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特許7524502対象物検知装置、対象物検知方法、およびプログラム
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  • 特許-対象物検知装置、対象物検知方法、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】対象物検知装置、対象物検知方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
G01S13/90 105
G01S13/90 191
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024531725
(86)(22)【出願日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2023026122
【審査請求日】2024-06-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397060072
【氏名又は名称】スカパーJSAT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穴原 琢摩
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-131424(JP,A)
【文献】特開2002-296347(JP,A)
【文献】特開昭61-194378(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067419(WO,A1)
【文献】特開2007-114102(JP,A)
【文献】特開2016-183950(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0316646(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動している際に電波を地表面に向かって繰り返し送信し、反射信号を受信する送受信部と、
それぞれの受信信号における反射強度ピークによって構成されるピークパターンの形状を特定するパターン特定部と、
前記ピークパターンの形状から対象物の位置を特定する位置特定部と、
前記位置特定部によって特定された前記対象物の位置を含む部分領域に対して合成開口処理を行って、前記部分領域の画像を生成する合成開口処理部と、
を備える、対象物検知装置。
【請求項2】
前記パターン特定部は、前記ピークパターンを放物線として特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の対象物検知装置。
【請求項3】
前記パターン特定部は、前記受信信号に対してレンジ圧縮処理を施してから、前記ピークパターンの形状を特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の対象物検知装置。
【請求項4】
前記対象物は、前記電波の反射率が低い地表面に存在する物体である、ことを特徴とする請求項1に記載の対象物検知装置。
【請求項5】
前記対象物は、海上に存在する船舶である、ことを特徴とする請求項1に記載の対象物検知装置。
【請求項6】
移動しながら対象物検知装置から電波を地表面に向かって繰り返し送信し、反射信号を前記対象物検知装置で受信する送受信ステップと、
それぞれの受信信号における反射強度ピークによって構成されるピークパターンの形状を特定するパターン特定ステップと、
前記ピークパターンの形状から対象物の位置を特定する位置特定ステップと、
前記位置特定ステップによって特定された前記対象物の位置を含む部分領域に対して合成開口処理を行って、前記部分領域の画像を生成する合成開口処理ステップと、
を含む、対象物検知方法。
【請求項7】
前記パターン特定ステップでは、前記ピークパターンを放物線として特定する、ことを
特徴とする請求項に記載の対象物検知方法。
【請求項8】
前記パターン特定ステップは、前記受信信号に対してレンジ圧縮処理を施してから、前記ピークパターンの形状を特定する、
ことを特徴とする請求項に記載の対象物検知方法。
【請求項9】
前記対象物は、前記電波の反射率が低い地表面に存在する物体である、ことを特徴とする請求項に記載の対象物検知方法。
【請求項10】
前記対象物は、海上に存在する船舶である、ことを特徴とする請求項に記載の対象物検知方法。
【請求項11】
コンピュータに請求項から10のいずれか1に記載の方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物検知装置、対象物検知方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星(宇宙機)からの地表観測の目的の一つとして、海上の船舶の位置を検出することが挙げられる。人工衛星からの地表観測にはマイクロ波を用いた合成開口レーダが用いられる。マイクロ波の利用により、雲があっても、また夜間であっても地表面の観測が可能である。合成開口レーダは、電波(マイクロ波)を地表面に照射して、反射波を受信することで、地表面を観測する電波センサである。合成開口レーダは、軌道上を移動しながら電波を繰り返し地上に照射して、同一位置からの反射波を合成することで、小型のアンテナを使用しても大型のアンテナを使用したのと同様の高解像度の画像を得ることを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-90880公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成開口処理による画像化には膨大な計算処理が必要であり、人工衛星の貴重な計算資源が多大に消費されてしまう。具体的には、位置(画素)ごとにアジマス圧縮処理が必要であり、高解像度(多画素)の画像を得るには極めて多くの計算が要求される。
【0005】
また、受信波データを地上に送信して地上で合成開口処理を行うことも考えられるが、計算資源を節約できるものの通信資源が多大に消費されてしまう。通信資源は計算資源と同様に貴重であるため、この手法は有効な解決策ではない。
【0006】
本発明は、地表面の対象物検知を従来よりも少ない計算量で実施するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、検知対象物が電波の反射率が低い地表面に存在していることがあらかじめ分かっていれば、対象物のみから強い反射波が得られ、合成開口処理による画像化を行うことなく対象物の位置を特定できるという着想に基づく。なお、本開示における地表あるいは地表面という用語は、地球の陸地の表面を指すだけでなく、海、河川、湖沼等の領域では水表面を指すものとする。
【0008】
具体的には、本発明の一態様は、移動している際に電波を地表面に向かって繰り返し送信し、反射信号を受信する送受信部と、それぞれの受信信号における反射強度ピークによって構成されるピークパターンの形状を特定するパターン特定部と、前記ピークパターンの形状から対象物の位置を特定する位置特定部と、を備える、対象物検知装置である。
【0009】
地上の任意の地点からの反射信号のピークは、送信位置(送信時刻)および送受信の時間差を軸とするデータ空間において、所定の形状を描き、近似的に放物線上に記録される。放物線の形状は、電波送信位置と当該地点の相対位置、対象物検知装置の移動速度等によって定まる。逆に、反射強度ピークの形状が定まると、これに対応する地上の地点が定まる。地表面が反射率の低い領域であれば、強い反射波が得られる地点には検知対象物が存在すると推定できる。したがって、合成開口処理を全ての画素に行うという負荷の高い計算を行うことなく、簡単な処理で検知対象物の位置を特定することができる。
【0010】
本発明の一態様において、前記パターン特定部は、前記ピークパターンを放物線として特定してもよい。放物線の形状は頂点と軸と曲率によって特定できるが軸はレンジ方向と略一致することから、パターン特定部は頂点と形状のみを求めるようにしてもよい。
【0011】
本発明の一態様において、前記パターン特定部は、前記受信信号に対してレンジ圧縮処理を施してから、前記ピークパターンの形状を特定してもよい。レンジ圧縮によりレンジ方向の解像度が向上する。なお、本発明の他の態様においては、前記パターン特定部は、レンジ圧縮処理の前に受信信号に基づいて、前記ピークパターンの形状を特定してもよい。レンジ圧縮をしなくても強度ピークパターンは特異的な形状を示し、この強度ピークパターンの形状から検知対象物の位置を特定できる。
【0012】
本発明の一態様において、前記位置特定部によって特定された前記対象物の位置を含む部分領域に対して合成開口処理を行って、前記部分領域の画像を生成する合成開口処理部、を更に備えてもよい。合成開口処理によって対象物を画像化でき、対象物の種類や状態を視覚的に判断できるようになる。この際、電波照射範囲の全体を画像化するのではなく対象物が存在する部分領域のみを画像化することで計算処理を大幅に省略することができる。
【0013】
本発明の一態様において、記対象物は、前記電波の反射率が低い地表面に存在する物体であってよく、特に、海上に存在する船舶であってもよい。
【0014】
本発明の一態様において、対象物検知装置は地球の軌道上を移動する宇宙機(人工衛星)に搭載されてもよいし、当該宇宙機と一体に構成されてもよい。宇宙機の軌道は特に限定されないが、典型的には、高度200~1000kmの範囲にある低軌道である。本発明の他の態様において、対象物検知装置は、有人または無人の飛行機に搭載されても当該飛行機と一体に構成されてもよい。
【0015】
本発明の他の一態様は、移動しながら対象物検知装置から電波を地表面に向かって繰り返し送信し、反射信号を前記対象物検知装置で受信する送受信ステップと、それぞれの受信信号における反射強度ピークによって構成されるピークパターンの形状を特定するパターン特定ステップと、前記ピークパターンの形状から対象物の位置を特定する位置特定ステップと、を含む、対象物検知方法である。
【0016】
本発明の他の一態様は、上記の方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、地表面の対象物検知を従来よりも少ない計算量で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る宇宙機の構成図。
図2】(A)(B)は宇宙機による電波の送受信を説明する図。
図3】宇宙機による対象物検知処理の流れを示すフローチャート。
図4】(A)は受信反射波、(B)は反射強度ピーク、(C)はピークパターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態は、地球低軌道(LEO:Low Earth Orbit)を移動する宇宙機(人工衛星)であり、海上に存在する船舶の位置を特定する機能を有する。すなわち、本実施形態の宇宙機は、本発明に係る対象物検知装置の一例である。なお、以下の説明は一実施形態に基づくものであり、本発明をその内容に限定する趣旨のものではない。例えば、対象物検知装置は宇宙機以外の移動体あるいは飛翔体であってもよいし、検知対象物は船舶以外の物体であってもよいし、使用する電波はマイクロ波以外の波長であってもよい。
【0020】
[構成]
図1は本実施形態に係る宇宙機100の構成を示す図である。宇宙機100は、マイクロ波パルスを照射するレーダ送受信機およびアンテナを有し、軌道上を移動しながらマイクロ波パルスの送受信を行い、受信波から海上の船舶の位置を特定したり船舶の画像を得たりする。宇宙機100は、制御部101、姿勢制御部102、推進部103、通信部104、演算部105、マイクロ波送受信機106、アンテナ107を備える。
【0021】
制御部101は、プロセッサ、主記憶装置、および補助記憶装置を含むコンピュータであり、プロセッサが補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置にロードして実行することで、宇宙機100の各部の制御を行う。制御部101は、特に、軌道を変更する際の制御や、地表面観測の制御などを行う。なお、制御部101によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0022】
姿勢制御部102は、リアクションホイールを用いて宇宙機100の姿勢を制御する。具体的には、フライホイールの角運動量を変化させることで、宇宙機100の姿勢がちょう制される。姿勢制御部102は、また、姿勢制御用のスラスタを用いて宇宙機100の姿勢を制御しても良い。
【0023】
推進部103は、推力を発生させて宇宙機100の軌道を微修正する。推進部103は、例えば、ロケットスラスタであり、燃料の化学反応によるガスを噴射することによって推進力を得る。
【0024】
通信部104は、地上の通信装置と通信するための機能部である。通信部104を介して、宇宙機100は、地表面観測の結果、例えば、船舶の位置および船舶の画像を地上の通信装置に送信する。
【0025】
演算部105は、プロセッサ、主記憶装置、および補助記憶装置を含むコンピュータであり、プロセッサが補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置にロードして実行することで、検知対象物の検知および画像化処理を行う。演算部105が行う処理の内容について、後ほどフローチャートを参照して説明する。なお、演算部105によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0026】
マイクロ波送受信機106は、マイクロ波パルスの送信とその反射波(反射信号)の受信を行う。マイクロ波送受信機106は、信号処理部と送信部と受信部とを有する。信号処理部は、パルス生成制御部、AD変換部、受信波記録部などを有する。送受信部は、周波数発振器、チャープ発振器、および高出力増幅器を含み、生成したチャープ信号をアンテナ107に給電する。受信部は、低雑音増幅部、ゲイン制御部、および検波部を含み、アンテナ107によって得られた受信信号から検波を行う。
【0027】
[合成開口レーダの概要]
図2を参照して合成開口レーダ(従来技術)の概要について説明する。図2(A)に示すように、宇宙機100は地表面を観測する際に斜め下方向にマイクロ波ビームを照射するサイドルッキングと呼ばれる方式を用いる。マイクロ波ビームの照射方向をスラントレンジ方向、スラントレンジ方向の地表面成分をグランドレンジ方向(以下、グランドレンジ方向を単にレンジ方向と呼ぶ)、宇宙機100の進行方向アジマス方向と呼ぶ。1つマイクロ波ビームの照射範囲は領域200のように台形形状となる。
【0028】
レンジ方向の分解能は、マイクロ波ビームのパルス幅に依存し、パルス幅が短いほど分解能が高い。そこで、宇宙機100は、パルス圧縮処理と呼ばれる技術を用いて高分解能化を行う。宇宙機100は、比較的長いパルスに周波数変調をかけたチャープパルスを送信し、受信信号と参照信号(送信信号)の畳み込み積分を行うことでパルス幅の短縮化を行う。
【0029】
アジマス方向の分解能は、マイクロ波ビームのビーム幅に依存し、ビーム幅はアンテナ幅に依存する。アンテナ幅が大きいほどアジマス方向の分解能は高くなる。Xバンドなどの短い波長のマイクロ波を用いることで高分解能化ができるが、Lバンドなどの比較的長い波長のマイクロ波を用いて同等の分解能を得るためには、宇宙機100に搭載するには非現実的な大きさのアンテナが必要となる。そこで、移動するアンテナを使って受信した信号から仮想の長いアンテナを用いた高分解能の観測結果を得る処理が、合成開口技術である。もちろんマイクロ波の波長にかかわらず合成開口処理により高分解能化が可能であり、Xバンドを用いる場合でも合成開口処理は有効である。図2(B)に示すように、宇宙機100はアジマス方向(進行方向)に移動しならがパルスの送受信を繰り返す。パルス送信時刻とターゲットからの受信時刻との差はアジマス位置(送信時刻)に応じて近似的に距離の2乗に比例して変化し、宇宙機100はこの変化を受信信号の位相として記録する。同じ地点からの受信信号は、それぞれの受信反射波における所定の送受信時刻差の位置に現れる。したがって、同じ地点からの受信信号を合成することで、アジマス分解能が高い画像が得られる。これがアジマス圧縮と呼ばれる処理である。
【0030】
合成開口レーダにおける観測モードには、ストライプマップモード、スポットライトモード、走査モードがある。ストライプマップモードは、宇宙機100に相対的なマイクロ波ビームの照射方向を固定し、宇宙機100の移動に伴ってビーム照射領域が移動するモードである。スポットライトモードは、同じ領域にビームが照射されるように宇宙機100に相対的な照射方向を変化させるモードである。走査モードは、宇宙機100の移動とともにビーム照射方向をレンジ方向に移動させるモードである。本実施形態に係る宇宙機100は、どの観測モードを用いてもよい。
【0031】
[対象物位置特定処理]
上述のアジマス圧縮処理は,処理の高速化のために周波数領域での畳み込み積分として行われることが一般的である。しかしながら、観測領域全体に対してアジマス圧縮処理を行うにはそれでも多大な計算が必要となり、宇宙機100の貴重な計算資源が消費されてしまうという問題がある。
【0032】
例えば、海上を観測して海上に存在する物体(船舶など)の位置を特定したいという要望に対しては、観測領域全体の画像は必要ではなく計算負荷の高いアジマス圧縮処理は必ずしも必要ではない。本実施形態では、簡易的な計算により対象物の位置を特定する。以下、図3図4を参照して本実施形態における対象物位置特定処理について説明する。
【0033】
図3は、本実施形態における対象物位置特定処理の流れを示すフローチャートである。この対象物位置特定処理は、宇宙機100が地球低軌道などの所定の軌道を移動している際に実施される。
【0034】
ステップS11において、制御部101はマイクロ波送受信機106に対して、電波を地表面に繰り返し送信し、反射信号を受信するように制御する。マイクロ波送受信機106は、チャープパルスからなるマイクロ波ビームを生成してアンテナ107を介して送信し、アンテナ107を介して地表面における反射信号を受信する。マイクロ波送受信機106は受信信号を演算部105に送り、演算部105は受信信号を記憶部に格納する。演算部105は上述したレンジ圧縮処理を受信信号に対して施してもよい。
【0035】
ステップS11の処理を実行するマイクロ波送受信機106およびアンテナ107が本発明における送受信部に相当する。
【0036】
図4(A)は、反射信号のレンジ圧縮後の受信信号401を模式的に表す図である。この図において、縦軸はマイクロ波ビームの送信時刻t(宇宙機100の位置に対応)、横軸を各マイクロ波ビームの送信時刻との時間差T(反射波受信までの時間)、Z軸は反射強度である。周囲の海に比べてマイクロ波の反射強度が大きい船舶(あるいはその他の物体)がある位置では、各々の受信信号401に強いピークが現れる。このピークはtとTによって規定される平面上で特徴的なパターン(近似的に放物線)となる。なお、レンジ圧縮前でも反射強度のピークには同様の特異のパターンが得られるので、ステップS11においてレンジ圧縮を行うことなく処理を進めてもよい。
【0037】
ステップS12において、演算部105はそれぞれの受信信号における強度ピークの位置(時間差T)を特定する。この処理は、時系列データに対する既存の任意のピーク検出アルゴリズムを用いて実現できる。
【0038】
図4(B)は、ステップS12において検出された各受信信号におけるピーク402を示す図である。
【0039】
ステップS13において、演算部105は、ステップS12において検出されたピークのパターンの形状を特定する。上述のように強度ピークのパターンは近似的に放物線形状になるので、演算部105はピークを結ぶ放物線を特定する。放物線の形状は頂点、曲率、および軸によって特定されるので、演算部105はこれらを特定する。演算部105は、例えば、最小二乗近似法などのカーブフィッティングアルゴリズムを用いてこの処理を行えばよい。
【0040】
図4(C)は、ステップS13において特定されたピークパターン403の例を示す図である。
【0041】
なお、図4(A)~図4(C)は、観測領域内に1つの対象物のみが存在する例を示している。観測領域内の複数の対象物が存在する場合には、複数のピークパターンが重畳されたピークが得られる。演算部105は、ピークパターンが放物線になるという制約の下、各々のピークパターンを抽出・形状特定すればよい。
【0042】
ステップS12およびステップS13の処理を実行する演算部105が本発明におけるパターン特定部に相当する。
【0043】
ステップS14において、演算部105はステップS13において特定されたピークパターンの形状から、このピークパターンに対応する対象物の位置を特定する。地表面の特定位置に対応するピークパターンの形状は、宇宙機100との相対的な位置関係、宇宙機100の移動速度などによって決定される。逆に、ピークパターンの形状から、このピークパターンに対応する地表面の位置を求めることができる。例えば、演算部105は、GPSなどの測位衛星システムから取得した高精度な時刻と位置情報から宇宙機100の観測位置を求め、また、送受信の時間差から観測位置と地上までの距離を求め、これらから地上の位置を特定することができる。演算部105は、放物線の頂点位置に基づいて対象物の地表面位置を特定可能であり、あるいは後述するように限定的にアジマス圧縮を行ってその結果に基づいて対象物の地表面位置を特定してもよい。あるいは、演算部105は、宇宙機の観測位置に対応する地表面の位置と、t-T平面における放物線の頂点位置および放物線の曲率に基づいて、対象物の地表面位置を特定してもよい。
【0044】
ステップS14の処理を実行する演算部105が本発明における位置特定部に相当する。
【0045】
ステップS15において、演算部105はステップS14において特定された対象物の位置の近傍に限って合成開口処理を行って、対象物の近傍領域の画像を得る。具体的には、演算部105は、処理対象とする位置を、例えば、対象物位置を中心とする所定の大きさの矩形領域に限定して、限定された領域についてアジマス圧縮処理を施せばよい。所定の大きさは、システム要求に応じて決定すればよいが、対象物の種類や状態が分かるように対象物全体は入るような大きさとすることが好ましい。例えば、船舶を対象とする場合には、500m四方あれば十分と考えられる。なお、対象物の位置のみが必要で、画像が不要な場合にはステップS15の処理は省略してよい。
【0046】
ステップS15の処理を実行する演算部105が本発明における合成開口処理部に相当する。
【0047】
ステップS16において、通信部104を介して、ステップS14において測定された対象物の位置およびステップS15において得られた対象物近傍の画像を、地上あるいは空中の装置に対して送信する。送信先は特に限定されない。
【0048】
[本実施形態の有利な効果]
本実施形態によれば、計算量の合成開口処理を行うことなく受信信号のピークパターンから対象物の位置を求めることができるので、対象物の位置特定に必要な計算量を抑制できる。また、対象物の画像を得る際にも、対象物近傍に限って合成開口処理を実施することで、観測領域全体を画像化するよりも少ない計算量で必要な画像が得られる。また、対象物の領域に限定した画像が得られるので、宇宙機から送信するデータ量の削減という効果も得られる。
【符号の説明】
【0049】
100:宇宙機 101:制御部 102:姿勢制御部
103:推進部 104:通信部
105:演算部 106:マイクロ波送受信部 107:アンテナ
【要約】
本開示は、移動している際に電波を地表面に向かって繰り返し送信し、反射信号を受信する送受信部と、それぞれの受信信号における反射強度ピークによって構成されるピークパターンの形状を特定するパターン特定部と、前記ピークパターンの形状から対象物の位置を特定する位置特定部と、を備える、対象物検知装置を提供する。本開示によれば、地表面の対象物検知を従来よりも少ない計算量で実施可能である。
図1
図2
図3
図4