(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】通信管理装置および通信管理方法
(51)【国際特許分類】
H04L 41/0631 20220101AFI20240722BHJP
【FI】
H04L41/0631
(21)【出願番号】P 2024014666
(22)【出願日】2024-02-02
【審査請求日】2024-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397036309
【氏名又は名称】株式会社インターネットイニシアティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】柿島 純
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07536595(US,B1)
【文献】特開2023-082481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 41/0631
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1階層に属する第1デバイスと、前記第1階層の下位の第2階層に属し、前記第1デバイスと通信を行う複数の第2デバイスとを備える階層構造のネットワークで発生した異常に関する管理を行う通信管理装置であって、
前記複数の第2デバイスの各々で検出された、前記ネットワークで発生した異常を示すアラーム信号の検出回数を含む観測データを取得するように構成された第1取得部と、
前記観測データに基づいて、前記複数の第2デバイスの各々で前記アラーム信号を検出している条件のもと前記第1デバイスで異常が発生する確率を、ベイズ推定モデルの尤度関数として設定するように構成された設定部と、
設定された前記尤度関数の値に基づいて、前記第1デバイスでの異常の発生の有無を判定するように構成された判定部と、
前記判定部による判定結果を提示するように構成された提示部と
、
前記尤度関数を未知の入力として、学習済みの機械学習モデルに与え、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行って、前記第1デバイスで異常が発生したことを示す第1分類クラス、および前記複数の第2デバイスのいずれかで異常が発生したことを示す第2分類クラスを含む分類クラスに分類するように構成された分類部と
を備え、
前記学習済みの機械学習モデルは、前記尤度関数と、前記判定結果によって示される前記分類クラスとが関連付けられた学習用データに基づいて、前記尤度関数と前記分類クラスとの関係を学習したモデルであり、
前記提示部は、さらに前記分類部による分類結果を提示する
ことを特徴とする通信管理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の通信管理装置において、
さらに、前記尤度関数と、前記判定結果によって示される前記分類クラスとが関連付けられた
前記学習用データを取得するように構成された第2取得部と、
前記学習用データに基づいて、前記尤度関数と前記分類クラスとの関係を、機械学習モデルを用いて学習するように構成された学習部と、
前記学習部により構築された前記学習済みの機械学習モデルを記憶するように構成された記憶部と、
を備え、
前記分類部は、前記記憶部から前記学習済みの機械学習モデルを読み出して、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行う
ことを特徴とする通信管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信管理装置において、
前記ネットワークは、所定の通信規格によるコアネットワークであり、
前記第1デバイスおよび前記複数の第2デバイスは、前記コアネットワーク内の装置である
ことを特徴とする通信管理装置。
【請求項4】
第1階層に属する第1デバイスと、前記第1階層の下位の第2階層に属し、前記第1デバイスと通信を行う複数の第2デバイスとを備える階層構造のネットワークで発生した異常に関する管理を行う通信管理方法であって、
前記複数の第2デバイスの各々で検出された、前記ネットワークで発生した異常を示すアラーム信号の検出回数を含む観測データを取得する第1取得ステップと、
前記観測データに基づいて、前記複数の第2デバイスの各々で前記アラーム信号を検出している条件のもと前記第1デバイスで異常が発生する確率を、ベイズ推定モデルの尤度関数として設定する設定ステップと、
設定された前記尤度関数の値に基づいて、前記第1デバイスでの異常の発生の有無を判定する判定ステップと、
前記判定ステップでの判定結果を提示する提示ステップと
、
前記尤度関数を未知の入力として、学習済みの機械学習モデルに与え、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行って、前記第1デバイスで異常が発生したことを示す第1分類クラス、および前記複数の第2デバイスのいずれかで異常が発生したことを示す第2分類クラスを含む分類クラスに分類する分類ステップと
を備え、
前記学習済みの機械学習モデルは、前記尤度関数と、前記判定結果によって示される前記分類クラスとが関連付けられた学習用データに基づいて、前記尤度関数と前記分類クラスとの関係を学習したモデルであり、
前記提示ステップは、さらに前記分類ステップでの分類結果を提示する
ことを特徴とする通信管理方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の通信管理方法において、
さらに、前記尤度関数と、前記判定結果によって示される前記分類クラスとが関連付けられた
前記学習用データを取得する第2取得ステップと、
前記学習用データに基づいて、前記尤度関数と前記分類クラスとの関係を、機械学習モデルを用いて学習する学習ステップと、
前記学習ステップで構築された前記学習済みの機械学習モデルを記憶部に記憶する記憶ステップと、
を備え、
前記分類ステップは、前記記憶部から前記学習済みの機械学習モデルを読み出して、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行う
ことを特徴とする通信管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信管理装置および通信管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、論理的な階層構造を有するネットワークやシステムで発生する障害などの異常箇所を特定する技術が知られている。例えば、階層構造の上位側のデバイスと下位側のデバイスとが互いに通信を行う通信ネットワークにおいて、上位側のデバイスで障害が発生した場合には、上位側のデバイスだけでなく、下位側のデバイスでも障害の発生を示すアラームが検出される。また、上位側のデバイスで障害が発生した場合に、下位側の全てのデバイスでアラーム信号が検出されないケースもあることが知られている。
【0003】
このように、下位側のデバイスに波及した障害の発生を示すアラーム信号は、通信ネットワークにおける障害の発生箇所に係るデバイスを必ずしも示すものではない。そのため、どのデバイスで障害が発生しているのかを特定する場合には、上位側および下位側のデバイスのそれぞれのログを解析する必要があった。そのため、障害箇所の特定に多大な時間を要する場合があった。
【0004】
例えば、特許文献1は、階層構造の通信ネットワークにおける最上位のルータに接続されたサーバが、下位側のルータを介して受信したパケットを解析して、異常が発生したルータを特定する技術を開示する。しかし、特許文献1が開示する技術では、既存の通信ネットワークに異常箇所を特定するための専用のサーバを設ける必要があり、また、パケットの解析を必要とするため、システム構造が複雑化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の技術によれば、階層構造のネットワークで異常が発生した場合に、より簡易な構成で異常が発生した箇所を特定することが困難であった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、階層構造のネットワークで異常が発生した場合に、より簡易な構成で異常が発生した箇所を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信管理装置は、第1階層に属する第1デバイスと、前記第1階層の下位の第2階層に属し、前記第1デバイスと通信を行う複数の第2デバイスとを備える階層構造のネットワークで発生した異常に関する管理を行う通信管理装置であって、前記複数の第2デバイスの各々で検出された、前記ネットワークで発生した異常を示すアラーム信号の検出回数を含む観測データを取得するように構成された第1取得部と、前記観測データに基づいて、前記複数の第2デバイスの各々で前記アラーム信号を検出している条件のもと前記第1デバイスで異常が発生する確率を、ベイズ推定モデルの尤度関数として設定するように構成された設定部と、設定された前記尤度関数の値に基づいて、前記第1デバイスでの異常の発生の有無を判定するように構成された判定部と、前記判定部による判定結果を提示するように構成された提示部とを備える。
【0009】
また、本発明に係る通信管理装置において、さらに、前記尤度関数を未知の入力として、学習済みの機械学習モデルに与え、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行って、前記第1デバイスで異常が発生したことを示す第1分類クラス、および前記複数の第2デバイスのいずれかで異常が発生したことを示す第2分類クラスを含む分類クラスに分類するように構成された分類部を備え、前記提示部は、前記分類部による分類結果を提示してもよい。
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信管理装置は、さらに、前記尤度関数と、前記判定結果によって示される前記分類クラスとが関連付けられた学習用データを取得するように構成された第2取得部と、前記学習用データに基づいて、前記尤度関数と前記分類クラスとの関係を、機械学習モデルを用いて学習するように構成された学習部と、前記学習部により構築された前記学習済みの機械学習モデルを記憶するように構成された記憶部と、を備え、前記分類部は、前記記憶部から前記学習済みの機械学習モデルを読み出して、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行ってもよい。
【0011】
また、本発明に係る通信管理装置において、前記ネットワークは、所定の通信規格によるコアネットワークであり、前記第1デバイスおよび前記複数の第2デバイスは、前記コアネットワーク内の装置であってもよい。
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信管理方法は、第1階層に属する第1デバイスと、前記第1階層の下位の第2階層に属し、前記第1デバイスと通信を行う複数の第2デバイスとを備える階層構造のネットワークで発生した異常に関する管理を行う通信管理方法であって、前記複数の第2デバイスの各々で検出された、前記ネットワークで発生した異常を示すアラーム信号の検出回数を含む観測データを取得する第1取得ステップと、前記観測データに基づいて、前記複数の第2デバイスの各々で前記アラーム信号を検出している条件のもと前記第1デバイスで異常が発生する確率を、ベイズ推定モデルの尤度関数として設定する設定ステップと、設定された前記尤度関数の値に基づいて、前記第1デバイスでの異常の発生の有無を判定する判定ステップと、前記判定ステップでの判定結果を提示する提示ステップとを備える。
【0013】
また、本発明に係る通信管理方法において、さらに、前記尤度関数を未知の入力として、学習済みの機械学習モデルに与え、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行って、前記第1デバイスで異常が発生したことを示す第1分類クラス、および前記複数の第2デバイスのいずれかで異常が発生したことを示す第2分類クラスを含む分類クラスに分類する分類ステップを備え、前記提示ステップは、前記分類ステップでの分類結果を提示してもよい。
【0014】
また、本発明に係る通信管理方法において、さらに、前記尤度関数と、前記判定結果によって示される前記分類クラスとが関連付けられた学習用データを取得する第2取得ステップと、前記学習用データに基づいて、前記尤度関数と前記分類クラスとの関係を、機械学習モデルを用いて学習する学習ステップと、前記学習ステップで構築された前記学習済みの機械学習モデルを記憶部に記憶する記憶ステップと、を備え、前記分類ステップは、前記記憶部から前記学習済みの機械学習モデルを読み出して、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行ってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、観測データに基づいて、複数の第2デバイスの各々でアラーム信号を検出している条件のもと第1デバイスで異常が発生する確率を、ベイズ推定モデルの尤度関数として設定し、設定された尤度関数の値に基づいて第1デバイスでの異常の発生の有無を判定する。そのため、階層構造のネットワークで異常が発生した場合に、より簡易な構成で異常が発生した箇所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る通信管理装置を含む推定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る通信管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態に係る通信管理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2の実施の形態に係る通信管理装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第2の実施の形態に係る通信管理装置が備える学習部を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第2の実施の形態に係る通信管理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、
図1から
図6を参照して詳細に説明する。以下の説明において、論理的な階層構造のネットワークとして、5G規格に準拠するコアネットワーク3を含む通信ネットワークを例に挙げて説明する。また、上位側の第1階層に属する第1デバイスおよび下位側の第2階層に属する複数の第2デバイスは、コアネットワーク3内の装置である場合を例示する。さらに、第1デバイスがUDR32(Unified Data Repository:統合データリポジトリ)であり、複数の第2デバイスがUDM31(Unified Data Management:統合データ管理)である場合について説明する。
【0018】
また、ネットワークで発生した異常には、コアネットワーク3が備えるUDR32やUDM31などの制御装置のハードウェアモジュールの故障などが含まれる。
【0019】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る通信管理装置1を備える通信管理システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る通信管理システムは、階層構造を有するコアネットワーク3の上位側の階層に属するUDR32、および下位側の階層に属する複数のUDM31の対向装置間でアラーム信号が検出された場合に、UDR32およびUDM31側のどちらで異常が発生しているのかを特定する。
【0020】
[通信管理システムの構成]
図1に示すように、本実施の形態に係る通信管理システムは、通信管理装置1、複数の基地局2、コアネットワーク3、および監視装置4を備える。通信管理装置1と監視装置4とは、LANやWAN、インターネットなどのネットワークNWを介して互いに接続されている。監視装置4は、LANやWANなどのネットワークL2を介してコアネットワーク3に接続する。さらに、複数の基地局2は、高速回線のネットワークL1を介してコアネットワーク3に接続される。
【0021】
基地局2は、5G通信規格に対応した無線基地局で構成され、通信エリアに在圏するユーザ端末とコアネットワーク3との間の通信を中継する。基地局2は、5Gモバイル通信ネットワーク内に配置された複数の基地局2が含まれる。各基地局2は、ネットワークL1を介して、AMF30に接続する。
【0022】
コアネットワーク3は、制御プレーン(C-plane)内のノードとして、複数のAMF(Access and Mobility Management Function)30、複数のUDM31、およびUDR32を備える。なお、コアネットワーク3が備える他の機能ノードについては図示を省略している。コアネットワーク3は閉域IP網で構成される。
【0023】
本実施の形態では、複数の基地局2ならびにコアネットワーク3が備える複数のAMF30、複数のUDM31、およびUDR32は論理的な階層構造を取る。階層構造の最上位の階層(第1階層)に属するUDR32(第1デバイス)は、下位側の階層(第2階層)に属する複数のUDM31(第2デバイス)と通信可能に接続する。複数のUDM31の各々は、さらに下位側の階層に属する複数のAMF30と通信可能に接続する。複数のAMF30の各々は、さらに、最も下位の階層に属する複数の基地局2と接続する。
【0024】
AMF30は、モビリティ制御機能を提供し、位置登録、ページング、およびハンドオーバ等の移動制御を行う装置である。AMF30は、複数台設けられ、1台のAMF30に対してk台(kは正の整数)の基地局2が接続されている。
【0025】
UDM31は、ユーザの契約情報や認証情報を管理する装置である。UDM31は、複数台(n台、nは2以上の整数)設けられ、1台のUDM31に対してm台(mは正の整数)のAMF30が接続されている。UDM31は、自装置で発生した異常を検出するとアラーム信号を生成して出力する。本明細書では、他の装置で発生した異常に基づいて発生したアラーム信号を検出する場合の他、自装置で発生した異常の検出によりアラーム信号を出力することをアラーム信号の検出という。
【0026】
UDM31で発生した異常に基づいてUDM31で検出されたアラーム信号は、上位側のUDR32および下位側のAMF30含むコアネットワーク3の装置で検出される。同様に、上位側のUDR32で発生した異常に基づいてUDR32で検出されたアラーム信号は、下位側のUDM31でも検出される。
【0027】
UDR32は、ユーザ端末の加入者識別番号(International Mobile Subscriber Identity:IMSI)や在圏情報を保持した加入者プロファイルを格納する装置である。UDR32は、一例として1台設けられ、UDR32には、n台のUDM31が通信可能に接続されている。UDR32は自装置で発生した異常の検出に基づいて、アラーム信号を検出する。この場合、UDR32で検出されたアラーム信号はコアネットワーク3に波及し、下位側のUDM31やAMF30においてもアラーム信号が検出される。一方、UDR32は、下位側のUDM31で発生した異常に基づくアラーム信号を検出する。
【0028】
監視装置4は、例えば、コアネットワーク3の外部に設けられ、AMF30、UDM31、およびUDR32の各々を監視し、コアネットワーク3におけるアラーム信号の発生状況および異常の発生についての集約監視を行うオペレーションシステムである。監視装置4は、AMF30、UDM31、およびUDR32の各々で検出されたアラーム信号のログを記録する。また、監視装置4は、AMF30、UDM31、およびUDR32で発生した異常の発生ログを記録することができる。監視装置4は、ネットワークNWを介して、通信管理装置1にアラーム信号の検出ログおよび異常発生ログを送出することができる。
【0029】
[通信管理装置の機能ブロック]
通信管理装置1は、第1取得部10、設定部11、判定部12、第1記憶部13、および提示部14を備える。通信管理装置1は、最上位の第1階層に属するUDR32と、第1階層の下位の第2階層に属し、UDR32と通信を行う複数のUDM31とを備える階層構造を有するコアネットワーク3で発生した異常に関する管理を行う。また、通信管理装置1は、観測データに基づいて、複数のUDM31の各々でアラーム信号を検出している条件のもとUDR32で異常が発生する確率を、ベイズ推定モデルの尤度関数として設定し、UDR32での異常の発生の有無を判定する。
【0030】
第1取得部10は、複数のUDM31の各々で検出された、コアネットワーク3で発生した異常を示すアラーム信号の検出回数を含む観測データを取得する。より具体的には、第1取得部10は、設定された期間に各UDM31で検出されたアラーム信号のログを監視装置4から取得し、設定された期間でアラーム信号が検出された回数をUDM31ごとに取得する。例えば、1回のアラーム信号は、1秒間にわたって通知される。第1取得部10は、設定された期間として、1000秒間に各UDM31でアラーム信号が何回検出されたかをカウントすることができる。
【0031】
第1取得部10は、さらに、監視装置4から、UDR32で検出されたアラーム信号のログを取得し、設定された期間でUDR32によってアラーム信号が検出された回数を取得することができる。
【0032】
設定部11は、観測データに基づいて、複数のUDM31の各々でアラーム信号を検出している条件のもとUDR32で異常が発生する確率を、ベイズ推定モデルの尤度関数として設定する。設定部11は、1~n台までのUDM31の各々について、尤度関数P(Yi|X)=(アラーム信号の検出回数)/(設定された期間、例えば、1000秒)により求めることができる。上記(アラーム信号の検出回数)は、(アラーム信号の発生回数)×(アラーム信号の送信間隔)で計算される。例えば、1秒間隔のアラーム信号が200回発生する場合、尤度関数P(Yi|X)は、(200×1秒)/(1000秒)で求められる。
【0033】
本実施の形態で用いるベイズ推定モデルは、UDR32で異常が発生している確率を事前分布P(X)とし、事前分布P(X)に対して尤度関数P(Yi|X)で更新した確率分布を事後分布P(X|Y)とする。事後分布P(X|Y)は、UDR32で異常が発生している条件のもと複数のUDM31の各々でアラーム信号を検出する確率である。このように、ベイズ推定モデルは、ある条件における事象の確率を、既知の確率と観測データから求める確率モデルである。以下、ベイズ推定モデルのパラメータについて説明する。
【0034】
ベイズ推定モデルでは、まず、事象Xを、ある原因となった事象とする。また、事象Yを、原因により起きたと想定される事象とする。事象X、Yは確率変数として扱われる。具体的には、事象Xは、UDR32で異常が発生している事象、事象Yは、複数のUDM31およびUDR32間でアラーム信号が検出されている事象として定義される。本実施の形態では、事象Yは、特に、n台のUDM31の各々についての事象Y={Y1,Y2,…,Yn-1,Yn}として定義され、各UDM31でアラーム信号が検出されている事象が用いられる。
【0035】
事象Xが発生する確率分布P(X)を、観測データが与えられる前のパラメータの分布である事前分布として仮定することができる。また、事象Yが発生する確率分布P(Y)である、複数のUDM31およびUDR32間でアラーム信号が検出されている確率分布は、周辺尤度として表される。
【0036】
尤度関数P(Yi|X)は、観測データの表現方法であり、パラメータの値が条件付けされているときに、観測データYがどれだけモデルから発生しやすいかを表す。具体的には、各UDM31でアラーム信号が検出されている条件のもと、UDR32で異常が発生する確率として表される。本実施の形態では、尤度関数P(Yi|X)は、第1取得部10によって取得された観測データに基づいて設定される。より詳細には、前述したように、UDM31の各々について、(アラーム信号の検出回数)/(設定された期間、例えば、1000秒)により得られる値P(Yi|X)を尤度関数P(Y|X)として用いる。上記(アラーム信号の検出回数)は、アラーム信号の発生回数にアラーム信号の送信間隔(例えば、1秒)を掛けた値により求められる。
【0037】
ベイズ推定では、ベイズの定理を利用して、尤度関数、事前分布、および観測データから得られる情報を反映させ、事象Yが発生した条件のもと、事象Xが発生する確率である事後分布P(X|Y)を推定することができる。この場合、事後分布P(X|Y)は、UDR32で異常が発生した条件のもと、複数のUDM31の少なくともいずれかでアラーム信号が検出されている確率分布である。本実施の形態では、次式(1)のベイズの定理に基づいた、次式(2)で表されるベイズ推定式を用いる。
【0038】
【0039】
上式(1)の分母にP(Y)=ΣXP(Y|X)P(X)を代入すると、次式(2)で表される。
【0040】
【0041】
上式(1)のベイズの定理、および上式(2)のベイズ推定式では、一般に、訓練データのデータ数Nが十分に大きい場合(N→∞)には、尤度関数P(Y|X)が事前分布P(X)より支配的になる。すなわち、事後分布P(X|Y)と尤度関数P(Y|X)との関係は、次式(3)で表される。
P(X|Y)≒P(Y|X) ・・・(3)
【0042】
本実施の形態では、上式(1)のベイズの定理、および上式(2)のベイズ推定式に基づいた単純ベイズにより、尤度関数P(Y|X)が設定される。
【0043】
単純ベイズは、クラス分類の結果が確率として得られる生成モデルの一つである。単純ベイズでは、目的変数が与えられた際、説明変数間の条件付き独立を仮定する。具体的には、事後分布P(X|Y)である、事象Yの条件のもとの事象Xの確率分布において、Yは説明変数であり、Xはクラスを表す目的変数を示す。したがって、Yを入力すると各クラスXの確率として、UDR32で異常が発生している確率、および発生していない確率が出力される。
【0044】
本実施の形態では、上式(3)より、設定部11は尤度関数P(Y|X)の事象Xを説明変数、および事象Yを目的変数として考える。事象Yは、n個の多次元変数の集合であるY={Y1,Y2,…,Yn-1,Yn}で与えられ、各変数Yiは、y1,y2,…,yn-1,ynの値を持つ。すなわち、各変数Yiは、各UDM31でアラーム信号が検出されていることを示す。前述したように、変数Yiは、それぞれ独立していると仮定され、尤度関数P(Y|X)は次式(4)の確率の積で表すことができる。
【0045】
【0046】
判定部12は、設定部11により設定された尤度関数P(Y|X)の値に基づいて、UDR32での異常の発生の有無を判定する。判定部12は、事前に設定されたしきい値を用いて、UDR32での異常の発生の有無を判定することができる。しきい値は、任意の値(例えば、n台のUDM31の場合に、0.8n)を設定することができる。この場合、判定部12は、尤度関数P(Y|X)の値が設定されたしきい値を超えた場合に、UDR32で異常が発生したと判定する。しきい値を超えない場合には、判定部12は、UDM31側で異常が発生したと判定することができる。なお、しきい値は、例えば、別途行われる異常発生箇所の解析で特定された実際の異常発生箇所に基づいて、値を調整することができる。
【0047】
第1記憶部13は、上式(1)から(4)のベイズ推定モデルを記憶する。
【0048】
提示部14は、判定部12による判定結果を提示する。提示部14は、例えば、ネットワークNWを介して外部のサーバに判定結果を提示することができる。また、提示部14は、判定結果を表示装置107に出力させることができる。
【0049】
[通信管理装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する通信管理装置1を実現するハードウェア構成の一例について、
図2を用いて説明する。
【0050】
図2に示すように、通信管理装置1は、例えば、バス101を介して接続されるプロセッサ102、主記憶装置103、通信インターフェース104、補助記憶装置105、入出力I/O106を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。また、通信管理装置1は、バス101を介して接続される表示装置107を備えることができる。
【0051】
主記憶装置103には、プロセッサ102が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ102と主記憶装置103とによって、
図1に示した第1取得部10、設定部11、判定部12など通信管理装置1の各機能が実現される。
【0052】
通信インターフェース104は、通信管理装置1と各種外部電子機器との間をネットワーク接続するためのインターフェース回路である。
【0053】
補助記憶装置105は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。補助記憶装置105には、記憶媒体としてハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリを使用することができる。
【0054】
補助記憶装置105は、通信管理装置1が実行するベイズ推定プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。補助記憶装置105によって、
図1で説明した第1記憶部13が実現される。さらには、例えば、上述したデータやプログラムなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0055】
入出力I/O106は、外部機器からの信号を入力したり、外部機器へ信号を出力したりする入出力装置である。
【0056】
表示装置107は、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイなどによって構成され、提示部14を実現する。
【0057】
[通信管理装置の動作]
次に、上述した構成を有する通信管理装置1の動作を、
図3のフローチャートを参照して説明する。以下では、コアネットワーク3を含む階層構造のネットワークにおいて、最上位の階層に属するUDR32、および下位側の階層に属するUDM31でアラーム信号が検出されているものとする。
【0058】
まず、第1取得部10は、監視装置4から、複数のUDM31の各々で検出されたアラーム信号の回数を含む観測データを取得する(ステップS1)。第1取得部10は、監視装置4から、設定された期間にn台のUDM31の各々で検出されたアラーム信号の回数を取得することができる。
【0059】
次に、設定部11は、ステップS1で取得された観測データに基づいて、複数のUDM31の各々でアラーム信号を検出している条件のもとUDR32で異常が発生する確率を、ベイズ推定モデルの尤度関数P(Y|X)として設定する(ステップS2)。本実施の形態では、設定部11は、ステップS1で取得された観測データに基づいて、UDM31の各々について、(アラーム信号の検出回数)/(設定された期間、例えば、1000秒)により得られる値P(Yi|X)を尤度関数P(Y|X)として設定する。1秒間隔でアラーム信号が送信され、200回のアラーム信号が発生する場合、上記の(アラーム信号の検出回数)は200回×1秒となる。さらに、この場合、尤度関数P(Y|X)は、200×1秒/1000秒で求められる。
【0060】
ベイズ推定モデルは、UDR32で異常が発生している確率を事前分布P(X)とし、事前分布P(X)に対して尤度関数P(Yi|X)で更新した事後分布P(X|Y)を、UDR32で異常が発生している条件のもと複数のUDM31の各々がアラーム信号を検出している確率として定義する。
【0061】
設定部11は、上式(2)のベイズ推定式に基づいた単純ベイズ、および上式(3)の近似関係P(X|Y)≒P(Y|X)より、尤度関数P(Y|X)の事象Xを説明変数、および事象Y={Y1,Y2,…,Yn-1,Yn}を目的変数として考える。各変数Yiは、各UDM31でアラーム信号が検出されていることを示す。
【0062】
設定部11は、変数Yiがそれぞれ独立しているとの仮定から、上式(4)の確率の積で表された尤度関数P(Y|X)に、1~n台までのUDM31の各々に対応する尤度関数P(Yi|X)の値を代入する。
【0063】
次に、判定部12は、ステップS2で設定された尤度関数P(Y|X)の値が、事前に設定されたしきい値を超えた場合に、UDR32で異常が発生したと判定し、しきい値を超えない場合には、UDM31側で異常が発生したと判定する(ステップS3)。判定部12が判定処理で用いるしきい値は、例えば、後日別途に行われる、コアネットワーク3における実際の異常発生箇所の解析結果に基づいて調整することができる。
【0064】
その後、提示部14は、ステップS3での判定結果を提示する(ステップS4)。例えば、提示部14は、ネットワークNWを介して、外部のサーバ等に判定結果が示す異常発生箇所の情報を送出することができる。
【0065】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る通信管理装置1によれば、観測データに基づいて、複数のUDM31の各々でアラーム信号を検出している条件のもとUDR32で異常が発生する確率を、ベイズ推定モデルの尤度関数P(Y|X)として設定し、設定された尤度関数P(Y|X)に基づいてUDR32で異常が発生しているか否かを判定する。そのため、階層構造における上位側および下位側のデバイスの各々でアラーム信号が検出された場合に、対向装置間のどちらで異常が発生したのかをより簡易な構成で特定することができる。
【0066】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
第1の実施の形態では、単純ベイズに基づいて、観測データから設定された尤度関数P(Y|X)に基づいて上位の階層に属するUDR32での異常の発生の有無を判定する場合について説明した。これに対して、第2の実施の形態では、判定部12による判定結果を学習用データとして用いて機械学習モデルを学習させた学習済みの機械学習モデルを用いて、UDR32およびUDM31のいずれで異常が発生したのかを分類する。
【0068】
[通信管理装置の機能ブロック]
図4は、本実施の形態に係る通信管理装置1Aの構成を示すブロック図である。通信管理装置1Aは、第1学習装置1-1および第2学習装置1-2を備える。第1学習装置1-1は、第1取得部10、設定部11、判定部12、第1記憶部13、および提示部14を備える。第1学習装置1-1は、第1の実施の形態に係る通信管理装置1の機能ブロックに対応する。第2学習装置1-2は、第2記憶部15(記憶部)、第2取得部16、学習部17、および分類部18を備える。本実施の形態は第2学習装置1-2を備える点で第1の実施の形態とは構成が異なる。以下、第1の実施の形態と異なる構成を中心に説明する。
【0069】
第2記憶部15は、尤度関数P(Y|X)と、判定部12による判定結果によって示される分類クラスとを関連付けた学習用データを記憶する。尤度関数P(Y|X)は、設定部11が設定した、観測データに基づいて複数のUDM31の各々でアラーム信号が検出されている条件のもとUDR32で異常が発生する確率である。本実施の形態では、1~n台までのUDM31の各々について、(アラーム信号の検出回数)/(設定された期間、例えば、1000秒)により得られる値P(Yi|X)を尤度関数P(Y|X)として用いる。より詳細には、1秒間隔でアラーム信号が送信される場合、上記(アラーム信号の検出回数)は、(アラーム信号の発生回数)×(送信間隔の1秒)により求められる。例えば、1000秒間隔で200回のアラーム信号が発生した場合、200×1秒/1000秒が尤度関数P(Y|X)の値となる。
【0070】
第2記憶部15が尤度関数P(Yi|X)と関連付けて記憶する分類クラスは、第1学習装置1-1が備える判定部12の判定結果、すなわちUDR32での異常の発生、およびUDM31側での異常の発生をそれぞれ第1分類クラス、および第2分類クラスとした分類クラスである。分類クラスは、尤度関数P(Yi|X)に対して与えられる正解ラベルである。
【0071】
なお、第2記憶部15は、判定部12による判定結果が、実際の故障箇所と異なる場合には、正しい故障箇所を示す正解ラベルを尤度関数P(Yi|X)に付した学習用データを記憶する。例えば、判定部12による判定結果としてUDR32で異常が発生しているという結果が得られた後に、別途、故障箇所の解析が行われ、実際の故障箇所がUDM31であったことが判明したとする。この場合、第2記憶部15は、尤度関数P(Yi|X)に対して、第1分類クラスではなく、第2分類クラスを正解ラベルとして付与した学習用データを記憶する。
【0072】
第2取得部16は、尤度関数P(Yi|X)と分類クラスとが関連付けられている学習用データを第2記憶部15から取得する。より具体的には、第2取得部16は、第2記憶部15に一定数の学習用データが蓄積された場合に、学習用データを取得する構成とすることができる。また、第2取得部16は、学習済み機械学習モデルを用いた推論処理で用いる未知の入力を取得する。具体的には、第2取得部16は、第1学習装置1-1が備える設定部11が設定した、n台のUDM31の各々に対応する尤度関数P(Yi|X)を、未知の入力として取得することができる。
【0073】
学習部17は、学習用データに基づいて、尤度関数P(Y
i|X)と分類クラスとの関係を機械学習モデルにより学習する。
図5は、本実施の形態における機械学習モデルとして用いるニューラルネットワークの構造を示す模式図である。ニューラルネットワークは、入力層x、隠れ層h、出力層yからなる多層構造を用いることができる。入力層xの各入力ノードには、第1学習装置1-1の設定部11によって設定された尤度関数P(Y
i|X)が与えられる。入力層xへ与えらえる入力信号は、n台のUDM31の各々に対応する尤度関数P(Y
1|X),P(Y
2|X),・・・,P(Y
n-1|X),P(Y
n|X)の値である。
【0074】
図5に示すニューラルネットワークは、入力層xに与えられたn台のUDM31の各々に対応する尤度関数P(Y
i|X)に対して、入力の重み付け総和に活性化関数を適用し、しきい値処理により決定された出力を出力層yに渡す。
図5に示すように、入力ノードの数は、UDM31の台数に対応するn個設けられる。
【0075】
出力層yの各出力ノードは、第1分類クラスおよび第2分類クラスからなる二値分類のクラスを示す。出力層yは、各クラスに属する確率を出力することができる。
図5の例に示すように、第1分類クラスとして「UDR32で異常が発生」、および第2分類クラスとして「UDM31で異常が発生」とすることができる。
【0076】
学習部17は、各UDM31に対応する尤度関数P(Yi|X)が入力として与えられた時の出力が、学習用データのラベルに示される分類クラスの値となるように、ノード間の結線の重みwを調整する。学習部17は、例えば、誤差逆伝搬などを利用して、与えた入力値に対して、得られた出力値を比較し、それぞれの重みwの誤差を調べて逆方向に伝搬していき、最終的に重みwなどのパラメータを決定することができる。このような学習処理を経て、学習部17は、学習済みのニューラルネットワークを構築する。
【0077】
学習部17によって構築された学習済みのニューラルネットワークは、第2記憶部15に記憶される。
【0078】
図4に戻り、分類部18は、尤度関数P(Y
i|X)を未知の入力として学習済みの機械学習モデルに与え、学習済みの機械学習モデルの演算を行って、第1分類クラスおよび第2分類クラスを含む分類クラスに分類する。分類部18は、第2取得部16が取得した尤度関数P(Y
i|X)を未知の入力として学習済みの機械学習モデルに与える。尤度関数P(Y
i|X)は、ベイズ推定モデルを用いた学習を行う第1学習装置1-1の設定部11によって設定された確率分布である。また、第1分類クラスは、UDR32で異常が発生したことを示し、第2分類クラスは、複数のUDM31のいずれかで異常が発生したことを示す。
【0079】
分類部18は、未知の入力に対して、学習済みの重みwなどのパラメータの積和演算および活性化関数によるしきい値処理を行って分類結果を出力する。分類部18による分類結果は、提示部14によって提示される。分類結果は、ネットワークNWを介して外部のサーバ等に送出することができる。
【0080】
[通信管理装置の動作]
上述した構成を有する通信管理装置1Aの動作について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
図6に示すステップS1からステップS4までの処理は、第1学習装置1-1によって実行され、第1の実施の形態で説明した通信管理装置1の動作に係る処理と同様である。以下、ステップS10以降の処理について説明する。
【0081】
ステップS4での判定処理の後、第2記憶部15は、尤度関数P(Yi|X)に分類クラスを関連付けた学習用データを記憶する(ステップS10)。学習用データを構成する尤度関数P(Yi|X)はステップS2で設定された値であり、分類クラスはステップS4の判定結果に対応する値である。より詳細には、学習用データは、n台のUDM31の各々に対応する尤度関数P(Yi|X)に対して、ステップS4での判定結果が示す分類クラスを正解ラベルとして付したデータである。
【0082】
なお、ステップS10で記憶される学習用データの分類クラスは、ステップS4での判定結果に対して、別途行われる異常発生箇所の解析により正しい異常発生箇所に対応する分類クラスが反映された値である。次に、第2取得部16は、設定された数の学習用データが第2記憶部15に蓄積された場合(ステップS11:YES)、第2記憶部15から学習用データを取得する(ステップS12)。
【0083】
一方、ステップS10において第2記憶部15に設定された数の学習用データが蓄積されていない場合(ステップS11:NO)、ステップS1からステップS4までの処理が繰り返される。その後、学習部17は、ステップS12で取得した学習用データを用いて、尤度関数P(Yi|X)と分類クラスとの関係を、機械学習モデルを用いて学習する(ステップS13)。ステップS13で構築された学習済みの機械学習モデルは、第2記憶部15に記憶される。
【0084】
次に、分類部18は、ステップS13で構築された学習済みの機械学習モデルを第2記憶部15から読み出して、分類処理を行う(ステップS14)。分類部18は、第2取得部16が取得した尤度関数P(Yi|X)を未知の入力として学習済みの機械学習モデルに与え、学習済みの機械学習モデルの演算を行って分類クラスを出力する。
【0085】
その後、提示部14は、ステップS14で得られた分類結果を提示する(ステップS15)。例えば、提示部14は、ネットワークNWを介して外部のサーバに分類結果を送出することができる。分類結果は、未知の入力に対する分類クラスを示す。具体的には、UDR32およびUDM31でアラーム信号が検出された場合に、UDR32で異常が発生したことを示す第1分類クラスに属するか、あるいは、UDM31側で異常が発生したことを示す第2分類クラスに属するのかが示される。
【0086】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る通信管理装置1Aによれば、第1学習装置1-1で得られた判定結果を学習用データとして用いて、第2学習装置1-2が尤度関数P(Yi|X)と分類クラスとの関係を学習した学習済み機械学習モデルを構築する。したがって、例えば、サービス開始からの経過時間が比較的短いような場合において、少ない観測データしか取得できない場合には、ベイズ推定モデルを利用した判定処理を行うことができる。一方において、一定数以上の学習用データが蓄積された場合には、教師あり学習を行う機械学習モデルを学習して分類処理を行うことができる。そのため、サービスの開始から時間の経過に沿って適した学習処理を行うことができる。さらには、より精度の高い分類処理によって階層構造のネットワークにおける異常発生箇所を特定することができる。
【0087】
なお、上述の実施の形態では、第1学習装置1-1と第2学習装置1-2とが同じ装置に設けられている構成を例示した。しかし、第1学習装置1-1と第2学習装置1-2とは、それぞれ別個の装置として構成することができる。この場合、第1学習装置1-1、および第2学習装置1-2はそれぞれ
図2で説明したハードウェア構成を有することができる。
【0088】
また、上述の実施の形態では、階層構造を有するネットワークにおける異常発生箇所について、コアネットワーク3の制御装置でアラーム信号が検出された際の異常発生箇所を特定する場合について説明した。しかし、異常発生箇所を特定する対象は、階層構造を有するネットワークにおいてアラーム信号が波及する構造であれば、コアネットワーク3の通信設備に限らない。例えば、PSTN(Public Switched Telephone Networks)などの、回線交換機と端末とで構成される階層構造に対しても適用することができる。
【0089】
また、上述した実施の形態では、機械学習モデルとして、入力層、隠れ層、および出力層からなるニューラルネットワークを例示した。ニューラルネットワークは、教師あり学習により分類問題を扱うモデルであれば、例えば、隠れ層を多層化した深層学習モデルとすることができる。その他にも、機械学習モデルとして、SVM、決定木、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰などを用いることができる。
【0090】
なお、上述の実施の形態では、5Gに準拠する通信管理システムである場合を例示したが、3G/LTEや6G等に準拠する通信管理システムであってもよい。
【0091】
以上、本発明の通信管理装置および通信管理方法における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0092】
1、1A…通信管理装置、1-1…第1学習装置、1-2…第2学習装置、10…第1取得部、11…設定部、12…判定部、13…第1記憶部、14…提示部、15…第2記憶部、16…第2取得部、17…学習部、18…分類部、2…基地局、3…コアネットワーク、4…監視装置、30…AMF、31…UDM、32…UDR、101…バス、102…プロセッサ、103…主記憶装置、104…通信インターフェース、105…補助記憶装置、106…入出力I/O、107…表示装置、L1、L2、NW…ネットワーク。
【要約】
【課題】階層構造のネットワークで異常が発生した場合に、より簡易な構成で異常が発生した箇所を特定することを目的とする。
【解決手段】
通信管理装置1は、複数のUDM31の各々で検出された、ネットワークで発生した異常を示すアラーム信号の検出回数を含む観測データを取得する第1取得部10と、観測データに基づいて、複数のUDM31の各々でアラーム信号を検出している条件のもとUDR32で異常が発生する確率を、ベイズ推定モデルの尤度関数として設定する設定部11と、設定された尤度関数の値に基づいて、UDR32での異常の発生の有無を判定する判定部12と、判定部12による判定結果を提示する提示部14とを備える。
【選択図】
図1