(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】表示制御装置及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4069 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G05B19/4069
(21)【出願番号】P 2020165703
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】滝本 広樹
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-035911(JP,A)
【文献】特開平06-210543(JP,A)
【文献】特開2010-250643(JP,A)
【文献】特開平04-010003(JP,A)
【文献】特開昭60-031611(JP,A)
【文献】特開2000-182058(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0222817(US,A1)
【文献】国際公開第2020/121382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
B23Q 15/00-15/28
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械が工具により被削材を加工する為に前記被削材に対して前記工具を相対移動する時の軌跡を表示部に表示する表示制御装置において、
前記工作機械は、
前記被削材に対して前記工具を相対的に移動可能であり、且つ、前記工具に対して前記被削材を、所定の回転軸を中心として相対的に回転可能であり、
前記被削材又は前記工具の位置を示した座標データと、前記所定の回転軸の角度を示した角度データとを取得する第一取得部と、
前記第一取得部が取得した前記座標データを、前記角度データに基づいて座標変換することにより、前記表示部に前記軌跡を表示する為の描画データを作成する作成部と、
前記表示部に表示した前記軌跡を使用者が視る時の視線方向を示す視線データに基づき、前記作成部が作成した前記描画データを投影変換し、前記軌跡として前記表示部に表示する表示制御部と、
前記視線データを取得する第二取得部と、
前記第一取得部により今回取得した前記角度データである今回角度データと、前記第一取得部により前回取得した前記角度データである前回角度データとが相違する場合、前記第二取得部が取得した前記視線データを、前記今回角度データ及び前記前回角度データの差分に基づいて座標変換する変換部と、
を備え
、
前記表示制御部は、
前記変換部が変換した前記視線データに基づき、前記作成部が作成した前記描画データを投影変換することを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、
前記被削材を示す被削材画像を更に前記表示部に表示し、
前記差分に応じ、前記表示部に表示した前記被削材画像を回転する
ことを特徴とする請求項
1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記視線方向を変更する指示を受け付ける受付部を備え、
前記表示制御部は、
前記受付部が受け付けた前記指示に応じて変更した前記視線方向を示す前記視線データに基づき、前記作成部が作成した前記描画データを投影変換して前記軌跡として前記表示部に表示する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記座標データと前記角度データを含む指令を複数有するプログラムを記憶する記憶部を備え、
前記工作機械は、
前記記憶部に記憶した前記プログラムに基づき、前記被削材に対して前記工具を相対的に移動し、且つ、前記工具に対して前記被削材を、前記所定の回転軸を中心として相対的に回転し、
前記第一取得部は、
前記記憶部に記憶した前記プログラムの前記指令に基づき、前記座標データと前記角度データとを取得することを特徴とする請求項1から
3の何れかに記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記指令は、前記工作機械が連続して実行する第一指令及び第二指令を含み、
前記作成部は、
前記第一指令の前記座標データである第一座標データと、前記第二指令の前記座標データである第二座標データの間の複数の座標データを、前記角度データに基づいて座標変換することにより、前記描画データを作成することを特徴とする請求項
4に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記所定の回転軸は、第一回転軸及び第二回転軸を含み、
前記工作機械は、
前記被削材に対して前記工具を相対的に移動可能であり、且つ、前記工具に対して前記被削材を、前記第一回転軸と前記第二回転軸との夫々を中心として相対的に回転可能であり、
前記第一取得部は、
前記座標データと、前記第一回転軸の角度を示した前記角度データである第一角度データと、前記第二回転軸の角度を示した前記角度データである第二角度データとを取得し、
前記作成部は、
前記第一取得部が取得した前記座標データを、前記第一角度データ及び前記第二角度データに基づいて座標変換することにより、前記描画データを作成する
ことを特徴とする請求項1から
5の何れかに記載の表示制御装置。
【請求項7】
工作機械が工具により被削材を加工する為に前記被削材に対して前記工具を相対移動する時の軌跡を表示部に表示する表示制御方法であって、
前記工作機械は、
前記被削材に対して前記工具を相対的に移動可能であり、且つ、前記工具に対して前記被削材を、所定の回転軸を中心として相対的に回転可能であり、
前記被削材又は前記工具の位置を示した座標データと、前記所定の回転軸の角度を示した角度データとを取得する第一取得工程と、
前記第一取得工程が取得した前記座標データを、前記角度データに基づいて座標変換することにより、前記表示部に前記軌跡を表示する為の描画データを作成する作成工程と、
前記表示部に表示した前記軌跡を使用者が視る時の視線方向を示す視線データに基づき、前記作成工程が作成した前記描画データを投影変換し、前記軌跡として前記表示部に表示する表示制御工程と、
前記視線データを取得する第二取得工程と、
前記第一取得工程により今回取得した前記角度データである今回角度データと、前記第一取得工程により前回取得した前記角度データである前回角度データとが相違する場合、前記第二取得工程が取得した前記視線データを、前記今回角度データ及び前記前回角度データの差分に基づいて座標変換する変換工程と、
を備え
、
前記表示制御工程は、
前記変換工程が変換した前記視線データに基づき、前記作成工程が作成した前記描画データを投影変換することを特徴とする表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置及び表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被削材を加工する工具の軌跡を表示する機器が公知である。特許文献1に記載の検査システムは、被加工物品を搭載する回転テーブルの回転角度毎に工具の軌跡が重なることを防止する為、回転角度に所定の範囲を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記検査システムは、回転テーブルの回転角度が所定の範囲である時の工具の軌跡を表示する為、回転テーブルの回転角度が所定の範囲を超えた時、工具の軌跡を表示できない時がある。
【0005】
本発明の目的は、被削材に対して加工を行う工具の軌跡を、工具に対して被削材が相対的に回転しても適切に表示できる表示制御装置及び表示制御方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様に係る表示制御装置は、工作機械が工具により被削材を加工する為に前記被削材に対して前記工具を相対移動する時の軌跡を表示部に表示する表示制御装置において、前記工作機械は、前記被削材に対して前記工具を相対的に移動可能であり、且つ、前記工具に対して前記被削材を、所定の回転軸を中心として相対的に回転可能であり、前記被削材又は前記工具の位置を示した座標データと、前記所定の回転軸の角度を示した角度データとを取得する第一取得部と、前記第一取得部が取得した前記座標データを、前記角度データに基づいて座標変換することにより、前記表示部に前記軌跡を表示する為の描画データを作成する作成部と、前記表示部に表示した前記軌跡を使用者が視る時の視線方向を示す視線データに基づき、前記作成部が作成した前記描画データを投影変換し、前記軌跡として前記表示部に表示する表示制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
表示制御装置は、角度データに基づいて座標データを座標変換することにより、描画データを作成する。この場合、工具に対して被削材が回転軸を中心として相対的に回転する場合でも、表示部に表示する工具の軌跡が重ならないようにできる。従って、表示制御装置は、被削材に対して加工を行う工具の軌跡を、工具に対して被削材が回転軸を中心として相対的に回転する場合でも適切に表示できる。
【0008】
第一態様において、前記視線データを取得する第二取得部と、前記第一取得部により今回取得した前記角度データである今回角度データと、前記第一取得部により前回取得した前記角度データである前回角度データとが相違する場合、前記第二取得部が取得した前記視線データを、前記今回角度データ及び前記前回角度データの差分に基づいて座標変換する変換部とを備え、前記表示制御部は、前記変換部が変換した前記視線データに基づき、前記作成部が作成した前記描画データを投影変換してもよい。表示制御装置は、回転軸を中心とした角度データを更新した場合、工具の軌跡を視る時の視線方向を更新し、更新後の視線方向に基づいて工具の軌跡を表示部に表示できる。この場合、表示制御装置は、回転軸を中心とした回転に応じ、視線方向を変更しながら軌跡を表示できる。
【0009】
第一態様において、前記表示制御部は、前記被削材を示す被削材画像を更に前記表示部に表示し、前記差分に応じ、前記表示部に表示した前記被削材画像を回転してもよい。表示制御装置は、表示部に新たに表示する工具の軌跡の位置を、角度データが変化した時も保持できる。
【0010】
第一態様において、前記表示制御部は、前記被削材を示す被削材画像を更に前記表示部に表示し、前記第一取得部により今回取得した前記角度データである今回角度データと、前記第一取得部により前回取得した前記角度データである前回角度データとの差分に依らず、前記表示部に表示した前記被削材画像の位置を保持してもよい。表示制御装置は、表示部に表示する被削材画像の位置を、角度データが変化した時も保持できる。
【0011】
第一態様において、前記視線方向を変更する指示を受け付ける受付部を備え、前記表示制御部は、前記受付部が受け付けた前記指示に応じて変更した前記視線方向を示す前記視線データに基づき、前記作成部が作成した前記描画データを投影変換して前記軌跡として前記表示部に表示してもよい。表示制御装置は、使用者が所望する視線方向から視た軌跡を表示部に表示できる。
【0012】
第一態様において、前記座標データと前記角度データを含む指令を複数有するプログラムを記憶する記憶部を備え、前記工作機械は、前記記憶部に記憶した前記プログラムに基づき、前記被削材に対して前記工具を相対的に移動し、且つ、前記工具に対して前記被削材を、前記所定の回転軸を中心として相対的に回転し、前記第一取得部は、前記記憶部に記憶した前記プログラムの前記指令に基づき、前記座標データと前記角度データとを取得してもよい。表示制御装置は、工作機械を動作する為のプログラムに基づき、工作機械の工具の軌跡を表示部に表示できる。
【0013】
第一態様において、前記指令は、前記工作機械が連続して実行する第一指令及び第二指令を含み、前記作成部は、前記第一指令の前記座標データである第一座標データと、前記第二指令の前記座標データである第二座標データの間の複数の座標データを、前記角度データに基づいて座標変換することにより、前記描画データを作成してもよい。表示制御装置は、第一座標データが示す位置と第二座標データが示す位置との間で移動する工具の軌跡を、複数の座標データに基づいて正確に描画できる。
【0014】
第一態様において、前記所定の回転軸は、第一回転軸及び第二回転軸を含み、前記工作機械は、前記被削材に対して前記工具を相対的に移動可能であり、且つ、前記工具に対して前記被削材を、前記第一回転軸と前記第二回転軸との夫々を中心として相対的に回転可能であり、前記第一取得部は、前記座標データと、前記第一回転軸の角度を示した前記角度データである第一角度データと、前記第二回転軸の角度を示した前記角度データである第二角度データとを取得し、前記作成部は、前記第一取得部が取得した前記座標データを、前記第一角度データ及び前記第二角度データに基づいて座標変換することにより、前記描画データを作成してもよい。表示制御装置は、工具に対して被削材が第一回転軸と第二回転軸とを中心として相対的に回転する場合でも、被削材に対して加工を行う工具の軌跡を、適切に表示できる。
【0015】
本発明の第二態様に係る表示制御方法は、工作機械が工具により被削材を加工する為に前記被削材に対して前記工具を相対移動する時の軌跡を表示部に表示する表示制御方法であって、前記工作機械は、前記被削材に対して前記工具を相対的に移動可能であり、且つ、前記工具に対して前記被削材を、所定の回転軸を中心として相対的に回転可能であり、前記被削材又は前記工具の位置を示した座標データと、前記所定の回転軸の角度を示した角度データとを取得する第一取得工程と、前記第一取得工程が取得した前記座標データを、前記角度データに基づいて座標変換することにより、前記表示部に前記軌跡を表示する為の描画データを作成する作成工程と、前記表示部に表示した前記軌跡を使用者が視る時の視線方向を示す視線データに基づき、前記作成工程が作成した前記描画データを投影変換し、前記軌跡として前記表示部に表示する表示制御工程と、を備えたことを特徴とする。第二態様によれば、第一態様と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】数値制御装置40と工作機械1の電気的構成を示す電気ブロック図。
【
図6】第一の方法により表示部19に表示した移動軌跡81~85を示す図。
【
図7】第二の方法により表示部19に表示した移動軌跡81~85を示す図。
【
図12】視線ベクトル91、93、及び表示スケール96の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を、図面を参照し説明する。以下説明は、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。工作機械1の左右方向、前後方向、上下方向は夫々、工作機械1のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。右方向、前方向、上方向は夫々、正方向であり、左方向、後方向、下方向は夫々、負方向である。
図1に示す工作機械1は、工具により被削材(図示略)の切削加工と旋削加工ができる複合機である。
【0018】
<工作機械1の構造>
図1を参照し、工作機械1の構造を説明する。工作機械1は基台2、Y軸移動機構(図示略)、X軸移動機構(図示略)、Z軸移動機構(図示略)、移動体15、立柱5、主軸ヘッド6、主軸(図示略)、被削材支持装置8、工具交換装置9、制御箱(図示略)、数値制御装置40(
図3参照)等を備える。基台2は架台11、主軸基台12、右側基台13、左側基台14等を備える。架台11は前後方向に長い略直方体状の構造体である。主軸基台12は前後方向に長い略直方体状に形成し、架台11上面後方に設ける。右側基台13は架台11上面右前方に設ける。左側基台14は架台11上面左前方に設ける。右側基台13と左側基台14は夫々、上面に被削材支持装置8を支持する。
【0019】
Y軸移動機構は主軸基台12上面に設け、Y軸モータ62(
図3参照)等を備える。Y軸移動機構はY軸モータ62の駆動により、略平板状の移動体15をY軸方向に移動する。X軸移動機構は移動体15上面に設け、X軸モータ61(
図3参照)等を備える。X軸移動機構はX軸モータ61の駆動により、立柱5をX軸方向に移動する。立柱5は、Y軸移動機構、移動体15、X軸移動機構により、基台2上をX軸方向とY軸方向に移動可能である。Z軸移動機構は立柱5前面に設け、Z軸モータ63(
図3参照)等を備える。Z軸移動機構はZ軸モータ63の駆動により、主軸ヘッド6をZ軸方向に移動する。主軸(図示略)は主軸ヘッド6内部に設け、主軸下部に工具装着穴(図示略)を備える。工具装着穴は工具を装着する。故に、X軸移動機構、Y軸移動機構、Z軸移動機構は夫々、主軸に装着した工具を被削材に対して相対的に、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動できる。以下、X軸移動機構、Y軸移動機構、Z軸移動機構により被削材に対して工具を、X軸、Y軸、Z軸の各方向に相対移動することを、「被削材に対して工具をX軸、Y軸、Z軸の各方向に移動する」と言い換える。主軸は主軸ヘッド6上部に設けた主軸モータ66(
図3参照)で回転する。該時、主軸に設けた工具は、被削体に対して回転する。
【0020】
工具交換装置9は立柱5と主軸ヘッド6周囲を取り巻く略円環状である。工具交換装置9は主軸ヘッド6を昇降する間に、主軸に現在装着する工具を交換する。制御箱は工作機械1を覆うカバー(図示略)の外壁に取り付ける。数値制御装置40(
図3参照)は制御箱の内側に格納する。数値制御装置40はNCプログラムに基づき工作機械1の動作を制御する。工作機械1を覆うカバーは外壁面に操作盤10(
図3参照)を備える。操作盤10は操作部18と表示部19を備える。操作部18は数値制御装置40の各種設定を行う。表示部19は各種画面、メッセージ、アラーム、被削材に対して工具を移動する時の軌跡等を表示する。
【0021】
被削材支持装置8は右側基台13と左側基台14の上面に固定する。
図2に示すように、被削材支持装置8はA軸台20、左側支持台27、駆動機構部28、C軸台29、C軸駆動部30等を備える。A軸台20は台部21、右連結部22、左連結部23を備える。台部21は、A軸台20の傾斜角度が0度で上面が水平面となる平面視略長方形状の板状部である。右連結部22は台部21の右端部から右斜め上方に延び且つ駆動機構部28と回動可能に連結する。左連結部23は台部21の左端部から左斜め上方に延び且つ後述する左側支持台27と回動可能に連結する。左連結部23はその左端面から左方に突出する略円柱状の支軸31を有する。左側支持台27は支軸31を回転可能に支持する。左側支持台27の底部は、左側基台14(
図1参照)の上面に固定する。
【0022】
駆動機構部28はA軸台20右側に位置する。駆動機構部28は内側に、右側支持台(図示略)、A軸モータ65(
図3参照)等を格納する。右連結部22はその右端面から右方に突出する略円柱状の支軸(図示略)を有する。右側支持台は右連結部22の支軸を回転可能に支持する。右連結部22の支軸とA軸モータ65の出力軸は、互いに連結する。A軸モータ65の出力軸が回転すると、A軸台20はX軸方向に対して平行な支軸31を中心に、右連結部22と一体して回転する。A軸台20の回転軸はA軸である。駆動機構部28は工具に対して被削材を、A軸を中心として回転できる。A軸台20はA軸回りに任意角度で傾くことで、主軸に装着する工具に対して被削材を任意方向に傾けることができる。右側支持台の底部は、右側基台13(
図1参照)の上面に固定する。
【0023】
C軸台29は台部21上面略中央に回転可能に設ける。C軸台29は円盤状に形成し、A軸台20上面略中央に設ける。C軸駆動部30は台部21下面に設け且つ台部21の略中央に設けた穴(図示略)を介してC軸台29と連結する。C軸駆動部30は内部に回転軸(図示略)、C軸モータ64(
図3参照)等を備える。回転軸はC軸台29に対して直交する方向に延びる。回転軸はC軸台29に固定する。C軸モータ64は回転軸に固定する。故に、C軸モータ64が回転軸を回転すると、C軸台29はZ軸方向に平行な軸を中心に回転可能である。C軸台29の回転軸はC軸である。C軸台29上面の冶具200は、被削材を固定する。C軸駆動部30は工具に対して被削材を、C軸を中心として回転できる。
【0024】
<電気的構成>
図3を参照して数値制御装置40と工作機械1の電気的構成を説明する。数値制御装置40はCPU41、ROM42、RAM43、フラッシュメモリ44、入出力部45、駆動回路51~56を備える。工作機械1はX軸モータ61、Y軸モータ62、Z軸モータ63、C軸モータ64、A軸モータ65、主軸モータ66、エンコーダ61A~66Aを備える。以下、駆動回路51~56を区別しない時、駆動回路50と総称する。X軸モータ61、Y軸モータ62、Z軸モータ63、C軸モータ64、A軸モータ65、主軸モータ66を区別しない時、モータ60と総称する。エンコーダ61A~66Aを区別しない時、エンコーダ60Aと総称する。
【0025】
CPU41は工作機械1の動作を制御する。ROM42は後述する第一主処理(
図11参照)及び第二主処理(
図21参照)を実行する為の制御プログラム等を記憶する。RAM43は各種処理実行中に発生する各種データを記憶する。フラッシュメモリ44はNCプログラム等を記憶する。NCプログラムは、被削材に対する工具のX軸、Y軸、Z軸の各方向の位置を示す座標データ、及び、A軸台20とC軸台29の角度を示す角度データを指定した指令を複数含む。入出力部45は駆動回路50、エンコーダ60A、操作部18、表示部19との間で各種信号の入出力を行う。
【0026】
駆動回路50は、CPU41が出力する制御信号に基づき、モータ60にパルス信号を出力する。エンコーダ60Aは、対応するモータ60の回転位置を検出し、該検出信号を駆動回路50及び入出力部45に出力する。モータ60は何れもサーボモータである。エンコーダ60Aは一般的な絶対値エンコーダであり、回転位置の絶対位置を検出して出力する位置センサである。
【0027】
<工具の移動軌跡の表示方法>
数値制御装置40のCPU41は、工作機械1が工具により被削材を加工する為に工具を移動する時の軌跡(移動軌跡と称す)を、表示部19に表示する。CPU41は、X軸、Y軸、Z軸を基準とした工具の移動と、A軸を中心としたA軸台20の回転と、C軸を中心としたC軸台29の回転と基づき、移動軌跡を算出する。
図4~
図7を参照し、移動軌跡の表示方法を具体的に説明する。
図4の線画模様(被削材線画70と称す)で示される実際の被削材70Aに対し、
図5に示す切削模様81A~85Aを切削する時の工具の移動軌跡80(
図6、
図7参照)を例示する。
【0028】
図4に示すように、被削材70Aは、直方体の上側の四隅を切り欠いた十面体である。
図4に矢印で示す左右、前後、上下は夫々、上面が水平面となる状態のA軸台20に固定した被削材70Aの各方向を示す。被削材70Aは頂点7A~7Lを有する。頂点7A、7B、7C、7Dは、正方形の上面71Aの四つの頂点に対応する。頂点7A、7B、7Eは、三角形の傾斜面72Aの三つの頂点に対応する。頂点7B、7C、7Fは、三角形の傾斜面73Aの三つの頂点に対応する。頂点7C、7D、7Gは、三角形の傾斜面74Aの三つの頂点に対応する。頂点7D、7A、7Hは、三角形の傾斜面75Aの三つの頂点に対応する。傾斜面72A~75Aは夫々、水平面に対して傾斜する。被削材線画70のうち、被削材70Aの上面71A、及び傾斜面72A~75Aに対応する部分を、上面71、及び傾斜面72~75と称す。
【0029】
図5(1)は、上面71Aを切削する時の切削模様81A(菱形周回模様)を示す。
図5(2)は、傾斜面72Aを切削する時の切削模様82A(ハート型模様)を示す。
図5(3)は、傾斜面73Aを切削する時の切削模様83A(螺旋模様)を示す。
図5(4)は、傾斜面74Aを切削する時の切削模様84A(往復模様)を示す。
図5(5)は、傾斜面75Aを切削する時の切削模様85A(螺旋階段模様)を示す。
【0030】
工作機械1が被削材70Aに対して切削模様81A~85Aを実際に切削する時の動作を説明する。工作機械1は、A軸モータ65を駆動し、被削材70Aの上面71Aが水平となるようA軸台20を回転する。又、工作機械1は、C軸モータ64を駆動し、切削模様81Aの切削を開始できるようC軸台29を回転する。工作機械1は、この状態でX軸移動機構、Y軸移動機構、Z軸移動機構、主軸モータ66を駆動し、切削模様81Aを上面71Aに切削する。次に、工作機械1は、A軸モータ65を駆動し、被削材70Aの傾斜面72Aが水平となるようA軸台20を回転する。又、工作機械1は、C軸モータ64を駆動し、切削模様82Aの切削を開始できるようC軸台29を回転する。工作機械1は、この状態でX軸移動機構、Y軸移動機構、Z軸移動機構、主軸モータ66を駆動し、切削模様82Aを傾斜面72Aに切削する。以下、同様の方法で、工作機械1は、被削材70Aの傾斜面73A、74A、75Aに対し、切削模様83A、84A、85Aを順番に切削する。
【0031】
CPU41は次の二つの何れかの方法により、被削材線画70及び移動軌跡80を表示部19に表示できる。第一の方法では、A軸台20及びC軸台29の回転に追従して、表示部19に表示済みの被削材線画70及び移動軌跡80を回転する。該時、表示部19の表示画面に対する工具の仮想的な配置は、A軸台20及びC軸台29が回転しても変化しない。
図6は、CPU41が第一の方法により表示部19に表示した表示画面を示す。一方、第二の方法では、A軸台20及びC軸台29の回転に追従して、表示部19の表示画面に対する工具の仮想的な配置を回転する。該時、表示部19に表示済みの被削材線画70及び移動軌跡80は、A軸台20及びC軸台29が回転しても変化しない。
図7は、CPU41が第二の方法により表示部19に表示した表示画面を示す。
図6、
図7の夫々の(1)~(5)は、被削材70Aの上面71A及び傾斜面72A~75Aに切削模様81A~85Aを切削する様子を順番に示す。以下、切削模様81A~85Aを切削する為の工具の移動軌跡80を、夫々、移動軌跡81~85と称す。
【0032】
図6に示す第一の方法では、例えば工作機械1が切削模様81Aの切削後(
図6(1))、次の切削模様82Aの切削前にA軸台20及びC軸台29を回転して被削材70Aを回転した時、
図6(2)に示すように、
図6(1)で表示済みの被削材線画70及び移動軌跡81は、A軸台20及びC軸台29の回転に追従して回転する。同様に、例えば工作機械1が切削模様82Aの切削後(
図6(2))次の切削模様83Aの切削前にA軸台20及びC軸台29を回転して被削材70Aを回転した時、
図6(3)に示すように、
図6(2)で表示済みの被削材線画70及び移動軌跡81、82は、A軸台20及びC軸台29の回転に追従して回転する。切削模様84A~85Aを切削する時(
図6(4)(5)参照)も同様である。尚、表示画面に対する工具の仮想的な配置は、何れも
図6の手前側であり、A軸台20及びC軸台29が回転しても変化しない。
【0033】
図7に示す第二の方法では、例えば工作機械1が切削模様81Aの切削後(
図7(1))、次の切削模様82Aの切削前にA軸台20及びC軸台29を回転して被削材70Aを回転した時、
図7(2)に示すように、
図7(1)で表示済みの被削材線画70及び移動軌跡81は、
図6(2)と異なり回転しない。一方、表示画面に対する工具の仮想的な配置は、A軸台20及びC軸台29の回転に追従し、上面71の垂直上方から傾斜面72の垂直上方まで回転移動する。同様に、例えば工作機械1が切削模様82Aの切削後(
図7(2))、次の切削模様83Aの切削前にA軸台20及びC軸台29を回転して被削材70Aを回転した時、
図7(3)に示すように、
図7(2)で表示済みの被削材線画70及び移動軌跡81、82は、
図6(3)と異なり回転せず、固定する。一方、表示画面に対する工具の仮想的な配置は、A軸台20及びC軸台29の回転に追従し、傾斜面72の垂直上方から傾斜面73の垂直上方まで回転移動する。
【0034】
尚、従来のようにX軸、Y軸、Z軸を基準とした工具の移動のみに基づいて移動軌跡80を算出して表示した場合、移動軌跡81~85は互いに重なるので、使用者は夫々を区別して認識し難い。一方、第一の方法(
図6参照)及び第二の方法(
図7参照)により移動軌跡80を算出した場合、移動軌跡81~85は互いに重ならない。従って使用者は、移動軌跡81~85を区別して認識可能となる。
【0035】
<第一実施例>
図8~
図11を参照し、第一実施例に係る第一主処理を説明する。CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶したプログラムに基づき、第一主処理を所定の周期で繰り返し実行する。フラッシュメモリ44は、後述する視線データ、第一角度データ、第二角度データ、投影面情報、表示スケール情報、及び被削材情報の夫々の初期値を予め記憶する。
【0036】
視線データとは、表示部19に表示した移動軌跡80を使用者が視る時の視線方向を示すベクトル(視線ベクトルと称す)のデータである。例えば第一の方法にて、
図6(1)に示す上面71の移動軌跡81を視る時の視線データは、
図12に示す視線ベクトル91のデータである。視線ベクトル91は、上面71と直交して被削材線画70の中心に向けて延びる。例えば第一の方法にて、
図6(3)に示す傾斜面73の移動軌跡83を視る時の視線データは、
図12に示す視線ベクトル93のデータである。視線ベクトル93は、傾斜面73と直交して被削材線画70の中心に向けて延びる。図示しないが、第一の方法にて移動軌跡82、84、85を視る時の視線ベクトルのデータも同様である。一方、第二の方法にて、移動軌跡81~85を視る時の視線データは共通し、
図12に示す視線ベクトル90のデータである。つまり、第一の方法では、移動軌跡81~85を視る時の視線ベクトルは夫々相違し、第二の方法では、移動軌跡81~85を視る時の視線ベクトルは一致する。尚、フラッシュメモリ44に記憶した視線データの初期値は、第二の方法で表示した移動軌跡80を使用者が視る時の視線ベクトル90のデータである。
【0037】
第一角度データは、A軸を中心としたA軸台20の角度を示す。第二角度データは、C軸を中心としたC軸台29の角度を示す。投影面情報は、三次元空間内に定義した被削材線画70及び移動軌跡80を二次元平面上に投影して表示部19に表示する時の投影面を示す。表示スケール情報とは、被削材線画70及び移動軌跡80を投影面に投影した場合の位置及び大きさを示す。例えば
図12に示す視線ベクトル93が示す視線方向から、点線96A、96B、96C、96Dで囲む範囲で被削材線画70及び移動軌跡80を表示部19に表示する場合、表示スケール情報は、投影面97に形成した矩形状の表示スケール96を示す。被削材情報は、三次元空間内に被削材線画70を定義する為に必要な線画情報である。
【0038】
図8に示すように、CPU41は、X軸、Y軸、Z軸の各方向における工具の位置を示す座標データ(x
m,y
m,z
m)、第一角度データ(p
m)、及び第二角度データ(q
m)を、エンコーダ60Aが出力する信号に基づいて取得する(S11)。CPU41は、取得した座標データ(x
m,y
m,z
m)、第一角度データ(p
m)、及び第二角度データ(q
m)を式(1)に代入することで座標変換処理を行い、表示部19に移動軌跡80を表示する為の座標データ(描画データ(x
t,y
t,z
t)と称す)を作成する(S13)。
【数1】
但し、(x
p,y
p,z
p)はA軸の中心座標データである。(x
q,y
q,z
q)はC軸の中心座標データである。P(-p
m)はA軸周りにp
m度回転する逆回転行列であり、式(2)で示せる。
【数2】
X(-p
m)、Y(-p
m)、Z(-p
m)は夫々、A軸がX軸、Y軸、Z軸の各々の周りを回転する時の角度を示し、式(3)(4)(5)で示せる。尚、式(3)~(5)にて-p
mをθで示す。
【数3】
【数4】
【数5】
Q(-q
m)はC軸周りにq
m度回転する逆回転行列であり、P(-p
m)の場合と同様の式で表せる。
【0039】
CPU41は、作成した描画データ(x
t,y
t,z
t)をフラッシュメモリ44に記憶する(S15)。尚、CPU41は第一主処理を周期的に繰り返し実行する為、フラッシュメモリ44は複数の描画データ(x
t,y
t,z
t)を記憶する。フラッシュメモリ44に記憶した複数の描画データ(x
t,y
t,z
t)が示す位置を結ぶ線分は、表示部19に表示する移動軌跡80に対応する。CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶した複数の描画データ(x
t,y
t,z
t)に基づいて表示部19に移動軌跡80を表示する為、描画処理(
図9参照)を実行する(S17)。
【0040】
図9を参照し、描画処理を説明する。CPU41は、表示部19に対する移動軌跡80の表示方法を第一の方法とするか又は第二の方法とするかを指定する操作を、操作部18を介して受け付ける。CPU41は、第一の方法とする指示を受け付けた場合(S21:YES)、第一の方法で移動軌跡80を表示する為に視線データを更新する為、第一視線更新処理(
図10参照)を実行する(S23)。第一視線更新処理の終了後、CPU41は処理をS25に進める。CPU41は、第二の方法とする指示を受け付けた場合(S21:NO)、フラッシュメモリ44に記憶した視線データの初期値をそのまま使用すればよい為、処理をS25に進める。
【0041】
図10を参照し、第一視線更新処理を説明する。CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶した視線データを取得する(S31)。CPU41は、第一角度データ及び第二角度データを、エンコーダ60Aが出力する信号に基づいて取得する(S31)。CPU41は、A軸を示す座標データ、及びC軸を示す座標データを夫々取得する(S31)。
【0042】
CPU41は、S31の処理によって取得した第一角度データ(pm)と、フラッシュメモリ44に記憶した第一角度データ(pm)との差分(Δpm)を算出する(S33)。CPU41は、S31の処理によって取得した第二角度データ(qm)と、フラッシュメモリ44に記憶した第二角度データ(qm)との差分(Δqm)を算出する(S33)。CPU41は、算出した差分(Δpm)が0の場合、第一主処理を前回実行した後、A軸を中心としてA軸台20が回転していないと判定する。CPU41は、算出した差分(Δqm)が0の場合、第一主処理を前回実行した後、C軸を中心としてC軸台29が回転していないと判定する。CPU41は、A軸台20及びC軸台29の何れも回転していないと判定した場合(S35:NO)、処理をS39に進める。
【0043】
一方、CPU41は、算出した差分(Δpm)が0でない場合、第一主処理を前回実行した後、A軸を中心としてA軸台20が回転したと判定する。CPU41は、算出した差分(Δqm)が0でない場合、第一主処理を前回実行した後、C軸を中心としてC軸台29が回転したと判定する。CPU41は、A軸台20及びC軸台29の少なくとも一方が回転したと判定した場合(S35:YES)、フラッシュメモリ44に記憶した視線データを更新する為に、処理をS37に進める。
【0044】
CPU41は、S31でフラッシュメモリ44から取得した視線データ(x
v,y
v,z
v)、A軸を示す座標データ(x
p,y
p,z
p)、C軸を示す座標データ(x
q,y
q,z
q)、差分(Δp
m,q
m)を式(6)に代入することで座標変換処理を行い、視線データ(x
v,y
v,z
v)を更新する(S37)。尚、(x
v´,y
v´,z
v´)は、更新後の視線データを示す。
【数6】
【0045】
CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶した第一角度データ及び第二角度データを、S31でエンコーダ60Aが出力する信号に基づいて取得した第一角度データ及び第二角度データで書き換え更新する(S39)。CPU41は、S37の処理を実行した場合、フラッシュメモリ44に記憶した視線データ(x
v,y
v,z
v)を、S37で算出した視線データ(x
v´,y
v´,z
v´)で書き換えて更新する(S39)。CPU41は、第一視線更新処理を終了し、処理を描画処理(
図9参照)に戻す。
図9に示すように、CPU41は、第一視線更新処理の終了後、処理をS25に進める。
【0046】
図9に示すように、S25においてCPU41は、視線方向又は表示スケールを変更する操作を、操作部18を介して検出したか判定する(S25)。CPU41は、操作を検出しない場合(S25:NO)、処理をS29に進める。CPU41は、視線方向を変更する操作を検出した場合(S25:YES)、操作に応じて視線データを更新する為、第二視線更新処理を実行する(S27)。
【0047】
図11を参照し、第二視線更新処理を説明する。CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶した視線データ及び表示スケール情報を取得する(S41)。CPU41は更に、S25の処理によって検出した操作に応じた視線ベクトルの移動量(ベクトル移動量と称す)と回転量(ベクトル回転量と称す)を取得する(S41)。CPU41は、視線データが示す視線ベクトルにベクトル移動量を加算し、視線データを更新する(S43)。CPU41は更に、視線データが示す視線ベクトルをベクトル回転量だけ回転し、視線データを更新する(S45)。CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶した表示スケール情報を、取得した表示スケール情報で書き換えて更新する(S47)。CPU41は、第二視線更新処理を終了し、処理を描画処理(
図9参照)に戻す。
図9に示すように、CPU41は、第二視線更新処理の終了後、処理をS29に進める。
【0048】
図9に示すように、CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶した被削材情報に基づき、三次元空間内に被削材線画70を定義する。CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶した複数の描画データに基づき、移動軌跡80を三次元空間内に定義する。詳細には、CPU41は、各描画データにより示される位置の間を直線で連結することによって、移動軌跡80を三次元空間内に定義する。CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶した視線データ、及び投影面情報に基づき、三次元空間内に定義した被削材線画70及び移動軌跡80を投影面97(
図14参照)に投影し、二次元画像に投影変換する(S29)。CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶した表示スケール情報に基づき、投影変換した二次元画像を表示スケール96(
図14参照)により切り出す。尚、二次元画像への投影変換、及び、表示スケール96による切り出しは、周知の様々な方法を適宜利用できる。CPU41は、切り出した二次元画像を表示部19に表示し、表示内容を更新する(S29、
図6、
図7参照)。CPU41は、描画処理を終了し、処理を第一主処理(
図8参照)に戻す。
図8に示すように、CPU41は、描画処理(S17参照)の終了後、第一主処理を終了する。
【0049】
<第一実施例の作用、効果>
数値制御装置40は、X軸、Y軸、Z軸の各方向における工具の位置を示す座標データ、第一角度データ、及び第二角度データを式(1)に代入することで座標変換処理を行い、描画データを作成する(S13)。この場合、工具に対して被削材がA軸及びC軸を中心として回転する場合でも、表示部19に表示する移動軌跡81~85が重ならないようにできる。従って数値制御装置40は、工具に対して被削材がA軸及びC軸を中心として回転する場合でも、移動軌跡81~85を適切に表示できる。
【0050】
数値制御装置40は、工具に対して被削材がA軸及びC軸の少なくとも一方を中心として回転した場合(S35:YES)、視線データ、A軸及びC軸を示す座標データ、第一角度データ及び第二角度データの差分を式(6)に代入することで座標変換処理を行い、視線データを更新する(S37)。数値制御装置40は、更新後の視線データに基づいて移動軌跡80を表示部19に表示できる。この場合、数値制御装置40は、A軸及びC軸を中心として被削材が回転した場合でも、回転に応じて視線方向を変更しながら移動軌跡80を表示部19に表示できる。
【0051】
数値制御装置40は、表示方法を第一の方法とする指示を受け付けた場合(S21:YES)、第一の方法で被削材線画70及び移動軌跡80を表示部19に表示する。この場合、表示部19の表示画面に表示した表示済みの被削材線画70及び移動軌跡80は、A軸台20及びC軸台29の回転に追従して回転する(
図6参照)。数値制御装置40は、表示画面に対する工具の仮想的な配置、及び、表示画面に新たに表示する移動軌跡80の位置を、A軸台20及びC軸台29が回転した時も一定の位置で保持できる。
【0052】
数値制御装置40は、表示方法を第二の方法とする指示を受け付けた場合(S21:NO)、第二の方法で被削材線画70及び移動軌跡80を表示部19に表示する。この場合、表示部19の表示画面に表示した表示済みの被削材線画70及び移動軌跡80は、A軸台20及びC軸台29が回転しても移動しない。数値制御装置40は、表示部19に表示する被削材線画70及び移動軌跡80の位置を、A軸台20及びC軸台29が回転した時も保持できる。
【0053】
数値制御装置40は、視線方向を変更する操作を検出した場合(S25:YES)、変更後の視線方向を示す視線データに基づいて描画データを投影変換し、軌跡として表示部19に表示する。このため数値制御装置40は、使用者が所望する視線方向から視た移動軌跡80を表示部19に表示できる。
【0054】
<第二実施例>
図13、
図14を参照し、第二実施例に係る第二主処理を説明する。第一主処理と同一の処理は同一符号を付し、説明を省略する。CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶したNCプログラムの複数の指令から順番に一つずつ選択する度に、第二主処理を実行する。
【0055】
CPU41は、NCプログラムから選択した指令(第二指令と称す)で指定した座標データ、第一角度データ、及び第二角度データを取得する(S51)。CPU41は、前回の第二主処理でNCプログラムから選択した指令(第一指令と称す)で指定した座標データ、第一角度データ、及び第二角度データを取得する(S53)。第一指令及び第二指令は、NCプログラムの複数の指令のうち連続する二つの指令である。第一指令は、NCプログラムの複数の指令のうち第二指令の前の指令に対応する。
【0056】
CPU41は、第一指令と第二指令の夫々の第一角度データ(pm)及び第二角度データ(qm)に基づき、夫々の第一角度データの差分(Δpm)、及び、夫々の第二角度データの差分(Δqm)を算出する。CPU41は、算出した差分(Δpm,Δqm)に基づき、工作機械1が第一指令の次に第二指令を実行した時にA軸台20及びC軸台29の少なくとも一方が回転したか判定する(S55)。CPU41は、A軸台20及びC軸台29の何れも回転していないと判定した場合(S55:NO)、処理をS13に進める。
【0057】
一方、CPU41は、A軸台20及びC軸台29の少なくとも一方が回転したと判定した場合(S55:YES)、第一指令の座標データ(第一座標データと称す)が示す第一位置と、第二指令の座標データ(第二座標データと称す)が示す第二位置との間で移動する工具の移動経路をN分割する(S57)。CPU41は、N分割した夫々の移動経路の両端部の位置を示すN-1個の座標データ(分割座標データと称す)を、フラッシュメモリ44に記憶する。
【0058】
図14に示す具体例を参照して説明する。第一指令に基づき被削材100が工具40Aに対してX軸方向に移動し(矢印Y11、
図14(2)参照)、その後、第二指令に基づき被削材100が工具40Aに対してC軸を中心として回転する(矢印Y12、
図14(3)参照)場合を例示する。第一指令による工具40Aの移動後の位置である第一位置P1を示す座標データは、第一座標データに対応する。第二指令による工具40Aの移動後の第二位置P2を示す座標データは、第二座標データに対応する。該時、CPU41は、第一位置P1と第二位置P2との間を移動する工具40Aの移動経路87AをN等分する。CPU41は、N等分した移動経路の位置に対応するN-1個の位置Pn(1)、Pn(2)・・・Pn(N-1)の夫々を示す分割座標データを算出する。CPU41は、N等分した移動経路に沿って工具が移動する場合におけるA軸を中心とした回転角度を示す角度データ(分割第一角度データと称す)を算出する。更にCPU41は、N等分した移動経路に沿って工具が移動する場合におけるC軸を中心とした回転角度を示す角度データ(分割第二角度データと称す)を算出する。CPU41は、算出した分割座標データをフラッシュメモリ44に記憶する。
【0059】
図13に示すように、CPU41は、S51の処理によって取得した座標データ(x
m,y
m,z
m)、第一角度データ(p
m)、及び第二角度データ(q
m)を式(1)に代入することで座標変換処理を行い、描画データを作成する(S13)。又、CPU41は、S57の処理によってN-1個の分割座標データを算出した場合、N-1個の分割座標データ、第一分割角度データ、及び第二分割角度データの夫々を式(1)に代入することで座標変換処理を行い、描画データを作成する(S13)。CPU41は、作成した描画データをフラッシュメモリ44に記憶する(S15)。CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶した複数の描画データに基づいて表示部19に移動軌跡80を表示する為、描画処理(
図9参照)を実行する(S17)。
【0060】
図9に示す描画処理のS29の処理において、CPU41は、フラッシュメモリ44に記憶した複数の描画データに基づき、各描画データにより示される位置の間を直線で連結することによって移動軌跡80を定義する。この時、例えば
図14(3)に示すように、第一指令の第一座標データが示す第一位置P1と、第二指令の第二座標データが示す第二位置P2との間の移動軌跡は、複数の分割座標データが示すN-1個の位置Pn(1)、Pn(2)・・・Pn(N-1)の夫々の間を結ぶ直線にて定義する。CPU41は、投影変換及び表示スケール処理の後、移動軌跡80を表示部19に表示する(S29)。
【0061】
<第二実施例の作用、効果>
数値制御装置40は、工作機械1を動作する為のNCプログラムに基づき、工作機械1の工具の移動軌跡80を表示部19に表示できる。この場合、数値制御装置40は、実際に工作機械1動作せずに工具の移動軌跡80を表示部19に表示できる。
【0062】
複数の分割座標データ、分割第一角度データ、及び分割第二角度データを作成しない場合、
図14(4)に示すように、数値制御装置40は、第一位置P1及び第二位置P2を直線で結ぶ移動経路87Bを示す移動軌跡を、表示部19に表示する。しかし、該時の実際の移動経路は、C軸を中心軸とした被削材100の回転に伴う円弧状を有するため好ましくない。これに対し、CPU41は、
図14(3)に示すように、複数の分割座標データが示すN-1個の位置Pn(1)、Pn(2)・・・Pn(N-1)の夫々の間を結ぶ直線にて移動軌跡を定義する。これによって数値制御装置40は、第一位置P1及び第二位置P2の間で移動する工具の移動軌跡を正確に描画できる。
【0063】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限らず、種々の変更が可能である。第一主処理(
図8参照)及び第二主処理(
図11参照)は、工作機械1に接続した外部機器(例えばPC)のCPUにより実行してもよい。工作機械1は、工具を、固定した被削材に対してX軸、Y軸の各方向に移動してもよい。該時、工作機械1は被削材を、X軸、Y軸、Z軸の各方向にて固定してもよい。更に工作機械1は、工具を、固定した被削材に対して、A軸、C軸の各軸を中心軸として回転してもよい。工作機械1が工具に対して被削材を回転する時の中心軸は、A軸及びC軸の一方のみでもよい。工作機械1が工具に対して被削材を回転する時の中心軸は3軸以上であってもよい。数値制御装置40は第一の方法及び第二の方法の何れかの方法のみにより移動軌跡80を表示部19に表示してもよい。
【0064】
<その他>
数値制御装置40は、本発明の「表示制御装置」の一例である。A軸及びC軸は、本発明の「回転軸」の一例である。被削材線画70は、本発明の「被削材画像」の一例である。S11、S51の処理を行うCPU41は、本発明の「第一取得部」の一例である。S13の処理を行うCPU41は、本発明の「作成部」の一例である。S29の処理を行うCPU41は、本発明の「表示制御部」の一例である。S31の処理を行うCPU41は、本発明の「第二取得部」の一例である。S37の処理を行うCPU41は、本発明の「変換部」の一例である。S25の処理を行うCPU41は、本発明の「受付部」の一例である。NCプログラムを記憶したフラッシュメモリ44は、本発明の「記憶部」の一例である。S11、S51の処理は、本発明の「第一取得工程」の一例である。S13の処理は、本発明の「作成工程」の一例である。S29の処理は、本発明の「表示制御工程」の一例である。
【符号の説明】
【0065】
1 :工作機械
8 :被削材支持装置
19 :表示部
20 :A軸台
29 :C軸台
40 :数値制御装置
40A :工具
41 :CPU
44 :フラッシュメモリ
70 :被削材線画
70A、100 :被削材
91、93 :視線ベクトル
96 :表示スケール