(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】石炭及びバイオマス運用支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240723BHJP
【FI】
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2020108713
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2019120280
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 聡一朗
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴大
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-115203(JP,A)
【文献】特開2009-275680(JP,A)
【文献】特開2007-271187(JP,A)
【文献】特開2005-017018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率の入力を受け付ける受付部と、
前記1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率を記憶する記憶部と、
前記1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率から、第1排ガス成分濃度予測値を算出する、排ガス成分濃度算出部と、
前記1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率から、第2排ガス成分濃度及び排出ガス量がいずれも所定の閾値以内となる燃料消費量の最大予測値を算出する、燃料消費量算出部と、
前記第1排ガス成分濃度予測値と、前記燃料消費量の最大予測値を出力する出力部と、を備え
、
前記第1排ガス成分は、窒素酸化物を含み、前記第2排ガス成分は、ばいじんを含み、
前記性状項目値は、炭素、水素、酸素、全硫黄、全水分、窒素、灰分及び固有水分を含み、
前記排ガス成分濃度算出部は、以下の(式1)によって前記第1排ガス成分濃度予測値を算出し、
(式1)排ガス中NOx濃度=19.3×燃料比×(1+燃料窒素分(%、CHベース))+97(ppm)
(前記(式1)中、「CHベース」とは、湿度75%の恒湿状態の分析値を示す。また、燃料比は固定炭素と揮発分量の比から算出される。)
前記燃料消費量算出部は、以下の(式2)によって燃料消費量の最大予測値(p1)を算出し、
(式2)理論空気量((A0))=8.89C+26.7×(H-O/8)+3.33S
理論燃焼ガス量(Q0)=1.867C+0.7S+11.2H+1.24W1+0.8N+0.79A0
実際燃焼ガス量(湿り)(Q’)=Q0+(1.31-1)×A0
実際燃焼ガス量(乾き)(Q”)=Q’-(11.2H+1.24W1)
脱硫装置入口水蒸気量(Qs)=(Q’×燃料消費量×1000)-(Q”×燃料消費量×1000)
脱硫装置出口水蒸気量(Qc)=(Q’×燃料消費量×1000×1.3-Qs/1.244)×0.077×1.244
脱硝装置発生ガス量(Qa)=Qc-Qs+10000
排ガス量(湿り)=Q’×燃料消費量×1000+Qa
排ガス量(乾き)=(Q”×燃料消費量×1000)+10000
(前記(式2)中、Cは炭素、Hは水素、Oは酸素、Sは全硫黄、W1は全水分、Nは窒素をそれぞれ意味する。)
前記燃料消費量算出部は、以下の(式3)によって前記第2排ガス成分濃度予測値、及び燃料消費量の最大予測値(p2)を算出し、
(式3)排ガス中ばいじん濃度=A×((燃料消費量-(燃料消費量×(W1-W2))×1000/Q”×1000)
(前記(式3)中、Aは灰分、W1は全水分、W2は固有水分をそれぞれ意味する。)
前記燃料消費量算出部は、前記燃料消費量の最大予測値(p1)、及び前記燃料消費量の最大予測値(p2)から、前記第2排ガス成分濃度及び前記排出ガス量がいずれも所定の閾値以内となる前記燃料消費量の最大予測値を算出する、石炭及びバイオマス運用支援システム。
【請求項2】
前記第1排ガス成分濃度の測定値の取得手段と、
前記燃料消費量の測定値の取得手段と、を備える、請求項1に記載の石炭及びバイオマス運用支援システム。
【請求項3】
前記第1排ガス成分濃度予測値が、所定の閾値以内であるか否かを判定する第1判定部と、
前記燃料消費量の最大予測値が、所定の閾値以上であるか否かを判定する第2判定部と、を備え、
前記出力部は、前記第1判定部及び第2判定部の判定結果を出力する、請求項1又は2に記載の石炭及びバイオマス運用支援システム。
【請求項4】
前記1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の炭種又は種類、及び混炭率の選定ステップと、
前記第1排ガス成分濃度予測値及び前記燃料消費量の最大予測値と、それぞれ所定の閾値との比較から前記1種若しくは混炭した石炭、又は前記石炭と前記バイオマス燃料とを混合した燃料の使用可否を判定する、判定ステップと、を有し
、
前記選定ステップ及び前記判定ステップは、コンピュータ装置により実行される、請求項1~
3いずれかに記載の石炭及びバイオマス運用支援システムを使用する石炭及びバイオマス運用方法。
【請求項5】
前記第1排ガス成分濃度の測定値、前記第2排ガス成分濃度の測定値、及び前記燃料消費量の測定値と、それぞれ所定の閾値との比較を行う監視ステップを有し、
前記監視ステップの結果に基づき、前記第1排ガス成分濃度予測値の算出方法、又は前記燃料消費量の最大予測値の算出方法の見直しを行
い、
前記監視ステップは、コンピュータ装置により実行され、
前記第1排ガス成分濃度予測値の算出方法、又は前記燃料消費量の最大予測値の算出方法の見直しは、ユーザにより実行される、請求項
2又は3に記載の石炭及びバイオマス運用支援システムを使用する石炭及びバイオマス運用方法。
【請求項6】
1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率の入力受付機能と、
前記1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率から、第1排ガス成分濃度予測値を算出する、排ガス成分濃度算出機能と、
前記1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率から、第2排ガス成分濃度及び排出ガス量がいずれも所定の閾値以内となる燃料消費量の最大予測値を算出する、燃料消費量算出機能と、
前記第1排ガス成分濃度予測値が、所定の閾値以内であるか否かを判定する第1判定機能と、
前記燃料消費量の最大予測値が、所定の閾値以上であるか否かを判定する第2判定機能と、
前記第1判定機能及び第2判定機能による判定結果の出力機能と、を備え
、
前記第1排ガス成分は、窒素酸化物を含み、前記第2排ガス成分は、ばいじんを含み、
前記性状項目値は、炭素、水素、酸素、全硫黄、全水分、窒素、灰分及び固有水分を含み、
前記排ガス成分濃度算出機能は、以下の(式1)によって前記第1排ガス成分濃度予測値を算出し、
(式1)排ガス中NOx濃度=19.3×燃料比×(1+燃料窒素分(%、CHベース))+97(ppm)
(前記(式1)中、「CHベース」とは、湿度75%の恒湿状態の分析値を示す。また、燃料比は固定炭素と揮発分量の比から算出される。)
前記燃料消費量算出機能は、以下の(式2)によって燃料消費量の最大予測値(p1)を算出し、
(式2)理論空気量((A0))=8.89C+26.7×(H-O/8)+3.33S
理論燃焼ガス量(Q0)=1.867C+0.7S+11.2H+1.24W1+0.8N+0.79A0
実際燃焼ガス量(湿り)(Q’)=Q0+(1.31-1)×A0
実際燃焼ガス量(乾き)(Q”)=Q’-(11.2H+1.24W1)
脱硫装置入口水蒸気量(Qs)=(Q’×燃料消費量×1000)-(Q”×燃料消費量×1000)
脱硫装置出口水蒸気量(Qc)=(Q’×燃料消費量×1000×1.3-Qs/1.244)×0.077×1.244
脱硝装置発生ガス量(Qa)=Qc-Qs+10000
排ガス量(湿り)=Q’×燃料消費量×1000+Qa
排ガス量(乾き)=(Q”×燃料消費量×1000)+10000
(前記(式2)中、Cは炭素、Hは水素、Oは酸素、Sは全硫黄、W1は全水分、Nは窒素をそれぞれ意味する。)
前記燃料消費量算出機能は、以下の(式3)によって前記第2排ガス成分濃度予測値、及び燃料消費量の最大予測値(p2)を算出し、
(式3)排ガス中ばいじん濃度=A×((燃料消費量-(燃料消費量×(W1-W2))×1000/Q”×1000)
(前記(式3)中、Aは灰分、W1は全水分、W2は固有水分をそれぞれ意味する。)
前記燃料消費量算出機能は、前記燃料消費量の最大予測値(p1)、及び前記燃料消費量の最大予測値(p2)から、前記第2排ガス成分濃度及び前記排出ガス量がいずれも所定の閾値以内となる前記燃料消費量の最大予測値を算出する、石炭及びバイオマス運用支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭及びバイオマス運用支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石炭火力発電設備では燃料価格の上昇、需要の逼迫を背景として、瀝青炭等の高品位炭のみならず、亜瀝青炭等の低品位炭の利用が進んでいる。また、複数炭種の石炭を混合(混炭)して、又は石炭とバイオマス燃料とを混合(混炭)して、燃料として使用する方式も広く取り入れられている。
【0003】
一方、石炭火力発電設備等のばい煙発生施設では、大気汚染防止法に基づき、使用燃料の成分値や排出ガス量、排出ガス濃度等が記載された、ばい煙に関する説明書(以下「説明書」という場合がある)の公的機関への届出を行っている。また、説明書に記載された燃料分析値等を基準として、石炭の燃料としての使用可否判断を行っている。
【0004】
例えば、複数の炭種を混炭して石炭火力発電設備の燃料として用いる場合は、混炭後の石炭の成分値を算出し、算出された数値が、説明書に記載された燃料分析値等の基準を満たすか否かを判断することにより、石炭の使用可否判断を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、説明書に記載された燃料分析値は、あくまで代表品位の石炭の成分値であり、成分値から算出される排ガス成分や排ガス量の理論値が、大気汚染防止法等の基準値を満たすことを示しているに過ぎない。従って、1種若しくは混炭した石炭、又はこれらの石炭とバイオマス燃料とを混合した燃料(以下、「石炭等燃料」と記載する場合がある)の成分値が、説明書に記載された燃料分析値等の基準を満たすことのみをもって、石炭の使用可否判断を行うことは必ずしも合理的とは言えない。
【0007】
つまり、説明書に記載された燃料分析値等の基準(届出値)を満たす石炭等燃料であっても、大気汚染防止法等の法定基準を満たさないことはあり得るし、届出値を満たさない石炭等燃料であっても、上記法定基準を満たす場合があり得る。しかし、他に基準が無い状況では、届出値に従って石炭等燃料の使用可否判定を行う他に選択肢が無かった。従って、届出値を満たさない石炭等燃料は一律的に使用不可と判断し、使用可能と判断した石炭等燃料についても、実際の排ガス成分や排ガス量が法定基準を満たしているか否かは運転時に監視して確認を行っているため、合理性を欠いていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、大気汚染防止法等の法定基準を確実に遵守可能であり、かつ合理性のある石炭等燃料の運用を支援する、石炭及びバイオマス運用支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率の入力を受け付ける受付部と、前記1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率を記憶する記憶部と、前記1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率から、第1排ガス成分濃度予測値を算出する、排ガス成分濃度算出部と、前記1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率から、第2排ガス成分濃度及び排出ガス量がいずれも所定の閾値以内となる燃料消費量の最大予測値を算出する、燃料消費量算出部と、前記第1排ガス成分濃度予測値と、前記燃料消費量の最大予測値を出力する出力部と、を備える、石炭及びバイオマス運用支援システム。
【0010】
(2) 前記石炭及びバイオマス運用支援システムは、前記第1排ガス成分濃度の測定値の取得手段と、前記燃料消費量の測定値の取得手段と、を備えることが好ましい。
【0011】
(3) 前記石炭及びバイオマス運用支援システムは、前記第1排ガス成分濃度予測値が、所定の閾値以内であるか否かを判定する第1判定部と、前記燃料消費量の最大予測値が、所定の閾値以上であるか否かを判定する第2判定部と、を備え、前記出力部は、前記第1判定部及び第2判定部の判定結果を出力することが好ましい。
【0012】
(4) 前記第1排ガス成分は、窒素酸化物を含み、前記第2排ガス成分は、ばいじんを含むことが好ましい。
【0013】
(5) 前記性状項目値は、炭素、水素、酸素、全硫黄、全水分、窒素、灰分及び固有水分を含むことが好ましい。
【0014】
(6) 前記1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の炭種又は種類、及び混炭率の選定ステップと、前記第1排ガス成分濃度予測値及び前記燃料消費量の最大予測値と、それぞれ所定の閾値との比較から前記1種若しくは混炭した石炭、又は前記石炭と前記バイオマス燃料とを混合した燃料の使用可否を判定する、判定ステップと、を有する、上記(1)~(5)いずれかに記載の石炭及びバイオマス運用支援システムを使用する石炭及びバイオマス運用方法。
【0015】
(7) 前記第1排ガス成分濃度の測定値、前記第2排ガス成分濃度の測定値、及び前記燃料消費量の測定値と、それぞれ所定の閾値との比較を行う監視ステップを有し、前記監視ステップの結果に基づき、前記第1排ガス成分濃度予測値の算出方法、又は前記燃料消費量の最大予測値の算出方法の見直しを行う、上記(2)~(5)いずれかに記載の石炭及びバイオマス運用支援システムを使用する石炭及びバイオマス運用方法。
【0016】
(8) 1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率の入力受付機能と、前記1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率から、第1排ガス成分濃度予測値を算出する、排ガス成分濃度算出機能と、前記1種若しくは2種以上の石炭、又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率から、第2排ガス成分濃度及び排出ガス量がいずれも所定の閾値以内となる燃料消費量の最大予測値を算出する、燃料消費量算出機能と、前記第1排ガス成分濃度予測値が、所定の閾値以内であるか否かを判定する第1判定機能と、前記燃料消費量の最大予測値が、所定の閾値以上であるか否かを判定する第2判定機能と、前記第1判定機能及び第2判定機能による判定結果の出力機能と、を備える、石炭及びバイオマス運用支援プログラム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、大気汚染防止法等で定められる法定基準を確実に遵守し、かつ合理的な石炭等燃料の運用を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態における石炭及びバイオマス運用支援システム1の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態における石炭及びバイオマス運用支援プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態における石炭及びバイオマス運用方法の流れを示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態における石炭及びバイオマス運用方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<石炭及びバイオマス運用支援システムの概略>
図1は、本発明の一実施形態における石炭及びバイオマス運用支援システム1の概略構成を示すブロック図である。このような石炭及びバイオマス運用支援システム1は、例えば微粉炭ボイラを備える石炭火力発電設備において好ましく用いられる。
【0020】
石炭及びバイオマス運用支援システム1は、管理端末2を備える。管理端末2は、中央処理部3と、受付部21と、記憶部22と、出力部23と、外部機器と無線又は有線で通信可能に接続されるI/F部24と、を備える。
【0021】
管理端末2は、図示しないCPU、メモリ等を備えたコンピュータ装置であり、I/F部24を通じてネットワークや外部機器と接続可能な装置である。管理端末2は、石炭火力発電設備等において、石炭等燃料の燃料としての使用可否を判断する際に利用される。あるいは外部機器から取得した排ガス濃度測定値や燃料消費量測定値を表示させて、発電設備の運転状況を監視する際に利用される。
【0022】
受付部21は、ユーザが選定した石炭又はバイオマス燃料の性状項目値や混炭率(本明細書において、「混炭率」とは、2種以上の石炭を混合させる場合、各石炭の割合を意味し、1種以上の石炭及びバイオマス燃料を混合させる場合、各石炭及びバイオマス燃料の割合を意味する)の入力を受け付け、又はユーザによる石炭又はバイオマス燃料の性状項目値や混炭率に基づく排ガス濃度や燃料消費量の算出式の修正を受け付け、管理端末2に指示する。受付部21は、キーボードやマウス、タッチパネル等の入力装置からのユーザの入力を受け付ける。
【0023】
記憶部22は、例えばハードディスク等のストレージデバイスである。記憶部22には、ユーザが入力した石炭又はバイオマス燃料の性状項目値や混炭率、排ガス濃度や燃料消費量の算出式、排ガス濃度や燃料消費量の予測値の算出プログラムや各種閾値、また各種閾値に基づき石炭の使用可否を判定するプログラム等が記憶されている。
【0024】
出力部23は、入力された石炭又はバイオマス燃料の性状項目値や混炭率、排ガス濃度や燃料消費量の予測値及び測定値の算出結果、判定プログラムによる石炭又はバイオマス燃料の使用可否判定結果等を出力する。出力部23は、各種情報や画像等を、ディスプレイ等の表示装置を介して表示する。
【0025】
I/F部24は、外部機器が接続可能なインターフェイスである。I/F部24に接続される外部機器としては、排ガス濃度計41、給炭機42等が挙げられる。また、上記以外に、I/F部24は各種石炭又はバイオマス燃料の性状項目値や貯蔵量等が記憶されたデータベースサーバと接続されていてもよい。
よって、管理端末2は、I/F部24を通じ、排ガス濃度計41や給炭機42の測定値を取得できる。
【0026】
排ガス濃度計41は、微粉炭ボイラ等で発生した排ガスの流通経路に設けられ、例えば窒素酸化物(以下、NOxと記載する場合がある)やばいじん、硫黄酸化物(以下、SOxと記載する場合がある)等の排ガス成分の濃度を測定し、測定結果を管理端末2に送信する通信機能を有する。
また、排ガス濃度計41は、測定対象によって設置位置が異なる。NOxを測定する排ガス濃度計41は、例えばNOxを触媒によって浄化する脱硝設備の出口側に設けられる。また、ばいじんを測定するばいじん濃度計は、例えばばいじんを除去する電気集じん機の出口側に設けられる。また、SOxを測定する排ガス濃度計41は、例えばSOxを触媒によって浄化する脱硫設備の出口側に設けられる。
【0027】
給炭機42は、微粉炭ボイラ等に石炭又はバイオマス燃料を供給する装置であり、石炭又はバイオマス燃料を粉砕する複数のミルの上流側に、ミルに対応して複数設けられる。給炭機42は、石炭又はバイオマス燃料を搬送するコンベヤと、石炭又はバイオマス燃料の荷重を検出するロードセルを有し、コンベヤ速度と荷重を検出できる。給炭機42は、これらの検出結果から、燃料消費量としての石炭又はバイオマス燃料の供給量を測定でき、測定結果を管理端末2に送信する通信機能を有する。
【0028】
中央処理部3は、記憶部22に記憶された各種のプログラムを実行する。また、これらのプログラムは、排ガス成分濃度算出部31と、燃料消費量算出部32と、第1判定部33と、第2判定部34と、から構成される。
【0029】
排ガス成分濃度算出部31は、ユーザが入力した石炭又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率に基づき、石炭等燃料を燃料として燃焼させた場合の排ガス成分濃度を算出する。例えば、第1排ガス成分としてのNOxの、排ガス中の成分濃度(ppm)の予測値を算出する。なお、第1排ガス成分としては、法令で法定排出基準(濃度)が定められている他の物質、例えばSOx等を含んでいてもよい。
【0030】
燃料消費量算出部32は、ユーザが入力した石炭又はバイオマス燃料の性状項目値及び混炭率に基づき、石炭等燃料を燃料として燃焼させた場合に、第2排ガス成分としての、例えばばいじん濃度、及び排ガス量が、所定の閾値以内となる燃料消費量(t/h)の最大予測値を算出する。つまり、実際の燃料消費量が、上記算出された燃料消費量の最大予測値以内となることで、第2排ガス成分濃度、及び排ガス量が所定の閾値以内となることが見込まれる。
【0031】
第1判定部33は、排ガス成分濃度算出部31により算出された第1排ガス成分、例えばNOxの排ガス中の濃度(ppm)の予測値が、所定の閾値以内であるか否かを判定する。
【0032】
第2判定部34は、燃料消費量算出部32により算出された、燃料消費量(t/h)の最大予測値が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0033】
次に、各算出部31、32で行う予測値の算出方法について説明する。
[排ガス中NOx濃度の算出(排ガス成分濃度算出部31)]
第1排ガス成分としての、排ガス中NOx濃度(脱硝入口NOx濃度)の予測値は、次の計算式によって算出できる。
(式1)
排ガス中NOx濃度=19.3×燃料比×(1+燃料窒素分(%、CHベース))+97(ppm)
(上式中「CHベース」とは、湿度75%の恒湿状態の分析値を示す。また、燃料比は固定炭素と揮発分量の比から算出される。)
【0034】
上記(式1)によれば、仮に燃料窒素分が相対的に高い燃料であっても、燃料比が相対的に低い燃料であれば、NOxの予測値が相対的に変わらないか、低く算出される場合もありうる。
【0035】
[排ガス量の算出(燃料消費量算出部32)]
排ガス量(排出口におけるガス量)(湿り、乾き)は、石炭又はバイオマス燃料の性状項目値としての炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、全硫黄(S)、全水分(W1)、窒素(N)により、次の計算式によって計算できる。
(式2)
理論空気量((A0))=8.89C+26.7×(H-O/8)+3.33S
理論燃焼ガス量(Q0)=1.867C+0.7S+11.2H+1.24W1+0.8N+0.79A0
実際燃焼ガス量(湿り)(Q’)=Q0+(1.31-1)×A0
実際燃焼ガス量(乾き)(Q”)=Q’-(11.2H+1.24W1)
脱硫装置入口水蒸気量(Qs)=(Q’×燃料消費量×1000)-(Q”×燃料消費量×1000)
脱硫装置出口水蒸気量(Qc)=(Q’×燃料消費量×1000×1.3-Qs/1.244)×0.077×1.244
脱硝装置発生ガス量(Qa)=Qc-Qs+10000
排ガス量(湿り)=Q’×燃料消費量×1000+Qa
排ガス量(乾き)=(Q”×燃料消費量×1000)+10000
【0036】
上記(式2)より、排ガス量(湿り、乾き)がいずれも所定の閾値以内となる燃料消費量の最大予測値(p1)を算出できる。すなわち、上記(式2)の排ガス量(湿り、乾き)をそれぞれ所定の閾値とした際に算出される燃料消費量のうち、より小さい値を、上記最大予測値(p1)として算出できる。なお、上記所定の閾値は、法定の排出基準に応じて定められる。
【0037】
[排ガス中ばいじん濃度の算出(燃料消費量算出部32)]
排ガス中ばいじん濃度(集じん装置入口ばいじん濃度)は、石炭又はバイオマス燃料の性状項目値として、上記に加え灰分(A)、固有水分(W2)により、次の計算式によって計算できる。
(式3)
排ガス中ばいじん濃度=A×((燃料消費量-(燃料消費量×(W1-W2))×1000/Q”×1000)
【0038】
上記(式3)によれば、排ガス中のばいじん濃度は、灰分以外に燃料消費量とも相関する。
また、上記(式3)より、排ガス中ばいじん濃度が所定の閾値以内となる燃料消費量の最大予測値(p2)を算出できる。すなわち、上記(式3)の排ガス中ばいじん濃度を所定の閾値とした際の燃料消費量として、上記最大予測値(p2)を算出できる。なお、上記所定の閾値は、法定の排出基準に応じて定められる。
【0039】
上記(式2)、(式3)により算出された燃料消費量の最大予測値(p1)、(p2)のうち、より小さい値を、第2排ガス成分としてのばいじん濃度、及び排ガス量が、所定の閾値以内となる燃料消費量の最大予測値(p3)として算出できる。
【0040】
[第1判定部、第2判定部]
(閾値)
次に、第1判定部や第2判定部での判定に用いる閾値と、閾値に対応する評価について説明する。
【0041】
【0042】
表1は、従来の石炭等燃料の使用可否判定に用いていた閾値と、閾値に対応する評価結果の一例を示す表である。
閾値a1やa2は、説明書に記載される燃料分析値(以下、「届出値」と記載する場合がある)に基づいて定められる。表1に示す通り、例えば石炭等燃料の灰分の性状項目値を示す指標X1が、閾値であるa1を超過する場合、評価は×となっていた。窒素分の性状項目値を示す指標X2についても同様である。また、これらの指標のうち、いずれかの評価が×である場合、その石炭等燃料は運用不可との判断を行っていた。
【0043】
【0044】
表2は、本発明の一実施形態における石炭等燃料使用可否判定に用いられる閾値と、閾値に対応する評価結果の一例を示す表である。
指標X1は、灰分の性状項目値を示す。表2に示す通り、指標X1に対する閾値として、新たに運用限界値b1を設け、指標X1が閾値a1以下である場合、評価は〇とし、指標X1が閾値a1超~b1である場合、評価は▲とし、指標X1が閾値b1を超過する場合、評価は×としている。評価▲は、届出値を超過するが、他の評価項目によっては運用可能との評価である。これは、灰分の性状項目値は、ばいじん濃度に相関するが、ばいじん濃度は燃料消費量にも相関するため、燃料消費量によっては、灰分が閾値a1を超過しても、ばいじん濃度の法定基準を遵守して運用可能な場合もあるためである。
【0045】
指標X2は、窒素分の性状項目値を示す。指標X2についても同様に、閾値として新たに運用限界値b2を設け、閾値であるa2を超過し、運用限界値としての閾値b2以内となる場合、同様に評価は▲としている。これは、NOx濃度予測値は窒素分に相関するが、燃料比にも相関するため、窒素分が閾値a2を超過しても、NOx濃度の法定基準を遵守して運用可能な場合もあるためである。
なお、上記運用限界値b1、b2は、例えば他の相関値を考慮しても運用が不可能な数値として設定される。
【0046】
指標X3は、脱硝入口NOx濃度を示す。指標X3としては、排ガス成分濃度算出部31で算出される、第1排ガス成分としての排ガス中NOx濃度の予測値が用いられる。表2に示す通り、指標X3が閾値a3以下である場合、評価は〇とし、閾値a3超~b3である場合、評価は△とし、閾値b3を超過する場合、評価は×としている。閾値b3は、法令で定められる法定基準により設定される。
評価△は、理論値である指標X3は法定基準を超過しておらず、当該石炭等燃料は運用可能であるが、監視上注意の必要あり、との評価を示す。つまり、閾値a3は法定基準に対して相当程度裕度を持たせた値として設定される。
【0047】
指標Yは、排ガス量遵守石炭等燃料消費量を示す。指標Yとしては、燃料消費量算出部32で算出される、燃料消費量の最大予測値(p3)が用いられる。表2に示す通り、指標Yが閾値a4以上である場合、評価は◎とし、閾値a4未満~b4である場合、評価は〇とし、閾値b4未満である場合、評価は▲としている。
従来、燃料消費量については、説明書に記載された数値(a4)を閾値とした運用を行っていたが、燃料消費量は、排ガス量やばいじん濃度に相関するため、排ガス量やばいじん濃度の法定基準を考慮した閾値を定めることが好ましい。
【0048】
そこで、本実施形態においては、燃料消費量の最大予測値(p3)が実際の燃料消費量の上限目安値として設定される閾値b4以上であるか否かにより石炭使用可否判定を行うこととした。これにより、排ガス量やばいじん濃度の法定基準をより確実に順守できるとともに、合理的な石炭等燃料の運用が可能となる。
なお、表2に示す通り、指標Yがb4未満であっても、評価は▲とし、他の条件によっては運用可能としている。これは、微粉炭ボイラ等の運転状況や、石炭等燃料の発熱量によっては、実際の燃料消費量がb4より低くなる場合もあり、指標Yがb4未満であっても運用可能な場合もあるためである。
【0049】
(第1判定部、第2判定部における判定)
表2の閾値及び評価に従い、第1判定部は、第1排ガス成分としての脱硝入口NOx濃度の指標X3が閾値b3以内である場合、当該石炭等燃料は第2判定部の判定結果次第で運用可能である、との判定を行い、閾値b3を超過する場合、運用不可との判定を行う。
同様に、第2判定部は、燃料消費量の最大予測値としての排ガス量遵守石炭消費量の指標Yが閾値b4以上である場合、当該石炭等燃料は第1判定部の結果次第で運用可能との判定を行い、閾値b4未満である場合、運用には運転状況等、他の条件の確認が必要である、との判定を行う。
【0050】
次に、上記排ガス成分等の予測値の算出や閾値に基づく判定を、実際の石炭等燃料の運用の場面に適用した具体例について説明する。
【0051】
<石炭及びバイオマス運用支援プログラム>
図2は、本発明の一実施形態における、中央処理部3が実行する石炭及びバイオマス運用支援プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
図2に示す石炭及びバイオマス運用支援プログラムは、微粉炭ボイラ等で燃料として用いる、石炭等燃料の運用可否判定を行う際に用いられる。
【0052】
図2に示す通り、中央処理部3は、石炭又はバイオマス燃料の性状項目値及び炭種又は種類・混炭率の入力を、受付部21を介して受け付ける(S1、S2)。
次に、中央処理部3は、上記入力された値と(式1)により、第1排ガス成分濃度としての脱硝入口NOx濃度の予測値X3を算出する(S3)。なお、入力された炭種又は種類が複数である場合、中央処理部3は、混炭率から混炭後の石炭等燃料の性状項目値を算出し、その後上記S3の処理を行う。
次に、中央処理部3は、上記入力された値と(式2)、(式3)により、第2排ガス成分としてのばいじん濃度及び排出ガス量がいずれも所定の閾値以内となる、燃料消費量の最大予測値(p3)としての燃料消費量Yを算出する(S4)。
【0053】
次に、中央処理部3は、S3において算出した濃度X3と所定の閾値b3を比較し、濃度X3が閾値b3以内であるか否かを判定する(S5)。なお、所定の閾値b3は、法令で定められる法定基準により設定される。
濃度X3が閾値b3を超過する場合、中央処理部3は、当該石炭等燃料が運用不可との判定を行う。具体的には、表2に示すような、評価項目一覧を表示すると共に、脱硝入口濃度X3を示す欄に評価結果を表示して着色し、総合評価として運用不可である旨を、出力部23を介して出力する。濃度X3が閾値b3以内である場合、中央処理部3は、次のステップS6を実行する。
【0054】
次に、中央処理部3は、S4において算出した燃料消費量Yと所定の閾値b4を比較し、燃料消費量Yが閾値b4以上であるか否かを判定する(S6)。なお、所定の閾値b4は、実際の燃料消費量の上限目安値として設定される。
燃料消費量Yが閾値b4以上である場合、中央処理部3は、当該石炭等燃料が運用可能との判定を行う。また、燃料消費量Yが閾値b4未満である場合、中央処理部3は、当該石炭等燃料の運用に際し、要確認との判定を行う。また、S6における判定結果の具体的な出力方法はS5と同様である。
【0055】
次に、本発明の一実施形態における、石炭及びバイオマス運用支援システム1を用いた石炭及びバイオマス運用方法について説明する。
【0056】
<石炭及びバイオマス運用方法(炭種又は種類・混炭率決定)>
図3は、石炭及びバイオマス運用支援システム1及び上記プログラムを使用する石炭及びバイオマス運用方法の流れを示すフローチャートである。この運用方法は、微粉炭ボイラ等で燃料として用いる、石炭又はバイオマス燃料の炭種又は種類及び混炭率を決定する際に用いられる。
【0057】
まず、ユーザは各種石炭又はバイオマス燃料の性状を分析し、炭種又は種類、及び性状項目値を管理端末2に入力する(S7)。なお、予め分析された性状項目値を別途データベースサーバ等から取得し、上記入力を行ってもよい。
次に、ユーザは選定ステップS8において、S7で入力を行った炭種又は種類の中から、候補となる炭種又は種類、及び混炭率を選定し、管理端末2に入力する。
【0058】
次に、ユーザは、管理端末2に対し、上記プログラムの実行を指示する。管理端末2は、排ガス成分濃度予測値X3及び燃料消費量予測値Yを算出し(S9,S10)、各閾値b3、b4と比較して判定を行い(S11、S12)、判定結果を出力する。
【0059】
次に、ユーザは、上記S11において、運用不可との判定結果が出力された場合、すなわち、予測値X3がb3を超過する場合、S8に戻り、石炭又はバイオマス燃料の炭種又は種類及び混炭率の再選定を行う。
また、ユーザは、上記S12において、要確認との判定結果が出力された場合、すなわち、予測値Yがb4未満である場合、判断ステップS13において、ボイラ運転状況や石炭又はバイオマス燃料の発熱量を考慮して運用可否判断を行う。ユーザは、S13において運用不可との判断を行った場合、S8に戻り、石炭又はバイオマス燃料の炭種又は種類及び混炭率の再選定を行う。
【0060】
ユーザは、上記S12において、運用可能との判定結果が出力された場合、又は、上記S13において、運用可能との判断を行った場合、S8における選定内容に基づき炭種又は種類及び混炭率を決定する。
【0061】
<石炭及びバイオマス運用方法(燃焼監視及び基準見直し)>
次に、本発明の一実施形態における、上記石炭及びバイオマス運用支援システム1を使用する石炭及びバイオマス運用方法について説明する。
図4は、石炭及びバイオマス運用支援システム1を用いた、本発明の一実施形態における石炭及びバイオマス運用方法の流れを示すフローチャートである。この運用方法は、炭種又は種類及び混炭率を決定した石炭等燃料を燃料として微粉炭ボイラ等を運転した際の、排ガス成分や排ガス量の監視に用いられる。また、監視結果に基づく算出式や判定基準の見直しに用いられる。
【0062】
管理端末2は、ユーザの指示に従い、排ガス濃度計41を通じ、第1排ガス濃度としての、例えば脱硝設備の出口側NOx濃度の測定値X3’及び第2排ガス濃度としてのばいじん濃度の測定値X5’を取得する(S14)。また、同様に給炭機42を通じ、燃料消費量の測定値Y’を取得する(S15)。
【0063】
次に、管理端末2における中央処理部3は、上記測定値X3’、X5’と、所定の閾値b3’、b5’とを比較する監視ステップS16を実行し、測定値X3’、X5’がいずれもそれぞれ所定の閾値b3’、b5’以内であるか否かを判定する。なお、上記閾値b3’、b5’としては、法令で定められる法定基準が用いられる。
S16の結果、測定値X3’、X5’がいずれもそれぞれ所定の閾値b3’、b5’以内である場合、管理端末2は、次の監視ステップ(S17)を実行する。
【0064】
次に、中央処理部3は、上記測定値Y’と、所定の閾値b4’とを比較する監視ステップS17を実行し、測定値Y’が所定の閾値b4’以内であるか否かを判定する。なお、上記閾値b4’としては、実際の燃料消費量の上限目安値に、運転状況等を加味して設定された数値が用いられる。中央処理部3は、S16及びS17を実行した後、判定結果を、出力部23を介して出力する。
なお、上記S14~S17は、都度のユーザの指示を待つことなく、一定時間毎に自動的に繰り返して行われることが好ましい。
【0065】
上記監視ステップS16及びS17の結果、測定値X3’、X5’、Y’がいずれも所定の閾値b3’、b5’、b4’以内である場合、ユーザは出力部23により出力された判定結果を確認し、微粉炭ボイラ等の運転を継続する。
【0066】
上記S16の結果、測定値X3’若しくはX5’のいずれかが、閾値b3’若しくはb5’を超過する場合、又はS17の結果、測定値Y’が閾値b4’を超過する場合、ユーザは、運転継続が可能であるか否かを判断する(S18)。
なお、ここでの運転継続が可能であるか否かの判断とは、具体的には以下のような判断を示す。
【0067】
ユーザは、上記各測定値が各閾値を超過する場合、ユーザ自身の操作又は自動制御により、各測定値が各閾値以内となるような制御を行う。
例えば、脱硝設備の出口側NOx濃度の測定値X3’が所定の閾値b3’を超過する場合、脱硝設備におけるアンモニア注入量を増加させ、NOx濃度の設定値を低下させる。
また、ばいじん濃度の測定値X5’が所定の閾値b5’を超過する場合、EP(電気集じん機)の荷電制御変更、又は脱硫装置の吸収塔循環ポンプ動翼開度上昇により、ばいじん濃度を低下させる。
また、燃料消費量の測定値Y’が所定の閾値b4’を超過する場合、スートブロワ(すす噴装置)の停止、負荷変化率の減少、石炭スラリーの供給やミル切替等の燃料消費量が増加する作業の停止を行い、燃料消費量を低下させる。
【0068】
しかし、上記制御によっても各測定値が各閾値を超過する頻度が高い場合、ユーザは、運転継続は不可能と判断し、炭種又は種類及び混炭率を変更する(S19)。上記変更には、例えば、上記実施形態において説明したプログラムが用いられる。
また、ユーザは、上記に併せて排ガス成分濃度の算出式や、燃料消費量の算出式の見直し、あるいは閾値(評価)の見直しを行う(S20)。上記見直しは、例えば超過項目の燃料分析値の確認、発熱量の確認、算出した理論値と測定値の比較等によって行われる。
【0069】
そして、再度管理端末2によってS14~S17が実行され、その結果に基づき上記判断S18や運転の継続を行う。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。例えば、上記石炭及びバイオマス運用支援システム1を、微粉炭ボイラを備える発電設備以外の、石炭燃焼設備に適用してもよい。
【0071】
また、上記実施形態において、中央処理部3に第1判定部33及び第2判定部34を設ける構成としたが、これに限定されず、例えば算出された排ガス成分濃度や燃料消費量の予測値と閾値との比較を人が行うこととしてもよい。
同様に、燃焼監視時における各種測定値と閾値との比較を行う監視ステップ16及び17は、比較を管理端末2ではなく人が行うこととしてもよい。
【0072】
また、燃料消費量Yの閾値b4は、石炭又はバイオマス燃料の発熱量を考慮した可変のものとしてもよい。例えば、算出された燃料消費量Yが閾値b4を下回る場合、評価は▲となるが、石炭又はバイオマス燃料の発熱量から想定される燃料消費量が上記算出値を下回る場合、その結果に応じて閾値b4を補正して評価を〇に変更してもよい。
あるいは、燃料消費量Yを算出する際に、石炭又はバイオマス燃料の発熱量を考慮して、燃料消費量Yを補正してもよい。
【0073】
また、上記実施形態において、各種閾値のうちいくつかを、法定基準を用いるものとして説明したが、これに限定されず、法定基準に対して一定の裕度を持たせた値を上記閾値として用いてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 石炭及びバイオマス運用支援システム
2 管理端末
21 受付部
22 記憶部
23 出力部
24 I/F部
3 中央処理部
31 排ガス成分濃度算出部
32 燃料消費量算出部
33 第1判定部
34 第2判定部
41 排ガス濃度計
42 給炭機