(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】パンク修理剤の充填容器
(51)【国際特許分類】
B29C 73/02 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B29C73/02
(21)【出願番号】P 2020185284
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 琢麿
(72)【発明者】
【氏名】中川 真人
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-334942(JP,A)
【文献】特開2007-276294(JP,A)
【文献】特開2014-111468(JP,A)
【文献】特開2005-343526(JP,A)
【文献】特表2017-530856(JP,A)
【文献】登録実用新案第3001241(JP,U)
【文献】特開2006-007747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0060734(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 73/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンク修理剤の充填容器であって、
容器状のシリンジ、
前記シリンジの内部を、下方側の第1室と、パンク修理剤を収容するための上方側の第2室とに区画するスライド可能なピストン、
及び、前記第1室に配されるばね弾性体を含み、
前記シリンジには、前記第2室に圧縮空気を流入させるための流入口と、前記圧縮空気の流入により前記第2室から前記パンク修理剤を流出させるための流出口とが設けられており、
前記第2室に圧縮空気が流入していないとき、前記ピストンは、前記ばね弾性体によって押し上げられて前記流出口を閉止し、前記第2室に圧縮空気が流入しているとき、圧縮空気は前記ばね弾性体に打ち勝って前記ピストンを押し下げ、前記流出口を開放させる、
パンク修理剤の充填容器。
【請求項2】
前記流入口は、前記パンク修理剤の上面よりも上方側で開口し、前記流出口は、前記パンク修理剤の上面よりも下方側で開口する、請求項1に記載のパンク修理剤の充填容器。
【請求項3】
前記流出口は、前記シリンジの天板部から下方に延びる管状部の下端で開口する、請求項2に記載のパンク修理剤の充填容器。
【請求項4】
前記ピストンは、前記流出
口の開閉と同期して前記流入口を開閉させる開閉弁部を具える、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のパンク修理剤の充填容器。
【請求項5】
前記シリンジは、前記第2室に、前記第1室よりも内径が大な大径部分を具える、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のパンク修理剤の充填容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクしたタイヤを応急的に修理するために好適に使用しうるパンク修理剤の充填容器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、パンクしたタイヤを応急的に修理するための装置に用いるパンク修理剤ユニットが提案されている。
【0003】
このパンク修理剤ユニットは、ユニット本体、及び前記ユニット本体に形成される空気流路とパンク修理剤流路とを閉じるキャップから構成される。前記ユニット本体は、パンク修理剤の収納容器の首部が固定される取付け凹部と、この取付け凹部の底面から立上がるボス部とを有する。前記ボス部には、前記空気流路の一端と、前記パンク修理剤流路の一端とがそれぞれ開口している。空気流路は、コンプレッサーからの圧縮空気を収納容器に送り込む流路である。パンク修理剤流路は、圧縮空気の送り込みによりパンク修理剤を収納容器から取り出す流路である。
【0004】
前記キャップは、前記ボス部の外周に嵌着されるドーム状の蓋部と、前記蓋部から突出し前記パンク修理剤流路の開口を閉じる栓体部分とを具える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記提案のパンク修理剤ユニットでは、一度キャップが外れると、空気流路の一端、及びパンク修理剤流路の一端が、それぞれ開放状態のままとなる。そのため、何らかのトラブルで収容容器内にパンク修理剤が残った状態で圧縮空気が供給されなくなった場合、収容容器内の残圧により、パンク修理剤がコンプレッサー側に逆流し、コンプレッサーそのものの動作不良を引き起こすといった恐れを招く。
【0007】
他方、キャップは、パンク修理剤ユニットの保管時には外れず、逆にパンク修理時には圧縮空気によって容易に外れることが重要である。しかしキャップとボス部との嵌合は、嵌め合い寸法のみに依存するため、高精度が要求され、コストの上昇を招く。又精度バラツキにより、例えばパンク修理時に外れないことがあり、動作の信頼性に劣るものであった。
【0008】
本発明は、パンク修理剤の流出口を繰り返し開閉でき、かつ開閉動作を確実化してその信頼性を高めるとともに、圧縮空気の供給が途中で止まった場合にも、パンク修理剤のコンプレッサー側への逆流を抑制しうるパンク修理剤の充填容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、パンク修理剤の充填容器であって、パンク修理剤の充填容器であって、容器状のシリンジ、前記シリンジの内部を、下方側の第1室と、パンク修理剤を収容するための上方側の第2室とに区画するスライド可能なピストン、及び、前記第1室に配されるばね弾性体を含み、前記シリンジには、前記第2室に圧縮空気を流入させるための流入口と、前記圧縮空気の流入により前記第2室から前記パンク修理剤を流出させるための流出口とが設けられており、前記第2室に圧縮空気が流入していないとき、前記ピストンは、前記ばね弾性体によって押し上げられて前記流出口を閉止し、前記第2室に圧縮空気が流入しているとき、圧縮空気は前記ばね弾性体に打ち勝って前記ピストンを押し下げ、前記流出口を開放させる、パンク修理剤の充填容器である。
【0010】
本発明に係るパンク修理剤の充填容器において、前記流入口は、前記パンク修理剤の上面よりも上方側で開口し、前記流出口は、前記パンク修理剤の上面よりも下方側で開口するのが好ましい。
【0011】
本発明に係るパンク修理剤の充填容器において、前記流出口は、前記シリンジの天板部から下方に延びる管状部の下端で開口するのが好ましい。
【0012】
本発明に係るパンク修理剤の充填容器において、前記ピストンは、前記流出口の開閉と同期して前記流入口を開閉させる開閉弁部を具えるのが好ましい。
【0013】
本発明に係るパンク修理剤の充填容器において、前記シリンジは、前記第2室に、前記第1室よりも内径が大な大径部分を具えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のパンク修理剤の充填容器は、叙上の如く、シリンジの内部が、スライド可能なピストンにより、下方側の第1室と上方側の第2室とに区画されている。第1室には、ピストンを押し上げる向きに付勢するばね弾性体が配され、第2室には、パンク修理剤が収容される。またシリンジには、例えばコンプレッサーからの圧縮空気を第2室に流入させるための流入口と、圧縮空気の流入によりパンク修理剤を第2室から流出させるための流出口とが設けられている。
【0015】
そして、前記第2室に圧縮空気が流入していないとき、前記ピストンは、ばね弾性体によって押し上げられ、前記流出口を閉止する。逆に、前記第2室に圧縮空気が流入しているとき、前記圧縮空気がばね弾性体に打ち勝って前記ピストンを押し下げ、前記流出口を開放させる。
【0016】
即ち、パンク修理剤の充填容器は、流入口からの圧縮空気の流入のオン/オフに連動して、流出口を繰り返して開閉しうる。又開閉が、ばね弾性体のバネ力と圧縮空気の圧力とに基づくため、開閉動作を確実に行うことができ、その信頼性を高めうる。また圧縮空気の供給が途中で止まった場合にも、残圧が作用せず、パンク修理剤の流入口からの逆流、例えばコンプレッサー側への逆流を抑制しうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のパンク修理剤の充填容器の一実施形態を概念的に示す断面図である。
【
図2】(a)~(d)は、充填容器の動作を示す断面図である。
【
図3】充填容器の他の
実施形態を示す断面図である。
【
図4】(a)、(b)は、充填容器のさらに他の
実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のパンク修理剤の充填容器1(以下単に「充填容器1」という。)は、容器状のシリンジ2と、スライド可能なピストン3と、ばね弾性体4とを含む。
【0019】
シリンジ2は、本例では、円筒状の胴部5Aを有する有底の容器本体5と、シリンジ2の上端を塞ぐ天板部6Aを有する蓋部6とから構成される。蓋部6は、容器本体5の上端部に取り付く。これにより、シリンジ2内への、ばね弾性体4及びピストン3の装着、並びにパンク修理剤Lの充填が行われる。なお本明細書において「上」、「下」は、充填容器1を用いたパンク修理の使用状態において特定される。
【0020】
前記ピストン3は、シリンジ2の内部に、上下にスライド可能に装着され、シリンジ2の内部を、下方側の第1室10と、上方側の第2室11とに区画する。ピストン3は、例えば円盤状の基体3Aを有し、その外周に、シリンジ2の胴部5Aとの間をシールするためのリング状のシール部材3Bが設けられる。又本例では、基体3Aの上面には、後述する流出口13を気密に閉じるためのパッキング部材3Cが設けられる。なお、例えば基体3A自体をゴム状弾性体などで形成することにより、シール部材3B、パッキング部材3C等を排除することもできる。
【0021】
ばね弾性体4は、第1室10に配され、ピストン3を上方に押し上げる向きに付勢する。ばね弾性体4として、本例では、圧縮コイルばねが採用される。
【0022】
又第2室11には、パンク修理剤Lが収容される。
【0023】
次に、シリンジ2には、第2室11に圧縮空気を流入させるための流入口12と、圧縮空気の流入により第2室11からパンク修理剤Lを流出させるための流出口13とが設けられている。
【0024】
流入口12は、パンク修理剤Lの上面Lsよりも上方側で開口する。また流出口13は、パンク修理剤Lの上面Lsよりも下方側で開口する。
【0025】
本例では、流入口12は、シリンジ2の天板部6Aで開口している。又流出口13は、天板部6Aから下方にのびる管状部8の下端で開口している。
【0026】
シリンジ2は、天板部6Aから上方に突出する第1の接続部15と第2の接続部16とを有する。
【0027】
第1の接続部15は、流入口12に導通する第1流路15aを有する。第1の接続部15は、例えば連結ホース(図示省略)を介して、コンプレッサー20に接続される。
【0028】
第2の接続部16は、本例では管状部8を介して流出口13に導通する第2流路16aを有する。又第2の接続部16は、例えば連結ホース(図示省略)を介して、パンクしたタイヤ21に接続される。
【0029】
図2(a)に示すように、充填容器1は、第2室11に圧縮空気Aが流入していない状態Y1のときには、ピストン3は、ばね弾性体4によって押し上げられ、流出口13を気密に閉止する。状態Y1としては、充填容器1が例えば車内にて保管されている状態から、パンク修理に際してコンプレッサー20やタイヤ21が接続されたがコンプレッサー20がまだ作動していない状態までの間が考えられる。
【0030】
図2(b)に示すように、コンプレッサー20が作動し、圧縮空気Aが第2室11内に流入している状態Y2のとき、圧縮空気Aはばね弾性体4に打ち勝ってピストン3を押し下げる。これにより流出口13が開放され、パンク修理剤Lは、流出口13から第2流路16aを介してタイヤ21に注入される。
【0031】
図2(c)に示すように、パンク修理剤Lの注入後は、圧縮空気Aが流出口13から第2流路16aを介して注入され、タイヤ21が走行可能な内圧になるまでポンプアップされる。
【0032】
図2(d)に示すように、コンプレッサー20が停止された後は、状態Y1となり、流出口13はピストン3によって閉止される。
【0033】
このように充填容器1は、流入口12からの圧縮空気Aの流入のオン/オフに連動して、流出口13を繰り返して開閉しうる。又開閉が、ばね弾性体4のバネ力と圧縮空気Aの圧力とに基づくため、開閉動作を確実に行うことができ、その信頼性を高めうる。
【0034】
また圧縮空気Aの供給が途中で止まった場合、例えば
図2(b)の状態で圧縮空気Aの供給が止まった場合にも、特許文献1の如き残圧が作用せず、パンク修理剤Lの流入口12からの逆流、例えばコンプレッサー20側への逆流を抑制しうる。
【0035】
ここで、保管時の車両の振動においても流出口13をしっかりと閉止するためには、ばね弾性体4のばね力が強いことが好ましい。しかし、圧縮空気Aの圧力は、タイヤの内圧相当であり、圧縮空気Aの圧力を高めるには限界がある。そこで、ばね力に打ち勝って、圧縮空気Aによりピストン3を下方に押し付ける力Fを高めるために、パンク修理剤Lの上面Lsの面積Sを増やすことが好ましい。圧縮空気Aによりピストン3を下方に押し付ける力Fは、圧縮空気Aの圧力Pと、パンク修理剤Lの上面Lsの面積Sとの積(P×S)で示され、面積Sを増やすことで、力Fを高めることができる。
【0036】
そのため、
図3に示すように、シリンジ2は、第2室11に、第1室10よりも内径が大な大径部分18を設けることが好ましい。これにより力F(=P×S)を増すことができ、ばね弾性体4のばね力を高めた場合にも、流出口13の開放動作を確実に行うことができる。
【0037】
また充填容器1では、充填容器1を横に倒して保管する場合があり得る。この場合に、流入口12からパンク修理剤Lが漏れ出すのを防止するのも好ましい。そのために、
図4(a)に示すように、ピストン3は、流出口1
3の開閉と同期して流入口12を開閉させる開閉弁部22を具えることが好ましい。
【0038】
開閉弁部22は、本例では、ピストン3から立ち上がる支柱部23と、支柱部23の上端に支持される摺動軸24と、摺動軸24の上端に固定されるパッキング部材26とを含む。
【0039】
摺動軸24は、支柱部23の上端部に形成される中心孔23Aに遊挿され、上下に摺動可能に保持される。なお中心孔23A内には摺動軸24を上方に向かって付勢する第2のばね弾性体25が配される。
【0040】
この開閉弁部22は、ピストン3と一体に上下動でき、またピストン3が流出口13を閉止した状態において、パッキング部材26を流入口12に押し付けて流入口12を閉止する。またコンプレッサー20が作動することにより、圧縮空気Aが第2のばね弾性体25に打ち勝って、パッキング部材26を摺動軸24とともに押し下げ、流入口12を開放しうる。これにより、圧縮空気Aを第2室11内に流入させてピストン3を押し下げ、流出口13を開放しうる。
【0041】
なお開閉弁部22としては、
図4(b)に示すように、摺動軸24及び第2のばね弾性体25を設けることなく、支柱部23の上端にパッキング部材26を設けても良い。
【0042】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0043】
1 パンク修理剤の充填容器
2 シリンジ
3 ピストン
4 ばね弾性体
6A 天板部
8 管状部
10 第1室
11 第2室
12 流入口
13 流出口
18 大径部分
22 開閉弁部
A 圧縮空気
L パンク修理剤
Ls 上面