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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】液状栄養組成物および包装体
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240722BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240722BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240722BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L2/00 A
A23L2/00 W
A23L2/52
A23L2/66
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023573667
(86)(22)【出願日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2023012117
(87)【国際公開番号】W WO2023190295
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2022059244
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500580677
【氏名又は名称】ニュートリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(72)【発明者】
【氏名】河江 信幸
(72)【発明者】
【氏名】谷口 泰代
(72)【発明者】
【氏名】西谷 弘
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-196236(JP,A)
【文献】特開2004-051494(JP,A)
【文献】特開平06-135838(JP,A)
【文献】特開2009-084204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たんぱく質、脂質、糖質及び食物繊維を含有し、熱量が1.7~2.3kcal/mL、25℃における粘度が25~40mPa・s、浸透圧が420~500mOsm/Lの液状栄養組成物であって、前記たんぱく質を6.2~6.8質量%、前記脂質を6.4~7.0質量%、前記糖質を18~24質量%、前記食物繊維を1.5~2.5質量%含有し、前記食物繊維は、全食物繊維中、重量平均分子量が15,000~25,000、かつ5質量%溶液の粘度が10mPa・s以下である水溶性食物繊維を20~35質量%含有し、乳化剤としてグリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1以上のグリセリン脂肪酸エステルを0.18~0.25質量%、HLB値が12~16及び構成する脂肪酸の融点が60℃以下であるポリグリセリン脂肪酸エステルを0.1~0.16質量%含有するものである液状栄養組成物。
【請求項2】
pHが6.5~7.5である請求項1記載の液状栄養組成物。
【請求項3】
容量200mL、経鼻チューブの太さ12Fr、落差120cmの条件におけるチューブ流動性が60分以内である請求項1または2に記載の液状栄養組成物。
【請求項4】
ビタミン様物質を含み、前記ビタミン様物質がカルニチン、イノシトール及びコリンの少なくとも一つを含む請求項1ないしのいずれか1項に記載の液状栄養組成物。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の液状栄養組成物と、前記液状栄養組成物を充填した容器とを有することを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状栄養組成物および包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
三大栄養素であるたんぱく質、炭水化物、脂質の摂取量が少ない場合や、ビタミン、微量元素などの微量栄養素の摂取不足がある場合に低栄養を生じる。そのため、食思不振な疾患を伴う高齢者や患者は、高濃度の経腸栄養剤を投与する必要がある場合がある。(特許文献1、2及び3)
その場合、悪心、嘔吐、下痢などの副作用が懸念されている。経腸栄養法におけるもっとも頻度の高い副作用は下痢である。下痢は経腸栄養剤の注入速度、浸透圧が不適切である場合に起りやすい。高浸透圧の製剤が急速投与されると、小腸毛細血管から腸管腔内への水分の拡散と腸粘膜からの再吸収のアンバランスが生じ、腸蠕動が亢進して下痢をおこすといわれている。一般に経腸栄養剤は浸透圧が高く下痢の発生頻度が高いと考えられる。
なお、それらを改善するため、食物繊維を栄養組成物への含有させることが考えられる。食物繊維は、便の体積を増やす材料となるとともに、大腸内の環境を改善する腸内細菌に利用され、これらの菌を増殖させる。しかしながら、その場合、食物繊維は通常は高分子であるため、栄養組成物の粘度を上昇させることから、経鼻チューブから栄養組成物を胃内へ投与する際、栄養組成物が経鼻チューブに詰まり投与できず、医療従事者や介護者等の身体的負担が大きくなることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5788112号
【文献】特許第6059007号
【文献】国際公開第99/42001号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のことから、少容量かつ高エネルギーでたんぱく質、脂質、糖質、食物繊維などの栄養素を無理なく摂取可能な液状栄養組成物、およびそれを充填した包装体が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の本発明により解決される。
(1)たんぱく質、脂質、糖質及び食物繊維を含有し、熱量が1.7~2.3kcal/mL、25℃における粘度が25~40mPa・s、浸透圧が420~500mOsm/Lの液状栄養組成物であって、前記たんぱく質を6.2~6.8質量%、前記脂質を6.4~7.0質量%、前記糖質を18~24質量%、前記食物繊維を1.5~2.5質量%含有し、前記食物繊維は、全食物繊維中、重量平均分子量が15,000~25,000、かつ5質量%溶液の粘度が10mPa・s以下である水溶性食物繊維を20~35質量%含有するものである液状栄養組成物。
(2)乳化剤としてグリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1以上のグリセリン脂肪酸エステルを0.18~0.25質量%、HLB値が12~16及び構成する脂肪酸の融点が60℃以下であるポリグリセリン脂肪酸エステルを0.1~0.15質量%を含有し、乳化安定性及び分散性が良好である前記(1)に記載の液状栄養組成物。
(3)pHが6.5~7.5である前記(1)または(2)に記載の液状栄養組成物。
(4)容量200mL、経鼻チューブの太さ12Fr、落差120cmの条件におけるチューブ流動性が60分以内である前記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の液状栄養組成物。
(5)ビタミン様物質を含み、前記ビタミン様物質がカルニチン、イノシトール及びコリンの少なくとも一つを含む前記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の液状栄養組成物。
(6)上記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の液状栄養組成物と、前記液状栄養組成物を充填した容器とを有することを特徴とする包装体。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2022‐59244の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の液状栄養組成物は、たんぱく質、脂質、糖質及び食物繊維を含有し、25℃における粘度が25~40mPa・s、浸透圧が420~500mOsm/Lを有するため、経鼻チューブから投与された患者が下痢を起こすことなく、確実に安心かつ容易に栄養を摂取することが可能となる。また、食物繊維は、重量平均分子量が15,000~25,000、かつ5質量%溶液の粘度が10mPa・s以下である水溶性食物繊維を含有することから、腸内細菌叢の維持に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の液状栄養組成物を詳細に説明する。
本発明の液状栄養組成物の熱量は、1.7~2.3kcal/mL、好ましくは1.8~2.2kcal/mLである。熱量が1.7kcal/mLより少ないと、濃度が薄いため、摂取あるいは投与する容量が多くなり、好ましくない。熱量が2.3kcal/mLより多いと、水分不足となり、患者等が脱水状態となる可能性があるため、好ましくない。
本発明の液状栄養組成物の水分含有量は、30~95質量%であるとよく、30~95質量%が好ましく、40~90質量%がより好ましい。
【0008】
なお、熱量は、たんぱく質、脂質、糖質及び食物繊維等の含有量を適宜設定することで調節することができる。なお、本明細書において、「熱量」とは、Atwaterのエネルギー換算係数を参考にして算出された値である。具体的には、熱量=(4kcal×糖質含量)+(9kcal×脂質含量)+(4kcal×たんぱく質含量)+(2kcal×食物繊維含量)として計算し、試料mL当たりのkcalとして示す。
【0009】
本発明の液状栄養組成物は、25℃における粘度が25~40mPa・s、好ましくは27~33mPa・sである。液状栄養組成物の粘度が25mPa・sより低いと、胃食道逆流や誤嚥性肺炎等が生じるため、好ましくない。粘度が40mPa・sより高いと、液状栄養組成物を経鼻チューブから投与する際にチューブの閉塞が起こる可能性が高くなるため、好ましくない。
【0010】
本発明の液状栄養組成物に示される「液状」とは、25~40mPa・sの粘度を有することである。本明細書において、粘度は、第8版食品添加物公定書「B.一般試験法、28.粘度測定法 第2法 回転粘度計法」に記載された方法に準じて測定される。例えば、B形回転粘度計DV-II+Pro(Brookfield社)、RB80L(東機産業株式会社)等を用いて測定した値をいう。
【0011】
本発明の液状栄養組成物の浸透圧は、420~500mOsm/L、好ましくは440~480mOsm/Lである。液状栄養組成物の浸透圧が420mOsm/Lより低いと、水分が体内に急速に流入し、浮腫を起こす可能性があるため、好ましくない。浸透圧が500mOsm/Lより高いと、消化管内に入った物質が吸収されにくく、体液浸出で腸内溶液が増加して下痢を生じるため、好ましくない。
【0012】
なお、本発明の液状栄養組成物の浸透圧は、たんぱく質6.2~6.8質量%、脂質6.4~7.0質量%、糖質18~24質量%及び食物繊維(全食物繊維中、重量平均分子量が15,000~25,000、かつ5質量%溶液の粘度が10mPa・s以下である水溶性食物繊維20~35質量%を含有する)1.5~2.5質量%を適宜調節しながら混合させることによって、420~500mOsm/Lに調整することができる。
【0013】
本発明の液状栄養組成物に含有されるたんぱく質は、従来より栄養組成物で利用されてきている公知のたんぱく質、ペプチド及びアミノ酸の各種のもののいずれも使用できる。
たんぱく質としては、植物性たんぱく質及び動物性たんぱく質が使用できる。動物性たんぱく質としては、卵、肉類、魚介類、牛乳等に含まれるたんぱく質が挙げられる。植物性たんぱく質としては、米等の穀類、大豆、豆腐等の豆類等に含まれるたんぱく質が挙げられる。
【0014】
これらのうち、牛乳に含まれるカゼインたんぱく質、牛乳(乳清)を原料とするホエイたんぱく質、大豆たんぱく質を用いることが好ましい。当該カゼインたんぱく質としては、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインカルシウム、カゼインマグネシウム等が挙げられる。ホエイたんぱく質としては、ホエイプロテインコンセントレート(WPC)、ホエイプロテインアイソレート(WPI)等が挙げられる。WPCやWPI、大豆たんぱく等は市販されているものを用いてもよく、市販品としては、、WPC80(Fonterra社製)、WPC392(Fonterra社製)WPC472(Fonterra社製)、WPI895(Fonterra社製)、プロリーナ900(不二製油株式会社製)、ニューフジプロ3000(不二製油株式会社製)、ニューフジプロ1700N(不二製油株式会社製)等が挙げられる。
上述のたんぱく質、アミノ酸またはペプチドは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
本発明の液状栄養組成物におけるたんぱく質の含有量は、液状栄養組成物の全量に対して6.2~6.8質量%であることが好ましい。たんぱく質の含有量が6.2質量%より少ないと、たんぱく質が不足するため、好ましくない。一方、たんぱく質の含有量が6.8質量%より多いと、液状栄養組成物の粘度が上昇するため、好ましくない。
【0016】
本発明の液状栄養組成物に含有される糖質は、従来より栄養組成物で利用されてきている公知の各種の糖質のいずれも使用できる。
【0017】
糖質としては、例えばデンプン、デキストリン、マルトデキストリン等が挙げられる。より好ましくは分解度の低いデキストリンを使用し、浸透圧性の下痢を予防する。DE値(Dextrose Equivalent)8~25の範囲にあるものが好ましく、この範囲にあれば、流動性も確保でき、浸透圧についても十分低くすることができる。また、クラスターデキストリンやシクロデキストリンも添加することができる。このほかにも糖質としては、グルコース、果糖もしくはガラクトース、キシリトール、糖アルコール、アラビノース、ソルビトール等の単糖類、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、パラチノース等の二糖類を一部含有することも可能である。
【0018】
また、腸内環境改善を目的として、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラクチュロース等を添加することも可能である。
また、遅消化性デキストリンを用いることも可能である。「遅消化性デキストリン」とは、通常のマルトデキストリンと比較して摂取後の血糖値の上昇が低いデキストリンのことである。具体的には、α-1,6結合からなる分岐構造の多い高分岐デキストリンが好ましい。市販品としては、HBD-20(松谷化学工業株式会社)等がある。
【0019】
本発明の液状栄養組成物の糖質のDEとは、Dextrose Equivalentの略称で、デキストリンの加水分解の程度を意味し、式:DE=直接還元糖(グルコース換算)/固形分×100で表される。
糖質のDEを求める方法は、当該技術分野における慣用技術ならびに知識がそのまま、もしくは適宜変更を加えた形で適用され、代表的にはソモジ法が挙げられる。
【0020】
本発明の液状栄養組成物における糖質の含有量は、液状栄養組成物の全量に対して18~24質量%、好ましくは19~23質量%である。糖質の含有量が18質量%より少ないと、熱量が不足するため、好ましくない。一方、糖質の含有量が24質量%より多いと、糖質としての熱量が過剰となるため、好ましくない。また、浸透圧が上昇するため、好ましくない。
【0021】
本発明の液状栄養組成物に含有される脂質は、従来より栄養組成物で利用されてきている公知の各種のもののいずれも使用できる。例えば、アマニ油、エゴマ油、オリーブ油、ごま油、米ぬか油、サフラワー油、シソ油、大豆油、とうもろこし油、ナタネ油、胚芽油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油、やし油、落花生油等の植物性油脂、魚油、乳脂等の動物性油脂、中鎖脂肪酸、高度不飽和脂肪酸などが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。また、その他にDHA、EPA、ジアシルグリセロールなどの加工製剤も添加することができる。
【0022】
本発明の液状栄養組成物における脂質の含有量は、液状栄養組成物の全量に対して6.4~7.0質量%であることが好ましい。脂質の含有量が6.4質量%より少ないと、熱量が不足するため、好ましくない。一方、脂質の含有量が7.0質量%より多いと、脂質としての熱量が過剰となるため、好ましくない。
【0023】
本発明の液状栄養組成物に含有される食物繊維は、従来より栄養組成物で利用されてきている公知である各種の食物繊維のいずれも使用できる。
食物繊維としては、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、セルロース等が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0024】
本発明の液状栄養組成物における食物繊維の含有量は、液状栄養組成物の全量に対して1.5~2.5質量%であることが好ましい。食物繊維の含有量が1.5質量%より少ないと、液状栄養組成物の粘度が低下するため、好ましくない。食物繊維の含有量が2.5質量%より多いと、液状栄養組成物の粘度が上昇して、液状栄養組成物を経鼻チューブから投与する際の注入抵抗が高くなり、チューブ流動性が60分を超えるため、好ましくない。
【0025】
本発明の液状栄養組成物に含有される水溶性食物繊維の重量平均分子量は、15,000~25,000、好ましくは18,000~23,000である。水溶性食物繊維の重量平均分子量が15,000より小さいと、液状栄養組成物の浸透圧が上昇し、消化管内に入った物質が吸収されにくく、体液浸出で腸内溶液が増加して下痢を生じるため、好ましくない。加えて、腸内細菌による分解が急速に進み、食物繊維を構成する単糖類が増加して更に浸透圧が上昇するため、好ましくない。水溶性食物繊維の重量平均分子量が25,000より大きいと、液状栄養組成物の粘度が上昇し、液状栄養組成物を経鼻チューブから投与する際の注入抵抗が高くなるため、好ましくない。加えて、腸内細菌による分解が進まず、食物繊維を構成する単糖類を利用する腸内細菌による短鎖脂肪酸の産生が行われず、腸内細菌叢が乱れるため、好ましくない。さらに、液状栄養組成物の粘度が上昇して、液状栄養組成物を経鼻チューブから投与する際の注入抵抗が著しく高くなり、チューブ流動性が60分を超えるため、好ましくない。
【0026】
本発明の液状栄養組成物に含有される水溶性食物繊維の5質量%溶液の粘度は、10mPa・s以下である。水溶性食物繊維の5質量%溶液の粘度が10mPa・sより高いと、液状栄養組成物の粘度が上昇して、液状栄養組成物を経鼻チューブから投与する際の注入抵抗が著しく高くなり、チューブ流動性が60分を超えるため、好ましくない。
【0027】
本発明の液状栄養組成物における水溶性食物繊維の含有量は、液状栄養組成物に含有される食物繊維の全量に対して20~35質量%であり、好ましくは25~33質量%である。水溶性食物繊維の含有量が20質量%より少ないと、液状栄養組成物の粘度が著しく低下するため、好ましくない。また、浸透圧が著しく上昇するため、好ましくない。水溶性食物繊維の含有量が35質量%より多いと、液状栄養組成物の粘度が上昇して、液状栄養組成物を経鼻チューブから投与する際の注入抵抗が著しく高くなり、チューブ流動性が60分を超えるため、好ましくない。
水溶性食物繊維としては、グアーガム分解物等が挙げられる。
【0028】
本発明の液状栄養組成物は乳化剤を含有してもよい。乳化剤としては、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1以上のグリセリン脂肪酸エステルを使用できる。これらの乳化剤は、主にモノグリセリドに有機酸をエステル結合させ、親水性を向上させる等機能を改善した誘導体であり、本発明では有機酸としてクエン酸を結合させたクエン酸モノグリセリド、コハク酸を結合させたコハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸を結合させたジアセチル酒石酸モノグリセリドのいずれか1つ以上を使用できる。
【0029】
本発明の液状栄養組成物におけるグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、0.18~0.25質量%であるとよく、好ましくは0.20~0.23質量%である。グリセリン脂肪酸エステルの含量が0.18質量%より少ないと、乳化が困難となるため、好ましくない。グリセリン脂肪酸エステルの含量が0.25質量%より多いと、解乳化が引き起こされがちになり、好ましくない。
【0030】
本発明の液状栄養組成物に含有させてもよい乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステルを使用できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値は、12~16が好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が12より低いと、親水性に乏しく乳化安定性を付与することが難しくなるため、好ましくない。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が16より高いと、可溶化力が強くなり乳化されないため、好ましくない。
本発明の液状栄養組成物におけるポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、0.1~0.15質量%であるとよく、好ましくは、0.11~0.14質量%である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含量が0.1質量%より少ないと、乳化が困難となるため、好ましくない。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含量が0.15質量%より多いと、解乳化が引き起こされがちになり、好ましくない。
【0031】
本発明の液状栄養組成物に含有させてもよいポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB(Hydrophilic Lipophilic Balance)値は、通常界面活性剤の分野で使用される親水性-疎水性のバランスをいい、一般的に用いられている計算式や実験的手法を使用して算出する。例えば、Griffin法、Davies法、川上法、アトラス法が挙げられる。またこれらの方法に限らず、市販品のカタログ等に記載されているHLB値の数値を使用してもよい。
【0032】
最も好ましくは、以下の式に表した、川上法を使用する。
なお、後述の実施例におけるHLB値は、以下に記載の川上法に則り算出した値を記載した。
HLB値=7+11.7log10(Mw/Mo)
Mw:親水基の分子量、Mo:親油基の分子量
【0033】
本発明の液状栄養組成物に含有させてもよいポリグリセリン脂肪酸エステルは、融点が60℃以下の脂肪酸で構成される。構成する脂肪酸の融点が60℃より高いと、本発明の栄養組成物の調製時にたんぱく質が熱変性を開始し疎水的相互作用に起因したSH/SS交換反応を伴う変性が生じるため、好ましくない。
【0034】
なお、本発明の目的を逸脱しない範囲において、上記の乳化剤以外に加えて従来より栄養組成物で利用されてきている公知の各種の乳化剤のいずれも追加して使用することができる。
【0035】
本発明の液状栄養組成物のpHは、6.5~7.5であるとよく、好ましくは6.7~7.3である。pHが6.5より低いと、経口摂取において清涼感が得られないため、好ましくない。pHが7.5より高いと、栄養組成物の粘度が上昇して、経鼻チューブによる投与の際に詰まりやすくなるため、好ましくない。
【0036】
本発明の液状栄養組成物のpHは、pH調整剤や酸味料等の添加量を適宜設定することで調節することができる。なお、本明細書において、pHは、第9版食品添加物公定書「B.一般試験法、31.pH測定法」に記載された方法に準じて測定された値である。
【0037】
本発明の液状栄養組成物は、容量200mL、経鼻チューブの太さ12Fr、落差120cmの条件におけるチューブ流動性が60分以内であることが好ましい。容量200mL、経鼻チューブの太さ12Fr、落差120cmの条件におけるチューブ流動性が60分を超えると、経管投与の場合に拘束される時間が長くなるため、好ましくない。
【0038】
本発明の液状栄養組成物はビタミンを含有してもよい。本発明の液状栄養組成物に含有させてもよいビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンCなどが挙げられ、これら複数をできる限り組み合わせて含有するのが好ましい。また、ビタミンとして、ビタミン誘導体を使用してもよい。
【0039】
本発明の液状栄養組成物はミネラルを含有してもよい。本発明の液状栄養組成物に含有させてもよいミネラルとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム及びモリブデンなどが挙げられ、これら複数をできる限り組み合わせて含有するのが好ましい。これらは、無機電解質成分として含有されていても良いし、有機電解質成分、として含有されていてもよい。無機電解質成分としては、例えば、塩化物、硫酸化物、炭酸化物、リン酸化物などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩類が挙げられる。また、有機電解質成分としては、有機酸、例えばクエン酸、乳酸、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸など)、アルギン酸、リンゴ酸またはグルコン酸と、無機塩基、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩類が挙げられる。例えば、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、未焼成カルシウム、塩化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、ピロリン酸第二鉄、硫酸第一鉄、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸銅、硫酸銅などが挙げられる。また、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、マンガンなどは、高濃度の微量元素化合物を含有する培地内で培養して得られる微量元素蓄積性を有する微生物由来の微量元素含有微生物菌体を用いても良い。
【0040】
本発明の液状栄養組成物はビタミン様物質を含有してもよい。本発明の液状栄養組成物に含有させてもよいビタミン様物質は、体内においてビタミンと似た重要な働きをするが、体内で合成でき、欠乏症が起こらないため、ビタミンと区別されている物質のことである。具体的には、カルニチン、イノシトール、コリンなどが挙げられ、これら1種類、あるいは複数を組み合わせて含有するのが好ましい。
【0041】
本発明の液状栄養組成物におけるビタミン様物質の含有量は、液状栄養組成物100kcаl中、次の範囲が適当である。カルニチンは、好ましくは10~1000mg、より好ましくは20~1000mgである。イノシトールは、好ましくは10~1000mg、より好ましくは20~1000mgである。コリンは、好ましくは10~1000mg、より好ましくは20~1000mgである。
【0042】
本発明の液状栄養組成物は、食品の加工もしくは保存の目的で、食品添加物を含有することができる。食品添加物としては、保存料、防かび剤、酸化防止剤、着色料、甘味料、pH調整剤、酸味剤、乳化剤、香料等が挙げられる。
【0043】
液状栄養組成物中の食品添加物の含有量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
本発明の液状栄養組成物には、寒天、ペクチンなどの増粘剤を含有することができる。液状栄養組成物中の増粘剤の含有量は、粘度等を考慮して適宜調節されうる。
【0044】
本発明の液状栄養組成物は、公知の方法によって製造することができる。例えば、加温した水に栄養素、寒天、ペクチン及びその他所望とする成分を添加し、撹拌することにより製造することができる。また、加温した水に寒天を溶解した溶液と、水にペクチンを溶解した溶液とを準備し、栄養素及びその他所望とする成分をいずれかに添加して、2つの溶液を混合、撹拌することで製造することができる。
【0045】
得られた液状栄養組成物は、例えば、連続殺菌した後に容器に充填して、製品化することができる。当該連続殺菌の方法としては、特に制限されないが、超高温短時間(UHT)殺菌、熱水殺菌、バッチ式殺菌及びこれらの組み合わせが挙げられる。前記殺菌は、短時間で行うことが好ましい。短時間で殺菌を行うことにより、液状栄養組成物に含まれる成分の劣化を抑制することができる。
【0046】
液状栄養組成物を充填する容器としては、特に限定されず、公知の容器が用いられうる。当該容器としては、テトラパック(登録商標)、カート缶、ガラス容器、金属缶、アルミパウチ、プラスチック容器等が挙げられる。これらのうち、プラスチック容器を用いることが好ましい。
【0047】
前記プラスチック容器の原料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-α-オレフィン共重合体、ポリフルオロカーボン、ポリイミド等を用いることが好ましい。
【0048】
前記プラスチック容器には、さらにポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステル等を含むガスバリア性樹脂層;アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、酸化ケイ素皮膜、酸化アルミ被膜等のガスバリア性無機層を適宜組み合わせて用いてもよい。当該ガスバリア層を設けることによって、酸素や水蒸気等による液状栄養組成物の劣化を防止しうる。
【0049】
また、前記容器はさらに遮光されていてもよい。当該遮光によって、例えば、液状栄養組成物に含有されうるビタミンA、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンK等の光による劣化が抑制されうる。
【0050】
上述の容器は市販されているものを用いてもよく、例えば、ソフトパウチ(株式会社フジシール)、ボトルドパウチ(凸版印刷株式会社)、スパウチ(大日本印刷株式会社)、チアーパック(株式会社細川洋行)等が用いられうる。
【実施例
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
以下に、200L仕込み時の調合方法を記す。各原料の含有量は、表1に示す通りである。300Lのステンレスタンクに65℃の調合水100kgを計量し、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウムを添加して攪拌した。続いて、乳たんぱく、カゼインナトリウム、カゼインマグネシウム、デキストリン、砂糖、難消化性デキストリン、グアーガム分解物、セルロース、カラギナンを添加して攪拌した。当該溶液に植物混合油、脂溶性ビタミンミックス、有機酸モノグリセリドを70℃で混合した分散液を混合した。さらに、水溶性ビタミンミックス、ビタミンC、カルニチン、クエン酸鉄、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅、マンガン酵母、セレン酵母、香料を適宜添加して攪拌した。全量が200Lとなるまで調合水を添加し、均一な状態となるまで溶解分散させた。得られた溶液は、均質化を行った。その後、UHT殺菌処理を行い、1個当たり200mLとなるようにテトラパック(登録商標)に充填することで、液状栄養組成物を製造した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
得られた液状栄養組成物について性状を観察し、各種物性を評価した。評価方法は以下の通りである。
(1)粘度:液状栄養組成物を25℃で24時間静置後、B型回転粘度計(メーカー:BROOKFIELD、型式:DV-II+Pro、測定条件:回転速度6rpm、測定時間1分、ローターNo.64)を用いて測定した。
(2)浸透圧:液状栄養組成物を25℃のRO水を用いて希釈した溶液を氷点降下式浸透圧計3D3(アドバンス社)で測定した。
(3)pH:液状栄養組成物を25℃で24時間静置後、pH測定器METTLER TOLEDO MP220(METTLER TOLEDO社)を用いてpHを測定した。
(4)乳化安定性:液状栄養組成物を25℃で24時間静置後、油層と水層の分離状況を目視で確認し、以下の評価によって評価した。
◎:油層と水層の分離が見られない。
〇:油層と水層の僅かな分離が見られる。
△:油層と水層の分離が散見される。
×:油層と水層の明らかな分離が見られる。
(5)分散性:液状栄養組成物を25℃で24時間静置後、凝集物の状況を目視で確認し、以下の評価によって評価した。
◎:凝集物が見られない
○:細かな凝集物が見られるが、分散している。
△:大きな凝集物が見られるが、分散している。
×:大きな凝集物が沈殿している。
(6)チューブ流動性:液状栄養組成物200mLをイリルガートルに入れ、12Frの太さの経鼻チューブに接続し、落差が120cmの条件で全量が流れる時間を測定し、チューブ流動性を評価した。
◎:60分内に全量が流れる。
×:60分内に全量が流れない。
得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、粘度は33mPa・s、浸透圧は475mOsm/L、pHは7.0、乳化安定性は「◎」、分散性は「◎」、チューブ流動性は「◎」であった。結果を表4に示す。
【0057】
(実施例2)
実施例1において、たんぱく質の含有量を6.3質量%、脂質の含有量を6.5質量%、糖質の含有量を18.8質量%、食物繊維の含有量を1.6質量%、全食物繊維中のグアーガム分解物(水溶性食物繊維)の含有量を34質量%に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。
得られた液状栄養組成物の熱量は1.8kcal/mL、粘度は28mPa・s、浸透圧は434mOsm/L、pHは6.9、乳化安定性は「◎」、分散性は「◎」、チューブ流動性は「◎」であった。結果を表4に示す。
【0058】
(実施例3)
実施例1において、たんぱく質の含有量を6.7質量%、脂質の含有量を6.9質量%、糖質の含有量を23.8質量%、食物繊維の含有量を2.4質量%、全食物繊維中のグアーガム分解物(水溶性食物繊維)の含有量を22質量%に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。
得られた液状栄養組成物の熱量は2.2kcal/mL、粘度は38mPa・s、浸透圧は489mOsm/L、pHは6.9、乳化安定性は「◎」、分散性は「◎」、チューブ流動性は「◎」であった。結果を表4に示す。
【0059】
(実施例4)
実施例1において、食物繊維におけるグアーガム分解物の割合を34質量%に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、粘度は34mPa・s、浸透圧は480mOsm/L、pHは7.0、乳化安定性は「◎」、分散性は「◎」、チューブ流動性は「◎」であった。結果を表5に示す。
【0060】
(実施例5)
実施例1において、グリセリン脂肪酸エステルの種類をグリセリンクエン酸脂肪エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルの種類をモノミリスチン酸デカグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値を14.5、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成される脂肪酸の融点を52~54℃、ビタミン様物質をイノシトールに変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、粘度は32mPa・s、浸透圧は470mOsm/L、pHは7.0、乳化安定性は「◎」、分散性は「◎」、チューブ流動性は「◎」であった。結果を表5に示す。
【0061】
(実施例6)
実施例1において、グリセリン脂肪酸エステルの種類をグリセリンコハク酸脂肪エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルの種類をモノラウリン酸デカグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値を15.5、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成される脂肪酸の融点を44~46℃、ビタミン様物質をコリンに変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、粘度は33mPa・s、浸透圧は473mOsm/L、pHは7.0、乳化安定性は「◎」、分散性は「◎」、チューブ流動性は「◎」であった。結果を表5に示す。
【0062】
(比較例1)
実施例1において、たんぱく質の含有量を6.0質量%、脂質の含有量を5.8質量%、糖質の含有量を26.7質量%、食物繊維の含有量を1.8質量%、グリセリン脂肪酸エステルの種類をコハク酸グリセリンモノステアレートに変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。
得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、pHは6.7、乳化安定性は「〇」、分散性は「〇」であったが、粘度は50mPa・s、浸透圧は600mOsm/L、チューブ流動性は「×」であった。結果を表6に示す。
【0063】
(比較例2)
実施例1において、たんぱく質の含有量を6.3質量%、脂質の含有量を4.9質量%、糖質の含有量を27.5質量%、食物繊維の含有量を1.7質量%、グリセリン脂肪酸エステルの種類をコハク酸グリセリンモノステアレートに変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。
得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、pHは7.0、乳化安定性は「〇」、分散性は「〇」であったが、粘度は55mPa・s、浸透圧は620mOsm/L、チューブ流動性は「×」であった。結果を表6に示す。
【0064】
(比較例3)
実施例1において、たんぱく質の含有量を6.2質量%、脂質の含有量を7.5質量%、糖質の含有量を20.8質量%、食物繊維の含有量を2.0質量%、グリセリン脂肪酸エステルの種類をコハク酸グリセリンモノステアレート、グリセリン脂肪酸エステルの含有量を0.3質量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルの種類をモノミリスチン酸デカグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値を14.5、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成される脂肪酸の融点を52~54℃、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量を0.2質量%に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。
得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、浸透圧は487mOsm/L、pHは6.8であったが、粘度は51mPa・s、乳化安定性は「×」、分散性は「×」、チューブ流動性は「×」であった。結果を表6に示す。
【0065】
(比較例4)
実施例1において、糖質の含有量を23.2質量%、食物繊維の重量平均分子量を>550,000、食物繊維の5質量%溶液の粘度を20mPa・s、食物繊維の種類を大豆食物繊維(FIBRIM2000、デュポン株式会社)、グリセリン脂肪酸エステルの種類をコハク酸グリセリンモノステアレートに変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。
得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、浸透圧は447mOsm/L、pHは7.0であったが、粘度は76mPa・s、乳化安定性は「×」、分散性は「×」チューブ流動性は「×」であった。結果を表7に示す。
【0066】
(比較例5)
実施例1において、糖質の含有量を23.2質量%、食物繊維の重量平均分子量を32,000~400,000、食物繊維の5質量%溶液の粘度を2,000mPa・s、食物繊維の種類をアルギン酸ナトリウム(IL-2、株式会社キミカ)、グリセリン脂肪酸エステルの種類をコハク酸グリセリンモノステアレートに変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。
得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、浸透圧は428mOsm/L、pHは7.0であったが、粘度は98mPa・s、乳化安定性は「×」、分散性は「×」チューブ流動性は「×」であった。結果を表7に示す。
【0067】
(比較例6)
実施例1において、たんぱく質の含有量を6.0質量%、脂質の含有量を5.8質量%、糖質の含有量を26.7質量%、グリセリン脂肪酸エステルの種類をグリセリン酢酸脂肪エステルに変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。
得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、粘度は38mPa・s、浸透圧は481mOsm/L、pHは6.9であったが、乳化安定性は「×」、分散性は「×」、チューブ流動性は「×」であった。結果を表7に示す。
【0068】
(比較例7)
実施例1において、糖質の含有量を23.2質量%、グリセリン脂肪酸エステルの種類をグリセリン乳酸脂肪酸エステルに変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。
得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、粘度は35mPa・s、浸透圧は477mOsm/L、pHは7.0であったが、乳化安定性は「×」、分散性は「×」、チューブ流動性は「×」であった。結果を表8に示す。
【0069】
(比較例8)
実施例1において、糖質の含有量を23.2質量%、グリセリン脂肪酸エステルの種類をグリセリンコハク酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルの種類をモノステアリン酸ジグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値を7、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成される脂肪酸の融点を62~71℃、ビタミン様物質をイノシトールに変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。
得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、粘度は38mPa・s、浸透圧は485mOsm/L、pHは7.0であったが、乳化安定性は「×」、分散性は「×」、チューブ流動性は「×」であった。結果を表8に示す。
【0070】
(比較例9)
実施例1において、たんぱく質の含有量を6.0質量%、脂質の含有量を5.8質量%、糖質の含有量を26.7質量%、グリセリン脂肪酸エステルの種類をグリセリンコハク酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルの種類をペンタステアリン酸デカグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値を5、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成される脂肪酸の融点を62~71℃、ビタミン様物質をコリンに変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して液状栄養組成物を得た。
得られた液状栄養組成物の熱量は2.0kcal/mL、粘度は37mPa・s、浸透圧は481mOsm/L、pHは6.8であったが、乳化安定性は「×」、分散性は「×」、チューブ流動性は「×」であった。結果を表8に示す。
【0071】
【表4】

【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
【表8】

本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の液状栄養組成物により、少容量かつ高エネルギーでたんぱく質、脂質、糖質、食物繊維などの栄養素を無理なく摂取可能となる。本発明の液状栄養組成物は、たんぱく質、脂質、糖質及び食物繊維を含有し、25℃における粘度が25~40mPa・s、浸透圧が420~500mOsm/Lを有するため、経鼻チューブから投与された患者が下痢を起こすことなく、確実に安心かつ容易に栄養を摂取することが可能となる。また、食物繊維は、重量平均分子量が15,000~25,000、かつ5質量%溶液の粘度が10mPa・s以下である水溶性食物繊維を含有することから、腸内細菌叢の維持に寄与することができる。