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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】複合ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20240723BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240723BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20240723BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01B7/00 310
A61B1/00 713
H01B7/18 H
H01B7/18 E
H01B7/18 D
H01B7/18 C
G02B23/24 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020156303
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022049979
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】米内 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】田中 盛治
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-122825(JP,A)
【文献】特開2014-143015(JP,A)
【文献】特開2017-117701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
A61B 1/00
H01B 7/18
G02B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の同軸ケーブルと、
前記複数の同軸ケーブルの外周に配置された外周被覆と、を有し、
前記複数の同軸ケーブルは外径の異なる同軸ケーブルを含み、
前記複数の同軸ケーブルは、長手方向に沿って撚り合わされ、複合線となっており、
前記複数の同軸ケーブルのうち少なくとも、最も外径の細い同軸ケーブルである第1同軸ケーブルが、前記複合線の外周側に配置されており、
前記複合線はさらに複数の絶縁ケーブルを含み
前記複合線において、前記複数の絶縁ケーブルのうち少なくとも一本は、前記第1同軸ケーブルよりも内側に配置され、
前記第1同軸ケーブルよりも内側に配置された前記複数の絶縁ケーブルのうち少なくとも一本は、外径が、前記第1同軸ケーブルの外径よりも太い複合ケーブル。
【請求項2】
前記複数の同軸ケーブルのうち、最も外径の太い同軸ケーブルである第2同軸ケーブルのうち少なくとも一本が、前記複合線の外周側に配置されている請求項1に記載の複合ケーブル。
【請求項3】
前記複数の同軸ケーブルのうち、外径が0.97mm以下の同軸ケーブルが前記複合線の外周側に配置されている請求項1または請求項に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
前記第1同軸ケーブルの外径をD1、最も外径の太い同軸ケーブルである第2同軸ケーブルの外径をD2とした場合に、
D1/D2が、0.14以上0.88以下である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項5】
前記複合線の撚りピッチが14.4mm以上である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項6】
前記外周被覆と前記複合線との間に総合シールドをさらに有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項7】
前記複合線と、前記総合シールドとの間に、前記複合線を覆う抑え巻をさらに有する請求項に記載の複合ケーブル。
【請求項8】
前記複数の同軸ケーブルは、前記第1同軸ケーブルと、最も外径の太い同軸ケーブルである第2同軸ケーブルとを、複数本ずつ含み、
複数の前記第1同軸ケーブルと、複数の前記第2同軸ケーブルは前記抑え巻の内周面と接するように一列に配置される請求項に記載の複合ケーブル。
【請求項9】
前記複合線は、中心部に介在をさらに含む請求項1から請求項のいずれか1項に記載の複合ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中空筒状で可撓性を有する内視鏡管と、前記内視鏡管の内部に螺旋状に配置された織物状ケーブルと、を備えることを特徴とする内視鏡用ケーブルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-136570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡検査に使用される内視鏡検査装置は例えば人体の内部に挿入する挿入部を有する。係る挿入部は、カメラモジュールやライト等を備えた先端部と、該先端部と内視鏡検査装置本体とを接続する複合ケーブルの部分とを有している。
【0005】
挿入部は人体内部に挿入し、観察対象を確認するために、変形できることが求められる。そして、挿入部が変形する際に、挿入部を構成する複合ケーブルは、繰り返しねじられたり、屈曲することになる。このため、複合ケーブルには、繰り返し変形し、ねじった場合でも、複合ケーブルを構成するケーブルに断線等が生じない、捻回特性に優れていることが求められる。
【0006】
そこで、本開示は、捻回特性に優れた複合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の複合ケーブルは、複数の同軸ケーブルと、
前記複数の同軸ケーブルの外周に配置された外周被覆と、を有し、
前記複数の同軸ケーブルは外径の異なる同軸ケーブルを含み、
前記複数の同軸ケーブルは、長手方向に沿って撚り合わされ、複合線となっており、
前記複数の同軸ケーブルのうち少なくとも、最も外径の細い同軸ケーブルである第1同軸ケーブルが、前記複合線の外周側に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、捻回特性に優れた複合ケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一態様に係る複合ケーブルの長手方向と垂直な面での断面図である。
図2図2は、複合線の撚りピッチの説明図である。
図3図3は、実験例3で作製した複合ケーブルの長手方向と垂直な面での断面図である。
図4図4は、捻回試験の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0012】
(1)本開示の一態様に係る複合ケーブルは、複数の同軸ケーブルと、
前記複数の同軸ケーブルの外周に配置された外周被覆と、を有し、
前記複数の同軸ケーブルは外径の異なる同軸ケーブルを含み、
前記複数の同軸ケーブルは、長手方向に沿って撚り合わされ、複合線となっており、
前記複数の同軸ケーブルのうち少なくとも、最も外径の細い同軸ケーブルである第1同軸ケーブルが、前記複合線の外周側に配置されている。
【0013】
複合線が有する複数の同軸ケーブルのうち、少なくとも最も外径の細い同軸ケーブルである第1同軸ケーブルを、複合線の外周側に配置することで、複合ケーブルの捻回特性を向上できる。係る原因は明らかではないが、以下のように推認している。複数の同軸ケーブルは、長手方向に沿って螺旋状に撚り合わされ、複合線となっている。このため、第1同軸ケーブルを複合線の内周側に配置した場合よりも、外周側に配置することで、複合線に含まれる第1同軸ケーブルの長さを長くできる。その結果、複合ケーブルをねじった際に、他の同軸ケーブルと比較して外径が細く、比較的断線し易い第1同軸ケーブルの伸び縮みできる余力が大きくなり、断線しにくくなるためと考えられる。
【0014】
なお、複合線の外周側に第1同軸ケーブルを配置するとは、第1同軸ケーブルよりも複合線の外周側に、複合線を構成する他のケーブルが配置されていないことを意味する。
【0015】
(2)前記複数の同軸ケーブルのうち、最も外径の太い同軸ケーブルである第2同軸ケーブルのうち少なくとも一本が、前記複合線の外周側に配置されてもよい。
【0016】
第2同軸ケーブルのうち少なくとも一本についても、複合線の外周側に配置することで、複合ケーブルの捻回特性を特に高めることができる。
【0017】
(3)前記複合線はさらに複数の絶縁ケーブルを含んでもよい。
【0018】
絶縁ケーブルは、同軸ケーブルと比較して断線しにくい。このため、複合ケーブルの複合線が絶縁ケーブルをさらに含むことで、捻回特性に影響を与えず、先端部の各種部材と、内視鏡機器本体とを接続できる。
【0019】
(4)前記複合線において、前記複数の絶縁ケーブルのうち少なくとも一本は、前記第1同軸ケーブルよりも内側に配置されていてもよい。
【0020】
絶縁ケーブルの少なくとも一本を、第1同軸ケーブルよりも内側に配置することで、複合ケーブルの外径を抑制しつつ、複合ケーブルの捻回特性を高められる。
【0021】
(5)前記第1同軸ケーブルよりも内側に配置された前記複数の絶縁ケーブルのうち少なくとも一本は、外径が、前記第1同軸ケーブルの外径よりも太くてもよい。
【0022】
第1同軸ケーブルよりも内側に配置された複数の絶縁ケーブルのうち少なくとも一本について、外径を第1同軸ケーブルの外径D1よりも太くすることで、複合ケーブルの捻回特性を高められる。
【0023】
(6)前記複数の同軸ケーブルのうち、外径が0.97mm以下の同軸ケーブルが前記複合線の外周側に配置されていてもよい。
【0024】
外径が0.97mm以下の同軸ケーブルは、外径が0.97mmよりも太い同軸ケーブルと比較して断線し易いため、複合線の外周側に配置することで、断線を抑制し、複合ケーブルの捻回特性を特に向上できるからである。
【0025】
(7)前記第1同軸ケーブルの外径をD1、最も外径の太い同軸ケーブルである第2同軸ケーブルの外径をD2とした場合に、D1/D2が、0.14以上0.88以下であってもよい。
【0026】
D1/D2を0.14以上とすることで、第1同軸ケーブルの外径D1と、第2同軸ケーブルの外径D2との差を抑制し、例えば複合ケーブルをねじった場合に、第1同軸ケーブルにのみに過度に力が加わり、断線し易くなることを抑制できる。
【0027】
従来、外径の異なる複数の同軸ケーブルを含む複合ケーブルにおいて、ねじった場合に、外径の細い同軸ケーブルに断線が生じ易かった。これに対して、本開示の一態様に係る複合ケーブルによれば、外径の異なる複数の同軸ケーブルを含む場合でも、該複合ケーブルをねじった際に、外径の細い同軸ケーブルが断線することを抑制できる。このため、本開示の一態様に係る複合ケーブルは、有する同軸ケーブルの外径が異なるほど、従来の複合ケーブルと比較して高い効果を発揮し、例えばD1/D2が0.88以下の場合に、従来の複合ケーブルと比較して、特に高い捻回特性を発揮できる。
【0028】
(8)前記複合線の撚りピッチが14.4mm以上であってもよい。
【0029】
複合線の撚りピッチを14.4mm以上とすることで、複合ケーブルの捻回特性を特に高めることができる。
【0030】
複合ケーブルを、複合線の撚り方向と同方向にねじった場合、一時的ではあるが複合線の撚りピッチが短くなり、複合線を構成する同軸ケーブル等に力が加えられることになる。このため、外径の細い第1同軸ケーブル等に断線等が生じる場合がある。これに対して、複合線の撚りピッチを14.4mm以上とすることで、複合ケーブルを、複合線の撚り方向と同方向にねじった場合でも、複合線の撚りピッチが過度に小さくなることを抑制し、第1同軸ケーブル等が断線することを抑制できる。
【0031】
(9)前記外周被覆と前記複合線との間に総合シールドをさらに有していてもよい。
【0032】
総合シールドを設けることで、複合ケーブルが伝送する信号へのノイズの侵入や、外部へ放射するノイズをカットできる。
【0033】
(10)前記複合線と、前記総合シールドとの間に、前記複合線を覆う抑え巻をさらに有していてもよい。
【0034】
抑え巻を配置することで、複合線を構成する同軸ケーブル等の撚り合わされた形状を安定的に維持することができる。
【0035】
(11)前記複数の同軸ケーブルは、前記第1同軸ケーブルと、最も外径の太い同軸ケーブルである第2同軸ケーブルとを、複数本ずつ含み、
複数の前記第1同軸ケーブルと、複数の前記第2同軸ケーブルは前記抑え巻の内周面と接するように一列に配置してもよい。
【0036】
複数の第1同軸ケーブルと、複数の第2同軸ケーブルとを、抑え巻の内周面と接するように一列に配置することで、断線し易い同軸ケーブルを複合線の外周側に配置できる。このため、複合ケーブルの捻回特性を特に向上できる。
【0037】
(12)前記複合線は、中心部に介在をさらに含んでいてもよい。
【0038】
複合線が介在を有することで、同軸ケーブル等を撚り合わせ複合線を形成する際の作業を容易に行うことができる。
【0039】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)に係る複合ケーブルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許の請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
(複合ケーブル)
図1に、本実施形態の複合ケーブルの長手方向と垂直な断面の一構成例を示す。また、図2に本実施形態の複合ケーブルが有する複合線の側面図を示す。以下に図1図2を用いながら、本実施形態の複合ケーブルについて説明する。
【0040】
本実施形態の複合ケーブルが含有する各部材について説明する。
(A)複合線
本実施形態の複合ケーブル10は、複数の同軸ケーブルを有する。係る複数の同軸ケーブルは外径の異なる同軸ケーブルを含む。図1に示した複合ケーブル10の場合、外径の異なる、第1同軸ケーブル11と、第2同軸ケーブル12との2種類の同軸ケーブルを含んでいる。ただし、係る形態に限定されず、本実施形態の複合ケーブルは、外径の異なる3種類以上の同軸ケーブルを含むこともできる。
【0041】
そして、複数の同軸ケーブルは、長手方向に沿って撚り合わされ複合線13となっている。
【0042】
ここでまず、複合線13が有する部材について説明する。
(A-1)複合線が有する部材について
(A-1-1)同軸ケーブル
同軸ケーブルの構成は特に限定されない。同軸ケーブルの構成について、第2同軸ケーブル12を例に説明すると、長手方向と垂直な断面において、中心部側から順に内部導体12Aと、絶縁体12Bと、シールド導体12Cと、外被12Dとを有する。
【0043】
内部導体12Aは、第2同軸ケーブル12の中心導体として用いられる。内部導体12Aの材料としては、例えば銅や、アルミニウム、銅合金等が挙げられる。内部導体は、表面に銀やスズのめっき処理が施されていてもよい。このため、内部導体12Aとして、例えば銀めっき銅合金や、スズめっき銅合金等を用いることもできる。内部導体12Aは、単線(素線)であってもよく、複数の素線を撚り合わせた撚線であってもよい。
【0044】
絶縁体12Bを構成する材料は特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂等の樹脂を用いることができる。
【0045】
シールド導体12Cは、絶縁体12Bの外周に金属線を横巻、または編組構造で配置した構造を有する。シールド導体12Cが有する金属線の材料としては、銅や、アルミニウム、銅合金等を用いることができる。シールド導体の金属線は、表面に銀やスズのめっき処理が施されていてもよい。このため、シールド導体の金属線としては、例えば銀めっき銅合金や、スズめっき銅合金等を用いることもできる。
【0046】
外被12Dを構成する材料は特に限定されないが、絶縁体12Bで既述のフッ素樹脂や、ポリエステル樹脂等の樹脂を用いることができる。
【0047】
ここでは第2同軸ケーブル12を用いて説明したが、第1同軸ケーブル11についても同様に内部導体、絶縁体、シールド導体、および外被を有することができる。第1同軸ケーブル11の各部材の材料は特に限定されないが、例えば第2同軸ケーブル12で説明したものと同様の材料を用いることができる。
【0048】
本実施形態の複合ケーブルは、既述のように外径の異なる複数の同軸ケーブルを有することができる。最も外径の細い同軸ケーブルである第1同軸ケーブル11の外径をD1、最も外径の太い同軸ケーブルである第2同軸ケーブル12の外径をD2とした場合、D1、D2はそれぞれ特に限定されないが、D1/D2が0.14以上0.88以下であることが好ましい。また、D1/D2は、0.20以上0.70以下であることがより好ましい。
【0049】
D1/D2を0.14以上とすることで、第1同軸ケーブル11の外径D1と、第2同軸ケーブル12の外径D2との差を抑制し、例えば複合ケーブルをねじった場合に、第1同軸ケーブル11にのみに過度に力が加わり、断線し易くなることを抑制できる。
【0050】
従来、外径の異なる複数の同軸ケーブルを含む複合ケーブルにおいて、ねじった場合に、外径の細い同軸ケーブルに断線が生じ易かった。これに対して、本実施形態の複合ケーブルによれば、外径の異なる複数の同軸ケーブルを含む場合でも、該複合ケーブルをねじった際に、外径の細い同軸ケーブルが断線することを抑制できる。このため、本実施形態の複合ケーブルは、有する同軸ケーブルの外径が異なるほど、従来の複合ケーブルと比較して高い効果を発揮し、例えばD1/D2が0.88以下の場合に、従来の複合ケーブルと比較して、特に高い捻回特性を発揮できる。
【0051】
例えば後述する実験例において、第1同軸ケーブル11の内部導体11Aの外径D11Aは0.048mmであり、第2同軸ケーブル12の内部導体12Aの外径D12Aは0.090mmである。つまり、第1同軸ケーブル11の内部導体11Aの外径D11Aは、第2同軸ケーブル12の内部導体12Aの外径D12Aよりも小さい。
【0052】
第1同軸ケーブル11の絶縁体11Bの膜厚L11Bは0.030mmであり、第2同軸ケーブル12の絶縁体12Bの膜厚L12Bは0.075mmである。つまり、第1同軸ケーブル11の絶縁体11Bの膜厚L11Bは、第2同軸ケーブル12の絶縁体12Bの膜厚L12Bよりも小さい。
【0053】
このように、第1同軸ケーブル11について、小さい内部導体に応じて、絶縁体の膜厚を小さくすることで、該第1同軸ケーブルの曲げ剛性を小さくし、複合ケーブルを曲げやすくすることができる。
(A-1-2)絶縁ケーブル
本実施形態の複合ケーブル10が有する複合線13は、既述の同軸ケーブルに加えて、さらに絶縁ケーブルを含むことができる。
【0054】
絶縁ケーブルは、後述するように同軸ケーブルと比較して断線しにくい。このため、複合ケーブル10の複合線13が絶縁ケーブルをさらに含むことで、捻回特性に影響を与えず、先端部の各種部材と、内視鏡検査装置本体とを接続できる。
【0055】
複合線13がさらに絶縁ケーブルを含む場合、複数の同軸ケーブルとともに絶縁ケーブルも撚り合わせ、複合線13を構成できる。例えば図1に示すように、複合線13は複数の絶縁ケーブルを含むことができる。図1では、外径の異なる第1絶縁ケーブル15と、第2絶縁ケーブル16との2種類の絶縁ケーブルを有する例を示したが、係る形態に限定されない。複合線13が絶縁ケーブルを有する場合において、該絶縁ケーブルは外径や構成が同じ1種類のみを有していてもよく、外径や構成が異なる3種類以上の絶縁ケーブルを有していてもよい。また、複合線13が有する絶縁ケーブルの本数も特に限定されず、任意の本数を含むことができる。図1では、第1絶縁ケーブル15、第2絶縁ケーブル16として、第2絶縁ケーブル16の外径D16が、第1絶縁ケーブル15の外径D15よりも小さい絶縁ケーブルを組み合わせて用いた例を示している。
【0056】
絶縁ケーブルの構成について、第1絶縁ケーブル15を例に説明すると、長手方向と垂直な断面において、中心部側から順に内部導体15Aと、絶縁体15Bとを有する。
【0057】
内部導体15Aの材料としては、例えば銅や、アルミニウム、銅合金等が挙げられる。内部導体15Aは、表面に銀やスズのめっき処理が施されていてもよい。このため、内部導体として、例えば銀めっき銅合金や、スズめっき銅合金等を用いることもできる。内部導体15Aは、単線(素線)であってもよく、複数の素線を撚り合わせた撚線であってもよい。
【0058】
絶縁体15Bを構成する材料は特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂等の樹脂を用いることができる。
【0059】
ここでは第1絶縁ケーブル15を用いて説明したが、他の絶縁ケーブル、例えば第2絶縁ケーブル16についても同様に内部導体、絶縁体を有することができる。他の絶縁ケーブルの各部材の材料は特に限定されないが、例えば第1絶縁ケーブル15で説明したものと同様の材料を用いることができる。
(A-1-3)介在
複合線13は、中心部に介在19をさらに含むこともできる。
【0060】
介在19は、スフ糸やナイロン糸などの繊維で構成することができる。介在は、抗張力繊維で構成してもよい。
【0061】
介在は、同軸ケーブルや、絶縁ケーブルで囲まれた隙間に配置できる。
【0062】
複合線13が介在を有することで、同軸ケーブル等を撚り合わせ複合線13を形成する際の作業を容易に行うことができる。
(A-2)各部材の配置について
本発明の発明者は、複合ケーブルを繰り返しねじった場合でも、複合ケーブルを構成するケーブルに断線が生じることを抑制できる、捻回特性に優れた複合ケーブルについて検討を行った。
【0063】
既述のように、本実施形態の複合ケーブルは、同軸ケーブルや、必要に応じて絶縁ケーブルを含むことができる。本発明の発明者の検討によれば、複合ケーブルを繰り返しねじった場合に、同軸ケーブルの方が、絶縁ケーブルよりも断線しやすい。そして、複合ケーブル内における同軸ケーブルの配置により、同軸ケーブルの断線のし易さが変化し、複合ケーブルの捻回特性が変化することを見出し、本発明を完成させた。
(A-2-1)同軸ケーブルの配置について
本実施形態の複合ケーブル10においては、複合線13が有する複数の同軸ケーブルのうち少なくとも、最も外径の細い同軸ケーブルである第1同軸ケーブル11を、複合線13の外周13A側に配置することが好ましい。
【0064】
このように、複合線13が有する複数の同軸ケーブルのうち少なくとも、最も外径の細い同軸ケーブルである第1同軸ケーブル11を、複合線13の外周13A側に配置することで、複合ケーブル10の捻回特性を向上できる。係る原因は明らかではないが、以下のように推認している。既述のように、複数の同軸ケーブルは、長手方向に沿って螺旋状に撚り合わされ、複合線13となっている。このため、第1同軸ケーブル11を複合線13の内周13B側(内側)に配置した場合よりも、外周13A側に配置することで、複合線13に含まれる第1同軸ケーブル11の長さを長くできる。その結果、複合ケーブル10をねじった際に、他の同軸ケーブルと比較して外径が細く、比較的断線し易い第1同軸ケーブル11の伸び縮みできる余力が大きくなり、断線しにくくなるためと考えられる。
【0065】
なお、複合線13の外周13A側に第1同軸ケーブル11を配置するとは、図1に示すように、第1同軸ケーブル11よりも複合線13の外周13A側に複合線13を構成する他のケーブルが配置されていないことを意味する。
【0066】
図1では、第1同軸ケーブル11と、第2同軸ケーブル12との2種類の同軸ケーブルを有する例を示しているが、既述のように、複合線13は、外径が異なる3種類以上の同軸ケーブルを有することもできる。
【0067】
この場合、複数の同軸ケーブルのうち、外径が0.97mm以下の同軸ケーブルが、複合線13の外周側に配置されていることが好ましい。これは、外径が0.97mm以下の同軸ケーブルは、外径が0.97mmよりも太い同軸ケーブルと比較して断線し易いため、複合線13の外周側に配置することで、断線を抑制し、複合ケーブルの捻回特性を特に向上できるからである。
【0068】
ただし、既述のように複合線13を構成するケーブルのうち、同軸ケーブルは絶縁ケーブルと比較して断線し易い。このため、図1に示すように、複数の同軸ケーブルのうち、最も外径の太い同軸ケーブルである第2同軸ケーブル12のうち少なくとも一本についても、複合線13の外周13A側に配置されていることが好ましい。第2同軸ケーブル12のうち少なくとも一本についても、複合線13の外周13A側に配置することで、複合ケーブル10の捻回特性を特に高めることができる。
【0069】
本実施形態の複合ケーブル10が有する複数の同軸ケーブルは、図1に示すように第1同軸ケーブル11と、第2同軸ケーブル12とを複数本ずつ含むことができる。そして、複数の第1同軸ケーブル11と、複数の第2同軸ケーブル12は、後述する抑え巻18の内周面18Aと接するように一列に配置することが好ましい。
【0070】
このように複数の第1同軸ケーブル11と、複数の第2同軸ケーブル12とを、抑え巻18の内周面18Aと接するように一列に配列することで、断線し易い同軸ケーブルを複合線13の外周13A側に配置できる。このため、複合ケーブルの捻回特性を特に向上できる。
(A-2-2)絶縁ケーブルの配置について
絶縁ケーブルの配置は特に限定されない。既述のように本発明の発明者の検討によれば、絶縁ケーブルは同軸ケーブルと比較して断線しにくい。このため、例えば複合線13において、複数の絶縁ケーブルのうち少なくとも一本は第1同軸ケーブル11よりも内側に配置することが好ましい。
【0071】
複数の絶縁ケーブルのうち少なくとも一本を、第1同軸ケーブルよりも内側に配置することで、複合ケーブルの外径を抑制しつつ、複合ケーブルの捻回特性を高められる。
【0072】
この際、第1同軸ケーブル11よりも内側に配置された複数の絶縁ケーブルのうち少なくとも一本は、外径が、第1同軸ケーブル11の外径D1よりも太いことが好ましい。
【0073】
第1同軸ケーブル11よりも内側に配置された複数の絶縁ケーブルのうち少なくとも一本について、外径を第1同軸ケーブル11の外径D1よりも太くすることで、複合ケーブルの捻回特性を高められる。
【0074】
図1に示した複合ケーブル10の場合、例えば第1絶縁ケーブル15の外径D15が第1同軸ケーブルの外径D1よりも太いことが好ましい。第2絶縁ケーブル16の外径D16についても、第1同軸ケーブル11の外径D1よりも太いことがより好ましい。
(A-3)撚りピッチについて
複合線13の撚りピッチは特に限定されないが、本発明の発明者の検討によれば、14.4mm以上であることが好ましく、20.0mm以上であることがより好ましい。
【0075】
複合線13の撚りピッチを14.4mm以上とすることで、複合ケーブルの捻回特性を特に高めることができる。
【0076】
複合ケーブル10を、複合線の撚り方向と同方向にねじった場合、一時的ではあるが複合線の撚りピッチが短くなり、複合線13を構成する同軸ケーブル等に力が加えられることになる。このため、外径の細い第1同軸ケーブル等に断線等が生じる場合がある。これに対して、複合線13の撚りピッチを14.4mm以上とすることで、複合ケーブル10を、複合線の撚り方向と同方向にねじった場合でも、複合線の撚りピッチが過度に小さくなることを抑制し、第1同軸ケーブル等が断線することを抑制できる。
【0077】
複合線13の撚りピッチの上限は特に限定されないが、例えば40.0mm以下であることが好ましく、35.0mm以下であることがより好ましい。
【0078】
撚りピッチとは、ケーブルが1回撚られる長さを意味する。係る長さとは、複合線13の中心軸に沿った長さを意味する。
【0079】
図2に、複合線13の側面図を示す。図1にも示したように、複合線13は、外周13A側に2本の第1同軸ケーブル111、112と、6本の第2同軸ケーブル121~126、2本の第1絶縁ケーブル151、152を有する。従って、複合線13の側面には、第1同軸ケーブル111、112、第2同軸ケーブル121~126、第1絶縁ケーブル151、152が順に繰り返し現れる。
【0080】
そして、図2に示すように、複合線13の側面において、中心軸CAに沿った同じケーブルの間、例えば第2同軸ケーブル121の間の距離が、複合線13の撚りピッチPtとなる。
【0081】
撚りピッチは、例えばJIS C 3002(1992)に記載の方法により測定できる。
(B)外周被覆
本実施形態の複合ケーブル10は、複数の同軸ケーブルの外周に配置された外周被覆14を有することができる。すなわち、外周被覆14は、複合線13の外周を覆うように配置されている。
【0082】
外周被覆14を構成する材料は特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂等の樹脂を用いることができる。
【0083】
外周被覆14を設けることで、複合線13等の複合ケーブルを構成する部材を保護できる。
(C)総合シールド
外周被覆14と複合線13との間に総合シールドをさらに有することもできる。
【0084】
総合シールドを設けることで、複合ケーブルが伝送する信号へのノイズの侵入や、外部へ放射するノイズをカットできる。
【0085】
総合シールド17は、複合線13の外周に金属線を横巻、または編組構造で配置した構造を有する。総合シールド17が有する金属線の材料としては、銅や、アルミニウム、銅合金等を用いることができる。総合シールドが有する金属線は、表面に銀やスズのめっき処理が施されていてもよい。このため、総合シールドが有する金属線としては、例えば銀めっき銅合金や、錫めっき銅合金等を用いることもできる。
(D)抑え巻
本実施形態の複合ケーブル10は、複合線13と、総合シールド17との間に、複合線13を覆う抑え巻18をさらに有することもできる。
【0086】
抑え巻18は、複合線13を覆っている。抑え巻18を配置することで、複合線13を構成する同軸ケーブル等の撚り合わされた形状を安定的に維持することができる。
【0087】
抑え巻18として、例えば、紙テープや不織布、ポリエステルなどの樹脂製のテープを用いることができる。また、抑え巻18は、コアの長手方向に沿って、螺旋状に巻き付けてもよいし、縦添え、すなわち抑え紙の長手方向をコアの長手方向に沿って配置する構成であっても良い。また、巻き方向は、Z巻きでもS巻きでも良い。
【実施例
【0088】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
まず、以下の実験例において作製した複合ケーブルの評価方法について説明する。
(1)ケーブルの外径
以下の実験例において作製した複合ケーブルに用いた同軸ケーブル、絶縁ケーブルの外径は、JIS C 3002(1992)に記載の方法によりマイクロメータを用いて測定した。
(2)撚りピッチ
複合線の撚りピッチは、JIS C 3002(1992)に記載の方法により測定した。
(3)捻回特性
捻回特性の試験方法について図4を用いて説明する。
【0089】
以下の実験例で作製した長さ2mの複合ケーブルCを鉛直に垂れ下がらせて、複合ケーブルCの上端と下端とをそれぞれチャック411、412で把持した。下端のチャック412を固定させた状態で、上端のチャック411を複合ケーブルCの軸42回りに左右へ-360°から+360°まで30回転/分の速度で捻回させた。捻回試験は1本の第1同軸ケーブルの抵抗値を測定しながら行い、初期抵抗値の10倍以上まで抵抗値が上昇するまでの回数を測定した。なお、-360°から+360°まで移動させるまでの捻回回数を1回とする。捻回回数が多いほど捻回特性に優れることを意味する。
【0090】
第1同軸ケーブルが断線するまでの捻回回数が15000回以上の場合にA、10000回以上15000回未満の場合にB、10000回未満の場合にCと評価した。評価がA、またはBの場合には捻回特性に優れた複合ケーブルと評価できる。
【0091】
以下に各実験例における複合ケーブルを説明する。実験例1、実験例2が実施例、実験例3が比較例となる。
(実験例1)
以下の手順により、長手方向と垂直な断面が、図1に示した構造を有する複合ケーブル10を作製した。
【0092】
複合ケーブル10の複合線13が有する第1同軸ケーブル11、第2同軸ケーブル12、第1絶縁ケーブル15、第2絶縁ケーブル16は、表1に示した構成とした。
【0093】
上記第1同軸ケーブル11を2本、第2同軸ケーブル12を6本、第1絶縁ケーブル15を3本、第2絶縁ケーブル16を1本と介在19を用い、複合線13を作製した。
【0094】
図1に示すように、介在19を囲むように上記同軸ケーブル、絶縁ケーブルが配置され、複合線13の外周13A側に、第1同軸ケーブル111、112と、第2同軸ケーブル121~126、第1絶縁ケーブル151、152を配置した。第1絶縁ケーブル153は第1同軸ケーブル111よりも、複合線13の内周13B側に配置した。第2絶縁ケーブル16についても同様に、第1同軸ケーブル111よりも、複合線13の内周13B側に配置した。
【0095】
得られた複合線13の撚りピッチは30mmとした。
【0096】
また、複合線13の外周には焼結PTFEテープをZ巻きに巻き付け抑え巻18を形成した。これにより、複数の第1同軸ケーブル11、および複数の第2同軸ケーブル12は、図1に示すように抑え巻18の内周面18Aと接するように一列に配置される。
【0097】
抑え巻き18の外周には総合シールド17、外周被覆14を配置した。総合シールド17、外周被覆14の構成は表2に示した通りである。
【0098】
得られた複合ケーブルについて、既述の捻回試験を行ったところ、評価結果はAであった。
(実験例2)
複合線13を製造する際に、複合線の撚りピッチを13mmとした。以上の点以外は実験例1と同様にして複合ケーブルを製造し、既述の捻回試験を行ったところ、評価結果はBであった。
(実験例3)
複合線13を製造する際に、同軸ケーブル、絶縁ケーブルの配置を変更し、図3に示した複合ケーブル30を作製した。
【0099】
具体的には、全ての第1絶縁ケーブル151~153を複合線13の外周13A側に配置した。そして、第1同軸ケーブル111、112を、複合線13の内周13B側に配置した。以上の点以外は実験例1と同様にして複合ケーブルを製造し、既述の捻回試験を行った。捻回試験の評価結果はCであった。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】

実験例1~実験例3の結果から明らかなように、複数の外径の異なる同軸ケーブルを有する複合線について、最も径の細い第1同軸ケーブル11を、複合線13の外周側に配置することで、該複合線を含む複合ケーブルの捻回特性を高められることを確認できた。
【符号の説明】
【0102】
10、30、C 複合ケーブル
11、111、112 第1同軸ケーブル
12、121~126 第2同軸ケーブル
11A、12A 内部導体
11B、12B 絶縁体
12C シールド導体
12D 外被
13 複合線
13A 外周
13B 内周
14 外周被覆
15、151~153 第1絶縁ケーブル
15A 内部導体
15B 絶縁体
16 第2絶縁ケーブル
17 総合シールド
18 抑え巻
18A 内周面
19 介在
D1 外径
D2 外径
D11A 外径
L11B 膜厚
D12A 外径
L12B 膜厚
CA 中心軸
Pt 撚りピッチ
411、412 チャック
図1
図2
図3
図4