(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A45D 29/18 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
A45D29/18
(21)【出願番号】P 2020048680
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-03-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手島 義裕
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-013002(JP,A)
【文献】特開2016-010856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 29/00-29/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって下地が塗布される爪の爪画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された前記爪画像から、第1のパラメータを適用して前記下地が塗布された下地検出領域を検出する下地検出手段と、
前記下地検出手段によって検出された前記下地検出領域と、前記下地を塗布した状態の爪の実際に前記下地が塗布されている下地塗布領域との一致度合いに関するユーザによる評価を受け付ける評価受付手段と、
前記下地検出手段によって検出された前記下地検出領域に印刷を施す印刷手段と、
を備え、
前記下地検出領域に対して前記下地塗布領域がはみ出ているとの評価が、前記評価受付手段において受け付けられたときは、前記下地検出手段は、前記第1のパラメータよりも下地が塗布された領域と判断する基準の低い第2のパラメータを適用して前記下地検出領域の検出を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記下地検出領域に対して前記下地塗布領域がはみ出ており、かつそれが塗り直し不要であるとの評価が、前記評価受付手段において受け付けられたときに、前記下地検出手段は、前記第2のパラメータを適用した前記下地検出領域の検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記下地検出手段による前記第2のパラメータを適用した前記下地検出領域の検出が行われたときは、前記第2のパラメータを第1のパラメータとするように、前記第1のパラメータを更新することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記画像取得手段によって取得された前記爪画像に、前記下地検出手段によって検出された前記下地検出領域を重畳表示させて、ユーザに提示する表示手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記下地検出手段によって検出された前記下地検出領域に基づいて、前記下地検出領域の周囲を広げた拡張領域を印刷領域として設定する印刷領域設定手段を備え、
前記印刷手段は、前記印刷領域設定手段によって設定された前記印刷領域に印刷を施すことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
ユーザによって下地が塗布される爪の爪画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程において取得された前記爪画像から、第1のパラメータを適用して前記下地が塗布された下地検出領域を検出する下地検出工程と、
前記下地検出工程において検出された前記下地検出領域と、前記下地を塗布した状態の爪の実際に前記下地が塗布されている下地塗布領域との一致度合いに関するユーザによる評価を受け付ける評価受付工程と、
前記下地検出工程において検出された前記下地検出領域に印刷を施す印刷工程と、
を実現させ、
前記下地検出工程において検出された前記下地検出領域に対して実際に前記下地の塗布されている前記下地塗布領域がはみ出ているとの評価が、前記評価受付工程において受け付けられたときは、第2の下地検出工程として、前記第1のパラメータよりも下地が塗布された領域と判断する基準の低い第2のパラメータを適用して前記下地検出領域の検出を行うことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
ユーザによって下地が塗布される爪の爪画像を取得する画像取得機能と、
前記画像取得機能によって取得された前記爪画像から、第1のパラメータを適用して前記下地が塗布された下地検出領域を検出する下地検出機能と、
前記下地検出機能によって検出された前記下地検出領域と、前記下地を塗布した状態の爪の実際に前記下地が塗布されている下地塗布領域との一致度合いに関するユーザによる評価を受け付ける評価受付機能と、
前記下地検出機能によって検出された前記下地検出領域に印刷を施す印刷機能と、
を実現させ、
前記下地検出機能によって検出された前記下地検出領域に対して実際に前記下地の塗布されている前記下地塗布領域がはみ出ているとの評価が、前記評価受付機能において受け付けられたときは、前記下地検出機能は、前記第1のパラメータよりも下地が塗布された領域と判断する基準の低い第2のパラメータを適用して前記下地検出領域の検出を行うことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、指の爪等にネイルデザインの印刷を行う印刷装置(描画装置、ネイルプリント装置)が知られている。
爪にネイルデザイン(デザイン)を印刷するためには、爪の形状を認識し、これにネイルデザインをフィッティングする必要がある。
【0003】
しかし、爪は周辺の皮膚の色等と近い色をしているため、正しく爪の形状を認識することが難しい。
そこで、白色等、爪や皮膚の色と明確に区別することのできる色の下地を、デザインを印刷したい領域に塗布して、この範囲内にデザインを印刷することが考えられる。
この場合には、例えば下地が塗布された爪をカメラ等で撮影し、取得された画像に画像処理等を行うことによって、自動的かつ精度よく印刷範囲を特定することができる。
また、下地を塗布することでデザインを印刷する際のインクの定着性も良くなるとともに、インク本来の色を鮮やかに発色させることができるため、美しい仕上がりのネイルプリントを実現することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ユーザが手動で下地を塗布する場合には、均一かつ正確に下地を塗布することが難しく、本来下地を塗布すべき範囲からはみ出して塗布されたり、塗り残し部分が生じたりするおそれがある。
【0006】
例えば白色の下地がはっきりと白く塗られている部分と、皮膚の色が透けて見える程度に薄く塗られている部分とがある場合のように、下地の塗り方にむらがある場合、ユーザが下地を塗った領域全体を印刷装置が正しく認識できない場合がある。
下地が塗布された領域が正しく認識されない場合、印刷範囲を適切な範囲に設定することができず、高品位な仕上がりとならない。
【0007】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、印刷領域を適切に設定して高品位な印刷することのできる印刷装置、印刷制御方法及びプログラムを提供することを利点とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の印刷装置の一態様は、
ユーザによって下地が塗布される爪の爪画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された前記爪画像から、第1のパラメータを適用して前記下地が塗布された下地検出領域を検出する下地検出手段と、
前記下地検出手段によって検出された前記下地検出領域と、前記下地を塗布した状態の爪の実際に前記下地が塗布されている下地塗布領域との一致度合いに関するユーザによる評価を受け付ける評価受付手段と、
前記下地検出手段によって検出された前記下地検出領域に印刷を施す印刷手段と、
を備え、
前記下地検出領域に対して前記下地塗布領域がはみ出ているとの評価が、前記評価受付手段において受け付けられたときは、前記下地検出手段は、前記第1のパラメータよりも下地が塗布された領域と判断する基準の低い第2のパラメータを適用して前記下地検出領域の検出を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷領域を適切に設定して高品位な印刷することができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態における印刷装置の要部構成を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態における印刷装置及びこれと連携する端末装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
【
図3】本実施形態における印刷制御処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図3にいう印刷領域設定処理を示すフローチャートである。
【
図5】印刷領域確認画面の例を示す図であり、(a)は、下地残りがない場合の画面例を示し、(b)は、下地残りがあるが塗り直しまでは不要の場合の画面例を示し、(c)は、下地残りがあり塗り直しが必要な場合の画面例を示している。
【
図6】印刷領域設定処理の一変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から
図5を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、印刷制御方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷する印刷装置を例に説明するが、本発明における印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。また、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、人の爪以外の爪様のものを印刷対象としてもよい。
【0012】
図1は、本実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す斜視図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、
図1に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向は、
図1に示した方向をいうものとする。
【0013】
図1に示すように、印刷装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2は、前面側(印刷装置1の正面側、
図1において前側)の下側部分に、左右方向(印刷装置1の横方向、
図1において左右方向、X方向)のほぼ全面に亘って形成された開口部21を有している。また、筐体2の左右方向のほぼ中央部には、開口部21の上側に連続して切り欠き部22が形成されている。切り欠き部22は、後述する印刷ヘッド41を装置に対して着脱する際の出入口として機能する。
なお、図示はしないが、筐体2は、開口部21や切り欠き部22を覆うカバー部材等を備えていてもよい。カバー部材は、筐体2とは別体に分離されたものであってもよいし、例えば筐体2に対してヒンジ等を介して開閉可能に取り付けられていてもよい。
【0014】
また、筐体2の上面(天板)には、印刷装置1の操作部12が設けられている。操作部12は、例えば印刷装置1の電源をON/OFFする操作ボタン(電源スイッチボタン)である。操作部12が操作されると、操作信号が制御装置30に出力され、制御装置30が操作信号に従った制御を行い、印刷装置1の各部を動作させる。例えば操作部12が電源スイッチボタンである場合、ボタン操作に応じて印刷装置1の電源がON/OFFされる。
なお、操作部12に代えて、後述する端末装置7の操作部71から入力された操作信号に従って印刷装置1の各部が動作するようにしてもよい。
筐体2各部の形状や各部の配置等は、図示例に限定されず、適宜設定可能である。例えば、操作部12は、筐体2の上面ではなく側面や背面等に設けられていてもよい。また、筐体2にはその他各種の操作ボタンが操作部12として設けられていてもよいし、各種表示部やインジケータ等が設けられていてもよい。
【0015】
筐体2の内部には、装置本体10が収容されている。
装置本体10は、基台11と、これに取り付けられた指保持部6、印刷部40等を備えている。
【0016】
指保持部6は、基台11における装置前面側の左右方向(X方向)のほぼ中央部に配置されており、本実施形態における印刷対象である爪Tを有する指Uを印刷に適した領域内に保持する指保持手段である。
指保持部6は、装置前面側に開口部61を有している。また指保持部6の内部には、指固定部材62が設けられている。指固定部材62は、開口部61から挿入された指Uを下側から押し上げ支持するものであり、例えば柔軟性を有する樹脂等で形成されている。
指保持部6の上面には開口部61から挿入され指固定部材62により保持された指Uの爪T部分を露出させる窓部63が形成されている。
【0017】
印刷部40は、後述する印刷データ生成部314(
図2参照)において生成される印刷データにしたがって印刷対象である爪Tに印刷を施す印刷手段である。
印刷部40は、印刷動作を行う印刷ヘッド41及びこれを備えた印刷ヘッドユニット42を移動させるためのヘッド移動機構49(
図2参照)を備えている。
【0018】
本実施形態の印刷ヘッド41は、爪表面に対向する面がインクを吐出させる複数のノズル口を備えたインク吐出面(いずれも図示せず)となっており、インクを微滴化し、インク吐出面から印刷対象(爪T)の被印刷面である爪表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のインクジェットヘッドである。印刷ヘッド41の構成は特に限定されないが、例えばインク吐出面等の吐出機構部とインクカートリッジ(いずれも図示せず)とが一体となったカートリッジ一体型のヘッドである。
印刷ヘッド41は、例えば、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)のインクを吐出可能となっている。なお、印刷ヘッド41に備えられるインクの種類はこれに限定されない。
【0019】
ヘッド移動機構49は、印刷ヘッド41を装置の左右方向(X方向)に移動させるための図示しないX方向移動機構及び印刷ヘッド41を装置の前後方向(Y方向)に移動させるための図示しないY方向移動機構からなる。
X方向移動機構は、X方向移動モータ46を含んでおり、X方向移動モータ46が駆動することにより印刷ヘッド41を装置の左右方向(X方向)に移動させる。また、Y方向移動機構は、Y方向移動モータ48を含んでおり、Y方向移動モータ48が駆動することにより印刷ヘッド41を装置の前後方向(Y方向)に移動させる。
【0020】
ヘッド移動機構49のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48及び印刷ヘッド41(印刷ヘッド41の吐出機構部)の動作は制御装置30の印刷制御部315(
図2参照)によって制御される。
【0021】
また、筐体2の上面(天板)の内側であって、指保持部6の窓部63の上方位置には、窓部63から露出する爪T(爪Tを含む指U)を撮影して爪Tの画像(爪Tを含む指Uの画像、以下「爪画像」という。)を取得する撮影部50が設けられている。
撮影部50は、例えばカメラ等である撮影装置51と、撮影対象である爪Tを照明する白色LED等で構成された照明装置52とを備えている(
図2参照)。なお、本実施形態では後述するように、爪Tの画像から爪Tの色情報を取得するようになっている。このため、撮影装置51は、撮影した画像から色を識別することが可能な程度の性能(解像度等)を有することが好ましい。
この撮影部50は、後述する制御装置30の撮影制御部312(
図2参照)に接続されており、該撮影制御部312によって制御されるようになっている。
撮影装置51によって撮影された爪画像は、撮影制御部312において取得される。
なお、撮影部50によって撮影された画像の画像データは、後述する記憶部32に記憶されてもよい。
【0022】
本実施形態では、撮影装置51及び照明装置52が、筐体2の天面内側であって指保持部6に載置された指Uの爪T(爪Tの表面)と対向可能な位置に固定配置されている場合を例示したが、撮影部50は、指保持部6に載置された指Uの爪Tを撮影可能な位置に設けられていればよく、具体的な配置は特に限定されない。
例えば、撮影部50は、印刷ヘッド41を移動させるヘッド移動機構49によってXY方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0023】
制御装置30は、例えば筐体2の上面(天板)の内側(下面側)等に配置された図示しない基板等に搭載されている。
図2は、本実施形態の制御構成を示すブロック図である。
制御装置30は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される制御部31と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部32とを備えるコンピュータである。
【0024】
記憶部32は、印刷装置1を動作させるための各種プログラム等が格納されたプログラム記憶領域321を有している。
具体的には、記憶部32には、印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納されており、制御部31がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して、プログラムが制御部31において実行されることによって、印刷装置1の各部が統括制御されるようになっている。
また、記憶部32は、爪情報記憶領域322を有している。爪情報記憶領域322には、後述の爪情報検出部313によって検出された爪Tに関する各種の情報が記憶される。
【0025】
なお、記憶部32には、撮影部50によって取得された爪画像等のデータが記憶されてもよいし、その他各種データが記憶されてもよい。
特に本実施形態では、各種処理を行うのに必要なパラメータやデータ等が記憶されている。具体的には、爪情報検出部313が、爪画像から下地の塗布された下地検出領域PAr(検出領域A)を検出するために適用するパラメータ(既定のパラメータ)等が記憶部32に記憶されている。ここにいうパラメータは、爪情報検出部313が下地検出領域PArの認識を行う際に使用するものであり、既定の学習データである。
【0026】
本実施形態では、爪Tの領域を周囲と区別して検出することを主要な目的として印刷を施したい領域(例えば爪Tの領域全体)に下地を塗布するようになっている。
下地を塗布した領域は、皮膚等の色(肌色等)特別のしやすい白色等の液剤(下地剤)を塗布することで形成される。
このため、爪情報検出部313が下地検出領域(検出領域A)を検出するために適用するパラメータは、白色等の下地の色とそうでない色(例えば肌色等)とを区別するものであり、真っ白に下地が塗布されている部分であれば下地検出領域と判断される。
下地剤は印刷を施したい領域(例えば爪Tの領域全体)にできるだけ均一に塗布することが望まれるが、下地は、例えばユーザが筆や刷毛状の道具を用いて下地剤を塗布することで形成される。このため、何層も下地剤を塗り重ねて真っ白になっている部分もある一方で、肌色が多少透ける程度の薄さにしか塗布されていない部分もある等、色むらが生じていることが考えられる。
【0027】
このため本実施形態では、ある程度の色むらに対応できるように、既定のパラメータよりも下地検出領域と判断する基準の低い(緩い)第2のパラメータが用意されている。なお、パラメータを変更してもよいし、事前に学習して得られた学習データを変更してもよい。
そして、ユーザが下地を塗布した部分であると意図した領域が下地検出領域として認識されなかった場合には、爪情報検出部313がこの第2のパラメータを適用して下地検出領域の再検出を行うようになっている。
なお、第2のパラメータが用いられた場合には、当該第2のパラメータを既定のパラメータとするように記憶部32に記憶されているデータを書き換えてもよい。またこの場合には、第2のパラメータよりもさらに下地検出領域と判断する基準の低いパラメータが新たな第2のパラメータとして記憶部32に用意されてもよい。
このように適用されるパラメータを書き換えていくことで、下地を比較的薄くしか塗布しないユーザの場合にその塗り方を改めなくても印刷装置1を使用する中で、次第にユーザの塗り方に応じた検出(多少肌の色が透けるような薄い下地でもミスなく下地検出領域に含めるような検出)を行うことが可能となる。
【0028】
制御部31は、機能的に見た場合、通信制御部311、撮影制御部312、爪情報検出部313、印刷データ生成部314、印刷制御部315等を備えている。これら通信制御部311、撮影制御部312、爪情報検出部313、印刷データ生成部314、印刷制御部315等としての機能は、制御部31と記憶部32のプログラム記憶領域321に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0029】
通信制御部311は、通信部13の動作を制御するものである。
通信部13は、端末装置7の通信部73との間で通信可能な無線通信モジュール等を備えており、通信制御部311は、印刷装置1、端末装置7間で各種のデータ等を送受信する際に通信部13の動作を制御する。
本実施形態の印刷装置1は、後述する端末装置7と連携してネイルデザイン(以下単に「デザイン」ともいう。)の印刷を行うようになっている。例えば爪Tに印刷するデザインのデータは端末装置7側に記憶されており、通信制御部311は適宜通信部13による通信を制御し、通信部13を介して端末装置7側からデザインのデータを取得する。
【0030】
印刷装置1と端末装置7との間での通信は、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。ネットワークを介して通信を行う場合、通信に用いるネットワークはどのような回線を利用するものでもよい。また、印刷装置1と端末装置7との間の通信は無線に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。
なお、通信部13は、端末装置7との間で通信を行うことのできるものであればよく、端末装置7の通信部73の通信規格と合致するものが適用される。
【0031】
撮影制御部312は、撮影部50の撮影装置51及び照明装置52を制御して撮影装置51により、指保持部6に載置された指Uの爪Tの画像を含む指Uの画像(爪画像)を撮影させる。
本実施形態では、後述するように撮影部50は下地が塗布された状態の爪Tを撮影するようになっており、撮影部50により取得された当該爪Tの画像(爪画像)は、撮影制御部312に送られる。撮影制御部312は、こうした爪画像(爪Tの画像のデータ)を取得する画像取得手段として機能する。なお、撮影制御部312は爪画像を記憶部32に記憶させてもよい。
【0032】
爪情報検出部313は、画像取得手段である撮影制御部2によって取得された爪Tの画像(爪画像)に基づいて、指Uの爪Tについての爪情報を検出する制御手段である。
本実施形態において爪情報検出部313は、特に、爪画像から下地の塗布された下地検出領域PAr(検出領域A)を検出する下地検出手段として機能する。
下地検出領域PAr(検出領域A)の検出には、記憶部32に記憶されているパラメータ(既定のパラメータ、既定の学習データ等)が適用される。爪情報検出部313は、白色等の液剤(下地剤)を塗布することで形成された下地検出領域PArを、印刷を施す予定の領域(例えば爪Tの全体に印刷を施したい場合には、爪Tの全体領域である爪領域、爪輪郭とほぼ一致する領域)として検出する。
なお、爪情報検出部313による下地検出領域PArの検出については後に詳述する。
【0033】
なお、爪情報検出部313によって検出される爪情報はこれに限定されない。
爪情報検出部313によって検出される爪情報は、例えば、爪Tの表面の、XY平面に対する傾斜角度(爪Tの傾斜角度、爪曲率)等を含んでいてもよい。また、撮影装置51によって撮影された画像等から爪Tの高さ(爪Tの垂直方向の位置)を取得できる場合には、爪Tの高さも爪情報に含まれてよい。
爪Tの下地検出領域PAr等、爪情報検出部313によって検出された各種の情報は、爪情報記憶領域322に記憶される。
【0034】
印刷データ生成部314は、下地検出手段である爪情報検出部313によって検出された下地検出領域PArに基づいて印刷を施す印刷領域を設定する印刷領域設定手段として機能する。すなわち、印刷データ生成部314は、爪情報検出部313によって検出され爪情報記憶領域322に記憶された爪Tの下地検出領域PArに所望のデザインを合わせ込んで印刷データを生成する。
具体的には、印刷データ生成部314は、ユーザによって選択されたネイルデザイン(デザイン)の画像データを切り出し、適宜拡大縮小、配置の調整等を行うとともに、爪Tの画像から検出された下地検出領域PArにフィッティングする。
なお、爪情報検出部313において爪Tの曲率等が取得された場合には、印刷データ生成部314は、この爪Tの曲率等に基づいて、印刷データに適宜曲面補正を行ってもよい。曲面補正を行った場合には、より爪Tの形状に合った印刷データを生成することができる。
【0035】
印刷制御部315は、印刷データ生成部314において生成された印刷データにしたがって爪Tに印刷を施すように印刷部40を制御する。
具体的には、印刷制御部315は、印刷データに基づいて印刷部40に制御信号を出力し、爪Tに対してこの印刷データにしたがった印刷を施すように印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、印刷ヘッド41等を制御する。
【0036】
また、本実施形態では、ユーザが操作ボタンやタッチパネル等を操作して入力操作を行うと、当該入力操作に対応する入力信号が制御部81に出力され、さらに印刷装置1の制御部31に送られる。これにより、ユーザによる入力操作が印刷装置1の制御部31において受け付けられる。
特に本実施形態では、下地検出手段である爪情報検出部313によって検出された下地検出領域PArと、下地を塗布した状態の爪Tの、実際に下地が塗布されている領域(後述の下地塗布領域WAr、
図5(a)~
図5(c)参照)との一致度合いに関するユーザによる評価を、ユーザが操作ボタンやタッチパネル等を操作して入力操作するようになっており、制御部31は、ユーザによる評価を受け付ける評価受付手段として機能する。
【0037】
また、前述のように、本実施形態の印刷装置1は、端末装置7と連携して爪Tに対する印刷を行う。
端末装置7は、例えばスマートフォン等の携帯端末装置である。なお、端末装置7はスマートフォンに限定されない。例えばタブレット型のパーソナルコンピュータ(以下において「PC」とする。)やノート型のPC、据置型のPC、ゲーム用の端末装置等であってもよい。
図2に示すように、端末装置7は、操作部71、表示部72、通信部73及び制御装置80等を備えている。
【0038】
操作部71は、ユーザの操作に応じて各種の入力・設定等を行うことができるようになっており、例えば表示部72の表面に一体的に設けられたタッチパネルである。操作部71が操作されると、当該操作に対応する入力信号が制御部81に送信される。
表示部72に構成されるタッチパネルには、後述する表示制御部812の制御にしたがって各種の操作画面が表示され、ユーザはタッチパネルへのタッチ操作によって各種の入力・設定等の操作を行うことができる。
なお、各種の入力・設定等の操作を行う操作部71はタッチパネルである場合に限定されない。例えば各種の操作ボタンやキーボード、ポインティングデバイス等が操作部71として設けられていてもよい。
【0039】
本実施形態では、ユーザが操作部71を操作することで、端末装置7から印刷装置1に対して印刷開始等の各種指示が出力されるようになっており、端末装置7は印刷装置1の操作部としても機能する。
また、ユーザが操作部71を操作することで、爪Tに印刷するネイルデザイン(デザイン)を選択すること等ができるようになっている。
【0040】
表示部72は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
なお、前述のように、表示部72の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、タッチパネルが操作部71として機能する。
本実施形態では、ユーザが操作部71から入力・選択したネイルデザインや、各種の案内画面、警告表示画面等が表示部72に表示可能となっている。
【0041】
また、印刷装置1の撮影部50が指保持部6にユーザが指Uを保持させる様子を撮影する場合、これをライブビュー画像として表示部72に表示させてもよい。この場合には、ユーザは表示部72を見ながら指Uを挿入することで、指保持部6内の正しい位置に指U(指Uの爪T)を配置しやすくなる。
【0042】
通信部73は、印刷装置1の通信部13との間で通信可能に構成されたものである。
印刷装置1と端末装置7との間での通信は、前述のように、無線接続方式、有線接続方式のどちらでもよく、具体的な方式は限定されない。通信部73は印刷装置1との間で通信を行うことのできるものであればよく、印刷装置1の通信部13の通信規格と合致するものが適用される。
通信部13は、後述する制御装置80の通信制御部811(
図2参照)に接続され、該通信制御部811によって制御される。
【0043】
図2に示すように、本実施形態の端末装置7の制御装置80は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される制御部81と、図示しないROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
【0044】
記憶部82には、端末装置7の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、本実施形態のROM等には、端末装置7の各部を統括制御するための動作プログラム821aの他、印刷装置1を用いたネイルプリントを行うためのネイルプリントアプリケーションプログラム821b(以下「ネイルプリントAP」とする。)等の各種プログラムが格納されており、制御部81がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して、プログラムが制御部81において実行されることによって、端末装置7の各部が統括制御されるようになっている。
【0045】
また、本実施形態の記憶部82には、ネイルデザイン(デザイン)のデータを格納するデザイン記憶領域822等が設けられている。
なお、デザイン記憶領域822に格納されるネイルデザイン(デザイン)は、予め用意された既存のデザインであってもよいし、ユーザが自ら作成したデザインであってもよい。また、端末装置7が各種ネットワークに接続可能である場合には、ネットワーク接続可能な図示しないサーバ装置等に記憶されているネイルデザイン(デザイン)を取り込むことが可能となっていてもよい。
【0046】
端末装置7の制御部81は、機能的に見た場合、通信制御部811、表示制御部812等を備えている。これら通信制御部811、表示制御部812等としての機能は、制御部81のCPUと記憶部82のROMに記憶されたプログラムとの協働によって実現される。なお、端末装置7の制御部81が備える機能はこれに限定されず、その他各種の機能部を備えていてもよい。
通信制御部811は、通信部73の動作を制御するものである。
また、表示制御部812は、表示部72を制御して表示部72に各種の表示画面を表示させる。
【0047】
次に、
図3から
図5を参照しつつ、本実施形態の印刷制御方法について説明する。
図3は、本実施形態における印刷処理を示すフローチャートである。
本実施形態の印刷装置1を用いてネイルプリントを行う場合には、ユーザは、印刷装置1の操作部12(操作ボタン)等を操作して電源を入れ起動させる。
また、端末装置7についても電源を入れて端末装置7の操作部71からネイルプリント処理の実行を選択する。これによりネイルプリントAP821bが起動する。
【0048】
端末装置7においてネイルプリントAP821bが起動すると、端末装置7の表示制御部812は、デザインを選択することのできるデザイン選択画面(図示せず)を表示部72に表示させる。ユーザがいずれかのデザインを選択して操作ボタンやタッチパネル等を操作すると、当該デザインを選択する旨の入力信号が制御部81に出力されて、当該デザインが爪Tに印刷するデザインとして設定される。
また、表示制御部812は、印刷したい爪Tの表面に下地を塗布して、対応する指Uを指保持部6にセットするよう促す指示画面を表示部72に表示させる。
【0049】
爪Tに下地が塗布された状態の爪Tの指Uが指保持部6にセットされると、
図3に示すように、撮影制御部312が撮影部50を制御して、爪Tを撮影させ、爪画像を取得する(ステップS1)。
そして、爪情報検出部313が、爪画像から爪Tの領域を検出する。具体的には、爪情報検出部313は、既定のパラメータを適用して、下地が塗布された下地検出領域PAr(検出領域A)を爪Tの領域として爪画像から検出する(ステップS2)。
さらに、印刷データ生成部314は、下地検出領域PAr(検出領域A)とユーザによって選択されたデザインデータとに基づいて印刷領域Eを設定する(ステップS3)。具体的には、印刷データ生成部314は、爪情報検出部313によって検出された下地検出領域PArにデザインデータを合わせ込み、印刷領域Eを設定する。
【0050】
ここで、
図4を参照しつつ、印刷領域Eの設定処理(ステップS3)について説明する。
印刷データ生成部314が印刷領域Eを設定する場合には、まず爪情報検出部313によって検出された検出領域Aを数ピクセル広げた拡張領域Bを作成する(ステップS21)。
次に、当該拡張領域Bに所望のデザインをフィッティングする(ステップS22)。すなわち、拡張領域Bに対し、デザインをどのように印刷するかを、デザインを拡縮等して決定する。
また、検出領域Aと拡張領域Bとの差分領域Cを作成する(ステップS23)。
さらに、差分領域Cの各画素について、下地の色と、フィッティングしたデザインの色との色距離d(色の差)を算出し(ステップS24)、この色距離d(色の差)に基づいて付加領域Dを作成する(ステップS25)。具体的には、差分領域のC内、色距離d(色の差)が所定の閾値以上である画素を、付加領域Dとする。
そして、印刷データ生成部314は、検出領域Aと付加領域Dとから印刷領域Eを設定(ステップS26)。
【0051】
なお、ステップS24において比較する下地の色は、予め決めた色(例えば白色)でもよいし、検出領域Aの平均色としてもよい。また、ステップS24では、下地の色とデザインの色とを画素ごとに比較しているが、デザインの色と比較するのは下地の色でなくてもよい。例えば、撮影画像の画素値との比較を行ってもよい。
下地が塗布されている部分は白色等であるため、印刷領域Eが下地の塗布されている領域(すなわち、
図5(a)~
図5(c)に示す下地塗布領域WAr)よりも小さいと、印刷後に白色等の部分が残ってしまい、高品位な印刷結果とならない。
この点、上記のように、検出領域Aと付加領域Dとから印刷領域Eを設定することにより、印刷領域Eを多少広めに設定することができ、白色等の下地が残らないようにすることができる。
【0052】
印刷データ生成部314が印刷領域Eを設定すると、設定された下地検出領域PArがユーザに提示される(ステップS4)。具体的には、表示制御部812が表示部72を制御して印刷領域確認画面72aを表示させる。そして、下地残り(下地検出領域PArに基づいて設定される印刷領域Eに印刷した場合に下地が残る部分)があると評価されたか否か、下地残りがある場合に塗り直しが必要と評価されたか否かを制御部31が判断する(ステップS5、ステップS6)。なお、ユーザに提示されるのは、下地検出領域PArでなくてもよい。下地検出領域PArに基づいて設定される印刷領域Eをユーザに提示してもよい。
【0053】
図5(a)~
図5(c)は、印刷領域確認画面の一例を示す図である。
印刷領域確認画面72aに表示される内容は、図示例に限定されないが、例えば印刷装置1の撮影部50で撮影された指Uを含む爪Tの画像(爪画像)に印刷データ生成部314によって生成された印刷データに基づく画像を重畳表示させたものである。
爪画像は、静止画像でもよいし、ライブビュー画像でもよい。また、これに重畳される印刷データに基づく画像は、印刷データに基づいて印刷されるデザインの画像でもよいし、印刷領域E内に下地の色(例えば白色)と区別しやすい色(例えば赤色等)を付けた画像であってもよい。また、下地検出領域PArや印刷領域Eの輪郭を画する線を重畳表示させてもよい。デザインの画像を重畳表示させた場合には、印刷イメージがユーザに伝わりやすく分かりやすい。ただ、印刷されるデザインに白っぽい部分が含まれる場合等は、下地が塗布されている部分(下地塗布領域WAr)と下地検出領域PAr(又はこれに基づく印刷領域E)とが区別しにくい場合もあり、この場合は、下地検出領域PAr(又はこれに基づく印刷領域E)を色だけで示す方が好ましい。
図5(a)~
図5(c)では、図示の都合上、爪画像に印刷データ生成部314によって生成された印刷データに基づくデザインの画像を重畳表示させて下地検出領域PAr(又はこれに基づく印刷領域E)の範囲を示す例を示している。
【0054】
図5(a)~
図5(c)において、実際に下地の塗布されている領域(これを「下地塗布領域WAr」とする。)を実線で示し、爪情報検出部313によって検出された下地検出領域PArを一点鎖線で示している。また、下地の塗りむら、塗りミスの部分を失敗領域NWAr(失敗領域NWAr1~失敗領域NWAr3)とする。
なお、前述のように、印刷領域Eは下地検出領域PAr(検出領域A)よりも数ピクセル広めに設定されるため、デザインの画像が印刷される印刷領域Eは、実際には、爪情報検出部313によって検出された下地検出領域PArよりも若干外側に広がるが、
図5(a)~
図5(c)では、下地検出領域PArとほぼ同じ範囲に、印刷されるデザインの画像を重畳させてユーザに提示している。
印刷領域確認画面72aにはユーザの評価を入力する操作部として、「OKボタン」「NGボタン」「塗り直しボタン」が設けられており、ユーザはこれらのボタンを操作することで、評価を入力する。
【0055】
ユーザは、この印刷領域確認画面72aを見て、印刷データ生成部314によって印刷領域Eとして設定された領域と実際に下地の塗布されている領域(下地塗布領域WAr)とを確認する。
そして、下地残りがあるか否か、下地残りがある場合に、塗り直す必要があるか否かを評価して、その評価結果を入力する。
【0056】
図5(a)は、下地が爪Tの全体に比較的均一に塗布されており、ユーザが下地を塗布した下地塗布領域WAr(すなわち、印刷領域として欲しい領域)が過不足なく爪情報検出部313によって下地検出領域PArとして検出され、この範囲に基づいてデザインの画像が印刷される印刷領域Eが設定される場合の印刷領域確認画面72aの表示例である。
ユーザは、印刷領域確認画面72aを確認して、下地残りがあるか否か、すなわち、印刷データ生成部314によって設定された印刷領域E(
図5(a)~
図5(c)では、印刷領域に近似する下地検出領域PArを一点鎖線により図示)よりも実際に下地の塗布されている領域(下地塗布領域WAr)の方が広いか否か(印刷を行った場合に白く下地が残ってしまう、つまり印刷からはみ出てしまう部分があるか否か)を評価する。
図5(a)に示す例であれば、ユーザは、下地残りがないと評価して、「OKボタン」を操作する。これにより、評価受付手段としての制御部31において、下地残りがないとの評価が受け付けられる(ステップS5;NO)。
【0057】
また、
図5(b)に示す例では、下地の塗り方にむらがあり、爪Tの左側端部に本来の下地ほど白くないために爪情報検出部313において下地検出領域PArと認識されなかった失敗領域NWAr1が存在する。印刷領域Eは下地検出領域PArに基づいて設定されるため、下地塗布領域WArのうち、失敗領域NWAr1を除く領域が印刷領域Eとなる。このため、印刷領域Eの印刷されるデザインの画像も失敗領域NWAr1の部分だけ欠けてしまう。
しかし、
図5(b)に示す例では、失敗領域NWAr1は周囲の下地検出領域PArと比較して多少下地剤の塗り方が薄く、若干肌の色が透けているが、パラメータを調整すれば下地検出領域PArと認識させることが可能と評価することができる。
このため、
図5(b)に示す場合には、ユーザは、下地残りはあるが塗り直すほどではないと評価して、「NGボタン」のみを操作し、「塗り直しボタン」は操作しない。これにより、評価受付手段としての制御部31において、下地残りはあるが塗り直さないとの評価が受け付けられる(ステップS5;YES、ステップS6;NO)。
【0058】
他方、
図5(c)に示す例では、下地の塗り方にむらがあり、爪Tの右側端部に肌色とほぼ同じ色であるために爪情報検出部313において下地検出領域PArと認識されなかった失敗領域NWAr2が存在する。印刷領域Eは下地検出領域PArに基づいて設定されるため、下地塗布領域WArのうち、失敗領域NWAr2を除く領域が印刷領域Eとなる。
また、爪Tの領域外に、下地がはみ出して塗られている失敗領域NWAr3が存在する。そしてこの部分は、爪情報検出部313において下地検出領域PArと認識されてしまう。このため、
図5(c)に示すように、このまま印刷を行うと、下地検出領域PArに基づいて設定される印刷領域Eにも失敗領域NWAr3が含まれてしまい、この部分にまでデザインの画像が印刷されてしまう。
【0059】
このような場合には、多少パラメータを調整しても下地塗布領域WArを正しく下地検出領域PArと認識させることは困難と思われる。
このため、
図5(c)に示す例では、ユーザは、下地残りがあり、下地を塗り直す必要があると評価して、「NGボタン」及び「塗り直しボタン」を操作する。これにより、評価受付手段としての制御部31において、下地残りがあり、塗り直しが必要との評価が受け付けられる(ステップS5;YES、ステップS6;YES)。
なお、
図5(c)では、失敗領域NWAr2及び失敗領域NWAr3がある場合を図示しているが、失敗領域NWAr2、失敗領域NWAr3のうち、いずれか一方のみがある場合でも高品位な印刷を実現することは難しいと考えられるため、同様の評価が想定される。
【0060】
下地残りがあり、塗り直しが必要との評価が受け付けられた場合(ステップS5;YES、ステップS6;YES、
図5(c)参照)には、「指Uを指保持部6から抜いて下地を塗り直してください。」等、ユーザに塗り直しを促すメッセージ画面を表示部72に表示させ(ステップS7)、印刷処理を終了する。
【0061】
一方、下地残りがない場合(ステップS5;NO、
図5(a)参照)には、撮影部50が指保持部6に保持された指Uの爪Tを撮影し、撮影制御部312が爪画像を取得する(ステップS8)。
そして、爪情報検出部313が、既定のパラメータ(第1のパラメータ)を適用して、爪画像から下地が塗布された下地検出領域PAr(検出領域A)を爪Tの領域として爪画像から検出する(ステップS9)。
さらに、印刷データ生成部314は、下地検出領域PAr(検出領域A)とユーザによって選択されたデザインデータとに基づいて印刷領域Eを設定(ステップS10)する。
なお、印刷データ生成部314による印刷領域Eの設定処理は、ステップS3において説明した、
図4において示す処理と同様であることからその説明を省略する。
【0062】
印刷データ生成部314が印刷領域Eを設定すると、設定された印刷領域Eに、印刷データにしたがって印刷が行われる(ステップS11)。
なお、下地残りがないと評価された場合(ステップS5;NO、
図5(a)参照)であって、ステップS3において印刷領域Eを設定した時点から間がなく、指保持部6に保持させた指Uの爪Tの位置に変化がないような場合には、下地残りがないと評価された後のステップS8~ステップS10を省略してもよい。この場合には、ステップS3において設定された印刷領域Eに、印刷データにしたがった印刷を行うことで、処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【0063】
他方、下地残りがあるが塗り直しの必要はないとの評価が受け付けられた場合(ステップS5;YES、ステップS6;NO、
図5(b)参照)には、撮影部50が指保持部6に保持された指Uの爪Tを撮影し、撮影制御部312が爪画像を取得する(ステップS12)。
そして、下地検出領域PArを広めに検出するパラメータ、すなわち、既定のパラメータ(第1のパラメータ)よりも下地検出領域PArと判断する基準の低い(緩い)第2のパラメータを適用して下地検出領域PArの再検出を行う(ステップS13)。
【0064】
これにより、本来の下地の色(例えば白色)よりは若干肌色に近い色に塗られている部分(下地剤の塗り方が薄く、爪や肌の色が多少透けているような部分)等、既定のパラメータ(第1のパラメータ)を用いた検出では下地検出領域PArとして検出されなかった部分(例えば、
図5(b)に示す「失敗領域NWAr1」参照)まで下地検出領域PArに含まれるとの検出結果を得られるようになる。
下地検出領域PArの再検出を行ったあとは、ステップS3に戻って処理を繰り返し、下地残りが解消されたか否かについてユーザの評価を求め、評価結果に応じてさらに処理を進める。
このように、下地残りの有無等についてユーザの評価を求めることによって、ユーザの意図した通りの高品位なネイルプリントを行うことができる。
【0065】
以上のように、本実施形態の印刷装置1では、下地を塗布した状態の爪Tの爪画像を取得してこの爪画像から、爪情報検出部313が、既定の第1のパラメータを適用して下地検出領域PArを検出する。
そして、爪情報検出部313によって検出された下地検出領域PArが、下地を塗布した状態の爪の実際に前記下地が塗布されている領域との一致度合いに関するユーザによる評価を受け付けて、下地検出領域PArに対して実際に下地が塗布されている下地塗布領域WArがはみ出てしまうとの評価が受け付けられたときは、爪情報検出部313が、第1のパラメータよりも下地検出領域PArと判断する基準の低い第2のパラメータを適用して下地検出領域PArの再検出を行う。
印刷領域Eは下地検出領域PArに基づいて設定されるため、下地検出領域PArが正しく認識されていない場合には印刷領域Eも適切な範囲に設定されない。この点、本実施形態では、ユーザが下地を塗ったと思う部分が爪情報検出部313に正しく認識されない場合でも、ユーザの認識と一致する範囲に印刷領域Eが設定されるように調整することができる。このため、下地の塗り方にむらがある場合でも下地残りのある印刷が行われるのを防止することができ、高品位な印刷を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態では、爪情報検出部313によって検出された下地検出領域PArより実際に下地が塗布されている下地塗布領域WArの方が広い場合であって、かつそれが塗り直し不要であるとのユーザの評価が受け付けられたときに、爪情報検出部313が第2のパラメータを適用した下地検出領域PArの再検出を行う。
パラメータを変更することで下地検出領域PArに含めることができるようになる塗りむらの範囲(むらのレベル)はそれほど広くないことから、あまりにも下地の色が薄くほとんど肌と区別がつかないような場合等には、再検出を行っても良好な結果を得られる見込みが低い。
このため、塗り直しを選択することができるようにすることで、無駄に処理が繰り返されるのを防ぐことができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、爪情報検出部313による下地検出領域PArの再検出が行われたときは、第2のパラメータを第1のパラメータとするように、第1のパラメータを更新する。
このように構成することで、例えば、ユーザに下地剤を薄く塗る傾向がある場合でも、使用を繰り返すうちに、ユーザの傾向にあった塗り方の下地を正しく認識・検出することができるようになり、ユーザの傾向に合うようにカスタマイズすることが可能となる。このため、何度もエラーが出てしまうようなストレスを軽減して、使い勝手の良い印刷装置1を実現することができる。
【0068】
さらに、本実施形態では、爪画像に、爪情報検出部313によって検出された下地検出領域PArを重畳表示させた画像を表示部72に表示させることによって、ユーザに提示する。
このため、設定された印刷領域に印刷が行われた場合に下地残りを生じるか、塗り直しが必要なレベルであるか等をユーザが容易に判断・評価することができる。
【0069】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0070】
例えば、本実施形態では、印刷領域Eを設定する場合に、付加領域Dを作成し、検出領域Aと付加領域Dとに基づいて印刷領域Eを生成する場合を例示したが、印刷領域Eは、白色等の下地が残らないように多少広めに設定されればよく、印刷領域Eを設定する手法は上記実施形態で示したものに限定されない。
【0071】
例えば、
図6に示すように、印刷濃度を変更することで印刷領域Eを広げてもよい。
この場合は、まず
図4で説明したものと同様に、爪情報検出部313によって検出された検出領域Aの周囲を数ピクセル広げた拡張領域Bを作成し(ステップS31)、当該拡張領域Bに所望のデザインをフィッティングする(ステップS32)。
そして、検出領域Aと拡張領域Bとの差分領域Cを作成する(ステップS33)。
さらに、差分領域Cの各画素について、下地の色と、フィッティングしたデザインの色との色距離d(色の差)を算出し(ステップS34)、各画素について色距離d(色の差)を印刷濃度に変換して、濃度マップMを作成する(ステップS35)。このとき、検出領域Aに相当する領域の濃度は100%とする。
そして検出領域Aと差分領域Cから印刷領域Eを設定し(ステップS36)、設定された印刷領域Eに、濃度マップMに基づいて印刷処理を行う(ステップS37)。
このような処理を行った場合には、付加領域Dを作成する場合と異なり、境界をぼかすことができる。このため、より見た目が滑らかな高品位な仕上がりを実現することができる。
【0072】
また、本実施形態では、印刷装置1の印刷ヘッド41として、インクジェット方式の印刷ヘッド41を備える構成としたが、印刷ヘッド41の構成はこれに限定されない。
シリンジ型のヘッドやペン型のヘッド等、インクジェット方式の印刷ヘッド41とは異なる構成のものを備えてもよい。
この場合には、ある程度粘度の高いインクや液剤を印刷することも可能となる。このため、例えば、白色インク等の下地用のインクを印刷装置1を用いて爪Tに印刷するように構成してもよい。
【0073】
また、本実施形態では、印刷装置1が端末装置7と連携して爪に印刷を行う場合を例示したが、印刷装置1はここに示すようなものに限定されず、単体で印刷動作が完結するように構成されたものであってもよい。
例えば、本実施形態では、印刷開始指示の入力やネイルデザイン(デザイン)の選択等を端末装置7側の操作部71から行う場合を例としたが、各種指示の入力等を印刷装置1側の操作部12において行う構成としてもよい。この場合、印刷装置1にタッチパネル式の操作部を備えてもよい。また、印刷装置1に表示部を備えてもよく、この場合には当該表示部にタッチパネルが一体的に設けられていてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、ネイルデザイン(デザイン)のデータを格納するネイルデザイン記憶領域822が端末装置7の記憶部82に設けられている場合を例示したが、ネイルデザインのデータは端末装置7の記憶部82に保存されている場合に限定されず、印刷装置1の記憶部32に保存されていてもよい。
また、ネットワーク回線等を介して接続可能なサーバ装置等にネイルデザインの画像データを記憶させておき、サーバ装置等にアクセスしてネイルデザインのデータを参照可能に構成してもよい。
このようにすることで、記憶部82等の容量を大きくしなくても、より多くのネイルデザインの中から印刷するデザインを選択することが可能となる。
【0075】
なお、本実施形態では、爪情報検出部313及び印刷データ生成部314が印刷装置1に設けられており、印刷装置1の制御装置30において、爪画像からの爪情報の検出や印刷データの生成を行う構成である場合を例示したが、印刷装置1の構成はこれに限定されない。
例えば、印刷装置1が印刷部40及び撮影部50のみを備え、爪情報の検出や印刷データの生成は、外部端末(例えばスマートフォン等である端末装置7)において行われる構成としてもよい。
この場合には、撮影部50の撮影装置51により爪Tが撮影され爪画像(指Uを含む爪Tの画像)が取得されると、撮影部50によって取得された爪画像は、通信部13を介して端末装置7の制御装置80に送られる。この場合、端末装置7の制御装置80が、画像取得手段となる。
そして、端末装置7側の制御装置80において、爪画像から下地塗布領域WAr等を検出し、下地塗布領域WArに基づいて印刷データを生成する。この場合には、端末装置7側の記憶部82等に対応するプログラムが組み込まれる。
端末装置7側で印刷データが生成されると、当該印刷データが印刷装置1側に送信され、印刷データにしたがった印刷が行われる。
【0076】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
下地を塗布した状態の爪の爪画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された前記爪画像から、第1のパラメータを適用して前記下地が塗布された下地検出領域を検出する下地検出手段と、
前記下地検出手段によって検出された前記下地検出領域と、前記下地を塗布した状態の爪の実際に前記下地が塗布されている下地塗布領域との一致度合いに関するユーザによる評価を受け付ける評価受付手段と、
前記下地検出手段によって検出された前記下地検出領域に印刷を施す印刷手段と、
を備え、
前記下地検出領域に対して前記下地塗布領域がはみ出ているとの評価が、前記評価受付手段において受け付けられたときは、前記下地検出手段は、前記第1のパラメータよりも下地が塗布された領域と判断する基準の低い第2のパラメータを適用して前記下地検出領域の検出を行うことを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記下地検出領域に対して前記下地塗布領域がはみ出ており、かつそれが塗り直し不要であるとの評価が、前記評価受付手段において受け付けられたときに、前記下地検出手段は、前記第2のパラメータを適用した前記下地検出領域の検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記下地検出手段による前記第2のパラメータを適用した前記下地検出領域の検出が行われたときは、前記第2のパラメータを第1のパラメータとするように、前記第1のパラメータを更新することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記画像取得手段によって取得された前記爪画像に、前記下地検出手段によって検出された前記下地検出領域を重畳表示させて、ユーザに提示する表示手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記下地検出手段によって検出された前記下地検出領域に基づいて、前記下地検出領域の周囲を広げた拡張領域を印刷領域として設定する印刷領域設定手段を備え、
前記印刷手段は、前記印刷領域設定手段によって設定された前記印刷領域に印刷を施すことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項6>
下地を塗布した状態の爪の爪画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程において取得された前記爪画像から、第1のパラメータを適用して前記下地が塗布された下地検出領域を検出する下地検出工程と、
前記下地検出工程において検出された前記下地検出領域と、前記下地を塗布した状態の爪の実際に前記下地が塗布されている下地塗布領域との一致度合いに関するユーザによる評価を受け付ける評価受付工程と、
前記下地検出工程において検出された前記下地検出領域に印刷を施す印刷工程と、
を実現させ、
前記下地検出工程において検出された前記下地検出領域に対して実際に前記下地の塗布されている前記下地塗布領域がはみ出ているとの評価が、前記評価受付工程において受け付けられたときは、第2の下地検出工程として、前記第1のパラメータよりも下地が塗布された領域と判断する基準の低い第2のパラメータを適用して前記下地検出領域の検出を行うことを特徴とする印刷制御方法。
<請求項7>
コンピュータに、
下地を塗布した状態の爪の爪画像を取得する画像取得機能と、
前記画像取得機能によって取得された前記爪画像から、第1のパラメータを適用して前記下地が塗布された下地検出領域を検出する下地検出機能と、
前記下地検出機能によって検出された前記下地検出領域と、前記下地を塗布した状態の爪の実際に前記下地が塗布されている下地塗布領域との一致度合いに関するユーザによる評価を受け付ける評価受付機能と、
前記下地検出機能によって検出された前記下地検出領域に印刷を施す印刷機能と、
を実現させ、
前記下地検出機能によって検出された前記下地検出領域に対して実際に前記下地の塗布されている前記下地塗布領域がはみ出ているとの評価が、前記評価受付機能において受け付けられたときは、前記下地検出機能は、前記第1のパラメータよりも下地が塗布された領域と判断する基準の低い第2のパラメータを適用して前記下地検出領域の検出を行うことを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0077】
1 印刷装置
6 指保持部
7 端末装置
31 制御部
32 記憶部
40 印刷部
41 印刷ヘッド
313 爪情報検出部
314 印刷データ生成部
315 印刷制御部
322 爪情報記憶領域
T 爪
U 指