(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】車両の充電制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240723BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240723BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240723BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/04 A
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2022168687
(22)【出願日】2022-10-20
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】寺田 一朗
(72)【発明者】
【氏名】梶原 崇正
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴志
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-108244(JP,A)
【文献】特開2014-183739(JP,A)
【文献】特開2011-114961(JP,A)
【文献】特開2018-064353(JP,A)
【文献】特開2019-129671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部充電器から駆動用バッテリを充電可能な車両の充電制御装置であって、
前記外部充電器が接続されて前記駆動用バッテリへの充電が開始される前の充電前処理に基づいて前記外部充電器を識別する充電器識別部と、
前記充電器識別部により識別された外部充電器が、自車両と適合しない外部充電器である場合には充電を開始させない充電制御部と、
を備え
、
前記充電前処理は、前記外部充電器から電圧を印加して絶縁状況を確認する絶縁試験であり、
前記充電器識別部は、前記絶縁試験時に印加される電圧値の挙動特性から前記外部充電器を識別する車両の充電制御装置。
【請求項2】
前記充電器識別部は、前記外部充電器の機種を特定することで前記外部充電器を識別する請求項1に記載の車両の充電制御装置。
【請求項3】
前記外部充電器に応じた充電前処理情報と、前記外部充電器と車両との適合情報と、を含む外部充電器情報を記憶した記憶部を有し、
前記充電器識別部は、前記外部充電器が接続されて前記駆動用バッテリへの充電が開始される前の充電前処理と、前記記憶部に記憶された充電前処理情報とを照合して、前記外部充電器を識別し、
前記充電制御部は、前記充電器識別部により識別された外部充電器に対応する適合情報を前記記憶部から取得して、前記外部充電器が自車両と適合する外部充電器でない場合に充電を開始させない、請求項1に記載の車両の充電制御装置。
【請求項4】
前記充電器識別部は、さらに前記外部充電器の接続時に前記外部充電器から自車両に送信される情報に基づいて前記外部充電器を識別する請求項1に記載の車両の充電制御装置。
【請求項5】
前記充電制御部は、前記充電を開始させない制御を行うとともに、前記充電を開始しない旨の警告処理を実行する請求項1
から4のいずれか1項に記載の車両の充電制御装置。
【請求項6】
さらに、外部の情報ネットワークと接続可能な通信部を備え、
前記充電制御部は、前記通信部を介して前記記憶部に記憶された外部充電器情報を更新可能である、請求項
3に記載の車両の充電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両に対して外部充電器から充電を行うには、充電方式の規格が一致していなければ充電器を物理的に又は電気的に接続することができない。
【0003】
そこで、特許文献1、2には、車両の充電方式の規格が適合する外部充電器(充電ステーション)を抽出して、位置情報を示したり、ルート案内したりする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-64353号公報
【文献】特開2014-500697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に急速充電を行うためのDC充電器では、規格が適合していても、特定の車両と特定の外部充電器における電気的な互換性不具合(いわゆる相性問題)により、充電が正常に開始されなかったり、充電が遅延したり、車両側又は外部充電器に不具合が生じたり、等の充電トラブルが生じるおそれがある。
【0006】
上記特許文献1、2は、いわゆる相性問題については言及しておらず、また、これらのような技術を使用しても、データベースに記憶されていないような外部充電器をユーザが目視等により見つけた場合等、電気的な互換性不具合を生じる外部充電器を使用することを完全に防止することはできない。
【0007】
自車両と適合する外部充電器を案内するだけでなく、車両側で外部充電器との適合性を判断できることが望まれる。例えば、外部充電器と車両とを接続した際に、外部充電器から車両に対して外部充電器を識別可能な信号を送信する方法も考えられるが、規格上そのような通信プロトコルが含まれていない場合には車両側で外部充電器を識別することは困難である。
【0008】
以上から、本願の解決すべき課題は、充電開始前に外部充電器を識別し、充電トラブルを回避することができる車両の充電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0010】
(1)本適用例に係る車両の充電制御装置は、外部充電器から駆動用バッテリを充電可能な車両の充電制御装置であって、前記外部充電器が接続されて前記駆動用バッテリへの充電が開始される前の充電前処理に基づいて前記外部充電器を識別する充電器識別部と、前記充電器識別部により識別された外部充電器が、自車両と適合しない外部充電器である場合には充電を開始させない充電制御部と、を備える。
【0011】
外部充電器が接続されると通常、充電を開始するための充電前処理が行われることから、当該充電前処理に基づいて外部充電器を識別することで、車両側で外部充電器の識別を行うことができる。そして、識別された外部充電器が自車両と適合しない外部充電器である場合には充電を開始させないことで、自車両と適合しない外部充電器の使用による充電トラブルを回避することができる。
【0012】
(2)上記適用例に係る車両の充電制御装置は、上記(1)において、前記充電前処理は、前記外部充電器から電圧を印加して絶縁状況を確認する絶縁試験であり、前記充電器識別部は、前記絶縁試験時に印加する電圧値の挙動特性から前記外部充電器を識別してもよい。通常、急速充電を行う際には、充電前処理として絶縁試験が行われており、その電圧値の挙動は外部充電器によって異なることから、当該電圧値の挙動特性から外部充電器を識別することで、外部充電器と通信等をすることなく容易に外部充電器を識別することができる。
【0013】
(3)上記適用例に係る車両の充電制御装置は、上記(1)において、前記充電器識別部は、前記外部充電器の機種を特定することで前記外部充電器を識別するようにしてもよい。このように、外部充電器の機種単位での識別を行うことで、適切且つ容易に適合の有無を判定できるようになる。
【0014】
(4)上記適用例に係る車両の充電制御装置は、上記(1)において、前記外部充電器に応じた充電前処理情報と、前記外部充電器と車両との適合情報と、を含む外部充電器情報を記憶した記憶部を有し、前記充電器識別部は、前記外部充電器が接続されて前記駆動用バッテリへの充電が開始される前の充電前処理と、前記記憶部に記憶された充電前処理情報とを照合して、前記外部充電器を識別し、前記充電制御部は、前記充電器識別部により識別された外部充電器に対応する適合情報を前記記憶部から取得して、前記外部充電器が自車両と適合する外部充電器でない場合に充電を開始させないようにしてもよい。
【0015】
このように外部充電器の充電前処理情報と適合情報とを含む外部充電器情報を記憶部に記憶しておき、当該外部充電器と接続した際には、この外部充電器情報を照合することで、容易に外部充電器の識別及び適合性の判定を行うことができる。
【0016】
(5)上記適用例に係る車両の充電制御装置は、上記(1)において、前記充電器識別部は、さらに前記外部充電器の接続時に前記外部充電器から自車両に送信される情報に基づいて前記外部充電器を識別してもよい。これにより、外部充電器の識別精度を向上させることができる。
【0017】
(6)上記適用例に係る車両の充電制御装置は、上記(1)において、前記充電制御部は、前記充電を開始させない制御を行うとともに、前記充電を開始しない旨の警告処理を実行してもよい。これにより、ドライバー等の充電作業者に対して充電が開始されない旨を認識させ、充電トラブルの回避行動を促すことができる。
【0018】
(7)上記適用例に係る車両の充電制御装置は、上記(4)において、さらに、外部の情報ネットワークと接続可能な通信部を備え、前記充電制御部は、前記通信部を介して前記記憶部に記憶された外部充電器情報を更新可能でもよい。これにより最新の情報に基づいて外部充電器の識別及び適合性の判定を行うことができ、より確実に充電トラブルを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両の充電制御装置を含む充電制御システムの概略構成図である。
【
図3】VCUが実行する充電制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
【0021】
図1には本発明の一実施形態に係る車両の充電制御装置を含む充電制御システムの概略構成図が示され、
図2には外部充電器情報の例(a)~(c)が示されている。以下、これらの図に基づいて、車両の充電制御装置を含む充電制御システムの構成について説明する。
【0022】
図1の示す充電制御システムは、主に、充電制御装置を備えた車両1と、車両に対して充電を行う外部充電器2と、車両1とネットワークNを介して相互に通信可能に接続された充電器管理サーバ3から構成されている。なお、
図1では説明の簡略化のため、車両1、外部充電器2、充電器管理サーバ3はそれぞれ1つ示しているが、充電制御システムとしては各装置が複数あってもよい。
【0023】
外部充電器2は、車両1に電力を供給するための充電設備である。本実施形態では、外部充電器2は車両1に対して直流(DC)で、所定の電圧(450V)、所定の出力(例えば50kW)以上の充電が可能なDC急速充電器である。外部充電器2はケーブルの先端に車両1と接続可能なコネクタ2aが設けられている。なお、本実施形態の外部充電器2はDC急速充電規格であるCHAdeMO(登録商標)に準拠しているものを例に説明するが、本発明を適用可能な充電規格はこれに限られず、他の規格に適用してもよい。
【0024】
充電器管理サーバ3は、外部充電器2の情報を管理するサーバであり、外部のネットワークNと接続されている。充電器管理サーバ3は、外部充電器2に関する各種情報が記憶された外部充電器データベース3a(記憶部)を備えている。充電器管理サーバ3はネットワークNを介して車両1に対し、外部充電器データベース3aに記憶された情報を提供可能である。また、充電器管理サーバ3は車両1側から提供された情報に基づき外部充電器データベース3aに記憶された情報を更新することが可能である。外部充電器2に関する各種情報の具体的な内容については後述する。
【0025】
車両1は、例えば電気自動車であり、動力源として走行用モータ10(以下モータ10という)が搭載されている。図示しないがモータ10の出力軸は減速装置及び差動装置から構成される動力伝達部及び駆動軸を介して左右の駆動輪に接続されている。モータ10が発生する駆動力が駆動輪に伝達されることで車両1は走行可能である。
【0026】
モータ10は、インバータ・コンバータ(以下、単にインバータ11という)及びジャンクションボックス12を介して高電圧(例えば200V)の駆動用バッテリ13と電気的に接続されている。
【0027】
駆動用バッテリ13は、例えばリチウムイオンバッテリ等の二次電池である。駆動用バッテリ13は蓄えられた直流電力を、インバータ11を介することで交流電力に変換しモータ10に供給する。また、例えば車両1の減速時や降坂路の走行時(回生走行時)には、駆動輪側からの逆駆動力によりモータ10が発電機として作動(回生運転)する。車両1は、このモータ10が発電した電力により駆動用バッテリ13を充電することも可能である。
【0028】
ジャンクションボックス12は、駆動用バッテリ13と車両1に搭載された各種電気機器との接続及び遮断を行う機能を有する。ジャンクションボックス12の内部には、駆動用バッテリ13と各種電気機器を電気的に接続する電路及び当該電路の断接を行う各種コンタクタ(電磁接触器)やリレー等のスイッチ類が設けられており、当該スイッチの断接を行うことで、駆動用バッテリ13から各種電気機器への電力の供給や遮断を制御可能である。ジャンクションボックス12に接続される各種電気機器の一つとして車載充電開閉器14がある。
【0029】
車載充電開閉器14は、図示しないフィルタや電力変換回路及びリレーを備え、外部充電器2から供給された電力を駆動用バッテリ13に供給する機能を有する。車載充開閉器14は外部充電器2との通信機能を有する。車載充電開閉器14は、充電インレット15と接続されている。充電インレット15は、外部充電器2のコネクタ2aと嵌合接続する急速充電用の受電端子を備えている。
【0030】
充電インレット15にコネクタ2aが接続されると、外部充電器2により車両1(厳密には車載充電開閉器14)に対して充電前処理が行われる。充電前処理としては、少なくとも絶縁試験が含まれる。絶縁試験は、充電インレット15にコネクタ2aが接続された際に、充電を開始する前に外部充電器2が車両1に対して電圧を印加して外部充電器2と車両1との間での絶縁状況を確認する試験である。この絶縁試験において印加する電圧値の挙動特性は外部充電器2によって異なる。なお、外部充電器2は、当該絶縁試験により、絶縁されていないと判定した場合には、充電を開始しない。
【0031】
また充電前処理としては、充電制御プロトコルの確認処理が含まれる。充電制御プロトコルは、基本的には規格上定められたプロトコルが使用されるが、細かい通信手順等の挙動は外部充電器によって異なることから、車載充電開閉器14は充電前に充電制御プロトコルの確認処理を行う。
【0032】
また車両1には記憶部16、通信部17、車両制御ユニット20(Vehicle Control Unit、以下VCU20という。)が搭載されている。
【0033】
記憶部16は、例えばハードディスクやSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置であり、各種情報が記憶されている。本実施形態の記憶部16には外部充電器情報が記憶されている。外部充電器情報には、外部充電器の機種情報、各車両との適合情報、充電前処理情報が含まれる。外部充電器の機種情報としては、例えば外部充電器の製造元、型番、規格及びその規格のバージョン、等の情報が含まれる。各車両との適合情報としては、車両メーカー、車種、型式、製造年月日、等の車両情報に対応した適合の有無(適合不明も含む)等の情報が含まれる。充電前処理情報としては、上述した絶縁試験における電圧値の挙動特性(具体的には電圧波形)を含む絶縁試験情報、上述した充電制御プロトコルの挙動等を含むプロトコル情報が含まれる。なお、外部充電器情報はこれだけに限られず、例えば設置位置の情報、等の他の情報が含まれてもよい。
【0034】
図2を参照すると、外部充電器情報の例(a)~(c)が示されており、記憶部16に記憶されている外部充電器情報についての例を説明する。
【0035】
図2(a)に示す第1外部充電器は、A社製の型番aa-11、規格バージョン0.xの機種であり、絶縁試験時には後半に向けて徐々に電圧が立ち上がる電圧値の挙動特定を示し、充電制御プロトコルは挙動Aタイプであることがわかる。そして、第1外部充電器は自車両と適合することが確認されていることがわかる。
【0036】
図2(b)に示す第2外部充電器は、B社製の型番bb-05、規格バージョン1.xの機種であり、絶縁試験時に2段階の電圧が立ち上がる電圧値の挙動特定を示し、充電制御プロトコルは挙動Bタイプであることがわかる。そして、第2外部充電器は自車両と適合しない(不適合)であることが確認されていることがわかる。このように規格のバージョンが古い場合に不適合となるケースがある。
【0037】
図2(c)に示す第3外部充電器は、C社製の型番cc-15、規格バージョン2.xの機種であり、絶縁試験時に3回電圧が立ち上がる電圧値の挙動特定を示し、充電制御プロトコルは挙動Aタイプであることがわかる。そして、第3外部充電器は自車両と適合しない(不適合)であることが確認されていることがわかる。このように自車両と適合する第1外部充電器と同じ規格のバージョンがある場合でも不適合となるケースがある。
【0038】
このような外部充電器情報は、車両1の記憶部16に記憶されているとともに、充電器管理サーバ3の外部充電器データベース3aにも記憶されている。
【0039】
通信部17は、例えばインターネットや専用ネットワーク等の外部の情報ネットワークと無線通信可能な通信機である。本実施形態では、通信部17は、ネットワークNを介して充電器管理サーバ3と相互に通信可能に接続されている。
【0040】
VCU20は、中央処理装置(CPU)、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される主記憶装置(ROM、RAMなど)、入出力装置、タイマカウンタなどを備えるコンピュータである。VCU20は、車両内通信ネットワークであるCAN(Control Area Network)を介して、車両1に搭載された各種機器や他の制御ユニットと通信可能に接続されている。本実施形態のVCU20は、上述したモータ10、インバータ11、ジャンクションボックス12、駆動用バッテリ13、車載充電開閉器14、記憶部16、通信部17と通信可能に接続されている。そして、VCU20は車両1における外部充電器2による急速充電に関する制御を実行可能である。
【0041】
具体的にはVCU20は、外部充電器2を識別する充電器識別部21と、駆動用バッテリ13への充電関係を制御する充電制御部22とを有している。
【0042】
充電器識別部21は、外部充電器2が接続されて駆動用バッテリ13への充電が開始される前の充電前処理に基づいて外部充電器2を識別する機能を有する。具体的には、充電器識別部21は、外部充電器2が接続されて駆動用バッテリ13への充電が開始される前の充電前処理と、記憶部16に記憶された充電前処理情報とを照合して、外部充電器2の機種情報を特定することで外部充電器2の識別を行う。例えば、充電器識別部21は、充電前処理である絶縁試験において、車載充電開閉器14に印加される電圧を検出し解析した電圧値の挙動特性から外部充電器2を識別する。さらに本実施形態の充電器識別部21は、さらに外部充電器2の接続時に外部充電器2から車両1に送信される充電制御プロトコル等の情報を取得し、これを補足情報として加味して、外部充電器2を識別することも可能である。
【0043】
充電制御部22は、充電器識別部21により識別された外部充電器が、自車両と適合する外部充電器でない場合には充電を開始させない機能を有している。具体的には、充電制御部22は、充電器識別部21により識別された外部充電器2に対応する適合情報を記憶部16から取得して、外部充電器2が自車両と適合する外部充電器でない場合に充電を開始させないよう制御する。一方で充電制御部22は、外部充電器2が自車両と適合する外部充電器である場合には充電を開始させる制御を行う。この充電の開始させる又はさせない制御は、本実施形態では車載充電開閉器14におけるリレーのON、OFF制御により行う。また充電制御部22は、外部充電器2のコネクタ2aが充電インレット15に接続されているか否かの判定等、その他の充電関係の制御も行う。
【0044】
また、充電制御部22は充電を開始させないよう、充電を停止させた際には、充電が開始されないことをドライバー等の充電作業者に認識させるための警告処理も実行可能である。具体的な警告処理としては、充電制御部22は、例えば車両1のメータパネルに設けられた充電異常を知らせるインジケータを点灯させたり、車両1が備える表示画面にエラーメッセージを表示させたり、警告音を発したりする。
【0045】
また、充電制御部22は、通信部17を介して充電器管理サーバ3の外部充電器データベース3aから最新の外部充電器情報を取得して、記憶部16の記憶された外部充電器情報を更新可能である。充電制御部22は、このような記憶部16の情報の更新を逐次又は定期的に行う。
【0046】
さらに、充電制御部22は、記憶部16及び外部充電器データベース3aに記憶されていない外部充電器と接続した場合、即ち充電器識別部21による外部充電器の識別ができなかった場合に、車両1側で取得した充電前処理情報や充電制御プロトコル情報等の充電前処理情報と、自車両との適合情報を、通信部17を介して充電器管理サーバ3にアップロードして、外部充電器データベース3a外部充電器情報を更新してもよい。このように各車両側で得た外部充電器情報に基づいて外部充電器データベース3aを更新していくことで、自動的に外部充電器情報を蓄積していくことができるようになる。
【0047】
図3には、本実施形態のVCU20が実行する充電制御ルーチンを示すフローチャートが示されており、以下同フローチャートに沿って本実施形態の充電制御の手順について説明する。
【0048】
まず、ステップS1としてVCU20の充電制御部22は、充電インレット15の急速充電用の受電端子に外部充電器2のコネクタ2aが接続されたか否かを判定する。当該判定結果が偽(No)である場合は、VCU20は充電制御ルーチンを終了する。一方、当該判定結果が真(Yes)である場合、即ちコネクタ2aが接続された場合、VCU20はステップS2に処理を進める。
【0049】
ステップS2において、VCU20の充電器識別部21は、充電前処理である充電制御プロトコルの確認を行う。具体的には、充電制御部22は、外部充電器2から車両1に送信される充電制御プロトコル等の情報を取得する。充電制御プロトコル等の情報の取得が終了するとVCU20はステップS3に処理を進める。
【0050】
ステップS3において、外部充電器2により絶縁試験が実施される。この時VCU20の充電器識別部21は、外部充電器2から印加される電圧を逐次検出して記憶部16に記憶する。絶縁試験が終了するとVCU20はステップS4に処理を進める。
【0051】
ステップS4において、VCU20の充電器識別部21は、ステップS3にて検出した電圧から、電圧値の挙動特性である電圧波形の解析を行う。電圧波形の解析が終了するとVCU20はステップS5に処理を進める。
【0052】
ステップS5において、VCU20の充電器識別部21は、接続された外部充電器2の識別を行う。具体的には、充電器識別部21は、ステップS4にて解析した電圧波形と一致又は類似する電圧波形を有する外部充電器情報を記憶部16から照合することで今回接続された外部充電器2の外部充電器情報を特定する。また、解析した電圧波形と一致又は類似する電圧波形を有する外部充電器情報が記憶部16に複数存在していたり、一致又は類似する電圧波形を有する外部充電器情報が記憶部16に存在していなかったりする場合には、ステップS2で取得した充電制御プロトコル等の情報も加味して、外部充電器情報を特定する。
【0053】
ステップS6において、VCU20の充電制御部22は、ステップS5にて特定された外部充電器情報から、今回接続された外部充電器2が自車両に適合する外部充電器である否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)である場合、即ち外部充電器情報により自車両と適合することが確認できた場合、VCU20はステップS7に処理を進める。なお、特定された外部充電器情報に自車両との適合に関する情報が登録されていない場合や、ステップS5にて外部充電器を識別できなかった場合も、充電制御部22はステップS6の判定結果が真(Yes)と判定し、ステップS8に処理を進め、新たに取得した情報は記憶部16に新しい外部充電器情報として記憶していく。
【0054】
ステップS7では、VCU20の充電制御部22は充電を開始させる。具体的には、充電制御部22は車載充電開閉器14におけるリレーをONに制御し、当該ルーチンを終了する。
【0055】
一方、上記ステップS6の判定結果が偽(No)である場合、すなわち接続された外部充電器2が外部充電器情報により自車両に不適合であることが確認できた場合、VCU20はステップS8に処理を進める。
【0056】
ステップS8において、VCU20の充電制御部22は、外部充電器2による充電を開始させないよう制御する。具体的には、充電制御部22は車載充電開閉器14におけるリレーをOFFに制御することで、充電を停止させる。充電を停止させる制御が終了すると、VCU20はステップS9に処理を進める。
【0057】
ステップS9において、VCU20の充電制御部22は警告処理を行う。具体的には、充電制御部22は、充電についての異常を知らせるインジケータを点灯させたり、エラーメッセージを表示させたり、警告音を発したりする。警告処理が終了するとVCU20は当該ルーチンを終了する。
【0058】
以上のように本実施形態に係る車両1の充電制御装置は、外部充電器2が接続されて駆動用バッテリ13への充電が開始される前の充電前処理に基づいて外部充電器2を識別する充電器識別部21と、充電器識別部21により識別された外部充電器2が自車両と適合しない外部充電器である場合には充電を開始させない充電制御部22と、を備えている。
【0059】
外部充電器2が接続されると通常、充電を開始するための充電前処理が行われることから、当該充電前処理に基づいて外部充電器を識別することで、車両側で外部充電器の識別を行うことができる。そして、識別された外部充電器が自車両と適合しない外部充電器である場合には充電を開始させないことで、自車両と適合しない外部充電器の使用による充電トラブルを回避することができる。
【0060】
本実施形態においては、充電前処理が外部充電器2から電圧を印加して絶縁の有無を判定する絶縁試験であり、充電器識別部21は、絶縁試験の電圧値の挙動特性(電圧波形)から外部充電器2を識別する。通常、急速充電を行う際には、充電前処理として絶縁試験が行われており、その電圧値の挙動は外部充電器によって異なることから、当該電圧値の挙動特性から外部充電器を識別することで、外部充電器と通信等をすることなく容易に外部充電器を識別することができる。
【0061】
また、充電器識別部21は、外部充電器2の機種を特定することで識別している。このように、外部充電器の機種単位での識別を行うことで、適切且つ容易に適合の有無を判定できるようになる。
【0062】
また、本実施形態では、外部充電器に応じた充電前処理情報と、外部充電器と車両との適合情報と、を含む外部充電器情報を記憶した記憶部16を有しており、充電器識別部21は、外部充電器2が接続されて駆動用バッテリ13への充電が開始される前の充電前処理と、記憶部16に記憶された充電前処理情報とを照合して外部充電器2を識別する。そして、充電制御部22は、充電器識別部21により識別された外部充電器2と、記憶部16に記憶された適合情報とを照合して、外部充電器2が自車両と適合する外部充電器でない場合に充電を開始させないよう制御する。
【0063】
このように外部充電器の充電前処理情報と適合情報とを含む外部充電器情報を記憶部16に記憶しておき、外部充電器2と接続した際には、この外部充電器情報と照合することで、容易に外部充電器2の識別及び適合性の判定を行うことができる。
【0064】
また充電器識別部21は、さらに外部充電器2の接続時に外部充電器2から自車両に送信される充電制御プロトコル等の情報も加味して外部充電器2の識別を行っている。このように、絶縁試験以外の充電前処理の情報を補助情報として外部充電器2の識別を行うことで、外部充電器2の識別精度を向上させることができる。
【0065】
また充電制御部22は、充電を開始させない制御を行うとともに、充電を開始しない旨の警告処理を実行している。これにより、ドライバー等の充電作業者に対して充電が開始されない旨を認識させ、充電作業者に充電トラブルの回避行動を促すことができる。
【0066】
さらに、充電制御部22は、通信部17を介して記憶部16に記憶された外部充電器情報の更新を行っている。これにより最新の情報に基づいて外部充電器の識別及び適合性の判定を行うことができ、より確実に充電トラブルを回避することができる。
【0067】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0068】
上記実施形態では車両1は電気自動車であるが、本発明は外部充電器から駆動用バッテリを充電可能な車両であればよく、例えばハイブリッド電気自動車であってもよい。
【0069】
上記実施形態では充電制御部22による充電を開始させる又はさせない制御を車載充電開閉器14におけるリレーのON、OFF制御により行っているが、駆動用バッテリへの充電を制御できればよく、例えばジャンクションボックスにおけるリレーのON、OFF制御により行ってもよい。
【0070】
また、上記実施形態では車両1に搭載された記憶部16に、外部充電器の充電前処理情報と適合情報とを含む外部充電器情報を記憶して、充電器識別部21と充電制御部22は記憶部16の情報と識別することで、外部充電器の識別及び適合性の判定を行っているが、当該記憶部は車両に搭載されたものに限られない。例えば、上記実施形態の充電器管理サーバが備える外部充電器データベースに記憶された外部充電器情報に基づいて外部充電器の識別及び適合性の判定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 車両
2 外部充電器
2a コネクタ
3 充電器管理サーバ
3a 外部充電器データベース
10 モータ
11 インバータ
12 ジャンクションボックス
13 駆動用バッテリ
14 車載充電開閉器
15 充電インレット
16 記憶部
17 通信部
20 VCU
21 充電器識別部
22 充電制御部