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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
H04N1/12 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020059834
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021158630
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】村橋 賢一
(72)【発明者】
【氏名】平山 裕子
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-078059(JP,A)
【文献】特開2018-195960(JP,A)
【文献】特開2005-328216(JP,A)
【文献】特開2015-220570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と受光部を有し搬送方向に搬送される原稿を読み取る読取部と、
前記読取部との間の隙間としての設定ギャップを有して対向し前記読取部が読み取った
画像の画像データの色補正に用いられる基準色を呈する背景部と、
前記読取部を制御する制御部と、を備え、
前記設定ギャップよりも厚い原稿を読み取るとき、前記原稿の先端が前記読取部と前記
背景部との間の読取位置を通過する前に、前記読取部と前記背景部との少なくともどちら
か一方が変位し、
前記搬送方向を副走査方向とし、前記搬送方向と直交する方向を主走査方向とすると、
前記制御部は、前記読取部が原稿を読み取った画像の画像データのうち前記背景部を読
み取った部分の濃度差に基づいて前記原稿の厚さを判別し、
前記制御部は、前記画像データを解析処理し、前記原稿の先端が前記読取位置に達する
前に前記読取部が前記背景部を読み取った画像の画像データに、前記副走査方向の濃度差
が所定の濃度差以上の部分が含まれると、当該原稿を所定厚さ以上の第2の原稿であると
判定し、
前記制御部は、前記画像データにおいて前記所定の濃度差以上の画素が前記副走査方向
に連続する数が第1閾値以上であるときに、前記原稿を前記第2の原稿と判定し、
前記制御部は、前記所定の濃度差以上の画素が前記副走査方向に連続する数が前記第1
閾値以上である画素列が、前記主走査方向に連続する数が第2閾値以上であるときに、前
記原稿を前記第2の原稿と判定することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記原稿を読み取るとき、前記原稿の先端が前記読取位置を通過する前に、前記読取部
と前記背景部との相対角度が、搬送方向に対して前記設定ギャップの上流側が広がる方向
に変位することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記設定ギャップは、前記読取部と前記背景部との少なくともどちらか一方が、他方に
対して付勢されることによって形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記
載の画像読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記原稿を読み取るときの搬送速度に応じて、前記所定の濃度差を変更
することを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記原稿を前記第2の原稿と判定したときに、前記画像読取装置の電流
値超過検出処理を抑制することを特徴とする請求項1または請求項4に記載の画像読取装
置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2の原稿の先端が前記読取部の前記搬送方向の下流側の搬送ロー
ラーに到達する前に、前記電流値超過検出処理を抑制することを特徴とする請求項に記
載の画像読取装置。
【請求項7】
前記読取部で読み取りが終了した前記原稿を排出する排出トレイと、
前記排出トレイへの前記原稿の排出角度を変更する排出角度変更機構と、
前記排出トレイへの前記原稿の排出角度を検出する検出部と、を備え、
前記制御部は、前記原稿が前記第2の原稿と判定され、かつ前記検出部によって前記排
出角度が急と検出されたときに、前記原稿の搬送を停止する請求項1または請求項4に
載の画像読取装置。
【請求項8】
前記排出角度変更機構は、前記画像読取装置の姿勢を水平排出姿勢と傾斜排出姿勢とで
切り換える機構であることを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記画像読取装置は、
前記読取部を第1読取部とし、前記背景部を第1背景部とするとき、
第2発光部と第2受光部を有し搬送方向に搬送される前記原稿を第2画像データとして
読み取る第2読取部と、前記第2読取部との間に前記設定ギャップを有して対向し前記第
2読取部が読み取った画像の前記第2画像データの色補正に用いられる基準色を呈する第
2背景部と、
前記第1読取部と前記原稿との間と、前記第2背景部と前記原稿との間との範囲に連続
し、かつ搬送方向に搬送される原稿の一方の面をガイドする第1ガイド面と、
前記第1背景部と前記原稿との間と、前記第2読取部と前記原稿との間との範囲に連続
し、かつ搬送方向に搬送される原稿の他方の面をガイドする第2ガイド面と、を備えるこ
とを特徴とする請求項1~請求項のうち何れか一項に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記原稿を読み取るとき、前記原稿の先端が前記第2読取部と前記第2背景部との間の
第2読取位置を通過する前に、前記第2読取部と、前記第2背景部と、の少なくともどち
らか一方が変位することを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿から画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フォトセンサを利用した発光部と受光部と、そして遮光部からなり、発光部からの光の一部を検出対象となる原稿の厚さに応じて遮光部が遮断して、残りの透過光を受光部が受光することによって、その受光量に応じて原稿の厚さが検出される画像読取装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-296943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、クレジットカード、キャッシュカード、社員カード、会員カード、ポイントカードなどのプラスチックカードが広く利用されている。そして近年では、これらプラスチックカードに記載されている画像情報の電子化を目的に、第1の原稿の一例としての厚い媒体を簡単に読み取り可能なシートフィードスキャナーが普及している。しかし、プラスチックカード等の厚い媒体は、剛性が高く撓み難いため、搬送力の不足や搬送経路の形状に沿って原稿が変形する等の問題が発生する場合がある。そこで、原稿の厚さを容易に検知し、装置側で対応する方法が求められている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載される画像読取装置においては、原稿の厚さを検知するための専用のセンサーを必要とするため、装置が複雑化するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する画像読取装置は、発光部と受光部を有し搬送方向に搬送される原稿を読み取る読取部と、前記読取部との間の隙間としての設定ギャップを有して対向し前記読取部が読み取った画像の画像データの色補正に用いられる基準色を呈する背景部と、前記読取部を制御する制御部と、を備え、前記設定ギャップよりも厚い原稿を読み取るとき、前記原稿の先端が前記読取部と前記背景部との間の読取位置を通過する前に、前記読取部と前記背景部との少なくともどちらか一方が変位し、前記制御部は、前記読取部が原稿を読み取った画像の画像データのうち前記背景部を読み取った部分の濃度差に基づいて前記原稿の厚さを判別する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態における画像読取装置を示す斜視図。
図2】傾斜排出姿勢で設置された画像読取装置の搬送経路を示す模式側断面図。
図3A】第1読取部が薄い原稿を読み取るときの状態を示す模式側断面図。
図3B】第2読取部が薄い原稿を読み取るときの状態を示す模式側断面図。
図4A】第1読取部が第1の原稿を読み取るときの状態を示す模式側断面図。
図4B】第2読取部が第1の原稿を読み取るときの状態を示す模式側断面図。
図5】水平排出姿勢で設置された画像読取装置の搬送経路を示す模式側断面図。
図6】画像読取処理において画像解析処理のタイミングを示すフローチャート。
図7】第1読取部が読み取った画像の画素の座標を示す模式図。
図8】第1読取部が第1の原稿を遅い搬送速度で読み取った画像を示す模式図。
図9】画像解析処理の流れを示すフローチャート。
図10】第1読取部が第1の原稿を速い搬送速度で読み取った画像を示す模式図。
図11】原稿が第2の原稿と判定される条件と、第2の原稿と判定されたときの処理条件を設定する流れを示すフローチャート。
図12】第2の原稿と判定されたときの処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面では、画像読取装置11が水平面上に置かれるものとして重力の方向をZ軸で示し、Z軸と交差する面に沿う方向をX軸及びY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、好ましくは互いに直交し、X軸とY軸は、水平面に沿う。以下の説明では、X軸方向を幅方向X、Y軸方向を奥行き方向Y、Z軸方向を鉛直方向Zという。読み取り時に原稿が搬送される方向を搬送方向Y1ともいう。
【0009】
以下、画像読取装置11の一実施形態を、図面を参照して説明する。
<画像読取装置全体の構成>
図1に示すように、画像読取装置11は、本体部12と、画像読み取り対象である原稿Pが載置される載置面13Aを有する給送トレイ13と、読み取りが終了した原稿Pが排出される排出トレイ14を備える。給送トレイ13に載置された原稿Pは、本体部12の上部に開口する給送口12Aから本体部12内へ1枚ずつ給送される。給送された原稿Pは、本体部12内を搬送方向Y1に搬送され、その搬送途中の不図示の読取位置で画像が読み取られた後、本体部12の前側下部に開口する排出口12Bから排出され、排出トレイ14上に積載される。
【0010】
給送トレイ13には、原稿Pが搬送される搬送方向Y1と交差する幅方向Xにスライド可能な一対のエッジガイド17が設けられる。載置面13A上に積載された原稿Pは、一対のエッジガイド17に挟まれることで、給送口12Aに対して幅方向Xに位置決めされる。また、給送トレイ13の搬送方向Y1の下流側には、給送トレイ13上に原稿Pが積載されていることを検知する図2に示す原稿センサー45を有する。給送トレイ13上に原稿Pが積載されているとき、すなわち給送トレイ13上に原稿Pがあるときは、原稿センサー45はONを出力する。また、給送トレイ13上に原稿Pが積載されてないとき、すなわち給送トレイ13上に原稿Pがないときは、原稿センサー45はOFFを出力する。なお、幅方向Xが、画像読取装置11が原稿Pを読み取るときの主走査方向x、搬送方向Y1が副走査方向yとなる。搬送方向Y1と主走査方向xは直交する。なお、搬送方向Y1は副走査方向yと平行であるが、副走査方向の+y方向と逆方向である。
【0011】
本体部12は、ベース部18と、ベース部18の前端部を中心に回動可能に連結されたカバー部19とを備える。ユーザーが開閉レバー19Aを操作してカバー部19の係止を解除し、カバー部19を図1に示す閉位置から、その前端部を中心に図1の紙面手前側へ開位置まで回動させると、図2に示す搬送経路29が露出状態となり、原稿Pの紙詰まりの解消等が行われる。
【0012】
さらに本体部12は、ベース部18の下方に底部15を備える。そして、画像読取装置11は、ベース部18のさらに下方に図2に示す設置面GDに設置されるときの台座となる本体支持部材16を備える。画像読取装置11を使用するユーザーによって、設置面GDは通常は水平面が選択される。本体支持部材16は底部15の下方に凸部15Aを、本体支持部材16は上方に凹部16Aを有する。底部15はベース部18の下部に対して固定され、底部15の凸部15Aは、YZ平面に対する断面が円弧状に形成される。一方、本体支持部材16の凹部も、YZ平面に対する断面が円弧状に形成される。底部15が有する凸部15Aの円弧形状と、本体支持部材16が有する凹部16Aの円弧形状が係合する。ユーザーが、本体部12を本体支持部材16に対して、YZ平面上で回動させる。す
なわち、底部15の凸部15Aが本体支持部材16の凹部16Aに対して円弧方向に回動されることで、画像読取装置11の原稿Pを搬送する方向の傾きの角度が変更される。
【0013】
図1に示すように、本体部12の前面部12Cには、操作部20が設けられる。操作部20は、画像読取装置11に指示を与えるときにユーザーによって操作される複数の操作用のスイッチ21~25を備える。詳しくは、操作部20は、電源スイッチ21と、スタートスイッチ22と、ストップスイッチ23と、モード選択スイッチ24と、設定変更スイッチ25と、を含む。操作部20に隣接する位置には、例えばLED等により点灯と点滅の少なくとも一方と消灯とが可能、あるいは点灯時の点灯色の変更が可能な表示灯よりなる報知部27が設けられる。
【0014】
報知部27は、例えば電源のオン/オフ、現在選択中のモードなどのユーザーに必要な情報を、点灯・消灯あるいは点灯色の変更によって報知する。なお、本体部12の前面部12C上には、液晶パネルよりなる表示部70が設けられ、ユーザーや管理者に対して、必要な情報を表示する。
【0015】
図2に示すように、画像読取装置11の本体部12内には、原稿Pを搬送する搬送機構30と、搬送方向Y1に搬送される原稿Pを読み取る図3Aに示す第1読取ユニット60Aと、図3Aに示す第2読取ユニット60Bと、を備える。搬送機構30は、給送トレイ13上に積載された複数枚の原稿Pを1枚ずつ本体部12内へ案内しつつ給送する給送部30Aと、給送された原稿Pを搬送経路29に沿って図3Aに示す読取領域SAを通るように搬送する搬送部31と、搬送部31による搬送途中で画像が読み取られた後の原稿Pを排出する排出部32とを有する。
【0016】
図3Aに示すように、第1読取ユニット60Aは、搬送方向Y1に搬送される原稿Pの下側の面である裏面を読み取る読取部の一例としての第1読取部40Aと、背景部の一例としての第2背景部39Aと、第1ガラス48Aとで構成される。第2読取ユニット60Bは、搬送方向Y1に搬送される原稿Pの上側の面である表面を読み取る読取部の一例としての第2読取部40Bと、背景部の一例としての第1背景部39Bと、第2ガラス48Bとで構成される。読取部40A,40Bは、画像読取装置11が備える図2に示す制御部50によって制御される。
【0017】
読取領域SAとは、原稿Pの搬送経路29において、第1読取ユニット60Aが有する原稿用の第1ガイド面28Aと、第2読取ユニット60Bが有する原稿用の第2ガイド面28Bとが向き合う領域をいう。原稿Pは、読取領域SAを搬送されるときに、裏面を第1ガイド面28Aによって、表面を第2ガイド面28Bによってガイドされる。
【0018】
第1ガイド面28Aは、第1読取部40Aと原稿Pとの間と、第2背景部39Aと原稿Pとの間との範囲に連続し、かつ搬送方向Y1に搬送される原稿Pの一方の面をガイドする。また、第2ガイド面28Bは、第1背景部39Bと原稿Pとの間と、第2読取部40Bと原稿Pとの間との範囲に連続し、かつ搬送方向Y1に搬送される原稿Pの他方の面をガイドする。
【0019】
本実施形態においては、原稿Pが読取領域SAを通過しないときに、第1ガイド面28Aと、第2ガイド面28Bとは平行に配置され、設定ギャップtaを有して対向する。すなわち、背景部39B,39Aは、読取部40B,40Aとの間の隙間としての設定ギャップtaを有して対向する。
【0020】
設定ギャップtaよりも厚さが薄い原稿を、薄い原稿P0という。薄い原稿P0は設定ギャップtaの寸法を変化させることなく、設定ギャップtaを通過できるため、薄い原
稿P0が読取領域SAを通過するときも第1ガイド面28Aと、第2ガイド面28Bとは平行に配置されたままであり、設定ギャップtaを有して対向する。
【0021】
設定ギャップtaは、使用される光学系の被写界深度によって異なるが、光学系として必要な距離よりも大きくすると、原稿Pの厚さが薄いときに、ピントが原稿Pの表面に合わなくなるため、最小限の大きさに設定される。
【0022】
図4Aに示すように、設定ギャップtaよりも厚さが厚い原稿Pを第1の原稿P1という。本実施形態においては、第1背景部39Bを有する第2読取ユニット60Bが、付勢部材49によって搬送経路29側に付勢される。そのため、第1の原稿P1が読取領域SAを通過するときには、第1の原稿P1の剛性によって、第2読取ユニット60Bが搬送経路29から離れる側に押され、第2読取ユニット60Bが変位し、設定ギャップtaよりも厚い第1の原稿P1が読取領域SAを通過することが可能な構成となっている。
【0023】
本実施形態においては、第1背景部39Bを有する第2読取ユニット60Bが、付勢部材49によって搬送経路29側に付勢されるが、第1読取部40Aを有する第1読取ユニット60Aが、付勢部材49によって搬送経路29側に付勢されてもよい。すなわち、設定ギャップtaは、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの少なくともどちらか一方が、他方に対して、付勢されることによって形成される。
【0024】
図2に示すように、給送部30Aは、複数枚の原稿Pが積載状態にセットされる給送トレイ13と、本体部12内の搬送経路29の上流端位置に給送ガイド30Bと対向する1つの給送ローラー33と、を備える。給送部30Aは、給送トレイ13上に積載された複数枚の原稿Pを1枚ずつ給送口12Aから給送ガイド30Bに沿って給送する。搬送部31は、給送ローラー33よりも搬送方向Y1の下流側の位置に配置された分離ローラー対34と、搬送方向Y1において図3Aに示す読取領域SAよりも上流側の位置に配置された搬送ローラー対35とを備える。
【0025】
排出部32は、搬送方向Y1に図3Aに示す読取領域SAよりも下流側の位置に配置された排出ローラー対36を備える。なお、排出ローラー対36は、搬送ローラー対35と共に原稿Pの読み取り中の搬送も担う。
【0026】
給送系の複数のローラー33,34Aは、これらの動力源である給送モーター37の動力により回転駆動する。また、給送系の分離ローラー34B及び搬送系のローラー対35,36を構成する駆動ローラー35A,36Aは、その動力源である搬送モーター38の動力により回転駆動する。給送トレイ13に積載された複数枚の原稿Pは、給送ローラー33により最下位のものから1枚ずつ順番に給送口12Aから本体部12内へ給送される。このように給送部30Aは給送モーター37を動力源として駆動し、搬送部31と排出部32は、搬送モーター38を共通の動力源として駆動する。
【0027】
分離ローラー対34は、駆動ローラー34Aと分離ローラー34Bとにより構成される。分離ローラー34Bは、原稿Pに対する外周面の摩擦係数が、駆動ローラー34Aのそれよりも大きいうえ、駆動ローラー34Aよりも回転速度が若干低速で回転する。両ローラー34A,34Bの外周面の摩擦係数の差と回転速度差とを利用し、仮に給送ローラー33から原稿Pが複数枚重なって重送されたときも、分離ローラー対34は、一番下の1枚の原稿Pを分離して搬送方向Y1の下流側へ給送する。
【0028】
なお、給送口12Aには、給送ガイド30Bを含む可動式の給送機構が設けられる。この給送機構は給送モーター37の動力により給送ローラー33と連動して駆動され、原稿Pを給送口12Aへ給送する過程で給送路を開きかつセット状態の原稿Pを給送ローラー
33の外周面に押し付け、原稿Pを給送口12Aへ送り込んだ後に後続原稿の侵入を阻止すべく給送路を閉じるように動作する。これにより原稿Pは給送ローラー33により1枚ずつ給送される。
【0029】
また、ローラー対35,36は、駆動ローラー35A,36Aと従動ローラー35B,36Bとにより構成される。ローラー対35,36は、原稿Pを読み取るときに一定の搬送速度で原稿Pを搬送するように回転駆動する。各従動ローラー35B,36Bは、それぞれが対をなす駆動ローラー35A,36Aの回転により連れ回りする。なお、冊子原稿や折り原稿等の原稿Pについては、2枚の原稿サイズ相当の透明フィルムを周縁部の一部で貼り合わせてなる不図示のキャリアシートに挟んで給送トレイ13にセットされ、キャリアシートごと搬送させることでこの種の原稿Pも読み取る。
【0030】
図2に示すように、図3Aに示す読取ユニット60A,60Bは、搬送方向Y1における搬送ローラー対35と排出ローラー対36との間の位置において搬送経路29を挟む両側に一対設けられる。
【0031】
図2に示すように、本実施形態においては、図3Aに示す第1読取部40Aは、発光部の一例としての第1発光部41Aと、受光部の一例としての第1受光部42Aと、第1ロッドレンズアレイ47Aと、第1ガラス48Aの+Y方向側かつ+Z方向側の半分の部分と、を有する。図3Aに示す第2読取部40Bは、発光部の一例としての第2発光部41Bと、受光部の一例としての第2受光部42Bと、第2ロッドレンズアレイ47Bと、第2ガラス48Bの-Y方向側かつ-Z方向側の半分の部分と、を有する。
【0032】
発光部41A,41Bは、例えばLEDや蛍光ランプ等により構成される。ロッドレンズアレイ47A,47Bは、棒状のレンズを多数並列的に配列し,各レンズによる正立等倍像を重ね合わせて全体で1個の連続像を形成する。受光部42A,42Bは、複数の光電変換素子を主走査方向xに沿って一列に配置した、例えば密着イメージセンサーである。読取部40A,40Bは、発光部41A,41Bから射出され、原稿Pの表面で反射した反射光を、ロッドレンズアレイ47A,47Bによって、受光部42A,42Bの表面上に集光させる。そして、読取部40A,40Bは、受光部42A,42Bの各光電変換素子が受光した光を電気信号に変換して受光量に応じた値の画素信号である画像データを出力する。画像データは画像読取装置11が備える制御部50によって処理される。
【0033】
図3Aに示すように、第1読取ユニット60Aの第1読取部40Aと、第2読取ユニット60Bの第2読取部40Bとは、搬送方向Y1に互いに少しずれた位置に配置される。第1読取部40Aと搬送経路29を挟んで対向する位置には、第1背景部39Bが配置される。第2読取部40Bと搬送経路29を挟んで対向する位置には、第2背景部39Aが配置される。
【0034】
第1ガイド面28Aと第2ガイド面28Bとが向き合う領域を読取領域SAと定義したが、実際に読取部40A,40Bが原稿Pを読み取る位置は、読取位置の一例としての第1読取位置SP1と、読取位置の一例としての第2読取位置SP2との2か所である。第1読取位置SP1は、読取部40Aが有する撮像素子の画素から、読取領域SAを通過する原稿Pに対して作図した垂線が搬送経路29と交差する位置である。第2読取位置SP2は、読取部40Bが有する撮像素子の画素から、読取領域SAを通過する原稿Pに対して作図した垂線が搬送経路29と交差する位置である。本実施形態の読取部40A,40Bはラインセンサーであるため、第1読取位置SP1と、第2読取位置SP2とは、主走査方向xに延びるラインセンサーの読み取り幅の長さの2本の直線である。
【0035】
図2に示すように、本実施形態においては、図3Aに示す第2背景部39Aは、背景板
の一例としての第2背景板43Aと、第1ガラス48Aの-Y方向側かつ-Z方向側の半分の部分と、を有する。本実施形態においては、図3Aに示す第1背景部39Bは、背景板の一例としての第1背景板43Bと、第2ガラス48Bの+Y方向側かつ+Z方向側の半分の部分と、を有する。
【0036】
背景部39B,39Aは、シェーディング補正用の基準値を得るために、背景部39B,39Aが有する背景板43B,43Aによって、読取部40A,40Bが読み取った画像の画像データの色補正に用いられる基準色である白色又はグレーを呈する。
【0037】
読取部40A,40Bと背景板43B,43Aとの間に位置するガラス48A,48Bは無色透明であるため、読取部40A,40Bが背景部39B,39Aを読み取るときは、背景板43B,43Aを読み取る。そのため、「読取部40A,40Bが背景部39B,39Aを読み取る」ことを、「読取部40A,40Bが背景板43B,43Aを読み取る」ともいう。
【0038】
片面読取モードでは第1読取部40Aだけが読取動作を行って原稿Pの裏面だけが読み取られ、両面読取モードでは第1読取部40Aと第2読取部40Bとが共に読取動作を行って原稿Pの裏面と表面、すなわち両面が読み取られる。
【0039】
図2に示すように、本体部12内には、駆動ローラー35Aの回転量を検出可能なエンコーダー44が設けられる。エンコーダー44は、駆動ローラー35Aの回転量の検出信号として、回転量に比例する数のパルス信号を出力する。エンコーダー44の検出信号は、本体部12内に配置された制御部50に入力され、制御部50は搬送中の原稿Pの位置の把握及び搬送速度の把握に用いられる。
【0040】
搬送方向Y1において搬送ローラー対35のニップ点よりも下流側の位置には、原稿Pの有無を検知可能な原稿有無センサー46が配置される。原稿有無センサー46は、例えばレバーを有する接触式センサーである。原稿有無センサー46は、原稿Pの先端が不図示のレバーを押すことで原稿Pを検知してONし、その原稿Pの後端が通り過ぎて不図示のレバーが押されなくなると、原稿Pを検知しなくなってOFFする。よって、制御部50は、原稿有無センサー46の検知信号に基づき、原稿Pの先端が搬送ローラー対35を通過したこと、及び原稿Pの後端が搬送ローラー対35を通過したことを検知する。
【0041】
原稿有無センサー46が原稿Pの先端と後端とを検知した検知結果は、読取部40A,40Bの読取動作の開始と終了のタイミングを決める制御に用いられる。また、原稿有無センサー46は、原稿Pの先端と後端とを検知可能であるため、原稿Pの先端が検知されてから後端が検知されるまでの原稿Pの搬送距離に基づいて原稿Pの搬送方向Y1における長さから決まる原稿サイズを検出する。なお、原稿有無センサー46は、光学式センサー等の非接触センサーであってもよい。
【0042】
原稿Pの先端が、本体部12の前側下部に開口する排出口12Bから排出される。原稿Pの先端は、排出角度φの角度で排出トレイ14の表面に接触し、原稿Pはやや下側に凸形状に湾曲しながら、原稿Pの先端は排出トレイ14の表面に沿って進行し、原稿Pの後端が排出ローラー対36を通過すると、原稿Pは排出トレイ14上に積載される。原稿有無センサー46が原稿Pの後端を検知した後、駆動ローラー35Aの回転量によって、制御部50は、原稿Pの後端が排出ローラー対36を通過したと判断すると、搬送部31は原稿Pの搬送を停止して、排出動作が完了する。
【0043】
排出トレイ14は回動軸14Aを中心に回動が可能に構成される。画像読取装置11の設置姿勢が傾斜排出姿勢のときは、排出トレイ14は重力によって回動軸14Aを中心と
して反時計方向周りに回動し、その先端を設置面GDに当てた状態にある。
【0044】
図2に示すように、本実施形態の画像読取装置11は、搬送経路29が略45度に傾斜しているため、搬送経路29の長さに対して、画像読取装置11の設置面積は少なくて済む。図2に示す画像読取装置11の設置姿勢を傾斜排出姿勢という。
【0045】
前述したように、本実施形態の画像読取装置11は、底部15が有する凸部15Aの円弧形状と、本体支持部材16が有する凹部16Aの円弧形状が係合する。ユーザーが、本体部12を本体支持部材16に対して、YZ平面上で回動させる。すなわち、底部15の凸部15Aが本体支持部材16の凹部16Aに対して円弧方向に回動され、画像読取装置11の傾きの角度が変更されることで、画像読取装置11の原稿Pを搬送する搬送経路29の傾きの角度が変更される。
【0046】
図5に示すように、本実施形態の画像読取装置11は、搬送経路29が略水平になるように設置されることも可能な構成となっている。画像読取装置11の設置面積は大きくなるが、搬送経路29と排出トレイ14が略平行であるため、原稿Pの先端が本体部12の前側下部に開口する排出口12Bから排出されるときに、原稿Pの先端が排出トレイ14の表面に当たらない。そのため、排出部32が原稿Pを下側に凸形状に湾曲させることなく、原稿Pの排出が可能な構成となっている。図5に示す搬送経路29が略水平の画像読取装置11の設置姿勢を水平排出姿勢という。
【0047】
すなわち、底部15の凸部15Aと、本体支持部材16の凹部16Aとは、排出トレイ14への原稿Pの図2に示す排出角度φを変更する排出角度変更機構71であり、画像読取装置11をの姿勢水平排出姿勢と傾斜排出姿勢とで切り換える機構として構成される。すなわち、画像読取装置11は排出角度変更機構71を備える。
【0048】
検出部26は、排出トレイ14と搬送経路29との排出角度φを有する図2に示す傾斜排出姿勢であるか、排出トレイ14と搬送経路29とが略水平である図5に示す水平排出姿勢であるかを検出する。すなわち、画像読取装置11は、原稿Pの排出角度を検出する検出部26を備える。傾斜排出姿勢のときは排出トレイ14が検出部26に近接するためにセンサーはONになり、水平排出姿勢のときは排出トレイ14が検出部26から離れるためにセンサーはOFFになる。傾斜排出姿勢のときは、検出部26によって排出角度φが急と検出される。
【0049】
図5に示すように、画像読取装置11の設置姿勢が水平排出姿勢のときは、画像読取装置11の設置姿勢が傾斜排出姿勢のときよりも、排出トレイ14は重力によって回動軸14Aを中心として、さらに反時計方向周りに回動する。そして排出トレイ14における回動軸14Aの近傍が図5に示す当接面18Aに当接する状態で、排出トレイ14が静止することによって、排出トレイ14と、搬送経路29とが略水平となる構成となっている。
【0050】
本実施形態においては、排出トレイ14が排出部32に近接しているかどうかをセンサーで検知し、制御部50は、排出トレイ14が搬送経路29に対して略水平であるかどうかを制御部50が判断する。本体部12が本体支持部材16に対して、ユーザーによってYZ平面上で回動されて搬送経路29が略水平にされたときに、不図示の連動するリンクによって、排出トレイ14が略水平に傾くように構成し、本体部12に不図示の検出部を有してもよい。
【0051】
<原稿の厚さによる読取部の動きの違い>
図3Aに示すように、本実施形態においては、原稿Pが読取領域SAを通過しないときに、第1ガラス48Aの搬送経路29側の表面である第1ガイド面28Aと、第2ガラス
48Bの搬送経路29側の表面である第2ガイド面28Bとは平行に配置され、設定ギャップtaを有して対向する。すなわち、第1読取部40Aと第1背景部39Bとは設定ギャップtaを有して対向し、第2読取部40Bと第2背景部39Aとは設定ギャップtaを有して対向する。本実施形態においては、第2読取ユニット60Bが、設定ギャップtaを保った状態で、付勢部材49によって搬送経路29側に付勢されている。
【0052】
図2に示すように、原稿Pの先端が、原稿有無センサー46に検知されたときに、図3Aに示す第1読取部40Aによる画像の読み取りが開始される。原稿Pの先端が図3Aに示す第1読取位置SP1に到達するまでは、第1読取部40Aは第1背景部39Bの画像の読み取りを実行する。
【0053】
制御部50は、原稿有無センサー46の原稿Pの先端と後端とを検知した検知結果と、エンコーダー44の検出信号とによって、搬送中の原稿Pの位置を把握し、第1読取部40Aと第2読取部40Bとの読み取り開始タイミングと読み取り終了タイミングを決定する。
【0054】
第1読取部40Aの読み取り開始タイミングは、原稿Pの先端が原稿有無センサー46に検知されたときである。第2読取部40Bの読み取り開始タイミングは、原稿Pの先端が原稿有無センサー46に検知されたときから、図3Aに示す第1読取位置SP1から図3Bに示す第2読取位置SP2までの距離分だけ原稿Pが搬送されたときである。
【0055】
図3Aに示すように、(設定ギャップta)>(薄い原稿P0の厚さt0)のときは、薄い原稿P0の先端は、設定ギャップtaを変位させることなく、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの間の第1読取位置SP1を通過する。このとき以降は、第1読取部40Aによって、薄い原稿P0の裏面と、薄い原稿P0の主走査方向xであり幅方向Xの両外側の第1背景部39Bとが読み取られる。
【0056】
そして図3Bに示すように、薄い原稿P0の先端は、設定ギャップtaを変位させることなく、第2読取部40Bと第2背景部39Aとの間を通過する。薄い原稿P0の先端が第2読取位置SP2を通過した以降は、第2読取部40Bによって、薄い原稿P0の先端の表面と、薄い原稿P0の主走査方向xであり幅方向Xの両外側の第2背景部39Aとが読み取られる。そして薄い原稿P0は、設定ギャップtaを変位させることなく、第1読取部40Aは、薄い原稿P0の後端が第1読取位置SP1を通過した後に、裏面の読み取りを終了する。その後、第2読取部40Bは、薄い原稿P0の後端が第2読取位置SP2を通過した後に、表面の読み取りを終了する。そして薄い原稿P0は読取領域SAを通過する。
【0057】
図4Aに示すように、(設定ギャップta)<(第1の原稿P1の厚さt1)のときは、第1ガイド面28Aと第2ガイド面28Bとの距離である設定ギャップtaよりも厚い第1の原稿P1の先端が、読取領域SAに入ったときに、第1の原稿P1の剛性によって、第1背景板43Bを有する第1背景部39Bの変位が開始される。第1の原稿P1の先端が、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの間の第1読取位置SP1を通過するときも、第1の原稿P1の剛性によって、第1背景板43Bを有する第1背景部39Bが変位した状態である。第1背景板43Bを有する第1背景部39Bに対して、第1読取部40Aが変位してもよい。
【0058】
すなわち、設定ギャップtaよりも厚い第1の原稿P1を読み取るとき、第1の原稿P1の先端が、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの間の第1読取位置SP1を通過する前に、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの少なくともどちらか一方が変位する。
【0059】
また、設定ギャップtaよりも厚い第1の原稿P1を読み取るとき、第1の原稿P1の先端が、第2読取部40Bと第2背景部39Aとの間の第2読取位置SP2を通過する前に、第2読取部40Bと、第2背景部39Aと、の少なくともどちらか一方が変位してもよい。
【0060】
第2読取ユニット60Bが第1の原稿P1の先端を、原稿の厚さ方向D1に押すときに、第2読取ユニット60Bは、第1読取ユニット60Aに対して平行に変位せず、第1の原稿P1の先端部が当たる部分が原稿の厚さ方向D1と逆方向に変位する。第1ガイド面28Aと、第2ガイド面28Bとの図4Aに示す相対角度ψは大きくなって、第1の原稿P1の先端は、設定ギャップtaを変位させる。そして第1の原稿P1の先端は、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの間の第1読取位置SP1を通過する。
【0061】
すなわち、第1の原稿P1を読み取るとき、第1の原稿P1の先端が第1読取位置SP1を通過する前に、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの相対角度ψが、搬送方向Y1に対して設定ギャップtaの上流側が広がる方向に変位する。第1の原稿P1の先端が第1読取位置SP1を通過した以降は、第1読取部40Aによって、第1の原稿P1の裏面と、第1の原稿P1の主走査方向xであり幅方向Xの両外側の第1背景部39Bとが読み取られる。
【0062】
そして、本実施形態においては、図4Bに示すように、第1の原稿P1の先端が、第2読取部40Bと第2背景部39Aとの間を通過するときには、第1の原稿P1の先端によって第2読取ユニット60Bが押される部分が広くなるため、第2読取ユニット60Bは、第1読取ユニット60Aに対して平行となる。
【0063】
第1の原稿P1の先端が第2読取位置SP2を通過した以降は、第2読取部40Bによって、第1の原稿P1の先端部の表面と、第1の原稿P1の主走査方向xであり幅方向Xの両外側の第2背景部39Aとが読み取られる。そして、第1の原稿P1の後端が第1読取位置SP1を通過した後に、第1読取部40Aは裏面の読み取りを終了し、その後、第1の原稿P1の後端が第2読取位置SP2を通過した後に、第2読取部40Bは表面の読み取りを終了する。そして、第1の原稿P1は読取領域SAを通過する。
【0064】
<第2の原稿を検出するための画像読取処理の流れ>
まず、図6に示す画像読取処理のフローチャートを参照し、第2の原稿P2の検出における画像読取処理のルーチン全体について説明する。このルーチンは、図1に示す電源スイッチ21が操作されて画像読取装置11の電源が投入されたタイミングで実行される。
【0065】
一般的に使用される他の原稿と比べて、厚くて剛性があり、大きな搬送力が必要な原稿を第2の原稿P2という。第2の原稿P2は、具体的には、クレジットカード、キャッシュカード、社員カード、会員カード、ポイントカードなどの、プラスチックカードである。単に厚い原稿を検出することが目的ではなく、剛性があり、大きな搬送力が必要な原稿である第2の原稿P2を検出することが目的である。厚い原稿は剛性があり、大きな搬送力が必要な原稿であるため、図2に示す制御部50は図2に示す排出トレイ14に対する排出角度φや、図2に示す搬送部31における搬送力を制御するために、原稿Pを読み取るときに原稿Pの厚さを検出する。
【0066】
第1の原稿P1の厚さと第2の原稿P2の厚さとは一致しないこともあるが、(第1の原稿の厚さt1)≦(第2の原稿P2の厚さt2)である。
図6に示すように、ステップS501において、原稿Pが図2に示す給送トレイ13上にセットされて、ユーザーが画像読取の開始を指示したことを受けて、制御部50は、このルーチンの実行を開始する。
【0067】
ステップS502において、制御部50は初期処理を行う。この初期処理には、図2に示す背景板43A,43Bを用いてシェーディング補正用の基準値を得る処理が含まれる。次いで制御部50は、搬送部31によって、給送トレイ13にセットされた原稿Pを図2に示す給送ローラー33によって給送し、最下原稿を図2に示す分離ローラー対34によって分離して、1枚目の原稿Pの搬送を開始し、ステップS503に移行する。
【0068】
ステップS503において、制御部50は、原稿先端の到達を検知したか否かを判定する。原稿Pが搬送されることによって、原稿Pの先端が図2に示す原稿有無センサー46の位置に到達する。そして、原稿Pの先端が不図示のレバーを押すことによって、原稿有無センサー46が原稿Pの先端の原稿有無センサー46への到達を検知すると、ステップS504に移行する。
【0069】
ステップS504において、制御部50は、画像の読み取り処理を開始するとともに、ステップS505において、ステップS504の読み取り処理に並行して、ステップS504において、読み取った画像に対して後述する図9に示す画像解析処理のサブルーチンを実行し、ステップS506に移行する。1枚の原稿Pの読取処理が終了するまで、ステップS504の読み取り処理と、ステップS505の画像解析処理とが並行して実行される。
【0070】
ステップS506において、制御部50は、1枚の原稿の読み取りを終了したか否かを判定する。1枚の原稿の読み取り中は、ステップS504に戻り、ステップS504の読み取り処理とステップS505の画像解析処理とを継続して実行する。そして、原稿Pの後端が図2に示す原稿有無センサー46の位置を通過し、不図示のレバーが戻った後、所定の距離だけ原稿Pを搬送したことを受けて原稿Pの読み取り処理が終了となると、ステップS506の判定結果はYESとなり、ステップS507に移行する。
【0071】
ステップS507において、制御部50は、図2に示す原稿センサー45の出力に基づいて、図2に示す給送トレイ13上に、次の原稿Pがあるか否かを判定する。次の原稿Pがある場合は、原稿センサー45の出力がONとなるため、ステップS507の判定結果はNOとなり、ステップS503に戻る。そして制御部50は、次の原稿の到達検知を開始する。次の原稿Pがない場合は、原稿センサー45の出力がOFFとなるため、ステップS507の判定結果はYESとなる。そして、制御部50は、読み取り処理によって読み取られた原稿Pの画像データPDに対して、シェーディング補正や原稿の画像の切り出しや回転等の画像処理を行って、PDF等の指定された形式で画像処理された画像データを出力して終了する。
【0072】
ここで、図9に示す画像解析処理に使用する画像データPDについて説明する。
図7に示すように、図6に示す画像読取処理のステップS504において読み取った画像における画像データPDは、主走査方向xと、副走査方向yとの二次元の画素のマトリックスで表される。主走査方向xは、図2に示す読取部40A,40Bの撮像素子が並ぶ方向であり、副走査方向yは、読取部40A,40Bの撮像素子の位置である図2に示す読取位置SP1,SP2において原稿Pが搬送される方向である。図2に示す搬送方向Y1は読取位置SP1,SP2においては副走査方向yと平行であるが、副走査方向yの+y方向と逆方向である。
【0073】
図4Aに示す第1読取部40Aの主走査方向xと副走査方向yとにおいて、図7に示すように、最初に読み取りが開始される画素の位置を(x(1),y(1))と記載する。第1読取部40Aは、まず(x(1),y(1))から主走査方向xに順に各画素のデータを読み取る。すなわち、第1読取部40Aによって、主走査方向xへの走査が行われる
。実際は1ラインの各画素のデータはほぼ同時に読み取られる。搬送部31によって原稿Pが搬送方向Y1に搬送されて次の副走査方向yの画素の位置が第1読取部40Aの第1読取位置SP1に到達したときに、第1読取部40Aは、(x(1),y(2))から主走査方向xに順に各画素のデータを読み取る。このようにして、第1読取部40Aは副走査方向yにも各画素のデータを読み取り、最終的には、原稿Pの裏面を二次元の画素のマトリックスで表される画像データPDとして読み取る。より正確には、原稿Pの裏面と、原稿P0とZ方向に重ならない第1背景部39Bの部分とが、二次元の画素のマトリックスで表される画像データPDとして第1読取部40Aによって読み取られる。原稿Pの二次元の画素のマトリックスにおいて、主走査方向xにおいて読み取り開始画素からi番目の画素であり、副走査方向yにおいて読み取り開始画素からk番目の画素を(x(i),y(k))と記載する。
【0074】
図2に示す第2読取部40Bにおいても、読み取りを開始するタイミングは違うが、第1読取部40Aと同じ方法で、原稿Pの表面を二次元の画素のマトリックスで表される画像データPDとして読み取る。より正確には、原稿Pの表面と、原稿P0とZ方向に重ならない第2背景部39Aの部分とが、二次元の画素のマトリックスで表される画像データPDとして第2読取部40Bによって読み取られる。第1読取部40Aが読み取った原稿Pの裏面の画像データPDを第1画像データPD1、第2読取部40Bが読み取った原稿Pの表面側の画像データPDを第2画像データPD2、と区別して記載することもある。第2読取部40Bが読み取った画像の第2画像データPD2は、第1読取部40Aが読み取った画像の第1画像データPD1と原稿Pの表裏で対応する画像データである。
【0075】
図8に示すように、図4Aに示す第1読取部40Aが読み取った画像の画像データPDにおいて、第1読取部40Aは、原稿Pが図2に示す第1読取位置SP1に到達する前から読み取りを開始している。そのため、画像データPDにおいて、読み取りが開始される画素である(x(1),y(1))の位置に近い側の主走査方向xの複数ラインに、図2に示す第1背景板43Bの画像データのみが現れる。しばらく第1読取部40Aによって副走査が行われた後に、原稿Pの先端の画像データが、画像データPDの中央に現れる。主走査方向xと平行である幅方向Xにおける原稿Pの両側は、原稿Pがない部分であるため、第1背景板43Bの画像データである。なお、図8の符号には原稿Pと記載してあるが、図8に示す画像データPDは、原稿Pが図4Aに示す設定ギャップtaよりも厚い第1の原稿P1のときの画像データPDの例を示している。
【0076】
図2に示す第1背景板43Bは、画像データの色補正に用いられるため、基準色である白色又はグレーを呈する。図8に示すように、画像データPDにおいて、第1読取部40Aの読み取りが開始される画素である図7が示す(x(1),y(1))から主走査方向xに走査されて読み取られた最初の1ラインの主走査データから、副走査方向y側に並ぶ1ラインまたは複数ラインの先端の部分の画像データは、第1背景板43Bの基準色を示す。その部分の画像データよりもさらに副走査方向y側に並ぶ画素の複数ラインの画像データは、第1背景板43Bの基準色よりも画像濃度が濃い。第1読取部40Aの副走査方向yへの読み取りが進み、原稿Pの先端の画像データが、画像データPDの中央に現れる辺りから、第1読取部40Aが第1の原稿P1を副走査方向yへ走査するにつれて、第1背景板43Bの画像データPDの画像濃度は徐々に薄くなる。第1読取部40Aが第1の原稿P1をさらに副走査方向yへ走査すると、第1背景板43Bの画像データは図2に示す第1背景板43Bの基準色を示す。
【0077】
次に、図6に示す画像読取処理のルーチン内のステップS505において、図7に示す画像データPDに対して、図2に示す制御部50が実行する図9に示す画像解析処理のサブルーチンの概要について説明する。
【0078】
本サブルーチンは、第1読取部40Aが原稿Pと第1背景板43Bとを図8に示す画像データPDとして読み取り、制御部50は、第1読取部40Aより取得した図8に示す画像データPD内における原稿Pの影の大きさによって、図4Aに示す読取領域SAを通過する原稿Pが所定の厚さよりも厚いかどうかを判定する。ずなわち、制御部50は、第1読取部40Aが原稿Pを読み取った画像データPDのうち、第1背景板43Bを読み取った部分の濃度差に基づいて原稿Pの厚さを判別し、原稿Pが第2の原稿P2であるかどうかを判定する。原稿Pの影の大きさは、制御部50によって、画像影長Lと画像影幅Wとの大きさによって判断される。
【0079】
なお、画像影幅Wとは主走査方向xへの影であり、画像影長Lとは副走査方向yへの影をいう。影とは、第1背景板43Bの画像データであって、第1背景板43Bの基準色よりも所定の濃度差ΔD以上に濃い部分をいう。図8に示す画像データPD内に所定の大きさ以上の影が検出されたときに、制御部50は、原稿Pが所定の厚さよりも厚いと判定する。制御部50が、画像影幅Wが所定の大きさ以上であると判断するための閾値を第1閾値m、画像影長Lが所定の大きさ以上であると判断するための閾値を第2閾値nという。
【0080】
すなわち、原稿Pの先端が図4Aに示す第1読取位置SP1に達する前に読み取った画像である第1背景部39Bの画像データに対して、副走査方向yに所定の濃度差ΔD以上の部分が含まれるときに、制御部50は、原稿Pを所定の厚さ以上の第2の原稿P2と判定する。そして、画像データPDにおいて所定の濃度差ΔD以上の画素が副走査方向yに連続する数が第1閾値m以上ときに、原稿Pを所定の厚さ以上の第2の原稿P2と判定する。これは、後述する図9に示すフローチャートのステップS606においてm≧2かつn≧1の場合である。
【0081】
また、制御部50は、所定の濃度差ΔD以上の画素が副走査方向yに連続する数が第1閾値m以上である画素列が、主走査方向xに連続する数が第2閾値n以上であるときに、原稿Pを第2の原稿P2と判定してもよい。これは、後述する図9に示すフローチャートのステップS606においてm≧1かつn≧2の場合である。
【0082】
さらに、図9に示すフローチャートを参照し、図6に示す画像読取処理のルーチン内のステップS505において、図2に示す制御部50が、画像データPD内の画像影長Lと画像影幅Wとの大きさによって、原稿Pを第2の原稿P2と判定する画像解析処理のサブルーチンの詳細について説明する。
【0083】
制御部50は、原稿Pが第2の原稿P2かどうかを、画像データPD内の画像影長Lと画像影幅Wとの大きさによって判定する。例として、制御部50によって、画像影長Lが2以上、かつ画像影幅Wが2以上の影が検出されたときに、制御部50が原稿Pを第2の原稿P2と判定する場合を説明する。すなわち、図9に示すフローチャートのステップS606においてm=2かつn=2のときに、ステップS606の判定結果がYESとなる場合である。
【0084】
なお、制御部50が原稿Pを第2の原稿P2と判定する場合の画像影長Lと画像影幅Wとの大きさは、検出される原稿Pの厚さや、光学系の被写界深度等によって変わる。すなわち、検出の目的や光学系の構成によって適切な値が選択されるため、制御部50が原稿Pを第2の原稿P2と判定する場合の画像影長Lと画像影幅Wの大きさは限定されない。
【0085】
図9に示すフローチャートにおいて、最初に制御部50は、(x(1),y(1))と(x(1),y(2))の画素のデータから(x(iz),y(1))と(x(iz),y(2))の画素のデータまでの処理を実行する。これを「主走査方向xの第1処理」という。
【0086】
なお(x(iz),y(1))は、画像データPDにおいて、第1読取部40Aの読み取りが開始される画素である図7が示す(x(1),y(1))から主走査方向xに走査されて読み取られる1ラインにおける最終の画素を示す。そして、(x(1),y(iz))は、画像データPDにおいて、第1読取部40Aの読み取りが開始される画素である図7が示す(x(1),y(1))から副走査方向yに走査されて読み取られるときの最終の画素を示す。
【0087】
ステップS601において、制御部50は、(x(1),y(1))の画素のデータを取得する。取得されたデータが1つ目の画素のデータであるため、ここではまだ、画像影長Lと画像影幅Wとは「ゼロ」である。
【0088】
ステップS602において、制御部50は、(x(1),y(1))の画素のデータに加えて、(x(1),y(2))の画素のデータを取得する。すなわち、副走査方向yに対して1画素隣のデータを取得する。
【0089】
ステップS603において、制御部50は、(x(1),y(1))の画素のデータと、(x(1),y(2))の画素のデータの濃度を比較する。両画素のデータの濃度差が、所定の濃度差ΔD以上であるときは、制御部50は、画像データPD内に影があると判断するため、ステップS603の判定結果はYESとなり、ステップS604に移行する、
ステップS604において、制御部50は、画像影幅Wの加算処理と、画像影長Lの加算処理とを実行する。この場合は、画像影長Lと画像影幅Wとが0であるときから、副走査方向yに対し1画素隣の画素において、所定の濃度差ΔD以上のデータが検出されたため、画像影長LはL=0+1=1となり、画像影幅WはW=0+1=1となって、ステップS606に移行する。
【0090】
ステップS603において、制御部50は、両画素のデータの濃度差が、所定の濃度差ΔD未満であるときに、影がないと判断すると、ステップS603の判定結果はNOとなり、ステップS605に移行する。
【0091】
ステップS605において、制御部50は、画像影幅Wと画像影長Lに「ゼロ」を代入する。画像影長LはL=0となって、ステップS606に移行する。
ステップS606において、制御部50は、画像影幅Wと画像影長Lとの数値を確認する。ステップS603の判定結果がYESであったときは、画像影長Lは1であり、L<2である。そして、画像影幅Wは「ゼロ」である。ステップS603の判定結果がNOであったときは、画像影長Lは「ゼロ」であり、画像影幅Wも「ゼロ」である。いずれにしても、m≧2かつn≧2の条件を満たしていないため、ステップS606の判定結果はNOとなり、ステップS608に移行する。
【0092】
ステップS608において、制御部50は、x(i)が最終列の画素かどうかを確認する。この場合は、x(1)は最終列の画素ではないため、ステップS608の判定結果はNOとなり、ステップS610に移行する。
【0093】
ステップS610において、制御部50は、iに1を加える。この場合は、iはi=1+1=2となる。制御部50は、主走査方向xの2列目の画素の処理に移行するため、ステップS602に移行する。
【0094】
2回目のステップS602において、制御部50は、(x(2),y(1))の画素のデータに加えて、(x(2),y(2))の画素のデータを取得する。すなわち、主走査
方向xの1画素隣の列に関しても、副走査方向yに対して1画素隣の画素のデータを取得し、ステップS603に移行する。
【0095】
2回目のステップS603において、制御部50は、(x(2),y(1))の画素のデータと、(x(2),y(2))の画素のデータの濃度を比較する。両画素のデータの濃度差が、所定の濃度差ΔD以上であれば、ステップS603の判定結果はYESとなり、ステップS604に移行する。
【0096】
2回目のステップS604において、もし1回目のステップS603において、判定結果がYESであったときは、制御部50は、影の画素が主走査方向xに連続していると判断して、画像影幅Wに1を加える。画像影幅WはW=1+1=2となる。この例では、原稿Pを第2の原稿P2と判断するための画像影幅Wの条件はW≧2であるため、W=2となったことによって、画像影幅Wの条件が満たされる。しかし、画像影長LはL=1のままであり、この例では、原稿Pを第2の原稿P2と判断するための画像影長Lの条件はL≧2であるため、画像影長Lの条件のみが満たされない状態で、ステップS606に移行する。
【0097】
そして2回目のステップS606において、制御部50は、画像影幅Wの条件が満たされたが、画像影長Lの条件が満たされていないと判断するため、ステップS606の判断結果はNOとなり、ステップS608に移行する。
【0098】
画像データPDにおいて、この画像影幅Wの条件を満たす箇所が画像影長Lの条件も満たすかどうか、すなわちこの画像影幅Wの条件を満たす箇所が原稿Pを第2の原稿と判定できる影かどうかを判断するためには、制御部50は、副走査方向yに対しても走査を行って、副走査方向yの画素の濃度差を確認する必要がある。これについては、後述する「主走査方向xの第2処理」において説明する。
【0099】
もし1回目のステップS603において、判定結果がNOであったときは、ここまで影は検出されていない。そのため、制御部50は、2回目のステップS604において、初めて影が検出されたと判断して、「ゼロ」であった画像影幅Wに1を加える。画像影幅WはW=0+1=1となり、画像影長Lは「ゼロ」のままである。画像影幅Wの条件も、画像影長Lの条件も満たされない状態で、ステップS606に移行する。
【0100】
そして2回目のステップS606において、制御部50は、画像影幅Wの条件も、画像影長Lの条件も満たされないと判断するため、ステップS606の判断結果はNOとなり、ステップS608に移行する。
【0101】
ステップS608において、制御部50は、(x(2),y(1))は最終列の画素ではないと判断するため、ステップS608の判定結果はNOとなり、ステップS610に移行する。
【0102】
ステップS610において、制御部50は、iに1を加える。すなわち、制御部50は、主走査方向xの3列目の画素の処理に移行するため、ステップS602に移行する。
もし2回目のステップS603において、制御部50は、(x(2),y(1))の画素のデータと、(x(2),y(2))の画素のデータの濃度差が所定の濃度差ΔD未満と判断したとする。そのとき、制御部50は、もし1回目のステップS603において、(x(1),y(1))の画素のデータと、(x(1),y(2))の画素のデータの濃度差が所定の濃度差ΔD以上であると判断したとしても、画像影幅WはW≧2の条件を満たさない。そのため、2回目のステップS603において、制御部50は、1回目のステップS603において検出された影は、原稿Pを第2の原稿P2と判定できる影ではない
と判断し、ステップS603の判定結果はNOとなり、ステップS605に移行する。
【0103】
そして、ステップS605において、制御部50は、画像影長Lに「ゼロ」を代入して画像影長LはL=0となり、画像影幅Wにも「ゼロ」を代入して画像影幅WもW=0となり、ステップS606に移行する。
【0104】
このようにして、「主走査方向xの第1処理」において、制御部50は、主走査方向xに処理を順に実行し、両画素のデータの濃度差が所定の濃度差ΔD以上であって、画像影幅WがW≧2である箇所を抽出する。画像影幅WがW≧2である箇所は、複数個所において抽出されるときもある。
【0105】
図9に示すフローチャートにおいて、次に制御部50は、(x(1),y(2))と(x(1),y(3))の画素のデータから(x(iz),y(2))と(x(iz),y(3))の画素のデータまでの処理を実行する。これを「主走査方向xの第2処理」という。制御部50は、画像影長Lの大きさを判断するために、副走査方向yに対してさらに1画素隣の1ライン分のデータを取得する。
【0106】
すなわち、ステップS608において、制御部50が「主走査方向xの第1処理」における最終画素である(x(iz),y(1))と副走査方向yに対して1画素隣の画素である(x(iz),y(2))のデータの確認を終了すると、ステップS608の判定結果はYESとなり、ステップS609に移行する。
【0107】
そしてステップS609において、制御部50は、処理した画素が原稿先端の画素かどうかを確認する。制御部50が処理した画素が、原稿先端の画素となるまでは、ステップS609の判定結果はNOとなり、ステップS611に移行する。
【0108】
ステップS611において、制御部50は、iを1に戻し、kに1を加算し、ステップS602に移行する。そして、ステップS602において、制御部50は「主走査方向xの第2処理」を実行する。
【0109】
それぞれの画素の副走査方向yにおいて、「主走査方向xの第1処理」において画像影幅WがW≧2となった箇所が、「主走査方向xの第2処理」においても画像影幅WがW≧2となったときは、その箇所は画像影長LがL=1+1=2となる。すなわち、ステップS606において、制御部50は、画像影幅WがW≧2、画像影長LがL≧2と判断するため、ステップS606の判定結果はYESとなり、ステップS607に移行する。
【0110】
ステップS607において、制御部50は、原稿Pが第2の原稿P2であると判定して図9に示す画像解析処理のサブルーチンを終了する。
上記の説明においては、簡単な例として「主走査方向xの第1処理」と「主走査方向xの第2処理」とによって、制御部50が、原稿Pを第2の原稿P2と判定できた場合を説明したが、これは図2に示す原稿有無センサー46が図4Aに示す読取領域SAに非常に近いときの稀な場合である。通常は、原稿有無センサー46が図4Aに示す読取領域SAに接触しないように、原稿有無センサー46と図4Aに示す読取領域SAとはある程度の距離をとって配置され、原稿Pの先端が原稿有無センサー46を通過してから図4Aに示す読取領域SAに達するまで、複数画素分の距離を有する。すなわち一般的な図2に示す原稿有無センサー46の配置においては、制御部50によって影が検出されるまで、ステップS608、ステップS609、ステップS611、ステップS602のループを複数回繰り返す。
【0111】
ステップS608において、制御部50が、主走査方向xの最終画素まで処理を行って
も、画像影長LがL≧2、かつ画像影幅WがW≧2の箇所が見つからないときは、ステップS608の判定結果はYESとなり、ステップS609に移行する。
【0112】
ステップS609において、制御部50が、処理される画素を原稿先端の画素と判断するまでは、ステップS609の判定結果はNOとなり、ステップS611へ移行する。
そしてステップS611において、制御部50は、処理する画素をさらに副走査方向yに1画素分ずらし、ステップS602に移行する。そして再度、制御部50は、主走査方向xに順に画素を処理し、ステップS606において、制御部50は、画像影長LがL≧2、かつ画像影幅WがW≧2の箇所を見つけることによって、ステップS606の判定結果がYESになるまで何度もループを繰り返す。
【0113】
ステップS606において、画像影長LがL≧2、かつ画像影幅WがW≧2の箇所が見つかったとき、ステップS606の判定結果はYESとなり、ステップS607に移行する。
【0114】
そして、ステップS607において、制御部50は原稿Pを第2の原稿P2と判定する。すなわち、制御部50は、原稿Pが第2の原稿P2であると判定して図9に示す画像解析処理のサブルーチンを終了する。
【0115】
そして、制御部50は、画像影長LがL≧2、かつ画像影幅WがW≧2の箇所を見つけることなく、制御部50の処理する画素が原稿Pの先端の画素に到達するときは、ステップS612において、制御部50は、原稿Pは第2の原稿P2ではないと判定する。すなわち、制御部50は、原稿Pが第2の原稿P2でないと判定して図9に示す画像解析処理のサブルーチンを終了する。
【0116】
<第2の原稿を検出したときの処理の流れ>
最初に、先に説明した図9に示すサブルーチンの画像解析処理において、第2の原稿P2が検出されたときに、図2に示す制御部50による処理が必要な理由について説明する。
【0117】
図2に示すように、画像読取装置11において、搬送モーター38の駆動に関連する部品の故障や原稿Pのジャムによって、搬送部31の駆動がロックして動かなくなったときに、搬送モーター38の電流値が上昇する。この状態は搬送モーター38の負荷が想定以上に上昇し、搬送部31が異常な状態であるため、画像読取装置11において、あらかじめ搬送モーター38の電流値の上限値が設定されている。そして画像読取装置11は、搬送モーター38で使用される電流値が設定された上限値を越えたときは、制御部50によって搬送部31を停止するように構成されている。
【0118】
しかし、第2の原稿P2が読み取られるときは、画像読取装置11が正常な状態でありながら、搬送モーター38で使用される電流値がその上限値を超える場合がある。代表的な第2の原稿P2であるプラスチックカードは、厚さが厚く剛性が高い。そのため、第2の原稿P2が搬送されるときには、搬送ローラー対35には大きな搬送力が必要であり、搬送モーター38が使用する電流値は大きい。
【0119】
図2に示すように、第2の原稿P2が搬送ローラー対35によって搬送されている状態で、読み取りが開始される。そのため、画像読取装置11で使用される電流値は、搬送モーター38が使用する電流値に対して、第1読取ユニット60Aと第2読取ユニット60Bとが使用する電流値が加わる。そして、厚さが厚く剛性が高い第2の原稿P2の先端が排出ローラー対36のニップに突入するときに、排出ローラー対36には大きな搬送力が必要であるため、第2の原稿P2が搬送ローラー対35だけによって搬送されていたとき
よりも、搬送モーター38にはさらに大きな電流が流れる。そのため、第2の原稿P2の先端が排出ローラー対36のニップに突入するときに、画像読取装置11全体の電流値は最大値を示す。そして、搬送モーター38の電流値が設定された上限値を越えるため、制御部50によって搬送部31が停止される。
【0120】
搬送モーター38で使用される電流値の上限値が設定されていないときは、第2の原稿P2の先端が排出ローラー対36のニップへの突入が完了し、排出ローラー対36による第2の原稿P2の搬送が開始されると、搬送モーター38が使用する電流値は小さくなって、搬送モーター38で使用される電流値の上限値を下回る。すなわち、第2の原稿P2の先端が排出ローラー対36のニップへ突入するその瞬間だけが、搬送モーター38の電流値が設定された上限値を越える。
【0121】
原稿Pが第2の原稿P2のときの搬送モーター38の負荷上昇は、搬送部31が異常な状態ではなく、想定範囲の正常な状態であるため、搬送部31の異常状態が誤検出された状態である。そのため、第2の原稿P2が検出されたときは、画像読取装置11の設定によって、異常状態の誤検出を発生させないように制御部50が構成される。
【0122】
また、第2の原稿P2の先端が排出ローラー対36のニップへ突入するときの搬送速度によっても、搬送モーター38が使用する電流値は変化する。また、図4Aに示す第1読取部40Aより取得した図8に示す画像データPD内における原稿Pの画像影長Lと画像影幅Wとの大きさも変化する。
【0123】
図10に示すように、原稿Pを速い搬送速度で読み取ったときの画像データPD内の影の図10に示す濃度差ΔDは、原稿Pを遅い搬送速度で読み取ったときの画像データPD内の影の図8に示す濃度差ΔDと比較して大きくなる。原稿Pを速い搬送速度で読み取ったときは画像影長Lや画像影幅Wが長くなる場合もある。そのため、制御部50は、原稿Pを読み取るときの搬送速度に応じて、所定の濃度差ΔD、所定の画像影長L、所定の画像影幅Wの設定を変更してもよい。
【0124】
制御部50は、読取解像度によって搬送速度が変わるときには、原稿Pを読み取るときの読取解像度に応じて、所定の濃度差ΔD、所定の画像影長L、所定の画像影幅Wの設定を変更してもよい。
【0125】
制御部50は、原稿Pを読み取るときの搬送速度に応じて、所定の濃度差ΔD、所定の画像影長L、所定の画像影幅Wの設定を自動で変更するのではなく、後述する図2に示す操作部での操作において、搬送速度に応じて所定の濃度差ΔD、所定の画像影長L、所定の画像影幅W、の設定を変更する設定メニューを設けてもよい。
【0126】
次に、図11に示すフローチャートを参照し、図2に示す制御部50が第2の原稿P2を検出するための初期設定のルーチンについて説明する。このルーチンは、画像読取装置11が設置されたときに実行されることが望ましい。例えば、画像読取装置11が設置されたときに、管理者またはユーザーは、図1に示す表示部70で画像読取装置11の状態を確認しながら、図1に示すモード選択スイッチ24と図1に示す設定変更スイッチ25とを使用する。そして、管理者またはユーザーは、制御部50が第2の原稿P2を検出するための条件と、制御部50が第2の原稿P2を検出したときに、画像読取装置11が実行する処理を設定する。
【0127】
ステップS701において、制御部50は、図2に示す操作部20の、管理者またはユーザーによる操作を受け付ける。すなわち、制御部50が第2の原稿P2を検出するための設定を開始し、ステップS702に移行する。
【0128】
ステップS702において、制御部50は、第2の原稿P2と判定する濃度差ΔDの閾値の設定の、管理者またはユーザーによる実行を受け付ける。例えば、管理者またはユーザーは、モード選択スイッチ24を複数回押して、画像読取装置11のモードを切り替え、操作部20に濃度差ΔDの閾値設定モードを表示する。そして、設定変更スイッチ25を複数回押して、濃度差ΔDの閾値を設定する。制御部50は、管理者またはユーザーによる濃度差ΔDの閾値の設定の終了を確認すると、ステップS703に移行する。
【0129】
ステップS703において、制御部50は、第2の原稿P2と判定する画像影幅Wの閾値の設定の、管理者またはユーザーによる実行を受け付ける。管理者またはユーザーは、第2の原稿P2と判定する画像影幅Wの閾値の設定を、ステップS702と同様の操作で実行する。制御部50は、管理者またはユーザーによる画像影幅Wの閾値の設定の終了を確認すると、ステップS704に移行する。
【0130】
ステップS704において、制御部50は、第2の原稿P2と判定する画像影長Lの閾値の設定の、管理者またはユーザーによる実行を受け付ける。管理者またはユーザーは、第2の原稿P2と判定する画像影長Lの閾値の設定を、ステップS702と同様の操作で実行する。制御部50は、管理者またはユーザーによる画像影長Lの閾値の設定の終了を確認すると、ステップS705に移行する。
【0131】
ステップS705において、制御部50は、原稿Pを第2の原稿P2と判定したときに図2に示す搬送モーター38の電流値が第3閾値uよりも超過したと判定する割り込み処理区間の設定の、管理者またはユーザーによる実行を受け付ける。管理者またはユーザーは、制御部50が原稿Pを第2の原稿P2と判定したときに、搬送モーター38の電流値が第3閾値uよりも超過したと判定する割り込み処理区間の設定を、ステップS702と同様の操作で実行する。
【0132】
第1設定の「通常設定」においては、スタートスイッチ22が押下されてから、図2に示す原稿有無センサー46が原稿Pの後端を検知するまでが、割り込み処理区間である。すなわち、制御部50は、原稿Pが正常に排出されると判断するまで、図2に示す搬送モーター38の電流値の監視を続ける。なお、原稿Pを連続して給送するモードの場合には、制御部50は、図2に示す原稿センサー45の検出がOFFになり、かつ原稿有無センサー46が原稿Pの後端を検知するまで監視を続ける。ユーザーが厚い原稿を使用しないときは、第1設定が望ましい。
【0133】
第2設定の「厚い原稿用設定」においては、スタートスイッチ22が押下されてから、原稿Pの先端が図2に示す排出ローラー対36に到達する直前までが、割り込み処理区間である。すなわち、制御部50は、第2の原稿P2の先端が、図4Aに示す第1読取部40Aの搬送方向Y1の下流側の搬送ローラーである排出ローラー対36の図2に示す駆動ローラー36Aに到達する前に、電流値超過検出処理を抑制する。プラスチックカードのような厚さが厚く剛性が高い第2の原稿P2は、図2に示す給送トレイ13に複数枚を積載して連続して給送されることができないため、制御部50が、図2に示す原稿有無センサー46の出力によって原稿Pの先端が排出ローラー対36の直前に達したと判断したときに、割り込み処理区間は終了する。
【0134】
ステップS705において、制御部50は、管理者またはユーザーによって割り込み処理区間の設定が終了されたことを確認すると、ステップS706に移行する。
ステップS706において、制御部50は、原稿Pを第2の原稿P2と判定したときの搬送モーター38の電流値超過検出処理における第3閾値uの設定の、管理者またはユーザーによる実行を受け付ける。管理者またはユーザーは、制御部50が原稿Pを第2の原
稿P2と判定したときの搬送モーター38の電流値超過検出処理における第3閾値uの設定を、ステップS702と同様の操作で実行する。
【0135】
第1設定の「通常設定」においては、制御部50は、第3閾値uが初期設定値に達したときに電流値超過の検出を有効にする。すなわち、搬送モーター38の電流値があらかじめ設定されている上限値を超えると、制御部50は図2に示す搬送部31が異常な状態と判断する。第1設定は、いわゆる通常の設定である。
【0136】
第2設定の「閾値緩和設定」においては、制御部50は、第3閾値uの設定を緩和する。すなわち、あらかじめ設定されている搬送モーター38の電流値の上限値である初期設定値よりも第3閾値uをやや大きくする。このときの第3閾値uの値は、搬送モーター38の電力特性や使用する第2の原稿P2の剛性によって最適な値が選択されることが望ましい。
【0137】
第3設定の「閾値無効設定」においては、制御部50は、第3閾値uの設定を無効とする。すなわち、あらかじめ設定されている搬送モーター38の電流値の上限値である第3閾値uを無効にし、搬送モーター38の電流値がいくら大きくなったときも、図2に示す制御部50は搬送モーター38を停止させない。
【0138】
すなわち、画像読取装置11の第3閾値uの設定が、第2設定または第3設定に設定された場合において、制御部50は、原稿Pを第2の原稿P2と判定したときに、画像読取装置11の電流値超過検出処理を抑制する。
【0139】
ステップS706において、制御部50は、管理者またはユーザーによって第3閾値uの設定が終了されたことを確認すると、ステップS707に移行する。
ステップS707において、制御部50は、管理者またはユーザーによってモード選択スイッチ24が押され、画像読取装置11のモードが動作モードに切り替えられたことを確認すると、図11に示す初期設定のルーチンを終了する。
【0140】
次に、図12に示すフローチャートを参照し、先に説明した図9に示すサブルーチンの画像解析処理において、第2の原稿P2が検出されたときの、画像読取装置11における処理の流れを説明する。
【0141】
ステップS801において、先に説明した図9に示す画像解析処理のサブルーチンにおいて、図2に示す制御部50が第2の原稿P2を検出すると、ステップS801の判定結果はYESとなり、ステップS802に移行する。
【0142】
ステップS802において、制御部50は、図2に示す検出部26によって、画像読取装置11が、水平排出姿勢と傾斜排出姿勢とのどちらの状態であるかを検出する。画像読取装置11が、水平排出姿勢の状態でない場合は、ステップS802の判定結果はNOとなり、ステップS811に移行する。
【0143】
ステップS811において、制御部50は、画像読取装置11の搬送動作を停止させる。画像読取装置11が水平排出姿勢の状態でない場合は、画像読取装置11は傾斜排出姿勢の状態であるため、排出部の排出角度φが急である。すなわち制御部50は、原稿Pが第2の原稿P2と判定され、かつ検出部26によって排出角度φが急と検出されたときに、原稿Pの搬送を停止し、ステップS812に移行する。
【0144】
ステップS812において、制御部50は、図1に示す表示部70に、画像読取装置11の姿勢を水平排出姿勢に切り替えるようにメッセージを表示して、ユーザーに対して画
像読取装置11の姿勢の変更を促し、ステップS813に移行する。
【0145】
ステップS813において、制御部50は、検出部26によって排出角度φが急ではないと検出する、すなわち制御部50は、画像読取装置11の姿勢が水平排出姿勢に切り替えられたことを確認すると、ステップS813の判定結果はYESとなり、ステップS814に移行する。
【0146】
ステップS814において、制御部50は、表示部70に、搬送動作を再開してもよいかどうかの確認メッセージを表示させ、ステップS815に移行する。
ステップS815において、制御部50は、図1に示すスタートスイッチ22を押されたことを確認すると、読み取り動作を再開し、ステップS803に移行する。
【0147】
ステップS802において、制御部50は、画像読取装置11の姿勢が水平排出姿勢であると判断すると、ステップS802の判断結果はYESとなり、ステップS803に移行する。
【0148】
ステップS803において、制御部50は、電流値超過検出処理の閾値の設定が有効にされていることを確認すると、ステップS803の判定結果はYESとなり、ステップS804に移行する。すなわち、図11に示すステップS706において、制御部50は、電流値超過検出処理の閾値の設定が、第1設定または第2設定に設定されていることを確認すると、ステップS803の判定結果はYESとなり、ステップS804に移行する。
【0149】
ステップS804において、制御部50は、原稿Pが搬送されている区間が、割り込み処理区間であるかどうかを確認する。すなわち、制御部50は、原稿Pが搬送されている区間が、ステップS706において設定されている割り込み処理区間であるかどうかを確認する。そして、制御部50は、原稿Pが搬送されている区間が、割り込み処理区間であることを確認すると、ステップS804の判定結果はYESとなり、ステップS805に移行する。
【0150】
ステップS805において、制御部50は、搬送モーター38の電流値が第3閾値uを超過しないかどうかの監視を開始する。搬送モーター38の電流値が第3閾値uを超過しない状態のときは、ステップS805の判定結果はYESとなり、ステップS806に移行する。
【0151】
ステップS806において、制御部50は、割り込み処理区間の終了を確認すると、ステップS806の判定結果はYESとなり、ステップS807に移行する。制御部50が割り込み処理区間の終了を確認するまでは、ステップS806の判定結果はNOとなり、ステップS805に移行する。そして制御部50は、搬送モーター38の電流値が第3閾値uを超過しないかどうかの監視を継続する。
【0152】
ステップS807において、制御部50は、定刻までに原稿Pの後端が図2に示す原稿有無センサー46を通過するかどうかを監視する。すなわち制御部50は、通常のジャム検知を実行する。定刻までに原稿Pの後端が原稿有無センサー46を通過したときに、制御部50は、原稿Pが正常に図2に示す排出トレイ14に排出されたと判断する。そしてステップS807の判定結果はYESとなり、ステップS808に移行する。
【0153】
ステップS808において、制御部50は、表示部70によって読み取りが正常終了したことを表示させ、図12に示すルーチンを終了する。
ステップS805において、制御部50は、割り込み処理区間内において、搬送モーター38の電流値が第3閾値uを超過したことを確認すると、ステップS805の判定結果
はNOとなり、ステップS809に移行する。
【0154】
ステップS809において、制御部50は、画像読取装置11の搬送動作を停止させ、ステップS810に移行する。
ステップS810において、制御部50は、図1に示す表示部70によって、画像読取装置11において搬送できない原稿であることを示すメッセージを表示させて、ユーザーに対して画像読取装置11内で停止している原稿Pの除去を促し、図12に示すルーチンを終了する。
【0155】
ステップS801において、制御部50は、先に説明した図9に示す画像解析処理において、原稿Pが第2の原稿P2でないと判断すると、ステップS801の判断結果はNOとなり、ステップS807に移行する。そし制御部50は、通常のジャム検知を実行する。
【0156】
ステップS803において、制御部50は、電流値超過検出処理の閾値の設定が有効にされていないと確認すると、ステップS803の判定結果はNOとなり、ステップS807に移行する。すなわち、図11に示すステップS706において、制御部50が、電流値超過検出処理の閾値の設定が、第3設定に設定されていると確認すると、ステップS803の判定結果はNOとなり、ステップS807に移行する。そして制御部50は、通常のジャム検知を実行する。
【0157】
ステップS807において、制御部50が、定刻までに原稿Pの後端が図2に示す原稿有無センサー46を通過したことを確認すると、ステップS807の判定結果がYESとなり、ステップS808に移行する。
【0158】
ステップS808において、制御部50が、原稿Pが正常に図2に示す排出トレイ14に排出されたと判断し、表示部70によって読み取りが正常終了したことを表示させ、図12に示すルーチンを終了する。
【0159】
ステップS807において、制御部50が、定刻までに原稿Pの後端が図2に示す原稿有無センサー46を通過しないことを確認すると、ステップS807の判定結果はNOとなり、ステップS809に移行する。
【0160】
ステップS809において、制御部50は画像読取装置11の搬送動作を停止させ、ステップS810に移行する。
ステップS810において、制御部50は、図1に示す表示部70によって、画像読取装置11において搬送できない原稿であることを示すメッセージを表示させ、ユーザーに対して画像読取装置11内で停止している原稿Pの除去を促し、図12に示すルーチンを終了する。
【0161】
本実施形態の作用について説明する。
画像読取装置11が設置されるとき、または画像読取装置11によってプラスチックカードが初めて読み取られるときに、制御部50によって、図11に示すフローチャートの手順で初期設定が行われる。
【0162】
図11に示すステップS702~ステップS704において、制御部50によって、原稿Pを第2の原稿P2と判定されるときの、濃度差ΔD、画像影長Lの第1閾値m、画像影幅Wの第2閾値nが設定される。ユーザーは、濃度差ΔDを濃度差初期値d、第1閾値mをm=2、第2閾値nをn=2に設定する。
【0163】
図11に示すステップS705~ステップS706において、制御部50は、ユーザーによる入力結果に基づき、割り込み区間を通常設定から厚い原稿の搬送に対応する第2設定に切り替え、電流値超過検出処理の設定を通常設定から厚い原稿の搬送に対応する第2設定または第3設定に切り替える。ここでは、電流値超過検出処理の設定が第2設定に切り替えられたとして説明する。ユーザーは初期設定を終了する。
【0164】
図2に示すように、ユーザーは給送トレイ13にプラスチックカードである、例えば社員カードをセットする。そしてユーザーは、プラスチックカードの読み取りの処理を開始するために、図1に示す電源スイッチ21を押すと、図6に示す画像読取処理のルーチンが開始される。そして、ユーザーは図1に示すスタートスイッチ22を押す。制御部50は、原稿センサー45がONになっていることを確認すると、給送ローラー33によって、プラスチックカードを給送させる。給送トレイ13にセットされたプラスチックカードは1枚であるため、プラスチックカードは分離ローラー対34をそのまま通過する。
【0165】
プラスチックカードが搬送ローラー対35を通過すると、プラスチックカードの先端が不図示のレバーを押すことで、原稿有無センサー46がONになる。制御部50は、原稿有無センサー46の検知信号に基づき、原稿Pの先端が搬送ローラー対35を通過したことを検知する。そのタイミングで、第1読取部40Aが原稿Pの裏面の読み取り処理を開始し、同時に、図2に示す制御部50によって図9に示す画像解析処理が開始される。
【0166】
図2に示すように、プラスチックカードの先端が原稿有無センサー46を通過したときは、プラスチックカードの先端は、図4Aに示す第1ガイド面28Aまたは図4Aに示す第2ガイド面28Bに達していないため、第1ガイド面28Aと第2ガイド面28Bとの距離は、図4Aに示す設定ギャップtaのまま変化がない。そのため、図8に示すように、第1読取部40Aの画像データPDの主走査方向xの最初の数ラインは第1背景板43Bの画像データとなる。
【0167】
図4Aに示すように、プラスチックカードの先端が、第1ガイド面28Aまたは第2ガイド面28Bに達すると、プラスチックカードの先端は、付勢されている側の第2ガイド面28Bを押し上げる。すなわち、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの相対角度ψが搬送方向Y1に対して設定ギャップtaの上流側が広がる方向に、第2ガイド面28Bが変位する。第1読取部40Aと第1背景部39Bとの少なくともどちらか一方が、他方に対して、付勢されることによって、設定ギャップtaよりも厚い第1の原稿P1がギャップを通過するときには、第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップが設定ギャップtaよりも広がる状態が容易に形成される。本実施形態においては、第1背景部39Bが第1読取部40Aに対して付勢される。
【0168】
図4Aに示すように、プラスチックカードの先端が、付勢されている側の第2ガイド面28Bを押し上げる瞬間か、その位置よりもプラスチックカードの先端が少し進んだ辺りが、相対角度ψが一番大きくなる。第1発光部41Aから発する光が第1背景部39Bに当たって拡散反射されるときに、第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップが設定ギャップtaよりも広がり、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの相対角度ψが大きくなることによって、第1背景部39Bが光を拡散する範囲が搬送方向Y1の上流側に広くなる。すなわち、第1発光部41Aから発する光が第1背景部39Bに当たる角度が、図3Aに示す入射角度θ1から図4Aに示す入射角度θ2に変化するため、拡散反射の角度が(θ2-θ1)だけ上流側に傾き、第1発光部41Aと第1背景部39Bとの距離も大きくなる。そのため、第1背景部39Bで反射した光が、設定ギャップtaが広くなった上流側に漏れる量が増え、第1受光部42Aに到達する光の量が少なくなる。
【0169】
図8に示すように、プラスチックカードの先端が、付勢されている側の第2ガイド面2
8Bを押し上げたときから、画像データの濃度は暗くなる。すなわち、画像データPDの主走査方向xの最初の数ラインの後の画素は、第1背景板の画像データよりも高い濃度を示す。主走査方向xの最初の数ラインの第1背景板の画像データと、濃度が暗くなったときの画像データとの濃度差が、初期設定において設定した濃度差ΔD以上のときは、これを影という。影かどうかの判断は図9に示す画像解析処理のステップS603で実行される。この濃度差ΔDが発生する原理を使用することによって、画像読取装置11は、原稿の厚さの検出に対して専用のセンサーを必要としない。
【0170】
図4Aに示すように、プラスチックカードが搬送されて、プラスチックカードの先端がさらに進むと、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの相対角度ψが変化する。しかし、プラスチックカードの先端が物理的に第2ガイド面28Bを押し上げており、画素の大きさは数十μm程度と小さいため、相対角度ψは急には変化しない。そのため、画像データPDに、濃度差ΔD以上の部分が検出されるときは、連続した濃度差ΔD以上の部分が検出される。
【0171】
図9に示すサブルーチンのステップS603において、本例では濃度差ΔDを濃度差初期値dとしたため、最初の数ラインの第1背景板の画像データに対して隣接した画素において、濃度差初期値d以上の濃い濃度のデータが検出されたときに、制御部50は画像データPDのうち第1背景部39Bを読み取った部分に影があると判断する。
【0172】
プラスチックカードの先端が第1読取位置SP1に近づくときに、相対角度ψが大きくなる場合と、小さくなる場合とがある。第1読取部40Aと第1背景部39Bとを付勢する位置や方式によって異なるが、相対角度ψが一時的に大きくなったときも、プラスチックカードの先端が、第1ガイド面28Aと第2ガイド面28Bとの間をさらに進むにつれて相対角度ψは小さくなる。そして、本実施形態においては、図4Bに示すように、プラスチックカードの先端が第2読取位置SP2を通過するときには、相対角度ψはψ=0となる。すなわち、プラスチックカードの裏面は第1ガイド面28Aに、表面は第2ガイド面28Bに密着して、プラスチックカードは搬送される。なお、プラスチックカードの先端が第2読取位置SP2を通過するときも、相対角度ψがψ=0とならないように、画像読取装置11が構成されてもいい。
【0173】
図9に示す画像解析処理のステップS603において、画像データPDのうち第1背景部39Bを読み取った部分に影があると判断されたときは、図9に示す画像解析処理のステップS606において、制御部50は画像影長Lと画像影幅Wの判断を実行する。本例では画像影長Lの第1閾値mをm=2、画像影幅Wの第2閾値nをn=2とした。第1閾値mの大きさを変更することによって、制御部50が検知する原稿Pの厚さを変更できる。厚いプラスチックカードは第2ガイド面28Bを押し上げる距離が大きくなるため、画像影長Lが長くなる。逆に、薄いプラスチックカードは第2ガイド面28Bを押し上げる距離が小さくなるため、画像影長Lが短くなる。また、原稿Pの厚さによっては、画像影幅Wも変化する場合がある。
【0174】
また、第2閾値nの大きさを変更することによってゴミ等の誤検知の虞が少なくできる。制御部50が背景板43A,43Bを用いてシェーディング補正用の基準値を得た後に、第1ガイド面28Aの表面にゴミが貼りついたときには、副走査方向yに連続して濃度差初期値d以上の濃い濃度の部分が検出される場合がある。制御部50は、主走査方向xにも所定の濃度差ΔD以上である連続した部分が含まれることを確認することによって、ゴミ等の誤検知の虞が少なくなる。
【0175】
図9に示す画像解析処理は、画像データPDの原稿先端までの画素が確認されたところで、制御部50は、原稿Pが第2の原稿P2と判定できる影が見つかっても、第2の原稿
P2と判定できる影が見つからなくても処理を終了する。原稿Pが第2の原稿P2と判定されたときは、原稿Pの先端は、図4Aに示す第1ガイド面28Aと図4Aに示す第2ガイド面28Bとの間を搬送されている最中である。すなわち、原稿Pの先端はまだ図2に示す排出ローラー対36に到達していない。
【0176】
図9に示す画像解析処理において、原稿Pが第2の原稿P2と判定できる影が見つかったときは、図12に示すルーチンを実行する。制御部50は、図2に示す検出部26の出力を確認する。検出部26によって図2に示す排出角度φが急と検出された場合には、制御部50は、原稿Pの搬送を停止する。制御部50は、図1に示す表示部70によって、画像読取装置11の姿勢を水平排出姿勢に切り替えるようにメッセージを表示させ、ユーザーに対して画像読取装置11の姿勢の変更を促す。図2に示すように、ユーザーは、図2に示す排出トレイ14への原稿Pの排出角度φを変更する排出角度変更機構71によって、排出トレイ14への原稿Pの排出角度φを変更することができる。図5に示すように、ユーザーが画像読取装置11の姿勢を水平排出姿勢にすることによって、原稿Pが排出されるときに、原稿Pの先端が排出トレイ14の表面に当たらない。
【0177】
図5に示すように、ユーザーが画像読取装置11の姿勢を水平排出姿勢に切り替えると、検出部26によって排出角度φが急ではないと検出される。制御部50は、表示部70に、搬送動作を再開してもよいかどうかの確認メッセージを表示する。そして、ユーザーが図1に示すスタートスイッチ22を押すと、搬送動作が再開される。
【0178】
初期設定において、割り込み区間の設定は、厚い原稿の搬送に対応する第2設定に設定され、電流値超過検出処理の設定は、電流値超過の閾値を緩和する第2設定に設定されている。
【0179】
図9に示す画像解析処理において、制御部50が、原稿Pを第2の原稿P2と判定したときは、原稿Pの先端はまだ図2に示す排出ロール対36に到達していないため、制御部50は、第2の原稿P2の先端が図4Aに示す第1読取部40Aの搬送方向Y1の下流側の図2に示す搬送ローラー対35に到達する前に、電流値超過検出処理を抑制する。ユーザーが、電流値超過検出処理の設定を電流値超過の第3閾値uを緩和する第2設定に設定しているため、制御部50は、電流値超過の第3閾値uを緩和する。制御部50が、第3閾値uを緩和したことによって、電流値が第3閾値uの通常設定の初期値を超過したときも、プラスチックカードの先端が、排出ロール対36を通過することができる。
【0180】
そして、制御部50は原稿Pを第2の原稿P2と判定し、原稿Pの先端が排出ロール対36に到達する直前から原稿Pの排出が終了するまでの区間だけ、電流値超過検出処理を緩和するため、原稿Pを第2の原稿P2と判定するまでは、電流値超過検出処理を緩和しないで実行する。そのため、ほとんどの区間において電流値超過検出処理を緩和しないで処理を実行することができる。さらに、ユーザーによって入力された設定は、電流値超過検出処理を緩和する設定であって、閾値を無効にする設定ではないため、想定以上の電流が図2に示す搬送モーター38に流れたときは、制御部50は図2に示す搬送部31を停止することができる。
【0181】
搬送モーター38の電流値が想定できないときには、ユーザーは、電流値超過検出処理の設定を電流値超過の閾値を無効化する第3設定に設定してもよい。そのときは、電流値がさらに大きいときでも、プラスチックカードは図2に示す排出ロール対36を通過することができる。
【0182】
画像読取装置11において、低解像度モード等の搬送速度が遅くなるモードがあるときは、原稿Pが読み取られるときの搬送速度に応じて、制御部50は自動で所定の濃度差Δ
Dを変更してもよい。
【0183】
図4Aに示すように、原稿Pが読み取られるときの搬送速度に応じて、設定ギャップtaよりも厚い原稿P1の先端が第1読取部40Aや第1背景部39Bに当たるときの衝撃が変化する。そのため、第1受光部42Aから発する光が第1背景部39Bに当たって拡散反射されるときに、第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップや角度が搬送速度に応じて変化する。それによって、原稿Pが読み取られるときの搬送速度に応じて、第1背景部39Bの画像の濃度が変化する。
【0184】
本実施形態においては、原稿Pが搬送経路29を一回通過することで、原稿Pの両面が読み取られる。上記に記載した作用は、最初に読み取りを実行する第1読取部40Aにおいても、次に読み取りを実行する第2読取部においても、同様に得られる。
【0185】
本実施形態の効果について説明する。
(1)設定ギャップtaよりも厚い第1の原稿P1を読み取るとき、第1の原稿P1の先端が、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの間の第1読取位置SP1を通過する前に、第1読取部40Aと、第1背景部39Bとの少なくともどちらか一方が変位する。第1発光部41Aから発する光が第1背景部39Bに当たって拡散反射されるときに、第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップが設定ギャップtaよりも広がっていることによって、第1背景部39Bが光を拡散する範囲が広くなるため、第1受光部42Aに到達する光の量が少なくなる。そして、第1受光部42Aに到達する光の量が少なくなって、制御部50は、第1読取部40Aの読み取り結果に基づき、第1背景部39Bの濃度が暗いと認識する。そのため、画像読取装置11は、専用のセンサーを必要とせず、原稿Pが第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップを通過するときの第1背景部39Bの画像の濃度によって、原稿Pが第1の原稿P1かどうかを検知できる。
【0186】
(2)第1の原稿P1を読み取るとき、第1の原稿P1の先端が読取位置SP1を通過する前に、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの相対角度ψが、搬送方向Y1に対して設定ギャップtaの上流側が広がる方向に変位する。第1発光部41Aから発する光が第1背景部39Bに当たって拡散反射されるときに、搬送方向Y1に対して設定ギャップtaの上流側が広がる方向に、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの相対角度ψが大きくなる。それによって、第1背景部39Bが光を拡散する範囲が搬送方向Y1上流側に移動して受光部から遠ざかるため、第1受光部42Aに到達する光の量が少なくなる。そして、第1受光部42Aに到達する光の量が少なくなって、制御部50は、第1読取部40Aの読み取り結果に基づき、第1背景部39Bの濃度が暗いと認識する。そのため、画像読取装置11は、専用のセンサーを必要とせず、原稿Pが第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップを通過するときの第1背景部39Bの画像の濃度によって、原稿Pが第1の原稿P1かどうかを検知できる。
【0187】
(3)設定ギャップtaは、第1読取部40Aと第1背景部39Bとの少なくともどちらか一方が、他方に対して付勢されることによって形成される。第1読取部40Aと第1背景部39Bとの少なくともどちらか一方が、他方に対して付勢されることによって、設定ギャップtaよりも厚い第1の原稿P1が第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップを通過するときに、第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップが設定ギャップtaよりも広がる状態が容易に形成される。そして、設定ギャップtaよりも厚い第1の原稿P1が、第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップを通過するときは、そのギャップが設定ギャップtaよりも広がるため、第1受光部42Aに到達する光の量が少なくなって、制御部50は、第1背景部39Bの濃度が暗いと認識する。そのため、画像読取装置11は、専用のセンサーを必要とせず、原稿Pが第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップを通過するときの第1背景部39Bの画像の濃度によって、原稿
Pが第1の原稿P1かどうかを検知できる。
【0188】
(4)原稿Pの先端が第1読取位置SP1に達する前に読み取った第1背景部39Bの画像データPDに、副走査方向yの画素の濃度差が所定の濃度差ΔD以上となる部分が含まれるときに、制御部50は、原稿Pを第2の原稿P2と判定する。設定ギャップtaよりも厚く、さらに第1の原稿P1よりも厚い第2の原稿P2が第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップを通過するときに、原稿Pの先端が第1読取位置SP1に達する前に第1受光部42Aに到達する光の量がさらに少なくなる。そのため、第1読取部40Aが読み取った第1背景部39Bの画像データに副走査方向yの画素の濃度差が所定の濃度差ΔD以上である部分が含まれる。それによって、画像読取装置11は、専用のセンサーを必要とせず、原稿Pが第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップを通過するときの第1背景部39Bの画像の濃度によって、原稿Pが第1の原稿P1よりも厚い第2の原稿P2かどうかを検知できる。
【0189】
(5)制御部50は、画像データPDにおいて所定の濃度差ΔD以上の画素が副走査方向yに連続する数が第1閾値m以上であるときに、原稿Pを第2の原稿P2と判定する。設定ギャップtaよりも厚い原稿P1が第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップを通過するときに、第1受光部42Aに到達する光の量が少なくなる。そのため、原稿Pの先端が第1読取位置SP1に達する前に読み取った第1背景部39Bの画像データPDにおいて、副走査方向yに所定の濃度差ΔD以上である連続した部分が含まれる。それによって、画像読取装置11は、専用のセンサーを必要とせず、原稿Pが第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップを通過するときの第1背景部39Bの画像の濃度差によって、原稿Pが第1の原稿P1かどうかを検知できる。さらに、第1の原稿P1よりも厚い第2の原稿P2は第2ガイド面28Bを押し上げる距離が大きくなるため、画像データPDにおいて画像影長Lが長くなる。逆に、より薄い原稿は第2ガイド面28Bを押し上げる距離が小さくなるため、画像データPDにおいて画像影長Lが短くなる。すなわち、第1閾値mの大きさによって検知する原稿Pの厚さを変更できる。
【0190】
(6)制御部50は、所定の濃度差ΔD以上の画素が副走査方向yに連続する数が第1閾値m以上である画素列が、主走査方向xに連続する数が第2閾値nであるときに、原稿Pを前記第2の原稿P2と判定する。設定ギャップtaよりも厚い原稿P1が第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップを通過するときに、第1受光部42Aに到達する光の量が少なくなる。そのため、原稿Pの先端が第1読取位置SP1に達する前に読み取った第1背景部39Bの画像データPDにおいて、主走査方向xにも画素の濃度差が所定の濃度差ΔD以上である連続した部分が含まれる。そのため、画像読取装置11は、専用のセンサーを必要とせず、原稿Pが第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップを通過するときの第1背景部39Bの画像の濃度によって、原稿Pが第2の原稿P2かどうかを検知できる。さらにその画像データPDにおいて、主走査方向xにも所定の濃度差ΔD以上である連続した部分が含まれることを確認することによって、ゴミ等の誤検知の虞が少なくなり、原稿Pが第2の原稿P2かどうかを検知する確度が向上する。
【0191】
(7)原稿Pを読み取るときの搬送速度に応じて、所定の濃度差ΔDを変更する。原稿Pを読み取るときの搬送速度に応じて、設定ギャップtaよりも厚い原稿P1の先端が第1読取部40Aや第1背景部39Bに当たるときの衝撃が変化するため、第1受光部42Aから発する光が第1背景部39Bに当たって拡散反射されるときに、第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップが搬送速度に応じて変化する。そのため、原稿Pを読み取るときの搬送速度に応じて、第1背景部39Bの画像の濃度が変化する。制御部50によって原稿Pが第2の原稿P2かどうかを検知されるときの濃度差ΔDを、制御部50が、搬送速度に適した濃度差ΔDに変更する。それによって、読み取り解像度の変更等によって搬送速度が変化したときも、原稿Pが読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップ
を通過するときの第1背景部39Bの画像の濃度によって、制御部50が、原稿Pが第2の原稿P2かどうかを検知する確度が向上する。
【0192】
(8)制御部50は、原稿Pを第2の原稿P2と判定したときに、画像読取装置11の電流値超過検出処理を抑制する。制御部50が、原稿Pを第2の原稿P2と判定したときに、画像読取装置11の電流値超過検出処理を抑制することによって、搬送部31の駆動に関連する部品の故障や原稿Pのジャムではないときに、電流値が不足して搬送部31が動かなくなる虞が少なくなる。
【0193】
(9)制御部50は、第2の原稿P2の先端が第1読取部40Aの搬送方向Y1の下流側の搬送ローラー対35に到達する前に、電流値超過検出処理を抑制する。制御部50が、原稿Pを第2の原稿P2と判定したときに、画像読取装置11の電流値超過検出処理を抑制することによって、搬送部31の駆動に関連する部品の故障や原稿Pのジャムではないときに、電流値が不足して搬送部31が動かなくなる虞が少なくなる。さらに、制御部50は、第2の原稿P2の先端が第1読取部40Aの搬送方向Y1の下流側の搬送ローラー対35に到達するまでは電流値超過検出処理を実行することによって、原稿Pを第2の原稿P2と判定したときも、搬送部31の駆動に関連する部品の故障の検出や原稿Pのジャムの検出を実行することができる。
【0194】
(10)制御部50は、原稿Pが第2の原稿P2と判定され、かつ検出部26によって排出角度φが急と検出されたときに、原稿Pの搬送を停止する。第2の原稿P2は、剛性が高く撓み難いため、排出角度φが急と検出されたときに、制御部50は、原稿Pの搬送を停止することによって、搬送力の不足や原稿Pが変形する虞が少なくなる。
【0195】
(11)排出角度変更機構71は、画像読取装置11の姿勢を水平排出姿勢と傾斜排出姿勢とで切り換える機構である。制御部50が、原稿Pを第2の原稿P2と判定したときに、排出トレイ14への原稿Pの排出角度φを変更する排出角度変更機構71によって、画像読取装置11の姿勢を水平排出姿勢と傾斜排出姿勢とで切り換えることができる。第2の原稿P2は、剛性が高く撓み難い。ユーザーが画像読取装置11の姿勢を水平排出姿勢にすることによって、原稿Pが排出されるときに、原稿Pの先端が排出トレイ14の表面に当たらないため、搬送力の不足によって排出されない虞や、原稿Pが変形する虞が少なくなる。
【0196】
(12)原稿Pが搬送経路29を一回通過することで原稿Pの両面が読み取られる。その場合においても、第1発光部41Aから発する光が第1背景部39Bに当たって拡散反射されるときに、第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップが設定ギャップtaよりも広がっていることによって、第1背景部39Bが光を拡散する範囲が広くなるため、第1受光部42Aに到達する光の量が少なくなる。そして、第1受光部42Aに到達する光の量が少なくなって、制御部50は、第1背景部39Bの濃度が暗いと認識する。そのため、画像読取装置11は、専用のセンサーを必要とせず、原稿Pが第1読取部40Aと第1背景部39Bとのギャップを通過するときの第1背景部39Bの画像の濃度によって、原稿Pが第2の原稿P2かどうかを検知できる。
【0197】
(13)原稿Pが搬送経路29を一回通過することで、原稿Pの両面が読み取られる。その場合においても、第2発光部41Bから発する光が第2背景部39Aに当たって拡散反射されるときに、第2読取部40Bと第2背景部39Aとのギャップが設定ギャップtaよりも広がることによって、第2背景部39Aが光を拡散する範囲が広くなるため、第2受光部42Bに到達する光の量が少なくなる。そして、第2受光部42Bに到達する光の量が少なくなって、制御部50は、第2背景部39Aの濃度が暗いと認識する。そのため、画像読取装置11は、専用のセンサーを必要とせず、原稿Pが第2読取部40Bと第
2背景部39Aとのギャップを通過するときの第2背景部39Aの画像の濃度によって、原稿Pが第2の原稿P2かどうかを検知できる。
【0198】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・設定ギャップtaを変更できる構成としてもよい。設定ギャップtaが変更されることによって、制御部50が、原稿Pを第1の原稿P1として検出する厚さを変更することができる。
【0199】
・画像読取装置によって読み取り可能とされる原稿のうちで最も剛性の低い原稿の先端が読取領域SAを通過するときに、設定ギャップtaを変位させられる程度の非常に小さな荷重によって、第1ガイド面28Aと第2ガイド面28Bとが付勢されるときは、設定ギャップtaは「ゼロ」であってもよい。搬送された原稿Pが先端部で第1読取部40Aと第1背景部39Bとを押し広げて両者のギャップが設定ギャップta=0よりも広がって原稿Pを搬送できればよい。
【0200】
・設定ギャップtaは読取領域SAの範囲で一定値でなくてもよい。すなわち、第1ガイド面28Aと第2ガイド面28Bとが、小さな角度を有して対向してもよい。例えば、原稿Pの先端が読取領域SAに入りやすいように、被写界深度の範囲で原稿Pの先端が読取領域SAに入る側のギャップを、原稿Pの先端が読取領域SAから出る側のギャップと比べて、大きくなるように構成してもよい。
【0201】
・本実施形態では、第1の原稿P1が読取領域SAに入ったときに、搬送方向Y1において下流側の設定ギャップtaが、第1の原稿P1が読取領域SAに入る前と比べて狭くなっている。しかし、読取領域SAの範囲内において設定ギャップtaが、第1の原稿P1が読取領域SAに入る前と比べて、狭くならないように第2読取ユニット60Bを構成してもよい。
【0202】
・原稿Pが通過していないときの第2読取部40Bと第2背景部39Aとのギャップの傾き角度を変更できる構成としてもよい。原稿Pが通過していないときの傾き角度を変更することによって、原稿Pが薄いときに第2読取部40Bと第2背景部39Aとのギャップの通過し易さを調整することができる。ただし、あまり相対角度ψを大きくすると、原稿Pがバタつき易くなるため、ピントが甘くなる。
【0203】
・本実施形態においては、付勢部材49は搬送方向Y1における第2読取ユニット60Bのほぼ中央に配置されているが、付勢部材49の搬送方向Y1における位置が変更されてもよい。付勢部材49の位置がより上流のときは、相対角度ψが少なくなり、付勢部材49の位置がより下流のときは、相対角度ψが大きくなる。
【0204】
・付勢部材49は本実施形態の搬送方向Y1における第2読取ユニット60Bのほぼ中央位置よりもさらに下流に配置されてもよい。第2読取部40Bの読み取り開始位置においても、第2読取ユニット60Bが傾き易くなるため、第2読取部40Bにおいても影の検出の感度を上げることができる。
【0205】
・第2読取部40Bはなくてもよい。つまり、読取部を1つだけ有する画像読取装置でもよい。
・付勢部材49は搬送方向Y1に並べて複数配置されてもよい。上流側の付勢部材49と下流側の付勢部材49の付勢力を調整することによって、第2読取ユニット60Bが傾く位置を調整することができる。
【0206】
・本実施形態においては、制御部50は、所定の濃度差ΔD以上である部分が副走査方向yに連続した画像データである場合に、第2の原稿P2と判定している。しかし、画像データは副走査方向yに所定の濃度差ΔD以上で徐々に濃くなってもいいし、隣接した画素に対して所定の濃度差ΔD以上で画素が濃くなり、その濃くなった画素に対してさらにほぼ同じ濃さの画素が連続したときに、制御部50は、第2の原稿P2と判定してもよい。
【0207】
・所定の濃度差ΔD以上である部分が主走査方向xに連続していなくても、1ライン中に濃度差ΔD以上の画素が所定の割合以上含まれているときに、制御部50は、原稿Pを第2の原稿P2と判定してもよい。
【0208】
・制御部50は、取得された画像データPDより、主走査方向xに対する影の傾き角度を検出することによって、画像データPDの傾き補正を行ってもよい。
・制御部50によって検出された影の大きさによって、電流値超過検出処理を抑制する方法を変更してもよい。例えば、制御部50は、検出された影が大きいときは電流値超過検出を無効にし、検出された影が小さいときは電流値超過検出を無効にせず、検出の閾値である第3閾値uを変更するようにしてもよい。
【0209】
・本実施形態においては、排出角度変更機構71は、画像読取装置11の姿勢を水平排出姿勢と傾斜排出姿勢とで切り換える機構であるが、排出角度変更機構71は、画像読取装置11の本体支持部材16の高さを変更する機構であってもよい。排出角度変更機構71は、画像読取装置11全体の高さが変更され、排出トレイ14の先端が設置面GDに付かない状態にされることによって、排出角度を搬送経路と平行にしてもよい。例えば、自身を回転させることによってネジが回転して画像読取装置11を持ち上げるアジャスターフットを本体支持部材16の底に複数設けてもよいし、ジャッキで画像読取装置11を持ち上げる構造としてもよい。
【0210】
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
(A)画像読取装置は、発光部と受光部を有し搬送方向に搬送される原稿を読み取る読取部と、前記読取部との間の隙間としての設定ギャップを有して対向し前記読取部が読み取った画像の画像データの色補正に用いられる基準色を呈する背景部と、前記読取部を制御する制御部と、を備え、前記設定ギャップよりも厚い原稿を読み取るとき、前記原稿の先端が前記読取部と前記背景部との間の読取位置を通過する前に、前記読取部と前記背景部との少なくともどちらか一方が変位し、前記制御部は、前記読取部が原稿を読み取った画像の画像データのうち前記背景部を読み取った部分の濃度差に基づいて前記原稿の厚さを判別する。
【0211】
この構成によれば、発光部から発する光が背景部に当たって拡散反射されるときに、読取部と背景部とのギャップが設定ギャップよりも広がっていることによって、背景部が光を拡散する範囲が広くなるため、受光部に到達する光の量が少なくなる。そして、設定ギャップよりも厚い原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときに、そのギャップが設定ギャップよりも広がり、受光部に到達する光の量が少なくなって、読取部は背景部の濃度が暗いと認識する。そのため、画像読取装置は、専用のセンサーを必要とせず、原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときの背景部の画像の濃度によって、原稿の厚さを判別できる。
【0212】
(B)上記画像読取装置において、前記原稿を読み取るとき、前記原稿の先端が前記読取位置を通過する前に、前記読取部と前記背景部との相対角度が、搬送方向に対して前記設定ギャップの上流側が広がる方向に変位してもよい。
【0213】
この構成によれば、発光部から発する光が背景部に当たって拡散反射されるときに、搬送方向に対して設定ギャップの上流側が広がる方向に、読取部と背景部との相対角度が大きくなる。それによって、背景部が光を拡散する範囲が搬送方向上流側に移動して受光部から遠ざかるため、受光部に到達する光の量が少なくなる。そして、設定ギャップよりも厚い原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときに、そのギャップが設定ギャップよりも広がり、受光部に到達する光の量が少なくなって、読取部は背景部の濃度が暗いと認識する。そのため、画像読取装置は、専用のセンサーを必要とせず、原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときの背景部の画像の濃度によって原稿の厚さを判別できる。
【0214】
(C)上記画像読取装置において、前記設定ギャップは、前記読取部と前記背景部との少なくともどちらか一方が、他方に対して付勢されることによって形成されてもよい。
この構成によれば、読取部と背景部との少なくともどちらか一方が、他方に対して付勢されることによって、設定ギャップよりも厚い原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときに、読取部と背景部とのギャップが設定ギャップよりも広がる状態が容易に形成される。そして、設定ギャップよりも厚い原稿が、読取部と背景部とのギャップを通過するときは、そのギャップが設定ギャップよりも広がるため、受光部に到達する光の量が少なくなって、読取部と背景部の濃度が暗いと認識する。そのため、画像読取装置は、専用のセンサーを必要とせず、原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときの背景部の画像の濃度によって、原稿の厚さを判別できる。
【0215】
(D)上記画像読取装置において、前記制御部は、前記画像データを解析処理し、前記搬送方向を副走査方向としたとき、前記制御部は、前記原稿の先端が前記読取位置に達する前に前記読取部が前記背景部を読み取った画像の画像データに、前記副走査方向の濃度差が所定の濃度差以上の部分が含まれると、当該原稿を所定厚さ以上の第2の原稿であると判定してもよい。
【0216】
この構成によれば、設定ギャップよりも厚い原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときに、原稿の先端が読取位置に達する前に読み取った背景部の画像データの受光部に到達する光の量が少なくなるため、画像データにおいて副走査方向に所定の濃度差以上である部分が含まれる。そのため、画像読取装置は、専用のセンサーを必要とせず、原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときの背景部の画像の濃度によって、原稿が第2の原稿かどうかを検知できる。
【0217】
(E)上記画像読取装置において、前記制御部は、前記画像データにおいて前記所定の濃度差以上の画素が前記副走査方向に連続する数が第1閾値以上であるときに、前記原稿を前記第2の原稿と判定してもよい。
【0218】
この構成によれば、設定ギャップよりも厚い原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときに、原稿の先端が読取位置に達する前に読み取った背景部の画像データの受光部に到達する光の量が少なくなるため、画像データにおいて副走査方向に所定の濃度差以上である連続した部分が含まれる。そのため、画像読取装置は、専用のセンサーを必要とせず、原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときの背景部の画像の濃度によって、原稿が第2の原稿かどうかを検知できる。さらに、第1閾値の大きさによって検知する原稿の厚さを変更できる。
【0219】
(F)上記画像読取装置において、前記搬送方向と直交する方向を主走査方向としたとき、前記制御部は、前記所定の濃度差以上の画素が前記副走査方向に連続する数が前記第1閾値以上である画素列が、前記主走査方向に連続する数が第2閾値以上であるときに、
前記原稿を前記第2の原稿と判定してもよい。
【0220】
この構成によれば、設定ギャップよりも厚い原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときに、原稿の先端が読取位置に達する前に読み取った背景部の画像データの受光部に到達する光の量が少なくなるため、画像データにおいて主走査方向にも所定の濃度差以上である連続した部分が含まれる。そのため、画像読取装置は、専用のセンサーを必要とせず、原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときの背景部の画像の濃度によって、原稿が第2の原稿かどうかを検知できる。さらに画像データにおいて主走査方向にも所定の濃度差以上である連続した部分が含まれることを確認することによって、ゴミ等の誤検知の虞が少なくなり、原稿が第2の原稿かどうかを検知する確度が向上する。
【0221】
(G)上記画像読取装置において、前記制御部は、前記原稿を読み取るときの搬送速度に応じて、前記所定の濃度差を変更してもよい。
この構成によれば、原稿を読み取るときの搬送速度に応じて、設定ギャップよりも厚い原稿の先端が読取部や背景部に当たるときの衝撃が変化するため、受光部から発する光が背景部に当たって拡散反射されるときに、読取部と背景部とのギャップが搬送速度に応じて変化する。そのため、原稿を読み取るときの搬送速度に応じて、背景部の画像の濃度が変化する。制御部は、原稿が第2の原稿かどうかを検知するときの搬送速度に適した濃度差に変更することによって、読み取り解像度の変更等によって搬送速度が変化したときも、原稿が読取部と背景部とのギャップを通過するときの背景部の画像の濃度によって、原稿が第2の原稿かどうかを検知する確度が向上する。
【0222】
(H)上記画像読取装置において、前記制御部は、前記原稿を前記第2の原稿と判定したときに、前記画像読取装置の電流値超過検出処理を抑制してもよい。
この構成によれば、原稿を第2の原稿と判定したときに、画像読取装置の電流値超過検出処理を抑制することによって、搬送部の駆動に関連する部品の故障や原稿のジャムではないときに、電流値が不足して搬送部が動かなくなる虞が少なくなる。
【0223】
(I)上記画像読取装置において、前記制御部は、前記第2の原稿の先端が前記読取部の前記搬送方向の下流側の搬送ローラーに到達する前に、前記電流値超過検出処理を抑制してもよい。
【0224】
この構成によれば、原稿を第2の原稿と判定したときに、画像読取装置の電流値超過検出処理を抑制することによって、搬送部の駆動に関連する部品の故障や原稿のジャムではないときに、電流値が不足して搬送部が動かなくなる虞が少なくなる。さらに、第2の原稿の先端が第1読取部の搬送方向の下流側の搬送ローラー対に到達するまでは電流値超過検出処理を実行することによって、原稿を第2の原稿と判定したときも、搬送部の駆動に関連する部品の故障の検出や原稿のジャムの検出を実行することができる。
【0225】
(J)上記画像読取装置において、前記読取部で読み取りが終了した前記原稿を排出する排出トレイと、前記排出トレイへの前記原稿の排出角度を変更する排出角度変更機構と、前記排出トレイへの前記原稿の排出角度を検出する検出部と、を備え、前記制御部は、前記原稿が前記第2の原稿と判定され、かつ前記検出部によって前記排出角度が急と検出されたときに、前記原稿の搬送を停止してもよい。
【0226】
この構成によれば、第2の原稿は、剛性が高く撓み難いため、排出角度が急と検出されたときに、原稿の搬送を停止することによって、搬送力の不足や原稿が変形する虞が少なくなる。
【0227】
(K)上記画像読取装置において、前記排出角度変更機構は、前記画像読取装置の姿勢
を水平排出姿勢と傾斜排出姿勢とで切り換える機構であってもよい。
この構成によれば、原稿を第2の原稿と判定したときに、排出トレイへの原稿の排出角度を変更する排出角度変更機構によって、画像読取装置の姿勢を水平排出姿勢と傾斜排出姿勢とで切り換えることができる。第2の原稿は、剛性が高く撓み難い。ユーザーが画像読取装置の姿勢を水平排出姿勢にすることによって、原稿が排出されるときに、原稿の先端が排出トレイの表面に当たらないため、搬送力の不足によって排出されない虞や、原稿が変形する虞が少なくなる。
【0228】
(L)上記画像読取装置において、前記画像読取装置は、前記読取部を第1読取部とし、前記背景部を第1背景部とするとき、第2発光部と第2受光部を有し搬送方向に搬送される前記原稿を第2画像データとして読み取る第2読取部と、前記第2読取部との間に前記設定ギャップを有して対向し前記第2読取部が読み取った画像の前記第2画像データの色補正に用いられる基準色を呈する第2背景部と、前記第1読取部と前記原稿との間と、前記第2背景部と前記原稿との間との範囲に連続し、かつ搬送方向に搬送される原稿の一方の面をガイドする第1ガイド面と、前記第1背景部と前記原稿との間と、前記第2読取部と前記原稿との間との範囲に連続し、かつ搬送方向に搬送される原稿の他方の面をガイドする第2ガイド面と、を備える。
【0229】
この構成によれば、原稿が搬送経路を一回通過することで原稿の両面の画像が読み取られる。その場合においても、第1発光部から発する光が第1背景部に当たって拡散反射されるときに、第1読取部と第1背景部とのギャップが設定ギャップよりも広がっていることによって、第1背景部が光を拡散する範囲が広くなるため、第1受光部に到達する光の量が少なくなる。そして、設定ギャップよりも厚い第1の原稿が第1読取部と第1背景部とのギャップを通過するときに、そのギャップが設定ギャップよりも広がり、第1受光部に到達する光の量が少なくなって、第1読取部は第1背景部39Bの濃度が暗いと認識する。そのため、画像読取装置は、専用のセンサーを必要とせず、原稿が第1読取部と第1背景部とのギャップを通過するときの第1背景部の画像の濃度によって、原稿が第2の原稿かどうかを検知できる。
【0230】
(M)上記画像読取装置において、前記原稿を読み取るとき、前記第1の原稿の先端が前記第2読取部と前記第2背景部との間の第2読取位置を通過する前に、前記第2読取部と、前記第2背景部と、の少なくともどちらか一方が変位する。
【0231】
この構成によれば、原稿が搬送経路を一回通過することで、原稿の両面の画像が読み取られる。その場合においても、第2発光部から発する光が第2背景部に当たって拡散反射されるときに、第2読取部と第2背景部とのギャップが設定ギャップよりも広がることによって、第2背景部が光を拡散する範囲が広くなるため、第2受光部に到達する光の量が少なくなる。そして、設定ギャップよりも厚い原稿が第2読取部と第2背景部とのギャップを通過するときに、そのギャップが設定ギャップよりも広がる。そして、第2受光部に到達する光の量が少なくなって、第2読取部は第2背景部の濃度が暗いと認識する。そのため、画像読取装置は、専用のセンサーを必要とせず、原稿が第2読取部と第2背景部とのギャップを通過するときの第2背景部の画像の濃度によって、原稿が第2の原稿かどうかを検知できる。
【符号の説明】
【0232】
11…画像読取装置、12…本体部、12A…給送口、12B…排出口、12C…前面部、13…給送トレイ、13A…載置面、14…排出トレイ、14A…回動軸、15…底部、15A…凸部、16…本体支持部材、16A…凹部、17…エッジガイド、18…ベース部、18A…当接部、19…カバー部、19A…開閉レバー、20…操作部、21…電源スイッチ、22…スタートスイッチ、23…ストップスイッチ、24…モード選択ス
イッチ、25…設定変更スイッチ、26…検出部、27…報知部、28A…第1ガイド面、28B…第2ガイド面、29…搬送経路、30…搬送機構、30A…給送部、30B…給送ガイド、31…搬送部、32…排出部、33…給送ローラー、34…分離ローラー対、34A…駆動ローラー、34B…分離ローラー、35…搬送ローラー対、35A…駆動ローラー、35B…従動ローラー、36…排出ローラー対、36A…駆動ローラー、36B…従動ローラー、37…給送モーター、38…搬送モーター、39A…第2背景部、39B…第1背景部、40A…第1読取部、40B…第2読取部、41A…第1発光部,41B…第2発光部、42A…第1受光部、42B…第2受光部、43A…第2背景板,43B…第1背景板、44…エンコーダー、45…原稿センサー、46…原稿有無センサー、47…ロッドレンズアレイ、48A…第1ガラス、48B…第2ガラス、49…付勢部材、50…制御部、60A…第1読取ユニット、60B…第2読取ユニット、70…表示部、71…排出角度変更機構、d…濃度差初期値、D1…原稿の厚さ方向、GD…接地面、L…画像影長、m…第1閾値、n…第2閾値、P…原稿、P0…薄い原稿、P1…第1の原稿、P2…第2の原稿、PD…画像データ、PD1…第1画像データ、PD2…第2画像データ、SA…読取領域、SP1…第1読取位置、SP2…第2読取位置、ta…設定ギャップ、t0…薄い原稿の厚さ、t1…第1の原稿の厚さ、t2…第2の原稿の厚さ、u…第3閾値、W…画像影幅、X…幅方向、x…主走査方向、Y…奥行き方向、Y1…搬送方向、y…副走査方向、Z…鉛直方向、ΔD…濃度差、θ1…入射角度、θ2…入射角度、ψ…相対角度、φ…排出角度。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12