(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】治具ストッカ
(51)【国際特許分類】
B25J 15/04 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B25J15/04 A
(21)【出願番号】P 2020131754
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2022-11-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大江 正浩
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-134182(JP,A)
【文献】特開2013-103298(JP,A)
【文献】特開平01-274979(JP,A)
【文献】実開平06-017840(JP,U)
【文献】国際公開第2009/002338(WO,A1)
【文献】独国実用新案第202005012600(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B62D 65/00-65/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームに着脱可能に取り付けられて種々のワークを支持する治具が配置される治具ストッカであって、
複数の取付部材と、
それぞれに前記取付部材を介して前記治具が取り付けられる複数の治具取付部と、を備え、
前記治具は、前記ワークを保持する保持機構を備え、
複数の前記取付部材のそれぞれは、前記保持機構に保持される被保持部と、複数の前記治具取付部のそれぞれに対して着脱可能に固定される固定部と、を備え、
前記治具には、前記ワークの種類に応じて前記保持機構の構成が異なる複数種類が存在し、
前記取付部材には、前記治具の種類に応じて前記被保持部の構成が異なると共に、前記固定部の構成が同一である複数種類が存在する、治具ストッカ。
【請求項2】
複数の前記治具取付部が、鉛直方向に沿って並んで配置されている、請求項1に記載の治具ストッカ。
【請求項3】
前記鉛直方向に沿って並んで配置された複数の前記治具取付部によって構成された治具取付ユニットが複数設けられ、
複数の前記治具取付ユニットは、前記鉛直方向に沿う回転軸心の周方向に沿って並んで配置されていると共に、前記回転軸心を中心として回転可能に支持されている、請求項2に記載の治具ストッカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームに着脱可能に取り付けられて種々のワークを支持する治具が配置される治具ストッカに関する。
【背景技術】
【0002】
このような治具ストッカの一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の治具ストッカ(60)は、それぞれに治具(50A~50F)が取り付けられる複数の治具取付部(63A~63F)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の治具ストッカ(60)では、複数の治具取付部(63A~63F)のそれぞれに、その構成に対応した種類の治具(50A~50F)が取り付けられる。そのため、例えば、新たな種類の治具を導入する場合等には、当該治具に対応するように治具取付部の構成を変更させる必要があるが、そのためには、治具ストッカ(60)に対して大掛かりな変更が必要であった。このように、特許文献1の治具ストッカ(60)は、汎用性に欠ける点で不利であった。
【0006】
そこで、汎用性に優れた治具ストッカの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、治具ストッカの特徴構成は、
ロボットアームに着脱可能に取り付けられて種々のワークを支持する治具が配置される治具ストッカであって、
それぞれに取付部材を介して前記治具が取り付けられる複数の治具取付部を備え、
前記治具は、前記ワークを保持する保持機構を備え、
前記取付部材は、前記保持機構に保持される被保持部と、複数の前記治具取付部のそれぞれに対して着脱可能に固定される固定部と、を備え、
前記治具には、前記ワークの種類に応じて前記保持機構の構成が異なる複数種類が存在し、
前記取付部材には、前記治具の種類に応じて前記被保持部の構成が異なると共に、前記固定部の構成が同一である複数種類が存在する点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、治具の保持機構に保持される被保持部と、治具取付部に対して着脱可能に固定される固定部と、を備えた取付部材を介して、複数の治具取付部のそれぞれに治具が取り付けられる。そして、治具の種類に応じて複数種類の取付部材が存在しており、当該複数種類の取付部材において、被保持部が治具の種類に応じて互いに異なる構成である一方、固定部が共通の構成となっている。これにより、治具取付部の構成を変更することなく、治具の種類に応じて取付部材を取り替えるだけで、様々な構成の治具を治具取付部に対して取り付けることができる。したがって、汎用性に優れた治具ストッカを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る治具ストッカが設置される設備の平面図
【
図3】第1の実施形態に係る治具ストッカにおける第1の治具取付部と、第1の取付部材と、第1の治具との関係を示す斜視図
【
図4】第1の実施形態に係る治具ストッカにおける第2の治具取付部と、第2の取付部材と、第2の治具との関係を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る治具ストッカ100について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、治具ストッカ100は、治具Jが配置されるように構成されている。治具Jは、種々のワークWを支持するために、ロボットアームRに着脱可能に取り付けられる。治具Jは、ワークWを保持する保持機構H(
図2参照)を備えている。
【0011】
治具Jには、ワークWの種類に応じて保持機構Hの構成が異なる複数種類が存在している。治具ストッカ100には、複数種類の治具Jが配置されている。そして、それらの治具Jのうち、ワークWに応じた種類の治具Jが選択されて、ロボットアームRに取り付けられる。本実施形態では、ワークWは、搬送装置Tによって搬送方向Dに搬送される車体Vのドアユニットである。図示の例では、治具ストッカ100及びロボットアームRは、車体Vの搬送経路における両側方のそれぞれに配置されている。
【0012】
図2に示すように、治具ストッカ100は、治具Jが取り付けられる治具取付部1を複数備えている。本実施形態では、複数の治具取付部1は、鉛直方向に沿って並んで配置されている。本例では、3つの治具取付部1が、鉛直方向に沿って並んで配置されている。
【0013】
以下の説明では、治具取付部1に治具Jが取り付けられた状態で、それらが並ぶ方向を「前後方向Y」とする。そして、その状態で、前後方向Yにおける治具取付部1に対して治具Jが位置する側を「前側Y1」とし、その反対側を「後側Y2」とする。また、平面視で前後方向Yに直交する方向を「左右方向X」とする。更に、鉛直方向に沿う方向を「上下方向Z」とする。
【0014】
図3及び
図4に示すように、本実施形態では、複数の治具取付部1のそれぞれは、一対の上側締結部11Uと、当該上側締結部11Uよりも下方に配置された一対の下側締結部11Lと、を備えている。本実施形態では、治具ストッカ100は、左右方向Xに間隔を空けて配置された一対の支持フレーム3を備えている。そして、一対の上側締結部11Uが、一対の支持フレーム3から左右方向Xの両外側に突出するように、それぞれ一対の支持フレーム3に固定されている。一対の上側締結部11Uは、上下方向Zの同じ位置に配置されている。また、一対の下側締結部11Lが、一対の支持フレーム3から左右方向Xの両外側に突出するように、それぞれ一対の支持フレーム3に固定されている。一対の下側締結部11Lは、上下方向Zの同じ位置に配置されている。一対の上側締結部11Uと一対の下側締結部11Lとは、互いに左右方向Xの同じ位置に配置されている。また、本例では、上側締結部11U及び下側締結部11Lのそれぞれは、前後方向Yに直交する板面を有する板状に形成されている。
【0015】
複数の治具取付部1のそれぞれには、取付部材2を介して治具Jが取り付けられる。本実施形態では、取付部材2は、上側取付部材2Uと、下側取付部材2Lと、を含む。
【0016】
図2に示す例では、上下方向Zに並ぶ3つの治具取付部1のうち、上段の治具取付部1と、中段の治具取付部1とのそれぞれに、取付部材2を介して治具Jが取り付けられている。なお、下段の治具取付部1には、取付部材2が固定されておらず、治具Jが取り付けられていない。以下の説明では、上段の治具取付部1を、「第1治具取付部1A」とする。そして、第1治具取付部1Aに対応する上側取付部材2U及び下側取付部材2Lを、それぞれ「第1上側取付部材2UA」及び「第1下側取付部材2LA」とする。更に、第1上側取付部材2UA及び第1下側取付部材2LAを介して第1治具取付部1Aに取り付けられる治具Jを、「第1治具JA」とする。また、中段の治具取付部1を、「第2治具取付部1B」とする。そして、第2治具取付部1Bに対応する上側取付部材2U及び下側取付部材2Lを、それぞれ「第2上側取付部材2UB」及び「第2下側取付部材2LB」とする。更に、第2上側取付部材2UB及び第2下側取付部材2LBを介して第2治具取付部1Bに取り付けられる治具Jを、「第2治具JB」とする。また、下段の治具取付部1を、「第3治具取付部1C」とする。
【0017】
図3及び
図4に示すように、第1上側取付部材2UA及び第2上側取付部材2UBのそれぞれは、治具Jの保持機構Hに保持される上側被保持部21Uと、複数の治具取付部1のそれぞれに対して着脱可能に固定される上側固定部22Uと、を備えている。
【0018】
本実施形態では、上側被保持部21Uは、上側固定部22Uが治具取付部1に対して固定された状態で、前後方向Yにおける当該治具取付部1の側(後側Y2)を向く上側当接面21Uaを有している。本例では、第2上側取付部材2UB及び第2上側取付部材2UBのそれぞれに、2つの上側被保持部21Uが設けられている。2つの上側被保持部21Uは、前側Y1に突出し、更に互いに接近するように左右方向Xに沿って突出している。そして、2つの上側被保持部21Uにおける左右方向Xに沿って突出した部分の後側Y2の面のそれぞれに、上側当接面21Uaが形成されている。
【0019】
また、本実施形態では、一対の上側固定部22Uが、治具取付部1における一対の上側締結部11Uに固定されている。本例では、一対の上側固定部22Uは、前後方向Yに直交する板面を有する板状に形成されている。そして、互いに対応する上側固定部22Uと上側締結部11Uとが、前後方向Yに接触した状態で、ボルトによって締結されている。
【0020】
第1下側取付部材2LA及び第2下側取付部材2LBのそれぞれは、治具Jの保持機構Hに保持される下側被保持部21Lと、複数の治具取付部1のそれぞれに対して着脱可能に固定される下側固定部22Lと、を備えている。
【0021】
本実施形態では、下側被保持部21Lは、下側固定部22Lが治具取付部1に対して固定された状態で、前後方向Yにおける当該治具取付部1の側(後側Y2)を向く下側当接面21Laを有している。
図3に示すように、本例では、第1下側取付部材2LAに、2つの下側被保持部21Lが設けられている。また、
図4に示すように、本例では、第2下側取付部材2LBに、3つの下側被保持部21Lが設けられている。各下側被保持部21Lは、前後方向Yに直交する板面を有する板状に形成されている。そして、各下側被保持部21Lの後側Y2の面に、下側当接面21Laが形成されている。
【0022】
図3及び
図4に示すように、本実施形態では、一対の下側固定部22Lが、治具取付部1における一対の下側締結部11Lに固定されている。本例では、一対の下側固定部22Lは、前後方向Yに直交する板面を有する板状に形成されている。そして、互いに対応する下側固定部22Lと下側締結部11Lとが、前後方向Yに接触した状態で、ボルトによって締結されている。
【0023】
本例では、第1上側取付部材2UAにおける一対の上側固定部22Uに対する2つの上側被保持部21Uの相対位置が、第2上側取付部材2UBにおける一対の上側固定部22Uに対する2つの上側被保持部21Uの相対位置とは異なっている。また、上述したように、第1下側取付部材2LAにおける下側被保持部21Lの数が、第2下側取付部材2LBにおける下側被保持部21Lの数とは異なっている。一方で、第1上側取付部材2UAにおける一対の上側固定部22Uは、第2上側取付部材2UBにおける一対の上側固定部22Uと同様に構成されている。更に、第1下側取付部材2LAにおける一対の下側固定部22Lは、第2下側取付部材2LBにおける一対の下側固定部22Lと同様に構成されている。このように、取付部材2には、治具Jの種類に応じて被保持部21U,21Lの構成が異なると共に、固定部22U,22Lの構成が同一である複数種類が存在する。ここで、各部の「構成」とは、各部の位置、形状、数等を含む。
【0024】
また、本実施形態では、第1下側取付部材2LA及び第2下側取付部材2LBのそれぞれは、治具Jを下方から支持する一対の支持部23を備えている。一対の支持部23は、前側Y1に突出するように形成されている。
【0025】
また、本実施形態では、第1上側取付部材2UA及び第2上側取付部材2UBのそれぞれは、治具Jに対して後側Y2から当接する一対の上側受け部24Uを備えている。一対の上側受け部24Uは、左右方向Xに間隔を空けて配置されている。また、本実施形態では、第1下側取付部材2LA及び第2下側取付部材2LBのそれぞれは、治具Jに対して後側Y2から当接する一対の下側受け部24Lを備えている。一対の下側受け部24Lは、左右方向Xに間隔を空けて配置されている。
【0026】
図3及び
図4に示すように、本実施形態では、治具Jの保持機構Hは、上側保持機構HUと、下側保持機構HLと、を含む。上側保持機構HU及び下側保持機構HLは、治具Jが備える枠状に形成された治具フレームFに取り付けられている。本例では、第1治具JAに、2つの上側保持機構HUと、2つの下側保持機構HLとが設けられている(
図3参照)。また、第2治具JBに、2つの上側保持機構HUと、3つの下側保持機構HLとが設けられている(
図4参照)。
【0027】
上側保持機構HUは、上側当接部H1Uと、上側切替部H2Uと、を備えている。
【0028】
図3に示すように、本実施形態では、第1治具JAの上側当接部H1Uは、第1上側取付部材2UAの上側当接面21Uaに当接するように構成されている。本例では、第1治具JAにおける2つの上側当接部H1Uが、それぞれ第1上側取付部材2UAにおける2つの上側当接面21Uaに当接するように構成されている。また、
図4に示すように、本実施形態では、第2治具JBの上側当接部H1Uは、第2上側取付部材2UBの上側当接面21Uaに当接するように構成されている。本例では、第2治具JBにおける2つの上側当接部H1Uが、それぞれ第2上側取付部材2UBにおける2つの上側当接面21Uaに当接するように構成されている。
【0029】
図3及び
図4に示すように、上側切替部H2Uは、上側当接部H1Uを上側当接面21Uaに当接させて治具Jを治具取付部1に対して固定する固定状態、及び上側当接部H1Uを上側当接面21Uaから離間させて治具Jを治具取付部1に対して移動可能な解放状態のいずれかに切り替え可能に構成されている。
【0030】
本実施形態では、上側切替部H2Uは、上側当接部H1Uに連結された上側係止部H3Uと、当該上側係止部H3Uを揺動可能に支持する上側揺動軸H4Uと、上側係止部H3Uを揺動させる上側駆動部H5Uと、を備えている。
【0031】
本実施形態では、上側係止部H3Uは、固定状態では、当該上側係止部H3Uと上側当接部H1Uとが、上側当接面21Uaよりも後側Y2において、前後方向Yに沿う前後方向視で当該上側当接面21Uaに重複するように、左右方向Xに延在している。また、上側係止部H3Uは、解放状態では、当該上側係止部H3Uと上側当接部H1Uとが、前後方向Yに沿う前後方向視で上側当接面21Uaに重複しないように、前後方向Yに延在している。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0032】
本実施形態では、上側駆動部H5Uは、ロッドが前後方向Yに出退運動するシリンダ(例えば、空圧シリンダ)である。このようなシリンダとしては、ロッドを前後方向Yの任意の位置で固定する機能を有するブレーキ付シリンダ、ロッドを前後方向Yの両端位置のそれぞれで固定する機能を有するエンドロック付シリンダ等を採用可能である。このようなシリンダを上側駆動部H5Uとして用いることにより、ロボットアームRから治具Jが取り外される等して、上側駆動部H5Uへの圧縮空気、電力等の動力の供給が停止した場合であっても、上側切替部H2Uの固定状態を維持することができる。したがって、上側駆動部H5Uへの動力の供給を継続することなく、治具Jを治具取付部1に適切に取り付けることができる。
【0033】
また、本実施形態では、上側揺動軸H4Uは、上下方向Zに延在するように形成されている。本例では、複数の上側揺動軸H4Uが、上側駆動部H5Uのロッドの出退運動に伴って上側係止部H3Uが揺動するようにそれらを連結するリンク機構の一部として構成されている。
【0034】
下側保持機構HLは、下側当接部H1Lと、下側切替部H2Lと、を備えている。
【0035】
図3に示すように、本実施形態では、第1治具JAの下側当接部H1Lは、第1下側取付部材2LAの下側当接面21Laに当接するように構成されている。本例では、第1治具JAにおける2つの下側当接部H1Lが、それぞれ第1下側取付部材2LAにおける2つの下側当接面21Laに当接するように構成されている。また、
図4に示すように、本実施形態では、第2治具JBの下側当接部H1Lは、第2下側取付部材2LBの下側当接面21Laに当接するように構成されている。本例では、第2治具JBにおける3つの下側当接部H1Lが、それぞれ第2下側取付部材2LBにおける3つの下側当接面21Laに当接するように構成されている。
【0036】
図3及び
図4に示すように、下側切替部H2Lは、下側当接部H1Lを下側当接面21Laに当接させて治具Jを治具取付部1に対して固定する固定状態、及び下側当接部H1Lを下側当接面21Laから離間させて治具Jを治具取付部1に対して移動可能な解放状態のいずれかに切り替え可能に構成されている。
【0037】
本実施形態では、下側切替部H2Lは、下側当接部H1Lに連結された下側係止部H3Lと、当該下側係止部H3Lを揺動可能に支持する下側揺動軸H4Lと、下側係止部H3Lを揺動させる下側駆動部H5Lと、を備えている。
【0038】
本実施形態では、下側係止部H3Lは、固定状態では、当該下側係止部H3Lと下側当接部H1Lとが、下側当接面21Laよりも後側Y2において、前後方向Yに沿う前後方向視で当該下側当接面21Laに重複するように、上下方向Zに延在している。また、下側係止部H3Lは、解放状態では、当該下側係止部H3Lと下側当接部H1Lとが、前後方向Yに沿う前後方向視で下側当接面21Laに重複しないように、前後方向Yに延在している。
【0039】
本実施形態では、下側駆動部H5Lは、ロッドが前後方向Yに出退運動するシリンダ(例えば、空圧シリンダ)である。このようなシリンダとしては、ロッドを前後方向Yの任意の位置で固定する機能を有するブレーキ付シリンダ、ロッドを前後方向Yの両端位置のそれぞれで固定する機能を有するエンドロック付シリンダ等を採用可能である。このようなシリンダを下側駆動部H5Lとして用いることにより、ロボットアームRから治具Jが取り外される等して、下側駆動部H5Lへの圧縮空気、電力等の動力の供給が停止した場合であっても、下側切替部H2Lの固定状態を維持することができる。したがって、下側駆動部H5Lへの動力の供給を継続することなく、治具Jを治具取付部1に適切に取り付けることができる。
【0040】
また、本実施形態では、下側揺動軸H4Lは、左右方向Xに延在するように形成されている。本例では、複数の下側揺動軸H4Lが、下側駆動部H5Lのロッドの出退運動に伴って下側係止部H3Lが揺動するようにそれらを連結するリンク機構の一部として構成されている。
【0041】
本実施形態では、複数種類の治具Jは、当接部H1U,H1Lの位置、形状、及び数の少なくとも1つが互いに異なる。上述したように、本例では、第1上側取付部材2UAにおける一対の上側固定部22Uに対する2つの上側被保持部21Uの相対位置が、第2上側取付部材2UBにおける一対の上側固定部22Uに対する2つの上側被保持部21Uの相対位置とは異なっている。具体的には、第1上側取付部材2UAと第2上側取付部材2UBとでは、2つの上側被保持部21Uの左右方向Xの位置が異なっている。そのため、本例では、2つの上側被保持部21Uに対応する2つの上側保持機構HUの左右方向Xの位置が、第1治具JAと第2治具JBとで異なっている。また、上述したように、第1治具JAにおける下側保持機構HLの数が、第2治具JBにおける下側保持機構HLの数とは異なっている。このように、本例では、複数種類の治具Jは、上側当接部H1Uの位置が互いに異なると共に、下側当接部H1Lの数が互いに異なる。
【0042】
本実施形態では、上側切替部H2U及び下側切替部H2Lを解放状態として、治具取付部1に固定された取付部材2に対して、ロボットアームR(
図1参照)によって治具Jを後側Y2に移動させる。そして、治具Jの治具フレームFが、一対の上側受け部24U及び一対の下側受け部24Lに対して前側Y1から当接すると共に、一対の支持部23に載置されるように、ロボットアームRによって治具Jを更に移動させる。その後、上側切替部H2U及び下側切替部H2Lを固定状態とすることで、治具Jが取付部材2を介して治具取付部1に取り付けられる。このように、治具Jは、ワークWを保持する保持機構Hを利用して、治具取付部1に対して取り付けられる。そのため、治具Jを治具取付部1に対して取り付けるための機構を、治具Jに別途設ける必要がない。なお、治具Jを治具取付部1から取り外す場合は、上記とは逆の順序の動作が行われる。
【0043】
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る治具ストッカ100について、
図5及び
図6を参照して説明する。本実施形態では、治具取付部1の配置が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0044】
図5に示すように、本実施形態では、上下方向Zに並んで配置された複数の治具取付部1によって構成された治具取付ユニット10が複数設けられている。上記第1の実施形態における第1治具取付部1Aと第2治具取付部1Bと第3治具取付部1Cとが、1つの治具取付ユニット10に相当する。
【0045】
図6に示すように、複数の治具取付ユニット10は、上下方向Zに沿う回転軸心の周方向に沿って並んで配置されている。そして、複数の治具取付ユニット10は、その回転軸心を中心として回転可能に支持されている。本実施形態では、各治具取付ユニット10を支持する一対の支持フレーム3が連結フレーム4によって互いに連結されている。そして、上下方向Zに延在するように形成された回転軸5が、連結フレーム4に連結されている。回転軸5が規定の駆動装置によって回転駆動されることにより、複数の治具取付ユニット10が回転軸5の軸心を中心として回転する。本例では、4つの治具取付ユニット10が、回転軸5の軸心の周方向に沿って、等間隔で配置されている。
【0046】
3.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、3つの治具取付部1が上下方向Zに並んで配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、2つ又は4つ以上の治具取付部1が配置されていても良い。また、複数の治具取付部1が、上下方向Zに対して傾斜して配置されていても良い。この場合、各治具取付部1の上端が下端に対して後側Y2に向かうように、複数の治具取付部1が上下方向Zに対して傾斜していると好適である。また、複数の治具取付部1が、水平方向に並んで配置されていても良い。
【0047】
(2)上記の実施形態では、治具取付部1に2つの取付部材2(上側取付部材2U、下側取付部材2L)を介して治具Jが取り付けられる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、治具取付部1に1つ又は3つ以上の取付部材2を介して治具Jが取り付けられる構成としても良い。
【0048】
(3)上記の実施形態では、第1治具JAの上側保持機構HUと第1上側取付部材2UAの上側被保持部21Uとが2つずつ、第1治具JAの下側保持機構HLと第1下側取付部材2LAの下側被保持部21Lとが2つずつ設けられ、第2治具JBの上側保持機構HUと第2上側取付部材2UBの上側被保持部21Uとが2つずつ、第2治具JBの下側保持機構HLと第2下側取付部材2LBの下側被保持部21Lとが3つずつ設けられた構成を例として説明した。しかし、治具Jの保持機構と取付部材2の被保持部との数は限定されない。
【0049】
(4)上記の実施形態では、各取付部材2の上側固定部22Uと治具取付部1の上側締結部11Uとが2つずつ、各取付部材2の下側固定部22Lと治具取付部1の下側締結部11Lとが2つずつ設けられた構成を例として説明した。しかし、取付部材2の固定部と治具取付部1の締結部との数は限定されない。
【0050】
(5)上記の実施形態では、複数種類の治具Jは、上側当接部H1Uの位置が互いに異なると共に、下側当接部H1Lの数が互いに異なる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、複数種類の治具Jは、上側当接部H1U及び下側当接部H1Lの少なくとも一方の形状が互いに異なっていても良い。
【0051】
(6)上記の実施形態では、上側保持機構HUが、上側当接部H1Uと、上側切替部H2Uとしての上側係止部H3U、上側揺動軸H4U、及び上側駆動部H5Uと、を備え、下側保持機構HLが、下側当接部H1Lと、下側切替部H2Lとしての下側係止部H3L、下側揺動軸H4L、及び下側駆動部H5Lと、を備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、保持機構Hが、ピンを保持対象(治具J、ワークW)に係合させることにより、当該保持対象を保持する構成としても良い。
【0052】
(7)上記の実施形態では、上側駆動部H5U及び下側駆動部H5Lが、一例として空圧シリンダにより構成された例について説明したが、これには限定されない。上側駆動部H5U及び下側駆動部H5Lが、油圧シリンダ等の液圧シリンダにより構成されていても良い。或いは、上側駆動部H5U及び下側駆動部H5Lが、ソレノイドやモータ等の電動アクチュエータを備えて構成されていても良い。
【0053】
(8)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0054】
4.上記実施形態の概要
以下では、上記において説明した治具ストッカの概要について説明する。
【0055】
治具ストッカは、
ロボットアームに着脱可能に取り付けられて種々のワークを支持する治具が配置される治具ストッカであって、
それぞれに取付部材を介して前記治具が取り付けられる複数の治具取付部を備え、
前記治具は、前記ワークを保持する保持機構を備え、
前記取付部材は、前記保持機構に保持される被保持部と、複数の前記治具取付部のそれぞれに対して着脱可能に固定される固定部と、を備え、
前記治具には、前記ワークの種類に応じて前記保持機構の構成が異なる複数種類が存在し、
前記取付部材には、前記治具の種類に応じて前記被保持部の構成が異なると共に、前記固定部の構成が同一である複数種類が存在する。
【0056】
この構成によれば、治具の保持機構に保持される被保持部と、治具取付部に対して着脱可能に固定される固定部と、を備えた取付部材を介して、複数の治具取付部のそれぞれに治具が取り付けられる。そして、治具の種類に応じて複数種類の取付部材が存在しており、当該複数種類の取付部材において、被保持部が治具の種類に応じて互いに異なる構成である一方、固定部が共通の構成となっている。これにより、治具取付部の構成を変更することなく、治具の種類に応じて取付部材を取り替えるだけで、様々な構成の治具を治具取付部に対して取り付けることができる。したがって、汎用性に優れた治具ストッカを実現することができる。
【0057】
ここで、複数の前記治具取付部が、鉛直方向に沿って並んで配置されていると好適である。
【0058】
この構成によれば、鉛直方向のスペースを利用して、複数の治具を治具ストッカに配置することができる。したがって、治具ストッカの水平方向の配置領域を小さく抑えつつ、多くの治具を治具ストッカに配置することができる。
【0059】
複数の前記治具取付部が前記鉛直方向に沿って並んで配置された構成において、
前記鉛直方向に沿って並んで配置された複数の前記治具取付部によって構成された治具取付ユニットが複数設けられ、
複数の前記治具取付ユニットは、前記鉛直方向に沿う回転軸心の周方向に沿って並んで配置されていると共に、前記回転軸心を中心として回転可能に支持されていると好適である。
【0060】
この構成によれば、治具ストッカの水平方向の配置領域を小さく抑えつつ、より多くの治具を治具ストッカに配置することができる。また、複数の治具取付ユニットの回転位置を変更するだけで、ロボットアームが所望の治具へ容易にアクセスすることができる。
【0061】
また、前記治具取付部に前記治具が取り付けられた状態で、前記治具取付部と前記治具とが並ぶ方向を前後方向として、
前記被保持部は、前記固定部が前記治具取付部に対して固定された状態で、前記前後方向における当該治具取付部の側を向く当接面を有し、
前記保持機構は、前記当接面に当接する当接部と、前記当接部を前記当接面に当接させて前記治具を前記治具取付部に対して固定する固定状態、及び前記当接部を前記当接面から離間させて前記治具を前記治具取付部に対して移動可能な解放状態のいずれかに切り替え可能に構成された切替部と、を備えていると好適である。
【0062】
この構成によれば、切替部を固定状態及び解放状態のいずれかに切り替えることで、治具取付部に対して治具を容易に着脱させることができる。
【0063】
上記の構成は、複数種類の前記治具が、前記当接部の位置、形状、及び数の少なくとも1つが互いに異なる場合に好適である。このような構成では、治具の種類に応じて被保持部の構成が異なる取付部材を用いなければ、種々の治具を治具取付部に取り付けることは難しいためである。
【0064】
また、前記切替部は、前記当接部に連結された係止部と、前記係止部を揺動可能に支持する揺動軸と、前記係止部を揺動させる駆動部と、を備えると好適である。
【0065】
この構成によれば、当接部に連結された係止部を駆動部によって揺動させるだけで、切替部の固定状態と解放状態とを容易に切り替えることができる。したがって、切替部の構成を簡易なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示に係る技術は、ロボットアームに着脱可能に取り付けられて種々のワークを支持する治具が配置される治具ストッカに利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
100 :治具ストッカ
1 :治具取付部
2 :取付部材
2U :上側取付部材
21U :上側被保持部(被保持部)
22U :上側固定部(固定部)
2L :下側取付部材
21L :下側被保持部(被保持部)
22L :下側固定部(固定部)
J :治具
H :保持機構
HU :上側保持機構
HL :下側保持機構
W :ワーク