IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 味の素株式会社の特許一覧

特許7524650接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法
<>
  • 特許-接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法 図1
  • 特許-接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法 図2
  • 特許-接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法 図3
  • 特許-接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法 図4
  • 特許-接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法 図5
  • 特許-接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法 図6
  • 特許-接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法 図7
  • 特許-接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法 図8
  • 特許-接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法 図9
  • 特許-接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20240723BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240723BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240723BHJP
   B32B 43/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C09J7/30
H05K3/46 T
C09J201/00
B32B43/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020125606
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021796
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】霞 健一
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102626(JP,A)
【文献】特開2015-191981(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03401094(EP,A1)
【文献】特開2016-074788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 43/00
H05K 3/28,3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物層を備える接着シートと、前記樹脂組成物層の面に貼り合わせられた保護フィルムと、を備える長尺の積層シートをカットして得られる積層シート片を用意する工程(I)と;
前記積層シート片の前記保護フィルムを、前記長尺の積層シートの長手方向に相当する基準方向に対して交差する剥離方向に剥離する工程(II)と;を含む、接着シート片の製造方法。
【請求項2】
前記工程(I)が、前記長尺の積層シートをカットして前記積層シート片を得る工程(I-1)を含む、請求項1に記載の接着シート片の製造方法。
【請求項3】
前記工程(II)の前に、前記剥離方向の端において前記積層シート片の前記保護フィルムを剥離する工程(III)を含む、請求項1又は2に記載の接着シート片の製造方法。
【請求項4】
前記基準方向と、前記剥離方向とが、60°~90°の角度をなす、請求項1~3のいずれか一項に記載の接着シート片の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物層の厚みが、30μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着シート片の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂組成物層が、硬化性の樹脂組成物で形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の接着シート片の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法によって、樹脂組成物層を備える接着シート片を製造する工程と;
内層基板上に、前記接着シート片を、前記樹脂組成物層が前記内層基板と接合するように積層する工程と;
前記樹脂組成物層を硬化する工程と;を含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シート片の製造方法及び製造装置、並びに、プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層とを交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法において、絶縁層は、例えば、支持体及び樹脂組成物層を備える接着シートと、樹脂組成物層に貼り合わせられた保護フィルムと、を備える保護フィルム付き接着シートとしての積層シートを用いて製造される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-24961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層シートを用いて樹脂組成物層を内層基板上に積層する方法として、下記の方法が知られている。この方法では、長尺の積層シートのロールから内層基板へと積層シートを搬送しつつ、その搬送途中において保護フィルムを剥離する。保護フィルムが剥離されることで、露出した樹脂組成物層を有する長尺の接着シートが得られる。その露出した樹脂組成物層が内層基板と接合するように、接着シートが内層基板上に部分的に加熱圧着される。次いで、内層基板のサイズに応じて接着シートがカットされ、枚葉の接着シートとしての接着シート片が内層基板に積層された状態が得られる。このような方法により、樹脂組成物層の内層基板への積層が達成される。
【0005】
前記の方法では、長尺の積層シートを搬送しながら保護フィルムの剥離を行うので、保護フィルムの剥離方向は、積層シートの長手方向に平行になる。しかし、この方法では、樹脂組成物層において樹脂剥がれが生じていた。「樹脂剥がれ」とは、別に断らない限り、保護フィルムの剥離によって樹脂組成物層の一部が破損して樹脂組成物層から除去される現象、及び、樹脂組成物が保護フィルムに付着して支持体から剥離する現象をいう。
【0006】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、保護フィルムを剥がすことによる樹脂剥がれを抑制できる接着シート片の製造方法及び製造装置;並びに、前記の接着シート片の製造方法を含むプリント配線板の製造方法;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、接着シートと保護フィルムとを備える積層シートから保護フィルムを剥離する剥離方向を特定の方向に設定した場合に、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0008】
〔1〕 樹脂組成物層を備える接着シートと、前記樹脂組成物層の面に貼り合わせられた保護フィルムと、を備える長尺の積層シートをカットして得られる積層シート片を用意する工程(I)と;
前記積層シート片の前記保護フィルムを、前記長尺の積層シートの長手方向に相当する基準方向に対して交差する剥離方向に剥離する工程(II)と;を含む、接着シート片の製造方法。
〔2〕 前記工程(I)が、前記長尺の積層シートをカットして前記積層シート片を得る工程(I-1)を含む、〔1〕に記載の接着シート片の製造方法。
〔3〕 前記工程(II)の前に、前記剥離方向の端において前記積層シート片の前記保護フィルムを剥離する工程(III)を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の接着シート片の製造方法。
〔4〕 前記基準方向と、前記剥離方向とが、60°~90°の角度をなす、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の接着シート片の製造方法。
〔5〕 前記樹脂組成物層の厚みが、30μm以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の接着シート片の製造方法。
〔6〕 前記樹脂組成物層が、硬化性の樹脂組成物で形成されている、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の接着シート片の製造方法。
〔7〕 樹脂組成物層を備える接着シートと、前記樹脂組成物層の面に貼り合わせられた保護フィルムと、を備える長尺の積層シートをカットして得られる積層シート片から、前記保護フィルムを剥離して、接着シート片を製造する製造装置であって、
前記積層シート片の前記保護フィルムを、前記長尺の積層シートの長手方向に相当する基準方向に対して交差する剥離方向に剥離できるフィルム剥離部を備える、接着シート片の製造装置。
〔8〕 前記長尺の積層シートをカットできるカッターを備える、〔7〕に記載の接着シート片の製造装置。
〔9〕 前記剥離方向の端において前記積層シート片の前記保護フィルムを剥離できる剥離準備部を備える、〔7〕又は〔8〕に記載の接着シート片の製造装置。
〔10〕 前記基準方向と、前記剥離方向とが、60°~90°の角度をなす、〔7〕~〔9〕のいずれか一項に記載の接着シート片の製造装置。
〔11〕 前記樹脂組成物層の厚みが、30μm以下である、〔7〕~〔10〕のいずれか一項に記載の接着シート片の製造装置。
〔12〕 前記樹脂組成物層が、硬化性の樹脂組成物で形成されている、〔7〕~〔11〕のいずれか一項に記載の接着シート片の製造装置。
〔13〕 〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の製造方法によって、樹脂組成物層を備える接着シート片を製造する工程と;
内層基板上に、前記接着シート片を、前記樹脂組成物層が前記内層基板と接合するように積層する工程と;
前記樹脂組成物層を硬化する工程と;を含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保護フィルムを剥がすことによる樹脂剥がれを抑制できる接着シート片の製造方法及び製造装置;並びに、前記の接着シート片の製造方法を含むプリント配線板の製造方法;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一例としての長尺の積層シートを模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造装置が備えるシート片準備部を模式的に示す側面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造方法の工程(I)で用意される積層シート片を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造装置が備える剥離準備部を模式的に示す正面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造方法の工程(III)で得られる積層シート片を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造装置が備えるフィルム剥離部を模式的に示す正面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造方法で得られる接着シート片を模式的に示す斜視図である。
図8図8は、一例に係る長尺の接着シートを模式的に示す斜視図である。
図9図9は、図8に示す長尺の接着シートを、その幅方向及び厚み方向に平行なIX-IX’平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図10図10は、図8に示す長尺の接着シートを、その長手方向及び厚み方向に平行なX-X’平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、「長尺」とは、別に断らない限り、幅に対して、10倍以上の長さを有するフィルム又はシートの形状をいう。前記の長さは、幅に対して、好ましくは20倍以上であり、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さでありうる。長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下でありうる。
【0013】
[1.接着シート片の製造方法の一実施形態の概要]
本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造方法は、
接着シート及び保護フィルムを備える長尺の積層シートをカットして得られる積層シート片を用意する工程(I)と;
積層シート片の保護フィルムを、特定の剥離方向に剥離する工程(II)と;
を含む。また、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造方法は、
工程(II)の前に、剥離方向の端において積層シート片の保護フィルムを剥離する工程(III);
を含んでいてもよい。
【0014】
前記の接着シート片の製造方法は、積層シート片から保護フィルムを剥離して接着シート片を製造する製造装置によって、実施できる。この製造装置は、通常、積層シート片の保護フィルムを、特定の剥離方向に剥離できるフィルム剥離部を備える。また、この製造装置は、長尺の積層シートをカットできるカッターを備えたシート片準備部を備えていてもよい。さらに、この製造装置は、剥離方向の端において積層シート片の保護フィルムを剥離できる剥離準備部を備えていてもよい。
【0015】
前記の「剥離方向」は、剥離される保護フィルムに加えられる張力の方向の、樹脂組成物層の厚み方向に垂直な成分の方向を表す。よって、例えば、樹脂組成物層の厚み方向に垂直な面内方向に保護フィルムが引っ張られた場合、その引っ張り方向が、剥離方向である。また、例えば、樹脂組成物層の厚み方向に平行でも垂直でもない傾斜方向に保護フィルムが引っ張られた場合、その引っ張り方向の面内方向成分(即ち、樹脂組成物層の厚み方向に垂直な成分)の方向が、剥離方向である。以下の説明で「厚み方向」という場合、別に断らない限り、樹脂組成物層の厚み方向を表す。
【0016】
[2.工程(I)]
工程(I)では、積層シート片を用意する。積層シート片は、長尺の積層シートをカットして得られる枚葉のシートである。積層シートは、接着シート及び保護フィルムを備える。
【0017】
図1は、一例としての長尺の積層シート10を模式的に示す断面図である。図1に示すように、長尺の積層シート10は、樹脂組成物層21を備える接着シート20と、樹脂組成物層21の面21Uに貼り合わせられた保護フィルム30と、を備える。また、接着シート20は、通常、樹脂組成物層21に組み合わせて、支持体22を備える。よって、積層シート10は、厚み方向において、支持体22、樹脂組成物層21及び保護フィルム30をこの順に備えうる。
【0018】
積層シート片は、市販のものを入手して用いてもよいが、本実施形態では、接着シート片の製造装置が、長尺の積層シート10から積層シート片を製造できるシート片準備部を備える例を説明する。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造装置が備えるシート片準備部100を模式的に示す側面図である。図2に示すように、シート片準備部100は、長尺の積層シート10を供給できるように設けられたシート供給部110と;シート供給部110から供給された長尺の積層シート10をカットできるように設けられたカッター120と;シート供給部110から送出された長尺の積層シート10を誘導できるように設けられた誘導ロール131、132、133及び134と;長尺の積層シート10がカットされて得られる積層シート片40を受け取ることができるように設けられたシート搬送治具140と;を備える。
【0020】
長尺の積層シート10は、通常、ロール50として用意されうる。そこで、本実施形態に係るシート供給部110は、通常、長尺の積層シート10のロール50を取り付けられうるロール取付部111を備える。シート供給部110は、ロール取付部111に取り付けられたロール50から長尺の積層シート10を引き出し、搬送方向に送り出せるように設けられている。長尺の積層シート10の搬送方向は、通常、長尺の積層シート10の長手方向と平行でありえ、よって、長尺の積層シート10の幅方向と垂直でありうる。
【0021】
カッター120は、長尺の積層シート10を適切なサイズでカットできるように設けられている。カッター120によるカット方向は、長尺の積層シート10の長手方向に交差する方向に設定されうる。「カット方向」とは、別に断らない限り、厚み方向に垂直な方向であって、カットによって積層シート10に形成される切れ目の方向を表す。通常、カット方向は、長尺の積層シート10の長手方向に対して垂直な幅方向である。
【0022】
誘導ロール131、132、133及び134は、シート供給部110から送出された長尺の積層シート10を適切に誘導できるように、周方向に回転可能に設けられている。本実施形態においては、誘導ロール131、132、133及び134が、長尺の積層シート10をカッター120及びシート搬送治具140にまで誘導できるように設けられた例を示す。誘導ロール131、132、133及び134は、自由回転しうるように設けられていてもよい。また、誘導ロール131、132、133及び134は、モーター等の駆動装置(図示せず。)から回転駆動力を与えられて回転することにより、長尺の積層シート10に搬送駆動力を与えられるように設けられていてもよい。
【0023】
シート搬送治具140は、保持面140Uを有する。保持面140Uは、供給された長尺の積層シート10、及び、その積層シート10がカットされて得られる積層シート片40を保持できるように設けられている。通常、保持面140Uには、積層シート10及び積層シート片40を保持面140Uに固定できるシート固定部(図示せず。)が設けられる。シート固定部としては、例えば、バキューム吸着のための吸引孔、粘着のための粘着層、などが挙げられる。本実施形態では、シート搬送治具140の保持面140Uに、吸引装置に接続された複数の吸引孔が形成され、この吸引孔によるバキューム吸着によって保持面140Uに積層シート10及び積層シート片40を固定できる例を示して説明する。
【0024】
シート搬送治具140は、通常、移動可能に設けられる。具体的には、シート搬送治具140が移動することにより、シート搬送治具140の保持面140Uに保持された積層シート片40を搬送して、後の工程に供給できるように設けれられる。また、シート搬送治具140は、長尺の積層シート10を保持面140Uに固定した状態で矢印A1で示すように移動して、長尺の積層シート10を引っ張って、積層シート10に搬送駆動力を与えるように設けられていてもよい。
【0025】
シート片準備部100は、更に任意の要素を備えていてもよい。例えば、シート片準備部100は、バキューム吸着によって積層シート10を固定し、引っ張って、長尺の積層シート10を搬送する搬送治具(図示せず)を備えていてもよい。ただし、積層シート10の搬送方法は、これに限定されない。また、シート片準備部100は、積層シート10をカットする際にレジンチップ(樹脂組成物の切りカス)が発生するのを低減するために、適切な温度(例えば、40℃~80℃の範囲)で加温されたカッターバックアップヒーター(図示せず)を備えていてもよい。
【0026】
前記のシート片準備部100で行われる工程(I)は、通常、長尺の積層シート10をカットして積層シート片40を得る工程(I-1)を含む。工程(I)は、詳細には、下記の方法によって積層シート片40を得ることができる。
【0027】
長尺の積層シート10のロール50が、シート供給部110のロール取付部111に取り付けられる。シート供給部110は、ロール取付部111に取り付けられたロール50から、長尺の積層シート10を引き出し、長尺の積層シート10の長手方向に平行な搬送方向に送り出す。シート供給部110から送り出された長尺の積層シート10は、誘導ロール131、132、133及び134に誘導されて、カッター120及びシート搬送治具140が設けられた位置まで搬送される。
【0028】
シート搬送治具140は、保持面140Uで積層シート10を受け取り、シート固定部によって固定する。本実施形態では、保持面140Uに形成されたシート固定部としての吸引孔がバキューム吸着によって積層シート10を固定する例を示して説明する。
【0029】
カッター120は、長尺の積層シート10を所望のサイズにカットして、積層シート片40を得る。通常、カッター120は、シート搬送治具140の保持面140Uよりも上流の位置において長尺の積層シート10をカットする。よって、前記のカットによれば、シート搬送治具140の保持面140Uに固定された積層シート片40を得ることができる。通常、カッター120によるカット方向は、長尺の積層シート10の幅方向に設定されうる。よって、前記のカットによって得られる積層シート片40の平面形状は、正方形及び長方形等の矩形でありうる。「平面形状」とは、別に断らない限り、厚み方向から見た形状を表す。
【0030】
図3は、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造方法の工程(I)で用意される積層シート片40を模式的に示す斜視図である。図3に示すように、本実施形態に係る製造方法の工程(I)では、シート搬送治具140の保持面140Uに固定された積層シート片40が用意される。積層シート片40は、長尺の積層シート10を切断して得られるものであるので、長尺の積層シート10の幅方向の一端10Lに相当する端部40L、及び、長尺の積層シート10の幅方向の他端10Rに相当する端部40R、を有しうる。
【0031】
この積層シート片40の基準方向Xは、当該積層シート片40をカットする前の長尺の積層シート10の長手方向に相当する方向を表す。よって、例えば、積層シート10の長手方向に延びる直線を表面に描かれた当該積層シート10をカットして得られる積層シート片40は、前記の直線と平行な基準方向Xを有しうる。積層シート片40の端部40L及び端部40Rは、通常、カット前の長尺の積層シート10の長手方向に平行であるので、その積層シート片40の基準方向Xに平行でありうる。後述する工程(II)及び(III)では、この基準方向Xを基準にして、剥離方向Dが決定される。
【0032】
通常、長尺の積層シート10は、シート搬送治具140に、支持体22、樹脂組成物層21及び保護フィルム30が厚み方向Zにおいてこの順に並ぶ向きで供給される。よって、シート搬送治具140の保持面140U上に用意される積層シート片40の支持体22、樹脂組成物層21及び保護フィルム30は、通常、厚み方向Zにおいて保持面140U側からこの順に並んでいる。
【0033】
こうして用意された積層シート片40は、シート搬送治具140によって、次の工程へと供給される。本実施形態では、シート搬送治具140が、積層シート片40を、工程(III)を行うための剥離準備部へと供給する例を示す。
【0034】
[3.工程(III)]
図4は、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造装置が備える剥離準備部200を模式的に示す正面図である。本実施形態に係る接着シート片の製造装置は、図4に示すように、剥離方向Dの端において積層シート片40の保護フィルム30を剥離できる剥離準備部200を備える。本実施形態では、剥離準備部200が、積層シート片40の端部40Lにおいて保護フィルム30を剥離できる端部剥離治具210を備える例を示して説明する。
【0035】
端部剥離治具210は、シート搬送治具140の保持面140U及び当該保持面140Uに保持された積層シート片40に対して、矢印A2及びA3で示すように、厚み方向Zで相対的に接近及び離隔ができるように設けられている。前記の端部剥離治具210の相対的な近接及び隔離は、端部剥離治具210が移動することによって達成されてもよく、シート搬送治具140が移動することによって達成されてもよく、端部剥離治具210及びシート搬送治具140の両方が移動することによって達成されてもよい。
【0036】
また、端部剥離治具210は、前記の積層シート片40の保護フィルム30を固定できる端部固定部211を有している。この端部固定部211としては、例えば、バキューム吸着のための吸引孔、粘着のための粘着層、などが挙げられる。本実施形態では、端部剥離治具210が端部固定部211として粘着層を備え、この粘着層の粘着力によって保護フィルム30を固定できる例を示して説明する。この例では、端部40Lの延在方向(本例では、基準方向X)の全体で、端部剥離治具210が保護フィルム30を固定しうる。
【0037】
前記の剥離準備部200を用いた工程(III)では、剥離方向Dの端において積層シート片40の保護フィルム30を剥離する。この工程(III)は、詳細には、下記の方法によって端部40Lにおいて保護フィルム30を剥離する。
【0038】
シート搬送治具140によって剥離準備部200に積層シート片40が搬送されてくると、端部剥離治具210がシート搬送治具140の保持面140Uに近づく。保持面140Uに近づいた端部剥離治具210は、端部40Lにおいて、保持面140U上の積層シート片40の保護フィルム30に接触し、端部固定部211によって保護フィルム30を固定する。その後、端部固定部211によって保護フィルム30を端部剥離治具210に固定した状態で、端部剥離治具210は、保持面140Uから離れる。端部剥離治具210が保持面140Uから離れることにより、積層シート片40の端部40Lでは、保護フィルム30が剥離される。
【0039】
図5は、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造方法の工程(III)で得られる積層シート片40を模式的に示す斜視図である。図5に示すように、本実施形態に係る製造方法の工程(III)では、剥離方向Dの一方の端としての端部40Lで保護フィルム30が剥離される。よって、積層シート片40の端部40Lには、樹脂組成物層21に接触していない保護フィルム30の部位としての端部剥がれ部位30Lが形成される。さらに、積層シート片40の端部40Lには、保護フィルム30に接触せず露出した樹脂組成物層21の部位としての端部露出部位21Lが形成される。
【0040】
通常、剥離された後で、保護フィルム30の端部剥がれ部位30Lは、端部剥離治具210の端部固定部211による固定から解放される。この際、解放された端部剥がれ部位30Lが樹脂組成物層21の端部露出部位21Lに再び貼り合わさらないようにするために、端部剥がれ部位30Lを係止具(図示せず。)で係止してもよい。また、適切なスペーサ(図示せず。)を保護フィルム30の端部剥がれ部位30Lと樹脂組成物層21の端部露出部位21Lとの間に設けて、再び貼り合わさらないようにしてもよい。
【0041】
こうして保護フィルム30に端部剥がれ部位30Lを形成された積層シート片40は、シート搬送治具140によって、次の工程へと供給される。本実施形態では、シート搬送治具140が積層シート片40を、工程(II)を行うためのフィルム剥離部へと供給する例を示す。
【0042】
[4.工程(II)]
図6は、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造装置が備えるフィルム剥離部300を模式的に示す正面図である。本実施形態に係る接着シート片の製造装置は、図6に示すように、積層シート片40の保護フィルム30を、特定の剥離方向Dに剥離できるフィルム剥離部300を備える。本実施形態では、フィルム剥離部300が、保護フィルム30の端部剥がれ部位30Lを固定して引っ張りうるフィルム剥離治具310を備える例を示して説明する。
【0043】
フィルム剥離治具310は、シート搬送治具140の保持面140U及び当該保持面140Uに保持された積層シート片40に対して、厚み方向Zに非平行な方向に、相対的に移動できるように設けられている。前記のフィルム剥離治具310の相対的な移動は、フィルム剥離治具310が移動することによって達成されてもよく、シート搬送治具140が移動することによって達成されてもよく、フィルム剥離治具310及びシート搬送治具140の両方が移動することによって達成されてもよい。
【0044】
また、フィルム剥離治具310は、保護フィルム30の端部剥がれ部位30Lを固定できるフィルム固定部311を有している。このフィルム固定部311としては、例えば、バキューム吸着のための吸引孔、粘着のための粘着層、フィルムの把持のための把持子(例えば、クランプ、クリップ等)が挙げられる。本実施形態では、フィルム剥離治具310がフィルム固定部311としてクランプを備え、このクランプの把持力によって、保護フィルム30の端部剥がれ部位30Lを固定できる例を示して説明する。この例では、端部剥がれ部位30Lの延在方向(本例では、基準方向X)の全体で、フィルム剥離治具310が端部剥がれ部位30Lを固定しうる。
【0045】
前記のフィルム剥離部300を用いた工程(II)では、積層シート片40の保護フィルム30を、特定の剥離方向Dに剥離する。この工程(II)は、詳細には、下記の方法によって保護フィルム30を剥離する。
【0046】
シート搬送治具140によってフィルム剥離部300に積層シート片40が搬送されてくると、フィルム剥離治具310がフィルム固定部311によって保護フィルム30の端部剥がれ部位30Lを固定する。その後、フィルム固定部311によって保護フィルム30の端部剥がれ部位30Lをフィルム剥離治具310に固定した状態で、フィルム剥離治具310は、シート搬送治具140に対して相対的に移動する。この移動により、フィルム剥離治具310とシート搬送治具140との間で、保護フィルム30が引張方向A4に引っ張られて、保護フィルム30が剥離される。
【0047】
引張方向A4に引っ張られた保護フィルム30には、引張方向A4に張力が加えられうる。よって、前記の張力による剥離は、この引張方向A4の面内方向成分の方向としての剥離方向Dに保護フィルム30の剥離点Pが移動するように進行しうる。ここで「剥離点P」とは、保護フィルム30が樹脂組成物層21から剥がれた直後の地点をいう。このように、フィルム剥離治具310による引張方向A4により、剥離方向Dを調整できる。
【0048】
本実施形態では、前記の剥離方向Dを、基準方向Xに対して交差する方向に設定している。具体的には、剥離方向Dと基準方向Xとの間に形成される角度θ(0°≦θ≦90°;図3及び図5参照。)が、特定の範囲に収まるように、剥離方向Dが設定される。前記の角度θは、好ましくは45°~90°、より好ましくは60°~90°、更に好ましくは70°~90°、更に好ましくは80°~90°、更に好ましくは85°~90°、更に好ましくは87°~90°、更に好ましくは89°~90°である。中でも、前記の角度θは90°が特に好ましい。すなわち、剥離方向Dは、基準方向Xに対して垂直であることが特に好ましい。
【0049】
前記の剥離方向Dに剥離を行うことにより、工程(II)では、樹脂剥がれを抑制しながら、保護フィルム30を剥離することができる。
【0050】
樹脂組成物層21の面内方向(即ち、厚み方向に垂直な方向。)に対して引張方向A4がなす角度φ(0≦φ≦90°;図6参照。)は、特段の制限は無い。ただし、樹脂剥がれを抑制する観点、及び、保護フィルム30の剥離を円滑に進行させる観点では、好ましくは0°以上であり、好ましくは70°以下、より好ましくは60°以下、更に好ましくは50°以下、更に好ましくは40°以下、更に好ましくは30°以下、更に好ましくは20°以下、特に好ましくは10°以下である。
【0051】
工程(II)で保護フィルム30を剥離する期間において、剥離方向Dは、一定であることが好ましい。また、工程(II)で保護フィルム30を剥離する期間において、フィルム剥離治具310が保護フィルム30を引っ張る引張方向A4は、一定であることが好ましい。一定の方向に剥離を行う場合に、樹脂剥がれを効果的に抑制できる。
【0052】
上述した工程(II)では、保護フィルム30を剥離する剥離速度が速い場合でも、樹脂剥がれを抑制できる。よって、従来は困難であった高速での剥離が可能である。この利点を有効に活用する観点では、工程(II)における保護フィルム30の剥離速度は、好ましくは1m/分以上、より好ましくは2m/分以上、更に好ましくは3m/分以上、更に好ましくは4m/分以上、更に好ましくは5m/分以上である。上限は、特段の制限は無く、例えば、20m/分以下でありうる。
【0053】
[5.製造される接着シート片]
図7は、本発明の一実施形態に係る接着シート片の製造方法で得られる接着シート片60を模式的に示す斜視図である。図7に示すように、工程(III)において保護フィルム30(図7では図示せず。)を剥離したことにより、シート搬送治具140の保持面140U上に、樹脂組成物層21を備える接着シート片60が得られる。本実施形態で示す例のように、支持体22を備える長尺の接着シート20を用いた場合には、接着シート片60は、樹脂組成物層21に組み合わせて支持体22を備えうる。
【0054】
上述した製造方法で製造される接着シート片60は、保護フィルム30を剥離する際の樹脂剥がれを抑制できる。よって、得られる接着シート片60において、樹脂組成物層21の破損を抑制することが可能である。
【0055】
本発明の一実施形態において上述した利点が得られる仕組みを、本発明者は、下記のように推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記に説明する仕組みに限定されない。
【0056】
図8は、一例に係る長尺の接着シート20を模式的に示す斜視図である。また、図9は、図8に示す長尺の接着シート20を、その幅方向及び厚み方向に平行なIX-IX’平面で切った断面を模式的に示す断面図である。さらに、図10は、図8に示す長尺の接着シート20を、その長手方向及び厚み方向に平行なX-X’平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
【0057】
図8に示す長尺の接着シート20の樹脂組成物層21は、一般に、長尺の支持体22を当該支持体22の長手方向に搬送しながら、連続的に形成される。前記の樹脂組成物層21の形成方法としては、例えば、樹脂組成物を含むワニス等の液状材料を支持体22上に連続的に塗布する方法が挙げられる。
【0058】
長尺の支持体22を長手方向に搬送しながら樹脂組成物層21を連続的に形成する期間中、通常は、支持体22の幅方向の各地点には、常に、形成装置の一定の部位によって、樹脂組成物層21の形成が行われる。よって、支持体22の幅方向では、形成装置が樹脂組成物層21を形成する能力の部位ごとのバラツキが大きく反映される傾向がある。そのため、支持体22の幅方向では、樹脂組成物層21の形成が相対的に低い均一性で行われうる。他方、支持体22の長手方向では、形成装置が樹脂組成物層21を形成する能力の前記バラツキが反映され難い。そのため、支持体22の長手方向では、樹脂組成物層21の形成が相対的に高い均一性で行われうる。
【0059】
例えば、液状材料の塗布により支持体22上に樹脂組成物層21を形成する場合、通常は、支持体22の幅方向の各地点には、塗布装置の一定の部位から液状材料が供給される。よって、支持体22の幅方向では、塗布装置の塗布能力の部位ごとのバラツキが大きく反映されるから、液状材料の塗布厚みの均一性は低い傾向がある。他方、支持体22の長手方向では、液状材料の塗布厚みの均一性は高い傾向がある。
【0060】
また、長尺の接着シート20の樹脂組成物層21に保護フィルム(図示せず。)を貼り合わせる場合、その貼り合わせは、長尺の接着シート20を長手方向に搬送しながら連続的に行われる。貼り合わせの期間中、通常は、樹脂組成物層21の幅方向の各地点は、常に、貼合装置の一定の部位から貼合のための圧力を受ける。よって、樹脂組成物層21の幅方向では、貼合装置の加圧能力の部位ごとのバラツキが大きく反映されるから、貼合圧力の均一性は低い傾向がある。そのため、樹脂組成物層21の幅方向では、保護フィルムとの貼り合わせ後の樹脂組成物層21の厚みの均一性は低い傾向がある。他方、樹脂組成物層21の長手方向では、貼合装置の加圧能力の前記バラツキが反映され難い。そのため、支持体22の長手方向では、貼合圧力の均一性が高く、よって保護フィルムとの貼り合わせ後の樹脂組成物層21の厚みの均一性は高い傾向がある。
【0061】
したがって、保護フィルムと貼り合わせられた樹脂組成物層21は、幅方向において、図9に示すように、低い厚みの均一性を有しうる。よって、幅方向における樹脂組成物層21の厚みには、相対的に大きなバラツキがありうる。他方、樹脂組成物層21は、長手方向において、図10に示すように、高い厚みの均一性を有しうる。よって、長手方向における樹脂組成物層21の厚みには、相対的に小さなバラツキがありうるか、バラツキが無い。
【0062】
通常、樹脂組成物層21と保護フィルム30との密着力は、樹脂組成物層21の厚みと、相関を有する。したがって、樹脂組成物層21の厚みにバラツキがあると、樹脂組成物層21と保護フィルム30との密着力にもバラツキがある。
【0063】
仮に、従来のように、保護フィルム30を長手方向に剥離する場合を考える。この場合、剥離方向に対して垂直な平面で接着シート20を切断すると、図9に示す断面が現れる。よって、樹脂組成物層21の相対的に厚い部分と相対的に薄い部分とから、保護フィルム30が同時に剥離される。そうすると、保護フィルム30を同時に剥離される樹脂組成物層21の部分には、密着力が大きい部分と小さい部分とが生じる。密着力が小さい部分では、小さい力によって保護フィルム30を容易に剥離されることができる。しかし、密着力が大きい部分では、保護フィルム30の剥離のために大きな力が要求される。このとき、周囲よりも大きな力が剥離のために要求される部分には、応力が集中し易い。よって、当該部分においては、集中した応力によって樹脂組成物層21が局所的に破壊され、樹脂剥がれが生じることがあった。
【0064】
これに対し、保護フィルム30を長手方向に交差する剥離方向に剥離する場合には、保護フィルム30が同時に剥離される部分の樹脂組成物層21の厚みの均一性は、高い。例えば、保護フィルム30を長手方向に垂直な幅方向に剥離する場合、剥離方向に対して垂直な平面で接着シート20を切断すると、図10に示す断面が現れる。よって、保護フィルム30を同時に剥離される樹脂組成物層21の部分には、密着力が大きい部分と小さい部分とが生じないか、又は、生じるとして密着力の差は小さい。したがって、従来のような応力の集中を抑制することができるので、樹脂組成物層21の局所的な破壊を抑制でき、よって樹脂剥がれを抑制できる。
【0065】
[6.変更例]
上述した接着シート片60の製造方法及び製造装置は、更に変更して実施してもよい。
例えば、上述した実施形態では、工程(III)を行ったが、工程(III)は省略してもよい。上述した実施形態では、樹脂組成物層21と同じ幅を有する保護フィルム30を用いたので、工程(III)を行って端部剥がれ部位30Lを保護フィルム30に形成することが好ましい。しかし、樹脂組成物層21よりも大きい幅を有する保護フィルム30を用いた場合、工程(III)を行わなくても、保護フィルム3は、樹脂組成物層21と貼り合わせられていない部位を端部に有しうる。例えば、長尺の支持体22上に樹脂組成物層21を設ける場合、支持体22の幅方向の中央部に樹脂組成物層21を形成し、支持体22の幅方向の片端部または両端部には樹脂組成物層21を形成しないことがありうる。このとき、支持体22と同じ幅を有する保護フィルム30を用いると、保護フィルム30の端部には、保護フィルム30が貼り合わせられていない部位が存在しうる。そこで、この端部の部位を、工程(II)において、端部剥がれ部位30Lと同じく用いることができる。よって、工程(III)を省略してもよい。
【0066】
また、例えば、上述した実施形態では、工程(I)を行ったが、工程(I)は省略してもよい。積層シート片40を製造しなくても入手できる場合、工程(I)の省略は可能である。この場合、長尺の積層シート10の長手方向に相当する基準方向Xは、積層シート片40の平面形状、支持体22に含まれる分子の配向方向、などの情報から、特定することが可能である。
【0067】
さらに、例えば、上述した実施形態では、端部剥離治具210が積層シート片40の端部40Lの延在方向の全体で保護フィルム30を剥離したが、端部剥離治具210は、端部40Lの延在方向の一部で保護フィルム30を剥離してもよい。具体例を挙げると、端部剥離治具210は、積層シート片40の端部40Lを、間隔をあけた複数の地点で間欠的に剥離してもよい。この場合、積層シート片40の端部40Lの一部に、端部剥がれ部位30Lを設けることができる。この場合、端部剥離治具210は、積層シート片40の端部40Lの両端(具体的には、基準方向の両端)を含む部分で保護フィルム30を剥離して、それら両端において端部剥がれ部位30Lを形成することが好ましい。
【0068】
また、例えば、上述した実施形態では、フィルム固定部311が、端部剥がれ部位30Lの延在方向の全体を固定したが、フィルム固定部311は、端部剥がれ部位30Lの延在方向の一部を固定してもよい。具体例を挙げると、上述した剥離方向Dへの剥離が可能な範囲で、端部固定部211は、端部剥がれ部位30Lを、間隔をあけた複数の地点で間欠的に固定してもよい。
【0069】
さらに、例えば、接着シート片60の製造方法は、上述した工程(I)、工程(II)及び工程(III)に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
【0070】
[7.積層シート]
積層シートは、樹脂組成物層を備える接着シートと、樹脂組成物層の面に貼り合わせられた保護フィルムとを備える。また、接着シートは、通常、樹脂組成物層に組み合わせて、支持体を備える。通常、樹脂組成物層と保護フィルムとは直接に接しており、樹脂組成物層と支持体とは直接に接している。2つの部材が「直接」に接するとは、別に断らない限り、それら接した2つの部材の間に他の部材が無いことをいう。
【0071】
樹脂組成物層は、樹脂組成物で形成されている。樹脂組成物は、1種類又は2種類以上の樹脂を含み、更に必要に応じて任意の成分を含む。樹脂組成物としては、硬化性の樹脂組成物が好ましく、プリント配線板、電子部品等の、半導体装置の構成要素の材料として使用できる樹脂組成物がより好ましい。中でも、樹脂組成物としては、当該樹脂組成物の硬化体を絶縁層又は封止層として用いうるものが特に好ましい。
【0072】
硬化性の樹脂組成物は、熱硬化性の樹脂組成物でもよく、光硬化性の樹脂組成物でもよい。以下、樹脂組成物の組成の例を説明する。ただし、樹脂組成物は、以下に説明する例に限定されない。
【0073】
(熱硬化性の樹脂組成物の例)
一例に係る熱硬化性の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含みうる。熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、エポキシ樹脂が好ましい。
【0074】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
樹脂組成物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。全てのエポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0076】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0077】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0078】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0079】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP-4032」、「HP-4032D」、「HP-4032SS」、「EXA4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「CELド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)、ADEKA社製の「EP3950L」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0081】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビキシレノール型エポキシ樹脂及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0082】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP-4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP-6000」、「HP-6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.01~1:20、より好ましくは1:0.05~1:10、特に好ましくは1:0.1~1:5である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が前記の範囲にある場合、通常は、適度な粘着性が得られる。また、通常は、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化体を得ることができる。
【0084】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq~5000g/eq、より好ましくは50g/eq~3000g/eq、さらに好ましくは80g/eq~2000g/eq、さらにより好ましくは110g/eq~1000g/eqである。エポキシ当量がこの範囲とある場合、樹脂組成物の硬化体の架橋密度を高めることができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0085】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0086】
エポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。本明細書において、樹脂組成物中の各成分の量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値を表す。
【0087】
エポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。「樹脂成分」とは、別に断らない限り、樹脂組成物に含まれる不揮発成分のうち、無機充填材を除いた成分をいう。
【0088】
一例に係る熱硬化性の樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、その樹脂組成物は、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤は、エポキシ樹脂と反応して、樹脂組成物を硬化させる機能を有する熱硬化性樹脂である。硬化剤としては、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、アミン系硬化剤などが挙げられる。中でも、活性エステル系硬化剤及びフェノール系硬化剤が好ましく、活性エステル系硬化剤が特に好ましい。また、硬化剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0089】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0090】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0091】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0092】
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0093】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-9460S-65T」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「EXB-9416-70BK」、「EXB-8150-65T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150L-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
また、硬化剤の他の例としては、特開2020-75977号公報に記載のものが挙げられる。
【0094】
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:10の範囲が好ましく、1:0.05~1:5がより好ましく、1:0.1~1:3がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の不揮発成分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の不揮発成分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。
【0095】
硬化剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0096】
硬化剤の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0097】
熱硬化性樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0098】
熱硬化性樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは97質量%以下である。
【0099】
一例に係る熱硬化性の樹脂組成物は、必要に応じて、無機充填材を含んでいてもよい。無機充填材の材料としては、無機化合物を用いうる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ、アルミナが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
無機充填材の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0101】
無機充填材の比表面積としては、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定しうる。
【0102】
無機充填材の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0103】
無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0104】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0105】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0106】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0107】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0108】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0109】
無機充填材の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0110】
一例に係る熱硬化性の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、アミン系硬化促進剤が好ましい。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
また、硬化促進剤の他の例としては、例えば、特開2020-75977号公報に記載のものが挙げられる。
【0112】
硬化促進剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0113】
硬化促進剤の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下である。
【0114】
一例に係る熱硬化性の樹脂組成物は、必要に応じて、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上である。上限は、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。
【0116】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂の他の例としては、例えば、特開2020-75977号公報に記載のものが挙げられる。
【0117】
熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
【0118】
熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0119】
一例に係る熱硬化性の樹脂組成物は、上述した成分以外に、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、難燃剤;ゴム粒子等の有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;増粘剤;消泡剤;レベリング剤;密着性付与剤;顔料等の着色剤;が挙げられる。また、熱硬化性の樹脂組成物は、後述する光硬化性の樹脂組成物が含みうる成分を含んでいてもよい。任意の成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
一例に係る熱硬化性の樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよいが、その量は少ないことが好ましい。樹脂組成物に含まれる溶剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。中でも、樹脂組成物は、溶剤を含まないことが特に好ましい。
【0121】
(光硬化性の樹脂組成物の例)
一例に係る光硬化性の樹脂組成物は、光硬化性樹脂を含みうる。光硬化性樹脂の例としては、カチオン重合性樹脂が挙げられ、その具体例としては、分子内にフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、及び、分子中に2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物の組み合わせが挙げられる。この組み合わせにおいては、通常、アルカリ可溶性樹脂と、分子中に2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物とが反応して架橋構造を形成し、樹脂組成物が硬化することができる。
【0122】
分子内にフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂の例としては、旭有機材社製「TR4020G」;旭有機材社製「TR4050G」、「TR4080G」、「TR5020G」、「TR5050G」、「TR6020G」、「TR6050G」、「TR6080G」等のAVライトシリーズ;住友ベークライト社製フォトレジスト用樹脂シリーズ;群栄化学工業社製レヂトップシリーズ;DIC社製「PR-30-40P」、「PR-100L」、「PR-100H」、「PR-50」、「PR-55」、「PR-56-1」、「PR-56-2」、「WR-101」、「WR-102」、「WR-103」、「WR-104」等のフェノライトシリーズ;リグナイト社製「LF-100」、「LF-110」、「LF-120」、「LF-200」、「LF-400」、「LF-500」;明和化成社製フォトレジスト用ベース樹脂シリーズ等が挙げられる。
【0123】
分子内にフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂の別の例としては、明和化成社製「MEHC-7851SS」、「MEHC-78004S」、明和化成社製「MEHC-7851-SS」「MEHC-7851-S」、「MEHC-7851-M」「MEHC-7851-H」、「MEHC-7800―4S」「MEHC-7800-SS」、「MEHC-7800-S」、「MEHC-7800-M」、「MEHC-7800-H」、日本化薬社製「GPH-65」「GPH-103」、「MEHC-7841-4S」等が挙げられる。
【0124】
分子内にフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂の更に別の例としては、本州化学社製「BisE」、「BisP-TMC」;三井化学ファイン社製「BisA」、「BisF」、「BisP-M」;本州化学社製「BisP-AP」、「BisP-MIBK」、「BisP-B」、「Bis-Z」、「BisP-CP」、「o,o‘-BPF」、「BisP-IOTD」、「BisP-IBTD」、「BisP-DED」、「BisP-BA」;本州化学社製「Bis-C」、「Bis26X-A」、「BisOPP-A」、「BisOTBP-A」、「BisOCHP―A」、「BisOFP-A」、「BisOC-Z」、「BisOC-FL」、「BisOC-CP」、「BisOCHP-Z」、「メチレンビスP-CR」、「TM-BPF」、「BisOC-F」、「Bis3M6B-IBTD」、「BisOC-IST」、「BisP-IST」、「BisP-PRM」、「BisP-LV」等が挙げられる。
【0125】
分子内にフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0126】
分子内にフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100以上、より好ましくは150以上、更に好ましくは200以上であり、300以上、500以上、700以上、1000以上などであってもよい。また、上限は、好ましくは150000以下、より好ましくは100000以下、さらに好ましくは50000以下であり、10000以下、5000以下、1000以下、800以下、500以下などであってもよい。
【0127】
分子内にフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0128】
分子内にフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは、40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0129】
分子中に2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物が含有するアルコキシメチル基は、下記式(B-1)で表されうる。
R-O-CH- (B-1)
【0130】
式(B-1)中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基であってもよい。また、環状のアルキル基は、単環、多環のいずれであってもよい。アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~4である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0131】
分子中に2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物としては、例えば、分子中に2つ以上のアルコキシメチル基を含有するアミノ樹脂、分子中に2つ以上のアルコキシメチル基を含有するフェノール樹脂等が挙げられる。中でも、感光性により優れることから、分子中に2つ以上のアルコキシメチル基を含有するアミノ樹脂が好ましい。分子中に2つ以上のアルコキシメチル基を含有するアミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられ、メラミン樹脂が好ましい。
【0132】
メラミン樹脂の具体例としては、三和ケミカル社製の「MW-390」、「MW-100LM」、「MX-750LM」;オルネクスジャパン社製のサイメルシリーズ等が挙げられる。また、尿素樹脂の具体例としては、三和ケミカル社製の「MX-270」、「MX-279」、「MX-280」;オルネクスジャパン社製のサイメルシリーズ等が挙げられる。
【0133】
分子中に2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
分子中に2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物の量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0135】
分子中に2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物の量は、樹脂組成物の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0136】
光硬化性樹脂の別の例としては、ラジカル重合性樹脂が挙げられ、その具体例としては、エチレン性不飽和基等のラジカル重合性不飽和基を有する樹脂が挙げられる。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂としては、例えば、特開2020-15859号公報、特開2020-52288号公報などの文献に記載のものが挙げられる。光硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
光硬化性樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0138】
光硬化性樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは、40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0139】
一例に係る光硬化性の樹脂組成物は、光硬化性樹脂に組み合わせて、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤によれば、光硬化性樹脂の反応を促進することができる。光重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0140】
光重合開始剤の例としては、光酸発生剤が挙げられる。光酸発生剤は、カチオン重合性樹脂を光硬化性樹脂として用いた場合に、その反応を効果的に促進できる。具体的には、光酸発生剤は、紫外線等の活性光線の照射時に酸を発生させることができる。例えば、発生した酸により、分子内にフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、及び、分子中に2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物の反応を促進できる。
【0141】
光酸発生剤としては、活性光線の照射により酸を発生できる化合物を用いうる。光酸発生剤としては、例えば、ハロゲン含有化合物、オニウム塩化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。中でも、ハロゲン含有化合物が好ましい。
【0142】
光酸発生剤として使用しうるハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物等が挙げられる。ハロゲン含有化合物の好適な具体例としては、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-メトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,10-ジブロモ-n-デカン、1,1-ビス(4-クロロフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-メトキシフェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、スチリル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ナフチル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のs-トリアジン誘導体等を挙げることができる。ハロゲン含有化合物の具体例としては、三和ケミカル社製「TFE-トリアジン」、「TME-トリアジン」、「MP-トリアジン」、「MOP-トリアジン」、「ジメトキシトリアジン」(トリアジン骨格を有するハロゲン含有化合物系光酸発生剤)等が挙げられる。
【0143】
光重合開始剤の別の例としては、光ラジカル発生剤が挙げられる。光ラジカル発生剤は、ラジカル重合性樹脂を光硬化性樹脂として用いた場合に、その反応を効果的に促進できる。光ラジカル発生剤としては、例えば、特開2020-15859号公報、特開2020-52288号公報などの文献に記載のものが挙げられる。
【0144】
光重合開始剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。
【0145】
光重合開始剤の量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。
【0146】
一例に係る光硬化性の樹脂組成物は、必要に応じて、有機充填材を含んでいてもよい。有機充填材としては、例えば、ウレタン粒子、ゴム粒子、ポリアミド粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。中でも、ウレタン粒子が好ましい。ウレタン粒子としては、例えば、根上工業社製の「MM-101SW」、「MM-101SWA」、「MM-101SM」、「MM-101SMA」、「MM-110SMA」等が挙げられる。有機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0147】
有機充填材の平均粒径は、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.6μm以下である。有機充填材の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。具体的には、有機充填材の平均粒径は、適切な有機溶剤に有機充填材を超音波により均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(FPAR-1000;大塚電子社製)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。
【0148】
有機充填材の量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0149】
有機充填材の量は、樹脂組成物の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0150】
一例に係る光硬化性の樹脂組成物は、無機充填材を含んでいなくてもよいが、必要に応じて含んでいてもよい。光硬化性の樹脂組成物が無機充填材を含む場合、無機充填材の量は、熱硬化性の樹脂組成物における無機充填材の量の範囲の下限より少なくてもよく、例えば樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して10質量%以下でもよい。通常は、光硬化性の樹脂組成物における無機充填材の量は、熱硬化性の樹脂組成物における無機充填材の量の範囲に収まることが好ましい。
【0151】
一例に係る光硬化性の樹脂組成物は、上述した成分以外に、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、ハイドロキノン、フェノチアジン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤;等が挙げられる。また、光硬化性の樹脂組成物は、上述した熱硬化性の樹脂組成物が含みうる成分を含んでいてもよい。任意の成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0152】
一例に係る光硬化性の樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよいが、その量は少ないことが好ましい。樹脂組成物に含まれる溶剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。中でも、樹脂組成物は、溶剤を含まないことが特に好ましい。
【0153】
(樹脂組成物層の厚み)
樹脂組成物層の厚みTは、特に制限は無い。樹脂組成物層を硬化させて薄い絶縁層又は封止層を得る観点では、樹脂組成物層は、薄いことが好ましい。また、本発明者の検討によれば、樹脂組成物層が薄いほど、当該樹脂組成物層の厚みのバラツキの影響が大きく現れることにより、保護フィルムを剥離するときに樹脂剥がれが生じ易いことが判明している。よって、このように生じ易い樹脂剥がれを抑制できるという前記実施形態の利点を活用する観点でも、樹脂組成物層は、薄いことが好ましい。具体的には、樹脂組成物層の厚みTは、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、特に好ましくは18μm以下である。下限は、接着シート片の取り扱い性を向上させる観点から、1μm以上、3μm以上、5μm以上等でありうる。
【0154】
樹脂組成物層の厚みT[μm]と、保護フィルムの剥離速度S[m/分]との比T/Sは、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、比T/Sは、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.10以上、特に好ましくは0.20以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、特に好ましくは20以下である。比T/Sが前記の範囲にある場合に、保護フィルムの剥離時における樹脂剥がれを効果的に抑制できる。
【0155】
(支持体)
支持体としては、例えば、プラスチック材料で形成されたフィルムとしてのプラスチックフィルム、金属箔、離型紙が挙げられる。中でも、プラスチックフィルム及び金属箔が好ましい。
【0156】
プラスチックフィルムに含まれるプラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0157】
金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0158】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の表面処理を施してあってもよい。
【0159】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有するものを使用してもよい。離型層は、通常、離型剤によって形成される。離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。このように離型層を含む支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0160】
支持体の厚みは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。離型層を含む支持体を使用する場合、離型層を含めた支持体全体の厚みが、上記範囲であることが好ましい。
【0161】
(接着シートの製造方法)
接着シートの製造方法に制限は無い。例えば、接着シートは、樹脂組成物を、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布することを含む方法により、製造できる。また、例えば、接着シートは、樹脂組成物及び溶剤を含む樹脂ワニスを支持体上に塗布することを含む方法により、製造してもよい。樹脂ワニスを用いた場合、通常は、塗布後に樹脂ワニスを乾燥させて、樹脂組成物層を形成する。
【0162】
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等の有機溶剤が挙げられる。溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0163】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の乾燥方法により実施してよい。乾燥条件は、樹脂組成物層に含まれる溶剤の量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように行うことが好ましい。乾燥条件は、樹脂ワニス中の溶剤の沸点によっても異なりうるが、例えば、30質量%~60質量%の溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で1分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0164】
接着シートの製造は、通常、長尺の支持体を用いて行う。例えば長尺の支持体を搬送しながら、その支持体上への樹脂ワニスの塗布及び乾燥をそれぞれ連続的に行いうる。この場合、長尺の支持体上に長尺の樹脂組成物層を備える長尺の接着シートを得ることができる。得られた接着シートは、ロール状に巻きとって保存しうる。
【0165】
(保護フィルム)
保護フィルムは、樹脂組成物層に、剥離可能に接して設けられたフィルムである。通常、保護フィルムは長尺の形状を有し、長尺の接着シートが備える樹脂組成物層の片面の全体を覆うことができるように設けられる。保護フィルムによれば、ゴミの付着及び傷付きを抑制できるように樹脂組成物層を保護できる。
【0166】
保護フィルムは、上述した支持体と同様の材料により構成されたフィルムでありうる。よって、保護フィルムとしては、支持体と同じく、例えば、プラスチックフィルム、金属箔、離型紙が挙げられる。中でも、プラスチックフィルム及び金属箔が好ましい。
【0167】
保護フィルムは、樹脂組成物層と接する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の表面処理が施されていてもよい。また、保護フィルムは、樹脂組成物層と接合する面に、離型層を有していてもよい。このような保護フィルムは、通常、プラスチック材料、金属材料等の材料で形成されたフィルム部と、このフィルム部上に離型剤によって形成された離型層とを備え、前記離型層が樹脂組成物層と接触している。離型剤の例としては、支持体に適用しうる離型剤と同じ例が挙げられる。
【0168】
積層シートが備える保護フィルムは、上述したように、樹脂組成物層に貼り合わせられている。接着シートが支持体を備える場合、保護フィルムと樹脂組成物層との間の密着力は、保護フィルムの剥離を円滑に行う観点から、樹脂組成物層と支持体との間の密着力よりも小さいことが好ましい。
【0169】
保護フィルムと樹脂組成物層との間の具体的な密着力は、積層シートの保管時及び運搬時に保護フィルムの剥離を抑制でき、且つ、保護フィルムの剥離時に当該剥離を円滑に行える範囲にあることが好ましい。一例において、保護フィルムと樹脂組成物層との間の密着力[gf/cm]は、好ましくは1.5[gf/cm]より大きく、より好ましくは1.7[gf/cm]より大きく、特に好ましくは1.9[gf/cm]より大きく、また、好ましくは20[gf/cm]未満、より好ましくは18[gf/cm]未満、特に好ましくは17[gf/cm]未満である。前記の密着力の単位「gf/cm」は、幅1cm当たりの力を表す。保護フィルムと樹脂組成物層との間の密着力[gf/cm]は、支持体を、樹脂組成物層に対して垂直方向(90度方向)に23℃において引き剥がしたときの剥離強度として、引っ張り試験機を用いて測定しうる。
【0170】
保護フィルムの厚みは、特段の制限は無い。具体的な保護フィルムの厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下である。
【0171】
(積層シートの製造方法)
長尺の積層シートは、通常、長尺の接着シートの樹脂組成物層と、長尺の保護フィルムとを貼り合わせることを含む方法によって、製造できる。貼り合わせは、適切な温度及び圧着圧力でラミネートするラミネート法によって行いうる。また、製造された長尺の積層シートは、通常、ロール状に巻きとって保存される。
【0172】
[8.プリント配線板の製造方法]
上述した接着シート片の製造方法は、プリント配線板の製造方法に適用できる。本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、
(1)上述した製造方法によって接着シート片を製造する工程と;
(2)内層基板上に、接着シート片を、樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程と;
(3)樹脂組成物層を硬化する工程と;
を含む。この方法によれば、樹脂組成物の硬化体によって形成された層を備えたプリント配線板を製造できる。樹脂組成物の硬化体によって形成された層は、例えば、プリント配線板の絶縁層、封止層、ソルダーレジスト等として用いうる。
【0173】
工程(1)については、上述した通りである。工程(1)で接着シート片を製造した後で、工程(2)を行う。
【0174】
工程(2)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0175】
内層基板と接着シート片との積層は、例えば、接着シート片の樹脂組成物層と内層基板の片面又は両面とをラミネートすることを含む。このラミネートは、必要に応じて接着シート片及び内層基板をプレヒートし、樹脂組成物層を加圧及び加熱しながら内層基板に圧着することを含みうる。
【0176】
内層基板と接着シート片との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは30℃~160℃、より好ましくは50℃~140℃の範囲である。また、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲である。さらに、加熱圧着時間は、好ましくは5秒間~400秒間、より好ましくは20秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0177】
前記の積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター、タカトリ社製フィルムレジスト貼付装置等が挙げられる。
【0178】
接着シート片が支持体を備える場合、通常は、前記の積層の後で、支持体を除去する。この支持体の除去は、工程(2)と工程(3)との間に行ってもよく、工程(3)よりも後で行ってもよい。
【0179】
工程(2)の後で、樹脂組成物層を硬化して、樹脂組成物の硬化体によって形成された硬化体層を形成する工程(3)を行いうる。樹脂組成物層の硬化方法は、樹脂組成物の組成に応じて適切な条件を採用しうる。
【0180】
熱硬化性の樹脂組成物を用いた場合、樹脂組成物の硬化は、熱硬化として進行しうる。よってこの場合、工程(3)は、樹脂組成物層を熱硬化させることを含みうる。樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なりうる。例えば、硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃でありうる。また、硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間でありうる。
【0181】
また、樹脂組成物層を熱硬化させる場合には、プリント配線板の製造方法は、その熱硬化の前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱することを含むことが好ましい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0182】
他方、光硬化性の樹脂組成物を用いた場合、樹脂組成物の硬化は、光硬化として進行しうる。よってこの場合、工程(3)は、樹脂組成物層を光硬化させることを含みうる。樹脂組成物の光硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なりうる。例えば、樹脂組成物層に活性光線を照射する露光処理によって、照射部の樹脂組成物層を光硬化させうる。活性光線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量は、例えば、10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。支持体を備える接着シート片を用いた場合、支持体を通して露光を行ってもよく、支持体を剥離した後に露光を行ってもよい。
【0183】
露光処理では、パターンを形成されたマスクを通して樹脂組成物層に活性光線を照射してもよい。マスクを用いた露光方法には、マスクをワークに接触させて露光を行う接触露光法と、接触させずに平行光線を使用して露光を行う非接触露光法とがあり、どちらを用いてもよい。マスクとして、例えば、丸穴パターン等のビアパターンを形成されたものを用いて、硬化体層にビアを形成してもよい。ビア径(開口径)は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。下限は特に限定されないが、1μm以上、2μm以上等でありうる。
【0184】
マスクを用いた露光処理を行った場合、プリント配線板の製造方法は、通常、工程(3)の後に現像処理を行う工程(4)を含む。現像処理によれば、光硬化されていない部分(未露光部)を除去して、硬化体層にパターンを形成することができる。現像は、通常、ウェット現像により行う。
【0185】
ウエット現像において、現像液としては、例えば、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の、安全かつ安定であり操作性が良好な現像液が用いられる。なかでも、アルカリ水溶液による現像工程が好ましい。現像方法としては、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の方法が採用されうる。
【0186】
さらに、樹脂組成物層を光硬化させた場合には、光硬化及び現像の後で、必要に応じて、ポストベーク処理を行うことが好ましい。ポストベーク処理としては、例えば、高圧水銀ランプによる紫外線照射処理、クリーンオーブンを用いた加熱処理、などが挙げられる。紫外線照射処理は、例えば、0.05J/cm~10J/cm程度の照射量で行いうる。また、加熱処理は、例えば、好ましくは150℃~250℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~230℃で30分間~120分間の範囲で行いうる。
【0187】
プリント配線板の製造方法は、上述した工程に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、プリント配線板の製造方法は、硬化体層に穴あけする工程(5)を含んでいてもよい。工程(5)により、硬化体層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。穴あけは、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の方法を使用して実施しうる。ホールの寸法及び形状は、プリント配線板のデザインに応じて適切に決定しうる。
【0188】
また、プリント配線板の製造方法は、硬化体層に粗化処理を施す工程(6)を含んでいてもよい。通常、この工程(6)において、スミアの除去も行われる。粗化処理は、乾式で行ってもよく、湿式で行ってもよく、両者を組み合わせて行ってもよい。
【0189】
乾式粗化処理としては、例えば、プラズマを用いた粗化処理が挙げられる。プラズマを用いた粗化処理は、市販のプラズマデスミア処理装置を使用して実施することができる。市販のプラズマデスミア処理装置の中でも、プリント配線板の製造用途に好適な例として、ニッシン社製のマイクロ波プラズマ装置、積水化学工業社製の常圧プラズマエッチング装置等が挙げられる。
【0190】
湿式粗化処理としては、例えば、酸化剤溶液を用いた方法が挙げられる。酸化剤溶液を用いて粗化処理を行う場合、膨潤液による膨潤処理、酸化剤溶液による酸化処理、及び、中和液による中和処理を、この順に行うことが好ましい。膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等を挙げることができる。膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に硬化体層を1分間~20分間浸漬することにより行うことが好ましい。酸化剤溶液としては、アルカリ性過マンガン酸水溶液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解した溶液を挙げることができる。酸化処理は、例えば、硬化剤層を、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。アルカリ性過マンガン酸水溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ド-ジングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化処理後の硬化体層を、30℃~70℃の中和液に3分間~20分間浸漬させることにより行うことが好ましい。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0191】
さらに、プリント配線板の製造方法は、硬化体層上に導体層を形成する工程(7)を含んでいてもよい。導体層は、例えば、スパッタにより形成してもよい。また、導体層は、例えば、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて形成してもよい。さらに、導体層は、例えば、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで形成してもよい。導体層のパターン形成の方法としては、例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0192】
上述した工程は繰り返し行ってもよい。例えば、工程(2)~工程(7)の一部又は全部を繰り返し行って、硬化体層としての層間絶縁層と導体層とを複数備える多層プリント配線板を製造してもよい。
【0193】
上述した製造方法で製造したプリント配線板は、当該プリント配線板を備える半導体装置の製造に用いうる。半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0194】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別に断らない限り、質量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧(25℃、1atm)の大気中で行った。
【0195】
[実施例1]
(1-1.樹脂ワニスの製造)
ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量144、DIC社製「EXA4032SS」)6質量部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、三菱ケミカル社製「YX4000HK」)12質量部、及び、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量約290、日本化薬社製「NC3000H」)9質量部を、メチルエチルケトン(MEK)4質量部及びソルベントナフサ25質量部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル硬化剤(活性基当量約223、DIC社製「EXB-9460S-65T」、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)45質量部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量35000、三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発成分30質量%のMEK溶液)5質量部、硬化促進剤として4-ジメチルアミノピリジンの5質量%のMEK溶液5質量部、及び、フェニルアミノシラン(信越化学工業社製、「KBM573」)で表面処理した球形シリカ(アドマテックス社製「SC2500SQ」、平均粒子径0.5μm、比表面積5.8m/g、単位面積当たりのカーボン量0.39mg/m)160質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス1を得た。
【0196】
(1-2.長尺の接着シートの製造)
長尺の支持体として、アルキド樹脂系離型層付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、リンテック社製、「AL5」)を用意した。上記で得た樹脂ワニス1を、該支持体の離型層側の表面に、ダイコーターを用いて均一に塗布した。その後、塗布された樹脂ワニス1を、80℃~105℃(平均90℃)で4.5分間乾燥させて、熱硬化性樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を形成した。樹脂組成物層は、厚み15μmであった。以上の操作により、支持体及び樹脂組成物層を備える長尺の接着シートを得た。
【0197】
(1-3.長尺の積層シート(保護フィルム付き接着シート)の製造)
長尺の保護フィルムとして、平滑面を有するポリプロピレンフィルム(王子特殊紙社製、「アルファンMA-411」、厚み15μm)を用意した。上記で得た長尺の接着シートの樹脂組成物層側の表面に、長尺の保護フィルムの平滑面を、常圧下で、温度60℃、圧着圧力0.06kgf/cmの条件でラミネートして、保護フィルム付き接着シートとしての長尺の積層シートを得た。得られた積層シートを巻き取って、積層シートのロールを得た(巻き取り長50m)。このロールを幅507mmにスリットして、積層シートのロールを2本得た。
【0198】
(1-4.保護フィルムの剥離)
複数のバキューム吸着用の孔を有する水平な保持面を備えたシート搬送治具を用意した。
ロールから長尺の積層シートを引き出し、誘導ロールを用いて当該積層シートの長手方向に搬送して、シート搬送治具に供給した。
シート搬送治具は、積層シートの支持体側の面をバキューム吸着することにより、その積層シートの一部を保持面で保持した。
保持された積層シートを、シート搬送治具に保持された部分の上流で、カッターによりカットした。前記のカットは、積層シートの幅方向に平行な切れ目を形成するように行った。前記のカットにより、シート搬送治具の保持面で保持された枚葉の積層シート片を得た。積層シート片は、長尺の積層シートの長手方向に平行又は垂直な辺を有する長方形の平面形状を有していた。この積層シート片に、長尺の積層シートの長手方向に平行な基準方向を設定した。
【0199】
保護フィルムの端部を剥離するための端部剥離治具を用意した。この端部剥離治具は、粘着層を設けられた端部固定部としての粘着面を有していた。この端部剥離治具の粘着面を、保護フィルムの幅方向の一方の端部に貼り付け、その後、持ち上げた。端部剥離治具が持ち上げられたことにより、保護フィルムの端部が、シート搬送治具の保持面に保持された接着シートから別れて、保護フィルムの幅方向の端部全体に端部剥がれ部位が形成された。
【0200】
保護フィルムの端部剥がれ部位を、クランプで把持し、端部剥離治具を外した。そして、クランプを、積層シート片の基準方向に対して垂直な剥離方向に移動させて、剥離速度10m/分で保護フィルムを剥離した。
保護フィルムの剥離後、現れた樹脂組成物層を目視で観察した。樹脂組成物層に破損および支持体からの剥離が無かったことから、保護フィルムの剥離による樹脂剥がれが無かったことが確認された。
【0201】
[比較例1]
実施例1と同じ方法により、長尺の積層シートのロールの製造、ロールから引き出した積層シートのシート搬送治具への供給、シート搬送治具の保持面での積層シートの保持、及び、積層シートのカットによる枚葉の積層シート片の形成を行った。
【0202】
保護フィルムの端部を剥離するための端部剥離治具を用意した。この端部剥離治具は、粘着層を設けられた粘着面を有していた。この端部剥離治具の粘着面を、保護フィルムの基準方向の一方の端部に貼り付け、その後、持ち上げた。端部剥離治具が持ち上げられたことにより、保護フィルムの端部が、シート搬送治具の保持面に保持された接着シートから別れて、保護フィルムの基準方向の端部全体に端部剥がれ部位が形成された。
【0203】
保護フィルムの端部剥がれ部位を、クランプで把持し、端部剥離治具を外した。そして、クランプを、積層シート片の基準方向に対して平行な剥離方向に移動させて、保護フィルムを剥離した。
保護フィルムの剥離後、現れた樹脂組成物層を目視で観察した。樹脂組成物層には破損があったことから、保護フィルムの剥離による樹脂剥がれが発生したことが確認された。
【0204】
[比較例2]
実施例1と同じ方法により、長尺の積層シートのロールを製造した。このロールを、オートカッター装置(新栄機工社製「SAC-500」)に取り付けた。ロールは、内層回路基板の両面に接着シートを設けられるように、2個取り付けた。そして、前記のオートカッター装置を用いて、ロールから積層シートを引き出し、長手方向に搬送速度5m/分で搬送しながら、保護フィルムの剥離を行った。このオートカッター装置を用いた保護フィルムの剥離は、積層シートの長手方向に対して平行な剥離方向に保護フィルムを引っ張って行われた。
保護フィルムの剥離後、現れた樹脂組成物層を目視で観察した。樹脂組成物層には破損があったことから、保護フィルムの剥離による樹脂剥がれが発生したことが確認された。
【0205】
[実施例2]
(2-1.樹脂ワニスの製造)
フェノール樹脂(旭有機材社製「TR4020G」)10質量部、フェノール樹脂(明和化成社製「MEHC-7851SS」)5質量部、ビスフェノール(本州化学社製「BisE」)5質量部、アミノ樹脂(三和ケミカル社製「MW-390」)5質量部、光酸発生剤(三和ケミカル社製「MP-トリアジン」)0.05質量部、有機フィラー(根上工業社製「MM-101SM」)6質量部、及びMEK(純正化学社製)12質量部を混合して、樹脂ワニス2を得た。
【0206】
(2-2.長尺の接着シートの製造)
長尺の支持体として、アルキド樹脂系離型層付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、リンテック社製、「AL5」)を用意した。上記で得た樹脂ワニス2を、該支持体の離型層側の表面に、ダイコーターを用いて均一に塗布した。その後、塗布された樹脂ワニス2を、80℃~105℃(平均90℃)で4.5分間乾燥させて、光硬化性樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を形成した。樹脂組成物層は、厚み15μmであった。以上の操作により、支持体及び樹脂組成物層を備える長尺の接着シートを得た。
【0207】
(2-3.長尺の積層シート(保護フィルム付き接着シート)の製造)
長尺の保護フィルムとして、平滑面を有するポリプロピレンフィルム(王子特殊紙社製、「アルファンMA-411」、厚み15μm)を用意した。上記で得た長尺の接着シートの樹脂組成物層側の表面に、長尺の保護フィルムの平滑面を、常圧下で、温度60℃、圧着圧力0.06kgf/cmの条件でラミネートして、保護フィルム付き接着シートとしての長尺の積層シートを得た。得られた積層シートを巻き取って、積層シートのロールを得た(巻き取り長50m)。このロールを幅507mmにスリットして、積層シートのロールを2本得た。
【0208】
(2-4.保護フィルムの剥離)
複数のバキューム吸着用の孔を有する水平な保持面を備えたシート搬送治具を用意した。
ロールから長尺の積層シートを引き出し、誘導ロールを用いて当該積層シートの長手方向に搬送して、シート搬送治具に供給した。
シート搬送治具は、積層シートの支持体側の面をバキューム吸着することにより、その積層シートの一部を保持面で保持した。
【0209】
保持された積層シートを、シート搬送治具に保持された部分の上流で、カッターによりカットした。前記のカットは、積層シートの幅方向に平行な切れ目を形成するように行った。前記のカットにより、シート搬送治具の保持面で保持された枚葉の積層シート片を得た。積層シート片は、長尺の積層シートの長手方向に平行又は垂直な辺を有する長方形の平面形状を有していた。この積層シート片に、長尺の積層シートの長手方向に平行な基準方向を設定した。
【0210】
保護フィルムの端部を剥離するための端部剥離治具を用意した。この端部剥離治具は、粘着層を設けられた粘着面を有していた。この端部剥離治具の粘着面を、保護フィルムの幅方向の一方の端部に貼り付け、その後、持ち上げた。端部剥離治具が持ち上げられたことにより、保護フィルムの端部が、シート搬送治具の保持面に保持された接着シートから別れて、保護フィルムの幅方向の端部全体に端部剥がれ部位が形成された。
【0211】
保護フィルムの端部剥がれ部位を、クランプで把持し、端部剥離治具を外した。そして、クランプを、積層シート片の基準方向に対して垂直な剥離方向に移動させて、剥離速度10m/分で保護フィルムを剥離した。
保護フィルムの剥離後、現れた樹脂組成物層を目視で観察した。樹脂組成物層に破損および支持体からの剥離が無かったことから、保護フィルムの剥離による樹脂剥がれが無かったことが確認された。
【0212】
[比較例3]
実施例2と同じ方法により、長尺の積層シートのロールの製造、ロールから引き出した積層シートのシート搬送治具への供給、シート搬送治具の保持面での積層シートの保持、及び、積層シートのカットによる枚葉の積層シート片の形成を行った。
【0213】
保護フィルムの端部を剥離するための端部剥離治具を用意した。この端部剥離治具は、粘着層を設けられた端部固定部としての粘着面を有していた。この端部剥離治具の粘着面を、保護フィルムの基準方向の一方の端部に貼り付け、その後、持ち上げた。端部剥離治具が持ち上げられたことにより、保護フィルムの端部が、シート搬送治具の保持面に保持された接着シートから別れて、保護フィルムの基準方向の端部全体に端部剥がれ部位が形成された。
【0214】
保護フィルムの端部剥がれ部位を、クランプで把持し、解放治具を外した。そして、クランプを、積層シートの基準方向に対して平行な剥離方向に移動させて、保護フィルムを剥離した。
保護フィルムの剥離後、現れた樹脂組成物層を目視で観察した。樹脂組成物層には破損があったことから、保護フィルムの剥離による樹脂剥がれが発生したことが確認された。
【0215】
[比較例4]
実施例2と同じ方法により、長尺の積層シートのロールを製造した。このロールを、オートカッター装置(新栄機工社製「SAC-500」)に取り付けた。ロールは、内層回路基板の両面に接着シートを設けられるように、2個取り付けた。そして、前記のオートカッター装置を用いて、ロールから積層シートを引き出し、長手方向に搬送速度5m/分で搬送しながら、保護フィルムの剥離を行った。このオートカッター装置を用いた保護フィルムの剥離は、積層シートの長手方向に対して平行な剥離方向に保護フィルムを引っ張って行われた。
保護フィルムの剥離後、現れた樹脂組成物層を目視で観察した。樹脂組成物層には破損があったことから、保護フィルムの剥離による樹脂剥がれが発生したことが確認された。
【0216】
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表にまとめた。
【0217】
【表1】
【符号の説明】
【0218】
10 長尺の積層シート
10L 長尺の積層シートの幅方向の一端
10R 長尺の積層シートの幅方向の他端
20 接着シート
21 樹脂組成物層
21U 樹脂組成物層の面
21L 樹脂組成物層の端部露出部位
22 支持体
30 保護フィルム
30L 保護フィルムの端部剥がれ部位
40 積層シート片
40L 積層シート片の端部
40R 積層シート片の端部
50 積層シートのロール
60 接着シート片
100 シート片準備部
110 シート供給部
111 ロール取付部
120 カッター
131 誘導ロール
132 誘導ロール
133 誘導ロール
134 誘導ロール
140 シート搬送治具
140U 保持面
200 剥離準備部
210 端部剥離治具
211 端部固定部
300 フィルム剥離部
310 フィルム剥離治具
311 フィルム固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10