(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ヒドロキシペンチル安息香酸ジエステル化合物、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C07C 69/78 20060101AFI20240722BHJP
C07C 205/59 20060101ALI20240722BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20240722BHJP
C07C 201/12 20060101ALI20240722BHJP
A61K 31/235 20060101ALI20240722BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240722BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C07C69/78 CSP
C07C205/59
C07C67/08
C07C201/12
A61K31/235
A61P9/00
A61P25/28
(21)【出願番号】P 2024502699
(86)(22)【出願日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 CN2022112512
(87)【国際公開番号】W WO2023165094
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】202210205661.2
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520101410
【氏名又は名称】中国医学科学院薬用植物研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ ▲暁▼波
(72)【発明者】
【氏名】田 ▲瑜▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ ▲瀟▼
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113402543(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104224772(CN,A)
【文献】特表2006-500367(JP,A)
【文献】国際公開第2008/026678(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の化合物。
(ここで、Rは、
であり、
Xは、H、ニトロ基、アミノ基、F、Cl、Br、又はIである。)
【請求項2】
下記式のものである請求項1に記載の化合物。
(ここで、Rは、
であり、
Xは、H、ニトロ基、アミノ基、F、Cl、Br、又はIである。)
【請求項3】
下記化合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体と、を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物を唯一の活性成分とすることを特徴とする請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物を含有することを特徴とする医薬製剤。
【請求項7】
その剤形は、経口投与剤形、注射剤形、又は経皮剤形である、ことを特徴とする請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
心脳血管疾患、アルツハイマー病、又は糖尿病誘発性血管障害を治療する他の活性成分をさらに含有することを特徴とする請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項9】
下記ステップを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物の調製方法。
(ここで、R'は、
であり、
Rは、
であり、
Xは、H、ニトロ基、アミノ基、F、Cl、Br、又はIであり、
スキーム1は、
n-ブチリデンフタリド又は置換のn-ブチリデンフタリド類物質(R-1)を接触水素化して二重結合を還元し、ブチルフタリド又は置換のブチルフタリドラセミ体(R-2)を得るステップaと、
1)又は2):1)加熱反応、温度20℃~120℃、1h~5h、2)マイクロ波反応、温度20℃~60℃、30min~1hから選択される反応条件で、R-2を強塩基で加水分解し、反応終了後、希酸でpHを2~4に調整し、酢酸エチル又はエチルエーテルで抽出して濃縮し、中間体R-3を得、R-3を順次無水コハク酸、DMAP及びEt
3Nと混合して反応させ、R-4を得るステップbと、
R-4をDCCで触媒して、d-ボルネオールと縮合反応させ、目的生成物R-5を得るステップcと、を含み、
スキーム2
化合物R-2を化学的にキラル分割し、キラル化合物L-1を得た後、上記のステップb~cによって、目的生成物L-4を得る。)
【請求項10】
ステップaにおける水素化反応の触媒は、パラジウム炭素又はラネーニッケルから選択されることを特徴とする請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
ステップbにおける強塩基は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選択され、強塩基とR-2とのモル比が5:1~1:1であることを特徴とする請求項9に記載の調製方法。
【請求項12】
ステップbにおける無水コハク酸とR-2とのモル比が5:1~1:1であり、Et
3NとR-2とのモル比が5:1~1:1であり、ステップcにおけるd-ボルネオールとR-4とのモル比が10:1~2:1であることを特徴とする請求項9に記載の調製方法。
【請求項13】
心脳血管疾患、アルツハイマー病、又は糖尿病誘発性血管障害を治療する薬物の調製における、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
前記心脳血管疾患は虚血性心脳血管疾患であり、前記糖尿病誘発性血管障害は糖尿病性脳症、糖尿病性心疾患、糖尿病性網膜症、又は糖尿病性腎症である請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記虚血性心脳血管疾患は脳梗塞又は心筋梗塞である請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2022年3月4日に中国特許庁に提出された、出願番号が202210205661.2、発明の名称が「ヒドロキシペンチル安息香酸ジエステル化合物、その調製方法及び医薬的な使用」である中国特許出願の優先権を主張しており、そのすべての内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
[技術分野]
本発明は、新規なヒドロキシペンチル安息香酸ジエステル系化合物に関し、具体的には、2分子d-ボルネオールと2-(α-ヒドロキシ-n-ペンチル)安息香酸(すなわち、開環ブチルフタリド)との組み合わせ化合物、その調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
脳卒中は、脳虚血と低酸素によって引き起こされる急性の脳血管疾患であり、虚血性脳卒中と出血性脳卒中の2つのカテゴリーに分けられ、そのうち虚血性脳卒中は70%以上を占め、罹患率、死亡率、障害率が高く、人間の健康と生命を危険にさらしてしまう。現在、虚血性脳卒中に対する薬物治療手段は主に2種類あり、1つは、血栓溶解薬、抗血小板凝集薬、抗凝固薬、及び繊維減少薬を利用することであり、もう1つは神経保護薬物を利用して虚血による神経細胞の損傷やアポトーシスを軽減することである。近年、血管内血栓除去術は急性虚血性脳卒中の治療に大きな価値を示しているが、この治療を受けられる脳卒中患者はほとんどおらず、永続的に恩恵を受けられる患者は半数未満である。組織プラスミノーゲン活性化因子であるアルテプラーゼ(alteplase)は、急性虚血性脳卒中治療薬として米国FDAによって承認された唯一の薬剤であるが、治療範囲が狭い、出血性副作用が起こりやすい、神経保護作用がないなどの問題があり、適用が限定されている。したがって、脳部の血液供給機能を改善し、一定の神経保護を有する薬物の研究開発は虚血性脳卒中の治療に重要な意義がある。
【0004】
ブチルフタリド(3-n-nutylphthalide、NBP、下記式A)は、セロリ種子から抽出されたベンゾフラノン系化合物であり、その化学名が、(R/S)-3-n-ブチル-1(3H)-イソベンゾフラノンである。NBPは、中国が独自に開発し、2002年に発売された虚血性脳卒中治療薬であり、「中国急性虚血性脳卒中治療ガイドライン2018」では、NBPは「脳血液循環改善薬」と定義されている。NBPは、抗血小板凝集、抗血栓、脳梗塞領域の減少、脳微小循環の改善など、多種の生物活性を有する。NBPは、脳虚血の多くの病理的なプロセスに対して治療作用があるが、水溶性が極めて悪く、その水溶性と活性を改善するために、現在、キラル分割、ベンゼン環への置換基の導入、ラクトン開環後の誘導化などの方法によってNBPの構造修飾と改造を行っている。2-(α-ヒドロキシ-n-ペンチル)安息香酸はNBPのラクトン開環生成物であり、NBPと類似した生物活性と薬物動態学的特徴を有するが、生体内でも生体外でも不安定であり、臨床応用に適した薬物を調製することが困難である。NBPは、それ自身の治療効果が限られているため、臨床ではその治療効果を増強するために他の薬物と併用するのが一般的であり、例えば中国特許出願公開第107595874号明細書では、ブチルフタリドとメコバラミンを併用することによって、ブチルフタリドの治療効果を高め、それによってブチルフタリドの最低有効量を減少させ、投与量を減少させ、長期使用による不良反応の発生を減少させる。
【0005】
d-ボルネオール、すなわち、デキストロボルネオール(上記式B)は、クスノキ科植物の新鮮な枝や葉から抽出及び加工されることが多く、(+)-ボルネオールとしても知られる二環式モノテルペン系化合物である。脳をリフレッシュし、心を浄化し、薬物血液脳関門通過を促進し、心血管及び脳血管を保護すること、血栓予防、鎮痛、抗炎症、抗菌などの作用がある。現代の薬理学的研究により、ボルネオールは、トランスポーターの排出を阻害し、生化学物質のレベルを調節し、皮膚角質層の構造を変化させ、内皮細胞の連結構造を調整することなどによって心脳血管系の薬物濃度を高め、血液脳関門の開放を促進することができ、そのため、他の薬物と併用して有効薬物の保留時間を明らかに延長し、薬効を高めることが多く、例えば中国特許出願公開第105267212号明細書では、エダラボンとデキストロボルネオールとの組成物を心脳血管疾患の治療に用いる。中国特許出願公開第113402543号明細書では、ブチルフタリドを改変しようとしたが、その改変後の新規化合物は、ブチルフタリドに対して有効性が明らかに向上しておらず、両者の効果の間に統計学的差異がなく、臨床応用に適した薬物を調製することが困難である。本発明者のチームは、心脳血管疾患の治療薬をより多く開発するために鋭意研究を進めてきた。
【発明の概要】
【0006】
ブチルフタリド及びd-ボルネオールの両方には、脳循環を改善し、心脳血管を保護する作用があることから、本チームは、進歩的な事前実験を利用して、最初に、ブチルフタリドとd-ボルネオールとを1:1(モル比)で簡単に組み合わせて組成物を形成し、その結果、この組成物を生体内注射又は経口投与する場合、ブチルフタリド又はd-ボルネオール単独投与よりも、中大脳動脈血栓症(MCAO)モデルラットの脳梗塞領域を減少させる効果が明らかではない。これに基づいて、ブチルフタリド開環生成物とd-ボルネオールとを1:1(モル比)で組み合わせて、新規化合物(下記式B)を形成することを検討した結果、この化合物は、活性が僅かに向上しており、さらに、ブチルフタリド開環生成物とd-ボルネオールとを1:2(モル比)で組み合わせた結果、2分子d-ボルネオールで置換された2-(α-ヒドロキシ-n-ペンチル)安息香酸誘導体(下記式C)は、活性が、1分子d-ボルネオールで置換された2-(α-ヒドロキシ-n-ペンチル)安息香酸誘導体(下記式B)よりもはるかに優れた。また、本願では、活性に対するキラル配置の影響を詳細に調査した結果、2分子d-ボルネオールで置換された2-(α-ヒドロキシ-n-ペンチル)安息香酸誘導体の中で、左旋性化合物(下記式D)の方は活性がより優れていることを見出した。
【0007】
本願は、ブチルフタリド又はL-ブチルフタリドの開環生成物とd-ボルネオールとを特定の比率で組み合わせ反応させることにより、2分子d-ボルネオールで置換された一連の2-(α-ヒドロキシ-n-ペンチル)安息香酸誘導体を得た。前記誘導体は、d-ボルネオールによる薬物血液脳関門通過促進機能によって、脳血管におけるブチルフタリド開環生成物の薬物濃度を上昇させ、組み合わせ薬物の多標的・多通路による相乗的な脳保護効果を発揮することができる。本願は、生体内の脳虚血に対する薬力学MCAO/Rモデルラットの脳梗塞領域の活性評価により、高活性な臨床候補薬を得ることができ、合成方法は、工業的生産が可能である。本願は、ブチルフタリドのラクトン環開環生成物と2分子d-ボルネオールとの組み合わせ反応により一連のヒドロキシペンチル安息香酸ジエステル化合物を得ることで、ブチルフタリドの構造最適化を実現し、ブチルフタリドの抗脳虚血効果を顕著に高めることができる。
【0008】
本願のヒドロキシペンチル安息香酸ジエステル化合物は、臨床上に積極的な治療価値があり、しかも、創薬性が明らかであり、深く開発する価値がある。
【0009】
本願のヒドロキシペンチル安息香酸ジエステル化合物の構造一般式を以下に示す。
(ここで、Rは、
であり、
Xは、H、ニトロ基、アミノ基、F、Cl、Br、又はIである。)
【0010】
本願はまた、上記化合物の合成方法を提供する。
(ここで、R'は、
であり、
Rは、
であり、
Xは、H、ニトロ基、アミノ基、F、Cl、Br、又はIである。
スキーム1は、
n-ブチリデンフタリド又は置換のn-ブチリデンフタリド類物質(R-1)を(パラジウム炭素、ラネーニッケル等)接触水素化して二重結合を還元し、ブチルフタリド又は置換のブチルフタリドラセミ体(R-2)を得るステップaと、
1)又は2):1)加熱反応、温度20℃~120℃、1h~5h、2)マイクロ波反応、温度20℃~60℃、30min~1hから選択される反応条件で、R-2を強塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどとR-2とのモル比は5:1~1:1)で加水分解し、反応終了後、希酸でpHを調整し、酢酸エチル又はエチルエーテルで抽出して濃縮し、中間体R-3を得、R-3を順次無水コハク酸(R-2に対するモル比は5:1~1:1)、DMAP及びEt
3N(R-2に対するモル比は5:1~1:1)と混合して反応させ、R-4を得るステップbと、
R-4をDCC(R-4に対するモル比は10:1~2:1)で触媒して、d-ボルネオールと縮合反応させ(d-ボルネオールとR-4とのモル比は10:1~2:1)、目的生成物R-5を得るステップcと、を含む。
スキーム2
化合物R-2を化学的にキラル分離し、キラル化合物L-1を得た後、上記のステップb~cによって、目的生成物L-4を得る。)
【0011】
【0012】
本発明の一態様によれば、心脳血管疾患、アルツハイマー病、又は糖尿病誘発性血管障害を治療する方法であって、上記の化合物、その組成物又はその製剤の治療有効量を、これを必要とする被験者に投与することを含む、方法を提供する。
【0013】
任意選択に、前記心脳血管疾患は虚血性心脳血管疾患であり、前記糖尿病誘発性血管障害は糖尿病性脳症、糖尿病性心疾患、糖尿病性網膜症、又は糖尿病性腎症である。
【0014】
任意選択に、前記虚血性心脳血管疾患は脳梗塞又は心筋梗塞である。
【0015】
任意選択に、前記治療有効量は7.5mg/kg~15mg/kgである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】中間体R-2の
1H-NMRスペクトルである。
【
図2】中間体R-2の
13C-APTスペクトルである。
【
図3】中間体R-4の
1H-NMRスペクトルである。
【
図4】中間体R-4の
13C-APTスペクトルである。
【
図6】実施例1の
13C-APTスペクトルである。
【
図8】実施例2の
13C-APTスペクトルである。
【
図10】実施例3の
13C-APTスペクトルである。
【
図11】実施例4の
1H-NMRスペクトルである。
【
図12】実施例4の
13C-APTスペクトルである。
【
図13】実施例5の
1H-NMRスペクトルである。
【
図14】実施例5の
13C-APTスペクトルである。
【
図15】実施例6の
1H-NMRスペクトルである。
【
図16】実施例6の
13C-APTスペクトルである。
【
図17】実施例7の
1H-NMRスペクトルである。
【
図18】実施例7の
13C-APTスペクトルである。
【
図19】実施例8の
1H-NMRスペクトルである。
【
図20】実施例8の
13C-APTスペクトルである。
【
図21】実施例9の
1H-NMRスペクトルである。
【
図22】実施例9の
13C-APTスペクトルである。
【
図23】実施例10の
1H-NMRスペクトルである。
【
図24】実施例10の
13C-APTスペクトルである。
【
図25】実施例11の
1H-NMRスペクトルである。
【
図26】実施例11の
13C-APTスペクトルである。
【
図27】実施例12の
1H-NMRスペクトルである。
【
図28】実施例12の
13C-APTスペクトルである。
【
図29】ラットの神経機能スコアに対するNBP誘導体の影響である(##,p<0.01 vs sham群;**,p<0.01 vs MCAO/R群;$,p<0.05 vs NBP群;$$,p<0.01 vs NBP群)。
【
図30】ラットの脳梗塞領域に対するNBP誘導体の影響である(##,p<0.01 vs sham群;**,p<0.01 vs MCAO/R群;$,p<0.05 vs NBP群;$$,p<0.01 vs NBP群)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
中間体R-2の調製
n-ブチリデンフタリド(5.0g、26.6mmol)を無水エタノール50mLに溶解し、10%Pd/C 250mgを加えて、常圧で水素ガスを導入し、室温で2~3h反応させた。薄層クロマトグラフィーTLCによって反応を監視し、石油エーテル:酢酸エチル(8:1)を展開剤条件とした。反応終了後、濾過し、濾液を収集して、溶媒を回転乾燥させ、黄色油状液体R-2を5.0g得た。収率は98.9%であった。化合物R-2の1H-NMR及び13C-NMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 7.88 (d, J= 7.6 Hz, 1H, H-6), 7.55 (td, J= 7.6, 7.2, 1.0 Hz , 1H, H-4), 7.51 (t, J= 7.6, 7.2 Hz, 1H, H-5), 7.43 (dd, J= 7.6, 0.6 Hz, 1H, H-3), 5.47 (m, 1H, -C(CH)O-), 2.06-2.01 (m, 1H, -CHCH
2
-), 1.78-1.72 (m, 1H, -CHCH
2
-), 1.49-1.33 (m, 4H, -CH
2
CH
2
CH3), 0.90 (t, J= 7.5 Hz, 3H, -CH3); 13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δ: 170.8, 150.1, 134.0, 129.0, 126.1, 125.6, 121.8, 81.5, 34.4, 26.9, 22.4, 13.9.
【0018】
中間体R-3の調製
化合物R-2(5.0g、26.3mmol)をエタノール-水混合溶液(体積比2:1)30mLに加え、水酸化カリウム(2.0g、35.6mmol)を加えて、70℃、マイクロ波で30min反応させ(又は2h加熱還流反応)、反応終了後、溶媒を回転乾燥させ、濃縮液に水を加えて希釈し、希塩酸でpHを3~4に調整し、白色固体を析出させて、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を併せて、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、次の反応にそのまま用いた。
【0019】
中間体R-4の調製
無水コハク酸(3.4g、28.8mmol)を化合物R-3の酢酸エチル溶液に加え、DMAP(240mg、2.0mmol)を加えた後、トリエチルアミン(4mL、28.8mmol)を滴下し、撹拌して反応させた。反応終了後、水を加えて抽出し、有機層を収集し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し、溶媒を蒸発乾燥させ、次の反応にそのまま用いた。化合物R-4の1HNMR及び13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 8.10 (dd, J= 8.2, 1.0 Hz, 1H, H-3), 7.55 (td, J= 7.9, 6.9, 1.0 Hz , 1H, H-5), 7.52 (dd, J= 7.8, 1.4 Hz, 1H, H-6), 7.34 (td, J= 8.1, 6.6, 1.6 Hz, 1H, H-4), 6.62 (m, 1H, -C(CH)O-), 2.74-2.64 (m, 4H, -COCH
2
CH
2
COOH), 1.86-1.80 (m, 2H, -OCHCH
2
-), 1.44-1.29 (m, 4H, -CH
2
CH
2
CH3), 0.88 (t, J= 7.5 Hz, 3H, -CH3); 13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δ: 178.6, 172.4, 171.6, 144.3, 133.3, 131.3, 127.3, 127.0, 126.1, 73.6, 36.5, 29.7, 29.0, 27.9.
【0020】
実施例1:化合物1(すなわち、合成スキーム1のR-5)の調製
化合物R-4(2.57g、8.3mmol)を0℃でジクロロメタン30mLに溶解し、DCC(4.3g、20.8mmol)及びDMAP(0.64g、5.2mmol)を加え、0℃で30min撹拌した後、d-ボルネオール(3.2g、20.7mmol)を加えて室温に移し、一晩撹拌した。反応終了後、吸引濾過し、濾液を収集して濃縮させ、濃縮液を4℃で2時間静置し、吸引濾過し、濾液を石油エーテル:酢酸エチル(6:1)でカラムクロマトグラフィーにかけて、淡黄色粘稠状液体を3.59g得た。収率は82.3%であった。化合物R-5の
1HNMR及び
13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ: 7.89 (d, J= 7.2 Hz, 1H, H-3), 7.52-7.49 (m, 2H, H-5, 6), 7.34 (m, 1H, H-4), 6.62 (m, 1H, C(CH)O), 5.12 (m, 1H, COOCH), 4.86(m, 1H, COOCH), 2.75-2.60 (m, 4H, -COC
H
2
C
H
2
COOH), 0.97-0.85 (m, 21H, CH
3×7);
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ: 172.4, 171.43, 171.38, 167.24, 167.21, 143.40, 143.38, 132.1, 130.14, 130.12, 129.14, 129.10, 127.1, 126.2, 80.96, 80.88, 80.26, 80.25, 73.25, 73.20, 49.0, 48.76, 48.73, 47.95, 47.92, 47.91, 47.80, 44.95, 44.93, 44.8, 37.0, 36.8, 36.67, 36.62, 34.9, 29.50, 29.48, 28.1, 28.0, 27.6, 27.50, 27.48, 27.0, 25.5, 22.65, 22.63, 19.77, 19.71, 18.99, 18.95, 14.0, 13.8, 13.6, 13.50, 13.48.
【0021】
中間体L-1の調製
化合物R-2(32.8g、172.5mmol)をメタノールに溶解し、水酸化カリウム水溶液を加えて、60℃で1hマイクロ波反応させた。反応終了後、メタノールを蒸発除去し、濃縮液を希釈し、-10℃で希塩酸を用いてPHを3~4に調整し、酢酸エチルで抽出した。有機層に(-)-α-フェニルエチルアミン(20.7g、171.2mmol)を加えて、-10℃で5~10min静置した後、さらに室温で5~10h静置し、白色の光学活性アミン塩結晶を収集した。白色結晶をメタノール/酢酸エチル混合溶媒で2~3回再結晶した後、得た針状結晶を水に溶解し、2N水酸化カリウムを加えて解離し、酢酸エチルで抽出した後、水層を収集して、希塩酸でPHを1~2に調整し、酢酸エチルで抽出し、乾燥して濾過し、濃縮すると、化合物L-1を12.2g得た。収率は37.2%であった。
【0022】
実施例2:化合物2(すなわち、合成スキーム2のL-4)の調製
化合物L-2、L-3、L-4(実施例2)の合成は、実施例1のR-3、R-4、R-5の合成を参照した。本実施例の生成物L-4は淡黄色油状液体であった、
1HNMR及び
13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ: 7.89 (d, J= 7.2 Hz, 1H, H-3), 7.53-7.48 (m, 2H, H-5, 6), 7.32 (m, 1H, H-4), 6.63 (m, 1H, C(CH)O), 5.13 (m, 1H, COOCH), 4.85(m, 1H, COOCH), 2.74-2.61 (m, 4H, -COC
H
2
C
H
2
COOH), 0.96-0.85 (m, 21H, CH
3×7);
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ: 172.5, 171.4, 167.2, 143.3, 132.1, 129.1, 127.1, 126.2, 80.9, 80.3, 73.2, 49.0, 48.7, 47.9, 47.8, 44.9, 44.8, 37.0, 36.8, 36.7, 29.5, 29.4, 28.1, 28.0, 27.9, 27.4, 27.1, 22.6, 19.8, 19.7, 18.9, 18.8, 14.0, 13.6, 13.5.
【0023】
実施例3:化合物3の調製
化合物R-4の合成時の無水コハク酸を無水マレイン酸に変更した以外、実施例1を参照した。生成物は、淡黄色油状液体で、収率は80.3%であった。生成物
1HNMR及び
13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ: 7.92 (m, 1H, H-3), 7.54-7.50 (m, 2H, H-5, 6), 7.34 (m, 1H, H-4), 6.89 (m, 2H, C
H=C
H), 6.74 (m, 1H, C(CH)O), 5.52-5.13, 5.01-4.99 (m, 2H, COOC
H×2), 0.98-0.85 (m, 21H, CH
3×7);
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ: 166.13, 166.11, 164.3, 163.31, 163.28, 141.78, 141.73, 133.1, 132.4, 131.1, 129.17, 129.15, 128.15, 128.12, 126.3, 125.11, 125.10, 80.1, 79.98, 79.92, 72.98, 72.95, 48.00, 47.92, 46.90, 46.88, 43.90, 43.87, 43.8, 35.9, 35.8, 35.7, 35.67, 35.60, 33.9, 27.1, 26.98, 26.96, 26.9, 26.44, 26.38, 26.1, 24.4, 21.56, 21.53, 18.72, 18.65, 17.89, 17.80, 13.0, 12.7, 12.6, 12.49, 12.48.
【0024】
実施例4:化合物4の調製
化合物R-4の合成時の無水コハク酸を無水グルタル酸に変更した以外、実施例1を参照した。生成物は、淡黄色油状液体で、収率は69.5%であった。生成物
1HNMR及び
13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ: 7.90 (m, 1H, H-3), 7.51-7.50 (m, 2H, H-5, 6), 7.32 (m, 1H, H-4), 6.60 (m, 1H, C(CH)O), 5.13, 4.89 (m, 2H, COOC
H×2), 0.98-0.82 (m, 21H, CH
3×7);
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ: 173.3, 172.18, 172.13, 167.2, 143.64, 143.54, 132.0, 130.2, 131.1, 129.1, 127.1, 126.1, 80.94, 80.90, 79.9, 72.94, 72.87, 49.0, 48.7, 47.9, 47.8, 44.9 (d, J= 4.4 Hz), 44.8, 37.0, 36.9, 36.8, 36.85, 36.80, 33.8, 33.6, 28.05, 28.02, 27.1, 22.63, 22.60, 20.4, 20.3, 19.8, 18.95, 18.86, 14.0, 13.8, 13.6, 13.5.
【0025】
実施例5:化合物5の調製
ブチルフタリドを3-ニトロ-ブチルフタリドに変更した以外、実施例1を参照した。生成物は、淡黄色油状液体で、収率は74.5%であった。生成物
1HNMR及び
13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ: 8.71 (d, J= 2.4 Hz, 1H, H-6), 8.33 (dd, J= 8.7, 2.4 Hz, 1H, H-5), 7.72 (d, J= 8.6 Hz, 1H, H-3), 6.59 (m, 1H, C(CH)O), 5.17, 4.86 (m, 2H, COOC
H×2), 0.96-0.80 (m, 21H, CH
3×7);
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ: 172.3, 171.56, 171.50, 165.25, 165.21, 150.51, 150.49, 146.6, 130.30, 130.28, 127.7, 126.5, 125.32, 125.31, 82.2, 82.1, 80.4, 72.83, 72.79, 48.76, 48.74, 48.06, 48.04, 47.8, 44.89, 44.87, 44.8, 36.9, 36.7, 36.67, 36.63, 36.40, 36.38, 33.9, 29.30, 29.27, 28.1, 28.00, 27.9, 27.47, 27.41, 27.1, 22.52, 22.50, 19.76, 19.69, 18.92, 18.83, 14.0, 13.8, 13.6, 13.51, 13.46.
【0026】
実施例6:化合物6の調製
ブチルフタリドを3-ニトロ-ブチルフタリドに変更し、化合物R-4の合成時の無水コハク酸を無水マレイン酸に変更した以外、実施例1を参照した。生成物は、淡黄色油状液体で、収率は80.2%であった。生成物
1HNMR及び
13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ: 8.71 (m, 1H, H-6), 8.33 (dd, J= 2.40, 8.62 Hz, 1H, H-5), 7.74 (m, 1H, H-3), 6.89 (m, 2H, C
H=C
H), 6.65 (m, 1H, C(CH)O), 6.32, 6.23 (m, 2H, C
H=C
H), 5.17, 4.89 (m, 2H, COOC
H×2), 0.98-0.74 (m, 21H, CH
3×7);
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ: 172.3, 173.06, 172.88, 153.4, 136.9, 133.2, 130.9, 128.86, 128.72, 127.6, 121.3, 80.14, 80.12, 79.9, 65.6, 60.4, 50.0, 48.7, 47.8, 44.86, 44.84, 36.90, 36.85, 36.4, 33.77, 33.71, 33.62, 33.53, 33.4, 32.4, 30.6, 29.27, 28.10, 28.09, 28.04, 27.1, 26.07, 25.98, 25.42, 25.38, 25.0, 24.8, 22.5, 20.34, 20.30, 19.7, 18.8, 14.2, 14.0, 13.57, 13.54.
【0027】
実施例7:化合物7の調製
ブチルフタリドを3-クロロ-ブチルフタリドに変更し、化合物R-4の合成時の無水コハク酸を無水マレイン酸に変更した以外、実施例1を参照した。生成物は、淡黄色油状液体で、収率は72.1%であった。生成物
1HNMR及び
13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ: 7.85 (m, 1H, H-6), 7.47 (m, 2H, H-3, 5), 6.87 (m, 2H, C
H=C
H), 6.67 (m, 1H, C(CH)O), 5.15, 4.99 (m, 2H, COOC
H×2), 0.94-0.85 (m, 21H, CH
3×7);
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ: 166.0, 165.0, 165.3, 164.30, 164.29, 141.31, 141.28, 134.4, 133.7, 133.2, 133.1, 132.23, 132.14, 130.82, 130.80, 129.9, 127.83, 137.82, 81.6, 81.5, 81.26, 81.17, 73.8, 73.4, 49.06, 48.99, 48.01, 47.95, 44.90, 44.89, 36.9, 36.7, 36.7, 36.4, 28.1, 28.0, 28.0, 27.2, 27.49, 27.43, 27.15, 27.14, 22.57, 22.54, 19.77, 19.71, 18.9, 18.8, 14.0, 13.8, 13.6, 13.5.
【0028】
実施例8:化合物8の調製
ブチルフタリドを3-クロロ-ブチルフタリドに変更し、化合物R-4の合成時の無水コハク酸を無水グルタル酸に変更した以外、実施例1を参照した。生成物は、淡黄色油状液体で、収率は55.4%であった。生成物
1HNMR及び
13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ: 7.83 (m, 1H, H-6), 7.45 (m, 2H, H-3, 5), 6.53 (m, 1H, C(CH)O), 5.15, 4.88 (m, 2H, COOC
H×2), 0.96-0.82 (m, 21H, CH
3×7);
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ: 173.3, 172.14, 172.10, 166.03 166.01, 142.12, 142.05, 135.0, 133.0, 132.1, 130.7, 129.9, 127.78, 127.77, 81.57, 51.49, 80.0, 72.42, 72.27, 49.1, 48.6, 48.0, 47.8, 44.91, 44.89, 44.8, 36.9, 36.8, 36.7, 36.56, 36.54, 33.7, 33.5, 28.1, 28.15, 28.06, 27.9, 27.48, 27.42, 22.57, 22.55, 20.3, 19.76, 19.73, 18.93, 19.86, 14.0, 13.8, 13.6, 13.5.
【0029】
実施例9:化合物9の調製
ブチルフタリドを3-ブロモ-ブチルフタリドに変更した以外、実施例1を参照した。生成物は、淡黄色油状液体で、収率は86.2%であった。生成物
1HNMR及び
13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ: 7.96 (d, J= 2.0 Hz, 1H, H-6), 7.61 (dd, J= 8.3, 2.0 Hz, 1H, H-5), 7.39 (d, J= 8.4 Hz, 1H, H-3), 6.51 (m, 1H, C(CH)O), 5.12, 4.86 (m, 2H, COOC
H×2), 0.96-0.76 (m, 21H, CH
3×7);
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ: 172.4, 171.43, 171.38, 165.97, 165.93, 142.35, 142.31, 135.0, 132.75, 132.71, 131.03, 130.98, 128.17, 128.16, 120.9, 81.6, 81.5, 80.32, 80.29, 72.78, 72.74, 49.07, 49.23, 48.76, 48.73, 48.00, 47.99, 47.81, 47.80, 44.90, 44.81, 44.8, 36.9, 36.7, 36.66, 36.63, 36.5, 29.43, 29.39, 28.1, 28.03, 28.00, 27.9, 27.8, 27.5, 27.4, 27.09, 27.08, 22.59, 22.58, 19.76, 19.70, 18.93, 18.84, 14.0, 13.8, 13.6, 13.49. 13.47.
【0030】
実施例10:化合物10の調製
ブチルフタリドを3-ブロモ-ブチルフタリドに変更し、化合物R-4の合成時の無水コハク酸を無水グルタル酸に変更した以外、実施例1を参照した。生成物は、淡黄色油状液体で、収率は50.1%であった。生成物
1HNMR及び
13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ: 7.97 (m, 1H, H-6), 7.61 (dd, J= 8.7, 2.4 Hz, 1H, H-5), 7.34 (d, J= 8.4 Hz, 1H, H-3), 6.51 (m, 1H, C(CH)O), 5.13, 4.89 (m, 2H, COOC
H×2), 0.96-0.82 (m, 21H, CH
3×7);
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ: 173.2, 172.14, 172.10, 165.94, 165.93, 142.58, 142.51, 135.0, 132.8, 130.9, 128.03, 128.02, 120.9, 81.6, 81.5, 79.9, 72.46, 72.41, 49.06, 49.05, 48.8, 48.0, 47.8, 44.90, 44.84, 36.92, 32.86, 36.7, 36.51, 36.48, 33.7, 33.5, 28.1, 28.06, 28.02, 27.9, 27.5, 27.48, 27.42, 27.1, 22.57, 22.55, 20.3, 19.77, 19.73, 18.93, 18.86, 14.0, 13.8, 13.6, 13.5.
【0031】
実施例11:化合物11の調製
ブチルフタリドを3-ヨード-ブチルフタリドに変更し、化合物R-4の合成時の無水コハク酸を無水マレイン酸に変更した以外、実施例1を参照した。生成物は、淡黄色油状液体で、収率は61.3%であった。生成物
1HNMR及び
13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ: 8.45 (m, 1H, H-6), 7.81 (dd, J= 8.4, 1.8 Hz, 1H, H-5), 7.26 (d, J= 8.3 Hz, 1H, H-3), 6.54 (m, 1H, C(CH)O), 6.28, 6.19 (m, 2H, C
H=C
H), 5.12, 4.96 (m, 2H, COOC
H×2), 0.96-0.84 (m, 21H, CH
3×7);
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ: 165.81, 165.75, 165.6, 164.0, 142.66, 142.62, 140.9, 138.6, 131.9, 131.6, 131.19, 131.13, 128.39, 128.35, 128.2, 127.8, 92.4, 81.6, 81.5, 81.4, 81.3, 73.65, 73.58, 49.1, 48.8, 48.0, 47.8, 44.90, 44.78, 36.86, 36.78, 36.5, 36.1, 35.8, 33.7, 33.5, 28.1, 28.0, 27.9, 27.5, 27.46, 27.38, 27.0, 22.59, 22.58, 19.78, 19.69, 18.93, 18.85, 14.0, 13.8, 13.6, 13.4.
【0032】
実施例12:化合物12の調製
ブチルフタリドを3-ヨード-ブチルフタリドに変更し、化合物R-4の合成時の無水コハク酸を無水グルタル酸に変更した以外、実施例1を参照した。生成物は、淡黄色油状液体で、収率は51.1%であった。生成物
1HNMR及び
13CNMRのデータを以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ: 8.16 (m, 1H, H-6), 7.80 (dd, J= 8.2, 1.8 Hz, 1H, H-5), 7.23 (d, J= 8.2 Hz, 1H, H-3), 6.49 (m, 1H, C(CH)O), 5.13, 4.89 (m, 2H, COOC
H×2), 0.96-0.82 (m, 21H, CH
3×7);
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ: 173.2, 172.13, 172.09, 165.85, 165.83, 143.15, 148.08, 140.9, 138.7, 131.1, 130.9, 128.12, 128.10, 92.4, 81.6, 81.5, 79.9, 72.54, 72.49, 49.06, 49.05, 48.8, 48.0, 47.8, 44.90, 44.86, 36.91, 36.86, 36.7, 36.48, 36.45, 33.7, 33.5, 28.1, 28.06, 28.02, 27.90, 27.89, 27.5, 27.47, 27.40, 27.1, 22.58, 22.56, 20.3, 19.77, 19.73, 18.93, 18.86, 14.0, 13.8, 13.6, 13.5.
【0033】
薬力学的実験:NBP誘導体(実施例1の化合物1及び実施例2の化合物2)による脳虚血再灌流障害の予防・治療作用に関する研究
一、実験方法
1.実験群分け
SHAM群:偽手術群
中大脳動脈血栓症(MCAO)モデル群
ブチルフタリド(NBP):5mg/kg
L-ブチルフタリド(L-NBP):2.5mg/kg
NRB(化合物1):15mg/kg(換算により、NBP 4.9mg/kgの用量に相当)
L-NRB(化合物2)低用量:7.5mg/kg(換算により、L-NBP 2.45mg/kgの用量に相当)
L-NRB(化合物2)高用量:15mg/kg(換算により、L-NBP 4.9mg/kgの用量に相当)
アスピリン群(ASP):10mg/kg
【0034】
2.投与方法
モデリング前に、5日間連続して腹腔内投与し、偽手術群とMCAOモデル群のラットに等量の生理食塩水を与え、その後MCAO手術を行った。
【0035】
3.中大脳動脈血栓症(MCAO)モデル作製
糸栓法を用いて中大脳動脈塞栓症(MCAO)モデルを作製した。手術は厳格な無菌条件で行われ、主要な手術過程は以下の通りである。抱水クロラールを腹腔内注射することでラットを麻酔し、総頸動脈(CCA)、外頸動脈(ECA)、及び内頸動脈(ICA)を分離し、微小動脈クランプで総頸動脈を閉じて、双極性電気凝固ペンで外頸動脈の分岐を電気凝固した。外頸動脈幹を遊離し、総頸動脈分岐から3~4mmで結紮した。微小動脈クランプで内頸動脈を一時的に閉じて、眼科用はさみを使用して外頸動脈に小さな開口部を切り、メチルポリシロキサンでコーティングされた4-0モノフィラメントナイロン糸を挿入し、外頸動脈の切り口にゆるい結び目を作り、内頸動脈の血液逆流をブロックした。内頚動脈の微小動脈クランプを外し、ナイロン糸を内頚動脈にゆっくりと押し込み、頭蓋内前大脳動脈に到達し、中大脳動脈(MCA)の開口部をブロックし、挿入深さを約18~22mmにした。総頚動脈の微小動脈クランプを外し、消毒後、皮下組織と皮膚を1層ずつ縫合し、手術2h後に、ナイロン糸をゆっくり抜去して再灌流した。偽手術群では、ナイロン糸を挿入しなかったことを除いて、他のすべての操作は同様であった。実験中、すべてのラットの直腸温を37℃に維持した。
【0036】
二、検出指標
1.神経機能の評価
再灌流24時間後、神経行動スコアは、Longa 5レベルスコア法に従ってすべてのラットに対して実行された。Longaスコア基準:0、正常、神経障害なし。1、左前肢伸展障害、機能低下。2、左前肢の円運動、左前肢麻痺、機能の重度の低下、ラットの尾を持ち上げた後、ラットは損傷部位へねじり続けたこと。3、歩行時に左側に転倒。4、手足麻痺、意識不明。
【0037】
2.脳梗塞領域の測定
再灌流24時間後、テトラゾリウムレッド(TTC)染色を使用して脳梗塞領域を測定した。ラットを頸部解剖により屠殺し、すぐに脳全体を摘出し、-20℃の冷蔵庫で一時冷凍し、製氷皿に置き、嗅球を除去し、冠状面に沿って前脳を厚さ2mmの6枚に切った。脳スライスを1.5 mLの2%TTC溶液に入れて、暗所で30minインキュベートし、脳スライスを10%パラホルムアルデヒドに入れて一晩固定してから、写真を撮って分析した。Image-Jソフトウェアを使用して脳梗塞領域を計量して計算した。
【0038】
三、実験結果
1.神経機能スコア
モデル群の神経機能スコアは、偽手術群より明らかに高かった。各投与群の神経学的スコアはモデル群より明らかに低かった(p<0.05)。NBP群と比較して、NRB群(p<0.05)、L-NRB低用量群(p<0.05)、及びL-NRB高用量群(p<0.01)は有意に低下した(
図29、表1)。
【0039】
【0040】
2.脳梗塞領域
モデル群の脳梗塞領域は偽手術群より明らかに高かった。各投与群の脳梗塞領域はモデル群より明らかに低かった(p<0.05)。NBP群と比較して、NRB群(p<0.05)、L-NRB低用量群(p<0.05)、及びL-NRB高用量群(p<0.01)は有意に低下した(
図30、
図31、表2)。評価対象の誘導体の脳梗塞領域減少結果は、神経機能改善スコアの結果と一致していた。
【0041】
【0042】
四、実験の結論
脳梗塞領域の改善についての評価結果を例に挙げると、
1.モデル群と比較して、NBP群(5mg/kg、すなわち0.026mmol/kg)、L-NBP群(2.5mg/kg、すなわち0.013mmol/kg)、NRB群(15mg/kg、すなわち0.026mmol/kg)、L-NRB低用量群(7.5mg/kg、すなわち0.013mmol/kg)、L-NRB高用量群(15mg/kg、すなわち0.0261mmol/kg)は、いずれも、脳梗塞領域改善活性を示し、梗塞阻害率(モデル群に対する)は、それぞれ、34.2%、46.4%、63.7%、62.0%、77.6%であり、有意差が認められた。この結果により、本願で合成したヒドロキシペンチル安息香酸ジエステル化合物は、すべて、良好な脳虚血治療活性を有し、しかも、その効果はブチルフタリドやL-ブチルフタリドよりも大幅に優れていた。
2.NBP群と比較して、L-NBP群、NRB群、L-NRB低用量群、L-NRB高用量群は、いずれも、脳梗塞領域改善活性を示し、阻害有効率(NBP群に対する)は、それぞれ、18.6%、44.8%、42.3%、66.0%であり、しかも、NRB群、L-NRB低用量群、L-NRB高用量群は、いずれも、NBP群と有意差が認められた。この結果により、1)左旋性配置のブチルフタリド又は誘導体は、いずれの活性も、対応するラセミ体より優れている。2)2つのd-ボルネオールを連結したブチルフタリド誘導体は、活性が元のブチルフタリド化合物より優れている。
3.L-NBP群と比較して、L-NRB低用量群、L-NRB高用量群は、いずれも、明らかな脳梗塞領域改善活性を示し、阻害有効率(L-NBP群に対する)は、それぞれ、29.1%、58.2%であり、しかも、L-NRB低用量群、L-NRB高用量群は、いずれも、L-NBP群と有意差が認められた。この結果により、2つのd-ボルネオールを連結したL-ブチルフタリドは、活性が元のL-ブチルフタリド化合物より優れている。
4.モデル群と比較して、ASP群は、脳梗塞領域改善活性を示し、同様にモデル群の作製に成功したことが明らかになった。ASP群(10mg/kg、すなわち0.56mmol/kg)と比較して、L-NRB高用量群は、顕著な脳梗塞領域改善活性を示し、阻害有効率は56.6%である。このことから、本願に係るヒドロキシペンチル安息香酸ジエステル化合物は、脳梗塞領域と神経機能の改善作用が良好で、臨床でよく使用されている薬物であるアスピリンの活性より明らかに優れ、臨床では積極的な治療作用があり、しかも、創薬性が明らかであり、深く開発する価値がある。
【0043】
上記の実施例は、本願の技術的構想及び特徴を説明するために過ぎず、当業者が本願の内容を理解し実施することを可能にすることを目的とし、これによって本願の保護範囲を制限するものではない。本願の精神的本質に基づいてなされた同等の変更又は修飾であれば、本願の保護範囲内に含まれるものとする。
【要約】
本願は、ヒドロキシペンチル安息香酸ジエステル化合物、その調製方法及び使用を開示する。本願は、組み合わせ原理を利用して、d-ボルネオールによる薬物血液脳関門通過促進機能によって、脳血管におけるブチルフタリドの薬物濃度を上昇させ、薬物の多標的・多通路による相乗的な脳保護機能を発揮する一方、d-ボルネオールによる脳虚血治療作用を発揮する。合成された化合物について生体内での脳虚血に対する薬力学的活性の評価を行うことで、高活性候補薬物が得られ、しかも、合成方法は工業的生産が可能である。