IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図1
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図2
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図3
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図4
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図5
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図6
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図7
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図8
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図9
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図10
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図11
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図12
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図13
  • 特許-秘密情報形成体の製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】秘密情報形成体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/00 20060101AFI20240723BHJP
   B42D 25/27 20140101ALI20240723BHJP
   B42D 25/378 20140101ALI20240723BHJP
【FI】
B41M3/00 Z
B42D25/27
B42D25/378
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020119846
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022016878
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】河野 美都子
(72)【発明者】
【氏名】梅林 真理
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-152659(JP,A)
【文献】特開2005-153203(JP,A)
【文献】特開2000-335149(JP,A)
【文献】国際公開第03/103983(WO,A1)
【文献】特開2010-064476(JP,A)
【文献】国際公開第01/094122(WO,A1)
【文献】特開2007-152907(JP,A)
【文献】特開2017-035796(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005024989(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/00
B42D 25/27
B42D 25/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に秘密情報形成層及び隠蔽層をこの順に積層して構成された秘密情報形成体の製造方法であって、
前記秘密情報形成層を、並列配置された潜像部とその背景部とで構成し、
これら潜像部とその背景部とを、いずれも、互に区別困難な同色系の印刷インキで構成すると共に、前記潜像部と前記隠蔽層とを、いずれも、前記潜像部及び前記隠蔽層の表面を摩擦したときの摩擦熱で変色する印刷インキで構成し、
前記潜像部、背景部及び隠蔽層を、いずれも、前記印刷インキの網点の集合で構成しており、
背景部を、略円形状又は略楕円形状の網点を有する刷版で印刷し、
一方、潜像部と隠蔽層を、略四角形状の網点を有する刷版で印刷し、滲みによりこの網点を略円形状又は略楕円形状の網点に変形することを特徴とする秘密情報形成体の製造方法。
【請求項2】
前記背景部をその表面を摩擦したときにも変色しないインキで構成することを特徴とする請求項1に記載の秘密情報形成体の製造方法。
【請求項3】
前記隠蔽層をその表面を摩擦したときの摩擦熱で透明化するインキで構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の秘密情報形成体の製造方法。
【請求項4】
前記隠蔽層を潜像部及びその背景部と区別困難な同色系の印刷インキで構成することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の秘密情報形成体の製造方法。
【請求項5】
前記隠蔽層の上に第2の隠蔽層が積層し、この第2の隠蔽層をその表面を摩擦したときの摩擦熱で変色するインキで構成することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の秘密情報形成体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのままでは認識困難な潜像部を有し、その表面を硬貨等でこすることにより、潜像部が可視化する秘密情報形成体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような秘密情報形成体は古くから知られており、例えば、スクラッチくじ、あるいはスクラッチはがき等に利用されている。
【0003】
その代表的な秘密情報形成体は例えば特許文献1に記載されている。この秘密情報形成体は、基材上に印刷した潜像部を被覆して隠蔽層を設けたものである。隠蔽層は金属粉末を含む不透明なインキをスクリーン印刷して形成したもので、このような不透明インキで被覆したため、そのままでは潜像部を認識することはできない。そして、硬貨等でこすってこの隠蔽層を除去することにより、前記潜像部が可視化する。
【0004】
しかしながら、この秘密情報形成体では、硬貨等でこすったときに、前記隠蔽層が細かなカスとなって周囲を汚染するという問題がある。このため、潜像部を可視化する際に隠蔽層からカスが生じることのない秘密情報形成体が工夫されてきた。
【0005】
例えば、潜像部とその背景部とを、互に区別困難な同色系の印刷インキで構成し、しかも、硬貨に用いられている金属よりも、硬度の大きい材料を含むインキを用いて前記潜像部を構成した秘密情報形成体がある(特許文献2)。この秘密情報形成体では、そのままでは潜像部を背景部から区別して認識することができない。一方、硬貨等でこすることにより、硬貨が潜像部によって削り取られて潜像部の色彩が変化するから、この潜像部を背景部から区別して可視化できる。このように潜像部の可視化にあたって隠蔽層を除去するわけではないから、隠蔽層からカスが生じることはないのである。しかし、この秘密情報形成体では、硬貨等でこすったときに、わずかではあるが硬貨を削り取ってしまうという問題がある。
【0006】
また、熱や圧力によって消色するインキを利用した秘密情報形成体も知られている(特許文献3)。この秘密情報形成体では潜像部を被覆して隠蔽層と消色層とを積層する。隠蔽層は、消色層の成分と接触すると透明化する消色性組成物をマイクロカプセルに封入してインキ化して印刷したもので、不透明な層である。また、消色層は前記変色性組成物を消色させる成分を含有するインキで印刷したものである。この秘密情報形成体においても、潜像部は不透明な隠蔽層で被覆されているから、そのままではこれを認識することができない。一方、この秘密情報形成体を加圧して隠蔽層中のマイクロカプセルを破壊すると、この破壊によりマイクロカプセル中の前記消色性組成物が消色層と接触して透明化し、この結果、潜像部を可視化できる。この秘密情報形成体では、カスが生じることなく、また、硬貨を損傷することもなく、潜像部を可視化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実公昭44-12094号公報
【文献】特許第5262961号公報
【文献】特開2002-103864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3記載の秘密情報形成体においては、径10~50μmのマイクロカプセルを使用する必要がある。このように大径のマイクロカプセルを使用した隠蔽層で潜像部を被覆しているから、紙面に略平行となる横方向から見ると潜像部が見えることがあるという問題を有していた。
【0009】
そこで、本発明は、カスが生じることなく、また、硬貨を損傷することもなく、潜像部を可視化することができる秘密情報形成体であって、紙面に略平行となる横方向から見ても潜像部を認識することができない秘密情報形成体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、基材上に秘密情報形成層及び隠蔽層をこの順に積層して構成された秘密情報形成体の製造方法であって、
前記秘密情報形成層を、並列配置された潜像部とその背景部とで構成し、
これら潜像部とその背景部とを、いずれも、互に区別困難な同色系の印刷インキで構成すると共に、前記潜像部と前記隠蔽層とを、いずれも、前記潜像部及び前記隠蔽層の表面を摩擦したときの摩擦熱で変色する印刷インキで構成し、
前記潜像部、背景部及び隠蔽層を、いずれも、前記印刷インキの網点の集合で構成しており、
背景部を、略円形状又は略楕円形状の網点を有する刷版で印刷し、
一方、潜像部と隠蔽層を、略四角形状の網点を有する刷版で印刷し、滲みによりこの網点を略円形状又は略楕円形状の網点に変形することを特徴とする秘密情報形成体の製造方法である。
【0011】
次に、請求項2に記載の発明は、前記背景部をその表面を摩擦したときにも変色しないインキで構成することを特徴とする請求項1に記載の秘密情報形成体の製造方法である。
【0012】
次に、請求項3に記載の発明は、前記隠蔽層をその表面を摩擦したときの摩擦熱で透明化するインキで構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の秘密情報形成体の製造方法である。
【0013】
次に、請求項4に記載の発明は、前記隠蔽層を潜像部及びその背景部と区別困難な同色系の印刷インキで構成することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の秘密情報形成体の製造方法である。
【0014】
次に、請求項5に記載の発明は、前記隠蔽層の上に第2の隠蔽層が積層し、この第2の隠蔽層をその表面を摩擦したときの摩擦熱で変色するインキで構成することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の秘密情報形成体の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る秘密情報形成体によれば、潜像部と隠蔽層が表面を摩擦したときの摩擦熱で変色するインキで構成されているから、例えば、消しゴムや硬貨で秘密情報形成体の表面を擦ることにより、潜像部が変色してその背景部との間のコントラストが増大する。また、同時に隠蔽層も変色する。このため、潜像部を肉眼で観察して認識することが可能となる。
【0016】
ところで、本発明においては、背景部を略円形状又は略楕円形状の網点を有する刷版で印刷し、一方、潜像部と隠蔽層とを略四角形状の網点を有する刷版で印刷するが、潜像部と隠蔽層とは表面を摩擦したときの摩擦熱で変色するインキで構成されているため、こうして印刷した略四角形状の網点は基材上で滲んで略円形状又は略楕円形状の網点に変化す
る。この結果、潜像部の網点と隠蔽層の網点とは、いずれも、背景部の網点と同様に略円形状又は略楕円形状となり、しかも、潜像部とその背景部とが互に区別困難な同色系の印刷インキで構成され、これら潜像部とその背景部(秘密情報形成層)の上に隠蔽層が積層されているから、潜像部を背景部から区別して認識することは事実上不可能となる。このように、潜像部と隠蔽層とを略四角形状の網点を有する刷版で印刷するにも拘わらず、潜像部を背景部から区別して認識することができないのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明の第1の具体例に係る秘密情報形成体の断面図である。
図2図2は本発明の第1の具体例に係る秘密情報形成体の平面図である。
図3図3は本発明の第1の具体例に係り、図3(a)は潜像部を印刷する刷版の一部領域の拡大図、図3(b)は印刷した網点が滲んだ前記領域の拡大図である。
図4図4は本発明の第1の具体例に係り、背景部を印刷する刷版の一部領域の拡大図である。
図5図5は本発明の第1の具体例に係り、潜像部を可視化した状態を示す断面図である。
図6図6は本発明の第2の具体例に係り、図6(a)は潜像部を印刷する刷版の一部領域の拡大図、図6(b)は印刷した網点が滲んだ前記領域の拡大図である。
図7図7は本発明の第2の具体例に係り、背景部を印刷する刷版の一部領域の拡大図である。
図8図8は本発明の第3の具体例に係り、図8(a)は潜像部を印刷する刷版の一部領域の拡大図、図8(b)は印刷した網点が滲んだ前記領域の拡大図である。
図9図9は本発明の第3の具体例に係り、背景部を印刷する刷版の一部領域の拡大図である。
図10図10は本発明の第4の具体例に係り、潜像部の一部領域の拡大図である。
図11図11は本発明の第4の具体例に係り、背景部の一部領域の拡大図である。
図12図12は本発明の5の具体例に係り、図12(a)は潜像部を印刷する刷版の一部領域の拡大図、図12(b)は印刷した網点が滲んだ前記領域の拡大図である。
図13図13は本発明の5の具体例に係り、図13(a)は背景部を印刷する刷版の一部領域の拡大図、図13(b)は印刷した網点が滲んだ前記領域の拡大図である。
図14図14は本発明の第6の具体例に係る秘密情報形成体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本開示の具体例を説明する。図1は本発明の第1の具体例に係る秘密情報形成体の断面図であり、図2はその平面図である。なお、潜像部21を印刷する刷版の網点の形状及び印刷して滲んだ網点の形状を説明するため、図3に潜像部21の一部領域Aを拡大して図示している。図3(a)は潜像部21を印刷する刷版の前記領域Aの拡大図、図3(b)は印刷した網点が滲んだ前記領域Aの拡大図である。また、同様に、背景部22を印刷する刷版の網点の形状を説明するため、図4に背景部22を印刷する刷版の一部領域Bを拡大して図示している。
【0019】
図1から分かるように、この秘密情報形成体100は、基材10上に秘密情報形成層20及び隠蔽層30をこの順に積層して構成したものである。秘密情報形成層20は潜像部21とその背景部22とを並列配置して構成されている。
【0020】
基材10は任意のシートでよいが、この基材10を透視して潜像部21を読み取ることを防ぐため、潜像部21を透視することができない程度に不透明なものであることが望ましい。このような基材10としては、通常の印刷用紙、カード紙、板紙等が使用できるが、塩化ビニル、ポリエステル等を主材とする不透明なプラスチックシートであっても良い。
【0021】
次に、秘密情報形成層20は潜像部21の内容を秘密情報とし、これと並列配置した背景部22によって前記潜像部21の内容を認識不可能としたものである。このため、潜像部21は例えば「あたり」「一等」等の当落を示す文字や記号である。図ではアルファベットの「T」を潜像部21としている。
【0022】
また、前記背景部22によって潜像部21の内容を認識不可能とするため、潜像部21とその背景部22とを互に区別困難な同色系の印刷インキで構成する必要がある。
【0023】
ところで、消しゴムや硬貨で秘密情報形成体100の表面を擦ったときに潜像部21を可視化するため、潜像部21はその表面を摩擦したときの摩擦熱で変色する印刷インキで構成されている必要がある。一方、背景部22はこのように摩擦したときにも変色しないインキで構成されていることが望ましい。
【0024】
表面を摩擦したときの摩擦熱で変色する印刷インキは、例えば、特公平4-17154号公報、特開平7-179777号公報に記載されている。例えば、電子供与性呈色性有機化合物、フエノール性水酸基を有する化合物及び融点と曇点との差が5~50℃で分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステルから成るインキである。電子供与性呈色性有機化合物としては、クリスタルバイオレツドラクトン、マラカイトグリーンラクトン等が例示できる。フエノール性水酸基を有する化合物としては、ターシヤリーブチルフエノール、ノニルフエノール等が例示できる。また、融点と曇点との差が5~50℃で分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステルとしては、2-メチル安息香酸ステアリル、4-tert-ブチル安息香酸セチル等が例示できる。
【0025】
摩擦したときにも変色しないインキとしては汎用の印刷用インキが使用できる。
【0026】
これら潜像部21と背景部22とは、いずれも、前記印刷インキの網点の集合で構成する。潜像部21は略四角形状の網点21a’を有する刷版を使用して印刷するが(図3(a)参照)、前述のようにこの印刷インキは表面を摩擦したときの摩擦熱で変色するものであるため、略四角形状の網点21a’を有する刷版で印刷すると基材10上で滲んで略円形状又は略楕円形状の網点21aに変形する(図3(b)参照)。一方、背景部22は略円形状又は略楕円形状の網点22aを有する刷版を使用して基材10上に印刷するが(図4参照)、この網点22aの形状はそのまま基材10上に再現される。この結果、潜像部21と背景部22とは、いずれも、略円形状又は略楕円形状の網点21a,22aで構成されることとなり、しかも、前述のように互に区別困難な同色系の印刷インキで構成されているため、潜像部21をその周囲の背景部22から区別して認識することが事実上不可能となる。
【0027】
第2の具体例として後述するように、これら潜像部21を構成する多数の網点は、互に濃度が異なる2種類以上の網点で構成することができる。また、同様に、背景部22を構成する多数の網点も、互に濃度が異なる2種類以上の網点で構成されていることが望ましい。このように潜像部21と背景部22の両者が、共に互に濃度が異なる2種類以上の網点で構成されている場合、潜像部21と背景部22とのコントラストを低下させて、潜像部21の認識を一層困難とすることができる。
【0028】
網点の濃度はその径で調整することができる。潜像部21を構成する網点21aの径も背景部22を構成する網点22aの径も0.03~0.3mmでよい。なお、潜像部21を構成する多数の網点21aのうち、高い濃度の網点は低い濃度の網点に対し、10~80%存在することが望ましい。同様に、背景部22を構成する多数の網点22aのうち、高い濃度の網点は低い濃度の網点に対し、10~80%存在することが望ましい。
【0029】
また、第3の具体例として後述するように、潜像部21を構成する多数の網点21aのうち一部に白抜けの領域を設けることができ、背景部22を構成する多数の網点22aにも一部に白抜けの領域を設けることができる。このように潜像部21や背景部22を構成する多数の網点に白抜けの領域を設けることにより、潜像部21と背景部22とのコントラストを低下させて、潜像部21の認識を一層困難とすることができる。
【0030】
また、濃度の低い網点を潜像部21と背景部22とを含む全面にランダムに点在させてもよい(第4の具体例)。
【0031】
また、第5の具体例として後述するように、潜像部21の中に、背景部22を構成する印刷インキと同じ印刷インキを使用した網点を点在させることもできる。この場合には、背景部22の中にも、潜像部21を構成する印刷インキと同じ印刷インキを使用した網点を点在させることが望ましい。
【0032】
なお、潜像部21や背景部22との境界では、潜像部21を構成する網点21aと背景部22を構成する網点22aとが一部で重なっていることが望ましい。このように境界で両網点の一部を重ねることにより、その境界をぼかして潜像部21の認識を一層困難とすることができる。
【0033】
次に、隠蔽層30は潜像部21の内容を認識不可能とする目的で、秘密情報形成層20(潜像部21及び背景部22)を被覆して設けるものである。
【0034】
この隠蔽層30は潜像部21とその背景部22と区別困難な同色系の印刷インキで構成されていることが望ましい。
【0035】
また、この隠蔽層30は、潜像部21を可視化する際にはこれが透視できる必要がある。このため、隠蔽層30は表面を摩擦したときの摩擦熱で変色するインキで構成されている必要がある。望ましくは、前記摩擦熱で透明化するインキである。このようなインキとしては、潜像部21を構成するインキとして前述したインキを使用することが可能である。すなわち、電子供与性呈色性有機化合物、フエノール性水酸基を有する化合物及び融点と曇点との差が5~50℃で分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステルから成るインキ等である。
【0036】
この隠蔽層30も、潜像部21と同様に、略四角形状の網点21a’を有する刷版を使用して印刷すると、基材10上で滲んで略円形状又は略楕円形状の網点21aに変形する。この結果、潜像部21、背景部22及び隠蔽層30のいずれもが略円形状又は略楕円形状の網点で構成されることとなり、潜像部21と背景部22との区別が困難となる。
【0037】
この秘密情報形成体100は、そのままでは潜像部21を背景部22から区別して認識することができない。この秘密情報形成体100を傾けて、その紙面に略平行となる横方向から見た場合でも、潜像部21の内容を認識することは不可能である。
【0038】
一方、この表面をゴムや硬貨で擦ったときにはその摩擦熱で潜像部21及び隠蔽層30が変色する(図5参照)。変色したこれら潜像部21と隠蔽層30とは、常温に戻した後でもその変色状態を維持する。このため、ゴムや硬貨で擦るのを止めた後でも、潜像部21と隠蔽層30とは変色したままである。そして、このため、潜像部21と背景部22との間のコントラストが高くなり、隠蔽層30を通して潜像部21の内容を認識することができる。
【0039】
次に、図6~7を参照して、本発明の第2の具体例を説明する。図6~7は本発明の第2の具体例に係り、図6(a)は潜像部21を印刷する刷版の一部領域Aの拡大図、図6(b)は印刷した網点が滲んだ前記領域Aの拡大図である。また、図7は背景部22を印刷する刷版の一部領域Bの拡大図である。
【0040】
この例は、潜像部21を、互に濃度が異なる2種類の略四角形状の網点21a’,21b’を有する刷版で印刷したものである(図6(a)参照)。そして、こうして印刷された網点21a’,21b’は、いずれも、基材10上で滲んで略円形状又は略楕円形状の網点21a,21bに変形する(図6(b)参照)。
【0041】
なお、背景部22も、同様に、互に濃度が異なる2種類の網点22aと22bを有する刷版で印刷したものである(図7参照)。この網点22aの形状はそのまま基材10上に再現される。
【0042】
また、図8,9は本発明の第3の具体例に係り、図8(a)は潜像部21を印刷する刷版の一部領域Aの拡大図、図8(b)は印刷した網点が滲んだ前記領域Aの拡大図である。また、図9は背景部22を印刷する刷版の一部領域Bの拡大図である。
【0043】
この例は、潜像部21及び背景部22の一部に、それぞれ、白抜けの領域21c,22cを設けたもので、その他は第1の具体例と同様である。なお、図8(a)では刷版における白抜けの領域21c’を略四角形状に描き、図8(b)では秘密情報形成体の白抜けの領域21cを略円形状又は略楕円形状に描いているが、もちろん、白抜けの領域21cに形状があるわけではない。
【0044】
次に、図10,11は本発明の第4の具体例に係り、図10は潜像部21の一部領域Aの拡大図である。また、図11は背景部22の一部領域Bの拡大図である。
【0045】
この例は、潜像部21と背景部22とを含む全面に濃度の低い網点xをランダムに点在させた例である。この網点xは、潜像部21を印刷する刷版や背景部22を印刷する刷版とは別の刷版を使用して、基材10の全面に均一に網点xが点在するように印刷すればよい。印刷インキとしては、背景部22のインキと同様に、表面を摩擦したときにも変色しないインキで構成することができる。また、刷版の網点は略円形状又は略楕円形状でよい。
【0046】
次に、図12,13は本発明の5の具体例に係り、図12は潜像部の一部領域Aの拡大図である。図13は背景部22の一部領域Bの拡大図である。
【0047】
この例は、摩擦熱で変色する印刷インキの略四角形状の網点21a’を有する刷版で潜像部21を印刷すると共に、この潜像部21の中に、背景部22を構成する印刷インキと同じ印刷インキの網点21dが点在するように別の刷版で印刷したものである。略四角形状の網点21a’は基材10上で滲んで略円形状又は略楕円形状の網点21aに変形する(図12参照)。
【0048】
また、この例では、同様に、摩擦熱で変色しない印刷インキの略円形状又は略楕円形状の網点22aを有する刷版で背景部22を印刷すると共に、この背景部22の中に、潜像部21を構成する印刷インキと同じ印刷インキの略四角形状の網点が点在するように別の刷版で印刷したものである。略四角形状の網点は基材10上で滲んで略円形状又は略楕円形状の網点22dに変形する(図13参照)。
【0049】
次に、図14は本発明の第6の具体例に係る秘密情報形成体200の断面図であり、こ
の秘密情報形成体は隠蔽層30の上に第2の隠蔽層40を積層して構成したもので、その他は第1具体例に係る秘密情報形成体100と同様である。このように隠蔽層30に重ねてこの上に第2隠蔽層40を積層することにより、潜像部21の可視化の前に潜像部21を認識することが一層困難となる。
【0050】
この第2隠蔽層40は、隠蔽層30と同様に、潜像部21とその背景部22と区別困難な同色系の印刷インキで構成されていることが望ましい。また、秘密情報形成体300の表面を擦って潜像部21を可視化するため、第2隠蔽層40も、隠蔽層30と同様に、表面を摩擦したときの摩擦熱で変色するインキで構成されている必要がある。望ましくは、前記摩擦熱で透明化するインキである。このようなインキとしては、潜像部21や隠蔽層30を構成するインキとして前述したインキを使用することが可能である。なお、この第2隠蔽層40も印刷インキの多数の網点の集合で構成することができる。網点は、略四角形状、もしくは略円形状又は略楕円形状のいずれでもよいが、略四角形状であることが望ましい。
【符号の説明】
【0051】
100,200:秘密情報形成体
10:基材
20:秘密情報形成層
21:潜像部 21a:潜像部の略円形状又は略楕円形状の網点 21a’:潜像部を印刷する刷版の略四角形状の網点
22:背景部 22a:背景部の網点
30:隠蔽層
40:第2隠蔽層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14