョイント363、コンタクトパッド397、および導電性ウェル373と類似の導電性ウェル473を通してアンテナ接地面210に接続してよい。
【0033】
図4Bは、図4Aに示した平面に直交する平面に沿ってとった、図4Aのマイクロストリップとともに構成されたアンテナ100内の例示的な配線構造の断面図である。図4Bは、第1のビア155および第2のビア355を横切り、接地面210から、マイクロストリップ接地面438と、アクティブダイ側340内のビーム形成回路の342などの信号導体と、信号導体とマイクロストリップ接地面438とを分離するチップ材料345と、で形成されるマイクロストリップ媒体へのGSG遷移を示している。マイクロストリップ接地面438と第1のビア155の片側における接地面210の接続点との間の配線は、キャッチパッド327_1、導電性ジョイント363、キャッチパッド369_1、および導電性ウェル374_1を含んでよい。2つの接地面438、210を接続する同じ構成の配線は、キャッチパッド327_2、他の接続ジョイント363、キャッチパッド369_2、および導電性ウェル374_2を有する第1のビア155の反対側に作成されてよい。図3BのCPWの場合と同様に、図4BのGSG遷移は第2のビア355からの放射線がビーム形成回路の性能に影響を与えるのを防止し得る。図4Aおよび図4Bのアンテナ構造の他の態様および作用は 図1図3Bで上述したものと同じであってよい。
【0034】
図5Aは、他の実施形態によるアンテナ装置100’の平面図である。図5Bは、アンテナ装置100’のRFICチップの一部を示した平面図であり、図6は、図5Aの6-6線に沿ってとった例示的な配線構造の断面図である。図5A図5Bおよび図6を合わせて参照すると、アンテナ100’は、RFICチップ150_1から150_KをCPWチップではなくマイクロストリップチップとして構成することで上記図1に示したアンテナ100とは異なる。マイクロストリップRFICチップ150は、マイクロストリップコンバイナ/ディバイダ553、マイクロストリップACU130、およびマイクロストリップからCPWへの遷移(以下「ハイブリッド遷移」と呼ぶ)を含んでよい。コンバイナ/ディバイダ533は、入力ポートにマイクロストリップ信号導体551_s、および各ACU130に接続された出力分岐を含んでよい。ハイブリッド遷移は、RFICチップ150の端部にある信号導体551_sの入力部と、信号導体551_sの反対側にある第1および第2の接地パッド551_g1および551_g2と、第1および第2の接地ビア655_1および655_2と、により形成されてよい。
【0035】
第1および第2のビア655_1および655_2はそれぞれ接地パッド551_g1および551_g2をマイクロストリップ接地面438に接続する。図6は、RFICチップ150_jの第1の接地パッド551_g1を一部通る断面図であり(明確化のため先端構造は省略)、第1の接地パッド551_g1をマイクロストリップ接地面438に電気的に接続する接地ビア655_1を示している。第2の接地ビア655_2は同じまたは類似の構造を有していてよい。また、上述の接地面438とアンテナ接地面210との間の同じまたは類似の配線が形成されてよい。この配線はコンタクト/キャッチパッド347および399、その間の導電性ジョイント363、および導電性ウェル373を含んでよい。上面配線141はそれぞれ、信号導体551_sを信号導体181_sに、第1の接地パッド551_g1を接地導体181_g1に、第2の接地パッド551_g2を第2の接地導体181_g2に、接続するように提供されてよい。アンテナ100’の他の態様はアンテナ100で上述したものと同じであってよい。
【0036】
図6Aはアンテナ100の他の実施形態のマイクロストリップRFICチップ150_jの一部を示した平面図で、RFICチップ150のアクティブダイ側がアンテナ基板110に面している。つまり、RFIC150は上述の実施形態と比較して、アクティブダイ側340の外面がRFIC150の下面であるとみなされるように裏返してよい。この場合、上面配線(USIN)141はさらにアクティブダイ側内のビーム形成回路を(RFIC150内のビアを通るが)、TL部180の上面導体に接続するために利用される。マイクロストリップ接地面438はRFICチップ150_jの上面に存在してよく、信号導体651_sは、チップ材料345を露出する接地面438の環状の開口部内の接地面438から孤立した「島」の形状であってよい。ビア655は下面の活性領域340および上面の信号導体651_sの間に形成されてよい。USIN141はワイヤボンドまたはリボンボンドであってよく、TL部180がCPWの場合、第1のUSIN141は導体651_sを導体181_sに接続し、第2および第3のUSIN141は導体651_sの反対側の接地面438の点をそれぞれの接地導体181_g1および181_g2に接続する。TL部180がマイクロストリップの場合、接地面438に接続された第2および第3のUSIN141は省略されてよい。
【0037】
図6Bはアンテナ100の他の実施形態のCPW RFICチップ150_jの一部を示した平面図で、RFICチップ150のアクティブダイ側がアンテナ基板110に面している。図6Aの実施形態にあるように、RFIC150は前述の実施形態と比較して、アクティブダイ側340の外面がRFIC150の下面であるとみなされるように裏返してよい。RFICチップ150_jの上面は、図5Bに示したものと類似して、接地パッド551_g1および551_g2を有するが、パッド形状の信号導体651_sを有してよい。この場合、第1のビア655_sは活性領域340内のCPW信号導体を信号導体651_sに接続するように提供されてよく、第2および第3のビア655_g1および655_g2は活性領域340内の第1および第2の接地導体をそれぞれ接地パッド551_g1および551_g2に接続するよう提供される。はじめに、第2および第3のUSIN141は、TL部180がCPWの場合、図5Bで議論したのと同じ方法でTL部180に接続するように提供されてよい。TL部180がマイクロストリップの場合、接地パッド551_g1、551_g2、およびビア655_g1、655_g2は省略されてよい。
【0038】
図7Aは、RFICチップ150の受信経路(アンテナ受信方向)のために構成された能動回路ユニット(ACU)130_iの例示的なビーム形成回路を示している。ACU 130_iは入力点p(図3A図6に表示)と出力点wとの間にフロントエンド受信回路を含んでよく、このフロントエンド受信回路は、直列に接続された低ノイズアンプ(LNA)502、受信経路位相シフト器504、およびバンドパスフィルタ506を含んでよい。図3A図3BのCPWチップの場合、第1および第2の接地点g1およびg2はLNA502のコプレーナ導波路接地点であってよく、回路点pはLNA502の信号導体の入力点であってよい。位相シフト器504およびフィルタ506もまたCPWの構成要素として設計されてよい。マイクロストリップチップを有する実施形態において、マイクロストリップ接地面438(図4Aおよび図6参照)は、ACU130_iのすべての構成要素のための接地面であってよい。LNALNA502および位相シフト器504は357、367などの電気接点から延在するRFICチップ150内のビア/信号線路(図示せず)からバイアス/制御電圧を受信してよい(図3A図4Aおよび図6参照)。
【0039】
図7Bは、RFICチップ150の送信経路(アンテナ送信方向)のために構成された能動回路ユニット(ACU)130_iの例示的なビーム形成回路を示している。ここで、ACU130_i内のフロントエンド回路は、直列に接続されたパワーアンプ(PA)512、送信経路位相シフト器514、およびバンドパスフィルタ516を含んでよい。図3A図3BのCPWチップの場合、第1および第2の接地点g1およびg2はPA512のコプレーナ接地点であってよく、回路点pはPA512の信号導体の出力点であってよい。位相シフト器514およびフィルタ516もまたCPWの構成要素として設計されてよい。マイクロストリップチップの実施形態において、マイクロストリップ接地面438は、ACU130_iのすべての構成要素のための接地面であってよい。PA512および位相シフト器514は357、367などの電気接点から延在するRFICチップ150内のビア/信号線路(図示せず)からバイアス/制御電圧を受信してよい。
【0040】
図7Cは、RFICチップ150の受信経路および送信経路の両方のために構成された能動回路ユニット(ACU)130_iの例示的なビーム形成回路を示している。この場合、(ACU)130_iは、入力点pに接続された入力ポートを有する第1の送信/受信(T/R)回路532と、出力点wに接続された入力ポートを有する第2のT/R回路534を含む。LNA502および位相シフト器504を含む受信経路はT/R回路532、534の第1の出力ポートの間に接続されてよい。位相シフト器514およびPA512を含む送信経路はT/R回路532、534の第2の出力ポートの間に接続されてよい。T/R回路532、534はそれぞれバンドパスフィルタおよび/またはスイッチを含んで、入力ポートから各出力ポートを通過する経路信号の送信および受信の両方を可能にしてよい。いくつかの例においては、信号の送信と受信に対して異なる周波数帯域が使用され、バンドパスフィルタリングにより十分に経路間の絶縁を提供できる。時分割多重方式スイッチングは経路間にさらなるまたは別の絶縁を提供し得る。CPWの実施形態において、第1および第2の接地点g1およびg2はT/R回路532の接地点であってよい。
【0041】
図8は、RFICチップ内に複数のACUを備える例示的なビーム形成回路を示した模式図である。RFIC150_jは、回路点p_1~_Mにおいてそれぞれ各入力ポートを、回路点w_1~w_Mにおいてそれぞれ出力ポートを有する複数のACU130_1~130_Mを含んでよい。整数Mは、最低2(図1に示した例を参照)から単一のRFICチップ150_j内に実装され得るACU130の任意の適した数字まで、実施形態ごとに変化し得る。回路点p_1~P_Mは、フィード601_1~601_Mを通してアンテナ素子125_1~125_Mに結合されてよく、各フィード601は回路点pに関連して図3A図6について上述したように、第2のビア355、第1のビア155、およびその間に配線構造を含む。例えば、CPWチップの実施形態において、各ACU130_iは、第1および第2の接地点g1_iおよびg2_iに固定された第1および第2の接地導体を含んでよい。M:1コンバイナ540は、点w_1~w_MにおいてADC130からの受信信号出力を、受信経路動作中に点qにおいて結合受信信号へと結合し、かつ/または点qにおいて適用された送信信号を点w_1~w_MにおいてACU130_1~130_Mに適用されるM個の分割送信信号へと分割する。
【0042】
図9は、アンテナ100内の例示的なビーム形成ネットワーク(BFN)700を示した模式図である。BFN700は伝送線路部180内に形成されたK:1コンバイナ/ディバイダ780と、それぞれ図8のRFIC150_jの構成を有するK RFICチップ150_1~150_Kとを含んでよい。K:1コンバイナ/ディバイダ780は、回路点tにおいてコネクタ170に接続された入力ポート、および回路点q_1~q_KにおいてRFICチップ150_1~150_Kに接続されたK個の出力ポートを有する。各RFICチップ150は、125_1~125_MなどのM個のアンテナ素子に、それぞれM個のRFコンタクト157を通して結合されてよい。したがって、N=M×Kとして、N個のアンテナ素子125_1~125_Nがある。前述のように、狭アンテナビームを形成する典型的なアンテナ100の場合、数字Nは数百または数千になる。図1に示した例においては、K=4、M=2、N=8である。
【0043】
図10は、アンテナ100を製造する例示的な方法、800の流れ図である。示した動作の順序は必要に応じて変更してよい。方法800において、アンテナ基板110はウエハから形成してよく、その中に穴を開けて電気メッキまたは類似の工程により導電性材料を穴に充填することで第1のビア155を形成してよい(S802)。アンテナ素子125および接地面210はその後それぞれアンテナ基板の下面および上面にプリントされてよい(S804)。その後RDL領域220がアンテナ基板110上で接地面より上に形成されてよい(S806)。
【0044】
RFICチップ150にはビーム形成回路130、153、第2のビア355、接地ビア356(CPWの実施形態の場合)、RFコンタクト157、および357、367などの他の電気接点が別に作製される(S808)。伝送線路(TL)部180にはBFNコンバイナ/ディバイダ780が別に形成されてよい(S810)。導電性ジョイント363は最初に、RFコンタクト157およびRFICチップ150の他の電気接点、および/またはキャッチパッド369/アンテナ基板110の上面の他の接点に接着されてよい(S812)。RFICチップ150、その他のICチップ160、およびTL部180はアンテナ基板110上に配置されてよい(S814)。はんだまたは導電性ジョイント363の他の導電性材料を溶融および冷却し、RFICチップ、その他のICチップ、およびTL部をアンテナ基板に導電的に接着するように、加熱/冷却サイクルを実施してよい(S816)。ワイヤボンドまたはリボンボンドなどの上面配線141はその後、反対側端部上でRFICチップ導体151または551およびTL部180導体(分岐アーム)に取り付けられてこれらを相互接続してよい(S818)。コネクタ170はTL部180に取り付けられ、カバー107またはPWAは得られたアセンブリに取り付けられてよい(S820)。
【0045】
上記実施形態が、アンテナ装置100の文脈において説明されてきた。本明細書において開示される技術の他の実装は、非アンテナ用途またはアンテナシステムの他の部分の配線構造に適用されてもよい。例えば、他の例示的な構成において、アンテナ素子125は、モデムのような第2のICチップなどの少なくとも1つの他の種類の回路部品で置き換えられる。RFICチップ150は上述したものと同じまたは類似の配線構造を使用して第2のICチップに結合されてよい(例えば第1のビア155、第2のビア355などを使用)。そのような実施形態において、伝送線路部180はビーム形成ネットワークのコンバイナ/ディバイダ以外の回路をサポートし得るが、RFICチップ150は本明細書に開示の方法と同じ方法でアクティブダイ側から伝送線路部180へを相互接続されてよい。他の例においては、伝送線路部は、RFICチップ150の機能と異なる機能を実施するよう構成された別のRFICチップなどの、別のRF回路部品で置き換えられてよい。得られる構成/電子デバイスは、アンテナ100について説明したものと類似する利点、例えば損失減少、振動の減少/削減、および/または製造し易さなどを有するコンパクト三次元積層構造で形成される。
【0046】
本明細書に記載される技術は、その例示的な実施形態を参照しながら特に示され、説明されているが、当業者であれば、以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物によって定義される特許請求の範囲の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更がその中で行われ得ることを理解するであろう。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10