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特許7524515金属コンポーネントを製造するための鋳型のためのアクチュエータ及び金属コンポーネントを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】金属コンポーネントを製造するための鋳型のためのアクチュエータ及び金属コンポーネントを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 27/02 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B22D27/02 A
B22D27/02 U
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022575326
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2021066108
(87)【国際公開番号】W WO2021255023
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102020116143.3
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522474734
【氏名又は名称】フェストアルピネ アディティヴ マニュファクチャリング センター ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-ブラガド、フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ヌントゥフル、アーンスト
(72)【発明者】
【氏名】フランク、サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ネイガー、ステファン
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-031939(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103658609(CN,A)
【文献】特開平01-306047(JP,A)
【文献】特開昭62-179855(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102179505(CN,A)
【文献】特開2005-052840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 27/00
B22D 17/00
B22D 18/00
B22D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コンポーネントを製造するための鋳型のためのアクチュエータであって、
前記鋳型内に存在する融解金属において局所的なパルス電界を生成するための、かつ前記融解金属にパルス電流を導入するための、前記融解金属と接触する少なくとも2つの電極と、
前記融解金属において局所磁界を生成するための磁界コイルであって、前記アクチュエータの動作中、前記磁界コイルは、前記少なくとも2つの電極間に配置される、磁界コイルと、
前記磁界コイルを収容するハウジングであって、前記鋳型の壁凹部への設置のために構成されているハウジングと
を備える、アクチュエータ。
【請求項2】
前記磁界コイル及び前記少なくとも2つの電極は、磁界が前記アクチュエータの動作中に前記パルス電界に対して実質的に垂直であるように配置される、請求項に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ハウジング内に収容された冷却剤冷却ダクトを更に備える、請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
金属コンポーネントを製造するための装置であって、
前記金属コンポーネントを鋳造するためのキャビティを有する鋳型と、
前記鋳型に挿入されたアクチュエータであって、前記アクチュエータは、前記鋳型内に存在する融解金属において局所的なパルス電界を生成するための、かつ前記融解金属にパルス電流を導入するための、前記融解金属と接触する少なくとも2つの電極を有する、アクチュエータと
を備え、
前記鋳型は、前記アクチュエータの磁界コイルのハウジングのための少なくとも1つの中心凹部を有し、前記アクチュエータの前記少なくとも2つの電極は、前記中心凹部の両側に配置される、装置。
【請求項5】
前記鋳型は、高圧ダイキャスト鋳型、低圧ダイキャスト鋳型、又は重力ダイキャスト鋳型である、請求項に記載の装置。
【請求項6】
金属コンポーネントを製造する方法であって、
鋳型に融解金属を充填する段階と、
前記融解金属と接触する少なくとも2つの電極によって、前記鋳型内に存在する前記融解金属において局所的なパルス電界を生成して、前記融解金属にパルス電流を導入する段階と、
前記鋳型の壁凹部へ設置されているハウジングに収容された磁界コイルによって、前記融解金属において局所的な磁界を生成する段階であって、前記磁界コイルは、前記少なくとも2つの電極間に配置され、これによって、前記局所的なパルス電界及び前記局所的な磁界が重ね合わされる、生成する段階と、
を備える、方法。
【請求項7】
30W~5kWの電力が前記パルス電界によって前記融解金属に結合され、及び/又は、前記パルス電界は、1Hz~2500Hzのパルス周波数を有する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記パルス電界の結果として、2A~1000Aのパルス電流が前記融解金属を通って流れる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
10W~10kWの電力が前記磁界によって前記融解金属に結合され、及び/又は、前記磁界は、5Hz~25000Hzの交流電流周波数を有する、請求項6から8の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コンポーネントを製造するための鋳型のためのアクチュエータ、及び金属コンポーネントを製造するための装置及び方法に関する。
【0002】
鋳造コンポーネントの機械的特性を改善するために、融解金属を凝固する際に細粒化を引き起こす手段が適用される。
【0003】
1つの既知の可能性は、凝固中の融解金属の冷却速度を高めることである。これは、粒成長のために利用可能である時間が少なくなることを意味する。しかしながら、特に壁が厚いコンポーネントにおいて、十分に急速な冷却を達成することは常に可能であるわけではなく、又は、鋳造技術の観点で非常に複雑である。
【0004】
別の可能性は、融解金属に細粒化剤(例えば、TiB粒子)を加えることである。これらは、結晶化核として作用し、細粒の数を増加させ、それゆえ、粒成長を制限する。欠点は、高いコスト及び比較的低い効率性(約15%のみの粒径低下)である。加えて、コンポーネントの機械的特性は、局所的に影響させることはできず、コンポーネント全体に対してでしか影響させることができない。
【0005】
本発明の根底にある問題は、鋳造コンポーネントの改善された機械的特性を達成するための費用効果的でかつ融通が利く概念を提供することにおいて見て取ることができる。
【0006】
本発明の根底にある問題は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の更なる展開及び実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
したがって、金属コンポーネントを製造するための鋳型のためのアクチュエータは、鋳型内に存在する融解金属において局所的なパルス電界を生成すること、かつ融解金属にパルス電流を導入することに役立つ、融解金属と接触する少なくとも2つの電極を有することができる。
【0008】
パルス電界を結合し、かつ融解金属にパルス電流を導入することによって、凝固プロセス中の粒成長を低減し、それゆえ、平均粒径を効果的に制限することが可能であることが示された。鋳型上又は鋳型内のアクチュエータの適切な位置決めは、コンポーネントの機械的特性の的を絞った、局所的な増加をもたらし得る。アクチュエータの単純な設計及びその局所的な適用に起因して、ここで説明される概念は、広範な金型及びコンポーネントエンジニアリングタスクに使用することができる。
【0009】
粒成長に対する高いパルス電界(すなわち、融解金属におけるパルス電流)の細粒化効果は、おそらくデンドライトと周囲の融解金属との間の導電率の差に起因し、これは、デンドライトの先端における高い熱生成、及びそれゆえ粒成長を低速化させるデンドライト先端の融解をもたらす。この融解は、デンドライトの成長を引き起こす融解金属の組成的過冷却を遅らせる。
【0010】
デンドライトの形成及び成長は、その相界面の近傍の凝固誘導濃度勾配及び温度レジームによって規定される。この依存性は、組成的過冷却の概念によって説明される。ここで続く手法では、弱い不連続の局所的な流れが、デンドライトの近傍における濃度及び温度の平衡を達成するのに使用される。これは、組成的過冷却を低下させ、デンドライトの成長は、阻害又は低速化される。換言すれば、異質核生成は、同質核生成を優先して抑制され、この結果、後の鋳造コンポーネントにおいて細粒化がもたらされる。鋳造コンポーネントの可能な最も等方性の特性を達成することができる。
【0011】
1つの実施形態によれば、アクチュエータは、融解金属において局所磁界を生成するための磁界コイルを更に備え、アクチュエータの動作中、磁界コイルは、少なくとも2つの電極間に配置される。パルス電界上に静磁界又は交番磁界を重ね合わせることによって、粒成長が更に影響を受け得る。
【0012】
特に、このようにして、少なくとも鋳型の縁部付近のエリアにおける融解金属の高められた混合を引き起こす、融解金属の的を絞った運動を生成することが可能である。これは、そこに存在する濃度及び温度差を低減させ、粒成長を低速化し、内部で生じる核生成の増加のための時間を生み出す。融解金属の偏差は、非常に小さく、振動において現れ得、これによって、融解金属は全体では移動しない。
【0013】
換言すれば、磁界コイルの(任意選択の)使用を伴うと、融解金属それ自体における電流によって生成される磁界は、磁界コイルによって生成される外部から印加された磁界と相互作用することができ、したがって、融解金属におけるフィールド依存流を形成する斥力が生成される。
【0014】
パルス電界の、静磁界又は交番磁界との重ね合わせは、磁界を伴わない事例よりも低い電界(電流強度)においても所望の細粒化を達成することを可能にし、これは、電磁両立性との適合を容易にする。
【0015】
例えば、アクチュエータの動作中、少なくとも2つの電極及び磁界コイルは、磁界が電界に対して実質的に垂直であるように配置されてよい。これは、フィールドの相互作用を通じて、かつ電磁誘導による電極及び磁界コイルの制御に依存して、融解金属において異なる効果が達成されることを可能にし、これは、以下でより詳細に説明される。
【0016】
アクチュエータは、磁界コイルを収容するハウジングを有することができ、ハウジングは、鋳型の壁凹部への設置のために構成されている。これは、ハウジング(任意選択で少なくとも2つの電極を含んでもよい)が鋳型内で又は鋳型に固定して締結されることを可能にする。例えば、ハウジングは、円筒形状を有することができ、これによって、鋳型の壁凹部は、ハウジングが挿入される単純なボアとして設計することができる。
【0017】
さらに、ハウジングは、冷却剤を使用する冷却システムを収容することができる。このようにして、鋳型の周囲の壁エリアの望ましくない加熱は、特に高い磁界強度において阻止することができる。
【0018】
金属コンポーネントを製造するための装置は、金属コンポーネントの鋳造のためのキャビティを有する鋳型と、鋳型に挿入された説明されるタイプのアクチュエータとを備えることができる。鋳型に挿入されたアクチュエータは、金属コンポーネントの特定のエリアの機械的特性を改善するのに使用することができる。
【0019】
金属コンポーネントの鋳造のためのキャビティを有するそのような閉鎖された鋳型は、少なくとも2つの鋳型半部分を有することができ、これらの間には、キャビティが形成され、鋳型半部分を開放した後にキャビティから金属コンポーネントが取り外される。(閉鎖された)キャビティに起因して、必要な場合には、鋳型内の融解金属に対して圧力を同様にかけることができる。
【0020】
鋳型及びアクチュエータは、モジュール設計とすることができ、すなわち、アクチュエータは、多様な異なる鋳型と組み合わせることができる。当然ながら、コンポーネントの特定のゾーンのために意図された幾つかのアクチュエータを使用することも可能である。それゆえ、多種多様なコンポーネント形状及び鋳型の概念の場合に、局所的に異なり、コンポーネントの意図された使用に適合する機械的特性を有する鋳造コンポーネントを容易に作成することが可能である。
【0021】
例えば、鋳型のキャビティは、コンポーネント厚さ及びコンポーネントの表面形状を規定することができ、アクチュエータは、局所コンポーネント肉厚化に隣接して配置される。コンポーネント肉厚化、すなわち局所的により厚い壁を有するコンポーネントエリアは、例えば、コンポーネントの接続ゾーン(例えば、スクリュー又はプラグインカップリング、フランジ等)のために必要とされる。そのようなエリアでは、鋳造コンポーネントは、より低速に冷却し、それにより、ここでは正確に、細粒はより大きく、低下した機械的特性が生じ得る。本発明の実施形態は、ここで改善措置を提供する。
【0022】
鋳型は、少なくとも2つの電極のための少なくとも2つの孔を有してよい。それゆえ、各電極は、鋳型のボアに収容することができ、電極の融解金属との直接電気接触が可能になる。
【0023】
鋳型は、少なくとも1つの中心凹部、例えば、アクチュエータの磁界コイルのハウジングのためのボアを更に有することができ、アクチュエータの少なくとも2つの電極は中心凹部の両側に配置される。これは、磁界が、構造的に単純な方法において電極によって生成される電界上に重ね合わされることを可能にする。
【0024】
本発明の実施形態は、高圧ダイキャスト鋳型、低圧ダイキャスト鋳型、又は重力ダイキャスト鋳型(永久ダイキャスト鋳型としても知られている)を含む、多種多様な鋳型において使用することができる。アクチュエータを耐圧の方法において鋳型内に締結することができるので、本発明の実施形態は、高圧ダイキャスト、特にアルミニウムダイキャスト(高圧ダイキャスト)のためにも特に良好に適合される。直接機械励起に基づくか又は振動を伝達するためのダイアフラムを有する従来的なアクチュエータは、高い作動圧力及び高い摩耗に起因して限られた程度で高圧ダイキャストにのみ適している。
【0025】
金属コンポーネントを製造する方法の1つの実施形態によれば、鋳型に、融解金属が充填されてよい。融解金属と接触する少なくとも2つの電極によって、鋳型内に存在する融解金属において局所的なパルス電界が生成され、融解金属にパルス電流が導入される。
【0026】
電界によって、例えば、30W(又は場合によっては同様に50W)~5kW、好ましくは30W~1kW、特に好ましくは30W~200Wの電力が融解金属に結合され得、及び/又は、1Hz~2500Hz、好ましくは40Hz~2000Hz、特に好ましくは40Hz~500Hzのパルス周波数のパルス電界が使用され得る。より高い周波数、例えば、最大で5000Hz又はそれよりも高い値も可能であり、本発明に係る効果(細粒化)を達成することに同様に有用であり得るが、より多くの機器及びより高いコストを必要とする。加えて、20kHzを超える範囲では融解金属においてキャビテーション(すなわち、空隙及び噴流の形成)が生じ、これは、より良好な混合をもたらすが、融解金属の脱気ももたらし、したがって、閉鎖された鋳型においては有用ではない。なぜならば結果として得られるガス泡/キャビティ泡は放出することができず、結果として鋳造コンポーネントにおける空隙及び気孔率の増加をもたらす。
【0027】
パルスの電流振幅は、例えば、2A~1000A、好ましくは50A~800A、特に好ましくは90A~500A、又は更により高い値とすることができる。しかしながら、特に電流に重ね合わる磁界を使用するとき、最大800A、600A、400A、200A又は100Aの更により小さい電流振幅が、実効的な細粒化を達成するために十分であり得る。好ましい面積電流密度(area current density)は、例えば、数平方ミリメートル(例えば、10mm)~100mm又は200mm超の範囲とすることができる電極の断面寸法から得られる。電圧振幅は、例えば、1V~10Vとすることができ、電極と融解金属との間の接触抵抗によって主に決定される。
【0028】
本方法の実施形態は、融解金属において局所磁界を生成する段階であって、局所的なパルス電界及び局所磁界が重ね合わされる、生成する段階を更に備える。
【0029】
この文脈において、磁界は、例えば、10W~10kW、好ましくは10W~1kW、特に好ましくは20W~500Wの電力を融解金属に結合することができ、及び/又は、磁界は、例えば、5Hz~25000Hz、好ましくは30Hz~3000Hz、特に好ましくは30Hz~80HzのAC周波数を有することができる。
【0030】
本発明に係る方法の特定の応用の場合、局所的なパルス電界、及び、必要な場合、局所磁界は、金属コンポーネントの局所壁肉厚化の領域において生成することができる。
【0031】
以下において、実施形態の例及び更なる展開は、図面に基づく例示的な方法において説明され、これによって幾つかの事例では、異なる程度の詳細が図面において使用される。異なる実施形態及びその変形例の個々の特徴は、これが技術的な理由で除外されないことを前提とすると、互いに組み合わせることができる。同一の参照符号は、同じ又は同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】鋳型のための複数の電極及び任意選択の磁界コイルを有するアクチュエータの一実施形態を示す図である。
【0033】
図2】2つの磁界コイルを有するアクチュエータの別の例を示す図である。
【0034】
図3】電界の方向、磁界の方向及び融解金属の運動の方向を示す図である。
【0035】
図4】融解金属のデンドライトに対するパルス電界の効果を示す図である。
【0036】
図5】融解金属内のデンドライトに対する磁界の効果を示す図である。
【0037】
図6】ハウジングに収容された磁界コイルを有するアクチュエータの一実施形態の斜視断面図を示す図である。
【0038】
図7】鋳型に挿入されたアクチュエータを用いた金属コンポーネントの製造のための装置の一例を示す図である。
【0039】
図8】鋳型に挿入されたアクチュエータを用いて金属コンポーネントを製造するための装置の一実施形態の部分断面斜視図である。
【0040】
図9】キャビティ壁から見た電極及び磁界コイルの配置の一例を示す図である。
【0041】
図10】金属コンポーネントを製造する方法の例示的なプロセス又はステージが示されるフローチャートである。
【0042】
図11】アクチュエータによる融解金属に対する効果が温度及び時間の関数として示されている図である。
【0043】
図12】鋳造コンポーネントの測定された粒径が、アクチュエータが作動したとき、及び参照として作動を伴わないときのアクチュエータの中心からの距離の関数として示されている図である。
【0044】
図13】作動したアクチュエータを伴う及びこれを伴わない鋳造コンポーネントに対する引張試験からの機械的パラメータが与えられる図である。
【0045】
図14】磁気的励起のみを伴って、電気的励起のみを伴って、又は磁気的及び電気的励起の両方を伴って製造された鋳造コンポーネント測定された粒径分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、金属コンポーネントを製造するための鋳型のためのアクチュエータ100の一例を示している。アクチュエータ100は、少なくとも第1の電極110_1及び第2の電極110_2を有する。2つの電極110_1及び110_2は、融解金属120内でパルス電界を生成するように電気的に制御することができる。この目的で、2つの電極110_1、110_2は、例えば、融解金属120と直接電気接触することができるように、図1ではより詳細には示されていない鋳型130の壁130_1を貫通することができる。
【0047】
2つの電極110_1、110_2は、例えば、融解金属120の凝固中(収縮フェーズ)であっても、融解金属120との確実な電気接触を保証するために、壁130_1からわずかに(例えば、1mm又はそれよりも長く)突出する(図示せず)導電接触ピンとして設計することができる。すなわち、外部で生成された電気信号パルス(電流パルス)は、融解金属120に直接導入することもできるし、融解金属120と接触している電極110_1、110_2を介して融解金属120を通過させることもできる。
【0048】
突出している導電接触ピンによって、融解金属における最大で約90%の固相率の融解金属との直接電気接触を維持することが可能である。
【0049】
接触ピンの直径は、所与の電流について適切に高い面積電流密度が達成されるように選択することができる。例えば、ピンの直径は、3mm~12mmの範囲、特に6mm~8mmとすることができ、例えば1A/mm~10A/mm、特に2A/mm~4A/mmの範囲の表面電流密度(surface current density)を(例えば、約100Aの電流について)生成することができる。
【0050】
融解金属120は、例えば、溶融アルミニウム、溶融亜鉛、溶融マグネシウム、又は溶融黄銅であってもよいし、アルミニウム系合金、亜鉛系合金、マグネシウム系合金、又は銅系合金を含んでもよい。青銅、スズ、クロム、ニッケル等の他の金属又は他の材料も、ベースメタル又は合金添加元素として融解金属120内に存在してよい。
【0051】
2つの電極110_1、110_2にパルス電圧を印加することによって、パルス電界及びしたがってパルス電流が融解金属120において生成される。この外部電流は、2つの電極110_1、110_2を介して融解金属120に直接導入される(すなわち、これは、例えば交番磁界によって融解金属内に誘導される渦電流ではない)。この外部から導入された電流は、電界の方向において、すなわち、一方の電極110_1から他方の電極110_2に流れる。それゆえ、電界は、少なくとも幾つかの領域において、鋳型130の壁130_1に対して実質的に平行に延在する主成分112を有する。電極110_1、110_2間の印加電圧の任意選択の極性変化はまた、これに応じて、電界の方向及び電流方向を反転させる。
【0052】
電極110_1、110_2は、例えば、壁130_1における孔を通過することができ、フィードスルーは、鋳型(壁130_1)から電気的に絶縁される。
【0053】
図1は、電源180及びアクチュエータ100を含む配置を更に示している。動作中、電源180は、アクチュエータ100の電極110_1、110_2に電気的に接続される。電源180は、波形(パルス)を生成し、信号(例えば、電流パルス又は電圧パルス)に電力を提供する。電源180は、電流制御(すなわち、電流源)であってもよいし、電圧制御(すなわち、電圧源)であってもよい。第1の事例では、事前決定可能なレベルの電流パルスが生成され、第2の事例では、パルスレベルのためのターゲット値として所定の電圧値が指定される。第1の変形例(電流制御電源180)では、電極110_1、110_2と融解金属120との間の接触抵抗は、融解金属120に導入される電力を変化させないので、第1の変形例が好ましい可能性がある。
【0054】
アクチュエータ100は、任意選択で、磁界コイル150を更に備えてよい。磁界コイル150は、図1における一例として示されている磁力線152の方向において磁界を生成してよい。磁力線152は、壁付近の領域において壁130_1に対して実質的に垂直に配向されてよい。磁界コイル150が電極110_1、110_2間に配置される図1において示されている配置は、電界及び磁界が重ね合わされ、かつ力線112、152が交差することを保証する。
【0055】
図1において示されているタイプの磁界は、例えば、ソレノイドによって生成することができる。
【0056】
図2は、アクチュエータ200の更なる例の断面図を示している。アクチュエータ200は、本質的に、壁130_1上の(任意選択の)磁界コイル150に加えて、更なる磁界コイル250が鋳型130の壁130_1に対向する壁130_2上に配置されるという点で、アクチュエータ100とは異なる。このようにして、融解金属120に結合される磁界の力を増幅することができ、例えば、コンポーネントの壁厚全体が強い磁界によって貫通されることが達成され得る。
【0057】
図3は、電流312の方向(電界112の主成分の方向に対応する)と、存在する場合、磁力線152によって示されている磁界の方向とを示している。さらに、図3は、融解金属120の磁気流体力学流の方向314も示しており、これは、磁界上に電界を重ね合わせることによって取得することができる。図1及び図2において、流れの方向314は、紙面から出る方向を指す(又は、電界が反転しているときには紙面に入る方向を指す。図2における二重矢印を参照されたい)。
【0058】
図4は、融解金属120にパルス電界を印加することによる細粒化の原理を幾つかの概略図によって示している。パルス電界によって生成される電流パルス(I)は、図4の上部エリアにおいて時間tに対して示されている。図4の左下領域では、概略的に融解金属120内で電界(力線112)に曝されているデンドライト410が示されている。デンドライト410の先端において、高い電界強度(力線412を参照されたい)が、デンドライト結晶(高い方の導電率)と融解金属120(低い方の導電率)とにおける異なる導電率の結果として生じる電位差に起因して生成されている。この結果、電流パルス中に、デンドライト410内での局所的に過剰な電流と、デンドライト410の先端におけるジュール加熱とがもたらされる。この加熱は、先端が融解するようにさせ、これは、先端が丸みを帯びるようにさせる(図4の右部分の円で囲まれた先端を参照されたい)。先端の丸みは、デンドライト410の表面積を低減し、それゆえ、融解金属120とのその熱交換(冷却)を低下させ得る。これは、更なるデンドライトの成長を阻害するか又は遅らせる。融解金属120は、デンドライトの基本構造と比較して高められた機械的特性を有する、細粒化された、かなり球状の構造において凝固する。
【0059】
この効果が生じる横方向範囲は、例えば、150mm、100mm又は50mmに等しいかこれらよりも小さいものとすることができる。これは、コンポーネントの局所的エリアが、高電界に対する曝露によって特に良好に影響を受け得ることを意味する。
【0060】
例えば、パルス周波数は、1Hz~2000Hz、好ましくは100Hz~1000Hzとすることができる。パルス周波数が高くなるほど、融解金属120へのより高いエネルギー入力が可能になる。実用時には、例えばアクチュエータ100、200当たりに1kW~2kWの電力で十分であり得ることが判明している。より高い電力を結合することもできるが、特により高い所望のパルス周波数において、より高価なパワーエレクトロニクスが必要とされる。
【0061】
パルスのために、以下の異なる信号形状を使用することができる。
【0062】
三角パルス(ディラックパルス(Dirac pulse))は、所望の効果を達成するための理想的な信号形状である。しかしながら、外部電源が広帯域干渉源として作用するので、システムの電磁両立性又は遮蔽によって問題が引き起こされる。
【0063】
パルス幅変調(PWM)は、パルスの持続時間及び停止のパーセンテージが電力を決定するパルス状直流電流の生成を可能にする。PWM信号の場合、周波数は、オン/オフ周期の持続時間を指す。例えば、PWMデューティサイクルは、5%~95%の範囲とすることができる。PWM信号は、生成及び制御が容易である。それらは、実行した実験において使用した。
【0064】
選択した電流曲線が実行される人工パルス形状も可能であり、ディラックパルスの阻害効果を伴うことなくディラックパルスの方向におけるパルス形状の最適化を可能にする。
【0065】
全ての波形は、反転パルスを用いて動作することができ、すなわち、電流方向は、例えば、各パルス(又は特定の長さのパルストレイン)の後に変更することができる。
【0066】
全ての信号形状は、例えば、電流信号又は電圧信号として提供することができる。例えば、電源180(図1を参照されたい)は、電源180をオン/オフに切り替えるための周波数生成器と組み合わせた低電圧電源とすることができる。
【0067】
図5は、粒成長に対する交番磁界の効果を示している。鋳型の2つの壁130_1及び130_2と、壁間の融解金属120とが示されている。
【0068】
融解金属120の凝固のプロセス中、既に凝固したシェル120_1は、壁130_1、130_2上に形成されるが、一方、融解金属120は内側領域120_2内で依然として液体である。磁界(磁力線152)に起因して、融解金属120において、及び特に凝固したシェル120_1と依然として溶融した内部120_2との間の界面において流れ514が形成され、これは、デンドライトの成長を低速化する。
【0069】
図5の下側部分において示されているように、流れ514は、攪拌運動の方法において直線又は円形とすることができる。流れ514は、融解金属120のシェル120_1と内部120_2との間の界面において成長するデンドライト410を変形するか又は折り取る。これは、内部で生じる粒成長により多くの時間を提供し、細粒化された、樹状の程度が低い(less dendritic)マイクロ構造が凝固プロセス中に作成される。
【0070】
例えば、交番磁界は、5Hz~20000Hz又は25000Hzの周波数範囲であってよい。磁界コイル150、250の周辺エリアの適切な設計は、最大達成可能周波数(及びそれゆえ融解金属120への最大達成可能エネルギー入力)を制限し得る誘導加熱を低減することができる。この望ましくない加熱は、例えば、磁界コイル150、250を冷却することによって、及び/又は、例えば同様に磁界コイル150、250の近傍において鋳型壁へのインサートの形態で、鋳型材料として非フェライト鋼を使用することによって、阻止することができる。例えば、非フェライト鋼として、オーステナイト鋼又はステンレス鋼(例えば、Cr及び/又はNi等のオーステナイト安定化元素を有する)を使用することができる。
【0071】
多くの応用の場合、10W~10kWの磁界の電力入力で十分であり得る。
【0072】
パルス電界上に交番磁界を重ね合わせることによって、融解金属120の円形の磁気流体力学運動(磁気攪拌)を引き起こす電磁界を誘導することができる。電磁界は、融解金属において電流を誘導し、これは、反対の電磁界を生成する。これは、小さい振幅の攪拌運動の方法において融解金属120を移動させる力を生成する。融解金属120に対する磁気流体力学作用は、鋳造コンポーネントにおける低下した気孔率をもたらすことができ、これは、機械的特性のために及び鋳造コンポーネントの後続の熱処理のために有利であり得る。
【0073】
融解金属の運動は、静磁界を印加すること、及び電流の方向が反転され、及び/又は磁界コイル150、250内の磁界の方向が反転されるときに融解金属120を通る(パルス電界によって生成される)高パルス電流を注入することによっても達成することができる。それゆえ、融解金属における流れの方向は交互に反転される。すなわち、同様にこのようにして、低振幅(例えば、100μm~数mm)で融解金属120において振動する流れを取得することが可能であり、これは、成長する結晶の界面における液相と凝固ゾーンとの間(すなわち、融解金属120のシェル120_1と内部120_2との間)の合金元素の濃度差を低減するのに十分に大きい。このプロセスにおいて、融解金属は、小さい振幅で振動し、成長する結晶は、それらの慣性力に起因して直接その運動に従うことができない。この相対運動が混合を引き起こす。この混合は、凝固先端における濃度及び熱の平衡化をもたらす。
【0074】
換言すれば、磁界及び/又は電流の変動は、成長する結晶(デンドライト)の界面付近の渦電流を誘導し得るので、したがって、融解金属120の運動が生成される。融解金属のこの運動は、超音波振動の範囲であってよいが、超音波振動それ自体は、融解金属120の内部120_2への制限された(音響的)浸透深度を有する。
【0075】
図6によれば、磁界コイル150(250)は、ソレノイド650の形態とすることができる。ソレノイド650は、円筒状巻線650_1及び中心コア650_2を有してよい。ソレノイド650は、例えばハウジング660内に位置する。ハウジング660は、(例えば、壁130_1において示されている)鋳型の壁凹部への設置のために提供されてよい。壁凹部は、例えば、図6において示されているような貫通凹部であってもよいし、キャビティに隣接する(例えば、壁130_1における)鋳型における凹部によって形成されてもよい。
【0076】
ハウジング660は、例えば、円筒形であり、それゆえ、壁ボア(貫通孔又はブラインド孔)に容易に挿入可能であってよい。ハウジング660の直径は、例えば、20mm、30mm、又は50mmに等しいか又はこれらよりも小さいか又はこれらよりも大きいものであってよい。ハウジング660の長さは、例えば、80mm又は100mm~200mmであってよい。
【0077】
コア650_2は、磁界をキャビティ表面630にガイドする。非フェライトプレート640が、例えばソレノイド650の形態の磁界コイル150(250)と、融解金属120との間の最も高い可能な磁気結合を達成するためにコア650_2と融解金属120との間に提供されてよい。
【0078】
磁界コイル150(250)は、例えばハウジング660を通って流れる冷却剤670によって冷却されてよい。例えば、油、水、又は空気が冷却剤として使用されてよい。
【0079】
図示されていない方法において、ハウジング660のための凹部の近傍において鋳型の壁130_1を冷却することも可能である。例えば、磁界コイル150(250)は、壁130_1内の非フェライトインサートにおいても存在し得、これは、冷却剤冷却システムを用いて提供され得る。
【0080】
図7は、鋳型内で金属コンポーネントを製造するための装置700の概略断面図を示している。ここで示されている例では、鋳型は、2つの鋳型半部分710、720を備える。鋳型半部分710、720は、前の図において示された壁130_1及び130_2を形成することができる。鋳型半部分710、720間には、製造すべきコンポーネントが鋳造されるキャビティ730が存在する。
【0081】
鋳型710、720は、例えば、高圧ダイキャスト鋳型、低圧ダイキャスト鋳型、又は重力ダイキャスト鋳型であってよい。
【0082】
図7において示されている例では、例えば、アクチュエータの第1の電極110_1は、第1の鋳型半部分710において形成され、一方、第2の電極110_2は、第2の鋳型半部分720において形成される。当然ながら、電極110_1、110_2は両方とも第1の鋳型半部分710において、又は両方とも第2の鋳型半部分720においてのいずれかで実現されることも可能である。
【0083】
さらに、既述されたように、アクチュエータは、ここで示されている例では第1の鋳型半部分710に存在する磁界コイル150、例えば、ソレノイド650を備えてよい。
【0084】
鋳型710、720に挿入される磁界コイル150は、例えば、図7において示されているように、鋳型710、720の固定部分又は一体部分とすることもできるし、鋳型710、720にモジュール式に取り付け可能であるとともに、これらから取り外し可能であってもよい。磁界コイル150(例えば、ソレノイド650)のエリアにおいて、キャビティ730の表面630は、例えば、オーステナイト鋼プレート(非フェライトプレート640に対応する)によって形成することができる。鋳型半部分710、720は、フェライト鋼から作製されてよい。アクチュエータ100、200の前述された特徴及び機能は、金属コンポーネントを製造するための装置700にも関連する。
【0085】
図8は、鋳型710、720内で金属コンポーネントを製造するための装置800を示している。装置800は、本質的には、装置700に対応するので、繰り返しを回避するために上記の説明に対して参照がなされる。また、図8において、鋳型半部分710、720を開閉するための鋳型ガイド810と、融解金属をキャビティ730に導入することができるゲート820とが示されている。
【0086】
装置800は、例えば、2つのアクチュエータを備える。一方のアクチュエータは、電極110_1及び110_2と磁界コイル150とを備え、一方、他方のアクチュエータは、例えば、電極110_3、110_4単独によって実装される。
【0087】
図9を参照すると、鋳型キャビティ730の表面630は、磁界コイル150を囲み(非フェライトプレート640の背後に配置され)、例えば、磁界コイル150に関して対称に配置された複数の電極110_1、110_2、110_1'、110_2'を備えてよい。図9において示されている磁界コイル150に関して多角形状の複数の電極110_1、110_2、110_1'、110_2'の配置に起因して、例えば、磁界コイル150(ソレノイド650)に対向する丸形状の局所コンポーネント肉厚化の機械的特性を特に良好に影響させることができる。電極配置の横寸法は拡縮可能であり、特に、小さくする(例えば、150mm、100mm又は50mmに等しいか又はこれらよりも小さくする)ことができる。鋳型のわずかなリモデリングのみが要求され、これがここで説明される細粒化概念を非常に容易にかつ可変的に実装することができる理由である。電界の方向を変化させるのに様々な電極が使用される。
【0088】
図10を参照すると、金属コンポーネントを製造するための方法の一実施形態は、以下のステージ又はプロセスを含んでよい。
【0089】
S1において、鋳型が閉鎖される。鋳型は、例えば、高圧ダイキャスト鋳型、低圧ダイキャスト鋳型、又は重力ダイキャスト鋳型とすることができる。
【0090】
S2において、鋳型に融解金属が充填される。全ての言及されたタイプの充填材及び融解金属の材料を使用することができる。
【0091】
S3において、アクチュエータは、オンに切り替えられる。衝撃フェーズS4は、S4_1におけるパルス電界の結合と、S4_2における融解金属の任意選択の同時の磁気流体力学混合とを含む。
【0092】
衝撃フェーズS4が完了し、S5において、融解金属は凝固し、すなわち、鋳造コンポーネントは固相である。
【0093】
S6において、更なる急速な冷却を、任意選択で、鋳造コンポーネントの機械的特性を改善するために実行することができる。この更なる冷却は、冷却装置による抽熱による自然冷却に加えて実行される。
【0094】
S7において、任意選択の消磁及びインピーダンス測定が、品質監視の目的で実行される。
【0095】
S8において、完成した鋳造コンポーネントが鋳型から取り外される。その後、製造サイクルは、S1において再び開始することができる。
【0096】
図11は、例示的な方法における個々のプロセスステージの時系列を示している。概略的に、鋳造コンポーネントの温度TはY軸上に、かつ時間tはX軸上に示されている。
【0097】
S2において鋳型に熱い融解金属が充填されると、鋳型内の温度は、急激に最大値に上昇する。これには、冷却及び凝固プロセスが続く。t(S4)において、アクチュエータはオンに切り替えられ、融解金属に対する電気及び電磁衝撃が開始される。t(S4)において、アクチュエータは、オフに切り替えられ、衝撃プロセスは終了する。
【0098】
中間周期Δt(S4)中、液相から固相への融解金属の相転移が行われる。この周期にわたって、衝撃プロセスは、説明された方法において細粒化効果を有する。
【0099】
更なるステージS6、S7が、固相における鋳造コンポーネントの冷却中に行われる。S8において、鋳造コンポーネントが取り外され、次の製造サイクルを開始することができる。
【0100】
図12は、パルス電界(すなわち、パルス電流)と、それの上に重ね合わされた交番磁界との両方を生成するアクチュエータを用いた、融解金属に対する磁気流体力学作用の細粒化効果を示している。(ソレノイド軸に沿って測定された)アクチュエータからの距離の関数として試験において決定された鋳造コンポーネントサンプルの平均粒径が示されている。
【0101】
実験データは、AlSi7Mg0.3から作製された融解金属の重力鋳造を指す。融解金属の開始温度は720℃であったとともに、鋳型の開始温度は220℃であった。20%デューティサイクルPWM、50Hzのパルス周波数で電流制御電流源によって生成される100Aのパルス電流を使用した。磁界コイルを通じて結合される電力は、14Wのみであった。(磁界コイルを用いて)図1において示されたような単一のアクチュエータ100を、鋳型壁のうちの1つに対して使用した。
【0102】
本質的にコンポーネント厚全体にわたって、約40%の粒径の削減が達成された。これは、細粒の数の8倍の増加に対応し、それぞれ電気機械的衝撃のエリア内の鋳造コンポーネントの機械的特性及び融解金属の磁気流体力学的運動における顕著な改善がもたらされる。
【0103】
図13は、引張試験から決定される鋳造コンポーネントの機械的特性を示している。引張試験は、DIN50125に従った引張標本を用いてDIN EN ISO6892-1に従って実行した。鋳造コンポーネントは、上記で説明されたように製造したが、ただし、この試験では周波数を2000Hzに高めた。鋳造コンポーネントの壁厚は6mmであった。作動されたアクチュエータを伴わない参照コンポーネントと比較して、破断伸びE(伸び)において333%、引張強度R[MPa]において66%、及び0.2%伸び限界Rp0.2[MPa]において13%の改善が達成された。
【0104】
以下の表1は、当該表において与えられたそれぞれの励起パラメータで製造された鋳造コンポーネントの測定された機械的特性を要約している。ここで、(x W/y%)は、xワットの磁力の、凝固プロセス中の融解金属への結合、及びy%のPWMデューティサイクルを有するPWMパルス電流の、凝固プロセス中の融解金属への結合を示す。PWMパルス電流は、約1Vの電圧で100Aに調節し、すなわち、例えば、電力の30%~80%、約30W~80WのPWMデューティサイクルが融解金属に結合される。磁気攪拌電力は、10W~500Wの範囲であった。
【0105】
【表1】
表1において、YS(0.2%オフセット耐力)は、0.2%耐力Rp0.2を示し、UTS(究極引張強度)は、引張強度Rを示し、E(伸び)は、破断伸びを示す。
【0106】
参照鋳造コンポーネント(作動されていないアクチュエータ)における気孔率は0.8284%であり、ただし、D5=39μm、D50=141μm、D95=809μm及びDmax=1979μmであった。電気的及び磁気的励起を伴う鋳造コンポーネントにおいて、気孔率は、0.1001%であり、ただし、D5=11μm、D50=22μm、D95=86μm及びDmax=135μmであった。D50は、粒子の50%が指定値よりも小さいことを意味する。電気的及び磁気的励起は、気孔率を著しく低下させ、また、細孔のサイズ(大きな細孔は亀裂の始まりとして作用し得る)、特に最大細孔(Dmax)のサイズを大幅に低下させ、これは、破断伸びの増加に主に反映される。
【0107】
機械的特性は融解金属の電気的及び磁気的励起によって改善されることが明らかである。磁気攪拌は、UTS及びEの著しい増加をもたらす。電気パルスは、YSをわずかに増加させ、UTS及びEのより著しい増加をもたらす。両方の励起の組み合わせは、全体として、所望の機械的特性に関して最良の結果をもたらす。
【0108】
図14は、電気的及び磁気的励起を伴わずに製造された鋳造コンポーネント(参照)、1W~500Wの範囲の磁気的励起のみを伴って製造された鋳造コンポーネント、30%~80% PWMデューティサイクルの範囲の電気的励起のみを伴って製造された鋳造コンポーネント、又は上記で説明されたような磁気的及び電気的励起の両方を伴って(すなわち、各事例の上記の曲線と同じ値を伴って)製造された鋳造コンポーネントの測定された粒径分布を示している。
【0109】
磁気攪拌単独を用いると、電気的及び磁気的励起を伴わない参照分布と比較して幾分かより均質な粒子径分布を達成することができることが示されているが、これは、小粒径の周波数の増加を示さない。
【0110】
電気パルスは、小粒径の分布の均質性及び周波数の両方を著しく増加させる。平均粒径は、10%~20%だけ低下する。粒径は、Espinal, Laura."Porosity and its measurement",Characterization of Materials(2002):1-10における仕様に従って決定した。
【0111】
驚くべきことに、磁気攪拌及び電気パルスの組み合わせは、分布の均質性を更に改善するのみではなく、小粒径の周波数もやはり著しく増加させる。平均粒子径は、30%超だけ低下する(測定値:32%の低下)。%の数量は、電気的及び磁気的励起を伴わない参照を指す。すなわち、粒径低下(又は小粒径の周波数)に関して、磁気攪拌及び電気パルスの組み合わせは、2つの励起方法の個々の効果の追加を著しく超える相乗効果を生成する。
【0112】
要約すると、行ったこれらの試験及び他の試験は、電気パルスが細粒の径を著しく低下し、したがって、鋳造コンポーネントの強度の増加をもたらすことを示している。磁気攪拌単独では、強度をほとんど改善しないが、気孔率を低下させるとともに金属構造の均質性を改善することによって鋳造品質を高める。両方の手段の組み合わせが、非常に良好な鋳造品質で高強度の鋳造コンポーネントを製造することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14