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特許7524593着色性組成物、赤外線パスフィルター、固体撮像素子用フィルターおよび固体撮像素子
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  • 特許-着色性組成物、赤外線パスフィルター、固体撮像素子用フィルターおよび固体撮像素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】着色性組成物、赤外線パスフィルター、固体撮像素子用フィルターおよび固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
   C09B 57/00 20060101AFI20240723BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240723BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20240723BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240723BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240723BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240723BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240723BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C09B57/00 Z
C09D201/00
C09D7/41
C09D7/63
G02B5/22
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/004 501
G03F7/027
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020077659
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021172735
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 徹也
(72)【発明者】
【氏名】前田 忠俊
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-081472(JP,A)
【文献】特開2017-049469(JP,A)
【文献】国際公開第2019/150833(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/034082(WO,A1)
【文献】Ghosh, Samrat; et al.,A Supramolecular Nanocomposite as a Near-Infrared-Transmitting Optical Filter for Security and Forensic Applications,Advanced Materials (Weinheim, Germany) ,2017年,29(46),1703783
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 57/00
C09D 201/00
C09D 7/41
C09D 7/63
G02B 5/22
G02B 5/20
G03F 7/004
G03F 7/027
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノール型ポリグリシジルエーテル、及び、水素化ビスフェノール型ポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上のエポキシ化合物と、色材として下記式(1)によって表されるジケトピロロピロール化合物を含有し、
全不揮発成分に対する前記エポキシ化合物の割合が1~30質量%である着色性組成物。
【化1】
ただし、式(1)において、R1、R2及びR7、R8は水素原子または、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。また、R3、R4及びR5、R6はチオフェンまたは、フランまたは、ピロールであって、下記式(2)によって表されるように3位、4位は無置換であって、2位、5位に結合している。
【化2】
【請求項2】
重合性化合物、バインダー樹脂及び光重開始剤を含む、請求項に記載の着色性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の着色性組成物を含む、赤外線パスフィルター。
【請求項4】
230℃で3分加熱した際の波長400から800nmの光の透過率の変化量の絶対値の平均が5%以下である請求項記載の赤外線パスフィルター。
【請求項5】
第1光電変換素子に対し光の入射側に位置する赤色用フィルター、緑色用フィルター、青色用フィルターの三色のカラーフィルターと、
第2光電変換素子に対し光の入射側に位置する請求項3または4に記載の赤外線パスフィルターとを備える、固体撮像素子用フィルター。
【請求項6】
前記第1光電変換素子に対し光の入射側に位置する赤外線カットフィルターをさらに備える、請求項に記載の固体撮像素子用フィルター。
【請求項7】
前記赤外線カットフィルターの前記赤外線パスフィルターに対応する位置に貫通孔を備
える、請求項に記載の固体撮像素子用フィルター。
【請求項8】
光電変換素子と、
請求項3または4に記載の赤外線パスフィルターと、請求項5から7のいずれか一項に記載の固体撮像素子用フィルターとのいずれかを備える、固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着色性組成物、赤外線パスフィルター、固体撮像素子用フィルターおよび固体撮像素子に関する。より詳しくは赤外線パスフィルターに用いるのに適した耐熱性に優れる着色性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサーやCCDイメージセンサーなどの固体撮像素子は、光の強度を電気信号に変換する光電変換素子を備える。固体撮像素子は、複数の光電変換素子の他に、各色用の光電変換素子上に位置するカラーフィルターと、赤外用の光電変換素子上に位置する赤外線パスフィルターとを備える(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
赤外線パスフィルターは、赤外用の光電変換素子が検出し得る可視光を遮蔽して、赤外用の光電変換素子による赤外線の検出精度を高める。赤外線パスフィルターの構成材料は、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物などの黒色色材である(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-177273号公報
【文献】特開2018-119077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ジケトピロロピロール化合物の耐熱性は十分ではなく、熱をかけた際に可視領域および近赤外領域の一部で分光特性が悪化することが判明した。
【0006】
本発明は耐熱性に優れた着色性組成物、これを用いた赤外線パスフィルター、固体撮像素子用フィルターおよび固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る着色性組成物はエポキシ化合物と下記式(1)によって表されるジケトピロロピロール化合物を含有する。
【化1】
ただし、式(1)において、R1、R2及びR7、R8は水素原子または、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。また、R3、R4及びR5、R6はチオフェンまたは、フランまたは、ピロールであって、下記式(2)によって表されるように3位、4位は無置換であって、2位、5位に結合している。
【化2】
【0008】
上記の着色性組成物は、エポキシ化合物としてビスフェノール型ポリグリシジルエーテル、及び、水素化ビスフェノール型ポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0009】
上記の着色性組成物は、重合性化合物、バインダー樹脂及び光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0010】
本発明に係る赤外線パスフィルターは、上記の着色性組成物を含む。
【0011】
上記の赤外線パスフィルターは、230℃で3分加熱した際の波長400から800nmの光の透過率の変化量の絶対値の平均が5%以下である。
【0012】
本発明に係る固体撮像素子用フィルターは、第1光電変換素子に対し光の入射側に位置する赤色用フィルター、緑色用フィルター、青色用フィルターの三色のカラーフィルターと、第2光電変換素子に対し光の入射側に位置する上記の赤外線パスフィルターとを備える。
【0013】
上記の固体撮像素子用フィルターは、第1光電変換素子に対し光の入射側に位置する赤外線カットフィルターをさらに備えることが好ましい。
【0014】
上記の固体撮像素子用フィルターは、赤外線カットフィルターの赤外線パスフィルターに対応する位置に貫通孔を備えることが好ましい。
【0015】
本発明に係る固体撮像素子は、光変換素子と、上記の赤外線パスフィルター及び上記の固体撮像素子用フィルターのいずれかを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、単一の色材により構成され、耐熱性に優れた着色性組成物、これを用いた赤外線パスフィルター、固体撮像素子用フィルターおよび固体撮像素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】固体撮像素子の一実施形態における層構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の着色性組成物は、色材として下記式(1)によって表されるジケトピロロピロール化合物を含有する。
【化1】
ただし、式(1)において、R1、R2及びR7、R8は水素原子または、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。また、R3、R4及びR5、R6はチオフェンまたは、フランまたは、ピロールであって、下記式(2)によって表されるように3位、4位は無置換であって、2位、5位に結合している。
【化2】
【0019】
R3、R4及びR5、R6がチオフェン、フラン、ピロールから構成されることによってジケトピロロピロール化合物の共役系が拡張され可視領域から近赤外領域の幅広い波長の光の吸収が可能となる。R3、R4及びR5、R6は全て同一であっても、それぞれ異なってもよい。
【0020】
R3、R4及びR5、R6はチオフェン又はピロールであることが好ましい。チオフェン又はピロールから構成されることによりジケトピロロピロール化合物は高い安定性を示す。R3、R4及びR5、R6はチオフェンであることがより好ましい。チオフェンから構成されることによりジケトピロロピロール化合物はより高い安定性を示す。
【0021】
R7、R8と結合したアミド基(アミド結合)の酸素とR7、R8の水素及び直鎖状アルキレン基、または、分岐鎖状アルキレン基の水素は水素結合を形成することができる。形成される水素結合によってジケトピロロピロール化合物同士が会合し長波長の光の吸収を可能とする会合体を形成することができる。
【0022】
R1、R2及びR7、R8は化合物の溶解性の観点から炭素数12以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数12以上の分岐鎖状アルキレン基が好ましい。R1、R2及びR7、R8は同一の直鎖状アルキレン基、または、分岐鎖状アルキレン基であっても異なる直鎖状アルキレン基、または、分岐鎖状アルキレン基であってもよい。
【0023】
本発明の着色性組成物はエポキシ化合物を含むことができる。ビスフェノール型ポリグリシジルエーテル、及び、水素化ビスフェノール型ポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0024】
ビスフェノール型ポリグリシジルエーテル、または、水素化ビスフェノール型ポリグリシジルエーテルは、分子骨格中にフェノール骨格、または、シクロヘキサン骨格を含有しており、上記エポキシを含有することで膜の剛直性が高まり、耐熱性の向上につながると推測される。
【0025】
ビスフェノール型ポリグリシジルエーテルとしては、たとえば、三菱ケミカル社製のjER825、jER827、jER828、ADEKA社製のアデカレジンEP-4100、EP-4300、EP-4400、EP-4520S、EP-4530、EP-4901、DIC社製のEPICLON840、850、860、1050、1055、共栄社化学社製のエポライト3002(N)などを使用することができる。水素化ビスフェノール型ポリグリシジルエーテルとしては、たとえば、ナガセケムテックス社製のデナコールEX-252、新日本理化社製のリカレジンHBE-100、共栄社化学社製のエポライト4000、日鉄ケミカル&マテリアル社製のST-3000、ST-4000Dなどを使用することができる。
【0026】
また、他のエポキシ化合物も併せて使用することができる。他のエポキシ化合物としては、たとえば、三菱ケミカル社製のjER807、jER152、jER154、、プリンテック社製のTECHMORE VG3101L、TECHMORE VG3101M80、ADEKA社製のED-503、ED-523T、ED-505、共栄社化学社製のエポライト100MF、エポライト40E、ナガセケムテックス社製のEX-211、EX-212、EX-810、EX-811、EX-850、EX-851、EX-830、EX-920、EX-313、EX-314、EX-321、EX-411、EX-421、EX-512、EX-521、EX-612、EX-614、EX-201などを使用することができる。
【0027】
本発明の着色組成物において、全不揮発成分に対するエポキシ化合物の割合は、1~30質量%が好ましく、3~20質量%であることがより好ましい。エポキシ化合物の割合が1質量%未満の場合、十分な耐熱性改善効果を得ることができない。また、エポキシ化合物の割合が30%を超える場合、着色組成分中の色材濃度が低くなり分光特性が低下する。
【0028】
本発明の着色性組成物はフォトリソグラフィー法による塗膜のパターニング形成を行うために重合性化合物、バインダー樹脂、光重合開始剤を含むことができる。
【0029】
重合性化合物としては、たとえば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(n=1)トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(n=2)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(n=1)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(n=2)トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性シトリアクリレート、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0030】
重合性化合物としては、典型的には、3官能アクリルモノマーを主成分としているものを使用することが好ましい。モノマーとして、4官能モノマーや5官能モノマーなどの一般的な感光性樹脂に使用されているアクリルモノマーを使用すると、感光性樹脂の感度が過剰に高くなることがある。これにより、下地の形状が、着色層の形状に大きな影響を及ぼす傾向にある。モノマーとして、3官能アクリルモノマーを主成分としているものを使用すると、感光性樹脂の感度が過剰に高くなるのを防止できる。
【0031】
バインダー樹脂は数種類のモノマーやオリゴマーを共重合させて得られる。バインダー樹脂を生成するモノマーおよびオリゴマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレートなどの各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、単独または2種類以上混合して用いることができる。
【0032】
バインダー樹脂は、アルカリ現像液に溶解するように酸性基を有するモノマーを共重合させたものであることが望ましい。酸性基としてはカルボキシル基が主に用いられ、カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、不飽和モノカルボン酸や、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などの不飽和多価カルボン酸などの分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。ここで、不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α‐クロルアクリル酸、ケイ皮酸などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。不飽和多価カルボン酸は、その酸無水物、具体的には無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などであってもよい。また、不飽和多価カルボン酸は、そのモノ(2‐メタクリロイロキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2‐アクリロイロキシエチル)、コハク酸モノ(2‐メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2‐アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2‐メタクリロイロキシエチル)などであってもよい。不飽和多価カルボン酸は、その両末端ジカルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω‐カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω‐カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートなどであってもよい。これらのカルボキシル基含有モノマーは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
バインダー樹脂として熱硬化性樹脂を使用することができ、熱硬化性樹脂としては、たとえば、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0034】
バインダー樹脂の重量平均分子量が5000ないし20000の範囲内にあるものが好ましい。重量平均分子量が5000未満であると、着色性組成物中に低分子量の化合物のみになってしまい、フォトリソグラフィー法による塗膜のパターニング形成時に露光部の硬化度が小さく良好なパターン形状が得られない。重量平均分子量が20000を超えると現像液への溶解性が劣り、やはり良好なパターンが得られない。
【0035】
光重合開始剤としてはたとえば、オキシム・エステル系開始剤、α-アミノアルキルフェノン系開始剤などがある。オキシム・エステル系開始剤としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、α-アミノアルキルフェノン系開始剤としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オンが挙げられる。
【0036】
また、他の光重合開始剤も併せて使用することができる。併せて使用できる光重合開始剤としては、たとえば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンなどのアセトフェノン系光重合、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、および、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、および、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイドなどのベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、および2、4-ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-クロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシーナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル(ピペロニル)-6-トリアジン、及び2,4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジンなどのトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0037】
溶剤としては、たとえば、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ブチルセロソルブアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル-nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0038】
また、着色性組成物には、必要に応じて添加剤を入れてもよい。添加剤としては、たとえば、界面活性剤、貯蔵安定剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0039】
界面活性剤としては、たとえば、ラウリル硫酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、スチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、および、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、および、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤、アルキル4級アンモニウム塩、および、そのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、および、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0040】
貯蔵安定剤としては、たとえば、ベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸およびシュウ酸などの有機酸、そのメチルエーテル、t-ブチルピロカテコール、トリエチルホスフィンおよびトリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0041】
フォトリソグラフィー法による塗膜のパターニング形成を行うためにステッパー露光装置等の装置と、所定のパターンを有するフォトマスクを用いることが好ましい。フォトマスクを介して露光したのち現像液により未露光部を除くことによりパターンが形成される。
【0042】
現像液にはアルカリ性の現像液を用いることが好ましい。アルカリ性現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ現像液、またはテトラヒドロキシアンモニウム等の有機アルカリ現像液を使用することができる。また、塗膜への濡れ性を高めるために、界面活性剤を現像液に含むことも好ましい。
【0043】
本発明の着色性組成物は赤外線パスフィルターに用いることができる。本発明の着色性組成物を用いることにより可視領域および近赤外領域の一部である波長400~800nmの光を遮光し、近赤外領域900~1000nmの光を透過する赤外線パスフィルターを形成できる。
【0044】
本発明の赤外線パスフィルターの膜厚は通常0.1μm~15μm、好ましくは0.3~10μm、より好ましくは0.5μm~5μmである。
【0045】
膜中の色材濃度は30~60質量%であることが好ましい。色材濃度が30質量%未満である場合、可視光領域の透過率が上昇しノイズが大きくなる。また、色材濃度が60質量%を超える場合赤外線の透過率が低下し感度が低下する。また、色材濃度が60%を超える場合、着色性組成物中の重合性化合物、バインダー樹脂、光重合開始剤の割合が低下し、フォトリソグラフィーにおけるパターニング性が低下する。
【0046】
本発明の着色性組成物及び赤外線パスフィルターは固体撮像素子用カラーフィルターに用いることができる。
【0047】
図1を参照して、固体撮像素子用フィルター、および固体撮像素子における一実施形態を説明する。図1は、固体撮像素子の一部における各層を分離して示す概略構成図である。
【0048】
<固体撮像素子>
図1が示すように、固体撮像素子10は、固体撮像素子用フィルター10F、および、複数の光電変換素子11を備える。固体撮像素子用フィルター10Fは、複数の可視光用のフィルター12R,12G,12B、赤外線パスフィルター12P、赤外線カットフィルター13、バリア層14、複数の可視光用のマイクロレンズ15R,15G,15B、および、赤外線用マイクロレンズ15Pを備える。
【0049】
複数の光電変換素子11は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および、赤外線用光電変換素子11Pを備える。固体撮像素子10は、複数の赤色用光電変換素子11R、複数の緑色用光電変換素子11G、複数の青色用光電変換素子11B、および、複数の赤外線用光電変換素子11Pを備える。複数の赤外線用光電変換素子11Pは、赤外線の強度を測定する。なお、図1では、図示の便宜上、固体撮像素子10における光電変換素子11の繰り返し単位が示されている。
【0050】
<カラーフィルター>
可視光用のカラーフィルターは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bから構成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用光電変換素子11Rに対して光の入射側に位置する。緑色用フィルター12Gは、緑色用光電変換素子11Gに対して光の入射側に位置する。青色用フィルター12Bは、青色用光電変換素子11Bに対して光の入射側に位置する。
【0051】
各色用フィルター12R,12G,12Bは、着色性感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。例えば、赤色用感光性樹脂を含む塗膜は、赤色用感光性樹脂を含む塗布液の塗布、および、塗膜の乾燥によって形成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用感光性樹脂を含む塗膜に対し、赤色用フィルター12Rに相当する領域に対する露光、および、現像を経て形成される。なお、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bも赤色用フィルター12Rと同様の方法によって形成される。
【0052】
赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bの着色性組成物に含有される顔料としては、有機または無機の顔料を、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料は、発色性が高く、且つ耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料が好ましく、通常は有機顔料が用いられる。使用することができる顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、ペリレン系、チオインジゴ系、イソインドリン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系などの有機顔料が挙げられる。
以下に、本発明の着色性組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0053】
各色用フィルターの青色着色性組成物に用いられる青色色素としては、例えばC.I. Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、81等の顔料が挙げられ、中でもC.I. Pigment Blue 15:6が好ましい。
【0054】
赤色の着色性組成物に用いられる赤色色素としては、例えばC.I. Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272、C.I. Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等の赤色顔料、および必要に応じ調色用として、C.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214等を用いて得られる組成物である。
【0055】
また、緑色の着色性組成物は、例えばC.I. Pigment Green 7、10、36、37、58、59等の緑色顔料、および必要に応じ調色用として、C.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214等を用いて得られる組成物である。
【0056】
<赤外線パスフィルター>
固体撮像素子用フィルター10Fは、赤外線用光電変換素子11Pに対して光の入射側に赤外線パスフィルター12Pを備える。赤外線パスフィルター12Pは、赤外線用光電変換素子11Pが検出し得る可視光をカットする。それによって、赤外線用光電変換素子11Pによる赤外線の検出精度が高められる。赤外線用光電変換素子11Pが検出し得る赤外線は、900nm以上1000nm以下の波長を有した近赤外線である。
【0057】
赤外線パスフィルター12Pは、可視領域の光を遮断し、近赤外領域の光を透過する光学フィルターであり、着色性組成物と重合性化合物、バインダー樹脂、光重合開始剤とを含む。
【0058】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。
【0059】
<赤外線カットフィルター>
固体撮像素子は、赤外線カットフィルター13を別途備えることが可能である。赤外線カットフィルター13は、各光電変換素子11がノイズとして検出し得る波長帯の赤外線を、光電変換素子11に対しカットする。それによって、光電変換素子11の検出精度を高める。
【0060】
赤外線カットフィルター13は、例えば図1が示すように、赤外線パスフィルター12Pに対する光の入射側に貫通孔13Hを備え、赤外線パスフィルター12Pに対する光の入射側には位置しない構成としてもよい。赤外線カットフィルター13は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bに共通する層である。
【0061】
また、赤外線カットフィルター13を赤外線パスフィルター12Pに対し光の入射側に位置するように備えてもよい。すなわち、赤外線カットフィルター13は貫通孔13Hを備えていなくてもよい。この場合、赤外線カットフィルター13は例えば、700nm以上900nm未満の波長を有した近赤外線を遮断する構成とする。この構成とすることで、赤外用光電変換素子11Pにおいても900nm以上1000nm以下の波長を有した近赤外線を効率的に検出することができる。
【0062】
赤外線カットフィルター13の構成材料は、赤外吸収色素を含む透明樹脂である。赤外吸収色素は、例えば、アントラキノン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ジチオール系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素である。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂である。赤外線カットフィルター13は、塗布法などの液相成膜法を用いた成膜によって形成される。
【0063】
赤外線パスフィルター12Pは、各色用フィルター12R,12G,12Bよりも厚くてもよい。この構成であれば、赤外線パスフィルター12Pにおいて可視光の非透過性を向上可能である。
【0064】
なお、マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、それが形成される下地での段差によって、その加工の精度を低下させ得る。赤外線カットフィルター13を備える構成においては、各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pの下地での平坦性が高められる観点から、各色用フィルター12R,12G,12Bの厚みと、赤外線カットフィルター13の厚みとの合計が、赤外線パスフィルター12Pの厚みとほぼ等しいことが好ましい。
【実施例
【0065】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限られるものではない。
【0066】
<ジケトピロロピロール化合物1の合成>
100質量部のtert-アミルアルコールと、71.5質量部のナトリウムtert-ペントキシドを準備し、これらを攪拌装置と還流管とが設置された反応容器に入れ、反応容器に窒素ガスを導入しつつ、100℃に加熱しながら1時間にわたって攪拌および還流した。攪拌溶液に30質量部の2-チオフェンカルボニトリルと、30質量部のコハク酸ジエチルを25質量部のtert-アミルアルコールで溶解させた溶解液を加えたのち
、100℃に加熱しながら10時間にわたって攪拌および還流した。攪拌溶液を室温まで冷却したのち50質量部のメタノールを加え固体を析出させた。70℃に加熱した攪拌溶液をろ過することにより前駆体1を得た。
【化3】
【0067】
3質量部の前駆体1と1.8質量部の炭酸カリウムと、100質量部のN,N-ジメチルホルムアミドを準備しこれらを攪拌装置と還流管とが設置された反応容器に入れ、反応容器に窒素ガスを導入しつつ、120℃に加熱しながら1時間にわたって攪拌および還流した。攪拌溶液に6質量部の1-ブロモデカンを加えつつ、さらに20時間にわたって攪拌および還流した。攪拌溶液を濃縮したのちヘキサンで濃縮物を洗浄することにより前駆体2を得た。
【化4】
【0068】
2質量部の前駆体2と、100質量部のクロロホルムと、1.3質量部のN-ブロモスクシンイミドとを準備し、これらを攪拌装置が設置された反応容器に入れ、反応容器に窒素ガスを導入しつつ、1時間攪拌した。攪拌溶液に50質量部のメタノールを加え発生した沈殿をろ過し前駆体3を得た。
【化5】
【0069】
5.5質量部の前駆体3と、0.2質量部のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)と、25質量部の炭酸ナトリウムと、100質量部のテトラヒドロフランと50質量部の蒸留水を準備し、これらを攪拌装置と還流管とが設置された反応容器に入れ、反応容器に窒素ガスを導入しつつ、50℃に加熱しながら30分にわたって攪拌および還流した。攪拌溶液に3質量部の5-ホルミル-2-チオフェンボロン酸を50質量部のテトラヒドロフランで溶解させた溶解液を加えたのち、70℃に加熱しながら10時間にわたって攪拌および還流した。攪拌溶液の水層を抽出後、濃縮したのちシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い前駆体4を得た。
【化6】
【0070】
2.5質量部の前駆体4と、4質量部のN-ドデシルシアノアセトアミドと、100質量部のテトラヒドロフランと2.5質量部のピペリジンを準備し、これらを攪拌装置と還流管とが設置された反応容器に入れ、反応容器に窒素ガスを導入しつつ、70℃に加熱しながら24時間にわたって攪拌および還流した。攪拌溶液を濃縮したのちシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行いジケトピロロピロール化合物1を得た。
【化7】
【0071】
<バインダー樹脂1の合成>
60重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、40重量部のメタクリル酸フェニルと、0.60重量部のベンゾイルペルオキシドを準備し、これらを攪拌装置と還流管とが設置された反応容器に入れ、反応容器に窒素ガスを導入しつつ、80℃に加熱しながら8時間にわたって攪拌および還流した。これにより、バインダー樹脂1を得た。
【0072】
<着色性組成物の調液>
調液例1
色材として4.5質量部のジケトピロロピロール化合物1と、エポキシ化合物として4.5質量部のEX-252(水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社製)、重合性化合物として4.0質量部のM-350(トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、東亜合成社製)と、バインダー樹脂として5.1質量部のバインダー樹脂1と、光重合開始剤として0.9質量部のOXE02(BASF社製)と、溶媒として60質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、25質量部のテトラヒドロフランを準備し、これらを2時間にわたって攪拌し評価液1を得た。
【0073】
調製例2、3、9
調製例1において、各成分の量を表1に示すように変更した以外は、調製例1と同様にして、評価液2、3、9を得た。
【0074】
調製例4~7
調製例2において、調整例4はエポキシ化合物にjER827(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製)、調整例5はエポキシ化合物にエポライト4000(共栄社化学社製)を、調整例6はエポキシ化合物にEX-612(ソルビトールポリグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社製)を、調整例7はエポキシ化合物にEX-810(エチレングリコールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社製)を、それぞれ使用した以外は、調製例2と同様にして、評価液4~7を得た。
【0075】
調製例8
調製例1において、エポキシ化合物を使用せず、各成分の量を表1に示すように変更した以外は、調製例1と同様にして、評価液9を得た。
【0076】
<実施例1>
評価液1をガラス基板上にスピンコーターにて、ベーク後の膜厚が1.2μmになるように塗布し、90℃のホットプレートで2分間ベーク処理を行い、実施例1のフィルターを得た。
【0077】
<実施例2~4>
評価液2~4を用いて調製例1と同様にして、実施例2~4のフィルターを得た。
【0078】
<比較例1~5>
評価液5~9を用いて実施例1と同様にして、比較例1~5のフィルターを得た。
【0079】
<耐熱性評価>
得られたそれぞれのフィルターについて、分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて波長400~800nmの光の透過率を1nm間隔で測定した。次いで、測定後のそれぞれのフィルターについて、ホットプレートを用いて230℃で3分加熱を行った後、分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて波長400~800nmの光の透過率を1nm間隔で測定した。測定前後の波長400から800nmの光の透過率の変化量の絶対値の平均を算出し耐熱性を評価した。以下の基準にて耐熱性を評価した。
〇:波長400~800nmの光の透過率の変化量の絶対値の平均≦5%
△:5%<波長400~800nmの光の透過率の変化量の絶対値の平均≦10%
×:10%<波長400~800nmの光の透過率の変化量の絶対値の平均
【0080】
【表1】
【0081】
本発明で実施した着色組成物を用いたフィルターは230℃で3分加熱した際の波長400から800nmの光の透過率の変化量の絶対値の平均が5%以下であり、良好な耐熱性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、固体撮像装置等に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
10…固体撮像素子
10F…固体撮像素子用フィルター
11…光電変換素子
11R…赤色用光電変換素子
11G…緑色用光電変換素子
11B…青色用光電変換素子
11P…赤外線用光電変換素子
12R…赤色用フィルター
12G…緑色用フィルター
12B…青色用フィルター
12P…赤外線パスフィルター
13…赤外線カットフィルター
13H…貫通孔
14…バリア層
15R…赤色用マイクロレンズ
15G…緑色用マイクロレンズ
15B…青色用マイクロレンズ
15P…赤外線用マイクロレンズ
15S…入射面
図1