(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】動画に提供情報を重畳する動画配信
(51)【国際特許分類】
H04N 21/234 20110101AFI20240722BHJP
【FI】
H04N21/234
(21)【出願番号】P 2024519560
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2022025840
(87)【国際公開番号】W WO2024004052
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2024-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110135
【氏名又は名称】石井 裕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100163452
【氏名又は名称】南郷 邦臣
(74)【代理人】
【識別番号】100180312
【氏名又は名称】早川 牧子
(72)【発明者】
【氏名】菊地 航
【審査官】鈴木 順三
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-051757(JP,A)
【文献】特開2012-120098(JP,A)
【文献】特開2004-297245(JP,A)
【文献】特開2008-199645(JP,A)
【文献】特開2014-086775(JP,A)
【文献】特開2000-241131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 - 21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配信者を撮影した距離画像に基づいて動画をストリーミング配信するための情報処理装置であって、
前記情報処理装置は、1以上のプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記距離画像における奥行きの分布を取得し、
前記取得された奥行きの分布に基づいて、閾値を決定し、
前記距離画像において、奥行きが前記閾値より大きい遠方領域と、奥行きが前記閾値より小さい近傍領域と、を特定し、
前記動画がストリーミング配信される視聴者端末に、前記動画と共に、前記遠方領域を背景に、前記近傍領域を前景にして、前記背景の上に提供情報を重ね、当該提供情報が重ねられた前記背景の上に前記前景を重ねる制御情報を提供する
処理を実行する情報処理装置。
【請求項2】
前記提供情報は、前記視聴者端末の視聴者により提供される情報であり、
前記プロセッサは、
前記提供情報を、前記視聴者端末の画面の外から中に向かって移動し続け、前記画面の外へ消えるように表示させる制御情報を提供する
処理を実行する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記近傍領域を、当該近傍領域を含む所定形状の領域に補正し、
前記遠方領域を、前記所定形状の領域を除いた領域に補正し、
前記補正された遠方領域を前記背景に、前記補正された近傍領域を前記前景にする
処理を実行する請求項1
又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得された奥行きの分布は混合分布であり、
前記プロセッサは、
前記取得された奥行きの分布を、第1分布と、第2分布と、に分離し、
前記第1分布の第1代表値と、前記第2分布の第2代表値と、が十分に離間していれば、前記第1代表値と、前記第2代表値と、の中間の値を、前記閾値として決定する
処理を実行する請求項1
又は2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記第1代表値と前記第2代表値との差が、前記第1分布の標準偏差と前記第2分布の標準偏差との和に、所定の値を乗じた値よりも大きい場合に、前記第1分布の第1代表値と、前記第2分布の第2代表値と、が十分に離間していると判断する
処理を実行する請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記配信者が動画を撮影する配信者端末に、現在撮影されている動画、又は、距離画像を表示し、前記距離画像において、前記遠方領域と、前記近傍領域とを、異なる表示態様で表示させる制御情報を提供する
処理を実行する請求項1
又は2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
配信者を撮影した距離画像に基づいて動画をストリーミング配信するためのコンピュータが、
前記距離画像における奥行きの分布を取得し、
前記取得された奥行きの分布に基づいて、閾値を決定し、
前記距離画像において、奥行きが前記閾値より大きい遠方領域と、奥行きが前記閾値より小さい近傍領域と、を特定し、
前記動画がストリーミング配信される視聴者端末に、前記動画と共に、前記遠方領域を背景に、前記近傍領域を前景にして、前記背景の上に提供情報を重ね、当該提供情報が重ねられた前記背景の上に前記前景を重ねる制御情報を提供する
表示制御方法。
【請求項8】
配信者を撮影した距離画像に基づいて動画をストリーミング配信するためのコンピュータに、
前記距離画像における奥行きの分布を取得し、
前記取得された奥行きの分布に基づいて、閾値を決定し、
前記距離画像において、奥行きが前記閾値より大きい遠方領域と、奥行きが前記閾値より小さい近傍領域と、を特定し、
前記動画がストリーミング配信される視聴者端末に、前記動画と共に、前記遠方領域を背景に、前記近傍領域を前景にして、前記背景の上に提供情報を重ね、当該提供情報が重ねられた前記背景の上に前記前景を重ねる制御情報を提供する
処理を実行させるためのプログラ
ム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動画に提供情報を重畳する動画配信に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ストリーミング配信される動画に、動画について提供される提供情報を重畳して、視聴者の端末に表示させる技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、端末装置が、動画配信サーバから配信される動画を動画表示領域に表示し、動画に関するコメントを管理するコメント配信サーバから受信したコメントの一部を、動画表示領域に表示された動画に重ねるように表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ストリーミング配信される動画では、配信者が商品やフリップボード等のアイテムを所持し、アイテムについて説明する場合がある。このような場合、上記の技術のように、コメントのような提供情報を動画に重畳すると、アイテムに提供情報が重なってしまい、配信者が見せようとしているアイテムが見にくくなってしまうという問題がある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ストリーミング配信される動画において、動画に含まれる情報の視聴を妨げることなく提供情報を表示させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の観点に係る情報処理装置は、
配信者を撮影した距離画像に基づいて動画をストリーミング配信するための情報処理装置であって、
前記情報処理装置は、1以上のプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記距離画像における奥行きの分布を取得し、
前記取得された奥行きの分布に基づいて、閾値を決定し、
前記距離画像において、奥行きが前記閾値より大きい遠方領域と、奥行きが前記閾値より小さい近傍領域と、を特定し、
前記動画がストリーミング配信される視聴者端末に、前記動画と共に、前記遠方領域を背景に、前記近傍領域を前景にして、前記背景の上に提供情報を重ね、当該提供情報が重ねられた前記背景の上に前記前景を重ねる制御情報を提供する
処理を実行する。
【0008】
本開示の第2の観点に係る表示制御方法は、
配信者を撮影した距離画像に基づいて動画をストリーミング配信するためのコンピュータが、
前記距離画像における奥行きの分布を取得し、
前記取得された奥行きの分布に基づいて、閾値を決定し、
前記距離画像において、奥行きが前記閾値より大きい遠方領域と、奥行きが前記閾値より小さい近傍領域と、を特定し、
前記動画がストリーミング配信される視聴者端末に、前記動画と共に、前記遠方領域を背景に、前記近傍領域を前景にして、前記背景の上に提供情報を重ね、当該提供情報が重ねられた前記背景の上に前記前景を重ねる制御情報を提供する。
【0009】
本開示の第3の観点に係る記録媒体は、
配信者を撮影した距離画像に基づいて動画をストリーミング配信するためのコンピュータに、
前記距離画像における奥行きの分布を取得し、
前記取得された奥行きの分布に基づいて、閾値を決定し、
前記距離画像において、奥行きが前記閾値より大きい遠方領域と、奥行きが前記閾値より小さい近傍領域と、を特定し、
前記動画がストリーミング配信される視聴者端末に、前記動画と共に、前記遠方領域を背景に、前記近傍領域を前景にして、前記背景の上に提供情報を重ね、当該提供情報が重ねられた前記背景の上に前記前景を重ねる制御情報を提供する
処理を実行させるためのプログラムを記録する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ストリーミング配信される動画において、動画に含まれる情報の視聴を妨げることなく提供情報を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る動画配信システムの全体構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る配信サーバの機能構成を示す図である。
【
図4】実施形態に係る配信者端末から受信する動画を説明するための図である。
【
図5】実施形態に係る提供情報を説明するための図である。
【
図6】実施形態に係る視聴者端末の画面に提供情報が表示された様子を示す図である。
【
図7】実施形態に係る遠方領域と近傍領域とを説明するための図である。
【
図8】実施形態に係る背景を説明するための図である。
【
図9】実施形態に係る前景を説明するための図である。
【
図10】実施形態に係る視聴者端末の画面に提供情報が表示された様子を示す図である。
【
図11】実施形態に係る視聴者端末の画面に提供情報が表示された様子を示す図である。
【
図12】実施形態に係る配信者端末の画面に近傍領域と遠方領域とが異なる表示態様で表示された様子を示す図である。
【
図13】実施形態に係る表示制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.全体構成)
本開示の実施形態に係る動画配信システム1は、動画配信サービスを提供するシステムである。動画配信システム1は、
図1に示すように、配信サーバ100と、配信者端末200と、複数の視聴者端末300と、を含み、それぞれがインターネット等のコンピュータ通信網400を介して通信可能に接続される。
【0013】
配信サーバ100は、動画配信システム1が提供する動画配信サービスを管理する装置である。具体的には、配信サーバ100は、配信者端末200から受信した動画を管理する。また、配信サーバ100は、動画の配信中に、複数の視聴者端末300から提供情報を受信する。そして、配信サーバ100は、視聴者端末300からの要求に応じて、配信者端末200から受信した動画と、提供情報とを視聴者端末300に配信する。
【0014】
ここで、提供情報とは、配信中の動画の視聴者から提供される情報であって、視聴者端末300の視聴者により提供される情報である。提供情報は、例えば、動画に関する視聴者のコメントである。
【0015】
配信者端末200は、動画を配信する配信者が使用する端末である。配信者は、例えば、配信者端末200を用いて、自身を撮影した動画を配信サーバ100に送信し、配信サーバ100を介して視聴者端末300に動画を配信する。
【0016】
視聴者端末300は、配信された動画を視聴する視聴者が使用する端末である。視聴者は、例えば、配信サーバ100が管理する動画配信サービスに視聴者端末300からログインし、配信サーバ100を介して配信者端末200から配信される動画を視聴する。また、視聴者は、例えば、配信される動画を視聴中に、視聴者端末300を用いて提供情報を入力し、視聴者端末300は、入力された提供情報を配信サーバ100に送信する。
【0017】
(2.情報処理装置のハードウェア構成)
図2は、配信サーバ100、配信者端末200及び視聴者端末300を実現する情報処理装置500のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0018】
情報処理装置500は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、記録媒体14と、出力デバイス15と、通信デバイス16と、入力デバイス17と、を備える。各構成要素は、バス18により接続されている。
【0019】
CPU11は、情報処理装置500全体の動作を制御し、各構成要素と接続され、制御信号やデータをやりとりする。
【0020】
ROM12には、情報処理装置500全体の動作制御に必要なオペレーティングの記録媒体や各種のデータが記録される。
【0021】
RAM13は、データや記録媒体を一時的に記録するためのもので、記録媒体14から読み出した記録媒体やデータ、その他、通信に必要なデータ等が保持される。
【0022】
記録媒体14は、ハードディスクやフラッシュメモリ等から構成され、情報処理装置500で処理するデータを記録する。
【0023】
出力デバイス15は、LCD(Liquid Crystal Display)及びバックライト等の表示装置や、スピーカ等の音声出力装置を備える。出力デバイス15は、CPU11による制御の下、例えば、CPU11から出力されたデータを出力する。
【0024】
通信デバイス16は、情報処理装置500をインターネット等のコンピュータ通信網400に接続するための通信インタフェースを含み、通信デバイス16を介して他の情報処理装置等とやりとりをする。
【0025】
入力デバイス17は、ボタン、キーボード、タッチパネル、マイク、カメラ、光学スキャナ等の入力装置を備える。入力デバイス17は、情報処理装置500の使用者から操作入力を受け付け、受け付けた操作入力に対応する信号をCPU11に出力する。
【0026】
(3.実施形態の配信サーバの機能構成)
配信サーバ100の機能構成について、
図3を用いて説明する。
【0027】
配信サーバ100は、機能的には、取得部101と、決定部102と、特定部103と、提供部104と、を備える。本実施形態において、CPU11及び通信デバイス16が協働して、取得部101及び提供部104として機能し、CPU11が、決定部102及び特定部103として機能する。
【0028】
以下では、動画配信サービスにおいて配信される動画は、配信者が自身を撮影したものであるとする。配信サーバ100は、配信者を撮影した距離画像に基づいて動画をストリーミング配信する。
【0029】
距離画像とは、各画素の値が被写体までの距離を示す画像である。距離画像は、デプスカメラのような専用ハードウェアにより撮影されて得られたものでもよいし、汎用的なカメラにより撮影された動画について距離推定処理を行うことにより得られたものであってもよい。したがって、距離画像は、動画を撮影する配信者端末200が生成してもよいし、配信サーバ100が受信した動画に基づいて生成してもよい。距離画像は、後述するように、取得部101による奥行きの分布の取得に用いられる。
【0030】
配信サーバ100が視聴者端末300に配信する動画には、配信者を撮影した動画と、視聴者端末300を使用する視聴者から提供される提供情報と、が含まれる。
図4に、配信者端末200から受信した動画の画像610を示す。画像610は、配信者601が、アイテム602を体の前に所持して、アイテム602について説明している様子を示している。また、
図5に、視聴者端末300から受信した提供情報603~605が含まれる画像620を示す。提供情報603~605のそれぞれは、配信されている動画を視聴中の複数の視聴者により提供されたものである。提供情報は、配信サーバ100により、例えば、ランダムな位置等、任意の位置に配置される。配信サーバ100は、画像610に画像620を重畳するための情報を、視聴者端末300に送信する。
【0031】
図6に、配信サーバ100から配信された動画が視聴者端末300の画面310に表示されている様子を示す。画面310では、提供情報603~605が、配信者601を撮影した動画に重畳して表示されている。提供情報603は、時間経過と共に、画面310の外から中に向かって、矢印606の方向に移動し続け、画面の外へ消える。
【0032】
図6の画面310では、提供情報605がアイテム602の上に重なり、アイテム602が提供情報605に隠されて見にくくなっている。以下では、提供情報605がアイテム602を隠さないように、提供情報を表示する手法について説明する。
【0033】
図3の取得部101は、距離画像における奥行きの分布を取得する。
【0034】
例えば、取得部101は、
図4の画像610の距離画像を配信者端末200から受信し、距離画像における被写体の奥行きの分布を取得する。
【0035】
ここで、取得された奥行きの分布には、配信者601の奥行きを示す分布D1と、アイテム602の奥行きを示す分布D2とが含まれる。したがって、取得された奥行きの分布は混合分布であると見なすことができる。
【0036】
決定部102は、取得された奥行きの分布に基づいて、閾値を決定する。
【0037】
具体的には、決定部102は、取得された奥行きの分布を、第1分布と、第2分布と、に分離し、第1分布の第1代表値と、第2分布の第2代表値と、が十分に離間していれば、第1代表値と、第2代表値と、の中間の値を、閾値として決定する。
【0038】
第1代表値とは、例えば、第1分布の平均値、中央値、最頻値等の第1分布を代表する値である。また、第2代表値とは、例えば、第2分布の平均値、中央値、最頻値等の第2分布を代表する値である。以下では、第1代表値を、第1分布の平均値、第2代表値を、第2分布の平均値とする。
【0039】
例えば、決定部102は、配信者601の奥行きを示す分布D1を第1分布、アイテム602の奥行きを示す分布D2を第2分布として、取得された奥行きの分布を分離する。なお、取得された奥行きの分布を、第1分布と第2分布とに分離する手法としては、例えば、正規混合分布に対するEM(Expectation Maximization)アルゴリズムのような既知の手法を採用する。次に、決定部102は、配信者601の奥行きを示す分布D1の平均値μ1と、アイテム602の奥行きを示す分布D2の平均値μ2と、とが十分に離間していれば、分布D1の平均値μ1と分布D2の平均値μ2との中間の値(μ1+μ2)/2を、閾値とする。
【0040】
ここで、決定部102は、第1代表値と第2代表値との差が、第1分布の標準偏差と第2分布の標準偏差との和に、所定の値を乗じた値よりも大きい場合に、第1分布の第1代表値と、第2分布の第2代表値と、が十分に離間していると判断する。
【0041】
例えば、決定部102は、配信者601の奥行きを示す分布D1の平均値μ1と、アイテム602の奥行きを示す分布D2の平均値μ2との差(μ1-μ2)が、分布D1の標準偏差σ1と分布D2の標準偏差σ2との和に正定数αを乗じた数((σ1+σ2)×α)より大きい場合に、分布D1の平均値μ1と分布D2の平均値μ2とが十分に離間していると判断する。なお、正定数αは、例えば、1~2の値が設定されるが、配信サーバ100の管理者により適宜設定可能である。
【0042】
特定部103は、距離画像において、奥行きが閾値より大きい遠方領域と、奥行きが閾値より小さい近傍領域と、を特定する。
【0043】
遠方領域は、奥行きが閾値より大きい領域であり、相対的に画面の手前から遠方にある領域である。近傍領域は、奥行きが閾値より小さい領域であり、相対的に画面の手前の近傍にある領域である。
【0044】
例えば、閾値が、分布D1の平均値μ1と分布D2の平均値μ2の中間の値(μ1+μ2)/2とすると、特定部103は、配信者端末200から受信した動画のうち、アイテム602を含む領域を近傍領域として特定し、近傍領域以外の領域であって、配信者601を含む領域及び配信者601以外のその他の領域を遠方領域として特定する。
【0045】
ここで、特定部103は、近傍領域を所定形状の領域に補正し、遠方領域を所定形状の領域以外の領域に補正する。
【0046】
所定形状とは、矩形、楕円形等の任意の形状であり、配信サーバ100の管理者が任意に定めることができる。所定形状の領域とは、近傍領域を含む、近傍領域よりも大きな領域である。したがって、所定形状の領域は、補正前の近傍領域と、補正前の遠方領域の一部を含む。
【0047】
距離画像の精度によっては、特定された近傍領域にアイテム602の端の部分が含まれないことが考えられる。よって、特定された近傍領域を含む所定形状の領域に補正することにより、近傍領域にアイテム602全体を含めるようにすることができる。以下では、所定形状を矩形とし、所定形状の領域は、近傍領域の面積に正定数β(βは1より大きい)を乗じた面積を有し、中心が補正前の近傍領域の中心と重なる領域であるとする。
【0048】
図7に補正後の近傍領域607及び補正後の遠方領域608を示す。近傍領域607には、アイテム602が映された領域が全て含まれる。遠方領域608には、近傍領域607以外の領域が含まれる。
【0049】
提供部104は、動画がストリーミング配信される視聴者端末300に、動画と共に、遠方領域を背景に、近傍領域を前景にして、背景の上に提供情報を重ね、当該提供情報が重ねられた背景の上に前景を重ねる制御情報を提供する。
【0050】
制御情報とは、視聴者端末300に表示される提供情報の表示態様を制御するための情報である。配信サーバ100は、視聴者が使用する視聴者端末300に制御情報を送信し、視聴者端末300に、視聴者から提供された提供情報を制御情報に基づいて表示させる。
【0051】
ここで、提供部104は、提供情報を、視聴者端末の画面の外から中に向かって移動し続け、画面の外へ消えるように表示させる制御情報を提供する。
【0052】
例えば、提供部104は、提供情報603~605を、時間経過と共に、画面310の外から中に向かって、矢印606の方向に移動させ続け、画面310の外へ消える制御情報を提供する。
【0053】
図8に、画像610の背景630、
図9に、画像610の前景640を示す。背景630は、
図7の画像610のうち遠方領域608を映したものであり、前景640は、
図7の画像610のうち近傍領域607のみを映したものである。提供部104は、
図8の背景630の上に、
図5の提供情報603~605が含まれる画像620を重ね、さらに、その上に
図9の前景640を重ねた制御情報を生成する。すなわち、提供部104は、背景630のレイヤの上に、
図5の提供情報の画像620のレイヤを重ね、その上に前景640のレイヤを重ねる制御情報を生成する。そして、提供部104は、動画がストリーミング配信される視聴者端末300に、動画と共に、生成した制御情報を送信する。
【0054】
図10に、配信サーバ100から送信された制御情報に基づいて、視聴者端末300の画面310に表示される動画の様子を示す。
図10の画面310では、提供情報605は、アイテム602を含む近傍領域の後ろに表示される。
【0055】
図11に、
図10から数秒後の画面310の様子を示す。
図11の画面310では、提供情報605は、矢印606が示す方向に移動し、アイテム602を含む近傍領域の後ろであって、配信者601を含む遠方領域の前に表示される。
【0056】
また、提供部104は、配信者が動画を撮影する配信者端末200に、現在撮影されている動画、又は、距離画像を表示し、距離画像において、遠方領域と、近傍領域とを、異なる表示態様で表示させる制御情報を提供する。
【0057】
例えば、提供部104は、一方の領域に赤色フィルタをかけ、他方の領域に青色フィルタをかけることにより、遠方領域と近傍領域とを異なる表示態様で表示させる制御情報を生成し、配信者端末200に送信する。
【0058】
図12に、配信サーバ100から送信された制御情報に基づいて動画が配信者端末200の画面210に表示されている様子を示す。
図12の画面210では、近傍領域607と遠方領域608とが異なる表示態様で表示される。配信者601は、動画の撮影中に、所持しているアイテム602が提供情報に隠れずに前景になっているかを確認することができる。
【0059】
(4.実施形態の配信サーバの動作)
本実施形態の配信サーバ100の動作について、
図13を用いて説明する。
図13の表示制御処理は、例えば、配信サーバ100が配信する動画のフレーム毎に実行される。
【0060】
取得部101は、距離画像における奥行きの分布を取得する(ステップS101)。
【0061】
例えば、取得部101は、
図4の画像610の距離画像を配信者端末200から受信し、距離画像における被写体の奥行きの分布を取得する。
【0062】
決定部102は、取得された奥行きの分布を、第1分布と、第2分布と、に分離する(ステップS102)。
【0063】
例えば、決定部102は、取得された奥行きの分布を、既知の手法により、配信者601の奥行きを示す分布D1を第1分布、アイテム602の奥行きを示す分布D2を第2分布として分離する。
【0064】
次に、決定部102は、第1分布の第1代表値と、第2分布の第2代表値と、が十分に離間しているか否かを判断する(ステップS103)。決定部102は、第1代表値と、第2代表値と、が十分に離間していると判断すると(ステップS103;YES)、閾値を決定する(ステップS104)。一方、決定部102は、第1代表値と、第2代表値と、が十分に離間していないと判断すると(ステップS103;NO)、処理を終了する。
【0065】
例えば、配信者601の奥行きを示す分布D1の平均値μ1と、アイテム602の奥行きを示す分布D2の平均値μ2との差(μ1-μ2)が、分布D1の標準偏差σ1と分布D2の標準偏差σ2との和に1を乗じた数((σ1+σ2)×1)より大きい場合、決定部102は、第1代表値と、第2代表値と、が十分に離間していると判断する。そして、決定部102は、分布D1の平均値μ1と分布D2の平均値μ2との中間の値(μ1+μ2)/2を、閾値とする。一方、差(μ1-μ2)が数((σ1+σ2)×1)以下の場合、決定部102は、第1代表値と、第2代表値と、が十分に離間していないと判断し、処理を終了する。
【0066】
特定部103は、距離画像において、奥行きが閾値より大きい遠方領域と、奥行きが閾値より小さい近傍領域と、を特定する(ステップS105)。
【0067】
例えば、特定部103は、配信者端末200から受信した動画のうち、アイテム602を含む領域を近傍領域として特定し、特定した近傍領域を所定形状の領域により補正し、近傍領域607を特定する。また、特定部103は、近傍領域607以外の領域であって、配信者601を含む領域及び配信者601以外のその他の領域を遠方領域608として特定する。
【0068】
提供部104は、動画がストリーミング配信される視聴者端末300に、動画と共に、遠方領域を背景に、近傍領域を前景にして、背景の上に提供情報を重ね、当該提供情報が重ねられた背景の上に前景を重ねる制御情報を提供する(ステップS106)。
【0069】
例えば、提供部104は、
図8の背景630の上に、
図5の提供情報603~605が含まれる画像620を重ね、さらに、その上に
図9の前景640を重ねる制御情報を生成する。そして、提供部104は、動画がストリーミング配信される視聴者端末300に、動画と共に、生成した制御情報を送信する。
【0070】
配信者が撮影される動画において、配信者がアイテムについて言及する場合、アイテムは配信者よりも奥行きが相対的に手前側に配置されることが多い。本実施形態によれば、ストリーミング配信される動画において、距離画像に基づき奥行きが相対的に手前側の近傍領域を特定し、近傍領域を前景として提供情報の上に重ねるように表示することができる。これにより、動画において、配信者が言及するアイテムのような、相対的に手前側に映されているものに、提供情報を重ねることなく表示することができる。したがって、ストリーミング配信される動画において、動画に含まれる情報の視聴を妨げることなく提供情報を表示させることができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、距離画像に基づき奥行きが相対的に遠方の遠方領域を特定し、遠方領域を背景として提供情報を上に重ねるように表示することができる。これにより、遠方領域に映されている配信者の映像に提供情報を重ねるように表示することができる。したがって、視聴者は、提供情報を見ながら配信者の様子を視聴することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、視聴者により提供された提供情報を画面において移動させて表示することができる。これにより、提供情報が近傍領域に隠されてしまったとしても、時間経過に伴い、提供情報の全体を把握することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、近傍領域を、近傍領域を含む所定形状の領域に補正し、遠方領域を、所定形状の領域を除いた領域に補正することができる。これにより、距離画像の精度が低い場合でも、相対的に手前側に映されているものを適切に近傍領域に含めることができ、相対的に手前側に映されているものに提供情報を重ねることなく表示することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、距離画像から取得された奥行きの分布を混合分布として2つの分布に分離し、分離した2つの分布の代表値が十分に離間していれば、それら代表値の中間の値を閾値として決定する。これにより、近傍領域と遠方領域とを特定するための閾値を、分離された分布から適切に決定することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、閾値の決定に際し、2つの分布の代表値の差が、2つの分布の標準偏差の和に所定の値を乗じた値よりも大きい場合に、2つの分布の代表値が十分に離間していると判断する。これにより、分離した2つの分布の代表値が十分に離間しているか否かを、分布から得られる情報に基づいて適切に判断することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、配信者が動画を撮影する配信者端末の画面に、現在撮影されている距離画像を表示し、遠方領域と近傍領域とを異なる表示態様で表示させることができる。これにより、配信者は、撮影をしながら、画面において相対的に手前に映したいものが提供情報に隠れずに前景となっているかを確認することができる。
【0077】
(5.変形例)
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示を実施するにあたっては、種々の形態による変形及び応用が可能である。
【0078】
上記実施形態において、動画配信システム1には1つの配信サーバ100が含まれているが、これに限らない。配信サーバ100の機能は、複数のサーバにより実現されてもよい。また、配信サーバ100は、少なくとも1つ以上のプロセッサを備える。例えば、配信サーバ100が2以上のプロセッサを備える場合、これらのプロセッサが、取得部101、決定部102、特定部103及び提供部104が実行する処理を、分散しておこなってもよい。
【0079】
また、上記実施形態において、配信サーバ100が制御情報を提供するとしたが、これに限らず、視聴者端末300が制御情報を、視聴者端末300自身に提供してもよい。つまり、視聴者端末300は、取得部101、決定部102、特定部103及び提供部104の機能を有しても良い。
【0080】
また、上記実施形態において、動画は、配信者が自身を撮影したものであるとするとしたが、これに限らず、撮影空間の奥行きの分布を取得できるものであればどのような動画でもよい。動画は、例えば、仮想空間においてアバターが撮影されたものでもよい。
【0081】
また、上記実施形態に係る配信サーバ100の動作を規定するプログラムを、既存のパーソナルコンピュータ又は情報端末装置に適用することで、当該パーソナルコンピュータ又は情報端末装置を、実施形態に係る配信サーバ100として機能させることも可能である。
【0082】
また、上記プログラムは、非一時的な(non-transitory)記録媒体に記録されてもよい。非一時的な記録媒体は、コンピュータとは独立して配布・販売することができる。ここで、非一時的な記録媒体とは、有形な(tangible)記録媒体をいう。非一時的な記録媒体は、例えば、コンパクトディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、磁気テープ、半導体メモリ等である。また、一時的な(transitory)記録媒体とは、伝送媒体(伝搬信号)それ自体を示す。一時的な記録媒体は、例えば、電気信号、光信号、電磁波等である。なお、一時的な(temporary)記憶領域とは、データや記録媒体を一時的に記憶するための領域であり、例えば、RAM等の揮発性メモリである。
【0083】
(付記)
[1]
配信者を撮影した距離画像に基づいて動画をストリーミング配信するための情報処理装置であって、
前記情報処理装置は、1以上のプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記距離画像における奥行きの分布を取得し、
前記取得された奥行きの分布に基づいて、閾値を決定し、
前記距離画像において、奥行きが前記閾値より大きい遠方領域と、奥行きが前記閾値より小さい近傍領域と、を特定し、
前記動画がストリーミング配信される視聴者端末に、前記動画と共に、前記遠方領域を背景に、前記近傍領域を前景にして、前記背景の上に提供情報を重ね、当該提供情報が重ねられた前記背景の上に前記前景を重ねる制御情報を提供する
処理を実行する情報処理装置。
【0084】
[2]
前記提供情報は、前記視聴者端末の視聴者により提供される情報であり、
前記プロセッサは、
前記提供情報を、前記視聴者端末の画面の外から中に向かって移動し続け、前記画面の外へ消えるように表示させる制御情報を提供する
処理を実行する[1]に記載の情報処理装置。
【0085】
[3]
前記プロセッサは、
前記近傍領域を、当該近傍領域を含む所定形状の領域に補正し、
前記遠方領域を、前記所定形状の領域を除いた領域に補正し、
前記補正された遠方領域を前記背景に、前記補正された近傍領域を前記前景にする
処理を実行する[1]又は[2]に記載の情報処理装置。
【0086】
[4]
前記取得された奥行きの分布は混合分布であり、
前記プロセッサは、
前記取得された奥行きの分布を、第1分布と、第2分布と、に分離し、
前記第1分布の第1代表値と、前記第2分布の第2代表値と、が十分に離間していれば、前記第1代表値と、前記第2代表値と、の中間の値を、前記閾値として決定する
処理を実行する[1]から[3]のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【0087】
[5]
前記プロセッサは、
前記第1代表値と前記第2代表値との差が、前記第1分布の標準偏差と前記第2分布の標準偏差との和に、所定の値を乗じた値よりも大きい場合に、前記第1分布の第1代表値と、前記第2分布の第2代表値と、が十分に離間していると判断する
処理を実行する[4]に記載の情報処理装置。
【0088】
[6]
前記プロセッサは、
前記配信者が動画を撮影する配信者端末に、現在撮影されている動画、又は、距離画像を表示し、前記距離画像において、前記遠方領域と、前記近傍領域とを、異なる表示態様で表示させる制御情報を提供する
処理を実行する[1]から[5]のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【0089】
[7]
配信者を撮影した距離画像に基づいて動画をストリーミング配信するためのコンピュータが、
前記距離画像における奥行きの分布を取得し、
前記取得された奥行きの分布に基づいて、閾値を決定し、
前記距離画像において、奥行きが前記閾値より大きい遠方領域と、奥行きが前記閾値より小さい近傍領域と、を特定し、
前記動画がストリーミング配信される視聴者端末に、前記動画と共に、前記遠方領域を背景に、前記近傍領域を前景にして、前記背景の上に提供情報を重ね、当該提供情報が重ねられた前記背景の上に前記前景を重ねる制御情報を提供する
表示制御方法。
【0090】
[8]
配信者を撮影した距離画像に基づいて動画をストリーミング配信するためのコンピュータに、
前記距離画像における奥行きの分布を取得し、
前記取得された奥行きの分布に基づいて、閾値を決定し、
前記距離画像において、奥行きが前記閾値より大きい遠方領域と、奥行きが前記閾値より小さい近傍領域と、を特定し、
前記動画がストリーミング配信される視聴者端末に、前記動画と共に、前記遠方領域を背景に、前記近傍領域を前景にして、前記背景の上に提供情報を重ね、当該提供情報が重ねられた前記背景の上に前記前景を重ねる制御情報を提供する
処理を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0091】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本開示によれば、ストリーミング配信される動画において、動画に含まれる情報の視聴を妨げることなく提供情報を表示させることができる動画配信に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0093】
1 動画配信システム、11 CPU、12 ROM、13 RAM、14 記録媒体、15 出力デバイス、16 通信デバイス、17 入力デバイス、18 バス、100 配信サーバ、101 取得部、102 決定部、103 特定部、104 提供部、200 配信者端末、210,310 画面、300 視聴者端末、400 コンピュータ通信網、500 情報処理装置、601 配信者、602 アイテム、603~605 提供情報、606 矢印、607 近傍領域、608 遠方領域、610,620 画像、630 背景、640 前景