IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横河電機株式会社の特許一覧

特許7524569アラーム発生システム及びアラーム発生方法
<>
  • 特許-アラーム発生システム及びアラーム発生方法 図1
  • 特許-アラーム発生システム及びアラーム発生方法 図2
  • 特許-アラーム発生システム及びアラーム発生方法 図3
  • 特許-アラーム発生システム及びアラーム発生方法 図4
  • 特許-アラーム発生システム及びアラーム発生方法 図5
  • 特許-アラーム発生システム及びアラーム発生方法 図6
  • 特許-アラーム発生システム及びアラーム発生方法 図7
  • 特許-アラーム発生システム及びアラーム発生方法 図8
  • 特許-アラーム発生システム及びアラーム発生方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】アラーム発生システム及びアラーム発生方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 31/00 20060101AFI20240723BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240723BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20240723BHJP
   G01D 21/00 20060101ALI20240723BHJP
   G08B 21/18 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G08B31/00 B
G05B23/02 R
H04Q9/00 311J
G01D21/00 Q
G08B21/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020051748
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021149862
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】都筑 純
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/234913(WO,A1)
【文献】特開2007-044715(JP,A)
【文献】特開2019-101683(JP,A)
【文献】特開2019-087101(JP,A)
【文献】特開2010-113725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 31/00
G05B 23/02
H04Q 9/00
G01D 21/00
G08B 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサから出力される測定値を取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記測定値を学習することによって複数のパラメータを有する学習モデルを生成する学習部と、
前記学習部で生成された前記学習モデルを用いて、現時点よりも未来で得られるであろう測定値である予測測定値を求める予測部と、
前記予測部で求められた前記予測測定値がアラーム発生条件を満たす場合に、アラームを発生するアラーム発生部と、
前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値を用い、前記学習モデルが有する前記パラメータのうちの値が固定である少なくとも1つの固定パラメータの値を最適化する最適化部と、
を備え、
前記最適化部は、前記取得部、前記学習部、前記予測部、及び前記アラーム発生部が動作する第1周期よりも長い第2周期で動作し、
前記固定パラメータは、前記第2周期内において値が固定なパラメータであり、
前記最適化部は、前記固定パラメータの値を変えながら、前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値を前記学習部に学習させて前記学習モデルと同じパラメータを有する補助学習モデルを作成させるとともに、前記補助学習モデルを用いて前記予測測定値に相当する補助予測測定値を前記予測部に求めさせ、前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値と、前記予測部で求められた前記補助予測測定値との誤差が最も小さくなる前記固定パラメータの値を、前記学習モデルの前記固定パラメータの値に設定する、
ラーム発生システム。
【請求項2】
センサから出力される測定値を取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記測定値を学習することによって複数のパラメータを有する学習モデルを生成する学習部と、
前記学習部で生成された前記学習モデルを用いて、現時点よりも未来で得られるであろう測定値である予測測定値を求める予測部と、
前記予測部で求められた前記予測測定値がアラーム発生条件を満たす場合に、アラームを発生するアラーム発生部と、
前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値を用い、前記学習モデルが有する前記パラメータのうちの値が固定である少なくとも1つの固定パラメータの値を最適化する最適化部と、
を備え、
前記最適化部は、前記取得部、前記学習部、前記予測部、及び前記アラーム発生部が動作する第1周期よりも長い第2周期で動作し、
前記固定パラメータは、前記第2周期内において値が固定なパラメータであり、
前記最適化部は、
前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値を学習することによって前記学習モデルと同じパラメータを有する補助学習モデルを作成する補助学習部と、
前記補助学習部で作成される前記補助学習モデルを用いて前記予測測定値に相当する補助予測測定値を求める補助予測部と、
を備え、
前記固定パラメータの値を変えながら、前記補助学習部に前記補助学習モデルを作成させるとともに、前記補助学習モデルを用いて前記補助予測測定値を前記予測部に求めさせ、前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値と、前記補助予測部で求められた前記補助予測測定値との誤差が最も小さくなる前記固定パラメータの値を、前記学習モデルの前記固定パラメータの値に設定する、
ラーム発生システム。
【請求項3】
前記最適化部は、前記誤差として、前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値と、前記補助予測測定値との二乗平均平方根誤差を求める、請求項1又は請求項2記載のアラーム発生システム。
【請求項4】
センサから出力される測定値を取得する第1ステップと、
取得された前記測定値を学習することによって複数のパラメータを有する学習モデルを生成する第2ステップと、
生成された前記学習モデルを用いて、現時点よりも未来で得られるであろう測定値である予測測定値を求める第3ステップと、
求められた前記予測測定値がアラーム発生条件を満たす場合に、アラームを発生する第4ステップと、
過去に取得された複数の前記測定値を用い、前記学習モデルが有する前記パラメータのうちの値が固定である少なくとも1つの固定パラメータの値を最適化する第5ステップと、
を有し、
前記第5ステップは、前記第1ステップ、前記第2ステップ、前記第3ステップ、及び前記第4ステップが実行される第1周期よりも長い第2周期で実行され、
前記固定パラメータは、前記第2周期内において値が固定なパラメータであり、
前記第5ステップは、前記固定パラメータの値を変えながら、過去に取得された複数の前記測定値を学習させて前記学習モデルと同じパラメータを有する補助学習モデルを作成させるとともに、前記補助学習モデルを用いて前記予測測定値に相当する補助予測測定値を求めさせ、過去に取得された複数の前記測定値と、求められた前記補助予測測定値との誤差が最も小さくなる前記固定パラメータの値を、前記学習モデルの前記固定パラメータの値に設定する、
ラーム発生方法。
【請求項5】
センサから出力される測定値を取得する第1ステップと、
取得された前記測定値を学習することによって複数のパラメータを有する学習モデルを生成する第2ステップと、
生成された前記学習モデルを用いて、現時点よりも未来で得られるであろう測定値である予測測定値を求める第3ステップと、
求められた前記予測測定値がアラーム発生条件を満たす場合に、アラームを発生する第4ステップと、
過去に取得された複数の前記測定値を用い、前記学習モデルが有する前記パラメータのうちの値が固定である少なくとも1つの固定パラメータの値を最適化する第5ステップと、
を有し、
前記第5ステップは、前記第1ステップ、前記第2ステップ、前記第3ステップ、及び前記第4ステップが実行される第1周期よりも長い第2周期で実行され、
前記固定パラメータは、前記第2周期内において値が固定なパラメータであり、
前記第5ステップは、
過去に取得された複数の前記測定値を学習することによって前記学習モデルと同じパラメータを有する補助学習モデルを作成するステップと、
作成される前記補助学習モデルを用いて前記予測測定値に相当する補助予測測定値を求めるステップと、
を有し、
前記固定パラメータの値を変えながら、前記補助学習モデルを作成させるとともに、前記補助学習モデルを用いて前記補助予測測定値を求めさせ、過去に取得された複数の前記測定値と、求められた前記補助予測測定値との誤差が最も小さくなる前記固定パラメータの値を、前記学習モデルの前記固定パラメータの値に設定する、
アラーム発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラーム発生システム及びアラーム発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーパーレスレコーダは、一般的に、各種センサの測定値を測定データとして記録するとともに、記録した測定データを表示する装置である。このようなペーパーレスレコーダは、タッチパネル式の液晶表示装置を備えており、ユーザがタッチパネルに対して行った操作に応じて、液晶表示装置に表示される測定データの表示内容を変更可能に構成されているものが多い。
【0003】
また、近年のペーパーレスレコーダは、測定値が所定の条件に合致したとき(例えば、測定値が予め設定された閾値を超えたとき)に、アラームを通知するアラーム機能を備えるものもある。アラームは、例えば、液晶表示装置に表示されたり、電子メールによって送信されたりすることで通知される。以下の特許文献1には、複数のアラーム発生条件の中で最も重要度のレベルが高いアラーム発生条件に関する情報を表示するペーパーレスレコーダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-71837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ユーザが、ペーパーレスレコーダに表示された波形又はペーパーレスレコーダから通知されたアラームによって異常を判断したのでは遅い場合がある。例えば、製品の製造プロセスにおいて、オペレータがペーパーレスレコーダに表示された波形の異常又はアラームを発見してから異常に対処したのでは、製造プロセスが正常状態から逸脱してしまって不良品が製造される状況になる可能性が考えられる。
【0006】
このような状況になるのを防止するために、ペーパーレスレコーダがアラームを通知する条件を緩くすると、アラームの精度が悪くなる。例えば、製造プロセスに異常が発生していないにもかかわらず、アラームが通知されてしまう状況になると考えられる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、将来的に異常が発生する虞があることを高い精度で通知することができるアラーム発生システム及びアラーム発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様によるアラーム発生システム(20)は、センサ(11-1~11-n,12-1~12-k)から出力される測定値を取得する取得部(22a)と、前記取得部で取得された前記測定値を学習することによって複数のパラメータを有する学習モデル(23b)を生成する学習部(22b)と、前記学習部で生成された前記学習モデルを用いて、現時点よりも未来で得られるであろう測定値である予測測定値(23c)を求める予測部(22c)と、前記予測部で求められた前記予測測定値がアラーム発生条件を満たす場合に、アラームを発生するアラーム発生部(22d)と、前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値を用い、前記学習モデルが有する前記パラメータのうちの値が固定である少なくとも1つの固定パラメータの値を最適化する最適化部(22f)と、を備える。
【0009】
また、本発明の一態様によるアラーム発生システムは、前記最適化部が、前記取得部、前記学習部、前記予測部、及びアラーム発生部とは異なる周期で動作する。
【0010】
また、本発明の一態様によるアラーム発生システムは、前記最適化部が、前記固定パラメータの値を変えながら、前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値を前記学習部に学習させて前記学習モデルと同じパラメータを有する補助学習モデル(23e)を作成させるとともに、前記補助学習モデルを用いて前記予測測定値に相当する補助予測測定値(23f)を前記予測部に求めさせ、前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値と、前記予測部で求められた前記補助予測測定値との誤差が最も小さくなる前記固定パラメータの値を、前記学習モデルの前記固定パラメータの値に設定する。
【0011】
或いは、本発明の一態様によるアラーム発生システムは、前記最適化部が、前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値を学習することによって前記学習モデルと同じパラメータを有する補助学習モデル(23e)を作成する補助学習部(22f-1)と、前記補助学習部で作成される前記補助学習モデルを用いて前記予測測定値に相当する補助予測測定値(23f)を求める補助予測部(22f-2)と、を備え、前記固定パラメータの値を変えながら、前記補助学習部に前記補助学習モデルを作成させるとともに、前記補助学習モデルを用いて前記補助予測測定値を前記予測部に求めさせ、前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値と、前記補助予測部で求められた前記補助予測測定値との誤差が最も小さくなる前記固定パラメータの値を、前記学習モデルの前記固定パラメータの値に設定する。
【0012】
また、本発明の一態様によるアラーム発生システムは、前記最適化部が、前記誤差として、前記取得部で過去に取得された複数の前記測定値と、前記補助予測測定値との二乗平均平方根誤差を求める。
【0013】
本発明の一態様によるアラーム発生方法は、センサ(11-1~11-n,12-1~12-k)から出力される測定値を取得するステップ(S11)と、取得された前記測定値を学習することによって複数のパラメータを有する学習モデル(23b)を生成するステップ(S13)と、生成された前記学習モデルを用いて、現時点よりも未来で得られるであろう測定値である予測測定値(23c)を求めるステップ(S15)と、求められた前記予測測定値がアラーム発生条件を満たす場合に、アラームを発生するステップ(S17、S18)と、過去に取得された複数の前記測定値を用い、前記学習モデルが有する前記パラメータのうちの値が固定である少なくとも1つの固定パラメータの値を最適化するステップ(S21~S29)と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、将来的に異常が発生する虞があることを高い精度で通知することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る記録計システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態によるアラーム発生システムの要部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態におけるアラーム認識範囲を説明するための図である。
図4】本発明の実施形態に係る記録計システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態において最適化部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図6図5に示すフローチャートのステップS22~S26の処理の詳細を説明するための図である。
図7図5に示すフローチャートのステップS21~S28の処理が繰り返されることで生成されるテーブルの一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態によるアラーム発生システムの変形例を示すブロック図である。
図9】本発明の変形例に係る記録計システムの全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるアラーム発生システム及びアラーム発生方法について説明する。尚、以下で説明する実施形態は、アラーム発生システムを記録計システムに適用した例である。ここで、記録計システムとは、各種センサの測定値を測定データとして記録するとともに、記録した測定データを表示するシステムである。
【0017】
〔実施形態〕
〈記録計システム〉
図1は、本発明の実施形態に係る記録計システムの全体構成を示すブロック図である。図1に示す通り、記録計システム1は、ネットワークNWを介して通信可能に接続されたセンサ11-1~11-n(nは、n>0を満たす整数)、記録計R、及び端末装置30を備える。また、記録計システム1は、記録計Rに直接接続されたセンサ12-1~12-k(kは、k>0を満たす整数)を備える。ネットワークNWは、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、プロバイダ装置、無線基地局等を含む。
【0018】
センサ11-1~11-n及びセンサ12-1~12-kは、例えば、圧力センサ、pHセンサ、振動センサ、温度センサ、流量センサ、腐食センサ、歪センサ、ノイズセンサ、ガスセンサ、電圧センサ、電流センサ、レベルセンサ等である。センサ11-1~11-nは、測定対象の測定値を取得し、取得した測定値を識別情報(センサID)とともに測定情報として記録計Rに送信する。センサ12-1~12-kは、測定対象の測定値を取得し、取得した測定値を示す情報を記録計Rに出力する。
【0019】
記録計Rは、センサ11-1~11-nからネットワークNWを介して送信されてくる測定情報を記録するとともに、記録した測定情報を表示する。また、記録計Rの背面には、モジュール(電圧、電流、PID、パルス、デジタルIO、アナログIO…等)が接続できるようになっており、センサ12-1~12-kは、記録計Rの背面に直接配線される。記録計Rは、センサ12-1~12-kが出力した測定値を示す情報を記録するとともに、記録した情報を表示する。
【0020】
記録計Rは、アラーム発生システム20を備える。アラーム発生システム20は、現時点よりも未来で得られるであろう測定値である予測測定値を求め、求めた予測測定値がアラーム発生条件を満たす場合に、アラームが発生したことをユーザUに通知するための情報を作成する。また、アラーム発生システム20は、求めた予測測定値とアラームが発生すると予測される時刻との少なくとも一方を表示する。ここで、アラームが発生すると予測される時刻は、予測測定値に基づくものである。尚、アラーム発生システム20の詳細については後述する。
【0021】
端末装置30は、アラーム発生システム20から通知される情報(例えば、電子メールにて送信される、アラームが発生したことを通知するための情報)を受信して、ユーザUに知らせるための端末である。端末装置30は、例えば、携帯性を有するノート型又はタブレット型のコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、又はスマートフォン等である。尚、端末装置30は、据置型のものであっても良い。
【0022】
〈アラーム発生システム〉
図2は、本発明の実施形態によるアラーム発生システムの要部構成を示すブロック図である。図2に示す通り、アラーム発生システム20は、通信部21、処理部22、記憶部23、及び表示部24を備える。
【0023】
通信部21は、第1通信部21a及び第2通信部21bを備える。このような通信部21は、外部装置と通信を行う。
【0024】
第1通信部21aは、ネットワークNWに接続されたセンサ11-1~11-n等の外部装置と通信して、データの送受信を行う。第1通信部21aは、例えば、ネットワークNWと有線接続される。尚、第1通信部21aは、ネットワークNWと無線接続されても良い。第1通信部21aは、センサ11-1~11-nの各々が出力した測定情報を受信する。尚、測定情報には、センサ11-1~11-nの各々の識別情報(センサID)と測定値を示す情報とが含まれる。
【0025】
第2通信部21bは、ネットワークNWに接続された端末装置30等の外部装置と通信して、データの送受信を行う。具体的には、第2通信部21bは、WiFi(登録商標)、LTE(登録商標)等の無線通信技術で無線通信を行う無線デバイスによって構成される。尚、詳細は後述するが、第2通信部21bは、処理部22の作成部22eが出力した通知情報を取得し、取得した通知情報を端末装置30へ送信する。通知情報には、アラームが発生したことを通知するための情報が含まれる。ここで、アラームが発生したことを通知するため情報には、例えば、発生したチャネルの情報、アラームレベル、アラーム種類、発生時刻等が含まれる。
【0026】
処理部22は、取得部22a、学習部22b、予測部22c、アラーム発生部22d、作成部22e、及び最適化部22fを備える。このような処理部22は、アラームを発生させるための各種処理を行う。
【0027】
取得部22aは、第1通信部21aが受信した測定情報を取得する。取得部22aは、測定情報を取得した日時情報を、アラーム発生システム20が備える時計(図示省略)から取得する。取得部22aは、測定情報(センサIDと測定値を示す情報)と、取得した日時情報とを関連付けて、記憶部23の測定値情報23aに記憶させる。また、取得部22aは、センサ12-1~12-kが出力した測定値を示す情報を取得する。取得部22aは、測定値を示す情報を取得した日時情報を、アラーム発生システム20が備える時計(図示省略)から取得する。取得部22aは、測定値を示す情報と、その測定値を示す情報を出力したセンサのセンサIDと、取得した日時情報とを関連付けて、記憶部23の測定値情報23aに記憶させる。
【0028】
学習部22bは、記憶部23の測定値情報23aを用い、複数の測定値とその測定値が得られる日時情報との関係をセンサID毎に学習する。学習部22bは、新たな測定情報及び日時情報が測定値情報23aに記憶される度に、上記の関係をセンサID毎に学習するようにしてもよいし、1分、1時間、1日等の所定の周期で、上記の関係をセンサID毎に学習するようにしてもよい。学習部22bは、学習することによって得られた学習モデルを、センサIDに関連付けて、記憶部23の学習モデル23bに記憶させる。
【0029】
例えば、学習部22bは、AI(Artificial Intelligence)技術によって、複数の測定値とその測定値が得られる日時情報との関係をセンサID毎に学習する。ここで、AI技術の一例は、機械学習、強化学習である。学習部22bは、学習に使用するアルゴリズム、使用状況に基づいて、学習する周期を変化させてもよい。また、学習部22bは、複数の測定値とその測定値が得られる日時情報との関係に基づいて、カルマンフィルタ、ARIMAモデル等の時系列解析手法を使用してもよい。
【0030】
以下では、学習部22bが、カルマンフィルタを用いた機械学習を行うことによって学習モデルを作成する場合を例に挙げて説明する。ここで、カルマンフィルタを用いた機械学習を行うことによって作成される学習モデルは、「予測値」、「傾き」、「ノイズ」の3つのパラメータを有する。「予測値」及び「傾き」は、学習モデルが作成(更新)される度に値が変わる可変パラメータであるが、「ノイズ」は、値が固定である固定パラメータである。
【0031】
予測部22cは、学習モデル23bに記憶されている学習モデルを用いて、現時点よりも未来の時刻を示す時刻情報と、その時刻に得られるであろう測定値である予測測定値とを、センサID毎に予測する。例えば、予測部22cは、1点先の予測測定値、2点先の予測測定値といったような結果を取得する。1点目と2点目がどのぐらい時間的に離れているかは学習データに依存する。学習データの1点の間隔が1秒であれば予測値の1点の間隔も1秒になり、学習データの1点の間隔が1分であれば予測値の1点の間隔も1分になる。予測部22cは、予測測定値と時刻情報とを、センサIDに関連付けて、記憶部23の予測測定値情報23cに記憶させる。
【0032】
アラーム発生部22dは、記憶部23の予測測定値情報23cに記憶されているセンサID毎の予測測定値と時刻情報とに基づいて、予測測定値に、アラーム発生条件を満たすものがあるか否かを判定する。具体的に、アラーム発生部22dは、アラーム発生条件を満たすものがあるか否かを判定する時間範囲であるアラーム認識範囲においてアラーム発生条件を満たす予測測定値があるか否かを判定する。
【0033】
アラーム認識範囲として、任意の時間範囲を設定可能である。例えば、現時点を基準とした時間範囲を設定することも、未来のある時点を基準とした時間範囲を設定することも可能である。アラーム発生条件は、例えば、予測測定値が上限値を超えること、予測測定値が下限値未満となること、予測測定値の変化値が変化値上限値を超えること、予測測定値の変化値が変化値下限値未満となることの少なくとも一つである。
【0034】
図3は、本発明の実施形態におけるアラーム認識範囲を説明するための図である。図3において、実線は過去に得られた測定値(過去測定値)を示し、一点鎖線は現時点よりも未来で得られるであろう予測測定値を示す。図3に示す例では、アラーム認識範囲として、「現時点から30分間」と、「現時点から60分間」とが示されている。ここで、アラーム発生条件が、予測測定値が上限値を超えることが設定されているとする。
【0035】
図3に示す例において、アラーム認識範囲が「現時点から30分間」に設定されている場合には、その時間範囲にアラーム上限値を超える予測測定値がないため、アラーム発生部22dは、アラーム発生条件を満たすものはないと判定する。これに対し、アラーム認識範囲が「現時点から60分間」に設定されている場合には、その時間範囲にアラーム上限値を超える予測測定値があるため、アラーム発生部22dは、アラーム発生条件を満たすものがあると判定する。
【0036】
アラーム発生部22dは、記憶部23の予測測定値情報23cに記憶されているセンサID毎の予測測定値について、アラーム認識範囲においてアラーム発生条件を満たすものがあるか否かをそれぞれ判定する。アラーム発生部22dは、センサID毎の予測測定値のうち、アラーム認識範囲においてアラーム発生条件を満たすものが1つでもある場合にアラームを発生する。アラーム発生部22dは、予測測定値とアラームが発生すると予測される時刻とを表示するための情報であるアラーム表示情報を表示部24に出力する。
【0037】
また、アラーム発生部22dは、記憶部23のセンサ設置情報23dから、センサIDに関連付けて記憶されているセンサが設置されている位置を示すセンサ設置位置情報を取得する。ここで、センサ設定位置情報は、予めユーザによって設定される。センサ設置位置情報として、例えば、位置に該当する場所の名称を用いることができる。アラーム発生部22dは、現時点の時刻からアラームが発生すると予測される時刻までの時間を示す発生時間を求める。アラーム発生部22dは、アラームの詳細を表示するための情報であるアラーム詳細情報を表示部24に出力する。アラーム詳細情報には、センサ設置位置情報と、アラーム発生条件と、発生時間とが含まれる。
【0038】
作成部22eは、予測測定値がアラーム発生条件を満たすとアラーム発生部22dで判定された場合に、アラームが発生したことを通知するための通知情報を作成する。作成部22eは、作成した通知情報を、第2通信部21bへ出力する。例えば、作成部22eは、アラームが発生したことを通知するための情報を含む、予め設定される通知先(例えば、端末装置30)を宛先とする電子メールを作成する。作成部22eは、作成した電子メールを、第2通信部21bへ出力する。
【0039】
最適化部22fは、記憶部23の測定値情報23a(取得部22aで過去に取得された複数の測定値が含まれる情報)を用い、記憶部23の学習モデル23bに記憶されている学習モデルが有する固定パラメータの値を最適化する。最適化部22fがこのような最適化を行うのは、将来的に異常が発生する虞があることを高い精度で通知することができるようにするためである。この最適化部22fは、取得部22a、学習部22b、予測部22c、アラーム発生部22d、及び作成部22eとは異なる周期で動作する。例えば、取得部22a、学習部22b、予測部22c、アラーム発生部22d、及び作成部22eが数秒程度の周期で動作し、最適化部22fは、数分~数日程度の周期で動作する。
【0040】
最適化部22fは、記憶部23の測定値情報23aを用い、複数の測定値とその測定値が得られる日時情報との関係(センサID毎の関係)を学習部22bに学習させ、補助学習モデルを作成させる。ここで、補助学習モデルは、学習モデル23bに記憶されている学習モデルと同様に、2つの可変パラメータ(「予測値」及び「傾き」)と、1つの固定パラメータ(「ノイズ」)とを有するモデルである。最適化部22fは、固定パラメータの値を変えながら、上記の補助学習モデルを学習部22bに学習させる。最適化部22fは、学習部22bに学習させて得られる補助学習モデルをセンサIDに関連付けて、記憶部23の補助学習モデル23eに記憶させる。
【0041】
最適化部22fは、記憶部23の補助学習モデル23eに記憶された補助学習モデルを用いて、予測測定値に相当する補助予測測定値を予測部22cに求めさせる。補助学習モデルは、固定パラメータの値を変えながら得られるものであるため、最適化部22fは、補助学習モデルが得られる度に、得られた補助学習モデルを用いて補助予測測定値を予測部22cに求めさせる。最適化部22fは、補助予測測定値と時刻情報とを、センサIDに関連付けて、記憶部23の補助予測測定値情報23fに記憶させる。
【0042】
最適化部22fは、測定値情報23aに含まれる測定値と、補助予測測定値情報23fに含まれる補助予測測定値との誤差が最も小さくなる固定パラメータの値を、学習モデル23bに記憶された学習モデルの固定パラメータの値に設定する。最適化部22fは、上記の誤差として、例えば、測定値情報23aに含まれる測定値と補助予測測定値情報23fに含まれる補助予測測定値との二乗平均平方根誤差(RMSE:Root Mean Squared Error)、平均絶対誤差(MAE:Mean Absolute Error)、平均二乗誤差(MSE:Mean Square Error)等を求める。以下では、最適化部22fが、上記の誤差として、二乗平均平方根誤差(RMSE)を求める場合を例に挙げて説明する。尚、最適化部22fは、上記の最適化をセンサID毎に行う。
【0043】
記憶部23は、前述した測定値情報23a、学習モデル23b、予測測定値情報23c、センサ設置情報23d、補助学習モデル23e、及び補助予測測定値情報23fを記憶する。尚、測定値情報23a、学習モデル23b、予測測定値情報23c、センサ設置情報23d、補助学習モデル23e、及び補助予測測定値情報23fは、クラウド上やPC上に記憶されていてもよい。記憶部23は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等により実現される。
【0044】
表示部24は、例えば、タッチパネルが設けられた液晶表示装置を備えており、記憶部23の測定値情報23aから測定値と日時情報とを取得し、取得した測定値と日時情報との関係を表したトレンドチャートを表示する。また、表示部24は、測定値と日時情報との関係に加え、記憶部23の予測測定値情報23cから予測測定値と時刻情報とを取得し、取得した予測測定値と時刻情報との関係を表したトレンドチャートを表示する。
【0045】
また、表示部24は、アラーム発生部22dが出力した予測測定値とアラームが発生すると予測される時刻とを表示するための情報であるアラーム表示情報を取得し、取得したアラーム表示情報に基づいて、予測測定値とアラームが発生すると予測される時刻とのいずれか一方又は両方を表示する。ここでは、表示部24が、予測測定値とアラームが発生すると予測される時刻との両方を表示する場合について説明する。また、表示部24は、アラームの詳細を表示する。
【0046】
上述した処理部22の取得部22a、学習部22b、予測部22c、アラーム発生部22d、作成部22e、及び最適化部22fは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサが記憶部23に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0047】
〈記録計システムの動作〉
図4は、本発明の実施形態に係る記録計システムの動作の一例を示すフローチャートである。尚、以下では、主に、記録計システム1に設けられたアラーム発生システム20の動作について説明する。図4に示すフローチャートは、一定の時間間隔(例えば、数秒程度)で繰り返し行われる。
【0048】
(ステップS11)
アラーム発生システム20において、第1通信部21aは、センサ11-1~11-nが送信した測定情報(センサIDと測定値とが含まれる情報)を受信する。取得部22aは、第1通信部21aが受信した測定情報を取得する。また、取得部22aは、センサ12-1~12-kが出力した測定値を示す情報を取得する。
【0049】
(ステップS12)
アラーム発生システム20において、取得部22aは、測定情報を取得した日時情報を、アラーム発生システム20が備える時計から取得する。取得部22aは、測定情報(センサIDと測定値とが含まれる情報)と、取得した日時情報とを関連付けて、記憶部23の測定値情報23aに記憶させる。取得部22aは、測定値を示す情報を取得した日時情報を、アラーム発生システム20が備える時計から取得する。取得部22aは、測定値を示す情報と、その測定値を示す情報を出力したセンサのセンサIDと、取得した日時情報とを関連付けて、記憶部23の測定値情報23aに記憶させる。
【0050】
(ステップS13)
アラーム発生システム20において、学習部22bは、記憶部23の測定値情報23aを用い、複数の測定値とその測定値が得られる日時情報との関係をセンサID毎に学習する。
(ステップS14)
アラーム発生システム20において、学習部22bは、学習することによって得られた学習モデルを、センサIDに関連付けて、記憶部23の学習モデル23bに記憶させる。尚、学習モデル23bに記憶される学習モデルは、2つの可変パラメータ(「予測値」及び「傾き」)と、1つの固定パラメータ(「ノイズ」)とを有するモデルである。
【0051】
(ステップS15)
アラーム発生システム20において、予測部22cは、学習モデル23bに記憶されている学習モデルを用いて、予測測定値と時刻情報とを、センサID毎に算出する。
(ステップS16)
アラーム発生システム20において、予測部22cは、予測測定値と時刻情報とを、センサIDに関連付けて、記憶部23の予測測定値情報23cに記憶させる。
【0052】
(ステップS17)
アラーム発生システム20において、アラーム発生部22dは、記憶部23の予測測定値情報23cに記憶されているセンサID毎の予測測定値と時刻情報とに基づいて、予測測定値に、アラーム発生条件を満たすものがあるか否かを判定する。予測測定値に、アラーム発生条件を満たすものが無い場合(ステップS17の判定結果が「NO」の場合)には図4に示す一連の処理が終了する。
【0053】
(ステップS18)
アラーム発生システム20において、アラーム発生部22dは、予測測定値に、アラーム発生条件を満たすものがある場合(ステップS17の判定結果が「YES」の場合)に、アラームを発生する。
(ステップS19)
アラーム発生システム20において、作成部22eは、通知情報を作成する。そして、作成部22eは、作成した通知情報を、第2通信部21bへ出力する。第2通信部21bは、作成部22eが出力した通知情報を取得し、取得した通知情報を端末装置30へ送信する。
【0054】
端末装置30は、アラーム発生システム20が送信した通知情報を受信する。そして、端末装置30は、受信した通知情報を取得し、取得した通知情報に含まれるアラームが発生したことを通知するための情報を表示する。
【0055】
〈最適化部で行われる処理〉
図5は、本発明の実施形態において最適化部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、図4に示すフローチャートとは別に、一定の時間間隔(例えば、数分~数日程度)で繰り返し行われる。
【0056】
(ステップS21)
アラーム発生システム20において、最適化部22fは、補助学習モデルで用いる固定パラメータの値(初期値)を設定する。ここで設定する値は任意の値で良い。例えば、補助学習モデルで用いる固定パラメータの値を「0」~「20」の範囲で変化させる場合には、値「0」を設定する。
【0057】
(ステップS22)
アラーム発生システム20において、最適化部22fは、記憶部23の測定値情報23aを用い、過去に得られた複数の測定値とその測定値が得られる日時情報との関係(センサID毎の関係)を学習部22bに学習させる。例えば、最適化部22fは、記憶部23の測定値情報23aから、過去に得られた500点の測定値を読み出し、読み出した500点の測定値を用いて上記の関係を学習させる。
【0058】
(ステップS23)
アラーム発生システム20において、最適化部22fは、学習部22bに学習させることによって得られた補助学習モデルを、センサIDに関連付けて、記憶部23の補助学習モデル23eに記憶させる。尚、補助学習モデル23eに記憶される補助学習モデルは、2つの可変パラメータ(「予測値」及び「傾き」)と、1つの固定パラメータ(「ノイズ」)とを有するモデルである。
【0059】
(ステップS24)
アラーム発生システム20において、最適化部22fは、補助学習モデル23eに記憶されている補助学習モデルを用いて、センサID毎の補助予測測定値と時刻情報とを、予測部22cに求めさせる。
(ステップS25)
アラーム発生システム20において、最適化部22fは、補助予測測定値と時刻情報とを、センサIDに関連付けて、記憶部23の補助予測測定値情報23fに記憶させる。
【0060】
(ステップS26)
アラーム発生システム20において、最適化部22fは、測定値情報23aから読み出した測定値と補助予測測定値情報23fに含まれる補助予測測定値との二乗平均平方根誤差(RMSE)をセンサID毎に求める。尚、最適化部22fは、求めた二乗平均平方根誤差(RMSE)を記憶部23に記憶させる。
【0061】
図6は、図5に示すフローチャートのステップS22~S26の処理の詳細を説明するための図である。図6において、実線は過去に得られた測定値(過去測定値)を示し、点線は補助予測測定値を示す。まず、最適化部22fは、図6(a)に示す通り、記憶部23の測定値情報23aから読み出した500点の測定値のうち、最も古い30点(第1点目~第30点目)の測定値を学習部22bに逐次学習させて補助学習モデルを逐次作成(更新)させる。尚、補助学習データで用いられる固定パラメータの値は、ステップS21で既に設定されている。
【0062】
次に、最適化部22fは、図6(b)に示す通り、第31点目の測定値を学習部22bに学習させて補助学習モデルを更新させ、更新された補助学習モデルを用いて第91点目の補助予測測定値を予測部22cに求めさせる。続いて、最適化部22fは、第32点目の測定値を学習部22bに学習させて補助学習モデルを更新させ、更新された補助学習モデルを用いて第92点目の補助予測測定値を予測部22cに求めさせる。このように、最適化部22fは、第(30+i)点目(iは、1≦i≦60を満たす整数)の測定値を学習部22bに学習させて補助学習モデルを更新させ、更新された補助学習モデルを用いて第(90+i)点目の補助予測測定値を予測部22cに求めさせる処理を順次行わせる。
【0063】
次いで、最適化部22fは、図6(c)に示す通り、第91点目の測定値を学習部22bに学習させて補助学習モデルを更新させ、更新された補助学習モデルを用いて第151点目の補助予測測定値を予測部22cに求めさせる。続いて、最適化部22fは、第92点目の測定値を学習部22bに学習させて補助学習モデルを更新させ、更新された補助学習モデルを用いて第152点目の補助予測測定値を予測部22cに求めさせる。このように、最適化部22fは、第(90+i)点目の測定値を学習部22bに学習させて補助学習モデルを更新させ、更新された補助学習モデルを用いて第(150+i)点目の補助予測測定値を予測部22cに求めさせる処理を順次行わせる。最適化部22fは、以下同様の処理を行って、図6(d)~図6(i)に示す通り、学習部22bの学習に用いられる測定値よりも60点先の補助予測測定値を予測部22cに順次求めさせる。
【0064】
最適化部22fは、第500点目の補助予測測定値が求められると、例えば、測定値情報23aから読み出した第90点目~第500点目の測定値と、予測部22cで求められた第90点目~第500点目の補助予測測定値との二乗平均平方根誤差(RMSE)をセンサID毎に求める。尚、最適化部22fは、求めた二乗平均平方根誤差(RMSE)を記憶部23に記憶させる。
【0065】
(ステップS27)
アラーム発生システム20において、最適化部22fは、補助学習モデルで用いる固定パラメータの変更が終了したか否かを判断する。例えば、補助学習モデルで用いる固定パラメータの値を、「0」~「20」の範囲で順次「1」ずつ変更させる場合には、固定パラメータの値が「20」になったか否かを判断する。
【0066】
(ステップS28)
アラーム発生システム20において、最適化部22fは、補助学習モデルで用いる固定パラメータの変更が終了していない場合(ステップS27の判断結果が「NO」の場合)には、補助学習モデルで用いる固定パラメータの値を変更する。例えば、補助学習モデルで用いる固定パラメータの値を、「0」~「20」の範囲で順次「1」ずつ変更させる場合において、固定パラメータの現在の値が「0」であるときには、値「1」を設定する。尚、最適化部22fは、補助学習モデルで用いる固定パラメータの値を変更した後は、ステップS22の処理を再び行う。
【0067】
(ステップS29)
アラーム発生システム20において、最適化部22fは、補助学習モデルで用いる固定パラメータの変更が終了した場合(ステップS27の判断結果が「YES」の場合)には、記憶部23に記憶された二乗平均平方根誤差(RMSE)が最小となる固定パラメータをセンサID毎に求める。そして、最適化部22fは、求めた固定パラメータを、学習モデル23bに記憶された学習モデルに設定する処理を、センサID毎に行う。
【0068】
図7は、図5に示すフローチャートのステップS21~S28の処理が繰り返されることで生成されるテーブルの一例を示す図である。図7に示すテーブルは、ステップS21で設定された(ステップS28で変更された)固定パラメータの値と、RMSEとが対応づけられたものである。図7に示す例では、RMSEの最小値は、「4.0」である。このため、最適化部22fは、RMSEの最小値「4.0」に対応づけられた値「1.0」を、学習モデル23bに記憶された学習モデルに設定する処理を行う。
【0069】
以上の通り、本実施形態では、アラーム発生システム20が、センサ11-1~11-n,12-1~12-kから出力される測定値を取得し、取得した測定値を学習することによって複数のパラメータを有する学習モデルを生成し、生成した学習モデルを用いて、現時点よりも未来で得られるであろう測定値である予測測定値を求め、求めた予測測定値がアラーム発生条件を満たす場合に、アラームを発生するようにしている。また、アラーム発生システム20が、過去に取得された複数の測定値を用い、学習モデルが有するパラメータのうちの値が固定である少なくとも1つの固定パラメータ(「ノイズ」)の値を最適化するようにしている。これにより、将来的に異常が発生する虞があることを高い精度で通知することができる。
【0070】
〈アラーム発生システムの変形例〉
図8は、本発明の実施形態によるアラーム発生システムの変形例を示すブロック図である。尚、図8においては、図2に示したブロックと同様のブロックについては同一の符号を付してある。図8に示すアラーム発生システム20が、図2に示すアラーム発生システム20と異なる点は、最適化部22fが補助学習部22f-1と補助予測部22f-2とを備える点である。
【0071】
図2に示すアラーム発生システム20の最適化部22fは、補助学習モデルを学習部22bに学習させるとともに、補助予測測定値を予測部22cに求めさせるものであった。これに対し、本変形例に係るアラーム発生システム20の最適化部22fは、補助学習モデルを補助学習部22f-1に学習させるとともに、補助予測測定値を補助予測部22f-2に求めさせるものである。
【0072】
補助学習部22f-1は、学習部22bと同様のものであり、記憶部23の測定値情報23aを用い、複数の測定値とその測定値が得られる日時情報との関係をセンサID毎に学習する。補助学習部22f-1は、上記の関係を学習することによって、学習モデルと同じパラメータを有する補助学習モデルを作成する。尚、補助学習モデルは、学習モデルと同様に、2つの可変パラメータ(「予測値」及び「傾き」)と、1つの固定パラメータ(「ノイズ」)とを有する。補助学習部22f-1は、学習することによって得られた補助学習モデルを、センサIDに関連付けて、記憶部23の補助学習モデル23eに記憶させる。
【0073】
補助予測部22f-2は、予測部22cと同様のものであり、補助学習部22f-1で作成される補助学習モデル23eを用いて、時刻情報とその時刻に得られるであろう測定値である補助予測測定値とを、センサID毎に予測する。補助予測部22f-2は、補助予測測定値と時刻情報とを、センサIDに関連付けて、記憶部23の補助予測測定値情報23fに記憶させる。
【0074】
本変形例において、最適化部22fは、補助学習モデルが有する固定パラメータの値を変えながら、上記の補助学習モデルを補助学習部22f-1に学習させる。最適化部22fは、補助学習部22f-1に学習させて得られる補助学習モデルをセンサIDに関連付けて、記憶部23の補助学習モデル23eに記憶させる。
【0075】
また、本変形例において、最適化部22fは、記憶部23の補助学習モデル23eに記憶された補助学習モデルを用いて、予測測定値に相当する補助予測測定値を補助予測部22f-2に求めさせる。補助学習モデルは、固定パラメータの値を変えながら得られるものであるため、最適化部22fは、補助学習モデルが得られる度に、得られた補助学習モデルを用いて補助予測測定値を補助予測部22f-2に求めさせる。最適化部22fは、補助予測測定値と時刻情報とを、センサIDに関連付けて、記憶部23の補助予測測定値情報23fに記憶させる。
【0076】
本変形例に係るアラーム発生システム20では、最適化部22fが、学習部22bに代えて補助学習部22f-1に補助学習モデルを学習させるようにしている。また、最適化部22fが、予測部22cに代えて補助予測部22f-2に補助予測測定値を求めさせるようにしている。これにより、学習部22b及び予測部22cの処理負荷を軽減させることができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、前述した実施形態では、アラーム発生システム20が、一台の端末装置30へ通知情報を送信する場合について説明したが、この例に限られない。例えば、アラーム発生システム20は、複数の端末装置30へ通知情報を送信してもよい。
【0078】
また、前述した実施形態では、アラーム発生システム20が、センサ11-1~11-n及びセンサ12-1~12-kの各々が送信した測定情報を取得した日時情報を取得する場合について説明したが、この例に限られない。例えば、センサ11-1~11-n及びセンサ12-1~12-kの各々が、検出対象を測定した日時情報を取得し、取得した日時情報を含む測定情報を、アラーム発生システム20へ送信してもよい。
【0079】
また、前述した実施形態では、記録計システム1は、センサ11-1~11-n及びセンサ12-1~12-k、アラーム発生システム20、及び端末装置30を備える例について説明したが、この例に限られない。例えば、アラーム発生システム20に含まれる表示部24を、アラーム発生システム20とは別の装置として構成してもよい。
【0080】
また、アラーム発生システム20に含まれる表示部24を、アラーム発生システム20とは別の装置として構成した場合に、表示部24を含まないアラーム発生システム20をクラウド上に構成してもよい。この場合、表示部24を含まないアラーム発生システム20との間の通信を、ゲートウェイで行ってもよいし、センサ11-1~11-nの各々が行ってもよい。また、この場合、表示部24の代わりに、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等の端末装置で構成してもよい。
【0081】
また、前述した実施形態では、アラーム発生システム20が記録計Rに設けられている例について説明した。しかしながら、アラーム発生システム20の機能の一部を、記録計Rとは別の装置で実現しても良い。図9は、本発明の変形例に係る記録計システムの全体構成を示すブロック図である。図9に示す通り、本変形例に係る記録計システム1は、ネットワークNWに接続され、アラーム発生システム20の機能の一部を実現するサーバ装置40を備える。サーバ装置40は、記録計R(アラーム発生システム20)と通信可能に接続される。
【0082】
サーバ装置40は、例えば、アラーム発生システム20の学習部22b及び学習モデル23bを記憶する記憶部(記憶部23の一部)の機能を実現するよう構成しても良い。このように構成した場合、サーバ装置40で実現される学習部22bは、アラーム発生システム20から、複数の測定値情報を取得し、取得した複数の測定値情報に基づいて、複数の測定値とその測定値が得られる日時情報との関係を、センサID毎に学習する。
【0083】
或いは、サーバ装置40は、例えば、アラーム発生システム20の学習部22b及び学習モデル23bを記憶する記憶部の機能に加え、予測部22c及び予測測定値情報23cを記憶する記憶部の機能を実現するよう構成しても良い。このように構成した場合、サーバ装置40で実現される予測部22cは、学習モデル23bに記憶されている学習モデルを用いて、所定の期間の後に、つまり現時点よりも未来に得られるであろう一又は複数の測定値である予測測定値と、その予測測定値が得られるであろう時刻である発生時刻とを、センサID毎に予測する。そして、サーバ装置40は、予測した結果を、アラーム発生システム20へ送信する。
【0084】
或いは、サーバ装置40は、アラーム発生システム20の学習部22b、予測部22c、並びに学習モデル23b及び予測測定値情報23cを記憶する記憶部の機能に加え、アラーム発生部22dの機能を実現するよう構成しても良い。この構成の場合に、サーバ装置40は、アラーム発生条件を満たすものがあるか否かの判定結果を、アラーム発生システム20へ送信する。
【0085】
また、上述したアラーム発生システム20の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。尚、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0086】
更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0087】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0088】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
更に、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0089】
11-1~11-n センサ
12-1~12-k センサ
20 アラーム発生システム
22a 取得部
22b 学習部
22c 予測部
22d アラーム発生部
22f 最適化部
22f-1 補助学習部
22f-2 補助予測部
23b 学習モデル
23c 予測測定値情報
23e 補助学習モデル
23f 補助予測測定値情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9