(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】精紡機における紡出パターン設定装置
(51)【国際特許分類】
D01H 5/36 20060101AFI20240723BHJP
G06T 11/80 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
D01H5/36
G06T11/80 B
(21)【出願番号】P 2020152763
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019220814
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 徹
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-529728(JP,A)
【文献】特開平07-238412(JP,A)
【文献】特開2006-152505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H1/00-17/02
G06T11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精紡機で紡出する紡出糸のパラメータを入力するパラメータ入力部と、
前記パラメータ入力部によりスラブ紡出のためのステップ毎に入力されたパラメータによりパターンデータを生成するパターンデータ生成部と、
前記パターンデータ生成部により生成された前記パターンデータに基づき画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部により生成された前記画像を表示する表示部と、を有し、
前記パターンデータ生成部は、予め設定した設定時間ごとに、及び/又は前記パラメータが変更されたときにオペレータの指示によらず自動的に前記パターンデータを生成するとともに、前記画像生成部は前記パターンデータが生成されるごとに前記画像を生成し前記表示部において更新表示し、
前記紡出糸はスラブ糸であり、
前記パターンデータは、スラブ糸のパラメータであるピッチ、長さおよびスラブ糸の太さにより規定されるスラブパターンデータであることを特徴とする精紡機における紡出パターン設定装置。
【請求項2】
前記画像は、前記パターンデータに基づきシミュレーションされたイメージ画像であることを特徴とする請求項1記載の精紡機における紡出パターン設定装置。
【請求項3】
前記パターンデータ生成部は、前記表示部に表示されるパラメータ入力画面と、前記画像と、を前記表示部において同時に表示することを特徴とする請求項1記載の精紡機における紡出パターン設定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、精紡機における紡出パターン設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精紡機における紡出パターン設定装置に関連する従来技術として、例えば、リング精紡機を操作しプログラムする為の装置が知られている。特許文献1のリング精紡機を操作しプログラムする為の装置は、速度指示に従い駆動手段を動作させる為の動作装置と、そして、糸の長さに沿った番手及び/又は撚りの進行を設定する為にプログラムされることができる電子プログラム装置と、を備える。電子プログラム装置は、スラブの輪郭を設計する為に適している第1インターフェースと、設計されたスラブの輪郭のパラメータを動作装置の為の速度指示へと変換する為に適している変換手段と、を備えている。さらに、電子プログラム装置は、第1インターフェースにより設計された複数のスラブの糸に沿った繰り返しをプログラムする為に適している第2インターフェースを備えている。
【0003】
この種の装置によって精紡機におけるスラブパターンデータが設定できると、例えば、スラブパターンデータに基づきシミュレーションされる黒板のイメージ画像や布パターンのイメージ画像を表示することが可能となる。黒板のイメージ画像は、黒板にスラブを巻き付けた状態をシミュレーションにより表現したものであり、布パターンのイメージ画像は、スラブパターンデータに基づいて紡出したスラブ糸で製織した布をシミュレーションにより表現したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来装置では、スラブのシミュレーションに係るイメージ画像は、全てのスラブのパラメータを入力してスラブパターンデータを確定させた後、確定したスラブパターンデータをシミュレータに読み込ませ、シミュレータによりシミュレーションに基づくイメージ画像を生成していた。このため、例えば、黒板や布パターンのイメージ画像を見て、所望のデザインが形成されていないためにスラブパターンデータを変更する場合には、デザインに影響していると思われるパラメータを予測により修正してスラブパターンデータを確定した後、確定したスラブパターンデータをシミュレータに読み込ませてイメージ画像を再表示させなければならない。再表示したイメージ画像が所望のデザインに依然として一致していない場合は、一致するまでパラメータ修正、スラブパターンデータ確定、スラブパターンデータ読込、イメージ画像表示の作業を繰り返さなければならず、パラメータ設定のための作業に煩雑で多大な時間がかかっていた。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、紡出パターンデータに基づき生成される画像に基づく紡出パターンの設定作業時間を短縮することが可能な精紡機における紡出パターン設定装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、精紡機で紡出する紡出糸のパラメータを入力するパラメータ入力部と、前記パラメータ入力部によりスラブ紡出のためのステップ毎に入力されたパラメータによりパターンデータを生成するパターンデータ生成部と、前記パターンデータ生成部により生成された前記パターンデータに基づき画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部により生成された前記画像を表示する表示部と、を有し、前記パターンデータ生成部は、予め設定した設定時間ごとに、及び/又は前記パラメータが変更されたときにオペレータの指示によらず自動的に前記パターンデータを生成するとともに、前記画像生成部は前記パターンデータが生成されるごとに前記画像を生成し前記表示部において更新表示し、前記紡出糸はスラブ糸であり、前記パターンデータは、スラブ糸のパラメータであるピッチ、長さおよびスラブ糸の太さにより規定されるスラブパターンデータであることを特徴とする。
【0008】
本発明では、パターンデータ生成部が、入力されたパラメータによりパターンデータを生成する。画像生成部は、生成されたパターンデータに基づき画像を生成する。表示部は、画像生成部により生成された画像を表示する。パターンデータ生成部は、オペレータの指示によらず自動的にパターンデータを生成するとともに、画像生成部はパターンデータが生成されるごとに画像を生成し表示部において更新表示する。したがって、表示部には、編集中のパターンデータに基づき画像が自動的に更新表示されるので、オペレータは、パターンデータの編集途中で、編集途中のパターンデータに基づき生成された画像を確認することができ、パラメータ変更により画像がどのように変化するのかをリアルタイムで把握できる。その結果、画像生成部により生成された画像に基づくパラメータ設定作業が簡便となり、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0009】
また、上記の精紡機における紡出パターン設定装置において、前記画像は、前記パターンデータに基づきシミュレーションされたイメージ画像である構成としてもよい。
この場合、オペレータは、パターンデータの編集途中で、編集途中のパターンデータに基づきシミュレーションされたイメージ画像を確認することができ、パラメータ変更によりイメージ画像がどのように変化するのかをリアルタイムで把握できる。
【0010】
また、上記の精紡機における紡出パターン設定装置において、前記画像は、前記パターンデータに基づき生成される分布グラフ画像である構成としてもよい。
この場合、オペレータは、パターンデータの編集途中で、編集途中のパターンデータに基づき生成された分布グラフ画像を確認することができ、パラメータ変更により分布グラフ画像がどのように変化するのかをリアルタイムで把握できる。
【0011】
また、上記の精紡機における紡出パターン設定装置において、前記パターンデータ生成部は、前記表示部に表示されるパラメータ入力画面と、前記画像と、を前記表示部において同時に表示する構成としてもよい。
この場合、オペレータは、入力したパラメータと画像とを同一画面上で同時に見比べることができるので、パラメータの変更により画像がどのように変化するのかを把握し易い。
【0012】
また、上記の精紡機における紡出パターン設定装置において、前記紡出糸はスラブ糸であり、前記パターンデータは、スラブ糸のパラメータであるピッチ、長さおよびスラブ糸の太さにより規定されるスラブパターンデータである構成としてもよい。
この場合、スラブ糸のパラメータであるピッチ、長さおよびスラブ糸の太さに基づいてスラブパターンデータを生成することができ、スラブパターンデータに基づき生成された画像と、スラブのパラメータの入力画面と、を表示することができる。
【0013】
また、上記の精紡機における紡出パターン設定装置において、前記表示部は、予め設定した設定時間ごとに自動的に前記画像を更新表示する構成としてもよい。
この場合、表示部が表示する画像は、予め設定した設定時間ごとに自動的に更新表示されるので、パラメータを変更するとパラメータの変更が反映されたシミュレーションデータに基づく画像を確認することができる。
【0014】
また、上記の精紡機における紡出パターン設定装置において、前記表示部は、前記パラメータが変更されたときに前記画像を更新表示する構成としてもよい。
この場合、表示部が表示する画像は、パラメータが変更されたときにその都度更新表示される。パラメータが変更されないとき画像は更新されないので画像の更新表示による装置の負荷を軽減することができる。
【0015】
また、上記の精紡機における紡出パターン設定装置において、前記表示部は、前記画像において変化を生じた部位のみを更新する構成としてもよい。
この場合、パターンデータの編集途中でパラメータが変更されると、表示部において表示される画像では、変化を生じた部位のみが更新され、変化を生じない部位は更新されない。その結果、変化を生じない部位を含めて画像全体を更新する場合と比較すると、画像更新によるちらつきが少なく、オペレータの目の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、紡出パターンデータに基づき生成される画像に基づく紡出パターンの設定作業時間を短縮することが可能な精紡機における紡出パターン設定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態に係る精紡機における紡出パターン設定装置の概略構成図である。
【
図3】
図2におけるパラメータ入力ウインドウの拡大図である。
【
図4】イメージ画像としてのスラブイメージウインドウの一例を示す図である。
【
図5】イメージ画像としての布イメージウインドウの一例を示す図である。
【
図6】イメージ画像の更新表示の手順を示すフロー図である。
【
図7】第2の実施形態に係る表示部における表示例を示す図である。
【
図8】分布グラフ画像としての分布グラフウインドウの一例を示す図である。
【
図9】分布グラフ画像の更新表示の手順を示すフロー図である。
【
図10】別例に係るイメージ画像の更新表示の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る精紡機における紡出パターン設定装置について図面を参照して説明する。本実施形態では、紡出パターンとしてスラブパターンを設定する精紡機におけるスラブパターン設定装置(以下、単に「スラブパターン設定装置」と表記する)を例示して説明する。
【0019】
図1に示すように、スラブパターン設定装置10は、制御部11と、プログラムメモリ12と、作業用メモリ13と、入力部14と、入力インターフェース15、出力インターフェース16、表示部17と、データ出力部18を備えている。
【0020】
制御部11は各種プログラムを実行するCPU(図示せず)を備えている。制御部11はプログラムメモリ12および作業用メモリ13と接続されている。また、制御部11は、入力インターフェース15を介して入力部14と接続されているほか、出力インターフェース16を介して表示部17と接続されている。制御部11は、紡出パターンデータに相当するスラブパターンデータを生成するパターンデータ生成部に相当する。
【0021】
プログラムメモリ12は読み出し専用のメモリであるROMであり、各種のプログラムおよびプログラムの実行に必要なデータを記憶している。各種のプログラムとしては、スラブ糸のパラメータからスラブパターンデータを生成するスラブパターンデータ生成プログラムのほか、スラブパターンデータに基づいてシミュレーションされた画像としてのイメージ画像を表示部17が表示する表示プログラムと、が含まれている。制御部11は、パターンデータに基づき画像を生成する画像生成部に相当する。さらに言うと、制御部11は、パターンデータ生成部で生成されたスラブパターンデータに基づいてシミュレーションされた画像としてのイメージ画像を生成するシミュレーション部に相当する。
【0022】
作業用メモリ13は、読み出しおよび書き換え可能なRAMであり、入力部14から入力されたデータおよび制御部11による処理結果等を一時記憶する機能を有している。具体的には、作業用メモリ13には、入力部14から入力されるスラブ糸のパラメータのほか、制御部11の処理によるスラブパターンデータおよびスラブパターンデータに基づくスラブ糸のイメージ画像のデータが記憶される。
【0023】
入力部14は、パラメータ入力部に相当し、具体的には、キーボードである。オペレータが入力部14を操作することにより、スラブのパラメータであるピッチ(mm)、長さ(mm)およびスラブ太さ(%)の入力を可能とするほか、各種のデータの入力に使用される。なお、ピッチはスラブ間の距離であり、長さはスラブの長さであり、スラブ太さは、スラブを形成しない部分の糸の太さを基準としたときの百分率である。スラブ太さは100%を超えるように設定される。入力部14に入力されたデータは、入力インターフェース15を介して制御部11へ伝達される。入力部14はキーボードとしたが、表示画面と一体となって表示機能と入力機能を兼ね備えたタッチパネルとしてもよい。
【0024】
表示部17は、各種のデータや画像を表示する、例えば、液晶ディスプレイである。表示部17は出力インターフェース16を介して制御部11と接続されている。
図2に示すように、表示部17の表示画面19には、パラメータ入力ウインドウ20が表示される。さらに、表示画面19にはスラブイメージウインドウ21および布イメージウインドウ22が表示される。なお、
図2では、パラメータ入力ウインドウ20およびスラブイメージウインドウ21が表示され、布イメージウインドウ22は表示されていない。スラブイメージウインドウ21および布イメージウインドウ22は、イメージ画像に相当する。
【0025】
データ出力部18は、出力インターフェース16を介して制御部11と接続されており、USBメモリ等の外部記憶機器であり、作業用メモリ13におけるデータやプログラムを取り出せる。
【0026】
次に、
図2、
図3に示す表示画面19に表示されるパラメータ入力ウインドウ20について説明する。パラメータ入力ウインドウ20は、パラメータ入力画面に相当し、精紡機によって紡出するスラブパターンを決定するスラブ糸のパラメータを表示するウインドウである。パラメータ入力ウインドウ20には、入力部14によって入力されたパラメータが表示される。
図3に示すように、スラブ紡出のためのステップ毎に、スラブ糸のパラメータであるピッチ(mm)、長さ(mm)、スラブ太さ(%)を入力することでスラブパターンが決定される。本実施形態では、スラブパターンを決定するパラメータの入力可能なステップ数は、最大で1000ステップである。パラメータ入力ウインドウ20に表示されて入力されたパラメータは制御部11へ伝達される。各パラメータが入力される度に制御部11に伝達され、制御部11によりスラブパターンデータが生成される。
【0027】
スラブイメージウインドウ21は、各パラメータの入力データに基づくスラブパターンデータに基づきシミュレーションされたイメージ画像である。
図2にて模式的に示すスラブイメージウインドウ21は、スラブパターンデータに基づき制御部11でシミュレーションされたスラブ糸を黒板に巻き付けた状態を示す。つまり、スラブイメージウインドウ21は紡出されるスラブ糸のシミュレーションによるイメージ画像である。
図4はスラブイメージウインドウ21の一例である。
図4の示すスラブイメージウインドウ21において黒い部位は黒板が見える部位であり、白い部位はスラブ糸を示す部位である。スラブイメージウインドウ21では、スラブ糸を白によって表現しているほか、スラブ糸は左右方向に延在し、上下方向にスラブ糸が配列するように設定されている。スラブイメージウインドウ21の表現に関する細部の設定は、パラメータ入力ウインドウ20とは別の図示しない設定用のウインドウを介して行われる。
【0028】
シミュレーションデータのイメージ画像は、スラブ糸のシミュレーションによるイメージを示すスラブイメージウインドウ21のほか、
図5に示す布イメージウインドウ22により示される。布イメージウインドウ22はスラブ糸を用いた織布のシミュレーションによるイメージを示すウインドウである。
図5は布イメージウインドウ22の一例である。布イメージウインドウ22では、シミュレートされたスラブ糸により緯糸が表現されているが、平織や綾織といった織り方に応じた布イメージを表現することが可能である。布イメージウインドウ22においてスラブ糸は左右方向に延在し、経糸は上下方向に延在する。布イメージウインドウ22の表現に関する細部の設定は、パラメータ入力ウインドウ20とは別の図示しない設定用のウインドウを介して行われる。
【0029】
表示画面19においてスラブイメージウインドウ21および布イメージウインドウ22は、表示プログラムによって、パラメータ入力ウインドウ20と同時に表示される。本実施形態では、スラブイメージウインドウ21がパラメータ入力ウインドウ20と同時に表示される第一状態と、布イメージウインドウ22がパラメータ入力ウインドウ20と同時に表示される第二状態が選択的に切り替えられる。
【0030】
ところで、スラブパターンデータは、各ステップのスラブ糸のパラメータを入力することにより決定される。入力されたパラメータのデータは、制御部11に伝達されて、制御部11はパラメータに基づいてスラブパターンデータを生成する。生成されたスラブパターンデータは制御部11に伝達され、制御部11はスラブパターンデータに基づきシミュレーションされたスラブイメージデータまたは布イメージデータを生成する。表示部17では制御部11で生成されたスラブイメージデータまたは布イメージデータがイメージ画像として表示される。イメージ画像は、スラブイメージウインドウ21および布イメージウインドウ22である。
【0031】
スラブイメージウインドウ21および布イメージウインドウ22の更新表示は、具体的には、
図6に示す手順により行われる。制御部11は、予め設定された設定時間が周期的に経過する(ステップS01を参照)と、その時点で入力されているパラメータに基づいて生成されたスラブパターンデータをパターンデータファイルに出力し、パターンデータを更新する(ステップS02を参照)。設定時間ごとにオペレータの指示によらず自動的にパターンデータファイルが更新されるので、設定時間内でオペレータによりパラメータの一部が変更されると、変更されたパラメータにより生成されたスラブパターンデータがパターンデータファイルに反映され、パターンデータファイルは更新される。設定時間は秒単位の設定時間(例えば、10秒)であり、パラメータ入力ウインドウ20とは別の設定用のウインドウにおいて変更可能である。
【0032】
次に、制御部11は、設定時間ごとに更新されるパターンデータファイルに基づいてシミュレーションしたスラブイメージデータおよび布イメージデータを生成し、表示画面19に表示されているイメージ画像を更新して表示する(ステップS03を参照)。具体的には、表示画面19に表示中のスラブイメージウインドウ21および布イメージウインドウ22が更新されて表示される。本実施形態では、スラブ糸のパラメータの変更の有無に関わらず、パターンデータファイルは定期的に更新される。したがって、イメージ画像は、設定期間内でパラメータの変更があるとパラメータの変更を反映させて更新表示されるが、設定期間内にパラメータの変更が無ければ更新してもイメージ画像に変化はない。
【0033】
次に、スラブパターン設定装置10の操作について説明する。まず、オペレータは、スラブパターン設定装置10を起動する。スラブパターン設定装置10の起動により、表示部17の表示画面19にパラメータ入力ウインドウ20の表示が可能となるほか、スラブイメージウインドウ21および布イメージウインドウ22の表示が可能である。
【0034】
オペレータはパラメータ入力ウインドウ20を表示させ、入力部14の操作によりスラブパターンデータの決定に必要なパラメータを入力する。具体的には、ステップ毎にピッチ(mm)、長さ(mm)およびスラブ太さ(%)の入力を繰り返す。入力されたパラメータはパラメータ入力ウインドウ20に表示される。
【0035】
スラブパターンデータは、パターンデータファイルに出力され、パターンデータファイルに基づいてスラブイメージデータまたは布イメージデータを生成し、イメージ画像が表示される。オペレータは、表示画面19に表示されるスラブイメージウインドウ21および布イメージウインドウ22を見て、スラブパターンを確定するか否かを判断する。
【0036】
ところで、本実施形態では、スラブパターンデータを確定する前の編集過程であっても、設定時間ごとに自動的にスラブパターンデータがパターンデータファイルに出力され、パターンデータファイルに基づいて生成されるスラブイメージデータまたは布イメージデータによるイメージ画像が更新表示される。すなわち、パラメータ入力ウインドウ20にパラメータを入力するスラブパターンデータの編集の途中であっても、編集中のスラブパターンデータに基づいてスラブイメージウインドウ21および布イメージウインドウ22が更新表示される。
【0037】
オペレータは、スラブイメージウインドウ21や布イメージウインドウ22といったイメージ画像をスラブパターンデータの編集過程で確認した上で、最終的なスラブパターンデータを確定する。スラブパターンデータの確定後に一部のパラメータを変更してスラブパターンデータを変更することも可能である。オペレータは、データ出力部18を介してUSBメモリ等の外部記憶媒体に確定したパターンデータファイルを取り込み、精紡機(図示せず)にパターンデータファイルを入力すればよい。精紡機では確定したスラブパターンデータに基づいてスラブの紡出を行う。
【0038】
本実施形態のスラブパターン設定装置10によれば以下の作用効果を奏する。
(1)パターンデータ生成部としての制御部11が、入力部14によって入力されたパラメータによりスラブパターンデータを生成する。シミュレーション部としての制御部11は、生成されたスラブパターンデータに基づきシミュレーションされたイメージ画像を生成する。表示部17は、制御部11により生成されたイメージ画像を表示する。したがって、表示部17には、編集中のスラブパターンデータに基づきイメージ画像が自動的に更新表示されるので、オペレータは、スラブパターンデータの編集途中で、編集途中のスラブパターンデータに基づきシミュレーションされたイメージ画像を確認することができ、パラメータ変更によりイメージ画像がどのように変化するのかをリアルタイムで把握できる。その結果、シミュレーションされたイメージ画像に基づくパラメータ設定作業が簡便となり、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0039】
(2)制御部11は、表示部17に表示されるスラブ糸のパラメータを入力するためのパラメータ入力ウインドウ20と、イメージ画像と、を表示部17において同時に表示する。このため、オペレータは、入力したパラメータとイメージ画像とを同一画面上で同時に見比べることができるので、パラメータの変更によりイメージ画像がどのように変化するのかを把握し易い。
【0040】
(3)紡出糸はスラブであり、紡出パターンデータは、スラブ糸のパラメータであるピッチ、長さおよびスラブ糸の太さにより規定されるスラブパターンデータである。このため、スラブ糸のパラメータであるピッチ、長さおよびスラブ糸の太さに基づいてスラブパターンデータを生成することができ、スラブパターンデータに基づきシミュレーションされたイメージ画像と、スラブ糸のパラメータ入力ウインドウ20と、を表示することができる。
【0041】
(4)表示部17は、予め設定した設定時間ごとに自動的にイメージ画像を更新表示する。このため、表示部17が表示するイメージ画像は、予め設定した設定時間ごとに自動的に更新表示されるので、パラメータを変更するとパラメータの変更が反映されたスラブパターンデータに基づくイメージ画像を確認することができる。
【0042】
(5)イメージ画像としてのスラブイメージウインドウ21はスラブパターンデータに基づきシミュレーションされたスラブ糸を黒板に巻き付けた状態を示すことができる。また、布イメージウインドウ22はスラブ糸を用いた織布のシミュレーションによるイメージを示すことができる。編集中のスラブパターンデータをシミュレーションしたスラブイメージウインドウ21、布イメージウインドウ22を表示することができる。
【0043】
(6)スラブパターンデータの編集中では、編集中のスラブパターンデータが反映されたイメージ画像が常時表示されるので、オペレータは、スラブパターンデータの編集中にイメージ画像を常に確認することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る精紡機における紡出パターン設定装置について図面を参照して説明する。本実施形態では、画像としての分布グラフ画像を表示装置に表示させる点で第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0045】
図7に示すように、本実施形態では、表示部17の表示画面19には、パラメータ入力ウインドウ20が表示されるほか、画像としての分布グラフ画像31が表示される。なお、
図7では示されないが、表示画面19にはスラブイメージウインドウ21および布イメージウインドウ22が表示可能である。
【0046】
分布グラフ画像31は、各パラメータの入力データに基づくスラブパターンデータに基づきスラブパターンの分布を視覚的に示すための画像である。
図8は分布グラフ画像31の一例である。
図8に示す分布グラフ画像31は、範囲入力部32と、分布グラフ部33と、数値表示部34と、を有している。範囲入力部32は、スラブ糸のパラメータデータである長さ(mm)と太さ(%)の範囲を指定するための入力部である。範囲入力部32は、長さ(mm)の範囲を指定するための入力欄32A、32Bを有している。また、範囲入力部32は、太さ(%)の範囲を指定するための入力欄32C、32Dを有している。さらに、範囲入力部32には入力された長さ(mm)および太さ(%)の範囲を決定するためのOKボタン32Eが設けられているほか、長さ(mm)および太さ(%)の範囲を最大に指定するFULLボタン32Fが設けられている。
【0047】
分布グラフ部33は、横軸である長さ表示セル群と、縦軸である太さ表示セル群と、その他のセル群をマトリックス状に配設した本数表示セル群と、を備えている。長さ表示セル群は、複数の長さ表示セル33Aを有している。長さ表示セル33Aは、スラブ糸のパラメータデータの長さ(mm)を表示するセルである。分布グラフ部33では、長さ(mm)を示す複数(10個)の長さ表示セル33Aが横方向に配設されている。長さ表示セル33Aに表示される値は、範囲入力部32において決定された長さ(mm)の範囲に含まれるパラメータデータの長さ(mm)の値である。複数の長さ表示セル33Aに表示される長さは、左から右へ向うほど大きい。
【0048】
太さ表示セル群は、複数の太さ表示セル33Bを有している。太さ表示セル33Bは、スラブ糸のパラメータデータの太さ(%)を表示するセルである。分布グラフ部33では、太さ(%)を示す複数(10個)の太さ表示セル33Bが縦方向に配設されている。太さ表示セル33Bに表示される値は、範囲入力部32において決定された太さ(%)の範囲に含まれるパラメータデータの太さ(%)の値である。複数の太さ表示セル33Bに表示される太さは、下から上へ向うほど大きい。
【0049】
本数表示セル群は、マトリックス状に配設される複数の本数表示セル33Cを有している。本表示セル群における本数表示セル33Cの数は100個(10×10)である。本数表示セル33Cには、長さ表示セル33Aの長さ(mm)および太さ表示セル33Bの太さ(%)により特定されるスラブの本数が表示される。さらに、本数表示セル33Cでは、表示される本数の数が多くなるにつれて本数表示セル33Cの背景の明度が段階的に低くなる。
【0050】
数値表示部34は、分布グラフ画像31における長さ(mm)および太さ(%)のそれぞれの最小値、平均値および最大値が表示される部位である。
【0051】
本実施形態では、分布グラフ部33は、横軸とする複数の長さ表示セル33Aおよび縦軸とする複数の太さ表示セル33Bに対して複数の本数表示セル33Cをマトリックス状に配設することで特定の長さ(mm)と太さ(%)のスラブ糸の本数の分布を示すグラフとなっている。
【0052】
表示画面19において分布グラフ画像31は、表示プログラムによって、パラメータ入力ウインドウ20と同時に表示される。本実施形態では、スラブイメージウインドウ21がパラメータ入力ウインドウ20と同時に表示される第一状態と、布イメージウインドウ22がパラメータ入力ウインドウ20と同時に表示される第二状態と、分布グラフ画像31がパラメータ入力ウインドウ20と同時に表示される第三状態と、が選択的に切り替えられる。
【0053】
ところで、制御部11はパラメータに基づいてスラブパターンデータを生成し、スラブパターンデータに基づき分布グラフ画像データを生成する。表示部17では制御部11で生成された分布グラフ画像データが画像としての分布グラフ画像31として表示される。
【0054】
分布グラフ画像31の更新表示は、具体的には、
図9に示す手順により行われる。制御部11は、スラブパターンデータの編集時においてスラブ糸のパラメータが入力される(ステップS11を参照)と、その時点で入力されたパラメータをスラブパターンデータに反映させてパターンデータファイルに出力し、スラブパターンデータを更新する(ステップS12を参照)。つまり、パラメータが入力されるとオペレータの指示によらず自動的にパターンデータファイルが更新される。このため、オペレータによりパラメータの一部が変更されると、変更されたパラメータにより生成されたスラブパターンデータがパターンデータファイルに反映され、パターンデータファイルは更新される。
【0055】
次に、制御部11は、パラメータの入力によって更新されるパターンデータファイルに基づいて表示画面19に表示されている分布グラフ画像31を更新して表示する(ステップS13を参照)。本実施形態では、スラブ糸のパラメータの変更があれば、パターンデータファイルはその都度更新される。したがって、分布グラフ画像31は、パラメータの変更があるとパラメータの変更を反映させて更新表示されるが、パラメータの変更が無ければ更新されることはない。
【0056】
また、本実施形態では、パラメータの入力によって分布グラフ画像31が更新されるとき、表示画面19において表示される分布グラフ画像31では、分布グラフ部33において変化を生じた部位のみが更新され、変化を生じない部位は更新されない。この場合、制御部11は、スラブ糸のパラメータの変更が生じると、変更前のスラブパターンデータと、変更後のスラブパターンデータとを比較し、分布グラフ部33に変化が生じる相違があれば、分布グラフ部33において変化を生じる部位のみを更新する。制御部11は、スラブ糸のパラメータの変更が生じても、変更前のスラブパターンデータと変更後のスラブパターンデータとの比較において分布グラフ部33に変化が生じる相違がなければ、分布グラフ画像31を更新しない。
【0057】
本実施形態によれば、制御部11は、パラメータが変更されると、オペレータの指示によらず自動的にパターンデータを生成するとともに、パターンデータが生成されるごとに分布グラフ画像31を生成し表示部17において更新表示する。このため、オペレータは、パターンデータの編集途中で、編集途中のパターンデータに基づき生成された分布グラフ画像31を確認することができ、パラメータの変更により分布グラフ画像31がどのように変化するのかをリアルタイムで把握できる。また、オペレータは、分布グラフ画像31を確認することで、スラブ糸の分布状況を視覚的に把握することができる。特に、本数が多く表示された本数表示セル33Cと、本数が少なく表示された本数表示セル33Cとは、明度の違いによって両者の差異を直感的に把握できる。
【0058】
本実施形態によれば、パラメータの変更があるとパラメータの変更を反映させて分布グラフ画像31が更新表示されるが、パラメータの変更が無ければ分布グラフ画像31は更新されることはない。このため、分布グラフ画像31の更新表示による装置の負荷を軽減することができる。また、本実施形態では、パラメータの入力によって分布グラフ画像31が更新されるとき、表示画面19において表示される分布グラフ画像31では、パラメータの変更によって変化を生じた部位のみが更新され、変化を生じない部位は更新されない。その結果、変化を生じない部位を含めて分布グラフ画像31の全体を更新する場合と比較すると、分布グラフ画像31における画像更新によるちらつきが少なく、オペレータの目の負担を軽減することができる。
【0059】
また、本実施形態では、分布グラフ画像31における範囲入力部32に入力する値を変更することにより、分布グラフ部33に表示する長さ(mm)および太さ(%)の範囲を変更することができる。
【0060】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0061】
○ 第1、第2の実施形態では、紡出パターンとしてのスラブパターンを例示して説明したが、紡出パターンはスラブパターンに限定されない。本発明は、スラブパターンだけでなく、紡出パターンとしての紡出糸の色の組み合わせパターンに適用することも可能である。この場合、パターンを決定するパラメータはスラブ糸のパラメータとは異なる。
○ 第1の実施形態では、スラブパターンデータの編集中に、表示部が予め設定した周期でイメージ画像を自動的に更新表示するとしたが、この限りではない。例えば、
図10に示すように、スラブパターンデータの編集時においてスラブ糸のパラメータが入力されたときに、入力されたパラメータを反映してパターンデータファイルを更新し、更新後のパターンデータファイルに基づきイメージ画像を更新表示してもよい。この場合、表示部が表示するイメージ画像は、パラメータが入力(又は変更)されたときにその都度更新表示され、パラメータが入力(又は変更)されないときイメージ画像は更新されない。このためイメージ画像の更新表示による装置の負荷を軽減することができる。また、イメージ画像の全てを一括して更新表示するのではなく、第2の実施形態のように、分布グラフ画像においてパラメータの変更によって変化を生じた部位のみを更新し、変化を生じない部位は更新しないようにしてもよい。
○ 第1、第2の実施形態では、スラブパターンデータの編集中では、編集中のスラブパターンデータが反映された画像が常時表示されるとしたが、この限りではない。例えば、パラメータの入力中は、一時的に画像を非表示とし、パラメータの入力後に画像を表示してもよい。具体的には、パラメータの入力中に画像がパラメータ入力画面と重なり、画像の一部又は全部が隠れる場合である。
○ 第1、第2の実施形態では、パターンデータをデータファイルに出力したが、これに限らない。パターンデータはデータファイルへの出力以外の手段で出力するようにしてもよく、例えば、TCP/IPプロトコルによるソケット通信による出力としてもよい。
○ 第2の実施形態では、パラメータの入力によって分布グラフ画像が更新されるとき、表示部において表示される分布グラフ画像では、パラメータの変更によって変化を生じた部位のみが更新され、変化を生じない部位は更新されないとしたが、これに限らない。例えば、パラメータの入力によって分布グラフ画像が更新されるとき、分布グラフ画像において変化を生じた部位だけでなく変化を生じない部材を含めて分布グラフ画像の全体を更新してもよい。
○ 第2の実施形態では、スラブパターンデータの編集中に、パラメータが入力(又は変更)されたときにその都度、分布グラフ画像を更新表示するとしたがこの限りではない。例えば、スラブパターンデータの編集中に、表示部が予め設定した周期で分布グラフ画像を自動的に更新表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 スラブパターン設定装置
11 制御部(紡出パターンデータ生成部、画像生成部、シミュレーション部)
12 プログラムメモリ
13 作業用メモリ
14 入力部(パラメータ入力部)
15 入力インターフェース
16 出力インターフェース
17 表示部
18 外部メモリ
19 表示画面
20 パラメータ入力ウインドウ(パラメータ入力画面)
21 スラブイメージウインドウ(イメージ画像)
22 布イメージウインドウ(イメージ画像)
31 分布グラフ画像(画像)
32 範囲入力部
33 分布グラフ部
34 数値表示部