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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】粗砕装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 18/06 20060101AFI20240723BHJP
   B02C 18/16 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B02C18/06 Z
B02C18/16 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020181599
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072254
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】児玉 裕紀
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-104236(JP,A)
【文献】特開2016-163944(JP,A)
【文献】特開平06-170262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 18/00 - 18/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状をなすシート片を粗砕する粗砕部と、
前記シート片を前記粗砕部に供給する供給口を有し、投入された前記シート片を前記供
給口から前記粗砕部に供給するホッパーと、
前記シート片の姿勢を調整する姿勢調整部と、を備え、
前記ホッパーは、前記供給口を介して対向し、前記シート片を前記粗砕部に案内する一
対の案内板と、前記一対の案内板を連結する一対の連結板と、を有し、
前記姿勢調整部は、前記連結板に設けられ、前記ホッパーの内側に向かって突出し、前
記粗砕部で粗砕中の前記シート片と当接して、粗砕中の前記シート片の前記粗砕部から遠
位側の部分の姿勢を調整する突出部材を有することを特徴とする粗砕装置。
【請求項2】
前記突出部材は、前記シート片と当接する一対の姿勢調整面を有する請求項1に記載の
粗砕装置。
【請求項3】
前記突出部材は、前記連結板の内面の法線に対して傾斜している請求項2に記載の粗砕
装置。
【請求項4】
前記突出部材は、前記供給口側に偏在した位置に位置している請求項1ないし3のいず
れか1項に記載の粗砕装置。
【請求項5】
前記突出部材は、前記ホッパーの深さ方向に沿って延在している請求項1ないし3のい
ずれか1項に記載の粗砕装置。
【請求項6】
粗砕前の前記シート片の姿勢を調整する予備姿勢調整部を備える請求項1ないしのい
ずれか1項に記載も粗砕装置。
【請求項7】
前記予備姿勢調整部は、前記一対の連結板のうち、前記突出部材が設けられている連結
板に設けられ、前記ホッパー内に気体を噴出する気体噴出部を有する請求項に記載の粗
砕装置。
【請求項8】
前記供給口の前記案内板が対向する方向の長さは、前記シート片の幅よりも長い請求項
1ないしのいずれか1項に記載の粗砕装置。
【請求項9】
前記粗砕部は、前記一対の連結板が対向する方向に沿って延在する軸回りに回転する一
対の粗砕刃を有する請求項1ないしのいずれか1項に記載の粗砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、水を極力利用しない乾式によるシート製造装置が提案されている。このシート製造装置は、例えば、繊維を含む材料を粗砕する粗砕部と、粗砕部で生成された粗砕片を改選する解繊部と、解繊部で生成された解繊物を解析させる堆積部と、堆積部によって堆積された堆積物を成形する成形部と、を備えるものが知られている。
【0003】
これらのうち、粗砕部としては、例えば、特許文献1に記載されているようなシュレッダーが挙げられる。特許文献1のシュレッダーは、シートを受けるホッパーと、ホッパーから供給されたシートを粗砕するカッターユニットを有する。また、カッターユニットは、一対の回転刃を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-251209号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、供給されたシートの形状によっては、粗砕中にシートが好ましくない姿勢となってしまうおそれがある。この場合、シートの粗砕が不十分となり、シート製造における定量性が損なわれてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粗砕装置は、長尺状をなすシート片を粗砕する粗砕部と、
前記シート片を前記粗砕部に供給する供給口を有し、投入された前記シート片を前記供給口から前記粗砕部に供給するホッパーと、
前記シート片の姿勢を調整する姿勢調整部と、を備え、
前記ホッパーは、前記供給口を介して対向し、前記シート片を前記粗砕部に案内する一対の案内板と、前記一対の案内板を連結する一対の連結板と、を有し、
前記姿勢調整部は、前記連結板に設けられ、前記ホッパーの内側に向かって突出し、前記粗砕部で粗砕中の前記シート片と当接して、粗砕中の前記シート片の前記粗砕部から遠位側の部分の姿勢を調整する突出部材を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る粗砕装置を備える繊維構造体製造装置を示す概略側面図である。
図2図2は、図1に示す繊維構造体製造装置の各部の位置関係を説明するための模式図であって、鉛直上方から見た図である。
図3図3は、図1に示す繊維構造体製造装置の各部の位置関係を説明するための模式図であって、図2中矢印A方向から見た図である。
図4図4は、図1に示す粗砕装置の斜視図である。
図5図5は、図4中矢印B-B線断面図である。
図6図6は、図1に示す粗砕装置の概略構成図である。
図7図7は、シート片が正常に粗砕部で粗砕されている状態を示す図である。
図8図8は、シート片が好ましくない姿勢で粗砕部で粗砕されている状態を示す図である。
図9図9は、粗砕刃を上方から見た図である。
図10図10は、ホッパーにシート片が供給されている状態を説明するための図である。
図11図11は、粗砕中のシート片の姿勢が変化している状態を示す図である。
図12図12は、姿勢調整部によってシート片の姿勢が調整されている状態を示す図である。
図13図13は、第2実施形態に係る粗砕装置が備えるホッパーの斜視図である。
図14図14は、第3実施形態に係る粗砕装置が備えるホッパーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の粗砕装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る粗砕装置を備える繊維構造体製造装置を示す概略側面図である。図2は、図1に示す繊維構造体製造装置の各部の位置関係を説明するための模式図であって、鉛直上方から見た図である。図3は、図1に示す繊維構造体製造装置の各部の位置関係を説明するための模式図であって、図2中矢印A方向から見た図である。図4は、図1に示す粗砕装置の斜視図である。図5は、図4中矢印B-B線断面図である。図6は、図1に示す粗砕装置の概略構成図である。図7は、シート片が正常に粗砕部で粗砕されている状態を示す図である。図8は、シート片が好ましくない姿勢で粗砕部で粗砕されている状態を示す図である。図9は、粗砕刃を上方から見た図である。図10は、ホッパーにシート片が供給されている状態を説明するための図である。図11は、粗砕中のシート片の姿勢が変化している状態を示す図である。図12は、姿勢調整部によってシート片の姿勢が調整されている状態を示す図である。
【0009】
なお、以下では、説明の便宜上、図2図5図7図14に示すように、互いに直交する3軸をx軸、y軸およびz軸とする。また、x軸とy軸を含むx-y平面が水平となっており、z軸が鉛直となっている。また、各軸の矢印が向いた方向を「+」、その反対方向を「-」と言う。また、図1図3図5図7図8および図10図14の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言うことがある。
【0010】
なお、図1は、概略構成図であり、繊維構造体製造装置100の各部の位置関係は、図示の位置関係とは大きく異なる。また、各図において、原料M1、粗砕片M2、解繊物M3、第1選別物M4-1、第2選別物M4-2、第1ウェブM5、細分体M6、混合物M7、第2ウェブM8、シートSおよびシート片S1が搬送される方向、すなわち、矢印で示す方向を搬送方向とも言う。また、矢印の先端側を搬送方向上流側、矢印の基端側を搬送方向下流側とも言う。
【0011】
図1に示すように、繊維構造体製造装置100は、原料M1および後述するシート片S1を粗砕、解繊し、結合素材を混合して堆積させ、この堆積物を成形部20によって成形することで成形体を得る装置である。
【0012】
また、繊維構造体製造装置100により製造される成形体は、例えば、再生紙のようなシート状をなしていてもよく、ブロック状をなしていてもよい。また、成形体の密度も特に限定されず、シートのような繊維の密度が比較的高い成形体であってもよく、スポンジ体のような繊維の密度が比較的低い成形体であってもよく、これらの特性が混在する成形体であってもよい。
【0013】
以下では、原料M1は、使用済みまたは不要となった古紙とし、製造される成形体は、再生紙であるシートSとして説明する。
【0014】
図1に示す繊維構造体製造装置100は、原料供給部11と、本発明の粗砕装置10と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、混合部17と、分散部18と、堆積部である第2ウェブ形成部19と、成形部20と、切断部21と、ストック部22と、回収部27と、これらの作動を制御する制御部28と、を備えている。
【0015】
また、繊維構造体製造装置100は、加湿部231と、加湿部232と、加湿部233と、加湿部234と、加湿部235と、加湿部236と、を備えている。その他、繊維構造体製造装置100は、ブロアー261と、ブロアー262と、ブロアー263と、を備えている。
【0016】
また、繊維構造体製造装置100では、原料供給工程と、粗砕工程と、解繊工程と、選別工程と、第1ウェブ形成工程と、分断工程と、混合工程と、ほぐし工程と、第2ウェブ形成工程と、シート形成工程と、切断工程と、がこの順に実行される。
【0017】
以下、各部の構成について説明する。
原料供給部11は、粗砕装置10に原料M1を供給する原料供給工程を行なう部分である。この原料M1としては、セルロース繊維を含む繊維含有物からなるシート状材料である。なお、セルロース繊維とは、化合物としてのセルロースを主成分とし繊維状をなすものであればよく、セルロースの他に、ヘミセルロース、リグニンを含むものであってもよい。また、原料M1は、織布、不織布等、形態は問わない。また、原料M1は、例えば、古紙を解繊して再生、製造されたリサイクルペーパーや、合成紙のユポ紙(登録商標)であってもよいし、リサイクルペーパーでなくてもよい。また、本実施形態では、原料M1は、使用済みまたは不要となった古紙である。
【0018】
粗砕装置10は、原料供給部11から供給された原料M1および後述する切断部21で切断された切断くずを、大気中等の気中で粗砕して粗砕片M2を生成する粗砕工程を行なう部分である。粗砕装置10の構成については、後に詳述する。粗砕装置10によって生成された粗砕片M2は、管241を通過して、解繊部13に搬送される。
【0019】
解繊部13は、粗砕片M2を気中で、すなわち、乾式で解繊する解繊工程を行なう部分である。この解繊部13での解繊処理により、粗砕片M2から解繊物M3を生成することができる。ここで「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる粗砕片M2を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。そして、この解きほぐされたものが解繊物M3となる。解繊物M3の形状は、線状や帯状である。また、解繊物M3同士は、絡み合って塊状となった状態、すなわち、いわゆる「ダマ」を形成している状態で存在してもよい。
【0020】
解繊部13は、例えば本実施形態では、高速回転する回転刃と、回転刃の外周に位置するライナーとを有するインペラーミルで構成されている。解繊部13に流入してきた粗砕片M2は、回転刃とライナーとの間に挟まれて解繊される。
【0021】
また、解繊部13は、回転刃の回転により、粗砕装置10から選別部14に向かう空気の流れ、すなわち、気流を発生させることができる。これにより、粗砕片M2を管241から解繊部13に吸引することができる。また、解繊処理後、解繊物M3を、管242を介して選別部14に送り出すことができる。
【0022】
管242の途中には、ブロアー261が設置されている。ブロアー261は、選別部14に向かう気流を発生させる気流発生装置である。これにより、選別部14への解繊物M3の送り出しが促進される。
【0023】
選別部14は、解繊物M3を、繊維の長さの大小によって選別する選別工程を行なう部分である。選別部14では、解繊物M3は、第1選別物M4-1と、第1選別物M4-1よりも大きい第2選別物M4-2とに選別される。第1選別物M4-1は、その後のシートSの製造に適した大きさのものとなっている。その平均長さは、1μm以上、30μm以下であるのが好ましい。一方、第2選別物M4-2は、例えば、解繊が不十分なものや、解繊された繊維同士が過剰に凝集したもの等が含まれる。
【0024】
選別部14は、ドラム部141と、ドラム部141を収納するハウジング部142とを有する。
【0025】
ドラム部141は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部141には、解繊物M3が流入してくる。そして、ドラム部141が回転することにより、網の目開きよりも小さい解繊物M3は、第1選別物M4-1として選別され、網の目開き以上の大きさの解繊物M3は、第2選別物M4-2として選別される。
第1選別物M4-1は、ドラム部141から落下する。
【0026】
一方、第2選別物M4-2は、ドラム部141に接続されている管243に送り出される。管243は、ドラム部141と反対側、すなわち、上流側が管241に接続されている。この管243を通過した第2選別物M4-2は、管241内で粗砕片M2と合流して、粗砕片M2とともに解繊部13に流入する。これにより、第2選別物M4-2は、解繊部13に戻されて、粗砕片M2とともに解繊処理される。
【0027】
また、ドラム部141から落下した第1選別物M4-1は、気中に分散しつつ落下して、ドラム部141の下方に位置する第1ウェブ形成部15に向かう。第1ウェブ形成部15は、第1選別物M4-1から第1ウェブM5を形成する第1ウェブ形成工程を行なう部分である。第1ウェブ形成部15は、メッシュベルト151と、3つの張架ローラー152と、吸引部153とを有している。
【0028】
メッシュベルト151は、無端ベルトであり、第1選別物M4-1が堆積する。このメッシュベルト151は、3つの張架ローラー152に掛け回されている。そして、張架ローラー152の回転駆動により、メッシュベルト151上の第1選別物M4-1は、下流側に搬送される。
【0029】
第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の目開き以上の大きさとなっている。これにより、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の通過が規制され、よって、メッシュベルト151上に堆積することができる。また、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151上に堆積しつつ、メッシュベルト151ごと下流側に搬送されるため、層状の第1ウェブM5として形成される。
【0030】
また、第1選別物M4-1には、例えば塵や埃等が混在しているおそれがある。塵や埃は、例えば、粗砕や解繊によって生じることがある。そして、このような塵や埃は、後述する回収部27に回収されることとなる。
【0031】
吸引部153は、メッシュベルト151の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト151を通過した塵や埃を空気ごと吸引することができる。
【0032】
また、吸引部153は、管244を介して、回収部27に接続されている。吸引部153で吸引された塵や埃は、回収部27に回収される。
【0033】
回収部27には、管245がさらに接続されている。また、管245の途中には、ブロアー262が設置されている。このブロアー262の作動により、吸引部153で吸引力を生じさせることができる。これにより、メッシュベルト151上における第1ウェブM5の形成が促進される。この第1ウェブM5は、塵や埃等が除去されたものとなる。また、塵や埃は、ブロアー262の作動により、管244を通過して、回収部27まで到達する。
【0034】
ハウジング部142は、加湿部232と接続されている。加湿部232は、気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部142内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、第1選別物M4-1を加湿することができ、よって、第1選別物M4-1がハウジング部142の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0035】
選別部14の下流側には、加湿部235が配置されている。加湿部235は、水を噴霧する超音波式加湿器で構成されている。これにより、第1ウェブM5に水分を供給することができ、よって、第1ウェブM5の水分量が調整される。この調整により、静電力による第1ウェブM5のメッシュベルト151への吸着を抑制することができる。これにより、第1ウェブM5は、メッシュベルト151が張架ローラー152で折り返される位置で、メッシュベルト151から容易に剥離される。
【0036】
加湿部235の下流側には、細分部16が配置されている。細分部16は、メッシュベルト151から剥離した第1ウェブM5を分断する分断工程を行なう部分である。細分部16は、回転可能に支持されたプロペラ161と、プロペラ161を収納するハウジング部162とを有している。そして、回転するプロペラ161により、第1ウェブM5を分断することができる。分断された第1ウェブM5は、細分体M6となる。また、細分体M6は、ハウジング部162内を下降する。
【0037】
ハウジング部162は、加湿部233と接続されている。加湿部233は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部162内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、細分体M6がプロペラ161やハウジング部162の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0038】
細分部16の下流側には、混合部17が配置されている。混合部17は、細分体M6と結着剤P1とを混合する混合工程を行なう部分である。この混合部17は、結着剤供給部171と、管172と、ブロアー173とを有している。
【0039】
管172は、細分部16のハウジング部162と、分散部18のハウジング部182とを接続しており、細分体M6と結着剤P1との混合物M7が通過する流路である。
【0040】
管172の途中には、結着剤供給部171が接続されている。結着剤供給部171は、スクリューフィーダー174を有している。このスクリューフィーダー174が回転駆動することにより、結着剤P1を粉体または粒子として管172に供給することができる。管172に供給された結着剤P1は、細分体M6と混合されて混合物M7となる。
【0041】
なお、結着剤P1は、後の工程で繊維同士を結着させる結合素材であり、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、澱粉、デキストリン、グリコーゲン、アミロース、ヒアルロン酸、葛、こんにゃく、片栗粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、天然ガム糊、繊維誘導糊、海藻類、動物性蛋白質等を用いることができるが、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66等のポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、熱可塑性樹脂としては、ポリエステルまたはこれを含むものを用いる。
【0042】
なお、結着剤供給部171から供給されるものとしては、結着剤P1の他に、例えば、繊維を着色するための着色剤、繊維の凝集や結着剤P1の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃えにくくするための難燃剤、シートSの紙力を増強するための紙力増強剤等が含まれていてもよい。または、予めそれらを結着剤P1に含ませて複合化したものを結着剤供給部171から供給してもよい。
【0043】
また、管172の途中には、結着剤供給部171よりも下流側にブロアー173が設置されている。ブロアー173が有する羽根等の回転部の作用により、細分体M6と結着剤P1とが混合される。また、ブロアー173は、分散部18に向かう気流を発生させることができる。この気流により、管172内で、細分体M6と結着剤P1とを撹拌することができる。これにより、混合物M7は、細分体M6と結着剤P1とが均一に分散した状態で、分散部18に流入することができる。また、混合物M7中の細分体M6は、管172内を通過する過程でほぐされて、より細かい繊維状となる。
【0044】
分散部18は、混合物M7における、互いに絡み合った繊維同士をほぐすほぐし工程を行なう部分である。分散部18は、ドラム部181と、ドラム部181を収納するハウジング部182とを有する。
【0045】
ドラム部181は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部181には、混合物M7が流入してくる。そして、ドラム部181が回転することにより、混合物M7のうち、網の目開きよりも小さい繊維等が、ドラム部181を通過することができる。その際、混合物M7がほぐされることとなる。
【0046】
ハウジング部182は、加湿部234と接続されている。加湿部234は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部182内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、ハウジング部182内を加湿することができ、よって、混合物M7がハウジング部182の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0047】
また、ドラム部181でほぐされた混合物M7は、気中に分散しつつ落下して、ドラム部181の下方に位置する第2ウェブ形成部19に向かう。第2ウェブ形成部19は、混合物M7から第2ウェブM8を形成する第2ウェブ形成工程を行なう部分である。第2ウェブ形成部19は、メッシュベルト191と、張架ローラー192と、吸引部193とを有している。
【0048】
メッシュベルト191は、無端ベルトであり、混合物M7が堆積する。このメッシュベルト191は、4つの張架ローラー192に掛け回されている。そして、張架ローラー192の回転駆動により、メッシュベルト191上の混合物M7は、下流側に搬送される。
【0049】
また、メッシュベルト191上のほとんどの混合物M7は、メッシュベルト191の目開き以上の大きさである。これにより、混合物M7は、メッシュベルト191を通過してしまうのが規制され、よって、メッシュベルト191上に堆積することができる。また、混合物M7は、メッシュベルト191上に堆積しつつ、メッシュベルト191ごと下流側に搬送されるため、層状の第2ウェブM8として形成される。
【0050】
吸引部193は、メッシュベルト191の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト191上に混合物M7を吸引することができ、よって、混合物M7のメッシュベルト191上への堆積が促進される。
【0051】
吸引部193には、管246が接続されている。また、この管246の途中には、ブロアー263が設置されている。このブロアー263の作動により、吸引部193で吸引力を生じさせることができる。
【0052】
分散部18の下流側には、加湿部236が配置されている。加湿部236は、加湿部235と同様の超音波式加湿器で構成されている。これにより、第2ウェブM8に水分を供給することができ、よって、第2ウェブM8の水分量が調整される。この調整により、静電力による第2ウェブM8のメッシュベルト191への吸着を抑制することができる。これにより、第2ウェブM8は、メッシュベルト191が張架ローラー192で折り返される位置で、メッシュベルト191から容易に剥離される。
【0053】
なお、加湿部231~加湿部236までに加えられる合計水分量は、例えば、加湿前の材料100質量部に対して0.5質量部以上、20質量部以下であるのが好ましい。
【0054】
第2ウェブ形成部19の下流側には、成形部20が配置されている。成形部20は、第2ウェブM8からシートSを形成するシート形成工程を行なう部分である。この成形部20は、加圧部201と、加熱部202とを有している。
【0055】
加圧部201は、一対のカレンダーローラー203を有し、カレンダーローラー203の間で第2ウェブM8を加熱せずに加圧することができる。これにより、第2ウェブM8の密度が高められる。なお、このときの加熱の程度としては、例えば、結着剤P1を溶融させない程度であるのが好ましい。そして、この第2ウェブM8は、加熱部202に向けて搬送される。なお、一対のカレンダーローラー203のうちの一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0056】
加熱部202は、一対の加熱ローラー204を有し、加熱ローラー204の間で第2ウェブM8を加熱しつつ、加圧することができる。さらに、加熱部202は、第2ウェブM8を下流に搬送する搬送部として機能を有する。この加熱加圧により、第2ウェブM8内では、結着剤P1が溶融して、この溶融した結着剤P1を介して繊維同士が結着する。これにより、シートSが形成される。そして、このシートSは、切断部21に向けて搬送される。なお、一対の加熱ローラー204の一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0057】
成形部20の下流側には、切断部21が配置されている。切断部21は、シートSを切断する切断工程を行なう部分である。この切断部21は、第1切断部211と、第2切断部212とを有する。
【0058】
第1切断部211は、シートSの搬送方向と交差する方向、特に直交する方向にシートSを切断するものである。
【0059】
第2切断部212は、第1切断部211の下流側で、シートSの搬送方向に平行な方向にシートSを切断するものである。この切断は、シートSの両側端部、すなわち、図3に示すように、+y軸方向および-y軸方向の端部の不要な部分を除去して、シートSの幅を整えるものであり、切断除去された部分は、いわゆる「みみ」と呼ばれる。以下、この切断除去された部分をシート片S1と言う。
【0060】
図3に示すように、第2切断部212は、シートSの+y軸方向の端部を切断する第1切断ユニット213と、シートSの-y軸方向の端部を切断する第2切断ユニット214とを有している。第1切断ユニット213および第2切断ユニット214は、+y軸側からこの順で離間して配置されている。第1切断ユニット213および第2切断ユニット214は、同様の構成であるため、以下、第1切断ユニット213について代表的に説明する。
【0061】
第1切断ユニット213は、2つの回転刃215を有する。各回転刃215は、シートSの搬送経路を介してz軸に沿って並んで配置されている。また、各回転刃215は、円板状をなし、厚さ方向がy軸方向に沿った向きで配置されている。回転刃215の外縁部は、鋭利な刃先となっており、各回転刃215の間を通過した際にシートSを搬送方向に沿って切断することができる。
【0062】
このような第2切断部212によって、シート片S1が形成される。また、後述するように、このシート片S1は、粗砕装置10に供給され、粗砕片M2となる。一方、所望の形状、大きさのシートSは、さらに下流側に搬送されて、ストック部22に蓄積される。
【0063】
以上説明した繊維構造体製造装置100が備える各部は、制御部28と電気的に接続されている。そして、これら各部の作動は、制御部28によって制御される。
【0064】
制御部28は、CPU(Central Processing Unit)281と、記憶部282とを有している。CPU281は、例えば、各種の判断や各種の命令等を行なうことができる。
【0065】
記憶部282は、例えば、シートSを製造するプログラム等の各種プログラム等が記憶されている。
【0066】
また、この制御部28は、繊維構造体製造装置100に内蔵されていてもよいし、外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。また、外部機器は、例えば、繊維構造体製造装置100とケーブル等を介して通信される場合、無線通信される場合、例えばインターネット等のようなネットワークを、繊維構造体製造装置100を介して接続されている場合等がある。
【0067】
また、CPU281と、記憶部282とは、例えば、一体化されて、1つのユニットとして構成されていてもよいし、CPU281が繊維構造体製造装置100に内蔵され、記憶部282が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよいし、記憶部282が繊維構造体製造装置100に内蔵され、CPU281が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。
【0068】
次に、繊維構造体製造装置100の各部の位置関係について説明する。
図2および図3に示すように、繊維構造体製造装置100は、前述した各部を収納する筐体50を有する。粗砕装置10と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、混合部17と、分散部18と、第2ウェブ形成部19と、成形部20と、切断部21とは、筐体50内に設置されている。また、原料供給部11は、筐体50の外側で、かつ、筐体50の+y軸側に設置されている。また、ストック部22は、筐体50の外側で、かつ、筐体50の-x軸側に設置されている。
【0069】
図2に示すように、粗砕装置10は、筐体50内の+y軸側で、かつ、-x軸側に偏在した位置に設置されている。解繊部13は、粗砕装置10の-y軸側に設置されている。選別部14、第1ウェブ形成部15および細分部16は、解繊部13の+x軸側に設置されている。混合部17は、選別部14、第1ウェブ形成部15および細分部16の+x軸側に設置されている。分散部18および第2ウェブ形成部19は、混合部17の+y軸側に設置されている。成形部20は、分散部18および第2ウェブ形成部19の-x軸側に設置されている。切断部21は、成形部20の-x軸側に設置されている。切断部21を経たシートSは、-x軸側に搬送され、筐体50の外側、すなわち、ストック部22に排出される。
【0070】
また、図3に示すように、切断部21は、粗砕装置10の+z軸側に設置されている。これにより、切断部21の第2切断部212によって切断されたみみ、すなわち、シート片S1は、下方に落下し、粗砕装置10に供給される。これにより、シート片S1を再度原料M1とともに粗砕することができ、歩留まりを高めることができる。
【0071】
次に、粗砕装置10について説明する。
図3図6に示すように、粗砕装置10は、原料M1およびシート片S1を粗砕する粗砕部3と、原料M1およびシート片S1を粗砕部3に案内するホッパー4と、気体噴出部5と、を有する。
【0072】
図3および図4に示すように、粗砕部3は、一対の粗砕刃31と、シュート32と、を有する。一対の粗砕刃31は、互いに反対方向に回転することにより、これらの間で原料M1およびシート片S1を粗砕して、すなわち、裁断して粗砕片M2にすることができる。一対の粗砕刃31は、x軸方向に延在する円柱状または円筒状をなしている。また、一対の粗砕刃31は、y軸方向に並んで配置されている。
【0073】
また、図9に示すように、粗砕刃31は、それぞれ、シャフト311と、シャフト311に対して同心的に配置された複数の刃312を有する。シャフト311は、x軸方向に延在する向きで設置されている。また、各刃312は、シャフト311の延在方向、すなわち、x軸方向に沿って配置されている。また。各刃312は、y軸方向に対して傾斜している。また、隣り合う粗砕刃31は、刃312がx軸方向に重なり合っている。このため、原料M1またはシート片S1を効率よく裁断することができる。
【0074】
粗砕片M2の形状や大きさは、解繊部13における解繊処理に適しているのが好ましく、例えば、1辺の長さが100mm以下の小片であるのが好ましく、10mm以上、70mm以下の小片であるのがより好ましい。
【0075】
図3に示すように、シュート32は、一対の粗砕刃31の-z軸側に設置されている。シュート32は、漏斗状をなしている。これにより、粗砕片M2を受けることができる。また、シュート32には、管241が接続されている。管241は、シュート32と解繊部13とを接続している。これにより、管241を介して粗砕片M2を解繊部13に搬送することができる。
【0076】
図3図5に示すように、ホッパー4は、粗砕部3の鉛直上方、すなわち、+z軸側に設置された受け部材である。ホッパー4は、一対の案内板41および案内板42と、これらを連結する一対の連結板43および連結板44を有する。また、案内板41、案内板42、連結板43および連結板44が互いに接合されることで、+z軸側に開口4Aが形成され、-z軸側に開口4Bが形成されている。
【0077】
開口4Aは、原料M1およびシート片S1を導入する導入口である。一方、開口4Bは、原料M1およびシート片S1をホッパー4から排出することによって粗砕部3に原料M1およびシート片S1を供給する供給口である。
【0078】
案内板41および案内板42は、供給口である開口4Bを介してy軸方向に対向して配置されている。案内板41は、+y軸側に位置し、案内板42は、-y軸側に位置している。また、連結板43および連結板44は、開口4Bを介してx軸方向に対向して配置されている。連結板43は、+x軸側に位置し、連結板44は、-x軸側に位置している。
【0079】
また、案内板41~連結板44の内面は、落下中の原料M1およびシート片S1を粗砕部3に案内する案内面440である。案内面440は、第1案内面411と、第2案内面421と、第3案内面431と、第4案内面441と、を有する。案内板41の内面が、第1案内面411であり、案内板42の内面が、第2案内面421であり、連結板43の内面が、第3案内面431であり、連結板44の内面が、第4案内面441である。落下してきた原料M1およびシート片S1は、第1案内面411~第4案内面441のいずれかと当接し、摺動しつつ開口4Bに案内される。
【0080】
また、案内板41および案内板42は、互いに反対方向に傾斜している。案内板41および案内板42は、-z軸側に行くに従って離間距離が小さくなる向きで傾斜している。換言すれば、第1案内面411および第2案内面421は、鉛直下方、すなわち、-z軸側に行くに従って離間距離が小さくなるように傾斜している。これにより、ホッパー4に落下してきた原料M1およびシート片S1をより効果的に粗砕部3に案内することができる。
【0081】
このように、案内面440は、粗砕部3の鉛直上方で、かつ、粗砕部3を介して対向する第1案内面411および第2案内面421を有する。そして、第1案内面411および第2案内面421は、鉛直下方に行くに従って離間距離が小さくなるように傾斜している。これにより、ホッパー4に落下してきた原料M1およびシート片S1をより効果的に粗砕部3に案内することができる。
【0082】
また、図3に示すように、案内板42の+y軸側には、所定距離離間して案内板45が設置されている。案内板42および案内板45の間には、原料M1が供給され、これらの間を通過して粗砕部3に供給される。
【0083】
次に、気体噴出部5について説明する。
図4図6に示すように、気体を噴出する噴出口51を有する噴出部本体52と、供給管53と、ブロアー54と、加湿部55と、除電部56と、を有する。
【0084】
噴出部本体52は、内腔部520を有し、外形形状がy軸方向に延在するブロック状の箱体で構成されている。噴出部本体52は、ホッパー4の+z軸側で、かつ、-x軸側に設置されている。具体的には、噴出部本体52は、連結板44の+z軸側に設置されている。また、噴出部本体52の+x軸側の壁部521、すなわち、ホッパー4側の壁部521は、y-z平面に対して傾斜している。また、壁部521は、ホッパー4内を向くように、すなわち、案内面440側を向くように傾斜している。
【0085】
また、壁部521には、噴出口51が設けられている。噴出口51は、壁部521の厚さ方向に貫通する貫通孔で構成される。すなわち、内腔部520と噴出部本体52の外部とは、噴出口51を介して連通している。前述したように、壁部521が案内面440側を向くように傾斜しているため、噴出口51は、案内面440に向かって気体を噴出する。
【0086】
また、図4に示すように、噴出口51は、+y軸側に偏在する位置、すなわち、第1案内面411に対応する位置に6個、-y軸側に偏在する位置、すなわち、第2案内面421に対応する位置に6個、合計12個設けられている。第1案内面411側の6個の噴出口51は、3個×2列の行列状をなし、第2案内面421側の6個の噴出口51も、3個×2列の行列状をなしている。
【0087】
また、図6に示すように、噴出部本体52には、供給管53を介してブロアー54が接続されている。供給管53は、噴出部本体52の-y軸側に接続されている。ブロアー54の作動により、供給管53を介して気体が噴出部本体52の内腔部520に供給され、各噴出口51から気体が噴出される。また、図6に示すように、ブロアー54は、制御部28と電気的に接続されており、制御部28によってその作動が制御される。
【0088】
ここで、原料M1およびシート片S1は、シート状をなしているため、落下中、その主面が案内面440に張り付くと、その位置に留まってしまうおそれがある。その他、原料M1およびシート片S1の帯電量等によっては、案内面440に張り付きやすくなるおそれがある。原料M1またはシート片S1が案内面440に張り付くと、何枚かの原料M1またはシート片S1がまとまって粗砕部3に供給されることがある。その程度によっては、粗砕部3に原料M1またはシート片S1が詰まってしまうことがある。また、詰まらなかったとしても、定量性が損なわれる。
【0089】
これに対し、粗砕装置10は、噴出口51から案内面440に向かって気体を噴出する気体噴出部5を有する。これにより、落下中の原料M1およびシート片S1の主面が案内面440に密着して張り付こうとしても、空圧により物理的に離脱させることができる。これにより、原料M1およびシート片S1を粗砕部3に効果的に案内することができる。
【0090】
さらに、気体噴出部5は、予備姿勢調整部としても機能する。具体的には、気体噴出部5が気体を噴出することにより、落下中のシート片S1の姿勢を調整することができる。すなわち、落下中のシート片S1が開口4Bに入る際の向きを調整して、所望の姿勢で粗砕部3に供給することができる。なお、所望の姿勢とは、後述するように、粗砕刃31が並ぶ方向、すなわち、y軸方向に対してシート片S1の面方向が傾斜した状態のことを言う。
【0091】
仮に、シート片S1の厚さ方向と、刃312の厚さ方向とが一致した状態で、シート片S1が一対の粗砕刃31を通過した場合、シート片S1の粗砕が不十分となり、所望の大きさの粗砕片M2を得ることができないおそれがある。
【0092】
また、原料M1およびシート片S1の張り付きを防止または抑制することができるため、定量性に優れる。したがって、本発明の粗砕装置10は、シートSの製造に適しており、品質の高いシートSが得られる。
【0093】
このように、粗砕装置10は、粗砕前のシート片S1の姿勢を調整する予備姿勢調整部である気体噴出部5を備える。これにより、粗砕部3にシート片S1を供給する際の姿勢を所望の姿勢とすることができ、より確実に粗砕を行うことができる。さらに、後述する姿勢調整部6との相乗効果によって、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0094】
また、予備姿勢調整部は、一対の連結板43および連結板44のうち、突出部材61が設けられている連結板44に設けられ、ホッパー4内に気体を噴出する気体噴出部5を有する。これにより、気流によって落下中のシート片S1の姿勢を簡単かつ効果的に調整することができる。
【0095】
また、原料M1およびシート片S1がセルロース繊維を含んでいると、切断部21による切断で帯電しにくく、案内面440に張り付きにくくなる傾向があるため、有利である。
【0096】
また、材料であるシート片S1は、搬送されているシートSの縁部が切断された短冊状の切断くずである。前述したように、シートSが切断される際、シートSに張力が掛かった状態で切断されるため、シート片S1は、厚さ方向に湾曲し撓みを有した形状をなしている。このような形状であると、シート片S1の主面が案内面440に対して、より密着しにくくすることができる。よって、シート片S1の案内面440への張り付きをより効果的に防止または抑制することができる。
【0097】
また、原料M1とシート片S1とで粗砕装置10を共有する構成であるため、繊維構造体製造装置100の装置構成の簡素化を図ることができる。
【0098】
また、図5に示すように、噴出口51は、鉛直上方から斜め下方に向かって気体を噴出する。すなわち、噴出口51からの気体の噴出方向は、鉛直上方から鉛直下方に向かうベクトル成分を有する方向である。これにより、原料M1およびシート片S1の落下を効果的に促進することができる。よって、原料M1およびシート片S1が案内面440に張り付くのをより効果的に防止または抑制することができる。
【0099】
また、図5に示すように、シート片S1は、-x軸方向に搬送されているシートSが切断されて形成されるものであるため、落下しつつも、-x軸方向に向かうベクトル成分を有する方向に移動する。これに対し、噴出口51は、鉛直上方から斜め下方に向かって気体を噴出するものであり、その噴出方向は、+x軸方向に向かうベクトル成分を有する。すなわち、噴出方向と落下方向とは、互いに反対方向、換言すれば、カウンター方向となるベクトル成分をそれぞれ有する。
【0100】
このように、材料であるシート片S1は、鉛直方向と交差する方向に移動しつつ粗砕部3に落下するものであり、噴出口51からの気体の噴出方向は、シート片S1が鉛直方向と交差する方向に移動する向きと反対方向のベクトル成分を有する方向である。これにより、落下中または案内面440を摺動中のシート片S1の姿勢を効果的に変更することができる。よって、案内面440へのシート片S1の張り付きを効果的に防止または抑制することができる。
【0101】
また、噴出口51は、気体を間欠的に噴出するのが好ましい。すなわち、制御部28は、ブロアー54への通電のON、OFFを経時的に切り替えるのが好ましい。これにより、気体を連続的に噴出する場合に比べて、低消費電力化を図ることができる。また、ホッパー4内に空気の淀みが形成されるのを効果的に防止または抑制することができる。よって、案内面440への原料M1およびシート片S1の張り付きを効果的に防止または抑制することができる。
【0102】
なお、ブロアー54への通電のON、OFFを経時的に切り替える方法に限定されず、例えば、各流路に絞り弁を設け、開度を調整する方法等により、気体を間欠的に噴出してもよい。
【0103】
また、気体噴出部5が、連続的に気体を噴出する構成であっても、噴出量に強弱をつけたり、噴出する向きを経時的に変更したりすることにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【0104】
また、図6に示すように、供給管53の途中、すなわち、噴出部本体52とブロアー54との間には、加湿部55が接続されている。これにより、噴出口51が噴出する気体を加湿することができる。
【0105】
加湿部55としては、気化式、超音波式のいずれの方式であってもよいが、超音波式であるのが好ましい。これにより、加湿部55内の液体に例えば、保湿剤等を溶解させることができる。保湿剤を溶解させておくことにより、噴出口51が噴出した気体が保湿剤とともに噴出される。これにより、原料M1およびシート片S1の水分量を十分に保つにすることができる。よって、原料M1およびシート片S1が案内面440を摺動する際に、原料M1およびシート片S1の帯電量が過剰に増加してしまうのを効果的に防止することができる。
【0106】
図6に示すように、供給管53の途中、すなわち、噴出部本体52とブロアー54との間には、除電部56が接続されている。除電部56は、例えば、イオナイザーで構成される。除電部56は、供給管53に、原料M1およびシート片S1の静電気を除去するイオンを放出する。これにより、原料M1およびシート片S1の帯電量を減少させることができる。よって、静電気の影響によって原料M1およびシート片S1が案内面440に張り付くのを効果的に防止または抑制することができる。
【0107】
なお、除電部56としては、上記構成に限定されず、例えば、ホッパー4をアースに接続する構成であってもよい。
【0108】
このように、気体噴出部5は、材料である原料M1およびシート片S1の帯電量を減少させる除電部56を有する。これにより、原料M1およびシート片S1の帯電量を減少させることができる。よって、静電気の影響によって原料M1およびシート片S1が案内面440に張り付くのを効果的に防止または抑制することができる。
【0109】
また、案内面440には、帯電を抑制するメッキが施されているのが好ましい。このメッキとしては、比較的導電性が高いものであれば特に限定されず、例えば、ニッケルメッキ、銅メッキ、金メッキ等が挙げられる。これらの中でも、ニッケルメッキであるのが好ましい。ニッケルメッキの場合、帯電量の増加を抑制するという効果に加え、防錆効果も得られる。このため、噴出口51からの空気の湿度が比較的高い場合であっても、ホッパー4が錆びるのを防止または抑制することができる。
【0110】
さて、前述したように、気体噴出部5の作用によって所望の姿勢、向きでシート片S1を粗砕部3に供給したとしても、粗砕部3によって粗砕されているシート片S1は、図11に示すように、粗砕前の部分がホッパー4内で捻じれたりして暴れることがある。この捻じれによって、図7に示すような好ましい姿勢で粗砕しているにも関わらず、図8および図11に示すように、途中から好ましくない姿勢、すなわち、シート片S1の厚さ方向が、粗砕刃31が並ぶ方向に向いてしまうおそれがある(以下、この姿勢を単に「好ましくない姿勢」と言う)。また、図9に示すように、各刃312が、y軸方向に対して傾斜しているからこそ、シート片S1が捻じれやすく、好ましくない姿勢となりやすい。
【0111】
このようなことを鑑みて、本発明では、姿勢調整部6を設けることにより、上記課題を解決することができる。以下、このことについて説明する。
【0112】
図4に示すように、姿勢調整部6は、連結板44に設けられ、ホッパー4の内側に向かって突出した突出部材61を有する。図10に示すように、突出部材61は、粗砕部3で粗砕中のシート片S1と当接して、粗砕中のシート片S1の粗砕部3から遠位側の部分の姿勢を調整するものである。
【0113】
突出部材61は、+x側に行くに従ってy軸方向の幅が漸減する形状をなしている。すなわち、突出部材61は、+x軸側の頂部611と、+y軸側に行くに従って接近するように互いに傾斜した姿勢調整面612とを有している。+y軸側の姿勢調整面612は、第1案内面411に臨んでおり、-y軸側の姿勢調整面612は、第2案内面421に臨んでいる。
【0114】
このような姿勢調整部6を有することにより、粗砕中のシート片S1が、図11に示すように捻じれそうになったとしても、図12に示すように、姿勢調整部6が、粗砕中のシート片S1の粗砕部3から遠位側の部分と当接してシート片S1の軸回りに回転させる、すなわち、捻じるように姿勢を調整することができる。よって、粗砕中のシート片S1が前述したような好ましい姿勢の状態を維持することができる。その結果、より確実に粗砕を行うことができ、定量性を高めることができる。
【0115】
また、突出部材61は、シート片S1と当接する一対の姿勢調整面612を有する。これにより、より確実にシート片S1と当接することができ、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0116】
また、図13に示すように、突出部材61は、連結板44の内面である第4案内面441の法線に対して傾斜している。これにより、さらに確実にシート片S1と当接することができ、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0117】
また、本実施形態では、突出部材61は、供給口である開口4B側に偏在した位置に位置している。これにより、シート片S1の長さに関わらず、より確実にシート片S1と当接することができる。また、シート片S1が捻じれようとする際、シート片S1の粗砕部3から遠位側の部分は、図12に示すように、ホッパー4内で鉛直下方側に偏在しやすい。このため、上記のような配置位置とすることが有効である。
【0118】
また、シート片S1は、一対の連結板43および連結板44が対向している方向に沿って搬送されているシートSを切断した切断片である。そして、突出部材61は、一対の連結板43および連結板44のうち、シート片S1の搬送方向下流側に位置する連結板44に設けられている。シート片S1は、ホッパー4内で、シートSの搬送方向下流側に位置する連結板44に当接しやすい。従って、突出部材61が上記のような位置に配置されていることにより、より確実にシート片S1と当接することができ、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0119】
以上説明したように、粗砕装置10は、長尺状をなすシート片S1を粗砕する粗砕部3と、シート片S1を粗砕部3に供給する供給口である開口4Bを有し、投入されたシート片S1を開口4Bから粗砕部3に供給するホッパー4と、シート片S1の姿勢を調整する姿勢調整部6と、を備える。また、ホッパー4は、開口4Bを介して対向し、シート片S1を粗砕部3に案内する一対の案内板41および案内板42と、一対の案内板41および案内板42を連結する一対の連結板43および連結板44と、を有する。そして、姿勢調整部6は、連結板44に設けられ、ホッパー4の内側に向かって突出し、粗砕部3で粗砕中のシート片S1と当接して、粗砕中のシート片S1の粗砕部3から遠位側の部分の姿勢を調整する突出部材61を有する。これにより、粗砕中のシート片S1が図11に示すように捻じれそうになったとしても、図12に示すように、姿勢調整部6が、粗砕中のシート片S1の粗砕部3から遠位側の部分と当接してシート片S1の軸回りに回転させる、すなわち、捻じるように姿勢を調整することができる。よって、粗砕中のシート片S1が前述したような好ましい姿勢の状態を維持することができる。その結果、より確実に粗砕を行うことができ、定量性を高めることができる。
【0120】
また、前述したように、粗砕部3は、一対の連結板43および連結板44が対向する方向に沿って延在する軸回りに回転する一対の粗砕刃31を有する。粗砕部3がこのような構成であるため、シート片S1が好ましくない姿勢になった場合、粗砕を良好に行うことができない。従って、粗砕部3が上記構成である場合、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0121】
また、供給口である開口4Bの案内板41および案内板42が対向する方向の長さは、シート片S1の幅よりも長い。これにより、シート片S1が好ましくない姿勢であったとしても粗砕部3に供給される。そして、本発明によれば、好ましくない状態のシート片S1を姿勢調整部6によって好ましい姿勢に戻すことができるため、上記構成であると、本発明が特に有効である。
【0122】
なお、シート片S1のアスペクト比、すなわち、平面視における長さLおよび幅Wの比L/Wは、特に限定されないが、1.5以上50以下程度である。長さLは、特に限定されないが、200mm以上500mm以下程度とされる。幅Lは、特に限定されないが、1mm以上70mm以下程度とされる。
【0123】
中でも、長さLが370mm以上であると、粗砕中のシート片S1の粗砕部3から遠位側の部分が、連結板44側に寄せられる挙動を示しやすく、本発明の効果を顕著に得やすくなる。
【0124】
また、気体噴出部5は、省略されていてもよい。
気体噴出部5が省略されている場合、好ましくない姿勢となる可能性が若干上がるため、比L/Wが、2.0以上30以下の場合に本発明の効果を顕著に得やすくなる。
【0125】
また、シート片S1における構成材料の坪量は、120g/m以上300g/m以下であるのが好ましく、150g/m以上200g/m以下であるのがより好ましい。シート片S1が上記のような坪量であると、コシが強く、好ましくない姿勢となった際に、粗砕されずに各粗砕刃31の間を通過してしまう可能性が高まるため、本発明の構成が特に有効である。
【0126】
なお、突出部材61の形状としては、図示の構成に限定されず、例えば、角柱状、円柱状等の棒状をなしていてもよい。
【0127】
また、本実施形態では、突出部材61は、連結板44のみに設けられている構成であるが、本発明ではこれに限定されず、連結板43のみに設けられていてもよく、連結板43および連結板44の双方に設けられていてもよい。
【0128】
なお、本実施形態では、気体噴出部5は、連結板44の上方に設けられている構成について説明したが、本発明ではこれに限定されず、案内板41に設けられていてもよく、案内板42に設けられていてもよく、連結板43に設けられていてもよく、連結板44に設けられていてもよく、これらの2つ以上を組み合わせた形態であってもよい。
【0129】
また、突出部材61は、連結板44と一体的に形成されていてもよく、別体で構成されていてもよい。
【0130】
<第2実施形態>
図13は、第2実施形態に係る粗砕装置が備えるホッパーの斜視図である。
【0131】
以下、これらの図を参照して本発明の粗砕装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0132】
図13に示すように、本実施形態では、突出部材61は、z軸方向に沿って延在する長尺状をなしている。突出部材61は、連結板44のz軸方向の全域にわたって設けられていてもよく、そうでなくてもよい。また、一対の姿勢調整面612は、それぞれ、z軸方向に沿って延在している。
【0133】
このように、突出部材61は、ホッパー4の深さ方向に沿って延在している。これにより、粗砕中のシート片S1の粗砕部3から遠位側の部分がホッパー4内の上側に位置している状態においても姿勢を調整することができる。よって、さらに確実に粗砕を行うことができ、定量性を高めることができる。
【0134】
<第3実施形態>
図14は、第3実施形態に係る粗砕装置が備えるホッパーの斜視図である。
【0135】
以下、これらの図を参照して本発明の粗砕装置の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0136】
図14に示すように、本実施形態では、突出部材61は、ホッパー4内に突出して設けられた板状をなしている。突出部材61は、y軸方向が厚さ方向となる向き、すなわち、面方向がxz平面に沿った向きで配置されている。また、突出部材61は、ホッパー4内をy軸方向に仕切っている。
【0137】
以上、本発明の粗砕装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、粗砕装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0138】
また、本発明の粗砕装置は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成や特徴を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0139】
3…粗砕部、4…ホッパー、4A…開口、4B…開口、5…気体噴出部、6…姿勢調整部、10…粗砕装置、11…原料供給部、13…解繊部、14…選別部、15…第1ウェブ形成部、16…細分部、17…混合部、18…分散部、19…第2ウェブ形成部、20…成形部、21…切断部、22…ストック部、27…回収部、28…制御部、31…粗砕刃、32…シュート、41…案内板、42…案内板、43…連結板、44…連結板、45…案内板、50…筐体、51…噴出口、52…噴出部本体、53…供給管、54…ブロアー、55…加湿部、56…除電部、61…突出部材、100…繊維構造体製造装置、141…ドラム部、142…ハウジング部、151…メッシュベルト、152…張架ローラー、153…吸引部、161…プロペラ、162…ハウジング部、171…結着剤供給部、172…管、173…ブロアー、174…スクリューフィーダー、181…ドラム部、182…ハウジング部、191…メッシュベルト、192…張架ローラー、193…吸引部、201…加圧部、202…加熱部、203…カレンダーローラー、204…加熱ローラー、211…第1切断部、212…第2切断部、213…第1切断ユニット、214…第2切断ユニット、215…回転刃、231…加湿部、232…加湿部、233…加湿部、234…加湿部、235…加湿部、236…加湿部、241…管、242…管、243…管、244…管、245…管、246…管、261…ブロアー、262…ブロアー、263…ブロアー、281…CPU、282…記憶部、311…シャフト、312…刃、411…第1案内面、421…第2案内面、431…第3案内面、440…案内面、441…第4案内面、520…内腔部、521…壁部、611…頂部、612…姿勢調整面、M1…原料、M2…粗砕片、M3…解繊物、M4-1…第1選別物、M4-2…第2選別物、M5…第1ウェブ、M6…細分体、M7…混合物、M8…第2ウェブ、L…長さ、W…幅、S…シート、S1…シート片、P1…結着剤
図1
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