(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】画像形成システム、利用者端末、画像形成装置、印刷要求送信プログラム、及び画像形成プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20240723BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240723BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20240723BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G06F3/12 367
G06F3/12 359
G06F3/12 338
B41J29/38 203
B41J29/00 Z
G06F3/12 322
G06F3/12 307
G06F3/12 392
H04N1/00 912
H04N1/00 127B
(21)【出願番号】P 2020120574
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 学
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-038440(JP,A)
【文献】特開2011-102030(JP,A)
【文献】特開2013-235065(JP,A)
【文献】特開2016-092638(JP,A)
【文献】特開2017-007271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/12
B41J29/00-29/70
H04N1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末側プロセッサを備える利用者端末と、
それぞれ装置側プロセッサを備える
第1画像形成装置
及び第2画像形成装置とを含み、
前記端末側プロセッサは、
前記
第1画像形成装置への印刷要求の送信指示を利用者から受け付けたときに、前記印刷要求を前記
第1画像形成装置
及び前記第2画像形成装置へ送信せずに前記印刷要求を保持し、前記利用者を示す利用者情報を前記
第1画像形成装置へ送信し、
前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者端末から受信した前記利用者情報を前記第2画像形成装置に転送し、
前記第2画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者情報に基づいて、前記利用者が前記第2画像形成装置に接近したことを検出した場合に、前記印刷要求の送信指示が前記第1画像形成装置へのものであることを前記利用者に通知し、
前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者情報に基づいて、前記利用者が前記
第1画像形成装置に接近したことを検出した場合に、送信要求信号を前記利用者端末に送信し、
前記端末側プロセッサは、
前記送信要求信号を受信した場合に、保持していた前記印刷要求を前記
第1画像形成装置に送信する、
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
端末側プロセッサを備える利用者端末と、
それぞれ装置側プロセッサを備える
第1画像形成装置
及び第2画像形成装置とを含み、
前記端末側プロセッサは、
前記
第1画像形成装置への印刷要求の送信指示を利用者から受け付けたときに、印刷要求、及び、前記印刷要求の送信指示をした利用者を示す利用者情報を前記
第1画像形成装置へ送信し、
前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者端末から受信した前記利用者情報を前記第2画像形成装置に転送し、
前記第2画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者情報に基づいて、前記利用者が前記第2画像形成装置に接近したことを検出した場合に、前記印刷要求の送信指示が前記第1画像形成装置へのものであることを前記利用者に通知し、
前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者情報に基づいて、前記利用者が前記
第1画像形成装置に接近したことを検出した場合に、前記印刷要求の状態に関する内容を表す状態情報を前記利用者に通知する、
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項3】
前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者が前記
第1画像形成装置に接近したことを検出した後、前記利用者を認証するに先立って、前記利用者に関する情報を前記
第1画像形成装置から出力する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者による操作に依らずに、受信した前記印刷要求に係る対象データの保存領域を示す情報を前記
第1画像形成装置から出力する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記
第1画像形成装置が処理済みの印刷要求に係る対象データを削除せずに保持する設定である場合に、前記印刷要求に係る印刷処理が完了した後に、当該印刷要求に係る対象データが保持されることを前記利用者に通知する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、利用者端末、画像形成装置、印刷要求送信プログラム、及び画像形成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無線端末が画像形成装置から所定のログイン距離内となったときに、当該無線端末を保持している利用者が当該画像形成装置にログインするプリントシステムであって、画像形成装置に処理要求を入力した利用者のログイン距離を、当該画像形成装置に処理要求を入力していない利用者のログイン距離よりも広範囲とするプリントシステムが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、利用者から受け付けた処理要求を処理する画像形成装置であって、処理要求を処理中に利用者が画像処理装置から離れた場合、処理要求に係る処理が完了した際に、当該利用者が使用する情報処理端末に対して通知を出力する画像処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-65369号公報
【文献】特開2006-150778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、利用者が使用する利用者端末から画像形成装置に対して印刷要求を送信し、その後、利用者が当該画像形成装置まで移動して、当該画像処理装置に対して当該印刷要求に係る処理の実行指示を入力する画像形成システムが従来から知られている。
【0006】
従来の画像形成システムにおいては、利用者端末から印刷要求が画像形成装置に向けて送信された後において、利用者が当該印刷要求の状態を把握できないという問題があった。このような問題があると、例えば、利用者が安心して画像形成システムを利用できなくなる場合がある。例えば、画像形成装置に対する印刷要求の送信指示を利用者端末に入力した利用者が、自分が印刷要求を送ったと思っている画像形成装置まで移動したときに、当該画像形成装置が印刷要求を保持していないことが判明した場合を考える。このような場合、当該利用者は、自分が間違えて他の画像形成装置に印刷要求を送ってしまった、他人が不当に自分の印刷要求の実行指示を入力した上で当該印刷要求に係る処理を実行して印刷物を持ち去ってしまった、あるいは、画像形成システムの不具合などに起因して当該印刷要求が消失してしまった、など印刷要求を保持しない要因が様々存在する。これらの特定が難しいため、特に画像形成装置が公共の場に置かれている際に、そのような画像形成装置の利用を禁止する企業もある。
【0007】
本発明の目的は、利用者端末から画像処理装置に送信された印刷要求の状態を利用者が把握可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、端末側プロセッサを備える利用者端末と、それぞれ装置側プロセッサを備える第1画像形成装置及び第2画像形成装置とを含み、前記端末側プロセッサは、前記第1画像形成装置への印刷要求の送信指示を利用者から受け付けたときに、前記印刷要求を前記第1画像形成装置及び前記第2画像形成装置へ送信せずに前記印刷要求を保持し、前記利用者を示す利用者情報を前記第1画像形成装置へ送信し、前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者端末から受信した前記利用者情報を前記第2画像形成装置に転送し、前記第2画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者情報に基づいて、前記利用者が前記第2画像形成装置に接近したことを検出した場合に、前記印刷要求の送信指示が前記第1画像形成装置へのものであることを前記利用者に通知し、前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者情報に基づいて、前記利用者が前記第1画像形成装置に接近したことを検出した場合に、送信要求信号を前記利用者端末に送信し、前記端末側プロセッサは、前記送信要求信号を受信した場合に、保持していた前記印刷要求を前記第1画像形成装置に送信する、ことを特徴とする画像形成システムである。
請求項2に係る発明は、端末側プロセッサを備える利用者端末と、それぞれ装置側プロセッサを備える第1画像形成装置及び第2画像形成装置とを含み、前記端末側プロセッサは、前記第1画像形成装置への印刷要求の送信指示を利用者から受け付けたときに、印刷要求、及び、前記印刷要求の送信指示をした利用者を示す利用者情報を前記第1画像形成装置へ送信し、前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者端末から受信した前記利用者情報を前記第2画像形成装置に転送し、前記第2画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者情報に基づいて、前記利用者が前記第2画像形成装置に接近したことを検出した場合に、前記印刷要求の送信指示が前記第1画像形成装置へのものであることを前記利用者に通知し、前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者情報に基づいて、前記利用者が前記第1画像形成装置に接近したことを検出した場合に、前記印刷要求の状態に関する内容を表す状態情報を前記利用者に通知する、ことを特徴とする画像形成システムである。
請求項3に係る発明は、前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者が前記第1画像形成装置に接近したことを検出した後、前記利用者を認証するに先立って、前記利用者に関する情報を前記第1画像形成装置から出力する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成システムである。
請求項4に係る発明は、前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記利用者による操作に依らずに、受信した前記印刷要求に係る対象データの保存領域を示す情報を前記第1画像形成装置から出力する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成システムである。
請求項5に係る発明は、前記第1画像形成装置の前記装置側プロセッサは、前記第1画像形成装置が処理済みの印刷要求に係る対象データを削除せずに保持する設定である場合に、前記印刷要求に係る印刷処理が完了した後に、当該印刷要求に係る対象データが保持されることを前記利用者に通知する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成システムである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1又は2に係る発明によれば、利用者端末から画像処理装置に送信された印刷要求の状態を利用者が把握することができる。
請求項3に係る発明によれば、利用者は、印刷要求の送信指示の対象である画像形成装置が自分の印刷要求を受信していることを確認することができる。
請求項4に係る発明によれば、利用者は、印刷要求の送信指示の対象である画像形成装置に自分の印刷要求に係る対象データが保存されていることを確認することができる。
請求項5に係る発明によれば、印刷要求に係る印刷処理が完了した後に、画像形成装置に対象データが保持されてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る画像形成システムの構成概略図である。
【
図2】第1実施形態に係るユーザ端末の構成概略図である。
【
図3】第1実施形態に係る画像形成装置の構成概略図である。
【
図4】第1実施形態に係る画像形成システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】ユーザ端末から第1画像形成装置にユーザ情報、又は、ジョブ及びユーザ情報が送信される様子を示す図である。
【
図6】ユーザ端末が第2画像形成装置に接近した様子を示す図である。
【
図7】第2実施形態に係る画像形成システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る画像形成システム10の構成概略図である。画像形成システム10は、1又は複数の利用者端末としてのユーザ端末12、及び、1又は複数の画像形成装置14を含んで構成される。ユーザ端末12及び画像形成装置14は、LANなどの通信回線16を介して互いに通信可能に接続されている。また、後述するように、本実施形態では、ユーザ端末12と画像形成装置14は近距離無線通信により通信することも可能である。画像形成システム10においては、利用者(ユーザ)からの指示に応じて、印刷要求としての印刷ジョブがユーザ端末12から画像形成装置14に送信される。そして、ユーザが画像形成装置14まで移動し、画像形成装置14を操作して印刷ジョブの実行指示を入力すると、画像形成装置14が当該印刷ジョブを実行して、印刷ジョブの対象データが印刷された印刷媒体を出力する。
【0012】
画像形成システム10は、例えば、様々な企業に所属する複数のユーザがオフィスフロアを共有して業務を行うシェアードオフィスで用いられる。そのようなシェアードオフィスにおいては、各ユーザはそれぞれユーザ端末12を有しているが、画像形成装置14は様々な企業に所属する複数のユーザで共用となっている場合がある。シェアードオフィスにおいては、他社のユーザが画像形成装置14を使用する場合があるため、画像形成装置14に送信済みの印刷ジョブの状態が分からないことに起因するユーザの不安は、より大きいものとなり得る。
【0013】
もちろん、画像形成システム10は、シェアードオフィス以外にも様々な環境で用いられ得る。
【0014】
図2は、ユーザ端末12の構成概略図である。本実施形態では、ユーザ端末12は、例えばスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末であるが、ユーザ端末12としては、以下に説明する機能を発揮する限りにおいてどのような装置であってもよく、据え置き型のパーソナルコンピュータなどの非携帯端末であってもよい。また、画像形成システム10が複数のユーザ端末12を有している場合、各ユーザ端末12は同等の構造を有している。
【0015】
通信インターフェース30は、例えばネットワークアダプタなどを含んで構成される。通信インターフェース30は、通信回線16を介して画像形成装置14と通信する機能を発揮する。また、ユーザ端末12が携帯端末である場合、通信インターフェース30は、近距離無線通信アダプタを含んで構成され、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、あるいはWi-Fi(登録商標)などの近距離無線通信を介して画像形成装置14と通信する機能を発揮する。
【0016】
ディスプレイ32は、例えば液晶パネルなどを含んで構成される。ディスプレイ32には種々の画面が表示される。特に、ディスプレイ32には、ユーザ端末12から印刷ジョブが送信するための印刷ジョブ送信画面、あるいは、後述の通知処理部42による種々の通知画面が表示される。
【0017】
入力インターフェース34は、例えばタッチパネルやボタンなどを含んで構成される。入力インターフェース34は、ユーザからの種々の指示、特に印刷ジョブの送信指示を入力するために用いられる。
【0018】
メモリ36は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ROM(Read Only Memory)、あるいはRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されている。メモリ36は、後述のプロセッサ38とは別に設けられてもよいし、少なくとも一部がプロセッサ38の内部に設けられていてもよい。メモリ36には、ユーザ端末12の各部を動作させるための印刷要求送信プログラムが記憶される。また、メモリ36には、ユーザ端末12を一意に識別する端末IDが記憶される。
【0019】
端末側プロセッサとしてのプロセッサ38は、広義的な処理装置を指し、汎用的な処理装置(例えばCPU(Central Processing Unit)など)、及び、専用の処理装置(例えばGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいは、プログラマブル論理デバイスなど)の少なくとも1つを含んで構成される。プロセッサ38としては、1つの処理装置によるものではなく、物理的に離れた位置に存在する複数の処理装置の協働により構成されるものであってもよい。
図2に示す通り、プロセッサ38は、メモリ36に記憶されたプログラムにより、送信処理部40及び通知処理部42としての機能を発揮する。
【0020】
送信処理部40は、通信回線16を介して、画像形成装置14に印刷処理を実行させるための印刷ジョブを画像形成装置14に送信する。印刷ジョブは、印刷処理の対象となる対象データを含む。すなわち、画像形成装置14において印刷ジョブに係る印刷処理が実行されることにより、当該印刷ジョブに含まれる対象データが印刷媒体(例えば紙など)に印刷される。対象データは、例えば文書ファイル(例えば見積書や発注書など)あるいは画像データなどである。
【0021】
また、送信処理部40は、通信回線16を介して、画像形成装置14への印刷ジョブの送信指示をユーザ端末12に入力したユーザを示す、利用者情報としてのユーザ情報を当該画像形成装置14へ送信する。ユーザ情報としては、当該ユーザ自身を示す情報、あるいは、当該ユーザが使用するユーザ端末12を示す情報である。ユーザ自身を示す情報は、例えば、ユーザを一意に識別するユーザIDなどである。ユーザ端末12は、ユーザの認証処理を行うことで当該ユーザのユーザIDを取得することができる。また、ユーザ端末12を示す情報は、例えば、メモリ36に記憶された端末IDなどである。
【0022】
詳しくは後述するように、第1実施形態においては、ユーザから印刷ジョブの送信指示を受け付けたタイミングでは、送信処理部40は、印刷ジョブを画像形成装置14へ送信せずに当該印刷ジョブを保持し、ユーザ情報のみを画像形成装置14に送信する。その後、ユーザが画像形成装置14に接近したタイミングで、送信処理部40は当該印刷ジョブを画像形成装置14に送信する。
【0023】
また、送信処理部40は、後述する条件を満たす場合に、メモリ36に記憶されている端末IDを近距離無線通信により発信する。
【0024】
通知処理部42は、ユーザに対する種々の通知を出力する処理を実行する。通知処理部42は、通知が出力される条件を自ら判定した上で通知を出力することもできるし、画像形成装置14からの通知指示に基づいて通知を出力することもできる。本実施形態では、種々の通知は、ディスプレイ32に表示させることによって出力されるが、それに加えてあるいは代えて、ユーザ端末12に設けられたスピーカ(不図示)から音声として出力するようにしてもよい。
【0025】
プロセッサ38が有する各部の処理の詳細、あるいは、プロセッサ38が有する各部が処理を行うタイミングなどについては、
図4に示すフローチャートに沿って後述する。
【0026】
図3は、画像形成装置14の構成概略図である。本実施形態では、画像形成装置14は、プリント、コピー、スキャン、FAX送信、あるいは電子文書の保存などの機能を備えた複合機であるが、画像形成装置14としては、以下に説明する機能を発揮する限りにおいて、どのような装置であってもよい。また、画像形成システム10が複数の画像形成装置14を有している場合、各画像形成装置14は同等の構造を有している。
【0027】
通信インターフェース50は、例えばネットワークアダプタなどを含んで構成される。通信インターフェース50は、通信回線16を介してユーザ端末12と通信する機能を発揮する。また、通信インターフェース50は、近距離無線通信アダプタを含んで構成され、BLEあるいはWi-Fiなどの近距離無線通信を介してユーザ端末12と通信する機能を発揮する。
【0028】
ディスプレイ52は、例えば液晶パネルなどを含んで構成される。ディスプレイ52には種々の画面が表示される。特に、ディスプレイ52には、ユーザ端末12から送信された印刷ジョブの処理に関する印刷処理画面、あるいは、後述の通知制御部70による種々の通知画面が表示される。
【0029】
入力インターフェース54は、例えばタッチパネルやボタンなどを含んで構成される。入力インターフェース54は、ユーザからの種々の指示、特に印刷ジョブに係る印刷処理の実行指示を入力するために用いられる。
【0030】
プリンタ56は、例えば、紙送り機構、感光体ドラム、あるいはカートリッジなどを含んで構成される。プリンタ56は、ユーザ端末12から受け付けた印刷ジョブを実行するジョブ処理部である。プリンタ56により、印刷ジョブの対象となる対象データが紙などの印刷媒体に印刷され、印刷済みの印刷媒体が出力される。
【0031】
メモリ58は、例えばHDD、SSD、ROM、あるいはRAMなどを含んで構成されている。メモリ58は、後述のプロセッサ64とは別に設けられてもよいし、少なくとも一部がプロセッサ64の内部に設けられていてもよい。メモリ58には、画像形成装置14の各部を動作させるための画像形成プログラムが記憶される。また、
図3に示す通り、メモリ58には、ユーザDB(データベース)60及び対象データDB62が記憶される。
【0032】
ユーザDB60は、画像形成装置14のユーザに関する情報を格納するデータベースである。画像形成装置14に対して、画像形成装置14の管理者(例えばシェアードオフィスの管理者)などによってユーザ登録が行われ、ユーザ登録時に入力された種々の情報がユーザDB60に格納される。ユーザDB60には、ユーザID、ユーザ名、及び、当該ユーザが使用するユーザ端末12の端末IDなどが関連付けられて記憶されている。
【0033】
対象データDB62は、印刷ジョブの対象となる対象データを格納するデータベースである。ユーザ端末12から印刷ジョブを受信すると、当該印刷ジョブに含まれる対象データが対象データDB62に格納される。
【0034】
対象データDB62には、複数の保存領域(例えばフォルダ)が定義されており、受信した印刷ジョブに含まれる対象データは、所定のルールに従って選択された保存領域に格納される。通常、ユーザは、印刷ジョブを画像形成装置14に送信した後、画像形成装置14を操作して、複数の保存領域の中から自分の印刷ジョブに対応する対象データを選択した上で印刷ジョブの実行指示を入力する。
【0035】
画像形成装置14においては、印刷ジョブの実行完了後に、処理済みの印刷ジョブに係る対象データを対象データDB62から削除するか、対象データDB62に保持するかを予め設定しておくことができる。対象データを削除する設定となっている場合には、印刷ジョブの実行完了後に、当該印刷ジョブに係る対象データは対象データDB62から自動的に削除される。対象データを保持する設定となっている場合には、印刷ジョブの実行完了後に、当該印刷ジョブに係る対象データは対象データDB62に保持される。この場合であっても、ユーザの指示に応じて、当該対象データを対象データDB62から削除することはできる。
【0036】
装置側プロセッサとしてのプロセッサ64は、広義的な処理装置を指し、汎用的な処理装置(例えばCPUなど)、及び、専用の処理装置(例えばGPU、ASIC、FPGA、あるいは、プログラマブル論理デバイスなど)の少なくとも1つを含んで構成される。プロセッサ64としては、1つの処理装置によるものではなく、物理的に離れた位置に存在する複数の処理装置の協働により構成されるものであってもよい。
図3に示す通り、プロセッサ64は、メモリ36に記憶された画像形成プログラムにより、ユーザ検出部66、ジョブ要求処理部68、通知制御部70、認証部72、処理実行部74、及び共有処理部76としての機能を発揮する。
【0037】
ユーザ検出部66は、ユーザ端末12から送信されたユーザ情報に基づいて、画像形成装置14に印刷ジョブの送信指示を行ったユーザが、自装置、すなわち画像形成装置14に接近したことを検出する。本実施形態では、ユーザ検出部66は、印刷ジョブを送信したユーザ端末12が画像形成装置14に接近したことをもって、当該ユーザ端末12に当該印刷ジョブの送信指示を入力したユーザが画像形成装置14に接近したと判定する。なお、「ユーザ(あるいはユーザ端末12)が画像形成装置14に接近した」とは、ユーザ(あるいはユーザ端末12)が画像形成装置14から所定距離内にあることを意味する。
【0038】
本実施形態では、ユーザ検出部66は、ユーザ端末12と画像形成装置14との間の近距離無線通信によってユーザ端末12の画像形成装置14への接近を検出する。具体的には、まず、ユーザ端末12の送信処理部40は、ユーザからの送信指示に応じて印刷ジョブを画像形成装置14に送信すると、メモリ36に記憶された装置IDの近距離無線通信による発信を開始する。画像形成装置14は、ユーザがユーザ端末12に印刷ジョブの送信指示を入力したことに応じて、ユーザ端末12からユーザ情報(つまり当該ユーザのユーザID又は当該ユーザ端末12の端末ID)を受信する。そして、ユーザ検出部66は、ユーザDB60を参照し、受信したユーザIDに関連付けられた端末IDを特定する。ユーザ端末12からユーザ情報として端末IDを受信している場合は当該特定処理は不要である。その上で、ユーザ検出部66は、通信インターフェース50が近距離無線通信にてユーザ端末12から当該端末IDを受信したことをもって、当該ユーザ端末12が画像形成装置14に接近したと判定する。近距離無線通信において、距離が近づく程通信強度が大きくなる場合には、ユーザ検出部66は、通信インターフェース50がユーザ端末12から所定の通信強度以上の通信強度で当該端末IDを受信した場合に、当該ユーザ端末12が画像形成装置14に接近したと判定するようにしてもよい。
【0039】
ユーザ検出部66は、ユーザ端末12と画像形成装置14との間の近距離無線通信以外の方法で、ユーザの画像形成装置14への接近を検出するようにしてもよい。例えば、ユーザがGPS(Global Positioning System)受信機を携帯している場合には、ユーザ検出部66は、当該GPS受信機から通信回線16を介して送信されてくるGPS受信機の位置を示す位置情報と、既知の(予めメモリ58に記憶されている)自装置の位置を示す位置情報とに基づいて、ユーザの画像形成装置14への接近を検出するようにしてもよい。この方法は、ユーザ端末12が非携帯端末である場合に有効である。
【0040】
また、ユーザ検出部66は、ユーザが画像形成装置14を操作(例えば認証操作)したことによって、ユーザの画像形成装置14への接近を検出するようにしてもよい。しかしながら、第1実施形態においては、後述のように、ユーザ検出部66によってユーザの画像形成装置14への接近が検出されたことをもって、ユーザ端末12から印刷ジョブが送信されるところ、この方法であると、既にユーザが画像形成装置14に到着してから画像形成装置14が印刷ジョブを受信することになる。したがって、画像形成装置14が、印刷ジョブを受信して印刷ジョブに含まれる対象データを対象データDB62に格納する処理を行っている間、ユーザは少し待つことになる。この点、近距離無線通信などによってユーザの画像形成装置14への接近を検出する場合は、ユーザが画像形成装置14に到着する前に、画像形成装置14が印刷ジョブを受信できるから、ユーザが画像形成装置14に到着するまでの間に、対象データの格納処理などを行うことができる。これにより、ユーザはスムーズに当該印刷ジョブの実行指示を入力可能となる。すなわち、ユーザの待ち時間を低減することができる。
【0041】
なお、ユーザ検出部66がユーザ(すなわちユーザ端末12)の接近を検出した場合、ユーザ端末12の送信処理部40は、装置IDの近距離無線通信による発信を停止してよい。
【0042】
ジョブ要求処理部68は、ユーザの画像形成装置14への接近をユーザ検出部66が検出した場合に、当該ユーザが使用するユーザ端末12に対して、印刷ジョブの送信を要求する送信要求信号としてのジョブ要求信号を送信する。ユーザ端末12の送信処理部40は、ユーザ端末12がジョブ要求信号を受信すると、保持していた印刷ジョブを画像形成装置14に送信し、画像形成装置14は当該印刷ジョブを受信する。
【0043】
通知制御部70は、ユーザに対する種々の通知を出力する処理を実行する。通知制御部70は、ディスプレイ52に表示させることによって通知を出力することができ、それに加えてあるいは代えて、画像形成装置14に設けられたスピーカ(不図示)から音声として出力するようにしてもよい。さらに、通知制御部70は、通知指示信号をユーザ端末12に送信することで、ユーザ端末12の通知処理部42に通知を出力させることができる。つまり、通知制御部70の制御により、ユーザ端末12からユーザへ向けて通知を出力させることができる。
【0044】
認証部72は、ユーザを認証する認証処理を行う。例えば、画像形成装置14は、カードリーダ(不図示)を備えており、画像形成装置14は、ユーザがカードリーダに翳した、ユーザIDが記録されたカードを読み取ることでユーザIDを取得する。認証部72は、カードリーダが所得したユーザIDとユーザDB60に格納された情報とを照合することで認証処理を行う。もちろん、ユーザを認証する方法はその他の方法(生体認証、あるいは、ユーザIDとパスワードの手入力など)であってもよい。
【0045】
処理実行部74は、ユーザ端末12から受信した印刷ジョブに係る処理を実行する。具体的には、処理実行部74は、印刷ジョブの指示に沿って、印刷ジョブに含まれる対象データを印刷媒体に印刷させ、印刷済みの印刷媒体を出力するようにプリンタ56を制御する。
【0046】
共有処理部76は、画像形成システム10が複数の画像形成装置14を備えている場合に、画像形成装置14がユーザ端末12からユーザ情報を受信したという情報を他の画像形成装置14と共有する。具体的には、共有処理部76は、ユーザ端末12から受信したユーザ情報を他の画像形成装置14に転送する。他の画像形成装置14が複数ある場合は、共有処理部76は、ユーザ端末12から受信したユーザ情報をブロードキャストする。他の画像形成装置14は、ユーザ情報を画像形成装置14から受信したことで、当該ユーザ情報の送信元である画像形成装置14が、当該ユーザ情報が示すユーザの印刷ジョブの送信指示の対象であることを把握することができる。なお、画像形成装置14は、ユーザ情報と共に画像形成装置14を一意に識別する装置IDを他の画像形成装置14にブロードキャストするようにしてもよい。この場合、装置IDはメモリ58に予め記憶されている。
【0047】
プロセッサ64が有する各部の処理の詳細、あるいは、プロセッサ64が有する各部が処理を行うタイミングなどについては、
図4に示すフローチャートに沿って後述する。
【0048】
以下、
図4に示すフローチャートに従って、第1実施形態における画像形成システム10の処理の流れ、及び、ユーザ端末12及び画像形成装置14の処理の詳細を説明する。
【0049】
ステップS10において、ユーザ端末12の入力インターフェース34は、ユーザから指定された対象データを含む印刷ジョブの送信指示、及び、当該印刷ジョブの送信先である画像形成装置14の指定を受け付ける。ユーザは、印刷ジョブの送信指示を入力した後、指定した画像形成装置14に当該印刷ジョブの実行指示を入力すべく、当該画像形成装置14への移動を開始する。
【0050】
ステップS12において、送信処理部40は、ユーザからの送信指示に係る印刷ジョブを画像形成装置14に送信せずに、当該印刷ジョブをメモリ36に保持させ、当該ユーザを示すユーザ情報を指定された画像形成装置14に送信する。ユーザ情報とは、上述の通り、ユーザID及び端末IDの少なくとも一方である。
【0051】
送信処理部40は、ユーザ情報を画像形成装置14に送信した後、近距離無線通信にて、メモリ36に記憶されている端末IDの発信を開始する。
【0052】
ステップS14において、画像形成装置14のユーザ検出部66は、ユーザ端末12からユーザ情報を受信すると、当該ユーザ情報に基づいて、印刷ジョブの送信指示をしたユーザの自装置への接近の検出処理を開始する。上述のように、本実施形態では、ユーザ検出部66は、ステップS12で受信したユーザ情報に基づいて特定された端末IDを、通信インターフェース50が近距離無線通信にてユーザ端末12から受信した場合に当該ユーザが自装置に接近したと検出する。印刷ジョブの送信指示をしたユーザの自装置への接近をユーザ検出部66が検出すると、ステップS16に進む。
【0053】
ステップS16において、ジョブ要求処理部68は、印刷ジョブの送信を要求するためのジョブ要求信号をユーザ端末12に送信する。ステップS14にて、ユーザ端末12と画像形成装置14との間において近距離無線通信が確立させることができるため、ジョブ要求処理部68は、近距離無線通信でジョブ要求信号を送信することができる。また、特にユーザ端末12が非携帯端末である場合などにおいては、ジョブ要求処理部68は、ステップS12にて受信したユーザ情報の送信元のIPアドレス(つまりユーザ端末12のIPアドレス)に基づいて、通信回線16を介してジョブ要求信号を送信してもよい。
【0054】
ステップS18において、ユーザ端末12の送信処理部40は、画像形成装置14から受信したジョブ要求信号に基づいて、ステップS12で保持しておいた印刷ジョブを画像形成装置14に送信する。この際、当該印刷ジョブがステップS14で画像形成装置14への接近が検出されたユーザに係るものであることが明確となるように、送信処理部40は、印刷ジョブと当該ユーザのユーザ情報とを関連付けて送信するとよい。画像形成装置14は、ユーザ端末12から送信された印刷ジョブを受信して、当該印刷ジョブに含まれる対象データを対象データDBの所定の保存場所(例えばフォルダ)に格納する処理を行う。
【0055】
ステップS20において、画像形成装置14の通知制御部70は、ユーザに認証要求を通知する。ステップS20のタイミングでは、ユーザは、未だ画像形成装置14に到着していない場合があるため、本実施形態では、通知制御部70は、認証要求に係る通知指示信号をユーザ端末12に送信する。なお、ユーザ端末12が非携帯端末である場合には、通知制御部70は、認証要求の通知を画像形成装置14から出力する(例えば通知メッセージをディスプレイ52に表示させる)ようにしてもよい。
【0056】
ステップS22において、ユーザ端末12の通知処理部42は、ステップS20で受信した通知指示信号に応じて、ユーザに画像形成装置14への認証を促す通知を出力する。例えば、通知処理部42は、「ご指定のプリンタに文書が蓄積されました。プリンタへログインしてください。」などのメッセージをディスプレイ32に表示させる。
【0057】
ステップS24において、画像形成装置14の通知制御部70は、ステップS12又はステップS18で受信したユーザ情報と、ユーザDB60とに基づいて、当該ユーザが画像形成装置14に認証するに先立って、当該ユーザに関する情報を画像形成装置14から出力することでユーザに通知する。例えば、通知制御部70は、ステップS12で受信したユーザ情報と、ユーザDB60とに基づいて、当該ユーザのユーザ名を特定し、特定したユーザ名をディスプレイ52に表示させる。
【0058】
ステップS26において、ユーザが画像形成装置14に到着し、例えばユーザIDが記録されたカードを画像形成装置14のカードリーダに読み取らせると、認証部72は、取得したユーザIDに基づいて当該ユーザの認証処理を実行する。
【0059】
ステップS28において、通知制御部70は、ユーザの操作に依らずに、ステップS18で受信した印刷ジョブに係る対象データの対象データDB62における保存場所を示す情報をユーザに通知する。例えば、通知制御部70は、「フォルダ「AAA」を確認してください」などのメッセージをディスプレイ52に表示させる。さらに、通知制御部70は、当該対象データの保存場所のみならず、当該保存場所に保存された当該対象データを示す情報をユーザに通知してもよい。例えば、通知制御部70は、「先ほど受け付けたプリントジョブの文書は、フォルダ「AAA」にある文書「BBB」です。文書「BBB」を選択してください。」などのメッセージをディスプレイ52に表示させる。
【0060】
ステップS30において、ユーザは自分の印刷ジョブに係る対象データを選択した上で、当該印刷ジョブの実行指示を入力インターフェース54から入力する。処理実行部74は、当該実行指示に応じて、当該印刷ジョブに係る印刷処理をプリンタ56に実行させる。
【0061】
ステップS32において、通知制御部70は、画像形成装置14の設定が、印刷ジョブの実行完了後に、当該印刷ジョブに係る対象データを対象データDB62に保持する設定となっているか否かを判定する。対象データを保持する設定となっている場合には、ステップS34に進み、対象データを保持しない設定となっている場合には、ステップS34及びステップS36をバイパスしてステップS38に進む。
【0062】
ステップS34において、通知制御部70は、印刷ジョブに係る印刷処理が完了した後に、当該印刷ジョブに係る対象データが対象データDB62に保持されることをユーザに通知する。例えば、通知制御部70は、「文書「BBB」が印刷完了後にもプリンタに保持されます。」などのメッセージをディスプレイ52に表示させる。また、このタイミングにおいて既にユーザが画像形成装置14から離れてしまっている可能性もあるため、通知制御部70は、通知指示信号をユーザ端末12に送信し、上記通知をユーザ端末12から出力させるようにしてもよい。
【0063】
ステップS36において、処理実行部74は、ユーザから当該対象データの削除指示を受けたか否かを判定する。削除指示を受けた場合は、ステップS38に進み、処理実行部74は、当該対象データを対象データDB62から削除する。削除指示を受けなかった場合は、処理実行部74は、当該対象データを対象データDB62から削除せずに処理を終了する
【0064】
ステップS40において、通知制御部70は、当該対象データが対象データDB62から削除されたことをユーザに通知する。本実施形態では、通知制御部70は、当該対象データが削除されたことに係る通知指示信号をユーザ端末12に送信する。なお、通知制御部70は、当該対象データが削除されたことの通知を画像形成装置14から出力するようにしてもよい。
【0065】
ステップS42において、ユーザ端末12の通知処理部42は、ステップS40で受信した通知指示信号に応じて、ユーザに当該対象データが削除されたことの通知を出力する。例えば、通知処理部42は、「文書「BBB」はプリンタから安全に削除されました。」などのメッセージをディスプレイ32に表示させる。
【0066】
以上が第1実施形態における画像形成システム10の処理の流れである。第1実施形態では、ユーザ端末12においてユーザが印刷ジョブの送信指示を入力したタイミングでは印刷ジョブが画像形成装置14に送信されず(ステップS12)、ユーザが画像形成装置14に接近したときに、初めてユーザ端末12から画像形成装置14に印刷ジョブが送信される(ステップS18)。つまり、ユーザが画像形成装置14に接近しない限り印刷ジョブがユーザ端末12から送信されることはないし、必ずユーザの近くにある画像形成装置14に印刷ジョブが送信されることになる。したがって、ユーザは、少なくとも、自分の近くにある画像形成装置14に印刷ジョブが送信されたことを把握可能となる。つまり、印刷ジョブを送信した後の印刷ジョブの状態(この場合は印刷ジョブの所在)を把握可能となる。
【0067】
また、第1実施形態では、ユーザが画像形成装置14に接近したときに、初めてユーザ端末12から画像形成装置14に印刷ジョブが送信されるから、ユーザが印刷ジョブの送信指示を入力したタイミングで印刷ジョブが画像形成装置14に送信される場合に比して、画像形成装置14に印刷ジョブが保持されている時間が短くなるため、印刷ジョブの漏洩に関する安全性も向上される。例えば、他人が不当に自分の印刷要求に係る処理を実行してしまうなどといったことが生じる可能性が低減される。
【0068】
また、ユーザが画像形成装置14に認証する前にユーザに関する情報(例えばユーザ名など)がディスプレイ52に表示される(ステップS24)から、ユーザは、印刷ジョブの送信先として指定した画像形成装置14が、当該印刷ジョブを受信していることを把握することができる。
【0069】
また、ユーザの操作に依らずに、印刷ジョブに係る対象データの対象データDB62における保存場所を示す情報がユーザに通知される(ステップS28)から、ユーザは、画像形成装置14に自分の印刷ジョブに係る対象データが保存されていることを確認することができる。また、ユーザは、当該印刷ジョブの実行指示を入力する際に、当該印刷ジョブに係る対象データの保存場所を容易に把握することもできる。
【0070】
さらに、画像形成装置14の設定が、印刷ジョブの実行完了後に当該印刷ジョブに係る対象データを対象データDB62に保持する設定となっている場合にユーザに通知される(ステップS34)から、印刷ジョブに係る印刷処理が完了した後に、画像形成装置14に対象データが保持されてしまうことを抑制することができる。
【0071】
次に、
図5及び
図6を参照して、画像形成装置14の共有処理部76の処理の詳細について説明する。ここでは、画像形成システム10が、第1画像形成装置14A及び第2画像形成装置14Bを備える場合を考える。
【0072】
まず、ユーザ端末12の送信処理部40は、第1画像形成装置14Aへの印刷ジョブの送信指示をユーザから受け付けたときに、
図5に示すように、当該ユーザのユーザ情報を第1画像形成装置14Aへ送信する。すると、第1画像形成装置14Aの共有処理部76は、同じく
図5に示すように、ユーザ端末12から受信したユーザ情報を第2画像形成装置14Bに転送する。上述の通り、画像形成システム10が第1画像形成装置14A以外の画像形成装置14を複数有している場合は、第1画像形成装置14Aの共有処理部76は、ユーザ情報を他の画像形成装置14にブロードキャストしてよい。これにより、第2画像形成装置14Bは、当該ユーザ情報の送信元である第1画像形成装置14Aが、当該ユーザ情報が示すユーザの印刷ジョブの送信指示の対象であることを把握する。
【0073】
ここで、
図6に示すように、ユーザが誤って、印刷ジョブの送信指示の対象である第1画像形成装置14Aではなく、第2画像形成装置14Bに接近してしまったとする。すると、第2画像形成装置14Bのユーザ検出部66は、上述の処理にて第2画像形成装置14Bに接近してきたユーザを検出する。
【0074】
この場合、第2画像形成装置14Bの通知制御部70は、第1画像形成装置14Aから受信したユーザ情報に基づいて、第2画像形成装置14Bに接近してきたユーザに、当該ユーザの印刷ジョブの送信指示が第1画像形成装置14Aへのものであることを通知する。具体的には、第2画像形成装置14Bの通知制御部70は、第2画像形成装置14Bのディスプレイ52に、「プリントジョブの対象は、第1画像形成装置です。」などのメッセージを表示する。あるいは、通知制御部70は、通知指示信号をユーザ端末12に送信し、ユーザ端末12から通知を出力させるようにしてもよい。
【0075】
これにより、ユーザは、自分が印刷ジョブの送信先として指定した画像形成装置14とは異なる画像形成装置14に近づいてしまったことを容易に把握することができる。
【0076】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る画像形成システム10、ユーザ端末12、及び画像形成装置14の構成については、第1実施形態と同等であることから、ここでは説明を省略する。なお、第2実施形態では、画像形成装置14のプロセッサ64は、ジョブ要求処理部68としての機能を有していなくてもよい。
【0077】
第1実施形態では、ユーザ端末12の送信処理部40は、ユーザから印刷ジョブの送信指示を受け付けたタイミングでは、印刷ジョブを送信せずにユーザ情報を画像形成装置14に送信していたが、第2実施形態では、ユーザ端末12の送信処理部40は、画像形成装置14への印刷ジョブの送信指示をユーザから受け付けたときに、印刷ジョブ及び当該ユーザを示すユーザ情報を画像形成装置14に送信する。その上で、画像形成装置14の通知制御部70は、当該ユーザが自装置(つまり画像形成装置14)に接近したことをユーザ検出部66が検出した場合に、当該印刷ジョブの状態を示す状態情報をユーザに通知する。以下、
図7に示すフローチャートに従って、第2実施形態における画像形成システム10の処理の流れ、及び、ユーザ端末12及び画像形成装置14の処理の詳細を説明する。
【0078】
ステップS50において、第1実施形態のステップS10同様、ユーザ端末12の入力インターフェース34は、ユーザから指定された対象データを含む印刷ジョブの送信指示、及び、当該印刷ジョブの送信先である画像形成装置14の指定を受け付ける。ユーザは、印刷ジョブの送信指示を入力した後、指定した画像形成装置14に当該印刷ジョブの実行指示を入力すべく、当該画像形成装置14への移動を開始する。
【0079】
ステップS52において、送信処理部40は、ユーザからの送信指示に係る印刷ジョブと当該ユーザを示すユーザ情報とを関連付けて、指定された画像形成装置14に送信する。画像形成装置14は、受信した印刷ジョブと、印刷ジョブに関連付けられたユーザ情報をメモリ58に保持し、当該印刷ジョブに含まれる対象データを対象データDB62の保存領域に格納する。
【0080】
ステップS54において、ユーザ端末12の通知処理部42は、ユーザが送信指示した印刷ジョブを「送る準備が完了した」ことをユーザに通知する。ここで、通知処理部42は、当該印刷ジョブを「送信した」ことをユーザに通知するのではないことに留意されたい。すなわち、ステップS52において、印刷ジョブはユーザ情報と共に実際に画像形成装置14に送信済みなのではあるが、ステップS54においては、その事実に反し、印刷ジョブを送る準備が完了したことをユーザに通知する。特に、通知処理部42は、ステップS54のタイミングでは、あたかもユーザ端末12がまだ印刷ジョブを保持していることを示す内容を通知する。例えば、通知処理部42は、「お使いのプリンタに文書を送る準備ができました。」などのメッセージをディスプレイ32に表示させる。
【0081】
ステップS56において、第1実施形態のステップS14同様、画像形成装置14のユーザ検出部66は、ユーザ端末12から受信したユーザ情報に基づいて、印刷ジョブの送信指示をしたユーザの自装置への接近の検出処理を開始する。印刷ジョブの送信指示をしたユーザの自装置への接近をユーザ検出部66が検出すると、ステップS58に進む。
【0082】
ステップS58において、処理実行部74は、ユーザDB60を参照してステップS56で検出されたユーザのユーザIDなどを特定して、メモリ58に保持されている1又は複数の印刷ジョブの中から、ステップS56で検出されたユーザに係る印刷ジョブを特定する。
【0083】
ステップS60において、通知制御部70は、ステップS58で特定された印刷ジョブ、すなわち、画像形成装置14への接近が検出されたユーザの送信指示に係る印刷ジョブの状態に関する内容を表す状態情報を当該ユーザに通知する。印刷ジョブの状態とは、当該印刷ジョブの所在、あるいは、当該印刷ジョブの実行可否などを表すものである。本実施形態では、通知制御部70は、状態情報に係る通知指示信号をユーザ端末12に送信し、ステップS62において、ユーザ端末12から、当該通知すなわち印刷ジョブの状態情報を出力させる。例えば、通知制御部70は、ユーザ端末12の通知処理部42に、当該印刷ジョブの所在(画像形成装置14内にあること)を示すように、「プリンタがプリントジョブを受信しました。」などのメッセージをディスプレイ32に表示させる。
【0084】
仮に、画像形成装置14がステップS52で印刷ジョブ及びユーザ情報を受信したものの、画像形成システム10の不具合などにより、当該印刷ジョブが実行できない状態であることを検出した場合は、通知制御部70は、当該印刷ジョブが印刷不可の状態であることを通知してもよい。例えば、通知制御部70は、「不具合によりプリントジョブを実行できません。」などのメッセージをディスプレイ32に表示させる。また仮に、画像形成装置14がステップS52で印刷ジョブ及びユーザ情報を受信し、ステップS56で当該ユーザの接近が検出される前に、第3者によって(つまりステップS52で送信されたユーザ情報が示すユーザ以外のユーザによって)当該印刷ジョブが実行されてしまった場合は、通知制御部70は、当該印刷ジョブが実行済みであることを通知してもよい。例えば、通知制御部70は、「お送りいただいたプリントジョブは実行済みです。」などのメッセージをディスプレイ32に表示させる。
【0085】
また、通知制御部70がユーザに通知する印刷ジョブの状態としては、ユーザに不利益が無い範囲において、実際のジョブの状態とは異なる内容であってもよい。例えば、ステップS54で、(印刷ジョブが送信済みであるにも関わらず)ジョブを送る準備が完了したことが通知されたことに応じて、通知制御部70は、当該印刷ジョブが、ユーザ端末12から画像形成装置14に現在送信されていることを通知してもよい。例えば、通知制御部70は、「文書がプリンタに送信されています。」などのメッセージをディスプレイ32に表示させる。
【0086】
なお、通知制御部70は、特にユーザ端末12が非携帯端末である場合などにおいては、これらの内容の通知を画像形成装置14から出力してもよい。
【0087】
以降のユーザ端末12の処理は、第1実施形態におけるステップS22以降の処理と同様であり、以降の画像形成装置14の処理は、第1実施形態におけるステップS20以降の処理と同様である。
【0088】
以上のように、第2実施形態では、ユーザの送信指示に応じてユーザ端末12から印刷ジョブが送信された後、画像形成装置14のユーザ検出部66が当該ユーザの接近を検出した場合(ステップS56)に、画像形成装置14の通知制御部70が、当該印刷ジョブの状態情報をユーザに通知する。特に、第2実施形態では、画像形成装置14側の処理により、ユーザの接近の検出とユーザへの通知処理が実行される。これにより、ユーザは、ユーザ端末12から画像形成装置14に送信された印刷ジョブの状態を容易に把握することができる。
【0089】
また、第2実施形態では、ユーザの送信指示に応じてユーザ端末12から印刷ジョブが送信された後、ユーザ端末12の通知処理部42により、印刷ジョブを送る準備が完了したことをユーザに通知され(ステップS54)、それに応じ、当該ユーザが画像形成装置14に接近したときに、現在当該印刷ジョブがユーザ端末12から画像形成装置14に送信されていることを通知することができる(ステップS60、S62)。これにより、ユーザにしてみれば、あたかも、印刷ジョブの送信指示に応じてすぐに印刷ジョブがユーザ端末12から画像形成装置14に送信されず、自分が画像形成装置14に接近したときに初めて当該印刷ジョブが画像形成装置14に送信されたように見える。これは、ユーザの動きに合わせて印刷ジョブが移動するような感覚をユーザに与え、ユーザに安心感を与えるという効果を奏する。
【0090】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0091】
例えば、第1及び第2実施形態では、ユーザDB60が画像形成装置14のメモリ58に記憶されていたが、これらは画像形成装置14と通信可能な他の装置(サーバなど)に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 画像形成システム、12 ユーザ端末、14 画像形成装置、30,50 通信インターフェース、32,52 ディスプレイ、34,54 入力インターフェース、36,58 メモリ、38,64 プロセッサ、40 送信処理部、42 通知処理部、56 プリンタ、60 ユーザDB、62 対象データDB、66 ユーザ検出部、68 ジョブ要求処理部、70 通知制御部、72 認証部、74 処理実行部、76 共有処理部。