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  • 特許-カリクレイン7産生促進剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】カリクレイン7産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240723BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023087365
(22)【出願日】2023-05-29
【審査請求日】2024-01-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】小坂(鈴木) マリアンナ 由乃
(72)【発明者】
【氏名】禹 幸玉
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-037724(JP,A)
【文献】特開2012-092085(JP,A)
【文献】特開2009-275027(JP,A)
【文献】特開2016-003198(JP,A)
【文献】特開2018-131405(JP,A)
【文献】岡野由利,希少アミノ酸エルゴチオネインは皮膚の老化を抑制する,FRAGRANCE JOURNAL,2008年03月, p.81-85
【文献】日本皮膚科学会雑誌, 2016.05, Vol.126, No.5, p.932
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
A61K 36/00-36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルゴチオネインを含むカリクレイン7の産生促進剤(ただし、皮膚タンパク質のグリケーション低減剤、皮膚の老化防止剤、皮膚のシワ防止剤及び皮膚の弾力低下防止剤を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリクレイン7の産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カリクレイン7(Kallikrein 7)(以下、KLK7ともいう。)は、キモトリプシン様活性を示すカリクレイン遺伝子ファミリーのS1セリンプロテアーゼである。KLK7は、主として皮膚において発現し、皮膚生理に深く関与していることが知られている。本出願人は、特許文献1、2に、カリクレイン7産生促進剤を提案している。
【0003】
エルゴチオネイン(Ergothioneine)は、キノコ等の担子菌類等により生合成されるアミノ酸誘導体であり、ビタミンC、ビタミンEよりも強い抗酸化力を有していることが知られている。また、エルゴチオネインは生理活性を有することも知られており、例えば、特許文献3には、エルゴチオネインを有効成分とするATP産生促進剤、表皮細胞賦活剤、老化及び肌荒れ改善用皮膚外用剤が、特許文献4には、エルゴチオネインを有効成分とする血管壁強化剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-003198号公報
【文献】特開2018-131405号公報
【文献】特開2003-231626号公報
【文献】特開2022-006753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規なカリクレイン7産生促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は以下のとおりである。
1.エルゴチオネインを含むカリクレイン7の産生促進剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、KLK7の産生促進剤成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】エルゴチオネインが、ヒト培養表皮角化細胞において細胞内のKLK7の量を増大させることを示すグラフ。
図2】エルゴチオネインが、ヒト培養表皮角化細胞においてKLK7の分泌量を増大させることを示すグラフ。
図3】エルゴチオネインを含む製剤を4週間塗布することにより、角層中のKLK7の量が増大することを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
エルゴチオネインは、化学式C15Sで表されるアミノ酸誘導体である。
エルゴチオネインとしては、タモギタケ等の担子菌類や酒粕等からの抽出物を用いることができ、これらの抽出物はそのまま、または精製して用いることができる。また、エルゴチオネインとして市販品を用いることもできる。
【0010】
・カリクレイン7の産生促進剤
ヒトKLK7は、分子質量27,525Daの分泌タンパク質である。KLK7の産生を促進することにより、皮膚内のKLK7量を増加させ、皮膚の老化を抑制することが期待できる。
本発明のKLK7の産生促進剤は、エルゴチオネインを含む。本発明のKLK7の産生促進剤におけるエルゴチオネインの配合量は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、好ましくは全量に対するエルゴチオネインの濃度は、0.000001質量%以上99.5質量%以下である。
【0011】
本発明のKLK7の産生促進剤は、本発明の効果を損なわない範囲内において、その剤形において一般的に用いられる植物油、動物油等の油性基剤、鎮痛消炎剤、鎮痛剤、殺菌消毒剤、収斂剤、ホルモン剤、ビタミン類、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料等を本発明の効果を妨害しない範囲で適宜配合することができる。
本発明のKLK7の産生促進剤は、経口投与、経皮投与のいずれも可能であり、化粧品、皮膚外用剤、医薬品、食品、飲料などとすることができる。本発明のKLK7の産生促進剤は、経皮投与することが好ましく、化粧品、皮膚外用剤、医薬品などのうち、水溶液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、固形状、エアゾール状、貼付剤状の経皮組成物の剤形を採用することが特に好ましい。
【実施例
【0012】
以下に試験例を示し、本発明の組成物の示す効果について具体的に説明する。
実験1「ヒト表皮角化細胞のKLK7産生促進」
ヒト表皮角化細胞を用い、KLK7産生促進効果を確認した。
細胞は、NHEK-Neo(ヒト表皮角化細胞、新生児皮膚由来、Life Technologies Japan社製)を用いた。培養液は、EpiLife(登録商標)Medium with 60μM Calcium(Life Technologies Japan社製)にHumedia-KG2増殖添加剤セット(倉敷紡績株式会社製)を加えた培地を用いた。
【0013】
Humedia-KG2添加EpiLifeで培養したヒト表皮角化細胞を、2.2×10cells/cmの細胞密度で6well plateに播種して、37℃5%COインキュベーターにて一晩培養した後、エルゴチオネイン(Cayman Chemical社)を0.00003~0.002質量%で添加した。さらに3日間37℃5%COインキュベーター中で培養し、細胞内外のタンパク質を回収した。BCAタンパク質アッセイ キット(Thermo Fisher Scientific社)を使用し、タンパク量を一定にした後、ウェスタンブロット法でKLK7の発現量を測定した。ローディングコントロールとしてβ―アクチンを定量し、β―アクチンに対する相対値を算出した。定量に当たって、一次抗体にはHuman/Mouse Kallikrein7 Antibody(R&D Systems社)およびβ-Actin Antibody (C4)(Santa Cruz社)を1000倍希釈し、4℃冷蔵庫にて48時間反応させた。洗浄後、2次抗体にはそれぞれGoat anti-Mouse IgG(H+L)(Thermo Fisher Scientific社)およびRabbit anti-Goat IgG(H+L)(Thermo Fisher Scientific社)を10000倍希釈し、室温で1時間反応させたのち、ECLTM Western Blotting Detection System(Citiva社)を用いて検出した。エルゴチオネインを添加しないコントロールに対し、細胞内のKLK7量の相対値を図1に、細胞から分泌されたKLK7量の相対値を図2に示す。
【0014】
・結果
エルゴチオネインが、カリクレイン7の産生を促進することが確かめられた。
【0015】
実験2「エルゴチオネインによる頬の角層中のKLK7量の増大」
被験者12名に表1に示す0.00006質量%エルゴチオネイン(タモギタケから抽出精製された商品)含有製剤を、左右の頬部に1日2回朝晩塗布した。塗布開始前及び4週間後の頬部の角層を角層チェッカー(アサヒバイオメッド社)でテープストリッピング法により採取した。ガラスビーズとLaemmli Buffer(組成:0.09MTris-HCl、pH6.8、3%SDS、10.3%Glycerol)500μLの入ったサンプルチューブに角層を採取した角層チェッカーを入れ、ビーズ式細胞破砕装置(株式会社トミー精工製)を用いて2800rpmで180秒間ホモジナイズし、角層タンパクを抽出した。各サンプルのタンパク量はBCA protein Assay Kit(Thermo Scientific社)で測定し、角層タンパク量を一定にした後、ウェスタンブロット法でKLK7の発現量を測定した。定量に当たって、一次抗体にはHuman/Mouse Kallikrein7 Antibody(R&D Systems社)を3000倍希釈し、4℃冷蔵庫にて18時間反応させた。洗浄後、2次抗体にはGoat anti-Mouse IgG(H+L)(Thermo Fisher Scientific社)を10000倍希釈し、室温で1時間反応させたのち、ECLTM Western Blotting Detection System(Citiva社)を用いて検出した。塗布開始前に対する4週間後のKLK7産生量の相対値を図3に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
・結果
エルゴチオネインを含む製剤を頬に塗布することにより、塗布前と比較して頬の角層中のKLK7量が増大した。カリクレイン7の産生が促進したと考えられる。
【要約】
【課題】新規なカリクレイン7の産生促進剤を提供すること。
【解決手段】エルゴチオネインを含むカリクレイン7の産生促進剤。
【選択図】図1
図1
図2
図3