(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】三次元造形用データの生成方法および三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240723BHJP
B29C 64/10 20170101ALI20240723BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240723BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240723BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/10
B33Y50/00
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2020164759
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 隆介
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0308977(US,A1)
【文献】特開2019-171846(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122462(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元造形物を造形するための三次元造形用データの生成方法であって、
前記三次元造形物の形状を表す第1形状データを取得する第1工程と、
物体の形状を表す複数の形状データと前記複数の形状データを用いて生成された複数の造形用データとを紐付けて格納するデータベースにアクセスして、前記第1形状データに対応する前記形状データである第2形状データが前記データベースに格納されているか否かを照会する第2工程と、
前記第2工程における照会結果に応じて前記三次元造形物を造形するための三次元造形用データを取得または生成する第3工程と、
を有し、
前記第3工程では、
前記第2形状データが前記データベースに格納されている場合、前記第2形状データに紐付けられた前記造形用データである第2造形用データを前記三次元造形用データとして前記データベースから取得し、または、前記第2造形用データに関連する関連データを用いて前記三次元造形用データを生成し、
前記第2形状データが前記データベースに格納されていない場合、前記三次元造形用データとして、前記第1形状データを用いて第1造形用データを生成
し、前記第1造形用データを前記第1形状データに紐付けて前記データベースに格納する、
三次元造形用データの生成方法。
【請求項2】
三次元造形物を造形するための三次元造形用データの生成方法であって、
前記三次元造形物の形状を表す第1形状データを取得する第1工程と、
物体の形状を表す複数の形状データと前記複数の形状データを用いて生成された複数の造形用データとを紐付けて格納するデータベースにアクセスして、前記第1形状データに対応する前記形状データである第2形状データが前記データベースに格納されているか否かを照会する第2工程と、
前記第2工程における照会結果に応じて前記三次元造形物を造形するための三次元造形用データを取得または生成する第3工程と、
を有し、
前記第3工程では、
前記第2形状データが前記データベースに格納されている場合、前記第2形状データに紐付けられた前記造形用データである第2造形用データを前記三次元造形用データとして前記データベースから取得し、または、前記第2造形用データに関連する関連データを用いて前記三次元造形用データを生成し、
前記第2形状データが前記データベースに格納されていない場合、前記三次元造形用データとして、前記第1形状データを用いて第1造形用データを生成
し、
前記第2形状データを用いて前記第2造形用データを生成するための前記関連データであって、前記第2形状データを補正した補正形状データを含む前記関連データが前記第2形状データに紐付けられて前記データベースに格納されており、
前記第2形状データを用いて前記第2造形用データを生成する際に決定される製造条件と前記三次元造形物の製造条件とが異なる場合、前記第3工程において、前記補正形状データを前記データベースから取得し、製造条件の変更内容に応じて前記補正形状データを補正し、補正後の前記補正形状データを用いて前記三次元造形用データを生成する、
三次元造形用データの生成方法。
【請求項3】
三次元造形物を造形するための三次元造形用データの生成方法であって、
前記三次元造形物の形状を表す第1形状データを取得する第1工程と、
物体の形状を表す複数の形状データと前記複数の形状データを用いて生成された複数の造形用データとを紐付けて格納するデータベースにアクセスして、前記第1形状データに対応する前記形状データである第2形状データが前記データベースに格納されているか否かを照会する第2工程と、
前記第2工程における照会結果に応じて前記三次元造形物を造形するための三次元造形用データを取得または生成する第3工程と、
を有し、
前記第3工程では、
前記第2形状データが前記データベースに格納されている場合、前記第2形状データに紐付けられた前記造形用データである第2造形用データを前記三次元造形用データとして前記データベースから取得し、または、前記第2造形用データに関連する関連データを用いて前記三次元造形用データを生成し、
前記第2形状データが前記データベースに格納されていない場合、前記三次元造形用データとして、前記第1形状データを用いて第1造形用データを生成
し、
前記第2形状データを用いて前記第2造形用データを生成するための前記関連データであって、前記第2形状データに表された形状が複数の層に分割された形状を表すスライスデータを含む前記関連データが前記第2形状データに紐付けられて前記データベースに格納されており、
前記第2形状データを用いて前記第2造形用データを生成する際に決定される製造条件と前記三次元造形物の製造条件とが同じである場合には、前記第3工程において、前記スライスデータを前記データベースから取得し、前記スライスデータを用いて前記三次元造形用データを生成する、
三次元造形用データの生成方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の三次元造形用データの生成方法であって、
前記第2形状データが前記データベースに格納されていない場合、前記第1造形用データを前記第1形状データに紐付けて前記データベースに格納する、三次元造形用データの生成方法。
【請求項5】
請求項1に記載の三次元造形用データの生成方法であって、
前記第2形状データを用いて前記第2造形用データを生成するための
前記関連データが前記第2形状データに紐付けられて前記データベースに格納されており、かつ、前記第2形状データを用いて前記第2造形用データを生成する際に決定される製造条件と前記三次元造形物の製造条件とが異なる場合、前記第3工程において、
前記関連データを前記データベースから取得し、製造条件の変更内容に応じて
前記関連データを補正し、補正後の
前記関連データを用いて前記三次元造形用データを生成する、三次元造形用データの生成方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の三次元造形用データの生成方法であって、
前記データベースは、複数の三次元造形装置からアクセスされる、三次元造形用データの生成方法。
【請求項7】
三次元造形物の製造方法であって、
前記三次元造形物の形状を表す第1形状データを取得する第1工程と、
物体の形状を表す複数の形状データと前記複数の形状データを用いて生成された複数の造形用データとを紐付けて格納するデータベースにアクセスして、前記第1形状データに対応する前記形状データである第2形状データが前記データベースに格納されているか否かを照会する第2工程と、
前記第2工程における照会結果に応じて前記三次元造形物を造形するための三次元造形用データを取得または生成する第3工程と、
前記三次元造形用データを用いて前記三次元造形物を造形する第4工程と、
前記第4工程において造形された前記三次元造形物の形状と前記第1形状データに表された前記三次元造形物の形状との差異の度合いを取得する第5工程と、
を有し、
前記第3工程では、
前記第2形状データが前記データベースに格納されている場合、前記第2形状データに紐付けられた前記造形用データである第2造形用データを前記三次元造形用データとして前記データベースから取得し、または、前記第2造形用データに関連する関連データを用いて前記三次元造形用データを生成し、
前記第2形状データが前記データベースに格納されていない場合、前記三次元造形用データとして、前記第1形状データを用いて第1造形用データを生成
し、
前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程、前記第4工程、前記第5工程を複数回実行し、
1つの三次元造形装置で前記複数回の前記第4工程を実行したときの前記差異の度合いの時系列的な変化を用いて前記三次元造形装置に変調が生じるタイミングを予測する、
三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形用データの生成方法および三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層方法や材料や積層ピッチなどの造形条件を変更して繰り返しシミュレーションを実行することによって、三次元造形物の反り変形や残留応力が許容範囲内に収まる造形条件を求めた後、反り変形や残留応力が許容範囲内に収まる造形条件で三次元造形物を造形する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した方法では、シミュレーションを実行し、三次元造形物の反り変形や残留応力が許容範囲内に収まることを確認した後に三次元造形用データが生成されるので、三次元造形用データを生成するために多くの時間が費やされる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形物を造形するための造形用データの生成方法が提供される。この造形用データの生成方法は、前記三次元造形物の形状を表す第1形状データを取得する第1工程と、物体の形状を表す複数の形状データと前記複数の形状データを用いて生成された複数の造形用データとを紐付けて格納するデータベースにアクセスして、前記第1形状データに対応する前記形状データである第2形状データが前記データベースに格納されているか否かを照会する第2工程と、前記第2工程における照会結果に応じて前記三次元造形物を造形するための三次元造形用データを取得または生成する第3工程と、を有する。前記第3工程では、前記第2形状データが前記データベースに格納されている場合、前記第2形状データに紐付けられた前記造形用データである第2造形用データを前記三次元造形用データとして前記データベースから取得し、または、前記第2造形用データに関連する関連データを用いて前記三次元造形用データを生成し、前記第2形状データが前記データベースに格納されていない場合、前記三次元造形用データとして、前記第1形状データを用いて第1造形用データを生成する。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、前記三次元造形物の形状を表す第1形状データを取得する第1工程と、物体の形状を表す複数の形状データと前記複数の形状データを用いて生成された複数の造形用データとを紐付けて格納するデータベースにアクセスして、前記第1形状データに対応する前記形状データである第2形状データが前記データベースに格納されているか否かを照会する第2工程と、前記第2工程における照会結果に応じて前記三次元造形物を造形するための三次元造形用データを取得または生成する第3工程と、前記三次元造形用データを用いて前記三次元造形物を造形する第4工程と、を有する。前記第3工程では、前記第2形状データが前記データベースに格納されている場合、前記第2形状データに紐付けられた前記造形用データである第2造形用データを前記三次元造形用データとして前記データベースから取得し、または、前記第2造形用データに関連する関連データを用いて前記三次元造形用データを生成し、前記第2形状データが前記データベースに格納されていない場合、前記三次元造形用データとして、前記第1形状データを用いて第1造形用データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の三次元造形システムの概略構成を示す説明図。
【
図2】第1実施形態の三次元造形装置の概略構成を示す断面図。
【
図11】第1実施形態の三次元造形処理の内容を示すフローチャート。
【
図12】第1実施形態の造形用データ生成処理の内容を示すフローチャート。
【
図13】三次元造形物が造形される様子を模式的に示す説明図。
【
図14】第2実施形態の三次元造形処理の内容を示すフローチャート。
【
図15】第3実施形態の三次元造形システムの概略構成を示す説明図。
【
図16】第3実施形態の三次元造形処理の内容を示すフローチャート。
【
図17】第4実施形態の三次元造形システムの概略構成を示す説明図。
【
図18】第4実施形態の三次元造形処理の内容を示すフローチャート。
【
図19】第5実施形態の三次元造形システムの概略構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形システム100の概略構成を示す説明図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、重力方向とは反対の方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が
図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、向きを特定する場合には、矢印の指し示す方向である正の方向を「+」、矢印の指し示す方向とは反対の方向である負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。
【0009】
本実施形態における三次元造形システム100は、三次元造形物を造形するための各種データを記憶するデータ記憶装置110と、三次元造形物を造形する三次元造形装置120とを備えている。
【0010】
データ記憶装置110は、ハードディスクドライブによって構成されている。データ記憶装置110は、ソリッドステートドライブによって構成されてもよいし、ネットワークアタッチトストレージによって構成されてもよい。データ記憶装置110は、データベースDBを有している。データベースDBには、3次元CADデータや3次元CGデータ等の形状データと、三次元造形装置120を制御して三次元造形物を造形するための三次元造形用データとが紐付けられて格納されている。データベースDBには、複数の形状データと複数の三次元造形用データとが格納されている。各形状データには、物体の三次元的な形状が表されている。以下の説明では、三次元造形用データのことを造形用データと呼ぶ。
【0011】
三次元造形装置120は、筐体121と、造形部200と、ステージ300と、位置変更部400と、制御部500とを備えている。三次元造形装置120は、制御部500の制御下で、造形部200に設けられたノズル61とステージ300との相対的な位置を位置変更部400によって変化させつつノズル61造形材料を吐出することによって、ステージ300上に造形材料を積層して三次元造形物を造形する。本実施形態では、造形部200、ステージ300、および、位置変更部400は、筐体121の内部に設けられた造形室RMに配置されている。
【0012】
本実施形態では、筐体121の正面部には、操作パネル122と、表示部123と、開閉扉124とが設けられている。操作パネル122は、例えば、スイッチ等によって構成されており、ユーザーからの操作を受け付ける。表示部123は、例えば、液晶モニターによって構成されており、三次元造形装置120に関する各種情報を表示する。開閉扉124は、閉じられることによって造形室RMを外部から遮断する。開閉扉124が閉じられた状態で、三次元造形物の造形が実行される。開閉扉124が開かれることによって三次元造形物を外部に取り出すことができる。造形室RMを外部から視認できるように、開閉扉124の一部は、例えば、ガラスによって構成されている。
【0013】
本実施形態では、造形室RMの内壁面や開閉扉124は、断熱性を有する部材で構成されている。造形室RMには、造形室RMを昇温させる造形室ヒーター125と、造形室RMの温度を計測する温度計126とが配置されている。造形室ヒーター125は、例えば、制御部500の制御下で熱風を送出する送風機によって構成されている。温度計126によって計測された温度は、制御部500に送信される。造形室ヒーター125によって造形室RMが所定の温度に保たれた状態で、三次元造形物が造形される。
【0014】
図2は、本実施形態における三次元造形装置120の概略構成を示す断面図である。造形部200は、材料MRの供給源である材料供給部20と、材料MRを可塑化して造形材料にする可塑化部30と、上述したノズル61を有する吐出部60とを備えている。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。
【0015】
材料供給部20は、造形材料を生成するための材料MRを可塑化部30に供給する。本実施形態では、材料供給部20は、材料MRを収容するホッパーによって構成されている。材料供給部20の下方には排出口が設けられており、当該排出口は、供給路22を介して可塑化部30に接続されている。本実施形態では、材料MRとして、ペレット状に形成されたABS樹脂が用いられる。
【0016】
可塑化部30は、材料供給部20から供給路22を介して供給された材料MRを可塑化して造形材料にして、吐出部60に供給する。可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、バレル50と、ヒーター58とを備えている。
【0017】
スクリューケース31は、フラットスクリュー40を収容する筐体である。スクリューケース31の下端部にはバレル50が固定されており、スクリューケース31とバレル50とによって囲まれた空間にフラットスクリュー40が収容されている。スクリューケース31の上面には、駆動モーター32が固定されている。
【0018】
フラットスクリュー40は、その中心軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。フラットスクリュー40は、中心軸RXがZ方向に平行になるようにスクリューケース31内に配置されている。フラットスクリュー40は、バレル50に対向する下端部に、溝部45が形成された溝形成面42を有している。フラットスクリュー40には、溝形成面42とは反対側の上端部に駆動モーター32が接続されている。フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させるトルクによって、スクリューケース31内にて中心軸RXを中心に回転する。駆動モーター32は、制御部500の制御下で駆動される。
【0019】
図3は、本実施形態におけるフラットスクリュー40の構成を示す斜視図である。
図3には、技術の理解を容易にするために、
図2とは上下逆向きにフラットスクリュー40が表されている。
図3には、フラットスクリュー40の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。
【0020】
フラットスクリュー40の溝形成面42のうちの中心軸RXと交差する中央部47は、溝部45の一端が接続されている窪みとして構成されている。中央部47は、
図2に表されたバレル50の貫通孔56に対向する。
【0021】
溝部45は、中央部47から、フラットスクリュー40の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。溝部45は、インボリュート曲線状に構成されてもよいし、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面42には、溝部45の側壁部を構成し、各溝部45に沿って延びている凸条部46が設けられている。溝部45は、フラットスクリュー40の側面43に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、材料供給部20の供給路22を介して供給された材料MRを受け入れる部分である。材料導入口44から溝部45内に導入された材料MRは、フラットスクリュー40の回転によって溝部45内を中央部47に向かって搬送される。
【0022】
図3には、3つの溝部45と、3つの凸条部46とを有するフラットスクリュー40が表されている。フラットスクリュー40に設けられる溝部45や凸条部46の数は、3つには限定されない。フラットスクリュー40には、1つの溝部45のみが設けられてもよいし、2以上の複数の溝部45が設けられてもよい。また、溝部45の数に合わせて任意の数の凸条部46が設けられてもよい。
図3には、材料導入口44が3箇所に形成されたフラットスクリュー40が表されている。フラットスクリュー40に設けられる材料導入口44の位置は、3箇所に限定されない。フラットスクリュー40には、材料導入口44が1箇所にのみ設けられてもよいし、2箇所以上の複数の位置に設けられてもよい。
【0023】
図4は、本実施形態におけるバレル50の構成を示す上面図である。バレル50は、フラットスクリュー40の溝形成面42に対向するスクリュー対向面52を有している。スクリュー対向面52の中央には、吐出部60に連通する貫通孔56が設けられている。スクリュー対向面52には、貫通孔56の周りに、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54の一端は、貫通孔56に接続されている。それぞれの案内溝54は、貫通孔56からスクリュー対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を貫通孔56に導く機能を有している。尚、スクリュー対向面52には、案内溝54が設けられていなくてもよい。
【0024】
図2に示すように、バレル50には、材料MRを加熱するためのヒーター58が埋め込まれている。本実施形態では、ヒーター58は、電力の供給を受けて発熱する。ヒーター58の温度は、制御部500によって制御される。尚、ヒーター58は、バレル50に埋め込まれるのではなく、例えば、バレル50の下方に配置されてもよい。
【0025】
溝部45内を搬送される材料MRは、フラットスクリュー40の回転によるせん断とヒーター58からの熱によって可塑化されて、ペースト状の造形材料になる。造形材料は、貫通孔56から吐出部60に供給される。
【0026】
吐出部60は、バレル50の下方に設けられている。吐出部60は、ノズル61と、流路65と、吐出量調節部70とを備えている。ノズル61の下端部には、ノズル孔62が設けられている。ノズル61は、可塑化部30から供給された造形材料を、ノズル孔62を介して-Z方向に向かって吐出する。本実施形態では、ノズル61には、円形の開口形状を有するノズル孔62が設けられている。ノズル孔62の直径のことをノズル径と呼ぶ。ノズル孔62の開口形状は、円形ではなく、例えば、楕円形や、四角形等の多角形でもよい。ノズル孔62は、流路65を介して、バレル50の貫通孔56に連通している。
【0027】
吐出量調節部70は、ノズル61から吐出される造形材料の量を調節する。以下の説明では、ノズル61から吐出される造形材料の量のことを吐出量と呼ぶ。本実施形態では、吐出量調節部70は、バタフライバルブによって構成されている。吐出量調節部70は、軸状部材である駆動シャフト72と、駆動シャフト72の回転に応じて流路65を開閉する弁体73と、駆動シャフト72を回転させるバルブ駆動部74とを備えている。
【0028】
駆動シャフト72は、造形材料の流れ方向に交差するように流路65の途中に取り付けられている。本実施形態では、駆動シャフト72は、流路65内の造形材料の流れ方向に対して垂直な向きであるY方向に平行になるように取り付けられている。駆動シャフト72は、Y方向に沿った中心軸を中心にして回転可能である。
【0029】
弁体73は、流路65内において回転する板状部材である。本実施形態では、弁体73は、駆動シャフト72の流路65内に配置されている部位を板状に加工することによって形成されている。弁体73を、その板面に垂直な方向から見たときの形状は、弁体73が配置されている部位における流路65の開口形状とほぼ一致する。
【0030】
バルブ駆動部74は、制御部500の制御下で駆動シャフト72を回転させる。バルブ駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。駆動シャフト72の回転によって弁体73が流路65内において回転する。
【0031】
流路65における造形材料の流れ方向に対して弁体73の板面が垂直に保持された場合、流路65からノズル61への造形材料の供給が遮断されるので、ノズル61からの造形材料の吐出が停止される。バルブ駆動部74によって駆動シャフト72が回転されて、流路65における造形材料の流れ方向に対して弁体73の板面が鋭角に保持されると、流路65からノズル61への造形材料の供給が開始されて、弁体73の回転角度に応じた吐出量で、造形材料がノズル61から吐出される。
図2に表されているように、流路65における造形材料の流れ方向に対して弁体73の板面が平行に保持された場合、流路65が最も開かれた状態になる。この状態では、吐出量が最大となる。このように、吐出量調節部70は、造形材料の吐出のON/OFFを切り替えるとともに、吐出量の調節を実現できる。
【0032】
ステージ300は、ノズル61に対向する造形面310を有している。造形面310の上に三次元造形物が造形される。本実施形態では、造形面310は、水平方向に平行に設けられている。ステージ300は、位置変更部400によって支持されている。
【0033】
位置変更部400は、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、位置変更部400は、ステージ300を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる。本実施形態における位置変更部400は、3つのモーターが発生させる動力によって、ステージ300をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成されている。各モーターは、制御部500の制御下で駆動される。尚、位置変更部400は、ステージ300を移動させずに造形部200を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させるように構成されてもよい。また、位置変更部400は、ステージ300と造形部200との両方を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させるように構成されてもよい。
【0034】
制御部500は、三次元造形装置120全体の動作を制御する制御装置である。制御部500は、1つ、または、複数のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。このコンピューターは、有線通信あるいは無線通信によってデータ記憶装置110と通信する通信機を備えている。本実施形態では、制御部500は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって種々の機能を発揮する。尚、制御部500は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0035】
図5は、本実施形態における制御部500の構成を示す説明図である。本実施形態では、制御部500は、形状データ取得部510と、データ生成部520と、データ送受信部530と、解析用モデル生成部541と、解析実行部542と、解析結果表示部543と、造形実行部550とを備えている。形状データ取得部510、データ生成部520、データ送受信部530、解析用モデル生成部541、解析実行部542、解析結果表示部543、および、造形実行部550は、制御部500のプロセッサーがプログラムを実行することによってソフトウェア的に実現されている。
【0036】
形状データ取得部510は、3次元CADデータや3次元CGデータ等の形状データを取得する。形状データ取得部510は、例えば、三次元造形装置120に接続されたコンピューターやUSBメモリー等の記録媒体から形状データを取得する。
【0037】
データ生成部520は、造形部200および位置変更部400を制御して三次元造形物を造形するための制御コマンドが表された造形用データを生成する。データ生成部520は、形状データ取得部510によって取得された形状データに表された形状に従って三次元造形物が造形されるように造形用データを生成する。
【0038】
本実施形態では、データ生成部520は、ステージ300に対する三次元造形物の向きや配置、および、積層ピッチに応じて、形状データに表された形状を複数の層に分割してスライスデータを生成する。積層ピッチとは、1層の厚みのことを意味する。
【0039】
また、データ生成部520は、スライスデータに表された各層を造形するためのノズル61の移動経路であるツールパスを決定して、ツールパスが表されたツールパスデータを生成する。データ生成部520は、吐出線幅に応じてツールパスを決定する。吐出線幅とは、ノズル61から吐出されてステージ300の上あるいは既に造形された層の上に線状の形態で堆積する造形材料の横断面の幅のことを意味する。
【0040】
さらに、データ生成部520は、積層ピッチや吐出線幅やツールパス以外の製造条件を決定する。製造条件には、積層ピッチや、吐出線幅や、ツールパスの他に、例えば、材料MRの種類や、三次元造形物を造形する際の造形室RMの温度である造形室温度や、材料MRを可塑化するためのヒーター58の温度である可塑化温度や、ツールパスに沿ってステージ300に対して相対移動するノズル61の移動速度や、ツールパスに沿ってステージ300に対して相対移動するノズル61から吐出される造形材料の吐出量等が含まれる。
【0041】
データ生成部520は、全ての製造条件が決定された後、製造条件が表された製造条件データを生成する。造形中の三次元造形物の形状の崩れを抑制するために、三次元造形物を支持するサポート材が用いられる場合には、製造条件には、サポート材の材料等が含まれる。
【0042】
データ送受信部530は、データ生成部520によって生成された造形用データ等の各種データをデータ記憶装置110に送信する機能と、データ記憶装置110から造形用データ等の各種データを受信する機能とを有している。
【0043】
解析用モデル生成部541は、三次元造形物の反り量や残留応力を予測するために実行されるCAE解析に用いられる解析用モデルを生成する。解析実行部542は、解析用モデルを読み込んで、有限要素法を用いたCAE解析を実行する。本実施形態では、解析実行部542は、CAE解析として、伝熱解析と構造解析とを組み合わせた伝熱・構造連成解析を実行する。解析実行部542は、CAE解析の結果が表された解析結果データを出力する。解析結果表示部543は、解析結果データを読み込んで、例えば、コンター図やアニメーションやグラフ等でCAE解析の結果を表示部123に表示させる。
【0044】
造形実行部550は、データ生成部520によって生成された造形用データ、あるいは、データ送受信部530によって取得された造形用データを読み込んで、三次元造形物を造形するための造形処理を実行する。
【0045】
図6は、形状データの一例を示す説明図である。
図6には、一例として、三次元造形物OBの形状が表されている。三次元造形物OBは、底面部BPと側面部SPとを有する箱状の外形形状を有している。
【0046】
図7は、スライスデータの一例を示す説明図である。
図7には、一例として、n個の層に分割された三次元造形物OBが表されている。nは任意の自然数である。各層のことをステージ300の造形面310に近い方から順に、第1層LY1、第2層LY2、第3層LY3と呼び、造形面310から最も遠い層のことを第n層LYnと呼ぶ。
【0047】
図8は、ツールパスデータの一例を示す説明図である。
図8には、一例として、三次元造形物OBの第n層LYnを造形するためのツールパスTPが一点鎖線で表されている。この例では、直線状の複数のツールパス要素が組み合わされたツールパスTPによって、一筆書きのようにして第n層LYnが造形される。
【0048】
図9は、解析結果データの一例を示す説明図である。
図9には、一例として、CAE解析によって予測された造形後の三次元造形物OBの形状について、
図6に示したIX-IX線断面における断面形状が表されている。この例では、三次元造形物OBには底面部BPに反りが生じている。
【0049】
図10は、造形用データの一例を示す説明図である。
図10には、一例として、三次元造形物OBを造形するための造形用データの一部が表されている。この例では、造形部200および位置変更部400を制御するための制御コマンドCOM1~COM4が表されている。制御コマンドCOM1には、ステージ300に対するノズル61の移動先の座標が表されている。制御コマンドCOM2には、吐出量調節部70の弁体73を全開にする指令が表されている。制御コマンドCOM3には、ステージ300に対するノズル61の移動先の座標と、ノズル61が移動先まで移動する間に、ノズル61から吐出する造形材料の吐出量とが表されている。制御コマンドCOM4には、造形処理を終了する指令が表されている。
【0050】
図11は、本実施形態における三次元造形処理の内容を示すフローチャートである。このフローチャートは、本実施形態における三次元造形システム100による三次元造形物の製造方法を表している。この処理は、所定の開始命令が供給された場合に、制御部500によって実行される。開始命令は、例えば、三次元造形装置120に設けられた操作パネル122の開始ボタンが押された場合に制御部500に供給される。
【0051】
まず、ステップS110にて、制御部500の形状データ取得部510は、形状データを取得する。形状データ取得部510は、三次元造形装置120に接続されたコンピューターや、USBメモリー等の記録媒体から形状データを取得する。形状データ取得部510によって取得された形状データのことを第1形状データと呼ぶ。第1形状データは、データ生成部520に送信される。尚、ステップS110の工程のことを第1工程と呼ぶことがある。
【0052】
次に、ステップS120にて、データ生成部520は、第1形状データに対応する形状データがデータ記憶装置110のデータベースDBに格納されているか否かを判定する。第1形状データに対応する形状データのことを第2形状データと呼ぶ。第1形状データに対応する形状データとは、第1形状データと同じ形状データだけでなく、第1形状データに表された形状と同じ形状を表し、かつ、第1形状データとはファイル形式が異なる形状データをも含む意味である。本実施形態では、データ生成部520は、第1形状データと同じ形状データを第2形状データとして扱う。データ生成部520は、データ送受信部530を介してデータベースDBにアクセスして、第2形状データがデータベースDBに格納されているか否かを照会し、データベースDBへの照会によって、第2形状データがデータベースDBから発見された場合には、第2形状データがデータベースDBに格納されていると判断する。尚、ステップS120の工程のことを第2工程と呼ぶことがある。
【0053】
ステップS120で第2形状データがデータベースDBに格納されていると判断された場合、換言すれば、第2形状データがデータベースDBから発見された場合、データ生成部520は、ステップS130にて、データ送受信部530を介して、第2形状データに紐付けられた造形用データをデータベースDBから取得する。第2形状データに紐付けられてデータベースDBに格納された造形用データのことを第2造形用データと呼ぶ。取得された第2造形用データは、造形実行部550に送信される。ステップS130の工程のことを第3工程と呼ぶことがある。
【0054】
ステップS120で第2形状データがデータベースDBに格納されていると判断されなかった場合、換言すれば、第2形状データがデータベースDBから発見されなかった場合、データ生成部520は、ステップS200にて、造形用データ生成処理を実行することによって第1形状データを用いて造形用データを生成する。第1形状データを用いて生成された造形用データのことを第1造形用データと呼ぶ。造形用データ生成処理の内容については後述する。生成された第1造形用データは、造形実行部550に送信される。ステップS140にて、データ生成部520は、データ送受信部530を介して、造形用データ生成処理によって生成された第1造形用データと第1形状データとを紐付けてデータベースDBに格納する。尚、ステップS200の工程のことを第3工程と呼ぶことがある。
【0055】
ステップS130またはステップS140の後、ステップS150にて、造形実行部550は、第1造形用データまたは第2造形用データを用いて三次元造形物を造形する。造形実行部550は、第1造形用データまたは第2造形用データに表された制御コマンドに従って造形部200および位置変更部400を制御することによって三次元造形物を造形する。その後、造形実行部550は、この処理を終了する。尚、ステップS140の処理は、ステップS150の処理の後に実行されてもよい。ステップS150の工程のことを第4工程と呼ぶことがある。
【0056】
図12は、本実施形態における造形用データ生成処理の内容を示すフローチャートである。造形用データ生成処理が開始されると、まず、ステップS210にて、データ生成部520は、
図11のステップS110で取得した第1形状データを読み込む。
【0057】
次に、ステップS220にて、データ生成部520は、第1形状データに表された三次元造形物の形状を複数の層に分割して、各層の形状を表すスライスデータを生成する。本実施形態では、データ生成部520は、ユーザーによって指定されたステージ300の造形面310に対する三次元造形物の位置や向きや積層ピッチに応じて第1形状データに表された三次元造形物の形状を複数の層に分割して、スライスデータを生成する。積層ピッチは、制御部500に予め記憶されたノズル径に応じて決定されてもよい。造形材料は冷えて硬化する際に収縮するので、データ生成部520は、造形材料の収縮率に応じて各層の寸法を増加させて、スライスデータを生成してもよい。造形材料の収縮率は材料ごとに異なるので、この場合、スライスデータの生成に先立って、例えば、ユーザーによって材料の種類が指定される。データ生成部520は、予め記憶された材料の種類と収縮率との関係が表されたテーブルを参照することによって収縮率を決定することができる。
【0058】
ステップS230にて、データ生成部520は、ツールパスを決定して、ツールパスが表されたツールパスデータを生成する。本実施形態では、データ生成部520は、スライスデータに表された各層の形状と、ユーザーによって指定された吐出線幅とに応じて各層を造形するためのツールパスを決定して、ツールパスデータを生成する。吐出線幅は、制御部500に記憶されたノズル径に応じて予め決定されてもよい。
【0059】
ステップS240にて、データ生成部520は、既に決定された積層ピッチやツールパスや吐出線幅等以外の三次元造形物の製造条件を決定して、製造条件が表された製造条件データを生成する。データ生成部520は、例えば、ユーザーによって指定された造形室温度や可塑化温度等に従って製造条件を決定する。製造条件データには、例えば、材料の種類や、ステージ300に対する三次元造形物の位置および向きや、積層ピッチや、吐出線幅や、ツールパスや、造形室温度や、可塑化温度や、ツールパスに沿って移動するノズル61の移動速度や、ツールパスに沿って移動するノズル61から吐出される造形材料の吐出量等が表される。
【0060】
ステップS250にて、解析用モデル生成部541は、三次元造形物の反り量や残留応力を予測するための解析用モデルを生成する。解析用モデル生成部541は、例えば、第1形状データやスライスデータやツールパスデータや製造条件データを用いて、解析用モデルを生成する。解析用モデル生成部541は、まず、ステージ300上に配置される三次元造形物の全体形状を模擬したメッシュを生成する。メッシュは、節点と要素とによって構成される。要素として、例えば、六面体形状を有するヘキサ要素等が用いられる。サポート材が用いられる場合には、三次元造形物の全体形状に加えて、ステージ300上に配置されるサポート材の形状を模擬したメッシュが含まれる。
【0061】
解析用モデル生成部541は、次に、メッシュに対して材料特性や境界条件等を設定して、解析用モデルを生成する。造形材料が弾性体としての性質を有する場合には、解析用モデルには線形性を有する材料特性が設定され、造形材料が粘弾性体あるいは弾塑性体としての性質を有する場合には、解析用モデルには非線形性を有する材料特性が設定される。
【0062】
解析用モデル生成部541は、さらに、造形中の三次元造形物内の熱分布の経時的な変化、および、造形中の三次元造形物内の応力分布や歪分布の経時的な変化を計算するために、各要素に対して、計算から除外するか否かを切り替えるフラグを設定する。フラグがオンにされた要素は計算に含まれ、フラグがオフにされた要素は計算から除外される。
【0063】
ステップS260にて、解析実行部542は、解析用モデルを読み込んで、CAE解析を実行する。本実施形態では、解析実行部542は、CAE解析として、伝熱・構造連成解析を実行する。解析実行部542は、ツールパスによって定められた順に三次元造形物が造形されていく際の、三次元造形物の熱分布の経時的な変化、応力分布の経時的な変化、および、歪分布の経時的な変化を計算する。解析実行部542は、各要素のフラグを順次オンに切り替えつつ計算を実行する。例えば、第1層の造形が終了した状態での三次元造形物の熱分布等の計算が終了したタイミングでは、第1層を模擬した要素のフラグがオンにされ、2層目以降を模擬した要素のフラグがオフにされている。全ての層の造形が終了した状態での三次元造形物内の熱分布等の計算が終了したタイミングでは、全ての要素のフラグがオンにされている。三次元造形物の温度が常温まで低下した状態の計算が終了した後、解析実行部542は、三次元造形物の各部の反り量や残留応力が表された解析結果データを出力する。
【0064】
ステップS270にて、データ生成部520は、製造条件を調整するか否かを判定する。本実施形態では、データ生成部520は、解析結果データに表された三次元造形物の反り量の最大値および残留応力の最大値がユーザーによって予め入力されたそれぞれの閾値を超えている場合に、製造条件を調整すると判断する。尚、データ生成部520は、解析結果表示部543を介してCAE解析の結果を表示部123に表示させて、製造条件を調整するか否かをユーザーに判断させてもよい。
【0065】
ステップS270で製造条件を調整すると判断された場合、データ生成部520は、ステップS275にて、反り量の最大値および残留応力の最大値がそれぞれの閾値以下になるように、第1形状データや製造条件データやスライスデータやツールパスデータを補正する。本実施形態では、データ生成部520は、
図9に二点鎖線で示すように、第1形状データに表された三次元造形物を、解析結果データに表された反りの向きとは逆向きに反らせた補正形状データを生成し、補正形状データを用いてスライスデータ、ツールパスデータおよび製造条件データを更新する。
【0066】
ステップS278にて、解析用モデル生成部541は、調整後の製造条件に従って解析用モデルを補正する。その後、解析実行部542は、処理をステップS260に戻して、補正後の解析用モデルを用いて伝熱・構造連成解析を実行する。ステップS270で製造条件を調整すると判断されなくなるまで、ステップS260からステップS278までの処理が繰り返される。
【0067】
ステップS270で製造条件を調整すると判断されなかった場合、データ生成部520は、ステップS280にて、ツールパスデータおよび製造条件データを用いて第1造形用データを生成する。その後、データ生成部520は、この処理を終了する。この処理によって生成された第1造形用データは、上述したとおり、
図11に示したステップS140にて、第1形状データとともにデータ記憶装置110のデータベースDBに格納される。
図11に示したステップS150にて、造形実行部550は、第1造形用データに従って三次元造形物を造形する。
【0068】
図13は、三次元造形装置120によって三次元造形物が造形される様子を模式的に示す説明図である。三次元造形装置120では、可塑化部30において、回転しているフラットスクリュー40の溝部45に供給された固体状態の材料MRが可塑化されて造形材料MMが生成される。造形実行部550は、ステージ300の造形面310とノズル61との間の距離を一定に保ったまま、造形面310に対するノズル61の位置を変化させながら、ノズル61から造形材料MMを吐出させる。ノズル61から吐出された造形材料MMは、ノズル61の移動するツールパスに沿って線状に堆積されていく。
【0069】
造形実行部550は、ノズル61からの造形材料MMの吐出を繰り返して層MLを形成する。造形実行部550は、1つの層MLを形成した後、造形面310に対するノズル61の位置を+Z方向に移動させる。そして、これまでに形成された層MLの上に、さらに層MLを積み重ねることによって三次元造形物を造形していく。三次元造形物が造形される間、造形室温度は一定の温度に保たれる。
【0070】
造形実行部550は、例えば、1つの層MLの形成を完了した後に造形面310に対してノズル61を+Z方向に移動させる場合や、1つの層を形成する際に不連続なツールパスがある場合には、ノズル61からの造形材料MMの吐出を一時的に中断させることがある。この場合、造形実行部550は、吐出量調節部70の弁体73によって流路65を閉塞させることによって、ノズル61からの造形材料MMの吐出を停止させる。造形実行部550は、ノズル61の位置を変更した後、吐出量調節部70の弁体73によって流路65を開放することによって、変更後のノズル61の位置から造形材料MMの堆積を再開させる。
【0071】
以上で説明した本実施形態における三次元造形システム100によれば、データ記憶装置110のデータベースDBには、複数の形状データと各形状データを用いて生成された複数の造形用データとが紐付けられて格納されているので、第1形状データに対応する形状データである第2形状データがデータベースDBから発見された場合には、三次元造形装置120の制御部500は、第1形状データから第1造形用データを生成せずに、第2形状データに紐付けられた第2造形用データをデータベースDBから取得し、第2造形用データを再利用して三次元造形物を造形できる。そのため、第1造形用データを生成するために多くの時間が費やされることを抑制できる。
【0072】
また、本実施形態では、制御部500は、第1形状データを用いて第1造形用データを生成した場合には、第1形状データと第1造形用データとをデータ記憶装置110に送信し、データ記憶装置110は、第1形状データと第1造形用データとを紐付けてデータベースDBに格納する。そのため、同じ形状の三次元造形物を複数回造形する場合に、2回目以降の造形の際には、1回目の造形の際に生成した第1造形用データを第2造形用データとして再利用することが可能になる。特に、本実施形態では、制御部500は、1回目の造形に先立って、CAE解析を実行することによって、三次元造形物の反り量の最大値や残留応力の最大値が閾値以下になるように製造条件を調整して第1造形用データを生成するので、三次元造形物を寸法精度良く造形できる。2回目以降の造形の際には、1回目の造形の際に用いられた第1造形用データを再利用して三次元造形物を造形するので、CAE解析を実行して製造条件を調整しなくても三次元造形物を寸法精度良く造形できる。
【0073】
B.第2実施形態:
図14は、第2実施形態における三次元造形処理の内容を示すフローチャートである。このフローチャートは、第2実施形態における三次元造形システム100bによる三次元造形物の製造方法を表している。第2実施形態では、三次元造形装置120の制御部500bは、データ記憶装置110のデータベースDBから第2造形用データを取得した場合に、製造条件を変更するか否かを判定し、製造条件を変更すると判断した場合には、データベースDBから取得した第2造形用データを補正することが第1実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0074】
図14に示した三次元造形処理が開始されると、まず、ステップS310にて、形状データ取得部510は、第1形状データを取得する。次に、ステップS320にて、データ生成部520は、第1形状データに対応する形状データである第2形状データがデータベースDBに格納されているか否かを判定する。本実施形態では、データ記憶装置110のデータベースDBには、造形用データ生成処理によって生成された補正形状データ、スライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、解析結果データ、造形用データ、および、造形用データを用いて三次元造形物を造形した際に温度計126によって取得された造形室温度を表す造形室温度データが、形状データに紐付けられて格納されている。尚、第2形状データに紐付けられた補正形状データ、スライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、解析結果データ、および、造形室温度データのことを関連データと呼ぶことがある。関連データは、第2造形用データに関連するデータである。第2形状データに紐付けられたこれらのデータのうち、第2形状データに紐付けられた造形用データである第2造形用データを生成するために用いられたデータのことを生成用データと呼ぶことがある。ステップS310の工程のことを第1工程と呼び、ステップS320の工程のことを第2工程と呼ぶことがある。
【0075】
ステップS320で第2形状データがデータベースDBに格納されていないと判断された場合、データ生成部520は、ステップS400にて、
図12に示した造形用データ生成処理を実行することによって、第1形状データを用いて第1造形用データを生成する。ステップS340にて、データ生成部520は、第1形状データを用いて生成された補正形状データ、スライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、解析結果データ、および、第1造形用データを第1形状データとともに、データ送受信部530を介してデータベースDBに送信する。尚、ステップS400の工程のことを第3工程と呼ぶことがある。
【0076】
ステップS320で第2形状データがデータベースDBに格納されていると判断された場合、データ生成部520は、ステップS330にて、データ送受信部530を介してデータベースDBから、第2形状データに紐付けられた補正形状データ、スライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、解析結果データ、第2造形用データ、および、造形室温度データを取得する。
【0077】
ステップS332にて、データ生成部520は、第2形状データを用いて第2造形用データを生成する際に決定された製造条件と、この処理によって造形される三次元造形物の製造条件とが異なるか否かを判定する。データ生成部520は、三次元造形物の造形に備えて昇温された造形室RMの温度を温度計126によって取得し、取得された温度と造形室温度データに表された温度との差の絶対値が所定値以上である場合に、第2形状データを用いて第2造形用データを生成する際に決定された製造条件と三次元造形物の製造条件とが異なると判断する。尚、他の実施形態では、データ生成部520は、製造条件を変更するか否かを選択させる選択画面を表示部123に表示させ、製造条件を変更する指示が操作パネル122を介して入力された場合に、データ生成部520は、第2形状データを用いて第2造形用データを生成する際に決定された製造条件と三次元造形物の製造条件とが異なると判断してもよい。
【0078】
ステップS332で第2形状データを用いて第2造形用データを生成する際に決定された製造条件と三次元造形物の製造条件とが異なると判断された場合、データ生成部520は、ステップS335にて、製造条件の変更内容に応じて、データベースDBから取得された第2造形用データ等を補正する。本実施形態では、データ生成部520は、まず、データベースDBから取得された補正形状データを補正する。補正形状データには、上述したとおり、CAE解析によって算出された反りとは逆向きに反らせた三次元造形物の形状が表されている。造形室温度データに表された温度よりも温度計126によって取得された温度の方が高い場合には、データ生成部520は、補正形状データに表された三次元造形物の逆向きの反り量が大きくなるように、逆向きの反り量に補正係数を乗じて補正形状データを補正する。一方、造形室温度データに表された温度よりも温度計126によって取得された温度の方が低い場合には、データ生成部520は、補正形状データに表された三次元造形物の逆向きの反り量が小さくなるように、逆向きの反り量に補正係数を乗じて補正形状データを補正する。データ生成部520は、造形室温度と補正係数との関係が表されたマップや関数を用いて補正形状データを補正できる。マップや関数は、予め行われる試験やCAE解析によって作成できる。その後、データ生成部520は、補正形状データの補正内容に応じて、データベースDBから取得されたスライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、および、第2造形用データを補正する。尚、データベースDBから取得されたスライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、および、第2造形用データを補正するとは、補正後の補正形状データを用いて、スライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、および、造形用データを生成することをも含む意味である。
【0079】
ステップS332で第2形状データを用いて第2造形用データを生成する際に決定された製造条件と三次元造形物の製造条件とが異なると判断されなかった場合、データ生成部520は、ステップS335の処理をスキップする。尚、ステップS330からステップS335までの工程のことを第3工程と呼ぶことがある。
【0080】
ステップS335あるいはステップS340の後、ステップS350にて、造形実行部550は、第1造形用データ、補正されていない第2造形用データ、あるいは、補正された第2造形用データを用いて三次元造形物を造形する。第1造形用データを用いて三次元造形物が造形された場合には、データ生成部520は、三次元造形物を造形する際に温度計126によって計測された温度を取得して造形室温度データを生成し、データ送受信部530を介してデータベースDBに送信する。データベースDBには、造形室温度データが第1形状データに紐付けられて格納される。その後、造形実行部550は、この処理を終了する。尚、ステップS350の工程のことを第4工程と呼ぶことがある。
【0081】
以上で説明した本実施形態における三次元造形システム100bによれば、データ生成部520は、第2形状データがデータベースDBに格納されており、かつ、第2形状データを用いて第2造形用データを生成する際に決定された製造条件と三次元造形物の製造条件とが異なると判断された場合には、データベースDBから取得された補正形状データを補正して、第2造形用データ等を補正する。そのため、第2形状データを用いて第2造形用データを生成する際に決定された製造条件と三次元造形物の製造条件とが異なる場合であっても、データベースDBから取得された補正形状データを再利用できる。特に、本実施形態では、データ生成部520は、解析実行部542によってCAE解析を実行せずに、データベースDBから取得した補正形状データを補正した後、補正形状データの補正内容に応じて、スライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、および、第2造形用データを補正する。そのため、変更後の製造条件で三次元造形物を造形するための第2造形用データ等を簡単に補正できる。
【0082】
C.第3実施形態:
図15は、第3実施形態における三次元造形システム100cの概略構成を示す説明図である。
図15では、三次元造形装置120については、制御部500cのみが図示されており、造形部200等の図示は省略されている。第3実施形態では、三次元造形システム100cが測定装置130を備えていること、および、測定装置130による三次元造形物の測定結果に応じてデータ生成部520がデータベースDBから取得された第2造形用データを補正することが第1実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0083】
測定装置130は、三次元造形装置120によって造形された三次元造形物の寸法を測定する。本実施形態では、測定装置130は、レーザー光等を用いて三次元造形物の形状を測定する非接触式の三次元デジタイザーによって構成されている。測定装置130は、プローブ等を用いて三次元造形物の形状を測定する接触式の三次元デジタイザーによって構成されてもよい。測定装置130は、三次元造形物の寸法を測定して、測定された三次元造形物の形状を表す3次元CADデータや3次元CGデータ等を生成する。以下の説明では、測定装置130によって生成される3次元CADデータや3次元CGデータのことを測定形状データと呼ぶ。
【0084】
本実施形態では、制御部500cは、
図5に示した形状データ取得部510やデータ生成部520等に加えて、測定装置130から測定形状データを取得する測定形状データ取得部560を有している。
【0085】
図16は、本実施形態における三次元造形処理の内容を示すフローチャートである。このフローチャートは、本実施形態における三次元造形システム100cによる三次元造形物の製造方法を表している。
図16に示した三次元造形処理が開示されると、まず、ステップS510にて、形状データ取得部510は、第1形状データを取得する。次に、ステップS520にて、データ生成部520は、第1形状データに対応する形状データである第2形状データがデータベースDBに格納されているか否かを判定する。本実施形態では、データ記憶装置110のデータベースDBには、造形用データ生成処理によって生成された補正形状データ、スライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、解析結果データ、造形用データ、および、測定形状データが、形状データに紐付けられて格納されている。尚、第2形状データに紐付けられた補正形状データ、スライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、解析結果データ、および、測定形状データのことを関連データと呼ぶことがある。第2形状データに紐付けられたこれらのデータのうち、第2形状データに紐付けられた造形用データである第2造形用データを生成するために用いられたデータのことを生成用データと呼ぶことがある。ステップS510の工程のことを第1工程と呼び、ステップS520の工程のことを第2工程と呼ぶことがある。
【0086】
ステップS520で第2形状データがデータベースDBに格納されていないと判断された場合、データ生成部520は、ステップS600にて、
図12に示した造形用データ生成処理を実行することによって、第1形状データを用いて第1造形用データを生成する。ステップS540にて、データ生成部520は、データ送受信部530を介して、第1形状データを用いて生成された補正形状データとスライスデータとツールパスデータと製造条件データと第1造形用データとを第1形状データとともにデータベースDBに送信する。尚、ステップS600の工程のことを第3工程と呼ぶことがある。
【0087】
ステップS520で第2形状データがデータベースDBに格納されていると判断された場合、データ生成部520は、ステップS530にて、データ送受信部530を介してデータベースDBから、第2形状データに紐付けられた補正形状データ、スライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、解析結果データ、第2造形用データ、および、測定形状データを取得する。
【0088】
ステップS532にて、データ生成部520は、第1形状データに表された三次元造形物の寸法とデータベースDBから取得された測定形状データに表された三次元造形物の寸法との差異の度合いが許容範囲を超えるか否かを判定する。本実施形態では、データ生成部520は、第1形状データに表された三次元造形物の寸法と測定形状データに表された三次元造形物の寸法とを用いて、測定形状データに表された反り量を算出し、反り量の絶対値が予め定められた閾値を超える場合に、第1形状データに表された三次元造形物の寸法と測定形状データに表された三次元造形物の寸法との差異の度合いが許容範囲を超えると判断する。
【0089】
ステップS532で第1形状データに表された三次元造形物の寸法と測定形状データに表された三次元造形物の寸法との差異の度合いが許容範囲を超えると判断された場合、データ生成部520は、ステップS535にて、データベースDBから取得された第2造形用データ等を補正する。本実施形態では、データ生成部520は、まず、データベースDBから取得された補正形状データを補正する。補正形状データには、上述したとおり、CAE解析によって算出された反りとは逆向きに反らせた三次元造形物の形状が表されている。補正形状データに表された反りの向きが測定形状データに表された反りの向きとは逆向きである場合には、データ生成部520は、補正形状データに表された三次元造形物の逆向きの反り量が大きくなるように、逆向きの反り量に補正係数を乗じて補正形状データを補正する。一方、補正形状データに表された反りの向きが測定形状データに表された反りの向きと同じ向きである場合には、データ生成部520は、補正形状データに表された三次元造形物の逆向きの反り量が小さくなるように、逆向きの反り量に補正係数を乗じて補正形状データを補正する。その後、データ生成部520は、補正形状データの補正内容に応じて、データベースDBから取得されたスライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、および、第2造形用データを補正する。データ生成部520は、データ送受信部530を介して、補正後の補正形状データ、スライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、および、第2造形用データを送信して、データベースDBに格納されたこれらのデータを更新する。
【0090】
ステップS532で第1形状データに表された三次元造形物の寸法と測定形状データに表された三次元造形物の寸法との差異の度合いが許容範囲を超えると判断されなかった場合、データ生成部520は、ステップS535の処理をスキップする。尚、ステップS530からステップS535までの工程のことを第3工程と呼ぶことがある。
【0091】
ステップS535あるいはステップS540の後、ステップS550にて、造形実行部550は、第1造形用データ、補正されていない第2造形用データ、あるいは、補正された第2造形用データを用いて三次元造形物を造形する。尚、ステップS550の工程のことを第4工程と呼ぶことがある。
【0092】
ステップS560にて、データ生成部520は、測定形状データ取得部560を介して、測定装置130によって測定された測定形状データを取得する。データ生成部520は、データ送受信部530を介して測定形状データをデータベースDBに送信する。第1造形用データを用いて三次元造形物が造形された場合には、データ生成部520は、測定形状データを第1形状データに紐付けてデータベースDBに格納する。補正されていない第2造形用データ、または、補正された第2造形用データを用いて三次元造形物が造形された場合には、データ生成部520は、データベースDBに格納された測定形状データを更新する。その後、造形実行部550は、この処理を終了する。尚、ステップS560の工程のことを第5工程と呼ぶことがある。
【0093】
以上で説明した本実施形態における三次元造形システム100cによれば、データ生成部520は、第1形状データに表された三次元造形物の寸法とデータベースDBから取得された測定形状データに表された三次元造形物の寸法との差異の度合いが許容範囲を超えると判断された場合には、データベースDBから取得された補正形状データを補正し、補正形状データの補正内容に応じて、スライスデータ、ツールパスデータ、製造条件データ、および、第2造形用データを補正して、データベースDBに格納されたこれらのデータを更新する。そのため、同じ形状データ用いて三次元造形物を複数回造形する場合、CAE解析によって予測された三次元造形物の反り量と造形された三次元造形物の反り量とに差異が生じたとしても、造形回数が増加するごとに、第1形状データに表された三次元造形物の寸法と測定形状データに表された三次元造形物の寸法との差異の度合いを小さくすることができる。
【0094】
D.第4実施形態:
図17は、第4実施形態における三次元造形システム100dの概略構成を示す説明図である。
図17では、三次元造形装置120については、制御部500dのみが図示されており、造形部200等の図示は省略されている。第4実施形態では、三次元造形システム100dが測定装置130を備えていること、および、三次元造形装置120の変調を予測する変調予測部570が三次元造形装置120の制御部500dに設けられていることが第1実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。測定装置130の構成は、第3実施形態と同じである。
【0095】
本実施形態では、制御部500dは、
図5に示した形状データ取得部510やデータ生成部520等に加えて、測定装置130から測定形状データを取得する測定形状データ取得部560と、上述した変調予測部570とを有している。
【0096】
変調予測部570は、三次元造形処理が実行される度に、第1形状データに表された三次元造形物の寸法と測定形状データに表された三次元造形物の寸法との差異の度合いを取得して時系列的に記憶する。変調予測部570は、上記差異の度合いの時系列的な変化の様子を機械学習によって学習する。機械学習のアルゴリズムは、教師あり学習でもよいし、教師なし学習でもよいし、強化学習でもよい。変調予測部570は、学習結果を用いて三次元造形装置120に変調が生じるタイミングを予測する。変調予測部570は、例えば、三次元造形装置120に変調が生じるタイミングまでの残りの造形回数を予測する。変調予測部570は、予測結果を表示部123に表示させる。尚、変調予測部570は、機械学習以外の方法で三次元造形装置120に変調が生じるタイミングを予測してもよい。例えば、変調予測部570は、前回造形時の差異の度合いと今の差が所定値を超えた場合に、次回造形時に三次元造形装置120に変調が生じると予測してもよい。
【0097】
図18は、本実施形態における三次元造形処理の内容を示すフローチャートである。このフローチャートは、本実施形態における三次元造形システム100dによる三次元造形物の製造方法を表している。
図18に示した三次元造形処理が開示されると、まず、ステップS710にて、形状データ取得部510は、第1形状データを取得する。次に、ステップS720にて、データ生成部520は、第1形状データに対応する形状データである第2形状データがデータベースDBに格納されているか否かを判定する。尚、ステップS710の工程のことを第1工程と呼び、ステップS720の工程のことを第2工程と呼ぶことがある。
【0098】
ステップS720で第2形状データがデータベースDBに格納されていると判断された場合、データ生成部520は、ステップS730にて、データ送受信部530を介してデータベースDBから第2造形用データを取得する。尚、ステップS730の工程のことを第3工程と呼ぶことがある。
【0099】
ステップS720で第2形状データがデータベースDBに格納されていないと判断された場合、データ生成部520は、ステップS800にて、
図12に示した造形用データ生成処理を実行することによって、第1形状データを用いて第1造形用データを生成する。ステップS740にて、データ生成部520は、データ送受信部530を介して、第1造形用データを第1形状データとともにデータベースDBに送信する。尚、ステップS800の工程のことを第3工程と呼ぶことがある。
【0100】
ステップS730あるいはステップS740の後、ステップS750にて、造形実行部550は、第1造形用データまたは第2造形用データを用いて三次元造形物を造形する。尚、ステップS750の工程のことを第4工程と呼ぶことがある。
【0101】
ステップS760にて、データ生成部520は、測定形状データ取得部560を介して、測定装置130によって測定された測定形状データを取得し、第1形状データに表された三次元造形物の寸法と測定形状データに表された三次元造形物の寸法との差異の度合いを算出する。尚、ステップS760の工程のことを第5工程と呼ぶことがある。
【0102】
ステップS770にて、変調予測部570は、データ生成部520から上記差異の度合いを取得して時系列的に記憶する。その後、造形実行部550は、この処理を終了する。
【0103】
以上で説明した本実施形態における三次元造形システム100dによれば、三次元造形装置120の部品の経年変化等に起因して三次元造形装置120に変調が生じるタイミングを変調予測部570によって予測できるので、三次元造形装置120の変調によって寸法精度の低い三次元造形物が造形されることを抑制できる。
【0104】
E.第5実施形態:
図19は、第5実施形態における三次元造形システム100eの概略構成を示す説明図である。第5実施形態では、三次元造形システム100eが1つのデータ記憶装置110と3つの三次元造形装置120A~120Cと3つの測定装置130A~130Cとを備えていることが第3実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、
図15に示した第3実施形態と同じである。
【0105】
各三次元造形装置120A~120Cおよび各測定装置130A~130Cは、例えば、3つの工場に分散して配置される。第1の工場には三次元造形装置120Aおよび測定装置130Aが配置され、第2の工場には三次元造形装置120Bおよび測定装置130Bが配置され、第3の工場には三次元造形装置120Cおよび測定装置130Cが配置される。全ての三次元造形装置120A~120Cおよび測定装置130A~130Cが同じ工場内に配置されてもよい。三次元造形装置120の数は、3つに限られず、2つでもよいし、4つ以上でもよい。測定装置130の数は、3つに限られず、2つでもよいし、4つ以上でもよい。三次元造形装置120の数と測定装置130の数とが異なってもよい。三次元造形装置120が配置された場所に、少なくとも1つの測定装置130が配置されていればよい。
【0106】
本実施形態では、各三次元造形装置120A~120Cの構成は、第3実施形態の三次元造形装置120と同じである。各測定装置130A~130Cの構成は、第3実施形態の測定装置130と同じである。尚、各三次元造形装置120A~120Cの制御部500cは、解析用モデル生成部541、解析実行部542、および、解析結果表示部543を有していなくてもよい。この場合、解析用モデル生成部541、解析実行部542、および、解析結果表示部543は、例えば、データ記憶装置110に設けられ、データ記憶装置110上でCAE解析が実行されてもよい。
【0107】
本実施形態では、各三次元造形装置120A~120Cの制御部500cは、
図16に示した三次元造形処理を実行する。例えば、三次元造形装置120Aによって生成された造形用データを、データベースDBを介して他の三次元造形装置120B,120Cで用いることができる。
【0108】
以上で説明した本実施形態における三次元造形システム100eによれば、データベースDBに格納された造形用データを複数の三次元造形装置で再利用できるので、複数の三次元造形装置120A~120Cによって、同じ形状の三次元造形物を一度に複数個造形できる。
【0109】
F.他の実施形態:
(F1)上述した第1実施形態の三次元造形システム100、および、第2実施形態の三次元造形システム100bでは、データ生成部520は、三次元造形処理において、第1形状データを用いて生成した第1造形用データをデータ記憶装置110に送信する。これに対して、データ生成部520は、第1造形用データをデータ記憶装置110に送信しなくてもよい。この場合であっても、データ記憶装置110のデータベースDBに格納されている形状データと同じ形状データが形状データ取得部510によって取得された場合には、データベースDBに格納された造形用データを再利用できる。
【0110】
(F2)上述した第5実施形態の三次元造形システム100eでは、三次元造形装置120A~120Cは、第3実施形態の三次元造形装置120と同じ構成を有しており、第3実施形態の三次元造形処理と同じ三次元造形処理を実行する。これに対して、三次元造形装置120A~120Cは、第1実施形態の三次元造形処理と同じ構成を有し、第1実施形態の三次元造形処理と同じ三次元造形処理を実行してもよいし、第2実施形態の三次元造形処理と同じ構成を有し、第2実施形態の三次元造形処理と同じ三次元造形処理を実行してもよいし、三次元造形装置120A~120Cは、第4実施形態の三次元造形処理と同じ構成を有し、第4実施形態の三次元造形処理と同じ三次元造形処理を実行してもよい。
【0111】
(F3)上述した各実施形態の三次元造形システム100~100eの三次元造形装置120では、造形室ヒーター125によって昇温された造形室RMで三次元造形物が造形される。これに対して、造形室RMが常温の状態で三次元造形物が造形されてもよい。つまり、三次元造形装置120に、開閉扉124や造形室ヒーター125が設けられていなくてもよい。
【0112】
(F4)上述した各実施形態の三次元造形システム100~100eでは、三次元造形装置120は、フラットスクリュー40の回転とヒーター58による加熱によって材料MRを溶融させて造形材料MMを生成し、ノズル61から造形材料を吐出することによって、ステージ300上に造形材料を積層して三次元造形物を造形する。これに対して、三次元造形装置120は、熱可塑性樹脂等のフィラメントを溶融させて押し出す熱溶解積層方式でもよいし、液状の光硬化樹脂に光を照射して硬化させる光造形方式でもよいし、溶融した熱可塑性樹脂等を噴射して積層するインクジェット方式でもよいし、粉末状の熱可塑性樹脂や石膏等に液状のバインダーを噴射するバインダージェット方式でもよいし、粉末状の熱可塑性樹脂や合金等をレーザーや放電で溶かして焼結させる粉末焼結積層造形方式でもよい。
【0113】
(F5)上述した各実施形態の三次元造形システム100~100eでは、ペレット状のABS樹脂が材料MRとして用いられたが、造形部200において用いられる材料MRとしては、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として三次元造形物を造形する材料を採用することもできる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0114】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、可塑化部30において、当該材料が可塑化することによって造形材料が生成される。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。また、「溶融」とは、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。
【0115】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記のいずれか一つまたは2以上を組み合わせた熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのエンジニアリングプラスチック。
【0116】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部30において、フラットスクリュー40の回転とヒーター58の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。また、そのように生成された造形材料は、ノズル61から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0117】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル61から吐出されることが望ましい。尚、「完全に溶融した状態」とは、未溶融の熱可塑性を有する材料が存在しない状態を意味し、例えばペレット状の熱可塑性樹脂を材料に用いた場合、ペレット状の固形物が残存しない状態のことを意味する。
【0118】
造形部200では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、可塑化部30に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金。
<合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
【0119】
造形部200においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、ステージ300に配置された造形材料は、例えばレーザーの照射や温風などによる焼結によって硬化されてもよい。
【0120】
材料供給部20に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部30において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0121】
材料供給部20に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等。
【0122】
その他に、材料供給部20に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)或いはその他の熱可塑性樹脂。
【0123】
G.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0124】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形物を造形するための三次元造形用データの生成方法が提供される。この三次元造形用データの生成方法は、前記三次元造形物の形状を表す第1形状データを取得する第1工程と、物体の形状を表す複数の形状データと前記複数の形状データを用いて生成された複数の造形用データとを紐付けて格納するデータベースにアクセスして、前記第1形状データに対応する前記形状データである第2形状データが前記データベースに格納されているか否かを照会する第2工程と、前記第2工程における照会結果に応じて前記三次元造形物を造形するための三次元造形用データを取得または生成する第3工程と、を有する。前記第3工程では、前記第2形状データが前記データベースに格納されている場合、前記第2形状データに紐付けられた前記造形用データである第2造形用データを前記三次元造形用データとして前記データベースから取得し、または、前記第2造形用データに関連する関連データを用いて前記三次元造形用データを生成し、前記第2形状データが前記データベースに格納されていない場合、前記三次元造形用データとして、前記第1形状データを用いて第1造形用データを生成する。
この形態の三次元造形用データの生成方法によれば、第2形状データがデータベースに格納されている場合には、第1形状データに表された三次元造形物を造形するための三次元造形用データとして、第2形状データに紐付けられた第2造形用データをデータベースから取得して再利用できる。そのため、三次元造形用データを生成するために多くの時間が費やされることを抑制できる。
【0125】
(2)上記形態の三次元造形用データの生成方法において、前記第2形状データが前記データベースに格納されていない場合、前記第1造形用データを前記第1形状データに紐付けて前記データベースに格納してもよい。
この形態の三次元造形用データの生成方法によれば、第1形状データに表された三次元造形物を再び造形する際にデータベースに格納された第1造形用データを再利用可能にできる。
【0126】
(3)上記形態の三次元造形用データの生成方法において、前記第2形状データを用いて前記第2造形用データを生成するための生成用データであって、前記関連データである生成用データが前記第2形状データに紐付けられて前記データベースに格納されており、かつ、前記第2形状データを用いて前記第2造形用データを生成する際に決定される製造条件と前記三次元造形物の製造条件とが異なる場合、前記第3工程において、前記生成用データを前記データベースから取得し、製造条件の変更内容に応じて前記生成用データを補正し、補正後の前記生成用データを用いて前記三次元造形用データを生成してもよい。
この形態の三次元造形用データの生成方法によれば、第2形状データを用いて第2造形用データを生成する際に決定される製造条件と三次元造形物の製造条件とが異なる場合であっても、データベースから取得された生成用データを再利用できる。
【0127】
(4)上記形態の三次元造形用データの生成方法において、前記生成用データには、前記第2形状データを補正した補正形状データが含まれており、前記生成用データが前記第2形状データに紐付けられて前記データベースに格納されており、かつ、前記第2形状データを用いて前記第2造形用データを生成する際に決定される製造条件と前記三次元造形物の製造条件とが異なる場合、前記第3工程において、前記補正形状データを前記データベースから取得し、製造条件の変更内容に応じて前記補正形状データを補正し、補正後の前記補正形状データを用いて前記三次元造形用データを生成してもよい。
この形態の三次元造形用データの生成方法によれば、第2形状データを用いて第2造形用データを生成する際に決定される製造条件と三次元造形物の製造条件とが異なる場合であっても、三次元造形物を造形するための三次元造形用データを簡単に生成できる。
【0128】
(5)上記形態の三次元造形用データの生成方法において、前記生成用データには、前記第2形状データに表された形状が複数の層に分割された形状を表すスライスデータが含まれており、前記スライスデータが前記第2形状データに紐付けられて前記データベースに格納されており、かつ、前記第2形状データを用いて前記第2造形用データを生成する際に決定される製造条件と前記三次元造形物の製造条件とが同じである場合には、前記第3工程において、前記スライスデータを前記データベースから取得し、前記スライスデータを用いて前記三次元造形用データを生成してもよい。
この形態の三次元造形用データの生成方法によれば、データベースから取得したスライスデータを再利用して、第1形状データに表された三次元造形物を造形するための三次元造形用データを生成できる。
【0129】
(6)上記形態の三次元造形用データの生成方法において、前記データベースは、複数の三次元造形装置からアクセスされてもよい。
この形態の三次元造形用データの生成方法によれば、データベースに格納された形状データや造形用データを複数の三次元造形装置で用いることができる。
【0130】
(7)本開示の第2の形態によれば、三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、前記三次元造形物の形状を表す第1形状データを取得する第1工程と、物体の形状を表す複数の形状データと前記複数の形状データを用いて生成された複数の造形用データとを紐付けて格納するデータベースにアクセスして、前記第1形状データに対応する前記形状データである第2形状データが前記データベースに格納されているか否かを照会する第2工程と、前記第2工程における照会結果に応じて前記三次元造形物を造形するための三次元造形用データを取得または生成する第3工程と、前記三次元造形用データを用いて前記三次元造形物を造形する第4工程と、を有する。前記第3工程では、前記第2形状データが前記データベースに格納されている場合、前記第2形状データに紐付けられた前記造形用データである第2造形用データを前記三次元造形用データとして前記データベースから取得し、または、前記第2造形用データに関連する関連データを用いて前記三次元造形用データを生成し、前記第2形状データが前記データベースに格納されていない場合、前記三次元造形用データとして、前記第1形状データを用いて第1造形用データを生成する。
この形態の三次元造形物の製造方法によれば、第2形状データがデータベースに格納されている場合には、第1形状データに表された三次元造形物を造形するための三次元造形用データとして、第2形状データに紐付けられた第2造形用データをデータベースから取得して再利用できる。そのため、三次元造形用データを生成するために多くの時間が費やされることを抑制できる。
【0131】
(8)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記データベースには、前記第2造形用データと、前記第2形状データを用いて前記第2造形用データを生成するための生成用データであって、前記関連データである生成用データとが前記第2形状データに紐付けられて格納されており、前記第4工程において造形された前記三次元造形物の形状と前記第1形状データに表された前記三次元造形物の形状との差異の度合いを取得する第5工程を有し、前記差異の度合いが許容範囲を超える場合には、前記データベースに格納された前記生成用データおよび前記第2造形用データを更新してもよい。
この形態の三次元造形物の製造方法によれば、第1形状データに表された三次元造形物を再び造形する際に、第1形状データに表された三次元造形物の形状と造形される三次元造形物の形状との差異の度合いを小さくできる。
【0132】
(9)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第4工程において造形された前記三次元造形物の形状と前記第1形状データに表された前記三次元造形物の形状との差異の度合いを取得する第5工程を有し、1つの三次元造形装置を用いて前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程、前記第4工程、前記第5工程を複数回実行し、前記差異の度合いの時系列的な変化を用いて前記三次元造形装置に変調が生じるタイミングを予測してもよい。
この形態の三次元造形物の製造方法によれば、三次元造形装置に変調が生じるタイミングを予測できるので、三次元造形装置の変調によって寸法精度の低い三次元造形物が造形されることを抑制できる。
【0133】
本開示は、三次元造形用データの生成方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、三次元造形物の製造方法、三次元造形装置、三次元造形システム等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0134】
20…材料供給部、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、50…バレル、58…ヒーター、60…吐出部、61…ノズル、70…吐出量調節部、100…三次元造形システム、110…データ記憶装置、120…三次元造形装置、121…筐体、122…操作パネル、123…表示部、124…開閉扉、125…造形室ヒーター、126…温度計、130…測定装置、200…造形部、300…ステージ、400…位置変更部、500…制御部、510…形状データ取得部、520…データ生成部、530…データ送受信部、541…解析用モデル生成部、542…解析実行部、543…解析結果表示部、550…造形実行部、560…測定形状データ取得部、570…変調予測部