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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B25J19/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020132230
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029096
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】池間 健仁
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-115720(JP,A)
【文献】特開2011-101907(JP,A)
【文献】特開2012-228733(JP,A)
【文献】特開平11-163597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドエフェクタにより作業を行うロボットであって、
鉛直方向に平行な回動軸の回りに回転するアームと、
前記エンドエフェクタが取り付けられる下部、前記下部に設けられる縦溝、及び螺旋溝
を有し、前記アームの端部に設けられ、鉛直方向に延びるシャフトと
前記シャフトに設けられるストッパー部と、
前記シャフトの前記ストッパー部より先端に設けられる円筒状のカラー部と、
前記縦溝に係合する凸部を有し、前記シャフトに嵌められるリング状のパッキンと、を
備え、
前記パッキンは、前記ストッパー部と前記カラー部とで前記シャフトの延在方向に挟ま
れて前記シャフトに固定される、
ロボット。
【請求項2】
鉛直方向に平行な回動軸の回りに回転するアームと、
縦溝及び螺旋溝を有し、前記アームの端部に設けられ、鉛直方向に延びるシャフトと、
前記アームを挟んだ前記シャフトの上部及び下部にそれぞれ設けられる蛇腹構造の防水
カバーと、
前記シャフトに接するベアリングと、
前記ベアリングを固定し、前記シャフトと一体的に回転するベアリングナットと、
前記防水カバーの端部を鉛直方向に固定するベアリングホルダーと、
前記ベアリングナットと前記ベアリングホルダーとの間に設けられ、鉛直上方に延びる
迷路構造と、を備える、
ロボット。
【請求項3】
鉛直方向に平行な回動軸の回りに回転するアームと、
縦溝及び螺旋溝を有し、前記アームの端部に設けられ、鉛直方向に延びるシャフトと、
前記アームを挟んだ前記シャフトの上部及び下部にそれぞれ設けられる蛇腹構造の防水
カバーと、
前記アームに固定される円筒状のベース部と、
前記ベース部と係合するリング状のナット部と、を備え、
前記防水カバーの端部は、前記軸方向と交差する方向へと延在するフランジ形状となっ
ており、
前記端部は、前記ベース部と前記ナット部とにより鉛直方向に挟まれて前記アームに固
定される、
ロボット。
【請求項4】
鉛直方向に平行な第1回動軸の回りに回転するアームと、
縦溝及び螺旋溝を有し、前記アームの端部に設けられ、鉛直方向に延びるシャフトと、
前記アームを挟んだ前記シャフトの上部及び下部にそれぞれ設けられる蛇腹構造の防水
カバーと、
前記シャフトに設けられるストッパー部と、
前記シャフトの前記ストッパー部より先端に設けられる円筒状のカラー部と、
前記縦溝に係合する凸部を有し、前記シャフトに嵌められるリング状のパッキンと、を
備え、
前記パッキンは、前記ストッパー部と前記カラー部とで前記シャフトの延在方向に挟ま
れて前記シャフトに固定される、
ロボット。
【請求項5】
前記シャフトに接するベアリングと、
前記ベアリングを固定し、前記シャフトと一体的に回転するベアリングナットと、
前記防水カバーの端部を鉛直方向に固定するベアリングホルダーと、
前記ベアリングナットと前記ベアリングホルダーとの間に設けられ、鉛直上方に延びる
迷路構造と、を備える、
請求項4に記載のロボット。
【請求項6】
前記アームに固定される円筒状のベース部と、
前記ベース部と係合するリング状のナット部と、を備え、
前記防水カバーの端部は、前記軸方向と交差する方向へと延在するフランジ形状となっ
ており、
前記端部は、前記ベース部と前記ナット部とにより鉛直方向に挟まれて前記アームに固
定される、
請求項4または5に記載のロボット。
【請求項7】
前記ロボットは、
前記アームを水平方向に移動させる支持アームを有する水平多関節ロボットである、
請求項1~のいずれか一項に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の製造現場では、自動化ニーズに対応して、様々な環境において産業用ロボットが導入されるようになっている。例えば、特許文献1には、水などの液体が飛散する環境下で用いられるスカラロボットが開示されている。
当該文献では、ボールねじスプラインシャフト(BNSシャフト)の上端に接続された延長シャフトの上部に、蛇腹状カバー部材の一端部が接続され、蛇腹状カバー部材の他端部が、延長シャフトとボールねじスプラインシャフトを内包した状態で第2アームに取り付けられることで、スカラロボットは上方からの液体の侵入を防いでいた。この蛇腹状カバー部材の一端部が接続されている延長シャフト上部の筒状部は、その外周に液体ガスケットが塗布され、更に低硬度の弾性シートを介してクランプバンドで締着する防水構造をとっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-280019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のスカラロボットの蛇腹状カバー部材の防水構造には、改善の余地があった。また、ボールねじスプラインシャフトにある複数本の縦溝における防水構造は考慮されていなかったため、水などの液体がスカラロボットの内部に侵入する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に係るロボットは、鉛直方向に平行な回動軸を中心にして、水平方向に回動するアームの先端に、鉛直方向に延びるシャフトを有し、前記シャフトの下端に取り付けたエンドエフェクタにより、作業を行うロボットであって、前記シャフトは、鉛直方向における上下動、及び前記シャフトの軸を中心に回動可能となる、螺旋溝と縦溝とを有し、前記シャフトには、前記縦溝に係合する凸部を有するリング状のパッキンが嵌められ、前記シャフトの延在方向において、前記パッキンが、ストッパー部とカラー部とで挟み込まれて固定される。
【0006】
本願に係るロボットは、鉛直方向に平行な回動軸を中心にして、水平方向に回動するアームの先端に、鉛直方向に延びるシャフトを有し、前記シャフトの下端に取り付けたエンドエフェクタにより、作業を行うロボットであって、前記シャフトは、鉛直方向における上下動、及び前記シャフトの軸を中心に回動可能となる、螺旋溝と縦溝とを有し、前記アームを挟んだ前記シャフトの上部、及び下部には、それぞれ蛇腹構造の防水カバーを有し、前記シャフトに接するベアリングを固定し、前記シャフトと一体的に回転するベアリングナットと、前記防水カバーの端部を鉛直方向に固定するベアリングホルダーとの間に、鉛直上方に延びる迷路構造を有する。
【0007】
本願に係るロボットは、鉛直方向に平行な回動軸を中心にして、水平方向に回動するアームの先端に、鉛直方向に延びるシャフトを有し、前記シャフトの下端に取り付けたエンドエフェクタにより、作業を行うロボットであって、前記シャフトは、鉛直方向における上下動、及び前記シャフトの軸を中心に回動可能となる、螺旋溝と縦溝とを有し、前記アームを挟んだ前記シャフトの上部、及び下部には、それぞれ蛇腹構造の防水カバーを有し、前記防水カバーの端部は、前記軸方向と交差する方向へと延在するフランジ形状となっており、前記端部は、ベース部とナット部とにより鉛直方向に挟まれて固定される。
【0008】
本願に係るロボットは、鉛直方向に平行な回動軸を中心にして、水平方向に回動するアームの先端に、鉛直方向に延びるシャフトを有し、前記シャフトの下端に取り付けたエンドエフェクタにより、作業を行うロボットであって、前記シャフトは、鉛直方向における上下動、及び前記シャフトの軸を中心に回動可能となる、螺旋溝と縦溝とを有し、前記アームを挟んだ前記シャフトの上部、及び下部には、それぞれ蛇腹構造の防水カバーを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るスカラロボットの概略構成図。
図2】シャフトを示す斜視図。
図3】シャフトの上部を示す断面図。
図4図3の上端Aを示す部分断面図。
図5図3の上端Aを示す部分分解図。
図6図3の下端Bを示す部分断面図。
図7図3の下端Bを示す部分分解図。
図8】シャフトの下部を示す断面図。
図9図8の下端を示す部分断面図。
図10図8の下端を示す斜視断面図。
図11図10の封止部Cを示す斜視断面図。
図12】シャフトとシャフトパッキンを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.スカラロボット
図1は、実施形態1に係るスカラロボットの概略構成図である。
実施形態に係るロボットとしてのスカラロボット100について説明する。なお、以下の説明において、「上方」「下方」とは、鉛直方向に沿った上方、下方を示すものとする。
【0011】
図1に示す本実施形態に係るスカラロボット100は、水平多関節ロボットであり、基台1、アーム支持軸2、第1アーム3、アーム連結軸4、第2アーム5、シャフト6、エンドエフェクタ7、第1駆動用モーター8、第2駆動用モーター9、第3駆動用モーター10、第4駆動用モーター11、及びカバー部材18,19を備えている。
【0012】
基台1は床面や天井面などの水平面上に固定されるものであって、本実施形態では、基台1は床面に固定されている。床面の基台1から上方に突出するようにアーム支持軸2が設けられ、アーム支持軸2の上端部には、第1アーム3の一端側が接続され第1アーム3が水平に支持されている。
アーム連結軸4は、第1アーム3の他端部と、第2アーム5の端部とに接続されており、アーム連結軸4を介して第2アーム5が第1アーム3に連結されている。なお、第1アーム3は支持アームに相当し、第2アーム5はアームに相当する。
【0013】
第2アーム5は、アーム連結軸4により鉛直方向に平行な回動軸を中心にして、水平方向に回動する。第2アーム5の、第1アーム3と連結されている側と反対側の先端には、鉛直方向に延びるシャフト6を有しており、シャフト6の下端にはエンドエフェクタ7が取り付けられている。スカラロボット100は、シャフト6の下端に取り付けたエンドエフェクタ7により、作業を行うことができる。
【0014】
図2は、シャフトを示す斜視図である。
図2に示すように、シャフト6は、延在方向に沿って中心軸部分が中空に形成された中空部となっており、外周である外表面と、中空部側の内表面とを備える円筒状に形成されている。
【0015】
また、シャフト6は、外表面に沿って上方端部から所定位置まで螺旋状に回周する螺旋溝6aと、外表面に沿って上方端部から下方端部まで一直線に延びる縦溝6bと、が形成されたボールねじスプラインシャフトである。シャフト6は、螺旋溝6aにより鉛直方向の上下動と、縦溝6bによりシャフト6の軸を中心とした軸回りの回動と、が可能となる。
シャフト6の内表面側にはエンドエフェクタ7のケーブルなどが通されており、外気とつながっているため、設置環境によっては、水などの液体が流れることもある。
【0016】
以降、シャフト6において、第2アーム5より上方に突出している部分をシャフト6の上部と称し、第2アーム5より下方に突出している部分を、シャフト6の下部と称する。言い換えると、第2アーム5を挟むようにシャフト6の上部とシャフト6の下部が位置する。
【0017】
図1に戻る。
図1に示す第1駆動用モーター8は、第1アーム3をアーム支持軸2の軸回りに駆動するものであって、この第1駆動用モーター8は基台1内に設けられている。
第2駆動用モーター9は、第2アーム5をアーム連結軸4の軸回りに駆動するものであって、この第2駆動用モーター9は第1アーム3内に設けられている。
【0018】
第3駆動用モーター10は、エンドエフェクタ7をシャフト6の軸回りに回動させるものであって、この第3駆動用モーター10で発生した回転トルクはボールスプラインナット12を介してシャフト6に伝わるようになっている。
第4駆動用モーター11は、エンドエフェクタ7をシャフト6の軸方向に上下動させるものであって、この第4駆動用モーター11で発生した回転トルクはボールねじナット13を介してシャフト6に伝わるようになっている。
【0019】
なお、これらの第3駆動用モーター10、第4駆動用モーター11、ボールスプラインナット12、及びボールねじナット13は、第2アーム5内に設けられている。
【0020】
カバー部材18,19は、ウレタンシートを用いた蛇腹構造となっており、シャフト6の軸方向に伸縮自在となっている。カバー部材18,19は、蛇腹構造の延在方向両端が筒状部となっている。また、詳しくは後述するが筒状部の端からは、軸方向に交差する方向へと延在するフランジ形状の端部18a,18b,19a,19bが形成されており、固定されている。これにより、カバー部材18は、シャフト6の上部を内包するように備えられ、カバー部材19は、シャフト6の下部を内包するように備えられている。カバー部材18,19は、防水カバーに相当する。なお、カバー部材18,19は、例えば、ブロー成型法で形成することができる。
【0021】
1.1 シャフト6の上部
シャフト6の上部構成について、図3から図7を参照して以下に説明する。
図3に示すシャフト6の上部では、シャフト6の上端部に、延長シャフト17がシャフト6と同軸となるように接続されている。延長シャフト17は、シャフト6と同様に中心軸部分が中空に形成された中空部となっており、外周である外表面と、中空部側の内表面とを備える円筒状に形成されている。
【0022】
具体的には、シャフト6の上端部にはフランジ15が設けられ、延長シャフト17の下端部にはフランジ16が設けられている。フランジ15と、フランジ16は、シャフト6の上端部、および延長シャフト17の下端部の外表面から水平方向に突出するように設けられている。このようなフランジ15と、フランジ16は、互いに対向する平面によって、パッキン14を挟み込むように接合され、図示しない複数のボルトとナットを軸方向に締結することで固定されている。パッキン14は、独立気泡のシリコンスポンジにより形成されているため、シャフト6と延長シャフト17は、内表面が液密に接合される。
これにより、シャフト6と延長シャフト17の中空部に水が流れた際に、内表面の接続部分における防水性を確保することができる。
【0023】
なお、本形態ではシャフト6に延長シャフト17を接続しているが、延長シャフト17を接続させずに、シャフト6を延長させて用いることもできる。本実施形態では、延長シャフト17もシャフト6の一部とみなし、延長シャフト17を含めて「シャフト6の上部」と称する。
【0024】
シャフト6の上部を内包するカバー部材18は、上端A、および下端Bにおいて端部18a,18bが液密に固定され、スカラロボット100内部への浸水を防止している。
【0025】
図4,5に示す上端Aについて説明する。
上端Aには、延長シャフト17を囲むように、カバー部材18、ベアリング20、ベアリングナット21、ベアリング押さえ22、弾性シート23a、ベアリングホルダー24、及び四本のボルト25が設けられている。カバー部材18の一部、ベアリング20、ベアリングナット21、ベアリング押さえ22、弾性シート23a、ベアリングホルダー24は、リング状、または円筒状をなしており、延長シャフト17と同心円となるように配置されている。
【0026】
ベアリング20は、リング状に形成されている。ベアリング20は、延長シャフト17の外表面に接して配置され、ベアリングナット21に固定されている。
ベアリングナット21は、円筒状に形成されており、延長シャフト17の上端部に設けられた環状突起部17aに係合するように固定されて延長シャフト17と一体的に回転する。また、ベアリングナット21の内表面には、中心軸に向けて突出している突起部21aが内表面に沿った環状になって複数設けられている。
【0027】
ベアリング押さえ22は、延長シャフト17の上方から覆うように設けられており、延長シャフト17と平面視で重なる部分が中空部となる円筒状に形成されている。ベアリング押さえ22には、ベアリングナット21との間に空隙が設けられるように内表面側の下面に凹部26が設けられている。これにより、ベアリング押さえ22の凹部26と、ベアリングナット21との間に、鉛直上方に延びる迷路構造を有する。
【0028】
このように、ベアリング押さえ22の凹部26と、ベアリングナット21との間を迷路状の構造とすることによって、延長シャフト17の中空部に水が流れた際に、水が延長シャフト17の内表面から凹部26と、ベアリングナット21と、の間に入ったとしても、突起部21aによって上方への侵入を防止することができるため、ロボット内への浸水が防止できる。
【0029】
また、ベアリング押さえ22の外表面側の下面においては、弾性シート23aを介してカバー部材18の端部18aが位置しており、端部18aの下方には、ベアリングホルダー24が位置している。
弾性シート23aは、例えばゴムシートなどを用いており、ベアリング押さえ22と端部18aとの密着性を向上させる。
【0030】
カバー部材18の端部18aは、カバー部材18の上方にある筒状部の上端から、延長シャフト17の中心軸CL方向と交差する方向へと延在するフランジ形状となっている。言い換えると端部18aは、筒状部の上端から、中心軸CL方向へと突出する、上面視リング状となるように形成されている。
ベアリングホルダー24は、リング状に形成されており、カバー部材18の上方にある筒状部の内側から上方の端部18aを、ベアリング押さえ22との間に挟むことができる。なお、組み込み時において、ベアリングホルダー24は、カバー部材18の端部18aを変形させて、カバー部材18の内部に挿入する。
【0031】
これらの、ベアリング押さえ22、弾性シート23a、及び端部18aには、ボルト25が貫通する四箇所に穴が形成されており、ベアリング押さえ22の上方からベアリング押さえ22、弾性シート23a、及び端部18aを鉛直方向の下方に貫通したボルト25は、ベアリングホルダー24のねじ穴に挿入されて締結されることで液密に固定される。
【0032】
次に、図6,7に示す下端Bについて説明する。
下端Bには、シャフト6を囲むように、カバー部材18、押さえベース27、弾性シート23b、ナット28、及び四本のボルト29が設けられている。カバー部材18の一部、押さえベース27、弾性シート23b、及びナット28は、リング状、または円筒状をなしており、シャフト6と同心円となるように配置されている。
【0033】
押さえベース27は円筒状に形成され、内表面の上方にはナット28と係合するねじ溝が設けられた、雌ねじである。また押さえベース27の下方にはボルト29と係合する四つのねじ穴が設けられ、第2アーム5(図1)を介して四本のボルト29を締結することで押さえベース27は第2アーム5に固定される。押さえベース27の内表面において、溝とねじ穴の間には、中心軸CLに向かって突出するリング状の受け部27aが形成されている。
押さえベース27に形成された受け部27aの上方には、カバー部材18の端部18bが位置しており、端部18bの上方には弾性シート23bを介してナット28が位置している。
弾性シート23bは、例えばゴムシートなどを用いており、ナット28と端部18bとの密着性を向上させる。
【0034】
カバー部材18の端部18bは、カバー部材18の下方にある筒状部の下端から、延長シャフト17の軸方向と交差する方向である、中心軸CLから放射方向へと延在するフランジ形状となっている。言い換えると、端部18bは、筒状部の下端から外側に鍔状にせり出した形状である。
【0035】
ナット28はリング状に形成されており、外表面の下方には押さえベース27と係合するねじ溝が設けられた、雄ねじである。ナット28は、カバー部材18の下方にある筒状部の外側に設けられており、外表面の上方に形成されている切り欠きを用いて回転させることで、下方に締め付けて端部18bを押圧することができる。ナット28は、例えばナイロンなどの樹脂が用いられ、隣接しているカバー部材18に回転などで接触しても損傷を与えない。なお、組み込み時において、ナット28は、カバー部材18の端部18bを変形させて、カバー部材18の筒状部に嵌め込む。
【0036】
端部18bは、雄ねじであるナット28と、雌ねじである押さえベース27の受け部27aと、によって鉛直方向に挟まれ、ナット28を回転させ螺合させることで押圧されて液密に締結され固定される。本形態のナット28がナット部に相当し、押さえベース27がベース部に相当する。
【0037】
1.2 シャフト6の下部
シャフト6の下部構成について、図8から図12を参照して以下に説明する。
図8に示すシャフト6の下部では、シャフト6の下部を内包しているカバー部材19は上端、および下端において端部19a,19bが液密に固定され、スカラロボット100内部への浸水を防止している。
【0038】
まず、カバー部材19の上端について説明する。
カバー部材19の上端には、シャフト6を囲むように、カバー部材19、押さえベース37、弾性シート23b、ナット38、及び四本のボルト39が設けられている。カバー部材19の一部、押さえベース37、弾性シート23b、ナット38は、リング状、または円筒状をなしており、シャフト6と同心円となるように配置されている。
【0039】
カバー部材19、押さえベース37、弾性シート23b、ナット38、及び四本のボルト39は、上述した下端Bと上下方向が反転した構成となっている。カバー部材19の筒状部の上端から外側に鍔状にせり出した端部19aを、雌ねじの押さえベース37と、雄ねじのナット38が弾性シート23bを介して鉛直方向に挟み込み、ナット38を回転させ螺合させることで押圧されて液密に締結されている。
押さえベース37の上方にはボルト39と係合する図示しない四つのねじ穴が設けられ、第2アーム5を介して四本のボルト39を締結することで押さえベース37は第2アーム5に固定される。
【0040】
次に、カバー部材19の下端について説明する。
図8図10に示すカバー部材19の下端には、シャフト6を囲むように、カバー部材19、ベアリング30、ベアリングナット31、ベアリングホルダー32、弾性シート23a、ベアリング押さえ34、四本のボルト35、シャフトパッキン40、ストッパー部41、及びカラー部42が設けられている。カバー部材19の一部、ベアリング30、ベアリングナット31、ベアリングホルダー32、弾性シート23a、ベアリング押さえ34、シャフトパッキン40、ストッパー部41、及びカラー部42は、リング状、または円筒状をなしており、シャフト6と同心円となるように配置されている。
【0041】
ベアリング30、及びベアリングホルダー32は、リング状に形成されている。
ベアリング30は、シャフト6にねじ止めされた円筒状のカラー部42の外表面に接して配置され、円筒状のベアリングナット31の上端に固定されている。またベアリング30は、ベアリング30の外表面側に接するように配置されたベアリングホルダー32にも固定されている。
ベアリングホルダー32の下面においては、カバー部材19の端部19bが位置しており、端部19bの下方には弾性シート23aを介してベアリング押さえ34が位置している。
【0042】
カバー部材19の端部19bは、カバー部材19の下方にある筒状部の下端から、シャフト6の軸方向と交差する方向へと延在するフランジ形状となっている。言い換えると端部19bは、筒状部の下端から、シャフト6の中心軸方向へと突出する、上面視でリング状となるように形成されている。
【0043】
カバー部材19の下方にある筒状部の内には、ベアリング30と、ベアリングホルダー32とが内包されており、端部19bは、上方よりベアリングホルダー32、下方より弾性シート23aを介したベアリング押さえ34によって、鉛直方向に挟まれている。
これらのベアリングホルダー32、弾性シート23a、ベアリング押さえ34、及び端部19bには、ボルト35が貫通する四箇所に穴が形成されており、ベアリング押さえ34の下方からベアリング押さえ34、弾性シート23a、端部19bを鉛直方向の上方に貫通したボルト35は、ベアリングホルダー32のねじ穴に挿入されて締結されることで液密に固定される。
【0044】
次に、シャフト6のシャフトパッキン40について、図9図12を参照して以下に説明する。本形態のシャフトパッキン40はパッキンに相当する。
シャフト6の下部では、外表面に形成されている螺旋溝6aは無く、縦溝6bのみが形成されている。この縦溝6bからスカラロボット100内部への浸水を防ぐためにシャフトパッキン40が設けられている。シャフトパッキン40は、独立気泡のスポンジを用いており、本形態ではシリコンスポンジにより形成されている。
【0045】
図12に示すように、シャフトパッキン40は、シャフト6の外表面形状に符合する形に内周が形成されており、複数の縦溝6bに係合する複数の凸部40aを有している。シャフト6には、縦溝6bに複数の凸部40aを係合させてリング状のシャフトパッキン40が嵌められている。
シャフトパッキン40は、図9図10に示すようにシャフト6の延在方向においてストッパー部41の下面と、カラー部42の上面とで挟み込まれ、圧縮されて固定される。これにより図11に示すように、縦溝6bを凸部40aによって封止した状態でシャフトパッキン40が固定される。
【0046】
以上述べた通り、本実施形態のスカラロボット100によれば、シャフト下部のエンドエフェクタ側には防水構造がなかった従来のロボットと異なり、シャフト6の上部に加えて、下部においても気密に封止されたカバー部材19を備えている。
よって、シャフト上下のいずれからも液体の侵入を防ぐ防水機能を備えることで、水などの液体を扱う環境でも稼働させることが可能となる。
従って、防水性の優れたロボット100を提供することができる。
【0047】
また、本実施形態のスカラロボット100は、カバー部材18の端部18a,18b、及びカバー部材19の端部19a,19b、を鉛直方向に挟み込み、締めるといった単純な作業のみでカバー部材18,19の密閉性を確保できる。このため、従来の作業者の熟練度が必要であったクランプバンドでの締着に比べて、カバー部材18,19の取り付けが容易であるため、作業者の熟練度にかかわらずカバー部材18,19の取り付けを行うことが可能となり作業性が向上する。また、高い封止機能を得られるため防水性能の高いスカラロボット100を提供することができる。
【0048】
本実施形態のスカラロボット100は、シャフト6にある複数本の縦溝6bにシャフトパッキン40の凸部40aを係合させて、縦溝6bからスカラロボット100の内部に水などの液体が侵入することを防ぐことができるため、防水性能の高いスカラロボット100を提供することができる。
【0049】
また、本実施形態のスカラロボット100は、防水の密封加工に液体ガスケットを一切使用していないため、乾燥までの時間が不要となる。このため、スカラロボット100の組立作業効率が向上しTATの減少につながる。更に、メンテナンスなどにおいて分解する際には、液体ガスケットの除去の必要がないため工数の削減ができるため、メンテナンスのしやすいスカラロボット100を提供することが可能となる。
【0050】
本発明のロボットは、スカラロボット100に限定するものではなく、BNSシャフトを有するロボットであれば良く、例えば、垂直多関節ロボット、パラレルリンクロボット、直交ロボットなどに適用しても良い。これらのロボットであっても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、本発明は防水に限らず、防油、防塵にも適用することができるため、ロボットを導入する作業環境の選択肢を広げることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1…基台、2…アーム支持軸、3…第1アーム、4…アーム連結軸、5…第2アーム、6…シャフト、6a…螺旋溝、6b…縦溝、7…エンドエフェクタ、8…第1駆動用モーター、9…第2駆動用モーター、10…第3駆動用モーター、11…第4駆動用モーター、12…ボールスプラインナット、13…ボールねじナット、14…パッキン、15…フランジ、16…フランジ、17…延長シャフト、17a…環状突起部、18…カバー部材、18a…端部、18b…端部、19…カバー部材、19a…端部、19b…端部、20…ベアリング、21…ベアリングナット、21a…突起部、22…ベアリング押さえ、23a…弾性シート、23b…弾性シート、24…ベアリングホルダー、25…ボルト、26…凹部、27…押さえベース、27a…受け部、28…ナット、29…ボルト、30…ベアリング、31…ベアリングナット、32…ベアリングホルダー、34…ベアリング押さえ、35…ボルト、37…押さえベース、38…ナット、39…ボルト、40…シャフトパッキン、41…ストッパー部、42…カラー部、100…スカラロボット。
図1
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図12