(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】商品陳列用合成樹脂製フック
(51)【国際特許分類】
A47F 5/00 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
A47F5/00 D
(21)【出願番号】P 2020046215
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 温美
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3166176(JP,U)
【文献】登録実用新案第3165590(JP,U)
【文献】特開2009-181722(JP,A)
【文献】特開平08-131302(JP,A)
【文献】特表2013-510638(JP,A)
【文献】実公昭61-024129(JP,Y2)
【文献】実開平02-013446(JP,U)
【文献】登録実用新案第3162720(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を吊り下げて展示するための合成樹脂製フックであって、
ハンガーロッドと、これを保持する背板とから構成されており、
背板は、その下端がハンガーロッドの取り付け位置よりも下方に延設され、
ハンガーロッドは、背板と連結する基礎部分が太く、先端に行くに従って細くなっており、その断面形状は、上部が丸く、下部が平坦であり、下部両脇または中央部両脇に凸形状を有
し、
ハンガーロッドの断面形状は、幅:高さの比が、1:1.1以上1.6以下であり、
凸形状部(片側)の幅:高さの比が、1:3以上4以下である
ことを特徴とす
る商品陳列用合成樹脂製フック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店頭において、商品を吊り下げて陳列して販売に供するために使用する合成樹脂製の商品陳列用フックに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシなどの商品を店頭に陳列する場合、商品の上部に開けられた孔を、金属製の棒からなるフックに通して、商品を吊り下げて展示する場合が多い。しかし金属製のフックは、鉄にクロムメッキを施したものが多いが、外観的に冷たい印象を与えるものであり、また輸送時に重量が重いという問題や、さらには、クロムメッキが環境に与える負荷が大きいという問題もあった。特許文献1に記載された商品陳列用具は、これらの問題が生じない合成樹脂製の商品陳列用具である。
【0003】
特許文献1に記載された商品陳列用具は、フック部材も台板もともに合成樹脂製であり、フック部材の基端部の形状と、台板の取り付け穴の形状を工夫したことにより、フック部材を台板に対して、前後方向にガタつきを生じないよう安定して装着し得る商品陳列用具である。
【0004】
特許文献1に記載された商品陳列用具においては、フック部材が単なる丸棒であるため、商品の重量によっては、撓んだり変形したりするという恐れがある。特にフックの長さが150mm以上となる場合には、フックの形状を維持できず下方に撓んで変形してしまうという問題が生じ易い。
【0005】
合成樹脂製のフックの場合、塑性変形して曲がった状態になってしまう場合があり、外観上大きな問題となる。別の問題として、合成樹脂製フックの場合、太さが一定で細長の形状は、成形時に樹脂の流動性によっては、成形が困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、必要な強度を保持しながらも軽量で取扱いが容易であり、成形性も良好な商品陳列用合成樹脂製フックを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、商品を吊り下げて展示するための合成樹脂製フックであって、ハンガーロッドと、これを保持する背板とから構成されており、背板は、その下端がハンガーロッドの取り付け位置よりも下方に延設され、ハンガーロッドは、背板と連結する基礎部分が太く、先端に行くに従って細くなっており、その断面形状は、上部が丸く、下部が平坦であり、下部両脇または中央部両脇に凸形状を有し、ハンガーロッドの断面形状の、幅:高さの比が、1:1.1以上1.6以下であり、凸形状部(片側)の幅:高さの比が、1:3以上4以下であることを特徴とする商品陳列用合成樹脂製フックである。
【0009】
本発明に係る商品陳列用合成樹脂製フックは、断面形状を工夫したことにより、商品をぶら下げても撓みが少なくて済む。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る商品陳列用フックは、従来の金属製のハンガーロッドに替えて、ハンガーロッドとこれを保持する背板を合成樹脂製としたことにより、軽量化することができた。また、構造的にハンガーロッドの断面形状を工夫したことにより、少ない材料で必要な強度、剛性を確保することができた。
【0012】
背板は、その下端がハンガーロッドの取り付け位置よりも下方に延設されているので、ラック等に取り付けた時に、ハンガーロッドの先端が下がる方向に回転するのを防止する効果がある。
【0013】
また、ハンガーロッドを、前記背板に接する基礎部分が太く、先端に行くに従って細くなるようにしたので、ハンガーロッドに均等荷重を加えた場合の撓みが少なくて済む。また、成形時の樹脂の流れが良好であり、成形性が良い。
【0014】
請求項1に記載の発明のように、ハンガーロッドの断面形状を、幅:高さの比が、1:1.1以上1.6以下とし、さらに凸形状部(片側)の幅:高さの比が、1:3以上4以下であるようにした場合には、より少ない材料で最大の効果が得られることが実験の結果から判明した。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係る商品陳列用合成樹脂製フックの一実施態様を示した斜視図である。
【
図2】
図2は、ハンガーロッドの断面形状の一例を示した断面模式図である。
【
図3】
図3は、ハンガーロッドの断面形状の他の例を示した断面模式図である。
【
図4】
図4は、ハンガーロッドの断面形状の他の例を示した断面模式図である。
【
図5】
図5は、ハンガーロッドの断面形状の他の例を示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る商品陳列用合成樹脂製フックについて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る商品陳列用合成樹脂製フック1の一実施態様を示した斜視図である。
図2は、ハンガーロッド2の断面形状の一例を示した断面模式図である。
【0017】
本発明に係る商品陳列用合成樹脂製フック1は、商品を吊り下げて展示するための商品陳列用合成樹脂製フックであって、ハンガーロッド2と、これを保持する背板3とから構成されており、背板3は、その下端がハンガーロッド2の取り付け位置よりも下方に延設され、ハンガーロッド2は、背板3と連結する基礎部分4が太く、先端部6に行くに従って細くなっており、その断面形状は、上部が丸く、下部が平坦であり、下部両脇または中央部両脇に凸形状7を有することを特徴とする。
【0018】
図2~4に示した例では、いずれもハンガーロッド2の下部両脇に凸形状7を有している。凸形状7を設けることで、ハンガーロッド2に荷重をかけた時に、ハンガーロッドが横方向に曲がることを防止する効果がある。
【0019】
図5に示した例では、ハンガーロッド2の中央部両脇に凸形状7を有している。この場合の凸形状7の効果も同様である。
【0020】
背板3は、その下端がハンガーロッド2の取り付け位置よりも下方に延設されているので、ラック等に取り付けた時に、ハンガーロッド2の先端が下がる方向に回転するのを防止する効果がある。
【0021】
図1に示した例では、ハンガーロッド2は、背板3に接する基礎部分4が太く、先端部6に行くに従って細くなっている。このようにすることにより、太さを均一にした場合と比較して、材料を節約することができる。すなわち、ハンガーロッド2に同一の荷重をかけた時の先端のたわみ量が同一の場合、均一な太さの場合よりも、少ない材料で、同一たわみ量を達成することができる。この事は、商品陳列用樹脂製フック1全体の重量を軽くする効果に繋がり、輸送コストの低減にも資する。
【0022】
また、ハンガーロッド2を先細りにすることにより、インジェクション成形時の樹脂の流れが良くなり、成形性が向上するという効果もある。
【0023】
本発明に係る商品陳列用樹脂製フック1は、背板3とハンガーロッド2、その他の部分をすべて一体として成形しても良いし、例えば背板3に、ハンガーロッド2を溶着して取り付けても良い。一体成型の場合、部品点数も少なくて済むし、組み立てる手間が省けるが、成形用の金型は高価になる。
【0024】
本発明に係る商品陳列用樹脂製フック1に使用する材料について説明する。商品陳列用樹脂製フック1に用いる材料としては、各種合成樹脂材料が使用可能である。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の各種汎用樹脂が好適に使用できる。コストは高いが、ポリアセタール樹脂、ポリサルホン樹脂、液晶樹脂等の各種エンジニアリングプラスチックも勿論使用可能である。
【0025】
上記の合成樹脂材料に、炭素繊維やガラス繊維等を混合して繊維強化プラスチックとしても良い。本発明に係る商品陳列用フック1の成形方法としては、インジェクション成形法が適している。
以下、特許出願時の特許請求の範囲を以下に付記する。
[付記1]
商品を吊り下げて展示するための合成樹脂製フックであって、ハンガーロッドと、これを保持する背板とから構成されており、背板は、その下端がハンガーロッドの取り付け位置よりも下方に延設され、ハンガーロッドは、背板と連結する基礎部分が太く、先端に行くに従って細くなっており、その断面形状は、上部が丸く、下部が平坦であり、下部両脇または中央部両脇に凸形状を有することを特徴とする商品陳列用合成樹脂製フック。
[付記2]
ハンガーロッドの断面形状は、幅:高さの比が、1:1.1以上1.6以下であり、凸形状部(片側)の幅:高さの比が、1:3以上4以下であることを特徴とする付記1に記載の商品陳列用合成樹脂製フック。
【符号の説明】
【0026】
1・・・商品陳列用樹脂製フック
2・・・ハンガーロッド
3・・・背板
4・・・基礎部分
5・・・吊り下げ部
6・・・先端部
7・・・凸形状