(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20240723BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B65D81/34 W
B65D81/34 U
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020171823
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正幸
(72)【発明者】
【氏名】古▲瀬▼ 清人
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-344410(JP,A)
【文献】特開2017-218178(JP,A)
【文献】特表2013-545675(JP,A)
【文献】特開2010-260621(JP,A)
【文献】特開昭53-049577(JP,A)
【文献】特開昭52-112477(JP,A)
【文献】特開2004-359302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 5/00- 5/76
B65D 65/00-65/46
A47J 27/00-27/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム層、紙層、マイクロ波照射によって発熱する発熱基材層がこの順で積層された積層シートからなるブランクシートを成形してなり、
内角が等しい多角形の底面板の各辺に、谷折り線を介して側面板が連接され、前記側面板の前記底面板とは反対側となる外辺に、山折り線を介して縁片が連接され、
隣り合う前記側面板の間および隣り合う前記縁片の間に、前記樹脂フィルム層のみが切れ目なく連続して設けられており、
前記樹脂フィルム層は、複数のフィルムがサンドイッチ樹脂層を介して積層された複合フィルムであり、前記フィルムの一部と同じ材料が前記サンドイッチ樹脂層に使用されており、
隣り合う側面板同士および隣り合う縁片同士は、それぞれ重ね合わされず、かつ前記樹脂フィルム層のみからなる隙間ができないように、前記樹脂フィルム層と一体に接合されている、
ことを特徴とする電子レンジ加熱用容器。
【請求項2】
前記底面板は、内角が等しい八角形の底面板であることを特徴とする、請求項1に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項3】
前記樹脂フィルム層は、押出成形により形成され、
ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリメチルペンテン(TPX)からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項4】
前記樹脂フィルム層の厚みが、20μm以上300μm以下であることを特徴とする、
請求項1から3のいずれかに記載の電子レンジ加熱用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジによる加熱ができる容器、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジによる加熱ができる容器として、マイクロ波の照射によって発熱する発熱シートが設けられた紙製容器がある。
例えば、特許文献1には、多角形の底部及び側壁部を有する紙製の本体と、底部に貼付されたマイクロ波の照射によって発熱する発熱シートと、を備えた電子レンジ用トレーが記載されている。この電子レンジ用トレーは、本体が1枚の紙を折り曲げて成形されており、側壁部に設けた差し込み部を側壁部に設けた切り欠き部に差し込んで互いに係合することで側壁部が一体化している。この電子レンジ用トレーにより、電子レンジによって収納された食品に焦げ目を付けながら加熱調理することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の電子レンジ用トレーは、トレーの本体が紙の折り込みのみで製函されているため段差がある上、段差部を十分にシールできておらず、密封性が低い。
また、密封するために紙製本体に樹脂フィルム層を覆うことも考えられるが、収容された食品に焦げ目をつけることができる発熱シートがトレー本体に設けられていることで、その発熱シートに近接する樹脂フィルム層が溶けてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、樹脂フィルム層により密封性が高く、電子レンジで加熱した時に、その樹脂フィルム層が溶けることなく、収容された食品に焦げ目を付けることができる、紙製の電子レンジ加熱用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、樹脂フィルム層、紙層、マイクロ波照射によって発熱する発熱基材層がこの順で積層された積層シートからなるブランクシートを成形してなり、
内角が等しい多角形の底面板の各辺に、谷折り線を介して側面板が連接され、前記側面板の前記底面板とは反対側となる外辺に、山折り線を介して縁片が連接され、
隣り合う前記側面板の間および隣り合う前記縁片の間に、前記樹脂フィルム層のみが切れ目なく連続して設けられており、
前記樹脂フィルム層は、複数のフィルムがサンドイッチ樹脂層を介して積層された複合フィルムであり、前記フィルムの一部と同じ材料が前記サンドイッチ樹脂層に使用されており、
隣り合う側面板同士および隣り合う縁片同士は、それぞれ重ね合わされず、かつ前記樹脂フィルム層のみからなる隙間ができないように、前記樹脂フィルム層と一体に接合されている、
ことを特徴とする電子レンジ加熱用容器である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記底面板は、内角が等しい八角形の底面板であることを特徴とする、請求項1に記載の電子レンジ加熱用容器である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記樹脂フィルム層は、押出成形により形成され、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリメチルペンテン(TPX)からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子レンジ加熱用容器である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記樹脂フィルム層の厚みが、20μm以上300μm以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の電子レンジ加熱用容器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子レンジ加熱用容器は、樹脂フィルム層、紙層、マイクロ波照射によって発熱する発熱基材層がこの順で積層された積層シートからなるブランクシートを成形してなり、隣り合う側面板の間および隣り合う縁片の間に、樹脂フィルム層のみが切れ目なく連続して設けられている。また、隣り合う側面板同士および隣り合う縁片同士は、それぞれ重ね合わされず、かつ樹脂フィルム層のみからなる隙間ができないように、樹脂フィルム層と一体に接合されている。
よって、電子レンジ加熱用容器を構成する積層シートの重なりによる段差がなく、紙製でありながら樹脂フィルム層により密封性が高くなる。また、電子レンジ加熱用容器の最内層の発熱基材層と最外層の樹脂フィルム層の間に紙層を設けることで、電子レンジで加熱した時に、紙層の断熱機能により樹脂フィルム層が溶けることなく、収容された食品に焦げ目を付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る電子レンジ加熱用容器のブランクシートの展開図である。
【
図3】
図1のブランクシートを成形した電子レンジ加熱用容器の平面図である。
【
図4】
図1のブランクシートを成形した電子レンジ加熱用容器の斜視図である。
【
図5】一実施形態に係る電子レンジ加熱用容器の製造工程において、孔抜き工程が終了した時点の状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、必要に応じて図面を参照して、本発明の実施形態の例について説明する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る電子レンジ加熱用容器100のブランクシート30の展開図である。一実施形態に係る電子レンジ加熱用容器100は、次に説明するブランクシート30を成形してなる。
【0017】
ブランクシート30は、
図1に示されるように、内角が等しい八角形の底面板1の各辺に、谷折り線1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1hを介して側面板2、3、4、5、6、7、8、9が連接され、側面板2、3、4、5、6、7、8、9の底面板1とは反対側となる外辺に、山折り線2a、3a、4a、5a、6a、7a、8a、9aを介して縁片10、11、12、13、14、15、16、17が連接されている。また、隣り合う側面板の間および隣り合う縁片の間に、樹脂フィルム層51のみが切れ目なく連続して設けられている。なお、隣り合う縁片の間で、いずれか一方の縁片の左右端に接着片が設けられていることで、ブランクシート30から容器に成形した際に、接着片10a、10b、12a、12b、14a、14b、16a、16bとその接着片10a、10b、12a、12b、14a、14b、16a、16bと隣り合う縁片を結合することで容器としての密封性がより向上する。
【0018】
当実施形態では、底面板1は内角が等しい八角形であるが、内角が等しい多角形であればよく、例えば矩形でもよい。また、各側面板2、3、4、5、6、7、8、9の形状は例えば、底面板1の各辺を下側に見た際に逆台形とすることで、ブランクシート30から電子レンジ加熱用容器100に成形した際に、各側面板2、3、4、5、6、7、8、9が正面視外側にやや傾斜した状態となり、電子レンジ加熱後にそのまま食品を食する場合などに食器のように見えて外観がよい。
【0019】
図2は、
図1のA-A線断面模式図である。上記ブランクシート30を構成する積層シート40は、例えば、
図2に示されるように、樹脂フィルム層51、第1接着剤層52、紙層53、第2接着剤層54、マイクロ波照射によって発熱する発熱基材層60がこの順で積層されている。樹脂フィルム層51の第1接着剤層52と反対側の面は容器の外側となる面であり、発熱基材層60の第2接着剤層54と反対側の面は容器の内側となる面である。次に、各層について詳細に説明する。
【0020】
(樹脂フィルム層)
樹脂フィルム層51は、電子レンジ加熱に耐えられる耐熱性を有し、かつ、隣り合う各側面板および隣り合う各縁片に熱溶着させることで密封性を高める効果を発揮させるため、熱可塑性樹脂層であることが好ましい。
【0021】
樹脂フィルム層51は、例えば、押出成形により形成され、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリメチルペンテン(TPX)が好ましく挙げられる。これらの材料を用いた単層でもよいし多層でもよい。
【0022】
樹脂フィルム層51は、複数のフィルムがサンドイッチ樹脂層を介して積層された複合フィルムとしてもよい。この場合、前記フィルムの一部と同じ材料が前記サンドイッチ樹脂層に使用されることが好ましい。例えば、複合フィルムとしての樹脂フィルム層51に使用されるフィルムがポリプロピレン(PP)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる場合は、ポリプロピレン(PP)からなるサンドイッチ樹脂層を介した複合フィルムとすることが好ましい。また、複合フィルムとしての樹脂フィルム層51に使用されるフィルムがポリエチレンテレフタレート(PET)からなる場合は、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)を使用した易接着処理などが施されることで、何れの樹脂がサンドイッチ樹脂層に使用されていてもよい。
【0023】
また、当実施形態では、バリア性向上のため、樹脂フィルム層51はバリアフィルム層も含まれる。
【0024】
樹脂フィルム層51の厚みは、製函時にフィルム層51を容器の外側に折り曲げる時のストレスでフィルム層51が破れるおそれがあるため、20μm以上300μm以下が好ましく、100μm以上200μm以下がより好ましい。
【0025】
(紙層)
紙層53は、例えば、コートボール、コートマニラ、アイボリーなどの板紙などが使用される。電子レンジ加熱用容器100の最内層である後述する発熱基材層60と最外層である前述した樹脂フィルム層51の間に紙層53を設けることで、電子レンジで加熱し、例えば200℃以上加温された時に、紙層53の断熱機能により樹脂フィルム層51が溶けることなく、収容された食品に焦げ目を付けることができる。
【0026】
紙層53の容器外側となる面には、印刷層が形成されていてもよい。
【0027】
(マイクロ波照射によって発熱する発熱基材層)
発熱基材層60は、例えば、基材フィルム層61と金属蒸着層62からなる。基材フィルム層61の金属蒸着層62と反対側の面は、容器の内側となる面である。
【0028】
基材フィルム層61は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルイミドなどが使用される。基材フィルム層61の厚みは5μmから25μm程度が好ましい。無延伸でも良いが、二軸延伸フィルムが耐熱性も高く好ましい。
【0029】
金属蒸着層62は、例えば、アルミニウム、ニッケル、金、銀、亜鉛、白金などが使用できるが、発熱量および加熱時のスパークの問題からアルミニウムが好ましい。また価格性および生産性からアルミニウムが好ましい。厚みは2nmから15nmが好ましい。
【0030】
金属蒸着層62の基材フィルム層61への蒸着方法としては、公知の真空蒸着法やスパッタリング法などが使用できる。より具体的には、金属アルミニウムを蒸着源として、真空中で、加熱、蒸発させ、二軸延伸のポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材フィルム層61に凝集させて金属薄膜を形成させる。
【0031】
(第1接着剤層、第2接着剤層)
樹脂フィルム層51と紙層53を接着させるための第1接着剤層52、および、紙層53と発熱基材層60を接着させるための第2接着剤層54は、それぞれ通常の接着剤を用いるが、例えば、ポリプロピレン樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、グルー糊などの接着剤が挙げられる。また、耐熱性を考慮して、例えば2液硬化型のウレタン樹脂も挙げられる。
【0032】
第1接着剤層52により樹脂フィルム層51と紙層53を接着させる場合は、易接着処理をしてから樹脂フィルム層51と紙層53を貼り合わせて接着させることが好ましい。
【0033】
第2接着剤層54により紙層53と発熱基材層60を接着させる場合も、易接着処理をしてから紙層53と発熱基材層60を貼り合わせて接着させることが好ましい。
【0034】
樹脂フィルム層51を、紙層53と発熱基材層60とがこの順で積層された積層体により構成されるシート41にラミネートする場合、例えば、溶融押出ラミネート法により、
シート41にラミネートする方法もあるが、当実施形態のように樹脂フィルム層51がバリアフィルム層を含むような場合には、接着剤を用いたドライラミネート法等が用いられる。
【0035】
図3は、
図1のブランクシート30を成形した電子レンジ加熱用容器100の平面図である。
図4は、
図1のブランクシート30を成形した電子レンジ加熱用容器100の斜視図である。
【0036】
上記ブランクシート30から、
図3や
図4に示される電子レンジ加熱用容器100に成形する製函工程を次に説明する。
【0037】
各側面板2、3、4、5、6、7、8、9を底面板1の各辺で谷折りし、各縁片10、11、12、13、14、15、16、17を側面板2、3、4、5、6、7、8、9の底面板1とは反対側となる外辺で山折りする。隣り合う側面板の間および隣り合う縁片の間に設けられている樹脂フィルム層51を容器の外側に出すように折り曲げ、接着片10a、10b、12a、12b、14a、14b、16a、16bは、隣り合う縁片の容器外側の面に設ける。隣り合う側面板同士および隣り合う縁片同士は、それぞれ重ね合わせず、かつ樹脂フィルム層51のみからなる隙間ができないように接合する。
【0038】
樹脂フィルム層51を、側面板2、3、4、5、6、7、8、9、縁片10、11、12、13、14、15、16、17、および接着片10a、10b、12a、12b、14a、14b、16a、16bに熱融着させることで、電子レンジ加熱用容器100が完成する。この際、隣り合う側面板同士および隣り合う縁片同士は、樹脂フィルム層51と一体に接合されている。
【0039】
製函後、内容物である食品を収容し、蓋材(図示せず)をいわゆるフランジとして形成された縁片10、11、12、13、14、15、16、17に接着して密封してもよい。
【0040】
図3に示されるように、隣り合う側面板同士および隣り合う縁片同士は、それぞれ重ね合わされず、かつ樹脂フィルム層51のみからなる隙間ができないように、樹脂フィルム層51と一体に接合されている。よって、積層シート40の重なりによる段差がなく、紙製でありながら樹脂フィルム層51により密封性が高くなる。
【0041】
図4に示されるように、当実施形態の電子レンジ加熱用容器100は、略四角形容器であるが、底面板1は内角が等しい八角形である。このように底面板1を内角が等しい八角形とさせる理由は以下のとおりである。
縁片10、11、12、13、14、15、16、17により形成されたフランジに蓋材が接着される場合を考慮して、そのフランジは平らであることが好ましい。フランジのコーナー部に、容器の外側に折り曲げられたフィルム層51が2カ所設けられることで、フランジ面を形成する時にフィルム層51の折り曲げ部分に破れるような力が加えられずに平らなフランジを形成できる。よって、当実施形態のように、略四角形容器を製造する場合、底面板1は内角が等しい八角形となる。
【0042】
また、各側面板2、3、4、5、6、7、8、9の形状を底面板1の各辺を下側に見た際に逆台形とすることで、ブランクシート30から電子レンジ加熱用容器100に成形した際に、各側面板2、3、4、5、6、7、8、9が正面視外側にやや傾斜した状態となり、電子レンジ加熱後にそのまま食品を食する場合などに食器のように見えて外観がよい。
【0043】
当実施形態の電子レンジ加熱用容器100は密封性が高く、常温、冷蔵、または冷凍による各保存が可能である。また、当実施形態の電子レンジ加熱用容器100は、前述したとおり、最内層の発熱基材層60と最外層の樹脂フィルム層51の間に紙層53が設けられていることで、電子レンジにより加熱した時、紙層53の断熱機能により樹脂フィルム層51が溶けることなく、収容された食品に焦げ目を付けることができる。
【0044】
(電子レンジ加熱用容器100の製造方法)
本発明に係る電子レンジ加熱用容器100の製造方法は、紙層53と発熱基材層60とがこの順で積層された積層体により構成されるシート41の、隣り合う側面板の間および隣り合う縁片の間の樹脂フィルム層51が切れ目なく連続して設けられるべき部分を含む切欠き孔71を穿設する孔抜き工程と、孔抜きされたシート41の紙層53の発熱基材層60と反対側の面に樹脂フィルム層51を形成させる樹脂フィルム層51積層工程と、樹脂フィルム層51が積層された積層シート40を一枚ずつのブランクシート30に打ち抜く抜き工程と、打ち抜いたブランクシート30を電子レンジ加熱用容器100に成形する製函工程と、を備える。なお、孔抜き工程の前に、紙層53への印刷工程を含めることもできる。次に各工程の一例について詳細に説明する。
【0045】
(印刷工程)
まず、紙層53の容器の外側となる面に印刷を施す。印刷方法は、グラビア輪転印刷法、フレキソ印刷法、オフセット輪転印刷法などの印刷法が使用される。
【0046】
(孔抜き工程)
次に、印刷が終了した紙層53と発熱基材層60とがこの順で積層された積層体により構成されるシート41に切欠き孔71を穿設する孔抜き工程に移る。
図5は、一実施形態に係る電子レンジ加熱用容器100の製造工程において、孔抜き工程が終了した時点の状態を示した説明図である。孔抜き工程が終了した時点では、この樹脂フィルム層51が存在しない状態である。
【0047】
この例では、最終のブランクシート30を1行取れる幅となっており、最終のブランクシート外形72の位置に合わせて切欠き孔71を穿設する。切欠き孔71は、最終のブランクシート30において、隣り合う側面板の間および隣り合う縁片の間の樹脂フィルム層51が切れ目なく連続して設けられるべき部分を少なくとも含む形状とする。例えば、
図5に示されるように、隣り合う側面板の間および隣り合う縁片の間と、さらに、隣り合う縁片の間から外方に少しはみだした領域を孔抜きする。
【0048】
(樹脂フィルム層積層工程)
次に、孔抜きされたシート41の容器外側となる面(紙層53の発熱基材層60と反対側の面)に樹脂フィルム層51を形成させる樹脂フィルム層51積層工程に移る。この樹脂フィルム層51積層工程により、
図5の、紙層53と発熱基材層60とがこの順で積層された積層体により構成されるシート41が孔抜きされて除去された部分には、樹脂フィルム層51のみが存在することになる。
【0049】
樹脂フィルム層51の積層方法は、例えば、溶融したポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂を押出機でフィルム状に押し出し、フィルムが溶融状態にあるうちに、紙層53と発熱基材層60とがこの順で積層された積層体により構成されるシート41を圧着してラミネートする溶融押出ラミネート法が好ましく使用できる。樹脂フィルム層51がバリアフィルム層を含むような場合には、接着剤を用いたドライラミネート法等を用いる。
【0050】
(ブランクシートに打ち抜く抜き工程)
次に、樹脂フィルム層51が積層された積層シート40を一枚ずつのブランクシート3
0に打ち抜く抜き工程に移る。積層シート40を一枚ずつのブランクシート30に打ち抜く方法は、トムソン刃を装着した抜き型を用いた平面プレスやロータリーカッターを用いる方法などが可能である。
【0051】
(製函工程)
最後に、打ち抜いたブランクシート30を電子レンジ加熱用容器100に成形する製函工程に移る。製函工程は、特殊な設備を必要とせず、通常の製函機を用いて実施することができる。製函機などにより、隣り合う側面板の間および隣り合う縁片の間に設けられている樹脂フィルム層51が容器の外側に出るように折り曲げられ、接着片10a、10b、12a、12b、14a、14b、16a、16bは、隣り合う縁片の容器外側の面に設けられる。隣り合う側面板同士および隣り合う縁片同士は、それぞれ重ね合わされず、かつ樹脂フィルム層51のみからなる隙間ができないように接合される。
【0052】
樹脂フィルム層51が、側面板2、3、4、5、6、7、8、9、縁片10、11、12、13、14、15、16、17、および接着片10a、10b、12a、12b、14a、14b、16a、16bに熱融着されることで、電子レンジ加熱用容器100が完成する。この際、隣り合う側面板同士および隣り合う縁片同士は、樹脂フィルム層51と一体に接合されている。
【0053】
製函後、内容物である食品を収容し、蓋材を縁片10、11、12、13、14、15、16、17に接着して密封してもよい。
【実施例】
【0054】
本願発明者は、実施例1~4および比較例1~5の電子レンジ加熱用容器を用いて、製函適性、電子レンジ加熱後の食品への焼き目、電子レンジ加熱調理後に電子レンジから容器を取り出す際のやけどのおそれ、容器の品質劣化のおそれの有無、および容器の密封性を確認する試験を実施した。実施例1~4および比較例1~5は、すべて上記の製造方法により作成した
図3や
図4に示される第一実施形態の電子レンジ加熱用容器と同じ形状の電子レンジ加熱用容器を使用した。また、実施例1~4および比較例1~5を構成する積層シートは、
図2で示される通りであり、その積層シートにおいて積層される第2接着剤層、および発熱基材層は材料も厚さも同じものを使用した。しかし、実施例1~4および比較例1~5を構成する積層シートにおいて積層される紙層の坪量、第1接着剤層に用いる接着剤の種類、樹脂フィルム層の厚さが異なるため、以下にこれらの層について説明する。
【0055】
(実施例1)
紙層の坪量は200g/m2であり、第1接着剤層に用いる接着剤はポリプロピレン(PP)であり、樹脂フィルム層の厚さは60μmである。
【0056】
(実施例2)
紙層の坪量は250g/m2であり、第1接着剤層に用いる接着剤はグルーであり、樹脂フィルム層の厚さは42μmである。
【0057】
(実施例3)
紙層の坪量は300g/m2であり、第1接着剤層に用いる接着剤はポリプロピレン(PP)であり、樹脂フィルム層の厚さは60μmである。
【0058】
(実施例4)
紙層の坪量は300g/m2であり、第1接着剤層に用いる接着剤はポリプロピレン(PP)であり、樹脂フィルム層の厚さは70μmである。
【0059】
(比較例1)
紙層の坪量は150g/m2であり、第1接着剤層に用いる接着剤はグルーであり、樹脂フィルム層の厚さは42μmである。
【0060】
(比較例2)
紙層の坪量は200g/m2であり、第1接着剤層に用いる接着剤はグルーであり、樹脂フィルム層の厚さは42μmである。
【0061】
(比較例3)
紙層の坪量は350g/m2であり、第1接着剤層に用いる接着剤はポリプロピレン(PP)であり、樹脂フィルム層の厚さは60μmである。
【0062】
(比較例4)
板紙の坪量は350g/m2であり、第1接着剤層に用いる接着剤はポリプロピレン(PP)であり、樹脂フィルム層の厚さは70μmである。
【0063】
(比較例5)
紙層の坪量は300g/m2であり、第1接着剤層に用いる接着剤はポリエチレン(PE)であり、樹脂フィルム層の厚さは60μmである。
【0064】
(試験方法)
上記各電子レンジ加熱用容器を製函した際の製函適性としての歪みの有無を目視により確認した。また、電子レンジ加熱調理後は、収納された食品への焼き目、積層シート端面からの食品から出た液状物質の浸み込みの有無、およびピンホール発生による、食品から出た液状物質の漏れの有無を目視により確認するとともに、容器の持ち手部である縁部の温度も合わせて確認した。
【0065】
(試験結果・考察)
上記試験方法による試験結果を表1に示す。
【0066】
実施例1~4は、製函した際の歪みがなく、電子レンジ加熱調理後は、食品への焼き目は良好で、持ち手部である縁部の温度は50℃、60℃、または70℃以上であり、積層シートの端面からの食品から出た液状物質の浸み込みはなく、ピンホールは発生しなかった。
【0067】
一方、比較例1、2は、電子レンジ加熱調理後は、食品への焼き目は良好で、積層シートの端面からの食品から出た液状物質の浸み込みはなかったが、製函した際の歪みがあり、電子レンジ加熱調理後に、ピンホールが発生した。また、比較例2の電子レンジ加熱調理後の持ち手部である縁部の温度は70℃以上だったが、比較例1の電子レンジ加熱調理後の持ち手部である縁部の温度は80℃以上だった。
また、比較例3~5は、製函した際の歪みがなく、電子レンジ加熱調理後は、食品への焼き目は良好で、持ち手部である縁部の温度は45℃以上であり、ピンホールは発生しなかったが、積層シートの端面からの食品から出た液状物質の浸み込みがあった。
【0068】
以上の試験結果より、実施例1~4における紙層の坪量、第1接着剤層に用いる接着剤の種類、樹脂フィルム層の厚さの組み合わせによる積層シートを用いた電子レンジ加熱用容器は、電子レンジ加熱後の食品への焼き目が良好であるだけでなく、製函適性がよく、電子レンジ加熱調理後に電子レンジから容器を取り出す際のやけどのおそれが少なく、食品の品質劣化を防ぎ、容器の密封性が安定することが分かる。
【0069】
【0070】
以上の通り、本発明の電子レンジ加熱用容器は、樹脂フィルム層、紙層、マイクロ波照射によって発熱する発熱基材層がこの順で積層された積層シートからなるブランクシートを成形してなり、隣り合う側面板の間および隣り合う縁片の間に、樹脂フィルム層のみが切れ目なく連続して設けられている。また、隣り合う側面板同士および隣り合う縁片同士は、それぞれ重ね合わされず、かつ樹脂フィルム層のみからなる隙間ができないように、樹脂フィルム層と一体に接合されている。
よって、電子レンジ加熱用容器を構成する積層シートの重なりによる段差がなく、紙製でありながら樹脂フィルム層により密封性が高くなる。また、電子レンジ加熱用容器の最内層の発熱基材層と最外層の樹脂フィルム層の間に紙層を設けることで、電子レンジで加熱した時に、紙層の断熱機能により樹脂フィルム層が溶けることなく、収容された食品に焦げ目を付けることができる。
【0071】
また、本発明の電子レンジ加熱用容器の製造方法は、孔抜き工程と、樹脂フィルム層積層工程と、ブランクシートに打ち抜く抜き工程と、製函工程と、を備え、複雑な工程を経ず、能率よく上記の電子レンジ加熱用容器を製造することができる。
【符号の説明】
【0072】
1・・・底面板
1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h・・・谷折り線
2、3、4、5、6、7、8、9・・・側面板
2a、3a、4a、5a、6a、7a、8a、9a・・・山折り線
10、11、12、13、14、15、16、17・・・縁片
10a、10b、12a、12b、14a、14b、16a、16b・・・接着片
30・・・ブランクシート
40・・・積層シート
41・・・紙層と発熱基材層とがこの順で積層された積層体により構成されるシート
51・・・樹脂フィルム層
52・・・第1接着剤層
53・・・紙層
54・・・第2接着剤層
60・・・発熱基材層
61・・・基材フィルム層
62・・・金属蒸着層
71・・・切欠き孔
72・・・ブランクシート外形
100・・・電子レンジ加熱用容器