(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】画像表示装置、画像表示方法、及び画像表示プログラム
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20240722BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20240722BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G09G3/36
G02F1/133 575
G09G3/20 632G
G09G3/20 680E
(21)【出願番号】P 2023578217
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2022003816
(87)【国際公開番号】W WO2023148814
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2024-06-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391010116
【氏名又は名称】EIZO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 友哉
(72)【発明者】
【氏名】松崎 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】村田 和哉
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-90886(JP,A)
【文献】特開2020-86380(JP,A)
【文献】特開2018-41056(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0279749(US,A1)
【文献】特開2014-11501(JP,A)
【文献】特開2011-133683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
G02F 1/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示装置であって、
光源と、積層して配置される複数の表示パネルと、広域平滑部と、狭域平滑部と、ブレンド部とを備え、
前記複数の表示パネルは、第1パネルと、前記光源及び第1パネルの間に配置される第2パネルとを備え、
前記広域平滑部は、入力画像中の対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含む対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って広域平滑値を出力し、
前記狭域平滑部は、前記対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含み前記広域平滑部の前記対象領域よりも小さい対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って狭域平滑値を出力し、
前記ブレンド部は、前記広域平滑値及び前記狭域平滑値を所定のブレンド率でブレンドしたブレンド値を出力し、
第2パネルは、前記ブレンド値を用いて生成された画像を表示し、
前記輝度情報値は、画素の輝度を用いて生成される、表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記ブレンド部は、ブレンド率決定部と、ブレンド処理部とを備え、
前記ブレンド率決定部は、前記対象画素の輝度、又は前記対象画素及び前記対象画素の近傍画素を含む近傍領域の輝度を用いて輝度レベルを算出し、前記輝度レベルに基づき前記ブレンド率を決定し、
前記ブレンド処理部は、前記ブレンド率を用いて前記ブレンド値を出力する、表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置であって、
前記ブレンド率決定部は、前記広域平滑値の前記ブレンド率が前記輝度レベルに対して単調非減少となるように、前記ブレンド率を決定する、表示装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の表示装置であって、
前記広域平滑部は、第1前処理部と、第1平滑化処理部を備え、
第1前処理部は、前記広域平滑部の前記対象領域を少なくとも含む領域内の各画素の輝度、及び前記各画素の前記輝度の代表値から選ばれた少なくとも1つを用いて、前記広域平滑部において用いられる前記輝度情報値を生成し、
第1平滑化処理部は、当該輝度情報値に対して平滑化処理を行って前記広域平滑値を出力する、表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置であって、
第1前処理部は、前記各画素の色成分の階調値をさらに用いて、前記広域平滑部の前記対象領域の前記輝度情報値を生成する、表示装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の表示装置であって、
前記狭域平滑部は、第2前処理部と、第2平滑化処理部を備え、
第2前処理部は、前記狭域平滑部の前記対象領域を少なくとも含む領域内の各画素の輝度、及び当該各画素の前記輝度の代表値から選ばれた少なくとも1つを用いて、前記狭域平滑部において用いられる前記輝度情報値を生成し、
第2平滑化処理部は、当該輝度情報値に対して平滑化処理を行って前記狭域平滑値を出力する、表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の表示装置であって、
第2前処理部は、前記狭域平滑部の前記対象領域を少なくとも含む前記領域内の前記各画素の色成分の階調値をさらに用いて、前記狭域平滑部の前記対象領域の前記輝度情報値を生成する、表示装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の表示装置であって、
前記平滑化処理は、平均化フィルタを用いた処理である、表示装置。
【請求項9】
表示装置に画像を表示する方法であって、
広域平滑ステップと、狭域平滑ステップと、ブレンドステップと、表示ステップとを備え、
前記表示装置は、光源と、積層して配置される複数の表示パネルとを備え、
前記複数の表示パネルは、第1パネルと、前記光源及び第1パネルの間に配置される第2パネルとを備え、
前記広域平滑ステップでは、入力画像中の対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含む対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って広域平滑値を出力し、
前記狭域平滑ステップでは、前記対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含み前記広域平滑ステップの前記対象領域よりも小さい対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って狭域平滑値を出力し、
前記ブレンドステップでは、前記広域平滑値及び前記狭域平滑値を所定のブレンド率でブレンドしたブレンド値を出力し、
前記表示ステップでは、前記ブレンド値を用いて生成された画像を第2パネルに表示し、
前記輝度情報値は、画素の輝度を用いて生成される、方法。
【請求項10】
コンピュータ、又は表示装置に設けられたプロセッサに、前記表示装置に画像を表示する方法を実行させるためのプログラムであって、
前記方法は、広域平滑ステップと、狭域平滑ステップと、ブレンドステップと、表示ステップとを備え、
前記表示装置は、光源と、積層して配置される複数の表示パネルとを備え、
前記複数の表示パネルは、第1パネルと、前記光源及び第1パネルの間に配置される第2パネルとを備え、
前記広域平滑ステップでは、入力画像中の対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含む対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って広域平滑値を出力し、
前記狭域平滑ステップでは、前記対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含み前記広域平滑ステップの前記対象領域よりも小さい対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って狭域平滑値を出力し、
前記ブレンドステップでは、前記広域平滑値及び前記狭域平滑値を所定のブレンド率でブレンドしたブレンド値を出力し、
前記表示ステップでは、前記ブレンド値を用いて生成された画像を第2パネルに表示し、
前記輝度情報値は、画素の輝度を用いて生成される、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、画像表示方法、及び画像表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置の表示品位を向上させるために、複数の表示パネルを積層して配置し、各表示パネルに画像を表示させる技術が提案されている。特許文献1に開示される表示装置では、表示装置の前面側に配置される第1表示パネルにカラー画像が、第1表示パネルの背面側に配置される第2表示パネルに白黒画像が表示される。これにより、特に表示画像の低階調領域を高品位で表示し、表示装置のコントラストを向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前面側の表示パネル上の画素と当該画素に対応する背面側の表示パネル上の画素とは表示パネルの厚み方向において離間しているため、観察者の視線によって画素同士の重なり具合に視差が生じる。観察者の視線が表示画面に対して斜め方向である場合には、画素同士の重なり具合のずれにより輝点の消失や二重像が知覚される場合がある。このような表示品位の低下を抑制するために、特許文献1の表示装置では、第2表示パネル用の白黒画像データに平滑化処理を施し輝度変化を滑らかにしている。
【0005】
しかしながら、平滑化処理を行うと、視差に起因する表示品位の低下を抑制できる一方、入力画像によっては干渉模様やハローが発生しやすくなる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、複数の表示パネルが積層して配置された表示装置において、表示品位の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、画像を表示する表示装置であって、光源と、積層して配置される複数の表示パネルと、広域平滑部と、狭域平滑部と、ブレンド部とを備え、前記複数の表示パネルは、第1パネルと、前記光源及び第1パネルの間に配置される第2パネルとを備え、前記広域平滑部は、入力画像中の対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含む対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って広域平滑値を出力し、前記狭域平滑部は、前記対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含み前記広域平滑部の前記対象領域よりも小さい対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って狭域平滑値を出力し、前記ブレンド部は、前記広域平滑値及び前記狭域平滑値を所定のブレンド率でブレンドしたブレンド値を出力し、第2パネルは、前記ブレンド値を用いて生成された画像を表示し、前記輝度情報値は、画素の輝度を用いて生成される、表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る表示装置においては、大きさの異なる対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行い、その平滑化処理値をブレンドしたブレンド値を用いて第2パネルに表示される画像が生成される。平滑化処理により視差による表示品位の低下を抑制しつつ、相対的に広域及び狭域の関係にある対象領域の平滑化処理値をブレンドすることで、平滑化処理の弊害である干渉模様やハローの発生を抑制することが可能となる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記ブレンド部は、ブレンド率決定部と、ブレンド処理部とを備え、前記ブレンド率決定部は、前記対象画素の輝度、又は前記対象画素及び前記対象画素の近傍画素を含む近傍領域の輝度を用いて輝度レベルを算出し、前記輝度レベルに基づき前記ブレンド率を決定し、前記ブレンド処理部は、前記ブレンド率を用いて前記ブレンド値を出力する。
好ましくは、前記ブレンド率決定部は、前記広域平滑値の前記ブレンド率が前記輝度レベルに対して単調非減少となるように、前記ブレンド率を決定する。
好ましくは、前記広域平滑部は、第1前処理部と、第1平滑化処理部を備え、第1前処理部は、前記広域平滑部の前記対象領域を少なくとも含む領域内の各画素の輝度、及び前記各画素の前記輝度の代表値から選ばれた少なくとも1つを用いて、前記広域平滑部において用いられる前記輝度情報値を生成し、第1平滑化処理部は、当該輝度情報値に対して平滑化処理を行って前記広域平滑値を出力する。
好ましくは、第1前処理部は、前記各画素の色成分の階調値をさらに用いて、前記広域平滑部の前記対象領域の前記輝度情報値を生成する。
好ましくは、前記狭域平滑部は、第2前処理部と、第2平滑化処理部を備え、第2前処理部は、前記狭域平滑部の前記対象領域を少なくとも含む領域内の各画素の輝度、及び当該各画素の前記輝度の代表値から選ばれた少なくとも1つを用いて、前記狭域平滑部において用いられる前記輝度情報値を生成し、第2平滑化処理部は、当該輝度情報値に対して平滑化処理を行って前記狭域平滑値を出力する。
好ましくは、第2前処理部は、前記狭域平滑部の前記対象領域を少なくとも含む前記領域内の前記各画素の色成分の階調値をさらに用いて、前記狭域平滑部の前記対象領域の前記輝度情報値を生成する。
好ましくは、前記平滑化処理は、平均化フィルタを用いた処理である。
【0010】
本発明の別の観点によれば、表示装置に画像を表示する方法であって、広域平滑ステップと、狭域平滑ステップと、ブレンドステップと、表示ステップとを備え、前記表示装置は、光源と、積層して配置される複数の表示パネルとを備え、前記複数の表示パネルは、第1パネルと、前記光源及び第1パネルの間に配置される第2パネルとを備え、前記広域平滑ステップでは、入力画像中の対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含む対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って広域平滑値を出力し、前記狭域平滑ステップでは、前記対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含み前記広域平滑ステップの前記対象領域よりも小さい対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って狭域平滑値を出力し、前記ブレンドステップでは、前記広域平滑値及び前記狭域平滑値を所定のブレンド率でブレンドしたブレンド値を出力し、前記表示ステップでは、前記ブレンド値を用いて生成された画像を第2パネルに表示し、前記輝度情報値は、画素の輝度を用いて生成される、方法が提供される。
【0011】
本発明の別の観点によれば、コンピュータ、又は表示装置に設けられたプロセッサに、前記表示装置に画像を表示する方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、広域平滑ステップと、狭域平滑ステップと、ブレンドステップと、表示ステップとを備え、前記表示装置は、光源と、積層して配置される複数の表示パネルとを備え、前記複数の表示パネルは、第1パネルと、前記光源及び第1パネルの間に配置される第2パネルとを備え、前記広域平滑ステップでは、入力画像中の対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含む対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って広域平滑値を出力し、前記狭域平滑ステップでは、前記対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含み前記広域平滑ステップの前記対象領域よりも小さい対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って狭域平滑値を出力し、前記ブレンドステップでは、前記広域平滑値及び前記狭域平滑値を所定のブレンド率でブレンドしたブレンド値を出力し、前記表示ステップでは、前記ブレンド値を用いて生成された画像を第2パネルに表示し、前記輝度情報値は、画素の輝度を用いて生成される、プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る表示装置1の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】表示装置1の表示部2と観察者の視点e0との位置関係を表す概要図である。
【
図3】表示装置1の画像処理部3の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】第1主処理部5の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5Aは、第2主処理部8の機能構成を示すブロック図である。
図5Bは、第2主処理部8における処理を示すフロー図である。
【
図8】
図8Aは、広域平滑部82において用いられる輝度情報値V'
lの2次元配列を示す概要図である。
図8Bは、広域平滑部82における対象領域A
l_m,nの輝度情報値V'
lを示す概要図である。
【
図9】
図9Aは、狭域平滑部85において用いられる輝度情報値V'
sの2次元配列を示す概要図である。
図9Bは、狭域平滑部85における対象領域A
s_m,nの輝度情報値V'
sを示す概要図である。
【
図10】ブレンド部88の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】ブレンド率決定部88aにおいて用いられる近傍領域A
n_m,nの輝度Vを示す概要図である。
【
図12】輝度レベルV
gと広域平滑値V'
mean-lのブレンド率f
lとの関係の一例を示すグラフである。
【
図13】
図13Aは、第1前処理部83の機能構成を示すブロック図である。
図13Bは、第2前処理部86の機能構成を示すブロック図である。
【
図14】
図14Aは、第1前処理部83の絶対輝度算出部83a及び相対輝度算出部83bにおいて用いられる輝度Vの2次元配列を示す概要図である。
図14Bは、第2前処理部86の絶対輝度算出部86a及び相対輝度算出部86bにおいて用いられる輝度Vの2次元配列を示す概要図である
【
図15】相対輝度算出部83bのLUT83b2における輝度平均値V
mean-lと対応値f
v-lの関係の一例を示すグラフである。
【
図16】調整係数算出部83cのLUT83c2における階調平均値RGB
mean-lと調整係数f
a-lの関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0014】
なお、本明細書において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものを指し得る。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行され得る。また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0015】
1.全体構成
図1に示すように、本実施形態に係る表示装置1は、表示部2、及び画像処理部3を備える。表示部2と画像処理部3は、信号ケーブルによって相互に通信可能に接続されている。
図2に示すように、表示部2は、表示部2の背面側に配置される光源23、及び積層して配置される複数の表示パネルを備える。本実施形態に係る表示部2は、複数の表示パネルとして表示部2の前面側に配置される第1パネル21と、光源23及び第1パネル21の間に配置される第2パネル22との2枚の液晶パネルを備える。表示部2の前方に位置する観察者の視点e0から見た場合、第2パネル22は第1パネル21よりも遠い位置に配置される。なお、以下の説明において、複数の表示パネル(本実施形態においては第1パネル21及び第2パネル22)を合わせた全体を積層表示パネルと称する場合がある。
【0016】
画像処理部3は、入力画像に対して所定の画像処理を実行し、第1画像データDAT1及び第2画像データDAT2を表示部2に対して出力する。画像処理部3から信号ケーブルを介して送られる制御信号又はデータに従って、第1パネル21が第1画像データDAT1に基づき第1画像を表示し、第2パネル22が第2画像データDAT2に基づき第2画像を表示する。本実施形態では、第1パネル21はカラー液晶パネルであり、カラー画像の第1画像を表示し、第2パネル22はモノクロ液晶パネルであり、モノクロ画像の第2画像を表示する。
【0017】
第1パネル21及び第2パネル22が第1画像及び第2画像を各々表示して光源23からの光Lの透過率を制御することによって、積層表示パネル上に所望の画像が表示される。
図2に示すように、第1パネル21の画素p1と第2パネル22の画素p2は、表示パネルの厚み方向において距離dだけ離間している。従って、観察者の視線が画素の正面に向かう方向である場合(
図2における視線e1の場合)には高品位な画像として知覚されるが、観察者の視線が画素に対して斜め方向である場合(
図2における視線e2,e3の場合)には、画素p1と画素p2の重なり具合のずれにより、輝点の消失や二重像が知覚される可能性がある。第2パネル22の使用に伴うこのような弊害を抑制するために、画像処理部3による第2画像データDAT2の生成に際し、平滑化処理が行われる。
【0018】
2.画像処理部3
次に、画像処理部3の各構成要素について詳細に説明する。
図1及び
図3に示すように、本実施形態の画像処理部3は、線形変換部31と、第1画像生成部4と、第2画像生成部7とを備える。線形変換部31は、入力画像データに所定の処理を行って第1画像生成部4及び第2画像生成部7に対して出力する。第1画像生成部4及び第2画像生成部7は、第1画像データDAT1及び第2画像データDAT2を各々生成する。
【0019】
2.1.線形変換部31
線形変換部31は、入力画像データとして、R,G,B成分の各々について10ビットで階調が表現される入力信号RGBγを受信する。ここで、入力信号RGBγは、入力画像の階調に対してガンマ特性に応じたガンマ補正が適用されたものである。線形変換部31は、入力信号RGBγの各成分について階調値の増加に対して輝度が線形に増加する線形特性を示すように変換した線形信号RGBを生成する。本実施形態においては、成分毎に設けられた3つのLUT(Lookup table)を用いて、線形信号RGBへの変換が行われる。
【0020】
2.2.第2画像生成部7
第2画像生成部7は、第2主処理部8及び第2非線形変換部9を備える。第2主処理部8は、線形変換部31から線形信号RGBを受け取り、平滑化処理を含む所定の処理を実行して第2処理信号Dを生成する。なお、第2主処理部8が行う処理の詳細は後述する。第2非線形変換部9は、第2主処理部8から第2処理信号Dを受け取り、第2パネル22の表示特性に基づき作成されたLUTを用いて第2処理信号Dを非線形な信号である第2画像信号Dγに変換する。第2画像信号Dγは第2画像データDAT2として表示部2へ出力され、第2画像信号Dγに基づく第2画像が第2パネル22に表示される。
【0021】
2.3.第1画像生成部4
第1画像生成部4は、第1主処理部5及び第1非線形変換部6を備える。
図4に示すように、第1主処理部5は、係数算出部51及び演算部52を備える。係数算出部51は、第2画像生成部7の第2主処理部8から第2処理信号Dを受け取り、LUTを用いて第2処理信号Dに対応付けられた係数Fを出力する。演算部52は、線形変換部31から線形信号RGBを、係数算出部51から係数Fを受け取り、線形信号RGBに係数Fを乗じることにより第1処理信号RGB'を生成する。本実施形態においては、光源23から発せられた光は、第2表示パネルにより第2画像データDAT2に基づく透過率で透過され、さらに第1表示パネルにより第1画像データDAT1に基づく透過率で透過され、これにより積層表示パネルにおいて入力画像データに応じた所望の透過率が実現される。係数算出部51が用いるLUTには、このような第1表示パネル及び第2表示パネルの透過率の関係に基づき、入力データとしての第2処理信号Dに対応付けられた出力データとしての係数Fが格納されている。
【0022】
第1非線形変換部6は、第1主処理部5から第1処理信号RGB'を受け取り、第1パネル21の表示特性に基づき色成分毎に作成されたLUTを用いて第1処理信号RGB'を非線形な信号である第1画像信号RGB'γに変換する。第1画像信号RGB'γは第1画像データDAT1として表示部2へ出力され、第1画像信号RGB'γに基づく第1画像が第1パネル21に表示される。
【0023】
本実施形態の画像処理部3においては、第1主処理部5及び第2主処理部8による処理に先駆けて線形変換部31による線形信号への変換が行われる。また、第1主処理部5及び第2主処理部8が各々生成した第1処理信号RGB'及び第2処理信号Dは、第1非線形変換部6及び第2非線形変換部9により非線形な信号に変換されて表示部2へ出力される。このような構成では、積層表示パネルを通して見える階調と同等の線形な信号に対して第1主処理部5及び第2主処理部8による処理が行われる。従って、第1主処理部5においては、複数の表示パネルを組み合わせた場合に表示される色により正確に依拠した処理を行うことが可能となり、第2主処理部8においては、平滑化処理等においてより適切な結果を得ることが可能となる。
【0024】
3.第2主処理部8
次に、第2主処理部8が行う処理について詳細に説明する。
図5Aに示すように、第2主処理部8は、輝度変換部81と、広域平滑部82と、狭域平滑部85と、ブレンド部88とを備える。
図5Bは、第2主処理部8における処理を示すフロー図である。
【0025】
3.1.輝度変換部81
輝度変換部81は、線形信号RGBを受け取り、入力画像中の各画素の階調値に基づき輝度Vを出力する(
図5BにおけるステップS1)。本実施形態の輝度変換部81は、各画素の各色成分の階調値のうち最大のものを輝度Vとして出力する。
図6は本実施形態における入力画像の画素配列Iを示しており、画素配列IはM×N個の画素を有する。
図6の左上の端部の画素を基準として、m行n列目の画素をi
m,nと表す。線形信号RGBにおいて入力画像中の画素i
m,nの諧調値の各成分を0以上1以下の範囲で正規化した値が(R
m,n,G
m,n,B
m,n)であるとき、式(1)で表されるようにR
m,n,G
m,n,B
m,nのうちの最大値を画素i
m,nの輝度v
m,nとして用いる。
v
m,n=max{R
m,n,G
m,n,B
m,n} (1)
(0≦R
m,n,G
m,n,B
m,n≦1)
輝度変換部81は、
図7に示すような各画素i
m,nの輝度v
m,nの2次元配列である輝度Vを出力する。なお、輝度Vの算出方法は、上記の例に限定されず、例えば、各画素の各色成分の階調値に対して重み付けを行い和をとったものを輝度Vとして出力してもよい。
【0026】
3.2.広域平滑部82及び狭域平滑部85
広域平滑部82及び狭域平滑部85は、輝度Vについての情報である輝度情報値V'l,V'sに対して平滑化処理を行い、広域平滑値V'mean-l及び狭域平滑値V'mean-sを各々出力する。輝度情報値V'l,V'sは、輝度Vを用いて生成される。ここで、広域平滑部82が入力画像中の対象画素及び当該対象画素の周辺画素を含む対象領域Alの輝度情報値V'lに対して平滑化処理を行うのに対し、狭域平滑部85は対象画素及び当該対象画素の周辺画素を含み広域平滑部82の対象領域Alよりも小さい対象領域Asの輝度情報値V'sに対して平滑化処理を行う。
【0027】
広域平滑部82は、
図5Aに示すように、第1前処理部83、及び第1平滑化処理部84を備える。第1前処理部83は、輝度Vに対して所定の前処理を行い(
図5BにおけるステップS2)、
図8Aに示すような各画素i
m,nの輝度情報値v'
l_m,nの2次元配列である輝度情報値V'
lを出力する。なお、第1前処理部83が行う処理の詳細は後述する。
【0028】
対象画素をm行n列目の画素i
m,nとした場合において対象画素i
m,nに対応する対象領域A
lをA
l_m,nと表すと、対象領域A
l_m,nは、対象画素i
m,nを凡そ中心とし対象画素i
m,n及びその周辺画素を含む計k
l×k
l個の画素からなる領域に設定される。k
lは、例えば、99~999であり、好ましくは、149~599であり、本実施形態においてはk
l=301に設定される。k
lは、具体的には例えば、99、199、299、399、499、599、699、799、899、999であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。第1平滑化処理部84は、
図8Bにおいて太線で示された対象領域A
l_m,nの輝度情報値V'
lに対して平滑化処理を行う(広域平滑ステップ、
図5BのステップS3)。これにより、対象画素i
m,nについての広域平滑値v'
mean-l_m,nが得られる。
【0029】
第1平滑化処理部84による平滑化処理は、干渉模様の抑制を目的として比較的大きな対象領域Al_m,nに対して行われる。対象領域Al_m,nのサイズkl×klは、本実施形態の例に限定されるものではなく、表示パネルのサイズや積層表示パネルに対する観察者の視野角の想定範囲を考慮し、視線が積層表示パネルに対して斜め方向である場合でも干渉模様が知覚されない程度に十分大きくなるように決定される。なお、本実施形態における対象領域Al_m,nは行方向及び列方向が同数の画素(kl個)で構成されるが、行方向及び列方向が異なる数の画素で構成されるように対象領域Al_m,nを設定してもよい。
【0030】
本実施形態の第1平滑化処理部84は、このように決定された対象領域Al_m,nの輝度情報値V'lに対して、フィルタサイズがkl×klの平均化フィルタを用いた平滑化処理を行う。従って、広域平滑値v'mean-l_m,nは、対象領域Al_m,n内の画素の輝度情報値V'の総和をkl×klで除した値となる。
【0031】
狭域平滑部85は、
図5Aに示すように、第2前処理部86、及び第2平滑化処理部87を備える。第2前処理部86は、輝度変換部81から出力された輝度Vに対して所定の前処理を行い(
図5BにおけるステップS4)、
図9Aに示すような各画素i
m,nの輝度情報値v'
s_m,nの2次元配列である輝度情報値V'
sを出力する。なお、第2前処理部86が行う処理の詳細は後述する。
【0032】
対象画素i
m,nに対応する対象領域A
sをA
s_m,nと表すと、対象領域A
s_m,nは、対象画素i
m,nを凡そ中心とし対象画素i
m,n及びその周辺画素を含む計k
s×k
s個の画素からなる領域に設定される。k
sは、例えば、5~61であり、好ましくは、11~39であり、本実施形態においてはk
s=15に設定される。k
sは、具体的には例えば、5、13、21、29、37、45、53、61であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。第2平滑化処理部87は、
図9Bにおいて太線で示された対象領域A
s_m,nの輝度情報値V'
sに対して平滑化処理を行う(狭域平滑ステップ、
図5BのステップS5)。これにより、対象画素i
m,nについての狭域平滑値v'
mean-s_m,nが得られる。
【0033】
第2平滑化処理部87による平滑化処理の対象領域As_m,nは、第1平滑化処理部84による平滑化処理の対象領域Al_m,nよりも小さくなるように設定される。本実施形態においては、ks<klの関係を満たし、第2平滑化処理部87の対象領域As_m,nが第1平滑化処理部84の対象領域Al_m,nの一部となるように対象領域As_m,nが設定される。第2平滑化処理部87による平滑化処理は、観察者の視線が積層表示パネルに対して斜め方向である場合の第1パネル21及び第2パネル22の画素同士の重なり具合のずれに起因する輝点の消失を抑制することを目的として、比較的小さな対象領域As_m,nに対して行われる。対象領域As_m,nは、表示パネルの厚み方向における第1パネル21及び第2パネル22の画素間の距離や、積層表示パネルに対する観察者の視線の角度を考慮して、視線が積層表示パネルに対して斜め方向である場合でも輝点の消失が知覚されない程度に最小限のサイズks×ksを有するように決定される。第2平滑化処理部87の対象領域As_m,nのサイズが、第1平滑化処理部84の対象領域Al_m,nのサイズに対して縦横1/a倍である場合、例えば、5≦a≦50であり、好ましくは、10≦a≦40であり、本実施形態におけるaは約20である。aは、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、本実施形態における対象領域As_m,nは行方向及び列方向が同数の画素(ks個)で構成されるが、行方向及び列方向が異なる数の画素で構成されるように対象領域As_m,nを設定してもよい。
【0034】
第2平滑化処理部87は、このように決定された対象領域As_m,nの輝度情報値V'sに対して平滑化処理を行い、フィルタサイズがks×ksの平均化フィルタを用いた平滑化処理を行う。従って、狭域平滑値v'mean-s_m,nは、対象領域As_m,n内の画素の輝度情報値V'の総和をks×ksで除した値となる。
【0035】
本実施形態の第1平滑化処理部84及び第2平滑化処理部87においては、平均化フィルタを用いて平滑化処理を行う。平均化フィルタは、距離に応じて重みをかけるガウシアンフィルタのようなローパスフィルタ(LPF)と比較して、平滑化処理後の画像における階調の勾配が一定となる。これによって、第1パネル21と第2パネル22の相対位置がずれて見えることで生じる干渉模様を軽減することができる。言い換えれば、LPFとして減衰域が空間的にも周波数的にも広くなる平均化フィルタを用いることで、広い範囲において干渉を低減することが可能となる。
【0036】
3.3.ブレンド部88
ブレンド部88は、広域平滑部82から広域平滑値V'
mean-lを、狭域平滑部85から狭域平滑値V'
mean-sを受け取り、これらを所定のブレンド率でブレンドし、ブレンド値を第2処理信号Dとして出力する。ブレンド部88は、
図10に示すように、ブレンド率決定部88a、及びブレンド処理部88bを備える。
【0037】
ブレンド率決定部88aは、輝度変換部81から輝度Vを受け取り、対象画素の輝度V、又は対象画素及び対象画素の近傍画素を含む近傍領域Anの輝度Vを用いて輝度レベルVgを算出する。さらに、ブレンド率決定部88aは、輝度レベルVgに基づきブレンド率fl,fsを決定する。ブレンド率fl,fsは、広域平滑値V'mean-l及び狭域平滑値V'mean-sをブレンドする際に、式(2)に示すように各平滑値の重み付けに用いられる。
D=fl×V'mean-l+fs×V'mean-s (2)
(0≦fl,fs≦1、且つfs=1-fl)
【0038】
対象画素i
m,nに対応する近傍領域A
nをA
n_m,nと表すと、本実施形態の近傍領域A
n_m,nは、i
m,nを凡そ中心とし対象画素i
m,n及びその近傍画素を含む計k
n×k
n個の画素からなる領域に設定される。本実施形態においては、k
n=9に設定される。本実施形態のブレンド率決定部88aは、
図11において太線で示された近傍領域A
n_m,nの輝度Vに対してガウス分布に基づくLPF88a1を用いた処理を行い、対象画素i
m,nについての輝度レベルv
g_m,nを算出する。LPF88a1は近傍領域A
n_m,nの輝度Vに対して対象画素i
m,nからの距離に応じた重みづけを行うためのものであり、これにより近傍領域A
n_m,nにおける輝度Vの分布が反映された輝度レベルv
g_m,nを得ることができる。なお、LPF88a1による重み付けは、ガウス分布に従う本実施形態の構成に限定されるものではなく、他の重み付け方法を用いてもよい。
【0039】
近傍領域An_m,nのサイズは、大きすぎると対象画素im,nの近傍の輝度Vの分布を輝度レベルvg_m,nに適切に反映できず、ブレンド部88による処理の性能が低下する。従って、近傍領域An_m,nのサイズは、広域平滑部82における対象領域Al_m,nのサイズ以下に設定することが好ましく、狭域平滑部85における対象領域As_m,nのサイズ以下に設定することがさらに好ましい。本実施形態においては、近傍領域An_m,nのサイズを狭域平滑部85における対象領域As_m,nのサイズよりも小さく(ks=15に対して、kn=9)に設定している。なお、本実施形態における近傍領域An_m,nは行方向及び列方向が同数の画素(kn個)で構成されるが、行方向及び列方向が異なる数の画素で構成されるように近傍領域An_m,nを設定してもよい。
【0040】
なお、輝度レベルvg_m,nの算出方法は本実施形態の例に限定されるものではなく、対象画素im,nの輝度vm,nをそのまま輝度レベルvg_m,nとして用いてもよい。
【0041】
ブレンド率決定部88aは、入力データとしての輝度レベルVgに対応付けられた出力データとして広域平滑値V'mean-lのブレンド率flが格納されたLUT88a2を用いて、対象画素im,nの輝度レベルvg_m,nに対応するブレンド率fl_m,nを決定する。ブレンド率flが格納されるLUT88a2は、第1パネル21による低諧調領域の表現性能や、実際の表示パネルの大きさに応じた干渉模様の知覚されやすさ等に応じて作成される。ここで、広域平滑値V'mean-lのブレンド率flは、輝度レベルVgに対して単調非減少であることが好ましい。換言すれば、狭域平滑値V'mean-sのブレンド率fsは、輝度レベルVgに対して単調非増加であることが好ましい。さらに、輝度レベルVgが比較的高い領域においては広域平滑値V'mean-lのブレンド率flが狭域平滑値V'mean-sのブレンド率fsよりも大きく、輝度レベルVgが比較的低い領域においては狭域平滑値V'mean-sのブレンド率fsが広域平滑値V'mean-lのブレンド率flよりも大きくなるように、ブレンド率fl,fsを決定することがより好ましい。これにより、表示画像における干渉模様の発生を抑制しつつ、低階調領域の表示品位の低下を抑制することが可能となる。
【0042】
図12は、LUT88a2における輝度レベルV
gと広域平滑値V'
mean-lのブレンド率f
lとの関係の一例を示すグラフである。輝度レベルV
gが低い領域においてはブレンド率f
lが単調増加し、輝度レベルV
gが中程度から高い領域においてはブレンド率f
lが凡そ一定となる。なお、輝度レベルV
gとブレンド率f
lとの関係はこの例に限定されるものではなく、例えば、S字型曲線状に単調非減少となる関係や、階段関数状に単調非減少となる関係としてもよい。
【0043】
このように得られたブレンド率f
l_m,nを用いて、ブレンド処理部88bは、式(2)により画素i
m,nについてのブレンド値d
m,nを算出する(ブレンドステップ、
図5BにおけるステップS6)。また、広域平滑部82、狭域平滑部85、及びブレンド部88は、対象画素i
m,nを変更しながら上記の処理を繰り返す(
図5BのステップS7)。全画素のブレンド値d
m,nの2次元配列が、第2処理信号Dとして出力される。
【0044】
広域平滑部82により比較的大きな対象領域Alに対して平滑化処理を行って得られた広域平滑値V'mean-lのみを用いて第2画像データDAT2を生成した場合、積層表示パネル上に表示された画像において干渉模様が知覚されにくくなる。一方、画像中の高階調領域から低階調領域に向けてぼんやりと明るい領域が現れる所謂白ハローが広範囲に広がりやすくなり、低階調領域の表示品位が低下する可能性がある。狭域平滑部85により最小限のサイズを有するAsに対して平滑化処理を行って得られた狭域平滑値V'mean-sのみを用いて第2画像データDAT2を生成した場合、白ハローの発生を狭い範囲に抑制できるが、表示画像において干渉模様が知覚されやすくなる。
【0045】
本発明においては、広域平滑値V'mean-l及び狭域平滑値V'mean-sをブレンドすることにより、広域平滑値V'mean-lを用いる利点である干渉模様の抑制効果を享受しつつ、広域平滑値V'mean-lを用いた場合の弊害である白ハローによる低階調領域の表示品位の低下を抑制することができる。
【0046】
また、本発明においては、広域平滑部82及び狭域平滑部85による輝度情報値に対する平滑化処理を並列的に独立して行っている。一方の平滑部による平滑化処理の結果にさらに他方の平滑部の平滑化処理を行う直列的な処理を行う場合、平滑化処理が過剰となりコントラストが低下したり、他方の平滑部による平滑化処理の効果が損なわれたりする可能性がある。対象領域の大きさの異なる平滑化処理を独立して行い、その結果をブレンドすることで、上記のような事態を回避することが可能となる。
【0047】
また、干渉模様は、中間階調以上の領域において知覚されやすく、低階調領域において知覚されにくい。上記のように広域平滑値V'mean-lのブレンド率flを輝度レベルVgに対して単調非減少となるよう設定することにより、輝度レベルVgが比較的高い領域においてはブレンドにおける広域平滑値V'mean-lの比率を高めて干渉模様の抑制効果を高めるとともに、輝度レベルVgが比較的低い領域においてはブレンドにおける狭域平滑値V'mean-sの比率を高めて低階調領域の表示品位の低下の抑制効果を高めることができる。
【0048】
3.4.第1前処理部83及び第2前処理部86
<第1前処理部83の全体構成>
図13Aに示すように、広域平滑部82の第1前処理部83は、絶対輝度算出部83a、相対輝度算出部83b、調整係数算出部83c、及び調整値算出部83dを備える。絶対輝度算出部83aは、輝度変換部81から輝度Vを受け取り、対象画素を含む注目領域B
lにおける輝度最大値V
max-lを出力する。
【0049】
相対輝度算出部83bは、輝度変換部81から輝度Vのデータを受け取り、対象画素を含む注目領域Blにおける輝度Vに対して平均化フィルタ83b1を適用し、輝度平均値Vmean-lを算出する。さらに、相対輝度算出部83bは、LUT83b2を用いて輝度平均値Vmean-lに対応する対応値fv-lを決定する。
【0050】
調整係数算出部83cは、画素の各色成分の階調値を用いて、調整係数fa-lを決定する。本実施形態の調整係数算出部83cは、対象画素を含む注目領域Blにおける線形信号RGBに対して平均化フィルタ83c1を適用し、階調平均値RGBmean-lを算出する。そして、LUT83c2を用いて階調平均値RGBmean-lに対応する調整係数fa-lが決定される。
【0051】
調整値算出部83dは、絶対輝度算出部83aから輝度最大値Vmax-lを、相対輝度算出部83bから対応値fv-lを受け取り、式(3)及び式(4)に基づき輝度下限値Vlimit-lを設定する。
Vmax-l<fv-l⇒Vlimit-l=fv-l (3)
Vmax-l≧fv-l⇒Vlimit-lVmax-l (4)
さらに、調整値算出部83dは、調整係数算出部83cから調整係数fa-lを受け取り、式(5)に基づき広域平滑部82において用いられる輝度情報値V'lを算出する。
Vl'=1-fa-l×(1-Vlimit-l) (5)
【0052】
なお、第1前処理部83は、上記の構成に限定されるものではなく、絶対輝度算出部83a、相対輝度算出部83b、及び調整係数算出部83cのうちいずれか1つのみ、又はいずれか2つのみを備える構成としてもよい。
【0053】
<第2前処理部86の全体構成>
図13Bに示すように、狭域平滑部85の第2前処理部86は、絶対輝度算出部86a、相対輝度算出部86b、調整係数算出部86c、及び調整値算出部86dを備える。これらの構成要素による処理は、対象画素を含む注目領域B
sの大きさを除いて、第1前処理部83の構成要素による処理と同様である。絶対輝度算出部86aは、注目領域B
sにおける輝度最大値V
max-s出力する。相対輝度算出部86bは、注目領域B
sにおける輝度Vに対して平均化フィルタ86b1を適用して輝度平均値V
mean-sを算出し、LUT86b2を用いて輝度平均値V
mean-sに対応する対応値f
v-sを決定する。調整係数算出部86cは、注目領域B
sにおける線形信号RGBに対して平均化フィルタ86c1を適用して階調平均値RGB
mean-sを算出し、LUT86c2を用いて階調平均値RGB
mean-sに対応する調整係数f
a-sを決定する。
【0054】
調整値算出部86dは、式(6)及び式(7)に基づき輝度下限値Vlimit-sを設定する。
Vmax-s<fv-s⇒Vlimit-s=fv-s (6)
Vmax-s≧fv-s⇒Vlimit-s=Vmax-s (7)
さらに、調整値算出部83dは、式(8)に基づき狭域平滑部85において用いられる輝度情報値V'sを算出する。
Vs'=1-fa-s×(1-Vlimit-s) (8)
【0055】
なお、第2前処理部86は、上記の構成に限定されるものではなく、絶対輝度算出部86a、相対輝度算出部86b、及び調整係数算出部86cのうちいずれか1つのみ、又はいずれか2つのみを備える構成としてもよい。
【0056】
<絶対輝度算出部83a,86a>
絶対輝度算出部83a,86aにおける対象画素毎の処理、及び当該処理の効果について、より詳細に説明する。第1前処理部83において対象画素i
m,nに対応する注目領域をB
l_m,nと表すと、注目領域B
l_m,nは、対象画素i
m,nを凡そ中心とし対象画素i
m,n及びその周辺画素を含む計j
l×j
l個の画素からなる領域に設定される。本実施形態においては、j
l=305に設定される。第1前処理部83の絶対輝度算出部83aは、
図14Aにおいて太線で示された注目領域B
l_m,nの輝度Vの最大値を、対象画素i
m,nについての輝度最大値v
max-l_m,nとして算出する。
【0057】
第2前処理部86において対象画素i
m,nに対応する注目領域をB
s_m,nと表すと、注目領域B
s_m,nは、対象画素i
m,nを凡そ中心とし対象画素i
m,n及びその周辺画素を含む計j
s×j
s個の画素からなる領域に設定される。本実施形態においては、j
s=19に設定される。第2前処理部86の絶対輝度算出部86aは、
図14Bにおいて太線で示された注目領域B
s_m,nの輝度Vの最大値を、対象画素i
m,nについての輝度最大値v
max-s_m,nとして算出する。
【0058】
輝度変換部81から出力された輝度Vをそのまま用いて平滑化処理を行うと、広域平滑値v'mean-l_m,n及び狭域平滑値v'mean-s_m,nが平滑化処理前の輝度vm,nよりも小さくなる場合がある。このような場合、表示画像においてピーク輝度の鈍化や、画像中の低階調領域から高階調領域に向けてぼんやりと暗い領域が現れる所謂黒ハローが知覚され、高階調領域の表示品位が低下する可能性がある。本実施形態において、絶対輝度算出部83a,86aが算出する輝度最大値vmax-l_m,n,vmax-s_m,nは、このような平滑化処理に伴う輝度の減少を回避するための輝度の下限値として機能する。輝度最大値vmax-l_m,n,vmax-s_m,nに基づき設定された対象画素im,nについての輝度下限値vlimit-l_m,n,vlimit-s_m,nを用いて輝度情報値v'l_m,n,v's_m,nを算出することにより、広域平滑値v'mean-l_m及び狭域平滑値v'mean-s_m,nが平滑化処理前の輝度vm,n以上の値となり、ピーク輝度の鈍化及び黒ハローを抑制することが可能となる。
【0059】
なお、絶対輝度算出部83a,86aは、上記の構成に限定されるものではない。例えば、輝度最大値vmax-l_m,nと,vmax-s_m,nにさらに別の演算処理を行った値を出力する構成や、注目領域Bl_m,n,Bs_m,nにおける輝度Vの他の代表値を出力する構成としてもよい。
【0060】
<相対輝度算出部83b,86b>
相対輝度算出部83b,86bにおける対象画素毎の処理、及び当該処理の効果について、より詳細に説明する。第1前処理部83の相対輝度算出部83bは、
図14Aの注目領域B
l_m,nの輝度Vに対してフィルタサイズがj
l×j
lの平均化フィルタ83b1を適用して、対象画素i
m,nに対応する輝度平均値v
mean-l_m,nを算出する。従って、輝度平均値v
mean-l_m,nは、注目領域B
l_m,n内の画素の輝度Vの総和をj
l×j
lで除した値となる。相対輝度算出部83bが用いるLUT83b2には、入力データとしての輝度平均値V
mean-lに対応付けられた出力データとして対応値f
v-lが格納されている。このようなLUT83b2を用いて、輝度平均値v
mean-l_m,nから対象画素i
m,nについての対応値f
v-l_m,nを決定する。
【0061】
第2前処理部86の相対輝度算出部86bは、
図14Bの注目領域B
s_m,nの輝度Vに対してフィルタサイズがj
s×j
sの平均化フィルタ86b1を適用して、対象画素i
m,nに対応する輝度平均値v
mean-s_m,nを算出する。従って、輝度平均値v
mean-s_m,nは、注目領域B
s_m,n内の画素の輝度Vの総和をj
s×j
sで除した値となる。相対輝度算出部86bが用いるLUT86b2には、入力データとしての輝度平均値V
mean-sに対応付けられた出力データとして対応値f
s-lが格納されている。このようなLUT86b2を用いて、輝度平均値v
mean-s_m,nから対象画素i
m,nについての対応値f
s-l_m,nを決定する。
【0062】
第2パネル22を使用することにより、換言すれば、第2パネル22の階調値を小さくすることにより、特に低諧調領域の表示品位を向上させることができる。一方、対象画素の周辺が相対的に高輝度の領域である場合には、当該領域から拡散する光の存在により、相対的に低輝度である対象画素の表現力の変化が知覚されにくいため、第2パネル22を使用する意義が低くなる。本実施形態において、相対輝度算出部83b,86b決定する対応値fv-l_m,n,fs-l_m,nは、注目領域Bl_m,n,Bs_m,n内の対象画素について、第2パネル22を使用することによる表現力の向上効果が知覚可能なレベルで期待できる輝度の下限値として機能する。対応値fv-l_m,n,fs-l_m,nに基づき設定された対象画素im,nについての輝度下限値vlimit-l_m,n,vlimit-s_m,nを用いて輝度情報値v'l_m,n,v's_m,nを算出することにより、低輝度の画素における表現力の向上効果を享受しつつ、第2パネル22の使用を最小限にとどめることが可能となる。
【0063】
ここで、相対輝度算出部83b,86bが用いるLUT83b2,86b2において、対応値fv-l,fv-sは、輝度平均値Vmean-l,Vmean-sの各々に対して単調非減少であることが好ましい。このような構成により、輝度平均値Vmean-l,Vmean-sが比較的低い領域において第2パネル22を使用して表示品位を向上させるとともに、輝度平均値Vmean-l,Vmean-sが比較的高い領域において第2パネル22の使用を最小限にとどめることができる。
【0064】
図15は、相対輝度算出部83bのLUT83b2における輝度平均値V
mean-lと対応値f
v-lの関係の一例を示すグラフである。輝度平均値V
mean-lの増加に伴い対応値f
v-lが直線的に増加し、輝度平均値V
mean-lが比較的高い側では対応値f
v-l=1で一定となる。なお、輝度平均値V
mean-lと対応値f
v-lの関係はこの例に限定されるものではなく、例えば、曲線状に単調非減少となる関係としてもよい。また、相対輝度算出部86bのLUT86b2における輝度平均値V
mean-sと対応値f
v-sの関係は、相対輝度算出部83bのLUT83b2における輝度平均値V
mean-lと対応値f
v-lの関係と同一であってもよく、異なってもよい。
【0065】
なお、相対輝度算出部83b,86bは、上記の構成に限定されるものではない。例えば、輝度平均値vmean-l_m,n,vmean-s_m,nにさらに別の演算処理を行った値、又は注目領域Bl_m,n,Bs_m,nにおける輝度の他の代表値(例えば、中央値、最頻値、ガウシアンフィルタを用いて重みづけを行った値)を用いて、対応値fv-l_m,n,fs-l_m,nを決定する構成としてもよい。
【0066】
<調整係数算出部83c,86c>
調整係数算出部83c,86cにおける対象画素毎の処理、及び当該処理の効果について、より詳細に説明する。第1前処理部83の調整係数算出部83cは、注目領域Bl_m,nの線形信号RGBに対してフィルタサイズがjl×jlの平均化フィルタ83c1を適用して、対象画素im,nに対応する階調平均値RGBmean-l_m,nを算出する。本実施形態においては、注目領域Bl_m,nの画素ごとに色成分の階調値の平均値を算出し、当該平均値に対して平均化フィルタ83c1を適用することにより、階調平均値RGBmean-l_m,nを算出する。調整係数算出部83cが用いるLUT83c2には、入力データとしての階調平均値RGBmean-lに対応付けられた出力データとして調整係数fa-lが格納されている。このようなLUT83c2を用いて、階調平均値RGBmean-l_m,nから対象画素im,nについての調整係数fa-l_m,nを決定する。
【0067】
第2前処理部86の調整係数算出部86cは、注目領域Bs_m,nの線形信号RGBに対してフィルタサイズがjs×jsの平均化フィルタ86c1を適用して、対象画素im,nに対応する階調平均値RGBmean-s_m,nを算出する。本実施形態においては、注目領域Bs_m,nの画素ごとに色成分の階調値の平均値を算出し、当該平均値に対して平均化フィルタ86c1を適用することにより、階調平均値RGBmean-s_m,nを算出する。調整係数算出部86cが用いるLUT86c2には、入力データとしての階調平均値RGBmean-sに対応付けられた出力データとして調整係数fa-sが格納されている。このようなLUT86c2を用いて、階調平均値RGBmean-s_m,nから対象画素im,nについての調整係数fa-s_m,nを決定する。
【0068】
第2パネル22を使用することによる表現力の向上効果は、画素の各色成分の階調値によっても変化する。本実施形態において、調整係数算出部83c,86cが決定する調整係数fa-l_m,n,fa-s_m,nは、注目領域Bl_m,n,Bs_m,n内の対象画素im,nについて、色成分の階調値に基づく第2パネル22の必要度合いを反映した係数として機能する。従って、調整係数fa-l_m,n,fa-s_m,nを用いて輝度情報値v'l_m,n,v's_m,nを算出することにより、低諧調領域における表示品位の向上効果を享受しつつ、第2パネル22の使用を最小限にとどめることが可能となる。
【0069】
ここで、調整係数算出部83c,86cが用いるLUT83c2,86c2において、調整係数fa-l,fa-sは、階調平均値RGBmean-l,RGBmean-sの各々に対して単調非増加であることが好ましい。このような構成により、階調平均値RGBmean-l,RGBmean-sが比較的低い領域において第2パネル22を使用して表示品位を向上させるとともに、階調平均値RGBmean-l,RGBmean-sが比較的高い領域において第2パネル22の使用を最小限にとどめることができる。
【0070】
図16は、調整係数算出部83cのLUT83c2における階調平均値RGB
mean-lと調整係数f
a-lの関係の一例を示すグラフである。横軸は、階調平均値RGB
mean-lを0以上1以下の範囲で正規化した値を示している。階調平均値RGB
mean-lの増加に伴い調整係数f
a-lが直線的に減少し、階調平均値RGB
mean-lが比較的高い側では調整係数f
a-l=0で一定となる。なお、階調平均値RGB
mean-lと調整係数f
a-lの関係はこの例に限定されるものではなく、例えば、曲線状に単調非増加となる関係としてもよい。また、調整係数算出部86cのLUT86c2における階調平均値RGB
mean-sと調整係数f
a-sの関係は、調整係数算出部83cのLUT83c2における階調平均値RGB
mean-lと調整係数f
a-lの関係と同一であってもよく、異なってもよい。
【0071】
なお、調整係数算出部83c,86cは、上記の構成に限定されるものではない。例えば、観察者による各色成分の感度の差異や表示パネルの光学特性を考慮して各色成分に対応する線形信号RGBの信号値に重み付けを行い、重み付けした信号値に対して平均化フィルタ83c1,86c1を適用してもよい。また、注目領域Bl_m,n,Bs_m,nにおける階調値の他の代表値(例えば、中央値、最頻値、ガウシアンフィルタを用いて重みづけを行った値)を用いて調整係数fa-l_m,n,fa-s_m,nを決定する構成としてもよい。
【0072】
<注目領域>
第1前処理部83の絶対輝度算出部83a、相対輝度算出部83b、及び調整係数算出部83cにおける対象画素im,nに対応する注目領域Bl_m,nは、第1平滑化処理部84における対象領域Al_m,nと同一か、対象領域Al_m,nよりも拡大した領域となるように設定することが好ましい。同様に、第2前処理部86の絶対輝度算出部83a、相対輝度算出部83b、及び調整係数算出部83cにおける対象画素im,nに対応する注目領域Bs_m,nは、第2平滑化処理部87における対象領域As_m,nと同一か、対象領域As_m,nよりも拡大した領域となるように設定することが好ましい。
【0073】
注目領域Bl_m,n,Bs_m,nを各平滑化処理部84,87における対象領域Al_m,n,As_m,nと同一とすることにより、対象画素im,nを正面から見た際に絶対輝度算出部83a,86a、相対輝度算出部83b,86b、及び調整係数算出部83c,86cに係る上記の効果を享受することができる。また、注目領域Bl_m,n,Bs_m,nを各平滑化処理部84,87における対象領域Al_m,n,As_m,nよりも拡大させることにより、対象画素im,nを斜め方向から見た際にも絶対輝度算出部83a,86a、相対輝度算出部83b,86b、及び調整係数算出部83c,86cに係る上記の効果を享受することができる。なお、各平滑化処理部84,87における対象領域Al_m,n,As_m,nに対する注目領域Bl_m,n,Bs_m,nの拡大量が大きすぎると、白ハロー等の弊害が起きやすくなる。従って、実際の表示パネルの条件に応じた当該弊害の起きやすさを考慮して、注目領域Bl_m,n,Bs_m,nを各平滑化処理部84,87における対象領域Al_m,n,As_m,nに対してわずかに拡大させることが好ましい。注目領域Bl_m,n,Bs_m,nを各平滑化処理部84,87における対象領域Al_m,n,As_m,nの各々に対して、行方向及び列方向にh画素ずつ拡大させる場合、例えば、1≦h≦15であり、好ましくは、1≦h≦10であり、本実施形態においては、h=4である。hは、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0074】
なお、本実施形態では、第1前処理部83の絶対輝度算出部83a、相対輝度算出部83b、及び調整係数算出部83cにおいては、対象画素im,nに対応する注目領域Bl_m,nを同一とし、第2前処理部86の絶対輝度算出部86a、相対輝度算出部86b、及び調整係数算出部86cにおいては、対象画素im,nに対応する注目領域Bs_m,nを同一とした。注目領域Bl_m,n,Bs_m,nの設定態様はこれに限定されるものではなく、例えば、第1前処理部83の絶対輝度算出部83a、相対輝度算出部83b、及び調整係数算出部83cにおける注目領域、及び第2前処理部86の絶対輝度算出部86a、相対輝度算出部86b、及び調整係数算出部86cにおける注目領域を各々相互に異なるように設定してもよい。
【0075】
4.他の実施形態
本発明は、コンピュータ、又は表示装置に設けられたプロセッサに、表示装置に画像を表示する方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、広域平滑ステップと、狭域平滑ステップと、ブレンドステップと、表示ステップとを備え、前記表示装置は、光源と、積層して配置される複数の表示パネルとを備え、前記複数の表示パネルは、第1パネルと、前記光源及び第1パネルの間に配置される第2パネルとを備え、前記広域平滑ステップでは、入力画像中の対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含む対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って広域平滑値を出力し、前記狭域平滑ステップでは、前記対象画素及び前記対象画素の周辺画素を含み前記広域平滑ステップの前記対象領域よりも小さい対象領域の輝度情報値に対して平滑化処理を行って狭域平滑値を出力し、前記ブレンドステップでは、前記広域平滑値及び前記狭域平滑値を所定のブレンド率でブレンドしたブレンド値を出力し、前記表示ステップでは、前記ブレンド値を用いて生成された画像を第2パネルに表示し、前記輝度情報値は、画素の輝度を用いて生成される、プログラムとして提供することもできる。当該プログラムは、内蔵の記憶部に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。また、外部の記憶部に格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。
【0076】
上記実施形態においては、線形変換部31が、R,G,B成分の各々について10ビットで階調が表現される入力信号RGBγを入力画像データとして受信する構成であったが、入力画像データの形式はこれに限定されるものではない。一例として、入力画像データとして、R,G,B成分の各々について8ビットで階調が表現される入力信号を用いてもよい。
【0077】
上記実施形態においては、対象画素im,nに対応する対象領域Al_m,n,As_m,n、近傍領域An_m,n、及び注目領域Bl_m,n,Bs_m,nとして四角形状の領域を設定したが、各領域の形状はこれに限定されるものではない。好ましくは、対象画素im,nを凡そ中心とし、行方向及び列方向の各々において線対称な形状を有するように各領域を設定する。例えば、対象画素im,nを凡そ中心とする略楕円形状又は略長円形状となるように各領域を設定してもよい。
【0078】
以上、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1:表示装置、2:表示部、3:画像処理部、4:第1画像生成部、5:第1主処理部、6:第1非線形変換部、7:第2画像生成部、8:第2主処理部、9:第2非線形変換部、21:第1パネル、22:第2パネル、23:光源、31:線形変換部、51:係数算出部、52:演算部、81:輝度変換部、82:広域平滑部、83:第1前処理部、83a:絶対輝度算出部、83b:相対輝度算出部、83b1:平均化フィルタ、83c:調整係数算出部、83c1:平均化フィルタ、83d:調整値算出部、84:第1平滑化処理部、85:狭域平滑部、86:第2前処理部、86a:絶対輝度算出部、86b:相対輝度算出部、86b1:平均化フィルタ、86c:調整係数算出部、86c1:平均化フィルタ、86d:調整値算出部、87:第2平滑化処理部、88:ブレンド部、88a:ブレンド率決定部、88a1:LPF、88b:ブレンド処理部、p1:画素、p2:画素