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  • 特許-検査装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020182272
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072690
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江川 弘一
(72)【発明者】
【氏名】川島 優人
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-207909(JP,A)
【文献】特開2011-085521(JP,A)
【文献】特開2013-072801(JP,A)
【文献】特開2016-125817(JP,A)
【文献】特開2020-003412(JP,A)
【文献】特開2014-020910(JP,A)
【文献】特開2013-160745(JP,A)
【文献】表面欠陥検査装置による金属異物判別技術,紙パ技協誌,第68巻、第5号,日本,紙パルプ技術協会,2014年05月01日,第28-32頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G06T 1/00-G06T 7/90
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物に照射光を照射する照明と、
前記被検査物における欠陥からの、前記照射光の反射光を受光して撮像する撮像部と、
前記撮像部において受光された前記反射光の輝度と所定の閾値との比較結果に基づいて、前記欠陥の領域を判定する情報処理部と、
を備えた検査装置であって、
前記情報処理部は、前記欠陥の領域内における前記反射光の輝度の分布に基づいて、前記欠陥の特性を判定するものであって、前記反射光の輝度のばらつきによって、前記欠陥の表面の粗さを判定するとともに、前記反射光の輝度のばらつきの指標値が所定の規格値より大きい場合に、前記欠陥を金属異物と判定し、前記ばらつきの指標値が前記規格値以下の場合に、非金属異物と判定することを特徴とする、検査装置。
【請求項2】
被検査物に照射光を照射する照明と、
前記被検査物における欠陥からの、前記照射光の反射光を受光して撮像する撮像部と、
前記撮像部において受光された前記反射光の輝度と所定の閾値との比較結果に基づいて、前記欠陥の領域を判定する情報処理部と、
を備えた検査装置であって、
前記情報処理部は、前記欠陥の領域内における前記反射光の輝度と、前記閾値とは異なる一または複数の補助閾値とを比較し、前記欠陥の領域内において、同一の比較結果が得られた補助領域の大きさまたは形状に基づいて、前記欠陥の特性を判定することを特徴とする、検査装置。
【請求項3】
前記情報処理部は、前記欠陥の領域と前記補助領域の面積比率に基づいて、前記欠陥の特性を判定する、請求項に記載の検査装置。
【請求項4】
前記情報処理部は、前記補助領域と、前記欠陥の領域との面積比率が所定の第二規格値より小さい場合に、前記欠陥を金属異物と判定し、前記面積比率が前記第二規格値以上である場合に、前記欠陥を非金属異物と判定することを特徴とする、請求項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記被検査物は、所定の巻き取り機構で巻き取られることにより、前記照明による照明
箇所に対して一方向に移動するシート状物品であり、
前記照明は前記一方向に垂直な方向に照明素子が並べられたライン型照明であり、
前記情報処理部は、前記ライン型照明からのライン状の照明光の反射光の時間的変化から、前記欠陥の領域、及び前記欠陥の領域内における前記反射光の輝度の分布を取得する、請求項1からのいずれか一項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シート状の被検査物を光学的原理に基づいて検査する検査装置に関して、被検査物に対して近赤外線を含む帯域の光を照射する照明と、その帯域に含まれる第1の中心波長を有する光による被検査物からの反射光及び/又は透過光を受光することで第1の強度値画像データを取得する第1撮像部と、その帯域に含まれる第2の中心波長を有する光による被検査物からの反射光及び/又は透過光を受光することで第2の強度値画像データを取得する第2撮像部と、被検査物の表面の各測位点に対応する、第1の強度値画像データの画素の強度値と第2の強度値画像データの画素の強度値との比である相対強度を算出する信号処理部と、信号処理部により算出された相対強度に基づいて、被検査物に混在する異物を検出する異常検出部と、を備える異物検出システムが提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-146251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなシート状の被検査物を光学的原理に基づいて検査する検査装置においては、被検査物における異物を効率的に検出することが可能であるが、被検査物における欠陥を検出後、その欠陥の表面状態や表面形状を判定することは困難である。
【0005】
そこで、本発明では、上記の欠陥の表面状態や表面形状の判定の問題に鑑みて、欠陥の発生箇所を検出した後、その欠陥を情報処理する方法を改善し、提供する。そして、情報処理の結果から、欠陥の表面状態や表面形状、欠陥の種類に係る詳細な情報を取得可能とすることを最終的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明は、
被検査物に照射光を照射する照明と、
前記被検査物における欠陥からの、前記照射光の反射光を受光して撮像する撮像部と、
前記撮像部において受光された前記反射光の輝度と所定の閾値との比較結果に基づいて、前記欠陥の領域を判定する情報処理部と、
を備えた検査装置であって、
前記情報処理部は、前記欠陥の領域内における前記反射光の輝度の分布に基づいて、前記欠陥の特性を判定することを特徴とする、検査装置である。
本発明によれば、撮像部において被検査物における欠陥の発生箇所を検出すると共に、その欠陥の外形や大きさに加えて、表面状態や表面形状の情報を取得することが可能である。その結果、情報処理部においてその欠陥の種類を判定することが可能である。
【0007】
また、本発明においては、前記情報処理部は、前記反射光の輝度のばらつきによって、前記欠陥の表面の粗さを判定することを特徴とする、検査装置としてもよい。これによれば、非接触により欠陥の表面の粗さの判定を行うことができる。そのため、より容易または早い測定時間で表面の粗さの判定が可能である。また、被検査物の表面に接触による傷
を生じさせるリスクも無い。
【0008】
また、本発明においては、前記情報処理部は、前記反射光の輝度のばらつきの指標値が所定の規格値より大きい場合に、前記欠陥を金属異物と判定し、前記ばらつきの指標値が前記規格値以下の場合に、非金属異物と判定することを特徴とする、検査装置としてもよい。これによれば、より容易またはより早い測定時間で、金属異物と非金属異物の判定をすることができる。金属異物が重大欠陥につながる被検査物を検査する場合、被検査物における欠陥が金属異物か非金属異物かを判定することは、その重大欠陥を未然に防止するうえで有用である。ここで、はらつきの指標値とは、ばらつきを統計的に数値化した値であって、標準偏差、分散の他、最大値と最小値の差、平均差等を意味する。
【0009】
また、本発明においては、前記情報処理部は、前記欠陥の領域内における前記反射光の輝度と、前記閾値とは異なる一または複数の補助閾値とを比較し、前記欠陥の領域内において、同一の比較結果が得られた補助領域の大きさまたは形状に基づいて、前記欠陥の特性を判定することを特徴とする、検査装置としてもよい。これによれば、欠陥に係る表面形状を含む特性に関するより詳細な情報を取得することが可能である。欠陥が汚れや表面上異物である場合、その欠陥に係る詳細な情報を取得することで、異物発生の予防に活用することが可能である。
【0010】
また、本発明においては、前記情報処理部は、前記欠陥の領域と前記補助領域の面積比率に基づいて、前記欠陥の特性を決定する、検査装置としてもよい。これによれば、例えば表面が比較的平坦な欠陥か、表面に急峻な凹凸を有する欠陥か等の特性を、より容易に判定することが可能である。
【0011】
また、本発明においては、前記情報処理部は、前記補助領域と、前記欠陥の領域との面積比率が所定の第二規格値より小さい場合に、前記欠陥を金属異物と判定し、前記面積比率が前記第二規格値以上である場合に、前記欠陥を非金属異物と判定することを特徴とする、検査装置としてもよい。ここで、一般的には、金属異物の場合は、反射光強度の分布は、非金属異物の場合と比較して、欠陥の領域における中央部の反射光強度が大きく、比較的急峻なピークを有するような分布となる。よって、情報処理部が、前記補助領域と、前記欠陥の領域との面積比率が所定の第二規格値より小さい場合に、前記欠陥を金属異物と判定し、前記面積比率が前記第二規格値以上である場合に、前記欠陥を非金属異物と判定することで、より容易またはより早い測定時間で、金属異物と非金属異物の判定をすることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記被検査物は、所定の巻き取り機構で巻き取られることにより、前記照明による照明箇所に対して一方向に移動するシート状物品であり、前記照明は前記一方向に垂直な方向に照明素子が並べられたライン型照明であり、前記情報処理部は、前記ライン型照明からのライン状の照明光の反射光の時間的変化から、前記欠陥の領域、及び前記欠陥の領域内における前記反射光の輝度の分布を取得する、検査装置としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、撮像部を通じて得られた、欠陥からの反射光の情報に基づき、被検査物における欠陥の表面状態や表面形状を判定し、欠陥に係る詳細な情報を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1に係るシート検査装置のブロック図である。
図2】実施例1に係る処理装置における欠陥の種類の判定プロセスについて説明するための模式図である。
図3】実施例2に係る二つ設けた閾値を用いて、被検査物における欠陥が金属異物か非金属異物かを判定する例について示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔適用例〕
本適用例における検査装置は、検査光学系として、シート状の被検査物における欠陥に向けて照射光を照射する照明と、該欠陥からの、照射光の反射光を受光して撮像する撮像部を用いて、被検査物における欠陥の発生箇所、及び外形形状を検出するものである。そして、情報処理部において、反射光の輝度値の分布に基づき、被検査物における欠陥の表面状態や表面形状を判定することが可能である仕組みを有する。
【0016】
撮像部が被検査物の各場所からの反射光を受光して輝度値を取得する。そして、情報処理部において、欠陥の各場所からの反射光の輝度値に関する情報が欠陥の特性の判定に用いられる。ここで、欠陥の特性とは、欠陥の表面の粗さの指標となる欠陥表面状態と、欠陥の表面積や厚みの指標となる欠陥形状の他、欠陥の種類のことを示す。欠陥の特性については、図2図3に示すように、輝度情報を画像化し、画像における各画素に異なる色等を付与することで可視化してもよい。そうすれば、欠陥の特性に係る情報を視覚的に得ることが容易である。
【0017】
欠陥表面状態は、反射光の輝度値のばらつきによって判定される。図2に示すように、反射光の輝度値と所定の二値化閾値との比較結果に基づいて、異物が存在する領域が特定可能である。そして、その領域内の各画素における輝度値のばらつきの指標値(例えば、標準偏差)を算出する。ここで、欠陥が金属異物か非金属異物かの判定において、一般的に金属は非金属と比べて反射光の分布のばらつきが大きいため、各画素における輝度値のばらつきの指標値が、所定の規格値より大きい場合は金属異物と判定し、所定の規格値以下の場合は非金属異物と判定する。
【0018】
欠陥形状は、閾値を複数設け、輝度値と複数の閾値との比較結果によって判定されるようにしてもよい。例えば、図3に示すように、閾値を二つ設けることにより、撮像画像において二段階の反射光の輝度値の分布が得られた場合には、第一の閾値より小さい範囲の輝度値を示す画素数に対する、第二の閾値より小さい輝度値を示す画素数の比を画素割合とする。そして、この画素割合によって、例えば表面が比較的平坦な欠陥か、表面に急峻な凹凸を有する欠陥か等の表面の特性を判定する。また、欠陥が金属異物か非金属異物かの判定において、一般的に金属は非金属と比べて画素割合が小さいため、画素割合が、所定の第二規格値より小さい場合は金属異物と判定し、所定の第二規格値以上の場合は非金属異物と判定する。
【0019】
なお、被検査物がシート状の物品の場合は、巻き取り機構で巻き取られることで、所定の一方向に移動するようにしてもよい。その際、照明に関しては、複数の照明素子が一列に並んでおり、それらが並んでいる方向は、被検査物が移動する方向に対して垂直としてもよい。
【0020】
〔実施例1〕
以下、本発明の実施例1に係るシート検査装置について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明に係るシート検査装置は、以下の構成に限定する趣旨のものではない。
【0021】
<装置構成>
図1は、実施例1に係るシート検査装置1のブロック図である。シート検査装置1は、シート状の被検査物2における欠陥の発生箇所を検出するため、検査光学系の構成要素と
して光源3と撮像装置4を有する。被検査物2としては、紙、フィルム、樹脂、セルロース等を例示できる。光源3は、被検査物2における欠陥に向けて、例えば波長領域が610~750nm程度の赤色可視光である照射光5を照射し、撮像装置4は、該欠陥からの、照射光5の反射光6を受光して撮像する。ここで、反射光6は、照射光5が被検査物2上で拡散反射した拡散反射光である(以下、単に反射光と記載する。)。反射光6を発する欠陥の種類は、例えば汚れや表面上異物である。被検査物2は、巻き取り機構2A、2Bで巻き取られることにより、図1の矢印の向きに移動する。光源3は複数の光源素子が一列に並んでおり、それらが並んでいる方向は、図1の矢印の向きに対して垂直である。ここで、シート検査装置1は、本発明における検査装置に相当する。また、光源3は、本発明における照明に相当する。また、撮像装置4は、本発明における撮像部に相当する。
【0022】
調整装置7は、照射光5の光量を調節する光量調節部71と、撮像装置4における反射光6の強度に対する出力信号のゲインを調節するゲイン調節部72を備えており、光源3から撮像装置4に入射した光により得られる出力信号の大きさを調節する。ここで、光量調節部71及び/又はゲイン調節部72の調節は、手動で行ってもよいし、自動で行われるようにしてもよい。
【0023】
処理装置8は、撮像装置4から出力される撮像データを処理する、信号処理部81を有する。信号処理部81は、撮像装置4から出力された1ライン分(4096画素)の信号に対して受光素子ごとの出力レベルのばらつきを補正し、出力レベルを均一化する。なお、信号処理部81は、撮像装置4から出力された各画素における出力をそのまま輝度値としてもよいし、各画素における出力に基づいて輝度比を計算し、これを輝度値としてもよい。ここで、輝度比とは、撮像装置4からの各画素における出力を、被検査物2に欠陥が無い状態での出力で除算した値のことである。ここで、処理装置8は、本発明における情報処理部に相当する。
【0024】
また、処理装置8は、被検査物2に含まれる欠陥の発生箇所を検出する異常検出部82と、異常検出に用いる検出閾値を記憶する検出閾値記憶部82Aと、を備えている。検出閾値記憶部82Aに記憶されている検出閾値は、被検査物2の種類やユーザが設定した検査基準等によって決まる。異常検出部82においては、信号処理部81において処理された後の、各画素における輝度値が検出閾値以下である場合に、その画素に相当する位置を、欠陥と判定する。一般的に、実際に欠陥が存在する場合には、欠陥と判定される画素が複数集まって領域を形成するので、この画素の集合による領域の外形を、欠陥の外形と判断することが可能である。ここで、検出閾値は、本発明における閾値に相当する。
【0025】
さらに、処理装置8は、欠陥が検出されたときにその欠陥の種類を判定する判定部83と、欠陥の種類を判定する処理に用いる複数の判定閾値を記憶する判定閾値記憶部83Aを備えている。判定部83は、異常検出部82において欠陥と判定された領域内の各画素における輝度値の分布の類型と、欠陥の種類との対応関係を予め規定しており、欠陥と判定された領域内の画素の輝度値の分布がいずれの類型に該当するか判断することにより、欠陥の種類を判定する。
【0026】
出力部84は、欠陥の発生箇所と種類に関する情報を出力する。情報の出力先は、典型的には表示装置であるが、印刷装置に対して情報を出力したり、スピーカーからメッセージや警報を出力したり、ユーザ(検査者)の端末に電子メール等でメッセージを送信したり、外部のコンピュータに対して情報を送信したりしてもよい。欠陥の発生箇所と種類に関する情報を出力することにより、ユーザは発生した欠陥の内容を具体的に把握することができ、それを欠陥とすべきかどうかの判断や、生産設備の製造条件や運転条件へのフィードバック等に役立てることが可能である。
【0027】
図2は、本実施例に係る処理装置8における欠陥の種類の判定プロセスについて説明するための模式図である。この例では、反射光6を受光した撮像装置4は、被検査物2における欠陥を撮像し、処理装置8において、欠陥と判定された画素9の集合による、欠陥の領域9Aが検出される。図2には、各画素9における輝度値と二値化閾値との比較結果と、欠陥の領域9Aとの関係を示す。撮像画像においてハッチングが施された画素9の集合が欠陥の領域9Aに相当する。そして、この欠陥の領域9A内の各画素9における輝度値の標準偏差が算出される。各画素9に対して取得された標準偏差は、例えばその標準偏差の範囲毎に色や模様が付与されることで、出力部84によって画像化して出力されるようにしてもよい。ここで、二値化閾値は、本発明における閾値に相当する。
【0028】
ここで、図2(a)、(b)はそれぞれ、金属と非金属における反射光6の輝度値の分布のプロファイルイメージを示す。一般的に、金属は非金属と比べて反射光6の輝度値の分布のばらつきが大きいため、反射光6の分布の標準偏差が、所定の規格値より大きい場合は被検査物2における欠陥を金属異物と判定し、所定の規格値以下の場合は被検査物2における欠陥を非金属異物と判定する。このようにして、欠陥が金属異物か非金属異物かの判定が可能であり、被検査物2における欠陥が生じた要因を推測するうえで有用である。また、反射光6の輝度値の分布の標準偏差に基づいて、欠陥が金属異物か非金属異物かの判定の他、欠陥の表面粗さについても検出が可能である。また、本実施例においては、反射光6の輝度値のばらつきを数値化した指標値として、標準偏差を用いる例について説明したが、反射光6の輝度値のばらつきの指標値としては、標準偏差の他、分散、最大値と最小値の差、平均差等を適宜用いることができる。
【0029】
〔実施例2〕
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例1では、反射光6の輝度値に対して、所定の閾値(二値化閾値)を設けることで、欠陥の領域9Aを検出し、欠陥の領域9Aにおける各画素9の輝度値の分布の標準偏差を算出し、標準偏差の大きさによって金属異物と非金属異物を判定する例について説明した。これに対して実施例2では、反射光の輝度値に対して、所定の閾値を二つ設けることで、欠陥の領域内における各画素の輝度値を二段階に分割し、欠陥の領域全体に対する、分割された領域の面積比(または画素数比)によって、当該欠陥が金属異物か非金属異物かを判定する例について説明する。
【0030】
図3は、実施例2に係る二つ設けた閾値を用いて、被検査物における欠陥が金属異物か非金属異物かを判定する例について示す模式図である。ここで、二段階に設けた閾値のうち、値がより大きい(より地合に近い)閾値を第一の閾値、値がより小さい(より暗ピーク値に近い)閾値を第二の閾値とする。処理装置において、反射光の輝度値が第一の閾値より小さく第二の閾値以上である場合には、欠陥と判定された画素91の集合による、第一領域91Aが検出される。また、反射光の輝度値が第二の閾値より小さい場合には、同様に第二領域91Bが検出される。そして、欠陥の領域全体(第一領域91A+第二領域91B)に対する、第二領域91Bの面積比率を算出する。以下、この面積比率を画素割合と記載する。ここで、第二の閾値は、本発明における補助閾値に相当し、第二領域91Bは、本発明における補助領域に相当する。なお、画素割合に基づく欠陥の特性の判定については、該欠陥が金属異物か非金属異物かを判定する例に限らない。材質が同じ欠陥であって、表面形状の特性が異なるものについて判定することも可能である。
【0031】
ここで、図3(a)、(b)はそれぞれ、金属と非金属における反射光の輝度値分布のプロファイルイメージを示す。一般的に金属は非金属と比べて、画素割合が小さい。そのため、画素割合が、所定の第二規格値より小さい場合は被検査物における欠陥を金属異物と判定し、所定の第二規格値以上の場合は被検査物における欠陥を非金属異物と判定する。このようにして、欠陥が金属異物か非金属異物かの判定が可能であり、また、欠陥形状についての情報も取得できるため、被検査物における欠陥の種類の詳細を把握し、その欠
陥が生じた要因を推測することが可能である。この場合にも、例えば、第一領域91Aと第二領域91Bを構成する画素91毎に異なる色や模様が付与されることで、出力部によって画像化して出力されるようにしてもよい。なお、閾値を三つ以上設けることで、補助領域を複数設けてもよい。閾値をより多く設けることで、反射光の輝度値の分布の詳細がより明確になり、金属異物か非金属異物かの判定に加え、欠陥の表面形状をより詳細に判定することが可能となる。
【0032】
なお、上記の実施例においては、本発明における検査装置がシート状の被検査物を検査する場合について説明したが、本発明に係る検査装置はこれに限られない。例えば、ベルトコンベアによって搬送される物品の表面の特性の検査等にも用いることは可能である。
【0033】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<発明1>
被検査物(2)に照射光(5)を照射する照明(3)と、
前記被検査物における欠陥からの、前記照射光の反射光(6)を受光して撮像する撮像部(4)と、
前記撮像部において受光された前記反射光の輝度と所定の閾値との比較結果に基づいて、前記欠陥の領域(9A)を判定する情報処理部(8)と、
を備えた検査装置(1)であって、
前記情報処理部は、前記欠陥の領域内における前記反射光の分布に基づいて、前記欠陥の状態を判定することを特徴とする、検査装置(1)。
【符号の説明】
【0034】
1 :シート検査装置
2 :被検査物
2A、2B :巻き取り機構
3 :光源
4 :撮像装置
5 :照射光
6 :反射光
7 :調整装置
71 :光量調節部
72 :ゲイン調節部
8 :処理装置
81 :信号処理部
82 :異常検出部
82A :検出閾値記憶部
83 :判定部
83A :判定閾値記憶部
84 :出力部
9 :画素
9A :欠陥の領域
図1
図2
図3