(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】充電器管理装置、及び充電制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240723BHJP
B60L 53/60 20190101ALI20240723BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20240723BHJP
G16Y 40/35 20200101ALI20240723BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/00 Q
B60L53/60
G16Y10/40
G16Y40/35
(21)【出願番号】P 2022200159
(22)【出願日】2022-12-15
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】寺田 一朗
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/040742(WO,A1)
【文献】特開2019-129671(JP,A)
【文献】特開2020-108244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
G16Y 10/40
G16Y 40/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部充電器と車両との適合性を管理する充電器管理装置であって、
外部充電器と車両とを接続して充電を行った際の状況に関する充電状況情報を取得する情報取得部と、
前記充電状況情報から外部充電器と車両との適合性に関する適合性情報を生成する適合性情報生成部と、
前記充電状況情報と前記適合性情報とを記憶する管理記憶部と、
を備え、
前記情報取得部は、前記充電状況情報として、前記車両に関する車両情報と、前記車両が接続した外部充電器に関する充電器情報と、前記外部充電器と前記車両との間で生じた充電エラーに関する充電エラー情報と、を取得することを特徴とする充電器管理装置。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記充電エラー情報として、前記外部充電器の接続から前記車両の駆動用バッテリへの充電が開始されるまでの充電前処理における充電エラーに関する情報が含まれる、請求項1に記載の充電器管理装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記充電器情報として、外部充電器の接続から前記車両の駆動用バッテリへの充電が開始されるまでの充電前処理に基づいて識別された前記外部充電器の識別情報を含めて取得する、請求項1に記載の充電器管理装置。
【請求項4】
前記充電前処理は、外部充電器から車両へ電圧を印加して絶縁状況を確認する絶縁試験を含み、
前記識別情報は、前記絶縁試験時に印加される電圧値の挙動特性から前記外部充電器を識別した情報である、請求項3に記載の充電器管理装置。
【請求項5】
さらに前記適合性情報を含む配信情報を生成して、各車両に配信する配信情報生成部を備える、請求項1に記載の充電器管理装置。
【請求項6】
外部充電器から車両の駆動用バッテリへの充電を制御する充電制御装置であって、
接続された外部充電器と車両との間で生じた充電エラーを検出する充電エラー検出部と、
外部充電器と車両とを接続して充電を行った際の状況に関する充電状況情報を生成する充電状況情報生成部と、
ネットワークを介して前記充
電状況情報を外部に送信する通信部と、
を備え、
前記充電状況情報生成部は、前記充電状況情報として、前記車両に関する車両情報と、前記車両と接続した前記外部充電器に関する充電器情報と、前記充電エラー検出部により検出されたエラーに関する充電エラー情報と、が含まれた情報を生成
し、
前記通信部は、充電状況情報に基づいて生成された、外部充電器と車両との適合性に関する適合性情報を外部から取得し、
接続された外部充電器と車両とが前記適合性情報において不適合である場合に充電を停止する充電制御部を備えることを特徴とする充電制御装置。
【請求項7】
前記充電エラー検出部は、充電エラーとして、前記外部充電器の接続から前記駆動用バッテリへの充電が開始されるまでの充電前処理において発生した充電エラーを検出する請求項6に記載の充電制御装置。
【請求項8】
さらに、前記外部充電器の接続から前記駆動用バッテリへの充電が開始されるまでの充電前処理に基づいて前記外部充電器を識別する充電器識別部を備え、
前記充電状況情報生成部は、前記充電器情報として、前記充電器識別部により識別した前記外部充電器の識別情報を含めて、前記充電状況情報を生成する請求項6に記載の充電制御装置。
【請求項9】
前記充電前処理は、前記外部充電器から前記車両に電圧を印加して絶縁状況を確認する絶縁試験であり、
前記充電器識別部は、前記絶縁試験時に印加される電圧値の挙動特性から前記外部充電器を識別する、請求項8に記載の充電制御装置。
【請求項10】
外部充電器から車両の駆動用バッテリへの充電を制御する充電制御装置であって、
接続された外部充電器と車両との間で生じた充電エラーを検出する充電エラー検出部と、
外部充電器と車両とを接続して充電を行った際の状況に関する充電状況情報を生成する充電状況情報生成部と、
前記充電状況情報を記憶する車両記憶部と、
を備え、
前記充電状況情報生成部は、前記充電状況情報として、前記車両に関する車両情報と、前記車両と接続した前記外部充電器に関する充電器情報と、前記充電エラー検出部により検出されたエラーに関する充電エラー情報と、が含まれた情報を生成し、
前記車両記憶部は、充電状況情報に基づいて生成された、外部充電器と車両との適合性に関する適合性情報が記憶されており、
接続された外部充電器と車両とが前記適合性情報において不適合である場合に充電を停止する充電制御部を備えることを特徴とする充電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は充電器管理装置、及び充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両に対して外部充電器から充電を行うには、充電方式の規格が一致していなければ充電器を物理的に又は電気的に接続することができない。
【0003】
そこで、特許文献1には、車両の充電方式の規格が適合する外部充電器(充電ステーション)を抽出して、車両に対して位置情報を示したり、そこまでのルートを案内したりする技術が開示されている。また、特許文献2には、車両が外部充電器(充電施設)を利用した際の充電実績情報をデータベースに蓄積する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-39289号公報
【文献】特開2011-237406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に急速充電を行うためのDC充電器では、規格が適合していても、特定の車両と特定の外部充電器における電気的な互換性不具合(いわゆる相性問題)により、充電が正常に開始されなかったり、充電が遅延したり、車両側又は外部充電器に不具合が生じたり、等の充電トラブルが生じるおそれがある。
【0006】
上記特許文献1、2は、いわゆる相性問題については言及しておらず、規格が適合するはずの外部充電器を案内したにもかかわらず充電トラブルが生じる場合がある。充電トラブルが生じると、そもそも充電実績情報を収集することもできず、特許文献2のような技術ではデータベースに情報を蓄積できないという問題がある。また、特許文献2では、外部充電器と車両とを接続した際に、車両が外部充電器と電力線を介して外部充電器の各種情報を取得しているが、規格上そのような構造や通信プロトコルが含まれていない場合には車両側で外部充電器を識別することすら困難である。
【0007】
そのため、車両と外部充電器との相性問題も考慮した上で、充電トラブルを生じるおそれのある外部充電器の使用を防ぐ技術が望まれている。
【0008】
以上から、本願の解決すべき課題は、充電トラブルの発生を防ぎ、電気自動車の充電利便性を向上させることができる充電器管理装置、及び充電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0010】
(1)本適用例に係る充電器管理装置は、外部充電器と車両との適合性を管理する充電器管理装置であって、外部充電器と車両とを接続して充電を行った際の状況に関する充電状況情報を取得する情報取得部と、前記充電状況情報から外部充電器と車両との適合性に関する適合性情報を生成する適合性情報生成部と、前記充電状況情報と前記適合性情報とを記憶する管理記憶部と、を備え、前記情報取得部は、前記充電状況情報として、前記車両に関する車両情報と、前記車両が接続した外部充電器に関する充電器情報と、前記外部充電器と前記車両との間で生じた充電エラーに関する充電エラー情報と、を取得することを特徴とする。
【0011】
つまり、本適用例に係る充電器管理装置は、車両に外部充電器を接続して充電を行った際の充電状況情報として、車両と外部充電器の情報に加えて充電エラー情報を取得する。そして、このような充電状況情報から外部充電器と車両との適合性情報を生成し、管理記憶部に記憶することでデータベース化する。このようなデータベースを構築することで、車両と外部充電器との相性問題も考慮した上で、充電トラブルを生じるおそれのある外部充電器の把握をすることができる。これにより、充電トラブルの発生を防ぎ、電気自動車の充電利便性を向上させることができる。
【0012】
(2)上記適用例に係る充電器管理装置は、上記(1)において、前記情報取得部は、前記充電エラー情報として、前記外部充電器の接続から前記車両の駆動用バッテリへの充電が開始されるまでの充電前処理における充電エラーに関する情報が含まれてもよい。
【0013】
このように充電管理装置は、充電前処理時における充電エラーの充電エラー情報を取得してデータベース化をすることで、充電が開始される前の段階での外部充電器と車両との不適合を把握することができ、より未然に充電トラブルの発生を防ぐことができる。
【0014】
(3)上記適用例に係る充電器管理装置は、上記(1)において、前記情報取得部は、前記充電器情報として、外部充電器の接続から前記車両の駆動用バッテリへの充電が開始されるまでの充電前処理に基づいて識別された前記外部充電器の識別情報を含めて取得してもよい。
【0015】
このように、充電前処理情報に基づく外部充電器の識別情報を取得してデータベース化することで、車両と外部充電器とが直接的に通信できない仕様であっても外部充電器を識別することが可能となり、より利便性の高いデータベースを構築することが可能となる。
【0016】
(4)上記適用例に係る充電器管理装置は、上記(3)において、前記充電前処理は、外部充電器から車両へ電圧を印加して絶縁状況を確認する絶縁試験を含み、前記識別情報は、前記絶縁試験時に印加される電圧値の挙動特性から前記外部充電器を識別した情報であってもよい。通常、急速充電を行う際には、充電前処理として絶縁試験が行われており、その電圧値の挙動は外部充電器によって異なることから、当該電圧値の挙動特性から外部充電器を識別することで、外部充電器と通信等をすることなく容易に外部充電器を識別することができる。
【0017】
(5)上記適用例に係る充電器管理装置は、上記(1)において、さらに前記適合性情報を含む配信情報を生成して、各車両に配信する配信情報生成部を備えてもよい。このように適合性情報を各車両に配信することで、車両ごとの充電トラブルの発生を防ぐことができ、電気自動車の充電利便性を向上させることができる。
【0018】
(6)本適用例に係る充電制御装置は、外部充電器から車両の駆動用バッテリへの充電を制御する充電制御装置であって、接続された外部充電器と車両との間で生じた充電エラーを検出する充電エラー検出部と、外部充電器と車両とを接続して充電を行った際の状況に関する充電状況情報を生成する充電状況情報生成部と、ネットワークを介して前記充電接続状況情報を外部に送信する通信部と、を備え、前記充電状況情報生成部は、前記充電状況情報として、前記車両に関する車両情報と、前記車両と接続した前記外部充電器に関する充電器情報と、前記充電エラー検出部により検出されたエラーに関する充電エラー情報と、が含まれた情報を生成することを特徴とする。
【0019】
つまり、本適用例に車両の充電制御装置は、外部充電器を接続して充電を行った際の充電状況情報として、自車両と外部充電器の情報に加えて充電エラー情報を外部に送信し共有化する。このような情報を共有化することで、車両と外部充電器との相性問題も考慮した上で、充電トラブルを生じるおそれのある外部充電器の把握することができる。これにより、充電トラブルの発生を防ぎ、電気自動車の充電利便性を向上させることができる。
【0020】
(7)本適用例に係る車両の充電制御装置は、上記(6)において、前記充電エラー検出部は、充電エラーとして、前記外部充電器の接続から前記駆動用バッテリへの充電が開始されるまでの充電前処理において発生した充電エラーを検出してもよい。
【0021】
このように車両の充電制御装置は、充電前処理時における充電エラーの充電エラー情報を共有することで、充電が開始される前の段階での外部充電器と車両との不適合を把握することができ、より未然に充電トラブルの発生を防ぐことができる。
【0022】
(8)本適用例に係る車両の充電制御装置は、上記(6)において、さらに、前記外部充電器の接続から前記駆動用バッテリへの充電が開始されるまでの充電前処理に基づいて前記外部充電器を識別する充電器識別部を備え、前記充電状況情報生成部は、前記充電器情報として、前記充電器識別部により識別した前記外部充電器の識別情報を含めて、前記充電状況情報を生成してもよい。
【0023】
このように、充電前処理情報に基づく外部充電器の識別情報を外部に送信することで、車両と外部充電器とが直接的に通信できない仕様であっても外部充電器を識別することが可能となり、より利便性の高い情報を共有化することが可能となる。
【0024】
(9)本適用例に係る車両の充電制御装置は、上記(8)において、前記充電前処理は、前記外部充電器から前記車両に電圧を印加して絶縁状況を確認する絶縁試験であり、前記充電器識別部は、前記絶縁試験時に印加される電圧値の挙動特性から前記外部充電器を識別してもよい。通常、急速充電を行う際には、充電前処理として絶縁試験が行われており、その電圧値の挙動は外部充電器によって異なることから、当該電圧値の挙動特性から外部充電器を識別することで、外部充電器と通信等をすることなく容易に外部充電器を識別することができる。
【0025】
(10)本適用例に係る車両の充電制御装置は、上記(6)において、前記通信部は、充電状況情報に基づいて生成された、外部充電器と車両との適合性に関する適合性情報を外部から取得し、接続された外部充電器と車両とが前記適合性情報において不適合である場合に充電を停止する充電制御部をさらに備えてもよい。このように、接続された外部充電器と車両とが、取得した適合性情報において不適合である場合には、充電を停止することで、充電トラブルの発生を防ぐことができ、電気自動車の充電利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る充電器管理装置及び充電制御装置を含む充電器管理システムの概略構成図である。
【
図4】VCUが実行する充電制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図5】充電器管理サーバと車両との間の情報のやり取りを整理した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施形態について説明する。
【0028】
図1には本発明の一実施形態に係る充電器管理装置及び充電制御装置を含む充電器管理システムの概略構成図が示され、
図2には外部充電器情報の例(a)~(c)が示されている。以下、これらの図に基づいて、本実施形態に係る充電器管理装置及び充電制御装置を含む充電器管理システムの構成について説明する。
【0029】
図1の示す一実施形態に係る充電器管理システムは、主に、充電制御装置を備えた車両1と、車両に対して充電を行う外部充電器2と、車両1とネットワークNを介して相互に通信可能に接続された充電器管理サーバ3(充電器管理装置)から構成されている。なお、
図1では説明の簡略化のため、車両1、外部充電器2、充電器管理サーバ3はそれぞれ1つ示しているが、充電器管理システムとしては各装置が複数あってもよい。
【0030】
(外部充電器)
外部充電器2は、車両1に電力を供給するための充電設備である。本実施形態では、外部充電器2は車両1に対して直流(DC)で、所定の電圧(450V)、所定の出力(例えば50kW)以上の充電が可能なDC急速充電器である。外部充電器2はケーブルの先端に車両1と接続可能なコネクタ2aが設けられている。なお、本実施形態の外部充電器2はDC急速充電規格であるCHAdeMO(登録商標)に準拠しているものを例に説明するが、本発明を適用可能な充電規格はこれに限られず、他の規格に適用してもよい。
【0031】
(車両)
車両1は、例えば電気自動車であり、動力源として走行用モータ10(以下モータ10という)が搭載されている。図示しないがモータ10の出力軸は減速装置及び差動装置から構成される動力伝達部及び駆動軸を介して左右の駆動輪に接続されている。モータ10が発生する駆動力が駆動輪に伝達されることで車両1は走行可能である。
【0032】
モータ10は、インバータ・コンバータ(以下、単にインバータ11という)及びジャンクションボックス12を介して高電圧(例えば200V)の駆動用バッテリ13と電気的に接続されている。
【0033】
駆動用バッテリ13は、例えばリチウムイオンバッテリ等の二次電池である。駆動用バッテリ13は蓄えられた直流電力を、インバータ11を介することで交流電力に変換しモータ10に供給する。また、例えば車両1の減速時や降坂路の走行時(回生走行時)には、駆動輪側からの逆駆動力によりモータ10が発電機として作動(回生運転)する。車両1は、このモータ10が発電した電力により駆動用バッテリ13を充電することも可能である。
【0034】
ジャンクションボックス12は、駆動用バッテリ13と車両1に搭載された各種電気機器との接続及び遮断を行う機能を有する。ジャンクションボックス12の内部には、駆動用バッテリ13と各種電気機器を電気的に接続する電路及び当該電路の断接を行う各種コンタクタ(電磁接触器)やリレー等のスイッチ類が設けられており、当該スイッチの断接を行うことで、駆動用バッテリ13から各種電気機器への電力の供給や遮断を制御可能である。ジャンクションボックス12に接続される各種電気機器の一つとして車載充電開閉器14がある。
【0035】
車載充電開閉器14は、図示しないフィルタや電力変換回路及びリレーを備え、外部充電器2から供給された電力を駆動用バッテリ13に供給する機能を有する。車載充電開閉器14は外部充電器2との通信機能を有する。車載充電開閉器14は、充電インレット15と接続されている。充電インレット15は、外部充電器2のコネクタ2aと嵌合接続する急速充電用の受電端子を備えている。
【0036】
充電インレット15にコネクタ2aが接続されると、外部充電器2により車両1(厳密には車載充電開閉器14)に対して充電前処理が行われる。充電前処理としては、少なくとも絶縁試験が含まれる。絶縁試験は、充電インレット15にコネクタ2aが接続された際に、充電を開始する前に外部充電器2が車両1に対して電圧を印加して外部充電器2と車両1との間での絶縁状況を確認する試験である。この絶縁試験において印加する電圧値の挙動特性は外部充電器2によって異なる。なお、外部充電器2は、当該絶縁試験により、絶縁されていないと判定した場合には、充電を開始しない。一方、外部充電器2は、絶縁試験により、絶縁されていると判定した場合には、充電を開始するため、車両1に対して充電許可を与え、車両1は車載充電開閉器14のリレーを投入する。
【0037】
また充電前処理としては、充電制御プロトコルの確認処理が含まれる。充電制御プロトコルは、基本的には規格上定められたプロトコルが使用されるが、細かい通信手順等の挙動は外部充電器によって異なることから、車載充電開閉器14は充電前に充電制御プロトコルの確認処理を行う。
【0038】
また車両1には車両記憶部16、車両通信部17、車両制御ユニット20(Vehicle Control Unit、以下VCU20という。)が搭載されている。
【0039】
車両記憶部16は、例えばハードディスクやSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置であり、各種情報が記憶されている。本実施形態の車両記憶部16には、自車両に関する車両情報、外部充電器2に関する充電器情報、充電器管理サーバ3から配信された適合性情報、及び後述する充電エラー情報が記憶されている。
【0040】
車両情報は、自車両の製造メーカ、車種、型式、製造年月日、等の情報が含まれる。
【0041】
充電器情報には、外部充電器の機種情報、充電前処理情報、外部充電器が設置されている設置位置情報が含まれる。外部充電器の機種情報としては、例えば外部充電器の製造元、型番、規格及びその規格のバージョン、等の情報が含まれる。また、外部充電器の出力可能電流や出力可能電圧といった充電性能に関わる情報が含まれてもよい。充電前処理情報としては、上述した絶縁試験における電圧値の挙動特性(具体的には電圧波形)を含む絶縁試験情報、上述した充電制御プロトコルの挙動等を含むプロトコル情報が含まれる。設置位置情報は外部充電器が設置されている位置の緯度、経度、標高等の情報である。なお、外部充電器情報はこれだけに限られず、例えば外部充電器の外観を示す画像情報等、他の情報が含まれてもよい。
【0042】
適合性情報には、外部充電器と自車両との適合性に関する情報が含まれる。適合性は、充電エラーなく充電可能な外部充電器の場合は「適合」、例えば同車種で充電エラーが発生したことがある等、自車両の充電に支障がある外部充電器の場合は「不適合」の情報という情報が含まれている。なお、例えば同車種で接続したことがない外部充電器の場合は「適合不明」という情報が含まれていてもよい。さらに、「不適合」について重要度又は緊急度を設定し、当該重要度又は緊急度に応じて後述する充電停止の手順や警告の種類を異ならせてもよい。
【0043】
また、適合性情報には外部充電器を識別するため、充電器情報も含まれている。具体的には
図2を参照すると、適合性情報の例(a)~(c)が示されており、車両記憶部16に記憶されている適合性情報についての例を説明する。
【0044】
図2(a)に示す第1外部充電器は、A社製の型番aa-11、規格バージョン0.xの機種であり、絶縁試験時には後半に向けて徐々に電圧が立ち上がる電圧値の挙動特定を示し、充電制御プロトコルは挙動Aタイプであることがわかる。そして、第1外部充電器は自車両と適合することが確認されていることがわかる。
【0045】
図2(b)に示す第2外部充電器は、B社製の型番bb-05、規格バージョン1.xの機種であり、絶縁試験時に2段階の電圧が立ち上がる電圧値の挙動特定を示し、充電制御プロトコルは挙動Bタイプであることがわかる。そして、第2外部充電器は自車両と適合しない(不適合)であることが確認されていることがわかる。このように規格のバージョンが古い場合に不適合となるケースがある。
【0046】
図2(c)に示す第3外部充電器は、C社製の型番cc-15、規格バージョン2.xの機種であり、絶縁試験時に3回電圧が立ち上がる電圧値の挙動特定を示し、充電制御プロトコルは挙動Aタイプであることがわかる。そして、第3外部充電器は自車両と適合しない(不適合)であることが確認されていることがわかる。このように自車両と適合する第1外部充電器と同じ規格のバージョンがある場合でも不適合となるケースがある。
【0047】
このような充電器情報及び適合性情報は、車両1の車両記憶部16に記憶されているとともに、後述する充電器管理サーバ3の充電器管理データベース31にも記憶されている。
【0048】
車両通信部17は、例えばインターネットや専用ネットワーク等の外部の情報ネットワークと無線通信可能な通信機である。本実施形態では、車両通信部17は、ネットワークNを介して充電器管理サーバ3のサーバ通信部30と相互に通信可能に接続されている。
【0049】
VCU20は、中央処理装置(CPU)、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される主記憶装置(ROM、RAMなど)、入出力装置、タイマカウンタなどを備えるコンピュータである。VCU20は、車両内通信ネットワークであるCAN(Control Area Network)を介して、車両1に搭載された各種機器や他の制御ユニットと通信可能に接続されている。本実施形態のVCU20は、上述したモータ10、インバータ11、ジャンクションボックス12、駆動用バッテリ13、車載充電開閉器14、車両記憶部16、車両通信部17と通信可能に接続されている。そして、VCU20は車両1における外部充電器2による急速充電に関する制御を実行可能である。
【0050】
具体的にはVCU20は、接続された外部充電器2を識別する充電器識別部21と、接続された外部充電器2との間で生じた充電エラーを検出するエラー検出部22(充電エラー検出部)と、外部充電器2と接続して充電を行う際の状況に関する充電状況情報を生成する充電状況情報生成部23と、駆動用バッテリ13への充電関係を制御する充電制御部24と、を有している。
【0051】
充電器識別部21は、外部充電器2が接続されて駆動用バッテリ13への充電が開始される前の充電前処理に基づいて外部充電器2を識別する機能を有する。具体的には、充電器識別部21は、外部充電器2が接続されて駆動用バッテリ13への充電が開始される前の充電前処理と、車両記憶部16に記憶された充電前処理情報とを照合して、外部充電器2の機種情報を特定することで外部充電器2の識別を行う。例えば、充電器識別部21は、充電前処理である絶縁試験において、車載充電開閉器14に印加される電圧を検出し解析した電圧値の挙動特性から外部充電器2を識別する。さらに本実施形態の充電器識別部21は、外部充電器2の接続時に外部充電器2から車両1に送信される充電制御プロトコル等の情報を取得し、これを補足情報として加味して、外部充電器2を識別することも可能である。また、本実施形態の充電器識別部21は、図示しない車両GPSと、充電器情報に含まれる位置情報とを比較することで外部充電器2を識別してもよい。また、充電器識別部21は、図示しない車載カメラ等により、接続された外部充電器2を含む充電器画像を撮影し、当該充電器画像を解析して得られる外部充電器2の外観情報(例えば色、ロゴ表示等)と、充電器情報に含まれる画像情報とを比較することで、外部充電器2を識別してもよい。
【0052】
エラー検出部22は、外部充電器2の接続から充電の完了までに生じた充電エラーを検出して、充電エラー情報を生成する機能を有する。例えばエラー検出部22は、充電エラーとして、外部充電器2の接続から駆動用バッテリへの充電が開始されるまでの充電前処理時、その後の充電中、及び充電終了時の各段階(充電プロセス)を区別して充電エラーを検出する。なお、各段階において充電エラーが検出されなかった場合は、エラー無しであることを充電エラー情報として生成する。
【0053】
具体的には充電エラーの種類及びエラー事例が
図3に示されている。
【0054】
同図に示すように、充電前処理時には、充電コネクタ接続、充電制御プロトコル通信、充電器コネクタロック、絶縁試験実施(電圧印加)の各充電プロセスが含まれる。
【0055】
充電コネクタ接続時におけるエラー事例としては、例えば外部充電器2側の充電認証システムの異常や通信の異常で車両1との接続が認識されない場合、外部充電器2側の充電起動信号投入エラーや回路異常により外部充電器2が起動しない場合、外部充電器2側のコネクタ又はケーブルの断線により充電を開始できない場合、等がある。エラー検出部22は、このような充電コネクタ接続時における充電エラーを、充電起動エラーとして検出する。
【0056】
充電器コネクタロック時におけるエラー事例としては、例えば、外部充電器2のコネクタ2aが備えるロック機構の故障により、コネクタ2aがロックされない場合等がある。エラー検出部22は、このような充電器コネクタロック時における充電エラーを、ロック機構エラーとして検出する。ロック機構エラーは、コネクタ2aの脱落による感電事故につながるおそれもあるため重要度又は緊急度が通常よりも高めに設定されている。
【0057】
充電制御プロトコル通信時におけるエラー事例としては、例えば、外部充電器2から車両1への充電パラメータ(送信シグナル、電圧等)の不適合、等がある。エラー検出部22は、このような充電プロトコル通信時における充電エラーを、プロトコルエラーとして検出する。
【0058】
絶縁試験実施(電圧印加)時におけるエラー事例としては、例えば、絶縁試験の結果、外部充電器のコネクタ2aやケーブルの絶縁故障が発見された場合、等がある。エラー検出部22は、このような絶縁試験実施時における充電エラーを、絶縁エラーとして検出する。絶縁エラーは、絶縁故障による感電事故につながるおそれもあるため重要度又は緊急度が通常よりも高めに設定されている。
【0059】
また、充電中におけるエラー事例としては、例えば、外部充電器2の充電出力が異常、過電圧、過電流である場合、コネクタ2aの過熱している場合、外部充電器2の高圧回路絶縁異常等がある。このような充電エラーが発生すると充電は中断され、エラー検出部22は充電中エラーとして検出する。
【0060】
また、充電終了時におけるエラー事例としては、例えば、通信プロトコルが停止されない場合、外部充電器2の充電が終了せず過電圧となる場合、コネクタ2aのロックが解除されない場合、その他充電器側の異常検知、等がある。エラー検出部22は、このような充電終了時における充電エラーを、充電終了エラーとして検出する。
【0061】
充電状況情報生成部23は、外部充電器2と接続した際の状況に関する充電状況情報を生成する機能を有する。具体的には、充電状況情報生成部23は、充電状況情報として、車両記憶部16に記憶されている車両情報と、充電器識別部21において識別した外部充電器2の充電器情報と、エラー検出部22により検出された充電エラーに関する充電エラー情報と、が含まれた情報を生成する。また、充電状況情報生成部23は、生成した充電状況情報を、車両通信部17を介して充電器管理サーバ3へ送信する。
【0062】
なお、充電状況情報生成部23は、車両記憶部16に記憶されていない外部充電器と接続した場合、即ち充電器識別部21による外部充電器の識別ができなかった場合でも、車両1側で取得した充電前処理情報や充電制御プロトコル情報等の充電前処理情報、及び充電エラー情報を、充電状況情報として、車両通信部17を介して充電器管理サーバ3にアップロードする。このように車両側で得た外部充電器情報に基づいて充電器管理データベース31を更新していくことで、自動的に外部充電器情報を蓄積していくことができるようになる。
【0063】
充電制御部24は、充電器識別部21により識別された外部充電器が、自車両と適合する外部充電器でない場合には充電を開始させない機能を有している。具体的には、充電制御部24は、充電器識別部21により識別された外部充電器2に対応する適合性情報を車両記憶部16から取得して、外部充電器2が自車両と適合する外部充電器でない場合に充電を開始させないよう制御する。一方で充電制御部24は、外部充電器2が自車両と適合する外部充電器である場合には充電を開始させる制御を行う。この充電の開始させる又はさせない制御は、本実施形態では車載充電開閉器14におけるリレーのON、OFF制御により行う。また充電制御部24は、外部充電器2のコネクタ2aが充電インレット15に接続されているか否かの判定等、その他の充電関係の制御も行う。
【0064】
また、充電制御部24は充電を開始させないよう、充電を停止させた際には、充電が開始されないことをドライバー等の充電作業者に認識させるための警告処理も実行可能である。具体的な警告処理としては、充電制御部24は、例えば車両1のメータパネルに設けられた充電異常を知らせるインジケータを点灯させたり、車両1が備える表示画面にエラーメッセージを表示させたり、警告音を発したりする。
【0065】
また、充電制御部24は、車両通信部17を介して充電器管理サーバ3の充電器管理データベース31から最新の充電器情報及び適合性情報を含む配信情報を取得して、車両記憶部16の情報を更新可能である。充電制御部24は、このような車両記憶部16の情報の更新を逐次又は定期的に行う。
【0066】
図4には、本実施形態のVCU20が実行する充電制御ルーチンを示すフローチャートが示されており、以下同フローチャートに沿って本実施形態の車両側の充電制御の手順について説明する。
【0067】
まず、ステップS1としてVCU20の充電制御部24は、充電インレット15の急速充電用の受電端子に外部充電器2のコネクタ2aが接続されたか否かを判定する。当該判定結果が偽(No)である場合は、VCU20は充電制御ルーチンを終了する。一方、当該判定結果が真(Yes)である場合、即ちコネクタ2aが接続された場合、VCU20はステップS2に処理を進める。なお、エラー検出部22は、当該ステップS1の段階で、充電エラーが発生すると、外部充電器2の起動に関するエラーは充電起動エラーとして、コネクタ2aのロック機構の関するエラーはロック機構エラーとして検出する。
【0068】
ステップS2において、VCU20の充電器識別部21は、充電前処理である充電制御プロトコルの確認を行う。具体的には、充電制御部24は、外部充電器2から車両1に送信される充電制御プロトコル等の情報を取得する。充電制御プロトコル等の情報の取得が終了するとVCU20はステップS3に処理を進める。なお、エラー検出部22は、当該ステップS2の段階で充電エラーが発生すると、当該充電エラーをプロトコルエラーとして検出する。
【0069】
ステップS3において、外部充電器2により絶縁試験が実施される。この時VCU20の充電器識別部21は、外部充電器2から印加される電圧を逐次検出して車両記憶部16に記憶する。絶縁試験が終了するとVCU20はステップS4に処理を進める。なお、エラー検出部22は、当該ステップS3の段階で充電エラーが発生すると、当該充電エラーを絶縁エラーとして検出する。
【0070】
ステップS4において、VCU20の充電器識別部21は、ステップS3にて検出した電圧から、電圧値の挙動特性である電圧波形の解析を行う。電圧波形の解析が終了するとVCU20はステップS5に処理を進める。
【0071】
ステップS5において、VCU20の充電器識別部21は、接続された外部充電器2の識別を行う。具体的には、充電器識別部21は、ステップS4にて解析した電圧波形と一致又は類似する電圧波形を有する外部充電器情報を車両記憶部16から照合することで今回接続された外部充電器2の外部充電器情報を特定する。また、解析した電圧波形と一致又は類似する電圧波形を有する外部充電器情報が車両記憶部16に複数存在していたり、一致又は類似する電圧波形を有する外部充電器情報が車両記憶部16に存在していなかったりする場合には、ステップS2で取得した充電制御プロトコル等の情報も加味して、外部充電器情報を特定する。
【0072】
ステップS6において、VCU20の充電制御部24は、ステップS5にて特定された外部充電器情報に基づいて、車両記憶部16に記憶されている適合性情報と照合し、今回接続された外部充電器2が自車両に適合する外部充電器である否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)である場合、即ち外部充電器情報により自車両と適合することが確認できた場合、VCU20はステップS7に処理を進める。なお、特定された外部充電器情報に自車両との適合に関する情報が登録されていない場合や、ステップS5にて外部充電器を識別できなかった場合も、充電制御部24はステップS6の判定結果が真(Yes)と判定し、ステップS8に処理を進め、新たに取得した情報は車両記憶部16に新しい外部充電器情報として記憶していく。
【0073】
ステップS7では、VCU20の充電制御部24は充電を開始させる。具体的には、充電制御部24は車載充電開閉器14におけるリレーをONに制御する。
【0074】
ステップS8では、VCU20の充電制御部24は、エラーが生じない限り充電を継続する。なお、エラー検出部22は、当該ステップS8の段階で充電エラーが発生すると、当該充電エラーを充電中エラーとして検出する。
【0075】
ステップS9では、VCU20の充電制御部24は、充電終了条件が満たされると充電終了処理を行う。充電終了条件としては、例えば設定された充電時間に達した場合、駆動用バッテリの充電量(SOC)が所定量に達した場合、等がある。充電終了処理は、具体的には充電制御部24が車載充電開閉器14におけるリレーをOFFに制御することで、充電を停止させる。なお、エラー検出部22は、当該ステップS9の段階で充電エラーが発生すると、当該充電エラーを充電終了エラーとして検出する。
【0076】
一方、上記ステップS6の判定結果が偽(No)である場合、すなわち接続された外部充電器2が適合性情報により自車両に不適合であることが確認できた場合、VCU20はステップS10に処理を進める。
【0077】
ステップS10において、VCU20の充電制御部24は、外部充電器2による充電を開始させないよう制御する。具体的には、充電制御部24は車載充電開閉器14におけるリレーをOFFに制御することで、充電を停止させる。充電を停止させる制御が終了すると、VCU20はステップS11に処理を進める。
【0078】
ステップS11において、VCU20の充電制御部24は警告処理を行う。具体的には、充電制御部24は、充電についての異常を知らせるインジケータを点灯させたり、エラーメッセージを表示させたり、警告音を発したりする。警告処理が終了するとVCU20は当該ルーチンを終了する。
【0079】
なお、この充電制御の手順は充電エラーが発生しなかった場合の流れであり、各ステップにて充電エラーが発生した場合、充電制御部24はその時点で充電終了処理を行う。特に重要度又は緊急度の高い充電エラーを検出した場合は、直ちに充電を停止し通常よりも強い警告を行う。
【0080】
以上のように本実施形態に係る充電管理システムの充電制御装置(VCU20)を備える車両1は、外部充電器2を接続して充電を行った際の充電状況情報として、自車両と外部充電器2の情報に加えて充電エラー情報を充電器管理サーバ3に送信し共有化する。このような情報を共有化することで、車両と外部充電器との相性問題も考慮した上で、充電トラブルを生じるおそれのある外部充電器の把握することができる。これにより、充電トラブルの発生を防ぎ、電気自動車の充電利便性を向上させることができる。
【0081】
また、車両1のVCU20は、充電前処理時における充電エラーの充電エラー情報を共有することで、充電が開始される前の段階での外部充電器と車両との不適合を把握することができ、より未然に充電トラブルの発生を防ぐことができる。
【0082】
また、車両1のVCU20は、充電前処理情報に基づく外部充電器2の識別情報を外部に送信することで、車両と外部充電器とが直接的に通信できない仕様であっても外部充電器を識別することが可能となり、より利便性の高い情報を共有化することが可能となる。
【0083】
特に、本実施形態の車両1のVCU20は、絶縁試験時に印加される電圧値の挙動特性から外部充電器を識別した識別情報を取得する。通常、急速充電を行う際には、充電前処理として絶縁試験が行われており、その電圧値の挙動は外部充電器によって異なることから、当該電圧値の挙動特性から外部充電器を識別することで、外部充電器と通信等をすることなく容易に外部充電器を識別することができる。
【0084】
そして、車両1のVCU20は、このように、接続された外部充電器2と車両1とが、取得した適合性情報において不適合である場合には、充電を停止することで、充電トラブルの発生を防ぐことができ、電気自動車の充電利便性を向上させることができる。
【0085】
(充電器管理サーバ)
充電器管理サーバ3は、外部充電器2の情報を管理するサーバであり、外部のネットワークNと接続されている。充電器管理サーバ3は、サーバ通信部30と、充電器管理データベース31(管理記憶部)と、管理制御部40と、を備えている。
【0086】
サーバ通信部30は、例えばインターネットや専用ネットワーク等の外部の情報ネットワークと無線通信可能な通信機である。本実施形態では、サーバ通信部30は、ネットワークNを介して車両1と相互に通信可能に接続されている。
【0087】
充電器管理データベース31は、例えばハードディスクやSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置であり、各種情報が記憶されている。本実施形態の充電器管理データベース31には、通信部を介して、上述の車両1から取得した充電状況情報、及び、管理制御部40(厳密には適合性情報生成部42)にて生成された適合性情報等の各種情報が記憶されている。
【0088】
管理制御部40は、中央処理装置(CPU)、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される主記憶装置(ROM、RAMなど)、入出力装置、タイマカウンタなどを備えるコンピュータであり、充電器管理サーバ3の各種制御を行う。
【0089】
具体的には管理制御部40は、サーバ通信部30を介して各種情報を取得する情報取得部41と、取得した充電状況情報から外部充電器と車両との適合性に関する適合性情報を生成する適合性情報生成部42と、適合性情報を各車両に配信するための配信情報を生成する配信情報生成部43と、を備えている。
【0090】
情報取得部41は、サーバ通信部を介して、又は充電器管理データベース31から、外部充電器と車両とを接続して充電を行った際の状況に関する充電状況情報を取得する機能を有する。充電状況情報は、上述した通り、車両1に関する車両情報と、当該車両1が接続した外部充電器2に関する充電器情報と、外部充電器2と車両1との間で生じた充電エラーに関する充電エラー情報と、が含まれた情報である。充電エラー情報には、外部充電器2の接続から車両1の駆動用バッテリへの充電が開始されるまでの充電前処理時、その後の充電中、及び充電終了時の各段階(充電プロセス)に応じた充電エラーが区別されて生成されている。
【0091】
また情報取得部41は、充電器情報として、外部充電器2の接続から前記車両の駆動用バッテリへの充電が開始されるまでの充電前処理に基づいて識別された外部充電器2の識別情報を含めて取得する。具体的には、充電前処理は、上述したように、外部充電器2から車両1へ電圧を印加して絶縁状況を確認する絶縁試験であり、識別情報は絶縁試験時に印加される電圧値の挙動特性から外部充電器2を識別した情報である。
【0092】
適合性情報生成部42は、充電器管理データベース31に記憶された複数の充電状況情報を解析して、車種ごとに各外部充電器との適合性を整理して、充電器管理データベース31に記憶する。具体的には、上述したように車種ごとに各外部充電器との適合又は不適合を設定する。さらに、適合性情報生成部42は、例えば充電エラーの重要度又は緊急度に応じて、適合性を段階的に設定したり、条件を付けたりしてもよい。例えばロック機構エラーや絶縁エラー等の重要度又は緊急度の高い充電エラー情報が多い外部充電器については、車両が位置情報や画像情報等によりコネクタ接続前に外部充電器を識別できた段階で警告を行ったり、充電を開始させない等の処理を促す情報を付与してもよい。
【0093】
配信情報生成部43は、最新の充電器情報及び適合性情報を、車種ごとに分類して配信情報を生成し、それぞれ対応する各車両に逐次又は定期的に当該配信情報を送信する。
【0094】
図5には、充電器管理サーバと車両との間の情報のやり取りを整理した説明図が示されている。
【0095】
同図に示すように、充電器管理サーバ3は、上述の車両1の構成を有する複数の車両から、外部充電器と接続する毎に充電状況情報を取得する。この充電状況情報には、車両情報、識別情報を含む充電器情報、充電エラー情報が含まれている。
【0096】
充電器管理サーバ3は取得した充電状況情報を充電器管理データベース31に蓄積する。また、充電器管理サーバ3の適合性情報生成部42は、充電器管理データベース31に蓄積された充電状況情報から適合性情報を生成し、充電器管理データベース31に蓄積する。
【0097】
そして、配信情報生成部43が、適合性情報を含む配信情報を生成して、各車両に配信する。
【0098】
以上のように本実施形態に係る充電管理システムの充電器管理サーバ3は、車両1に外部充電器2を接続して充電を行った際の充電状況情報として、車両1と外部充電器2の情報に加えて充電エラー情報を取得する。そして、このような充電状況情報から外部充電器2と車両1との適合性情報を生成し、充電器管理データベース31に記憶することでデータベース化する。このようなデータベースを構築することで、車両と外部充電器との相性問題も考慮した上で、充電トラブルを生じるおそれのある外部充電器の把握することができる。これにより、充電トラブルの発生を防ぎ、電気自動車の充電利便性を向上させることができる。
【0099】
また、充電器管理サーバ3は、充電エラー情報として充電前処理時の充電エラー情報を取得してデータベース化を行うことで、充電が開始される前の段階での外部充電器と車両との不適合を把握することができ、より未然に充電トラブルの発生を防ぐことができる。
【0100】
また、充電器管理サーバ3は、充電前処理情報に基づく外部充電器の識別情報を取得してデータベース化することで、車両と外部充電器とが直接的に通信できない仕様であっても外部充電器を識別することが可能となり、より利便性の高いデータベースを構築することが可能となる。
【0101】
特に、本実施形態の充電器管理サーバ3は、絶縁試験時に印加される電圧値の挙動特性から外部充電器を識別した識別情報を取得する。通常、急速充電を行う際には、充電前処理として絶縁試験が行われており、その電圧値の挙動は外部充電器によって異なることから、当該電圧値の挙動特性から外部充電器を識別することで、外部充電器と通信等をすることなく容易に外部充電器を識別することができる。
【0102】
そして、充電器管理サーバ3は、適合性情報を各車両に配信することで、車両ごとの充電トラブルの発生を防ぐことができ、電気自動車の充電利便性を向上させることができる。
【0103】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0104】
例えば、上記実施形態では車両1のVUC20が、充電器識別部21、エラー検出部22、充電状況情報生成部23、充電制御部24の各機能を備えているが、この構成に限られるものではなく、各機能の一部又は全部を外部充電器側に備えてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では車種ごとに各外部充電器との適合又は不適合を設定しているが、適合性の設定は車種ごとに限られるものではない。例えば車種に加えて製造年月日や、車両のモータ、インバータ、駆動用バッテリ、車載充電開閉器等の車載装置の種類ごとに外部充電器との適合性を設定してもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、充電エラーの重要度又は緊急度を「通常」と「高い」の2段階のみ設定しているが、より多くの段階を設定してもよい。例えば通常よりも重要度又は緊急度が「低い」充電エラーを設定し、重要度又は緊急度が低い充電エラーを生じする外部充電器については、車両と接続した際に充電停止までは行わず、警告のみを行う等、車両と外部充電器とを接続した際の対応を他の段階の充電エラーと異ならせてもよい。
【0107】
上記実施形態では充電制御部24による充電を開始させる又はさせない制御を車載充電開閉器14におけるリレーのON、OFF制御により行っているが、駆動用バッテリへの充電を制御できればよく、例えばジャンクションボックスにおけるリレーのON、OFF制御により行ってもよい。
【0108】
上記実施形態では車両1は電気自動車であるが、本発明は外部充電器から駆動用バッテリを充電可能な車両であればよく、例えばハイブリッド電気自動車であってもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 :車両
2 :外部充電器
2a :コネクタ
3 :充電器管理サーバ(充電器管理装置)
13 :駆動用バッテリ
14 :車載充電開閉器
15 :充電インレット
16 :車両記憶部
17 :車両通信部
20 :車両制御ユニット(VCU)
21 :充電器識別部
22 :エラー検出部
23 :充電状況情報生成部
24 :充電制御部
30 :サーバ通信部
31 :充電器管理データベース
40 :管理制御部
41 :情報取得部
42 :適合性情報生成部
43 :配信情報生成部