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  • 特許-銅ベース基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】銅ベース基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/14 20060101AFI20240723BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240723BHJP
   H05K 1/05 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01L23/14 M
H01L23/36 C
H05K1/05 A
H05K1/05 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020065163
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163880
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】石川 史朗
(72)【発明者】
【氏名】原 慎太郎
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特許第6418348(JP,B1)
【文献】特開2020-013874(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086474(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/14
H01L 23/36
H05K 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅基板と、絶縁層と、回路層とがこの順で積層された銅ベース基板であって、
前記絶縁層は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはこれらの混合物である樹脂を含み、100℃における弾性率(単位:GPa)に対する厚み(単位:μm)の比が50以上であり、100℃での弾性率が2GPa以下であって、
前記回路層は、100℃における弾性率が50~100GPa、厚さが20~200μmであることを特徴とする銅ベース基板。
【請求項2】
前記絶縁層が、無機物フィラーを含み、前記無機物フィラーの平均粒子径が0.1μm以上20μm以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の銅ベース基板。
【請求項3】
前記回路層が、銅箔、銅合金箔、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔からなることを特徴とする請求項1または2に記載の銅ベース基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅ベース基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子やLEDなどの電子部品を実装するための基板の一つとして、金属ベース基板が知られている。金属ベース基板は、金属基板と、絶縁層と、回路層とがこの順で積層された積層体である。絶縁層は、一般に、絶縁性や耐電圧性に優れる樹脂と、熱伝導性に優れる無機物フィラーとを含む絶縁性組成物から形成されている。電子部品は、回路層の上に、はんだを介して実装される。このような構成とされた金属ベース基板では、電子部品にて発生した熱は、絶縁層を介して金属基板に伝達され、金属基板から外部に放熱される。
【0003】
金属ベース基板では、金属ベース基板と、その金属ベース基板にはんだを介して接合された電子部品との熱膨張率の差が大きいと、電子部品のオン/オフや外部環境による冷熱サイクルによって、電子部品と金属ベース基板の回路層とを接合しているはんだに付与される応力が大きくなり、はんだクラックが発生することがある。このため、金属ベース基板の絶縁層の弾性率を低くして、金属ベース基板の金属基板と電子部品の熱膨張率の差を、絶縁層で緩和させることが検討されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-87866号公報
【文献】特開2016-111171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品を実装したときの冷熱サイクルによるはんだクラックの発生を抑制し、冷熱サイクルに対する信頼性を向上させるために、金属ベース基板の絶縁層の弾性率を低くして、絶縁層を変形しやすくすることにより、金属ベースの膨張による熱応力を緩和することは有効である。しかしながら、回路層の膨張によるはんだへの応力も存在しているため、金属ベース基板の絶縁層の弾性率を低くすることだけでは、冷熱サイクルに対する信頼性を向上させるのは限界がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、電子部品を実装したときの冷熱サイクルに対する信頼性に優れる金属ベース基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の金属ベース基板は、銅基板と、絶縁層と、回路層とがこの順で積層された銅ベース基板であって、前記絶縁層は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはこれらの混合物である樹脂を含み、100℃における弾性率(単位:GPa)に対する厚み(単位:μm)の比が50以上であり、100℃での弾性率が2GPa以下であって、前記回路層は、100℃における弾性率が50~100GPa、厚さが20~200μmであることを特徴としている。
【0008】
本発明の銅ベース基板によれば、絶縁層は、100℃における弾性率(単位:GPa)に対する厚み(単位:μm)の比が50以上と大きいので、絶縁層が変形しやすくなり、冷熱サイクルによる金属基板と電子部品との熱膨張率の差を絶縁層で緩和することができる。また、回路層は、100℃における弾性率が100GPa以下と低いので、冷熱サイクルによる回路層と電子部品との熱膨張率の差を小さくできる。よって、冷熱サイクルによって、電子部品と銅ベース基板の回路層とを接合しているはんだに付与される応力を小さくできる。したがって、本発明の銅ベース基板は、電子部品を実装したときの冷熱サイクルに対する信頼性が向上する。
【0009】
ここで、本発明の銅ベース基板においては、前記絶縁層が、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはこれらの混合物である樹脂を含むものであるので、銅ベース基板の絶縁性、耐電圧性、化学的耐性及び機械特性が向上する。
【0010】
また、本発明の銅ベース基板においては、前記絶縁層が、無機物フィラーを含み、前記無機物フィラーの平均粒子径が0.1μm以上20μm以下の範囲内にあるものであってもよい。
この場合、絶縁層が上記の無機物フィラーを含むので、銅ベース基板の熱伝導性と耐電圧性とが向上する。
【0011】
また、本発明の銅ベース基板においては、前記回路層が、銅箔、銅合金箔、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔からなるものであってもよい。
この場合、回路層が、銅箔、銅合金箔、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔からなるため、電気伝導度が高いことで、回路層を薄くできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子部品を実装したときの冷熱サイクルに対する信頼性に優れる銅ベース基板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る銅ベース基板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態について添付した図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る銅ベース基板の概略断面図である。
図1において、銅ベース基板10は、銅基板20と、絶縁層30と、回路層40とがこの順で積層された積層体である。銅ベース基板10の回路層40の上には、はんだ50を介して、電子部品60の端子61が実装されている。
【0015】
銅基板20は、銅ベース基板10のベースとなる部材である。銅基板20は、銅もしくは銅合金からなる。
【0016】
絶縁層30は、銅基板20と回路層40とを絶縁するための層である。絶縁層30は、絶縁性樹脂31と無機物フィラー32とを含む絶縁性樹脂組成物から形成されている。絶縁層30を、絶縁性が高い絶縁性樹脂31と、熱伝導度が高い無機物フィラー32とを含む絶縁性樹脂組成物から形成することによって、絶縁性を維持しつつ、回路層40から銅基板20までの銅ベース基板10全体の熱抵抗をより低減させることができる。
【0017】
絶縁性樹脂31は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはこれらの混合物を含むことが好ましい。これらの樹脂は、絶縁性、耐電圧性、化学的耐性及び機械特性などの特性に優れるので、銅ベース基板10のこれらの特性が向上する。
【0018】
無機物フィラー32は、平均粒子径が0.1μm以上20μm以下の範囲内にあることが好ましい。無機物フィラー32の平均粒子径が0.1μm以上であることによって、絶縁層30の熱伝導性が向上する。無機物フィラー32の平均粒子径が20μm以下であることによって、絶縁層30の耐電圧性が向上する。また、無機物フィラー32の平均粒子径が上記の範囲内にあると、無機物フィラー32が凝集粒子を形成しにくく、絶縁性樹脂31中に無機物フィラー32を均一に分散させやすくなる。無機物フィラー32が凝集粒子を形成せずに、一次粒子もしくはそれに近い微細な粒子として絶縁性樹脂31に分散していると、絶縁層30の耐電圧性が向上する。絶縁層30の熱伝導性を向上させる観点では、無機物フィラー32の平均粒子径は0.3μm以上20μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0019】
絶縁層30の無機物フィラー32の含有量は、50体積%以上85体積%以下の範囲内にあることが好ましい。無機物フィラー32の含有量が50体積%以上であることによって、絶縁層30の熱伝導性が向上する。一方、無機物フィラー32の含有量が85体積%以下であることによって、絶縁層30の耐電圧性が向上する。また、無機物フィラー32の含有量が上記の範囲内にあると、絶縁性樹脂31中に無機物フィラー32を均一に分散させやすくなる。無機物フィラー32が均一に絶縁性樹脂31に分散していると、絶縁層30の機械的強度が向上する。絶縁層30の熱伝導性を向上させる観点では、無機物フィラー32の含有量は、50体積%以上80体積%以下の範囲内にあることが特に好ましい。
【0020】
無機物フィラー32としては、アルミナ(Al)粒子、アルミナ水和物粒子、窒化アルミニウム(AlN)粒子、シリカ(SiO)粒子、炭化珪素(SiC)粒子、酸化チタン(TiO)粒子、窒化硼素(BN)粒子などを用いることができる。これらのフィラーの中では、アルミナ粒子が好ましい。アルミナ粒子は、α-アルミナ粒子であることがより好ましい。α-アルミナ粒子は、真密度に対するタップ密度の比(タップ密度/真密度)が0.1以上であることが好ましい。タップ密度/真密度は、絶縁層30中でのα-アルミナ粒子の充填密度と相関し、タップ密度/真密度が高いと、絶縁層30中でのα-アルミナ粒子の充填密度を高くすることができる。絶縁層30中でのα-アルミナ粒子の充填密度が高くなると、絶縁層30中でのα-アルミナ粒子の間隔が狭くなり、絶縁層30にボイド(気孔)が発生しにくくなる。タップ密度/真密度は、0.2以上0.9以下の範囲内にあることが好ましい。また、α-アルミナは、多結晶粒子であってもよいが、単結晶粒子であることが特に好ましい。
【0021】
絶縁層30は、100℃における弾性率(単位:GPa)に対する厚み(単位:μm)の比(厚み/弾性率)が50以上とされている。絶縁層30の厚み/弾性率が50以上と高いので、絶縁層30は変形しやすく、厚み方向での緩衝性が高くなる。このため、絶縁層30は、冷熱サイクルによる銅基板20と回路層40との熱膨張率の差を緩和させる作用が高くなる。絶縁層30の厚み/弾性率は、50以上20000以下の範囲内にあることが好ましく、50以上2000以下の範囲内にあることがより好ましく、50以上200以下の範囲内にあることがさらに好ましい。絶縁層30の100℃における弾性率は、0.01GPa以上1GPa以下の範囲内にあることが好ましく、0.01GPa以上0.1GPa以下の範囲内にあることがより好ましい。また、絶縁層30の厚みは、10μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましく、50μm以上200μm以下の範囲内にあることがより好ましい。
【0022】
回路層40は、回路パターン状に形成される。その回路パターン状に形成された回路層40の上に、電子部品60の端子61がはんだ50等を介して接合される。回路層40の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、金などの金属を用いることができる。回路層40は銅箔、銅合金箔、アルミニウム箔、またはアルミニウム合金箔からなることが好ましい。
【0023】
回路層40は、100℃における弾性率が100GPa以下とされているため、冷熱サイクルによる回路層40と電子部品60との熱膨張率の差によるはんだにかかる応力が小さくなる。回路層40の100℃における弾性率は、50GPa以上100GPa以下の範囲内にあることが好ましい。回路層40の厚みは、20μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
銅ベース基板10の銅基板20、絶縁層30および回路層40の厚みは、例えば、次のようにして測定することができる。銅ベース基板10を樹脂埋めし、機械研磨によって断面を露出させる。次いで、露出した銅ベース基板の断面を、光学顕微鏡を用いて観察して、銅基板20、絶縁層30および回路層40の厚みを測定する。
【0025】
銅ベース基板10の銅基板20、絶縁層30および回路層40の弾性率は、100℃で測定した値である。
銅ベース基板10の銅基板20および回路層40の弾性率(引張弾性率)は、例えば、次のようにして測定することができる。銅ベース基板10の絶縁層30を溶剤によって除去し、銅基板20と回路層40とを分離する。得られた銅基板20と回路層40について、動的粘弾性測定によって弾性率を測定する。銅ベース基板10の絶縁層30の弾性率は、例えば、次のようにして測定することができる。銅ベース基板10の銅基板20と回路層40をエッチングによって除去し、絶縁層30を単離する。得られた絶縁層30について、動的粘弾性測定によって弾性率を測定する。
【0026】
本実施形態の銅ベース基板10に実装される電子部品60の例としては、特に制限はなく、半導体素子、抵抗、キャパシタ、水晶発振器などが挙げられる。半導体素子の例としては、MOSFET(Metal-oxide-semiconductor field effect transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、LSI(Large Scale Integration)、LED(発光ダイオード)、LEDチップ、LED-CSP(LED-Chip Size Package)が挙げられる。
【0027】
以下に、本実施形態に係る銅ベース基板10の製造方法について説明する。
本実施形態に係る銅ベース基板10は、例えば、絶縁層形成工程と、回路層圧着工程を含む方法によって製造することができる。
【0028】
絶縁層形成工程では、銅基板20の上に絶縁層30を形成して、絶縁層付き銅基板を得る。絶縁層30の厚み(単位:μm)は、弾性率測定用の絶縁層30を銅基板20に形成し、得られた絶縁層30の弾性率を測定して、厚み/弾性率が50以上となる厚さを設定する。絶縁層30の形成方法としては、塗布法または電着法を用いることができる。
【0029】
塗布法は、溶媒と絶縁性樹脂と無機物フィラーとを含む塗布液を、銅基板20の上に塗布して塗布層を形成し、次いで塗布層を加熱して絶縁層30を得る方法である。塗布液は、絶縁性樹脂が溶解した樹脂材料溶液と、その樹脂材料溶液に分散されている無機物フィラーとを含む無機物フィラー分散樹脂材料溶液を用いることができる。塗布液を基板の表面に塗布する方法としては、スピンコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ディップコート法などを用いることができる。
【0030】
電着法は、絶縁性樹脂粒子と無機物フィラーとを含む電着液に銅基板20を浸漬して、基板の表面に絶縁性樹脂粒子と無機物フィラーを電着させて電着膜を形成し、次いで得られた電着膜を加熱して絶縁層30を形成する方法である。電着液としては、絶縁性樹脂溶液と、その絶縁性樹脂溶液に分散されている無機物フィラーとを含む無機物フィラー分散絶縁性樹脂溶液に、絶縁性樹脂材料の貧溶媒を加えて絶縁性樹脂を粒子として析出させることによって調製したものを用いることができる。
【0031】
回路層圧着工程では、絶縁層付き銅基板の絶縁層30の上に金属箔を積層し、得られた積層体を加熱しながら加圧することによって回路層40を形成して、銅ベース基板10を得る。積層体の加熱温度は、例えば、200℃以上であり、250℃以上であることがより好ましい。加熱温度の上限は、絶縁性樹脂の熱分解温度未満であり、好ましくは熱分解温度よりも30℃低い温度以下である。圧着時に加える圧力は、例えば、1MPa以上30MPa以下の範囲内であり、3MPa以上25MPa以下の範囲内であることがより好ましい。圧着時間は、加熱温度や圧力によって異なるが、一般に10分間以上180分間以下である。
【0032】
以上のような構成とされた本実施形態の銅ベース基板10によれば、絶縁層30は、100℃における弾性率(単位:GPa)に対する厚み(単位:μm)の比が50以上と大きいので、絶縁層30が変形しやすくなり、冷熱サイクルによる銅基板20と回路層40との熱膨張率の差を絶縁層30で緩和することがきる。また、回路層40は、100℃における弾性率が100GPa以下と低いので、冷熱サイクルによる回路層40と電子部品60との熱膨張率の差を小さくできる。よって、冷熱サイクルによって、電子部品60と銅ベース基板10の回路層40とを接合しているはんだ50に付与される応力を小さくできる。したがって、本実施形態の銅ベース基板10は、電子部品60を実装したときの冷熱サイクルに対する信頼性が向上する。
【0033】
また、本実施形態の銅ベース基板10において、絶縁層30がポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはこれらの混合物を含む場合は、銅ベース基板10の絶縁性、耐電圧性、化学的耐性及び機械特性が向上する。さらに、絶縁層30が無機物フィラー32を含み、無機物フィラー32の平均粒子径が0.1μm以上20μm以下の範囲内にある場合は、銅ベース基板10の熱伝導性と耐電圧性とが向上する。またさらに、回路層40が、銅箔、銅合金箔、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなる場合は、電気伝導度が高いので、回路層40の厚さを薄くできる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例
【0035】
[本発明例1]
溶媒可溶性ポリイミド溶液とα-アルミナ粉末(結晶構造:単結晶、平均粒子径:0.7μm)とを、加熱によって生成する固形物(絶縁層)中のポリイミドとα-アルミナ粉末の含有比率が65体積%となるように混合した。得られた混合物に溶媒を加えて、ポリイミドの濃度が5質量%となるように希釈した。続いて得られた希釈混合物を、株式会社スギノマシン社製スターバーストを用い、圧力50MPaの高圧噴射処理を10回繰り返すことにより分散処理を行って、絶縁層形成用の塗布液を調製した。
【0036】
厚み1000μmで縦30mm×横20mmの銅基板(組成:C1100、タフピッチ銅)を用意した。この銅基板の表面に、絶縁層形成用の塗布液をバーコート法により塗布して塗布層を形成した。次いで、塗布層を形成した銅基板をホットプレート上に配置して、室温から3℃/分で60℃まで昇温し、60℃で100分間加熱した後、さらに1℃/分で120℃まで昇温し、120℃で100分間加熱して、塗布層を乾燥させた。次いで、銅基板を250℃で1分間加熱した後、400℃で1分間加熱した。こうして、表面に、α-アルミナ単結晶粒子が分散されたポリイミド樹脂からなる絶縁層が形成された絶縁層付き銅基板を作製した。なお、絶縁層の膜みを30μm、100℃における弾性率は0.27GPa、厚み/弾性率を110とした。
【0037】
得られた絶縁層付き銅基板の絶縁層の上に、厚み70μmの銅箔(100℃における弾性率:75GPa、JX金属株式会社製GHY5-HA-V2)を重ね合わせて積層した。次いで、得られた積層体を、カーボン治具を用いて5MPaの圧力を付与しながら、真空中にて300℃の圧着温度で120分間加熱して、絶縁層と銅箔とを圧着した。こうして、銅基板と絶縁層と銅箔とがこの順で積層された銅ベース基板を作製した。
【0038】
[本発明例2~4、比較例1~2]
絶縁層の厚みと弾性率、回路層の弾性率をそれぞれ、下記の表1に記載の値に変えたこと以外は、本発明例1と同様にして銅ベース基板を作製した。
【0039】
[評価]
本発明例1~4および比較例1~2で得られた銅ベース基板について、冷熱サイクルに対する信頼性を、下記の方法により評価した。その結果を、表1に示す。
【0040】
(銅ベース基板の冷熱サイクルに対する信頼性)
銅ベース基板の回路層上に、Sn-Ag-Cuはんだを塗布して、縦2.5cm×横2.5cm×厚み100μmのはんだ層を形成し、そのはんだ層の上に、2.5cm角のSiチップを搭載して、試験体を作製した。作製した試験体に、1サイクルが-40℃×30分間~150℃×30分間の冷熱サイクルを3000サイクル付与した。冷熱サイクル付与後の試験体を、樹脂埋めし、断面を研磨によって出した試料を用いて観察し、はんだ層に、長さ5mm以上のクラックが生じていないものを「〇」、長さ5mm以上のクラックが生じたものを「×」とした。
【0041】
【表1】
【0042】
絶縁層の弾性率(単位:GPa)に対する厚み(単位:μm)の比(厚み/弾性率)と、回路層の弾性率が本発明の範囲内にある本発明例1~4の銅ベース基板は、冷熱サイクルに対する信頼性に優れることが確認された。これは、絶縁層の厚み/弾性率が本発明の範囲内にあることによって、冷熱サイクルによる銅基板と電子部品との熱膨張率の差が絶縁層によって緩和されるためである。また、回路層の弾性率が本発明の範囲内にあることによって、回路層と電子部品との熱膨張率の差によってはんだに付与される熱応力が小さくなるためである。
【0043】
これに対して、絶縁層の厚み/弾性率は本発明の範囲内にあるが、回路層の弾性率が本発明の範囲を超える比較例1の銅ベース基板は、冷熱サイクルに対する信頼性が低下した。これは、回路層の弾性率が本発明の範囲を超えたことにより、回路層と電子部品との熱膨張率の差によってはんだに付与される熱応力が大きくなったためである。
【0044】
また、回路層の弾性率は本発明の範囲内にあるが、絶縁層の厚み/弾性率が本発明の範囲未満である比較例2の銅ベース基板は、冷熱サイクルに対する信頼性が低下した。これは、絶縁層の厚み/弾性率が本発明の範囲未満であることにより、冷熱サイクルによる銅基板と回路層との熱膨張率の差によってはんだに付与される熱応力が十分に緩和されなかったためである。
【符号の説明】
【0045】
10 銅ベース基板
20 銅基板
30 絶縁層
31 絶縁性樹脂
32 無機物フィラー
40 回路層
50 はんだ
60 電子部品
61 端子
図1