(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/097 375
G03G9/097 372
(21)【出願番号】P 2020004618
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 大介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 安章
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 崇志
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 紗貴子
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-317489(JP,A)
【文献】特開2012-103535(JP,A)
【文献】特開2006-251064(JP,A)
【文献】特開2009-237274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子と、メラミンシアヌレート粒子と、無機粒子と、を含み、
前記メラミンシアヌレート粒子の体積平均粒径が1.0μm以上2.8μm以下であり、
Ti含有量が0.1ppm以上1500ppm未満である、
静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
Ti含有量が0.1ppm以上500ppm以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記メラミンシアヌレート粒子の含有量が、前記静電荷像現像用トナー全体に対して、0.01質量%以上1.0質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記メラミンシアヌレート粒子の含有量が、前記静電荷像現像用トナー全体に対して、0.02質量%以上0.9質量%以下である、請求項3に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記無機粒子が酸化チタン粒子を含む、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記メラミンシアヌレート粒子の含有量Maと前記酸化チタン粒子の含有量Mbとの質量基準の比Mb/Maが0.0002以上1.55以下である、請求項
5に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記比Mb/Maが0.05以上1.0以下である、請求項
6に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記無機粒子がシリカ粒子を含む、請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
【請求項10】
請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【請求項11】
像保持体と、
請求項
9に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に接触するブレードを有し、前記ブレードにより、トナー画像を転写した後の前記像保持体の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニング手段と、
を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項12】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項
9に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
前記像保持体の表面に接触するブレードを有し、前記ブレードにより、トナー画像を転写した後の前記像保持体の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニング手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項13】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項
9に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
トナー画像を転写した後の前記像保持体の表面にブレードを接触させて、前記像保持体の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニング工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平均円形度が0.94~0.995であり体積平均粒径が3μm~9μmである母体トナーに、体積平均粒径が3μm~9μmであるメラミンシアヌレート粉末が、母体トナー100重量部に対して0.1~2.0重量部添加されているトナーが開示されている。
特許文献2には、結着樹脂、着色剤及び正帯電制御剤を含んでなる着色樹脂粒子に、個数平均一次粒径が0.05μm~1.5μmであるメラミンシアヌレート粒子が、着色樹脂粒子100重量部に対して0.01~0.5重量部添加されている正帯電性トナーが開示されている。
特許文献3には、蛍光X線分析によるアルミニウム含有量が0.005~0.040質量%の範囲であり、かつ、IPC発光分光分析によるチタン含有量が50~500ppmの範囲である静電荷像現像用トナーが開示されている。
特許文献4には、一次粒子の個数平均粒径80乃至300nmのシリカと一次粒子の個数平均粒径10乃至100nmの酸化チタンとを併用し、Si/Ti強度比が4.5乃至22.0である凝集トナーが開示されている。
特許文献5には、含有量が30ppm以上1,000ppm以下のTi元素を含有するトナー粒子と、体積基準のメジアン径が0.40μm以上0.90μm以下であり、平均円形度が0.940以上0.970以下であり且つ100ppm以上500ppm以下のSi元素を含有するアルミナとを含むトナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-317489号公報
【文献】特開2009-237274号公報
【文献】特開2008-015334号公報
【文献】特開2008-224881号公報
【文献】特開2011-028163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、トナー粒子と層状構造化合物粒子と無機粒子とを含み、Ti含有量が0.1ppm未満である又はTi含有量が1500ppm以上である静電荷像現像用トナーに比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する静電荷像現像用トナーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段には、下記の態様が含まれる。
【0006】
<1> トナー粒子と、層状構造化合物粒子と、無機粒子と、を含み、Ti含有量が0.1ppm以上1500ppm未満である、静電荷像現像用トナー。
<2> Ti含有量が0.1ppm以上500ppm以下である、<1>に記載の静電荷像現像用トナー。
<3> 前記層状構造化合物粒子の含有量が、前記静電荷像現像用トナー全体に対して、0.01質量%以上1.0質量%以下である、<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナー。
<4> 前記層状構造化合物粒子の含有量が、前記静電荷像現像用トナー全体に対して、0.02質量%以上0.9質量%以下である、<3>に記載の静電荷像現像用トナー。
<5> 前記層状構造化合物粒子の体積平均粒径が0.4μm以上8.0μm未満である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<6> 前記層状構造化合物粒子の体積平均粒径が1.0μm以上7.0μm以下である、<5>に記載の静電荷像現像用トナー。
<7> 前記無機粒子が酸化チタン粒子を含む、<1>~<6>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<8> 前記層状構造化合物粒子の含有量Maと前記酸化チタン粒子の含有量Mbとの質量基準の比Mb/Maが0.0002以上1.55以下である、<7>に記載の静電荷像現像用トナー。
<9> 前記比Mb/Maが0.05以上1.0以下である、<8>に記載の静電荷像現像用トナー。
<10> 前記無機粒子がシリカ粒子を含む、<1>~<9>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<11> 前記層状構造化合物粒子が、メラミンシアヌレート粒子、チッ化ホウ素粒子、フッ化黒鉛粒子、二硫化モリブデン粒子及びマイカ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<10>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<12> <1>~<11>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
<13> <1>~<11>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
<14> 像保持体と、
<12>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に接触するブレードを有し、前記ブレードにより、トナー画像を転写した後の前記像保持体の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニング手段と、
を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<15> 像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
<12>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
前記像保持体の表面に接触するブレードを有し、前記ブレードにより、トナー画像を転写した後の前記像保持体の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニング手段と、
を備える画像形成装置。
<16> 像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
<12>に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
トナー画像を転写した後の前記像保持体の表面にブレードを接触させて、前記像保持体の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニング工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の効果】
【0007】
<1>、<7>、<10>又は<11>に係る発明によれば、トナー粒子と層状構造化合物粒子と無機粒子とを含み、Ti含有量が0.1ppm未満である又はTi含有量が1500ppm以上である静電荷像現像用トナーに比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
<2>に係る発明によれば、トナー粒子と層状構造化合物粒子と無機粒子とを含み、Ti含有量が0.1ppm未満である又はTi含有量が500ppm超である静電荷像現像用トナーに比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
<3>に係る発明によれば、層状構造化合物粒子の含有量が静電荷像現像用トナー全体に対して0.01質量%未満又は1.0質量%超である静電荷像現像用トナーに比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
<4>に係る発明によれば、層状構造化合物粒子の含有量が静電荷像現像用トナー全体に対して0.02質量%未満又は0.9質量%超である静電荷像現像用トナーに比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
<5>に係る発明によれば、層状構造化合物粒子の体積平均粒径が0.4μm未満又は8.0μm以上である場合に比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
<6>に係る発明によれば、層状構造化合物粒子の体積平均粒径が1.0μm未満又は7.0μm超である場合に比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
<8>に係る発明によれば、層状構造化合物粒子の含有量Maと酸化チタン粒子の含有量Mbとの質量基準の比Mb/Maが0.0002未満又は1.55超である場合に比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
<9>に係る発明によれば、層状構造化合物粒子の含有量Maと酸化チタン粒子の含有量Mbとの質量基準の比Mb/Maが0.05未満又は1.0超である場合に比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
<12>に係る発明によれば、静電荷像現像用トナーがトナー粒子と層状構造化合物粒子と無機粒子とを含み、Ti含有量が0.1ppm未満である又はTi含有量が1500ppm以上である場合に比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する静電荷像現像剤が提供される。
<13>に係る発明によれば、静電荷像現像用トナーがトナー粒子と層状構造化合物粒子と無機粒子とを含み、Ti含有量が0.1ppm未満である又はTi含有量が1500ppm以上である場合に比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制するトナーカートリッジが提供される。
<14>に係る発明によれば、静電荷像現像剤を構成する静電荷像現像用トナーがトナー粒子と層状構造化合物粒子と無機粒子とを含み、Ti含有量が0.1ppm未満である又はTi含有量が1500ppm以上である場合に比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制するプロセスカートリッジが提供される。
<15>に係る発明によれば、静電荷像現像剤を構成する静電荷像現像用トナーがトナー粒子と層状構造化合物粒子と無機粒子とを含み、Ti含有量が0.1ppm未満である又はTi含有量が1500ppm以上である場合に比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する画像形成装置が提供される。
<16>に係る発明によれば、静電荷像現像剤を構成する静電荷像現像用トナーがトナー粒子と層状構造化合物粒子と無機粒子とを含み、Ti含有量が0.1ppm未満である又はTi含有量が1500ppm以上である場合に比べて、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0010】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0011】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0014】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0016】
本開示において、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」ともいい、「静電荷像現像剤」を単に「現像剤」ともいう。
【0017】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子と、層状構造化合物粒子と、無機粒子と、を含み、トナー全体に対するTi含有量が0.1ppm以上1500ppm未満である。ppmは、parts per million(百万分率)の略であり、質量基準である。
【0018】
トナーのTi含有量は蛍光X線分析により求める。具体的には次のとおり測定する。
ポリエステル樹脂粒子と酸化チタン粒子とを予め定められた割合で混合した混合物約200mgを、IR用錠剤成形器を用いて直径13mmのペレット状に成形しペレットサンプルを得る。ペレットサンプルの質量を精秤し、ペレットサンプルの蛍光X線分析を行って、チタンのピーク強度を求める。これを、酸化チタンの混合割合を変更した複数サンプルについて行い、複数サンプルの測定結果から、チタン含有量とチタンのピーク強度との関係を示す検量線を作成する。
トナー約200mgについて、上記と同じくペレットサンプルの蛍光X線分析を行ってチタンのピーク強度を求め、検量線からTi含有量を決定する。
【0019】
本実施形態に係るトナーは、像保持体表面に皮膜が形成されることを抑制し、像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する。その機序として次のことが推測される。
【0020】
従来、層状構造化合物粒子(例えば、メラミンシアヌレート粒子、チッ化ホウ素粒子)を外添したトナーが知られている。層状構造化合物粒子は、層間距離がオングストローム級の積層構造を有する化合物の粒子であり、層どうしが互いにずれ合うことで潤滑作用を示すと考えられている。トナーに外添された層状構造化合物粒子は、像保持体とクリーニングブレードとの接触部において潤滑剤として作用する。
しかし、高密度画像を長時間連続で画像形成するなど現像機内のトナーの入れ替わりが早い画像形成においては、トナー粒子から遊離する層状構造化合物粒子の量が比較的多くなり、過剰に遊離した層状構造化合物粒子が像保持体のクリーニングブレードをすり抜け、像保持体表面に皮膜を形成(いわゆるフィルミング)することがある。この現象は、トナー粒子から層状構造化合物粒子が遊離しやすい低温低湿環境(例えば、温度10℃且つ相対湿度15%)下の画像形成において顕著である。
これに対して、トナーがチタンを含んでいると、チタンがトナー粒子表面と層状構造化合物粒子との間に介在し、チタンが層状構造化合物粒子を引き付け層状構造化合物粒子がトナー粒子から遊離することを抑制するものと推測される。この作用を得るため、本実施形態に係るトナーはTi含有量が0.1ppm以上であり、好ましくは0.2ppm以上であり、より好ましくは0.3ppm以上である。
ただし、トナーに含まれるチタンが多すぎると層状構造化合物粒子がトナー粒子から遊離しにくくなると推測される。そうすると、低密度画像を長時間連続で画像形成するなど現像機内のトナーの入れ替わりが遅い画像形成においては、現像機内での攪拌によってトナー粒子に層状構造化合物粒子が強く付着するため、トナー粒子から遊離する層状構造化合物粒子の量が少なくなり、像保持体のクリーニングブレードへの供給が少なくなることで、像保持体のクリーニングブレードの摩耗が発生しやすい。この現象は、トナーから層状構造化合物粒子が遊離しにくい高温高湿環境(例えば、温度32℃且つ相対湿度85%)下の画像形成において顕著である。上記のようにして発生する像保持体のクリーニングブレードの摩耗を抑制する観点から、本実施形態に係るトナーはTi含有量が1500ppm未満であり、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下である。
【0021】
トナーに含まれるチタン源としては、酸化チタン(TiO2)が挙げられる。酸化チタンは外添剤でもよく、内添剤でもよい。
【0022】
以下、本実施形態に係るトナーの成分、構造及び特性について詳細に説明する。
【0023】
[トナー粒子]
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0024】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知の非晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂と共に、結晶性ポリエステル樹脂を併用してもよい。但し、結晶性ポリエステル樹脂は、全結着樹脂に対して、含有量が2質量%以上40質量%以下(好ましくは2質量%以上20質量%以下)の範囲で用いることがよい。
【0026】
樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを指す。
一方、樹脂の「非晶性」とは、半値幅が10℃を超えること、階段状の吸熱量変化を示すこと、又は明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0027】
・非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0028】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0031】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0032】
非晶性ポリエステル樹脂は、公知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と重縮合させるとよい。
【0033】
・結晶性ポリエステル樹脂
結晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香環を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族の重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0034】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0037】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下がさらに好ましい。
融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0038】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0039】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステルと同様に、公知の製造方法により得られる。
【0040】
結着樹脂の含有量は、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
【0041】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート等の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系等の染料;が挙げられる。
着色剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0043】
着色剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0044】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0045】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0046】
離型剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0047】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の公知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0048】
本実施形態に係るトナーが内添剤として酸化チタン(TiO2)を含む場合、酸化チタン粒子の個数一次平均粒径は、5nm以上100nm以下が好ましく、7nm以上70nm以下がより好ましく、10nm以上50nm以下が更に好ましい。
【0049】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0050】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。サンプリングする粒子数は50000個である。体積基準の粒度分布を小径側から描いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとする。
【0051】
トナー粒子の平均円形度は、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理を行って外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0052】
[層状構造化合物粒子]
層状構造化合物粒子は、積層構造を有する化合物の粒子である。層状構造化合物粒子としては、メラミンシアヌレート粒子、チッ化ホウ素粒子、フッ化黒鉛粒子、二硫化モリブデン粒子、マイカ粒子等が挙げられる。
【0053】
層状構造化合物粒子の体積平均粒径は、層状構造化合物粒子の凝集化を抑制する観点から、0.4μm以上8.0μm未満が好ましく、0.7μm以上7.5μm以下がより好ましく、1.0μm以上7.0μm以下が更に好ましい。層状構造化合物粒子の体積平均粒径は、粉砕、分級、又は、粉砕と分級の組合せによって制御し得る。
【0054】
層状構造化合物の体積平均粒径は、下記の測定方法によって求める。
まず、トナーから層状構造化合物粒子を分離する。トナーから層状構造化合物粒子を分離する方法に制限はなく、例えば、トナーを界面活性剤を含む水に分散させた分散液に超音波を印加した後、分散液を高速遠心し、比重によってトナー粒子と層状構造化合物粒子とその他の外添剤とを遠心分離する。層状構造化合物粒子を含む分画を抽出し、乾燥させて層状構造化合物粒子を得る。
次いで、層状構造化合物粒子を電解質水溶液(アイソトン水溶液)に添加し、超音波を30秒以上印加して分散させる。この分散液を試料にして、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル社製、マイクロトラックMT3000II)を用いて粒径を測定する。少なくとも3000個の層状構造化合物粒子を測定し、体積基準の粒度分布における小さい側から累積50%の粒径を体積平均粒径とする。
【0055】
層状構造化合物粒子の含有量は、層状構造化合物粒子の潤滑作用を得る観点から、トナー全体に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。層状構造化合物粒子の含有量は、層状構造化合物粒子の凝集化を抑制する観点から、トナー全体に対して、1.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0056】
[無機粒子]
本実施形態に係るトナーに外添剤として含まれる無機粒子としては、SiO2、TiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4等が挙げられる。
【0057】
無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。疎水化処理剤の量は、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0058】
無機粒子の個数平均粒径は、0.01μm以上0.4μm以下が好ましく、0.02μm以上0.3μm以下がより好ましく、0.03μm以上0.2μm以下が更に好ましい。
【0059】
無機粒子の個数平均粒径は、下記の測定方法によって求める。
まず、トナーから無機粒子を分離する。トナーから無機粒子を分離する方法に制限はなく、例えば、トナーを界面活性剤を含む水に分散させた分散液に超音波を印加した後、分散液を高速遠心し、比重によってトナー粒子と層状構造化合物粒子と無機粒子とを遠心分離する。無機粒子を含む分画を抽出し、乾燥させて無機粒子を得る。
次いで、無機粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮像し、画像解析によって、無作為に選んだ一次粒子1000個それぞれの円相当径(μm又はnm)を求める。個数平均粒径は、個数基準の円相当径の分布における小径側から累積50%の円相当径である。
【0060】
本実施形態に係るトナーが外添剤として酸化チタン(TiO2)を含む場合、酸化チタン粒子の個数一次平均粒径は、5nm以上100nm以下が好ましく、7nm以上70nm以下がより好ましく、10nm以上50nm以下が更に好ましい。
【0061】
本実施形態に係るトナーが外添剤として酸化チタン粒子を含む場合、層状構造化合物粒子の含有量Maと酸化チタン粒子の含有量Mbとの質量基準の比Mb/Maは、0.0002以上1.55以下が好ましく、0.01以上1.3以下がより好ましく、0.05以上1.0以下が更に好ましい。
【0062】
本実施形態に係るトナーが外添剤としてシリカ(SiO2)を含む場合、シリカの含有量は、トナー全体に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下が更に好ましい。
【0063】
[その他の外添剤]
本実施形態に係るトナーは、層状構造化合物粒子及び無機粒子以外のその他の外添剤を含んでいてもよい。その他の外添剤としては、例えば、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等が挙げられる。
【0064】
本実施形態に係るトナーが層状構造化合物粒子及び無機粒子以外のその他の外添剤を含んでいる場合、その他の外添剤の外添量の総量は、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0065】
[トナーの製造方法]
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0066】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0067】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0068】
以下、各工程の詳細について説明する。
以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0069】
-樹脂粒子分散液準備工程-
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0070】
樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0071】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、転相乳化法によって分散媒に樹脂粒子を分散させてもよい。転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて中和したのち、水系媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの転相を行い、樹脂を水系媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0074】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製LA-700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0075】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0076】
樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0077】
-凝集粒子形成工程-
次に、樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0078】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、加熱を行ってもよい。
【0079】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に含まれる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤と共に、該凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0080】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酸酢(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;などが挙げられる。
キレート剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0081】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0082】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア・シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。第2凝集粒子を形成する工程で使用する樹脂粒子分散液に酸化チタンを予め混合しておき、当該混合液を使用しることにより、トナー粒子に酸化チタンを内添させてもよい。
【0083】
融合・合一工程終了後、溶液中に形成されたトナー粒子に、公知の洗浄工程、固液分離工程、及び乾燥工程を施して乾燥した状態のトナー粒子を得る。洗浄工程は、帯電性の観点から、イオン交換水による置換洗浄を充分に施すことがよい。固液分離工程は、生産性の観点から、吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。乾燥工程は、生産性の観点から、凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0084】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0085】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアとを混合した二成分現像剤であってもよい。
【0086】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;などが挙げられる。磁性粉分散型キャリア及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、この表面を樹脂で被覆したキャリアであってもよい。
【0087】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物;などが挙げられる。
【0088】
被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0089】
芯材の表面を樹脂で被覆するには、被覆用の樹脂、及び各種添加剤(必要に応じて使用する)を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する樹脂の種類や、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法;被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法;芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、その後に溶剤を除去するニーダーコーター法;などが挙げられる。
【0090】
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0091】
<画像形成装置、画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、像保持体の表面に接触するブレードを有し、該ブレードにより、トナー画像を転写した後の像保持体の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニング手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0092】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、トナー画像を転写した後の像保持体の表面にブレードを接触させて、像保持体の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニング工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0093】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;等の公知の画像形成装置が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0094】
本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に着脱するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0095】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0096】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0097】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、駆動ロール22及び支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段の一例)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの供給がなされる。
【0098】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。
【0099】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
【0100】
感光体クリーニング装置6Yは、感光体1Yの表面に接触するクリーニングブレードを備えている。クリーニングブレードが、トナー画像を転写した後も回転を続ける感光体1Yの表面に接触し、感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する。
【0101】
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。各ユニットの一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスの値を変える。
【0102】
以下、第1のユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線が照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3からレーザ光線3Yを照射する。それにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0103】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転する。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として現像され可視化される。
【0104】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして、感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0105】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、第1のユニット10Yでは制御部(図示せず)によって例えば+10μAに制御されている。
【0106】
トナー画像を転写した後の感光体1Yは、回転を続け、感光体クリーニング装置6Yが備えるクリーニングブレードと接触する。感光体1Y上に残留したトナーは、感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0107】
第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエローのトナー画像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0108】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する支持ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0109】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0110】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体としては、記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0111】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0112】
<プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、像保持体と、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に接触するブレードを有し、該ブレードにより、トナー画像を転写した後の像保持体の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニング手段と、を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0113】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像手段と、その他、必要に応じて、例えば、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0114】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0115】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。感光体クリーニング装置113は、感光体107と接触するブレードを備えている。
【0116】
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0117】
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0118】
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kが着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0119】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0120】
<トナー粒子の作製>
[非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)の作製]
・エチレングリコール :37部
・ネオペンチルグリコール:65部
・1,9-ノナンジオール:32部
・テレフタル酸 :96部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度200℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを1.2部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃で4時間攪拌を継続し、非晶性ポリエステル樹脂(酸価9.4mgKOH/g、重量平均分子量13,000、ガラス転移温度62℃)を得た。非晶性ポリエステル樹脂を溶融状態のまま、乳化分散機(キャビトロンCD1010、ユーロテック社)に毎分100gの速度で移送した。別途、試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37%濃度の希アンモニア水をタンクに入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で非晶性ポリエステル樹脂と同時に乳化分散機に移送した。乳化分散機を回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転し、体積平均粒径160nm、固形分20%の非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)を得た。
【0121】
[結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)の作製]
・デカン二酸 :81部
・ヘキサンジオール:47部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度160℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを0.03部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて200℃まで温度を上げ、200℃で4時間攪拌を継続した。次いで、反応液を冷却し、固液分離を行い、固形物を温度40℃/減圧下で乾燥し、結晶性ポリエステル樹脂(C1)(融点64℃、重量平均分子量15,000)を得た。
【0122】
・結晶性ポリエステル樹脂(C1) :50部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):2部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を120℃に加熱して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社)で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。体積平均粒径が180nmになったところで回収し、固形分20%の結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)を得た。
【0123】
[離型剤粒子分散液(W1)の作製]
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製 HNP-9) :100部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):1部
・イオン交換水 :350部
上記の材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径200nmの離型剤粒子が分散した離型剤粒子分散液を得た。この離型剤粒子分散液にイオン交換水を加えて固形分量を20%に調製して、離型剤粒子分散液(W1)とした。
【0124】
[着色剤粒子分散液(K1)の作製]
・カーボンブラック(キャボット社製、Regal330) :50部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):5部
・イオン交換水 :195部
上記の材料を混合し、アルティマイザ(スギノマシン社製)を用いて240MPaで10分分散処理し、固形分量20%の着色剤粒子分散液(K1)を得た。
【0125】
[トナー粒子(1)の作製]
・イオン交換水 :200部
・非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1) :150部
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1) :10部
・離型剤粒子分散液(W1) :10部
・着色剤粒子分散液(K1) :15部
・アニオン性界面活性剤(TaycaPower):2.8部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1Nの硝酸を添加してpHを3.5に調整した後、ポリ塩化アルミニウム(王子製紙(株)製、30%粉末品)2部をイオン交換水30部に溶解させたポリ塩化アルミニウム水溶液を添加した。ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で45℃まで加熱し、体積平均粒径が5.2μmとなるまで保持した。
次いで、非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)60部を追加し30分間保持した。次いで、体積平均粒径5.2μmとなったところで、さらに非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)60部を追加し30分間保持した。続いて、10%のNTA(ニトリロ三酢酸)金属塩水溶液(キレスト70、キレスト株式会社製)20部を加え、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9.0に調整した。次いで、アニオン性界面活性剤(TaycaPower)1部を投入して攪拌を継続しながら85℃まで加熱し、5時間保持した。次いで、20℃/分の速度で20℃まで冷却した。次いで、濾過し、イオン交換水で充分に洗浄し、乾燥させることにより、体積平均粒径5.9μmのトナー粒子(1)を得た。
【0126】
[トナー粒子(2)の作製]
トナー(1)の作製と同様にして、ただし、追加する非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)60部を、非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)60部に出来上がりのトナー全体に対して0.05質量%となる疎水性酸化チタン粒子(テイカ製、JMT2000)を予め混合した混合液に変更して、トナー粒子(2)を作製した。
【0127】
<層状構造化合物粒子の作製>
[メラミンシアヌレート粒子の作製]
市販品のメラミンシアヌレート(日産化学製、MC-4500)をジェットミルで粉砕し分級し、メラミンシアヌレート粒子(1)~(5)を得た。メラミンシアヌレート粒子(1)~(5)の体積平均粒径を表1に示す。表1において「MC」はメラミンシアヌレートを意味する。
【0128】
[チッ化ホウ素粒子の作製]
市販品のチッ化ホウ素粒子をジェットミルで粉砕し分級した。チッ化ホウ素粒子の体積平均粒径を表1に示す。表1において「BN」はチッ化ホウ素を意味する。
【0129】
<キャリアの作製>
トルエン14部とスチレン-メチルメタクリレート共重合体(重合質量比90:10、重量平均分子量8万)2部とカーボンブラック(キャボット社製R330)0.2部とを混合しスターラーで10分間攪拌し分散液を調製した。次いで、分散液とフェライト粒子(体積平均粒径36μm)100部とを真空脱気型ニーダーに入れて60℃において30分間攪拌し、次いで、加温しながら減圧して脱気し乾燥させてキャリアを得た。
【0130】
<実施例1>
・トナー粒子(1) :100質量部
・疎水性シリカ粒子(日本アエロジル社製、RY50):2.5質量部
・メラミンシアヌレート粒子(1) :0.1質量部
・疎水性酸化チタン粒子(テイカ製、JMT2000):トナー全体に対して疎水性酸化チタン粒子が0.05質量%になる量
上記の材料をサンプルミルに入れ、10000rpmで30秒間混合した。次いで、目開き45μmの振動篩いで篩分して、体積平均粒子径5.9μmのトナーを作製した。トナーとキャリアとをトナー:キャリア=5:95(質量比)の割合でVブレンダーに入れ20分間攪拌し、現像剤を得た。
【0131】
<実施例2>
・トナー粒子(1) :100質量部
・疎水性シリカ粒子(日本アエロジル社製、RY50) :2.5質量部
・メラミンシアヌレート粒子(1) :0.1質量部
・疎水性シリカ粒子(日本アエロジル社製、RY50)99.8質量部と疎水性酸化チタン粒子(テイカ製、JMT2000)0.2質量部とを混合した混合物:トナー全体に対して疎水性酸化チタン粒子が0.00002質量%になる量
上記の材料をサンプルミルに入れ、10000rpmで30秒間混合した。次いで、目開き45μmの振動篩いで篩分して、体積平均粒子径5.9μmのトナーを作製した。トナーとキャリアとをトナー:キャリア=5:95(質量比)の割合でVブレンダーに入れ20分間攪拌し、現像剤を得た。
【0132】
<実施例3~12、比較例1~2>
実施例1と同様にして、ただし、表1に示す仕様となるように、層状構造化合物粒子の種類若しくは添加量、又は、疎水性酸化チタン粒子の添加量若しくは粒径を変更して、トナー及び現像剤を得た。
【0133】
<性能評価>
[感光体表面のフィルミング]
現像剤を画像形成装置ApeosPortIV C5575改造機(富士ゼロックス社製)の現像装置に収容した。この画像形成装置を温度10℃且つ相対湿度15%の環境に1日間放置後、同じ環境下で、画像密度50%の画像をA4紙に連続で15000枚形成した。感光体表面と最後の1枚を目視観察し、下記のとおり分類した。G3までが許容範囲である。
G1:フィルミングがなく、画像上に白筋がない。
G2:フィルミングがごく軽微に発生しているが、画像上に白筋がない。
G3:フィルミングが軽微に発生しているが、画像上に白筋がない。
G4:フィルミングが発生しており、画像上に白筋が僅かに発生している。
G5:フィルミングが発生しており、画像上に白筋が発生している。
【0134】
[クリーニングブレードの摩耗]
現像剤を画像形成装置ApeosPortIV C5575改造機(富士ゼロックス社製)の現像装置に収容した。この画像形成装置を温度32℃且つ相対湿度85%の環境に1日間放置後、同じ環境下で、画像密度1%の画像をA4紙に連続で15000枚形成した。最後の1枚を目視観察し、感光体クリーニングブレードの当接部をマイクロスコープ(キーエンス社製、VH6200)で100倍に拡大して観察した。画像上に発生した色筋の本数と、感光体クリーニングブレードの当接部の状態とを、下記のとおり分類した。G3までが許容範囲である。
G1:色筋が0本、且つ、クリーニングブレードの欠けがない。
G2:色筋が0本、且つ、クリーニングブレードの欠けがある。
G3:色筋が1本~3本、且つ、クリーニングブレードの欠けがある。
G4:色筋が4本~6本、且つ、クリーニングブレードの欠けがある。
G5:色筋が7本以上、且つ、クリーニングブレードの欠けがある。
【0135】
【符号の説明】
【0136】
1Y、1M、1C、1K 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 定着装置(定着手段の一例)
30 中間転写体クリーニング装置
P 記録紙(記録媒体の一例)
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電手段の一例)
109 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
111 現像装置(現像手段の一例)
112 転写装置(転写手段の一例)
113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
115 定着装置(定着手段の一例)
116 取り付けレール
117 筐体
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)