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  • 特許-走行経路生成方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】走行経路生成方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240723BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G05D1/43
B66F9/24 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020191779
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080612
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】南田 将哉
(72)【発明者】
【氏名】大澤 尚晃
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和也
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-175137(JP,A)
【文献】特開2008-129614(JP,A)
【文献】特開2020-77372(JP,A)
【文献】特許第6711555(JP,B1)
【文献】特開2020-115254(JP,A)
【文献】特開2020-119011(JP,A)
【文献】特開2020-119124(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069921(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新たな地図データの作成時または地図データの更新時に、移動体が走行する走行経路を生成する走行経路生成方法であって、
建物として位置がずれることがある物体を含む特徴物が表された建物図面に対して前記走行経路をユーザにより設定する走行経路設定工程と、
前記移動体の周囲にレーザを照射してレーザの反射光を受光するレーザセンサによって前記移動体から前記移動体の周囲に存在する物体までの距離を検出することで、前記建物図面に対応する地図データを作成する地図作成工程と、
前記建物図面と前記地図データとを照合することにより、前記建物図面上及び前記地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量を算出する照合工程と、
前記建物図面上及び前記地図データ上の前記同一の特徴物の位置ずれ量に応じて、前記移動体が前記移動体の左右両側に位置する2つの前記特徴物の間において前記特徴物に干渉しないで走行するように前記走行経路を補正する走行経路補正工程とを含む走行経路生成方法。
【請求項2】
前記照合工程では、前記建物図面上及び前記地図データ上の前記同一の特徴物の端部の位置ずれ量を算出する請求項1記載の走行経路生成方法。
【請求項3】
前記走行経路補正工程では、前記建物図面に対して設定された走行経路において、前記建物図面上及び前記地図データ上の前記同一の特徴物の位置ずれ量が規定値以上である制約領域に対応する部分を補正する請求項1または2記載の走行経路生成方法。
【請求項4】
新たな地図データの作成時または地図データの更新時に、移動体が走行する走行経路を生成する走行経路生成装置であって、
建物として位置がずれることがある物体を含む特徴物が表されると共に前記走行経路がユーザにより設定された建物図面を取得する建物図面取得部と、
前記移動体の周囲にレーザを照射してレーザの反射光を受光するレーザセンサによって前記移動体から前記移動体の周囲に存在する物体までの距離を検出することで作成された前記建物図面に対応する地図データを取得する地図取得部と、
前記建物図面と前記地図データとを照合することにより、前記建物図面上及び前記地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量を算出する照合部と、
前記建物図面上及び前記地図データ上の前記同一の特徴物の位置ずれ量に応じて、前記移動体が前記移動体の左右両側に位置する2つの前記特徴物の間において前記特徴物に干渉しないで走行するように前記走行経路を補正する走行経路補正部とを備える走行経路生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路生成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、自己位置推定装置が記載されている。特許文献1に記載の自己位置推定装置は、ロボットと周囲にある物体との距離を計測する距離センサであるレーザ測長器と、このレーザ測長器により計測された距離データとコントローラの地図データ記憶部に記憶された地図データとを照合することで、ロボットの位置を同定する同定装置とを備えている。コントローラは、レーザ測長器により計測された距離データに基づいて、地図データを生成または更新する地図生成装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-256344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物図面上で移動体の走行経路を設計し、その走行経路を地図データに適用することがある。この場合、地図データを用いて移動体の自己位置を推定しながら、移動体を走行経路に沿って自律走行させる際に、建物図面上と地図データ上とで同一の特徴物に位置ズレが生じていると、移動体が特徴物に干渉し、結果的に移動体が自律走行できなくなる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、地図データを用いて移動体の自己位置を推定しながら、移動体を走行経路に沿って自律走行させる際に、移動体が特徴物に干渉することを防止できる走行経路生成方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る走行経路生成方法は、建物図面に対して移動体が走行する走行経路を設定する走行経路設定工程と、移動体から移動体の周囲に存在する物体までの距離を検出することで、建物図面に対応する地図データを作成する地図作成工程と、建物図面と地図データとを照合することにより、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量を算出する照合工程と、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量に応じて、走行経路を補正する走行経路補正工程とを含む。
【0007】
このような走行経路生成方法においては、移動体が走行する走行経路が設定された建物図面と当該建物図面に対応する地図データとを照合することにより、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量が算出される。そして、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量に応じて、走行経路が補正される。このため、地図データに適した走行経路が得られることとなる。従って、地図データを用いて移動体の自己位置を推定しながら、移動体を走行経路に沿って自律走行させる際に、移動体が特徴物に干渉することが防止される。
【0008】
照合工程では、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の端部の位置ずれ量を算出してもよい。特徴物の端部では、移動体から物体までの距離データとしての特徴が出やすい。従って、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量が精度良く算出されるため、地図データに更に適した走行経路が得られる。
【0009】
走行経路補正工程では、建物図面に対して設定された走行経路において、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量が規定値以上である制約領域に対応する部分を補正してもよい。このような構成では、走行経路の補正処理が必要最小限に抑えられるため、補正処理時間が短縮される。
【0010】
本発明の他の態様に係る走行経路生成装置は、移動体が走行する走行経路が設定された建物図面を取得する建物図面取得部と、移動体から移動体の周囲に存在する物体までの距離を検出することで作成された建物図面に対応する地図データを取得する地図取得部と、建物図面と地図データとを照合することにより、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量を算出する照合部と、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量に応じて、走行経路を補正する走行経路補正部とを備える。
【0011】
このような走行経路生成装置においては、移動体が走行する走行経路が設定された建物図面と当該建物図面に対応する地図データとを照合することにより、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量が算出される。そして、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量に応じて、走行経路が補正される。このため、地図データに適した走行経路が得られることとなる。従って、地図データを用いて移動体の自己位置を推定しながら、移動体を走行経路に沿って自律走行させる際に、移動体が特徴物に干渉することが防止される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地図データを用いて移動体の自己位置を推定しながら、移動体を走行経路に沿って自律走行させる際に、移動体が特徴物に干渉することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る走行経路生成装置が適用される走行制御装置を概略的に示すブロック図である。
図2図1に示された走行制御装置が搭載されたフォークリフトが走行する様子を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る走行経路生成装置を概略的に示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る走行経路生成方法によりフォークリフトの走行経路を生成する際の建物図面、地図データ及び照合データの一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る走行経路生成方法の工程を示すフローチャートである。
図6】建物図面に対して設定された走行経路を地図データに適用した場合の不具合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る走行経路生成装置が適用される走行制御装置を概略的に示すブロック図である。図1において、走行制御装置1は、図2に示されるように、予め決められた走行経路Sに沿ってフォークリフト2を自律走行させるように制御する装置である。フォークリフト2は、荷役を行う移動体である。
【0016】
走行制御装置1は、レーザセンサ3と、走行制御用コントローラ4と、駆動部5とを備えている。走行制御装置1は、フォークリフト2に搭載されている。
【0017】
レーザセンサ3は、図2に示されるように、フォークリフト2の周囲にレーザLを照射し、レーザLの反射光を受光することにより、フォークリフト2からフォークリフト2の周囲に存在する物体50までの距離を検出する。レーザセンサ3としては、例えば2Dまたは3Dのレーザレンジファインダが使用される。
【0018】
走行制御用コントローラ4は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。走行制御用コントローラ4は、レーザセンサ3の検出データを入力し、フォークリフト2の走行制御に関する処理を実行し、駆動部5を制御する。駆動部5は、特に図示はしないが、フォークリフト2を走行させる走行モータと、フォークリフト2を操舵する操舵モータとを有している。
【0019】
走行制御用コントローラ4は、地図記憶部6と、経路記憶部7と、自己位置推定部8と、走行制御部9とを有している。
【0020】
地図記憶部6は、フォークリフト2が走行する周辺環境の地図データ(後述)を記憶する。経路記憶部7は、後述する走行経路生成装置10により生成されたフォークリフト2の走行経路Sを記憶する。フォークリフト2の走行経路Sは、仮想のガイド線であり、例えば2次元座標で表されている。
【0021】
自己位置推定部8は、レーザセンサ3により検出された距離データに基づいて、フォークリフト2の現在の自己位置を推定する。自己位置推定部8は、レーザSLAM(simultaneous localization andmapping)手法を用いて、フォークリフト2の自己位置の推定演算を行う。SLAMは、センサデータ及び地図データを使って自己位置推定を行う自己位置推定技術である。自己位置推定部8は、レーザセンサ3により検出された距離データと地図記憶部6に記憶された地図データとをマッチングさせて、フォークリフト2の自己位置の推定演算を行う。
【0022】
走行制御部9は、自己位置推定部8により推定されたフォークリフト2の自己位置に基づいて、経路記憶部7に記憶された走行経路Sに沿ってフォークリフト2を自動的に走行させるように駆動部5を制御する。このとき、走行制御部9は、フォークリフト2の自己位置と走行経路Sとのずれ量が0に近づくように駆動部5を制御する。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態に係る走行経路生成装置を概略的に示すブロック図である。図3において、本実施形態の走行経路生成装置10は、上記の走行制御装置1によってフォークリフト2を自律走行させる際のフォークリフト2の走行経路Sを生成する装置である。走行経路生成装置10による走行経路Sの生成は、新たな地図データを作成するときに行われる。
【0024】
走行経路生成装置10は、上記のレーザセンサ3と、経路生成用コントローラ11とを有している。走行経路生成装置10は、フォークリフト2に搭載されている。
【0025】
経路生成用コントローラ11は、建物図面記憶部17と、地図作成部12と、地図保存部13と、照合部14と、走行経路補正部15と、走行経路保存部16とを有している。
【0026】
建物図面記憶部17は、フォークリフト2が走行する周辺環境の建物図面20(図4(a)参照)を記憶する。建物図面20に表された建物としては、棚や柱等の特徴物21が挙げられる。建物図面20には、フォークリフト2が走行する走行経路Sが特徴物21と共に表されている。走行経路Sは、フォークリフト2が特徴物21に干渉せずに安全に走行可能となるように設定される。建物図面記憶部17は、フォークリフト2が走行する走行経路Sが設定された建物図面20を取得する建物図面取得部を構成している。
【0027】
地図作成部12は、図4(b)に示されるように、レーザセンサ3により検出された距離データに基づいて、フォークリフト2が走行する周辺環境の地図データ22を作成する。地図データ22には、建物図面20の特徴物21に対応する特徴物23が表されている。地図作成部12は、フォークリフト2からフォークリフト2の周囲に存在する物体50(図2参照)までの距離を検出することで作成された建物図面20に対応する地図データ22を取得する地図取得部を構成している。
【0028】
地図保存部13は、地図作成部12により作成された地図データを走行制御用コントローラ4の地図記憶部6に保存する。
【0029】
照合部14は、図4(c)に示されるように、建物図面記憶部17に記憶された建物図面20と地図作成部12により作成された地図データ22とを照合することにより、建物図面20上の特徴物21と地図データ22上の特徴物21に対応する特徴物23との位置ずれ量を算出する。このとき、照合部14は、建物図面20上の特徴物21の端部と地図データ22上の特徴物21に対応する特徴物23の端部との位置ずれ量を算出する。
【0030】
ここで、特徴物21,23の端部とは、特徴物21,23におけるフォークリフト2の進行方向の端部をいう。特徴物21,23の端部は、レーザセンサ3から照射されたレーザLが当たるか当たらないかの境界部であり、レーザセンサ3の検出データの特徴が出やすい特徴点P(図4(d)参照)となる。
【0031】
走行経路補正部15は、図4(d)に示されるように、建物図面20上の特徴物21と地図データ22上の特徴物21に対応する特徴物23との位置ずれ量に応じて、建物図面記憶部17に記憶された走行経路Sを補正する。
【0032】
このとき、走行経路補正部15は、建物図面20に対して設定された走行経路Sにおいて、建物図面20上の特徴物21と地図データ22上の特徴物21に対応する特徴物23との位置ずれ量が規定値以上である制約領域Rに対応する部分を補正する。
【0033】
例えば、図4(a)に示された建物図面20と図4(b)に示された地図データ22とでは、特徴物21a,21dと特徴物23a,23dとの位置ずれ量は規定値よりも少ないが、特徴物21b,21c,21e,21fと特徴物23b,23c,23e,23fとの位置ずれ量は規定値以上である。このため、図4(c)に示された照合データ24では、建物図面20上の特徴物21b,21c,21e,21fと地図データ22上の特徴物23b,23c,23e,23fとの位置ずれ量に応じて、走行経路Sが補正されることになる。
【0034】
具体的には、走行経路補正部15は、フォークリフト2が左右両側に位置する2つの特徴物23の間の中心に近い位置を走行するような新たな走行経路Sを生成する。このとき、走行経路補正部15は、例えば補正前の走行経路Sにおける地図データ22上の特徴物23の端部(特徴点P)に対応する制約点で折れ曲がるような新たな走行経路Sを生成する。制約点は、地図データ22上の特徴物23の特徴点Pを通り且つ補正前の走行経路Sに垂直な垂線と補正前の走行経路Sとの交点である。
【0035】
走行経路保存部16は、走行経路補正部15により補正して得られた走行経路Sのデータを走行制御用コントローラ4の経路記憶部7に保存する。
【0036】
図5は、本発明の一実施形態に係る走行経路生成方法の工程を示すフローチャートである。
【0037】
図5において、まず建物図面に対してフォークリフト2の走行経路Sを設定する工程が実施される(工程S101)。本工程は、走行経路設定工程であり、ユーザにより実施される。これにより、図4(a)に示されるように、走行経路Sが設定された建物図面20が得られる。具体的には、ユーザAは、パソコン30を使用して、建物のCAD図面上に走行経路Sを設計する。このとき、ユーザAは、例えば左右両側に位置する2つの特徴物21の間の中心部を結ぶような走行経路Sを設計する。
【0038】
次いで、走行経路Sが設定された建物図面を経路生成用コントローラ11の建物図面記憶部17に保存する工程が実施される(工程S102)。本工程は、ユーザにより実施される。
【0039】
次いで、手動運転によりフォークリフト2を走行させ、レーザセンサ3によってフォークリフト2から物体50までの距離を検出することで、建物図面に対応する地図データを作成する工程が実施される(工程S103)。本工程は、地図作成工程であり、走行経路生成装置10により実施される。これにより、図4(b)に示されるように、地図データ22が得られる。
【0040】
次いで、建物図面と地図データとを照合することにより、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量を算出する工程が実施される(工程S104)。本工程は、照合工程であり、走行経路生成装置10により実施される。これにより、図4(c)に示されるように、建物図面20上の特徴物21と地図データ22上の特徴物21に対応する特徴物23との位置ずれ量が算出される。
【0041】
次いで、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量に応じて、フォークリフト2の走行経路Sを補正する工程が実施される(工程S105)。本工程は、走行経路補正工程であり、走行経路生成装置10により実施される。これにより、図4(d)に示されるように、補正された走行経路Sが得られる。
【0042】
次いで、補正された走行経路Sのデータを走行制御用コントローラ4の経路記憶部7に保存する工程が実施される(工程S106)。本工程は、走行経路生成装置10により実施される。
【0043】
ところで、フォークリフト2を走行経路である路面上のガイドテープに沿って自律走行させる場合、走行経路は以下のようにして生成される。即ち、まず図6(a)に示されるように、ユーザがパソコンにより建物のCAD図面上に走行経路Sを設計する。そして、設計された走行経路に従って、ガイドテープを路面に貼り付ける。これにより、フォークリフト2は、ガイドテープを検出しながらガイドテープに沿って自律走行することが可能となる。
【0044】
一方、本実施形態では、ガイドテープを使用せず、フォークリフト2の自己位置を推定しながら、フォークリフト2を仮想のガイド線に沿って自律走行させる。この場合も、図6(a)に示されるように、ユーザがパソコンにより建物のCAD図面上に走行経路Sを設計する。このとき、走行経路Sのデータは、2次元座標で表される。
【0045】
しかし、建物図面は、実環境とは異なる場合が多い。このため、レーザセンサ3を使用して建物図面に対応する地図データが作成されると、図6(b)に示されるように、地図データ上と建物図面上とで物体50の位置がずれることがある。図6では、地図データ上と建物図面上とで柱52の位置はずれていないが、地図データ上と建物図面上とで棚51の位置がずれている。この場合には、実際にフォークリフト2が走行経路Sに沿って自律走行を行う際に、フォークリフト2が棚51に干渉し、フォークリフト2が自律走行できなくなる可能性がある。
【0046】
そのような課題に対し、本実施形態では、フォークリフト2が走行する走行経路Sが設定された建物図面と当該建物図面に対応する地図データとを照合することにより、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量が算出される。そして、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量に応じて、走行経路が補正される。このため、地図データに適した走行経路Sが得られることとなる。従って、地図データを用いてフォークリフト2の自己位置を推定しながら、フォークリフト2を走行経路Sに沿って自律走行させる際に、フォークリフト2が特徴物に干渉することが防止される。これにより、フォークリフト2の自律走行を中止することなく継続して行うことができる。
【0047】
また、上記実施形態では、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の端部の位置ずれ量が算出される。特徴物の端部では、フォークリフト2から物体50までの距離データとしての特徴が出やすい。従って、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量が精度良く算出されるため、地図データに更に適した走行経路Sが得られる。
【0048】
また、上記実施形態では、建物図面に対して設定された走行経路Sにおいて、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の位置ずれ量が規定値以上である制約領域に対応する部分が補正される。従って、走行経路Sの補正処理が必要最小限に抑えられるため、補正処理時間が短縮される。
【0049】
また、本実施形態では、ガイドテープ用の走行経路生成方法を採用して、ガイドテープレス用の走行経路を生成することができる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の端部の位置ずれ量が算出されているが、特にその形態には限られず、建物図面上及び地図データ上の同一の特徴物の端部以外の部分の位置ずれ量を算出してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、走行経路生成装置10のレーザセンサ3は、走行制御装置1が搭載されたフォークリフト2に搭載されているが、特にその形態には限られず、走行制御装置1が搭載されたフォークリフト2とは異なる専用の車両等に搭載されていてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、走行経路生成装置10の経路生成用コントローラ11は、フォークリフト2に搭載されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、地図作成部12及び地図保存部13を有するコントローラは、フォークリフト2に搭載され、照合部14及び走行経路補正部15を有するコントローラは、建物図面に対して走行経路Sを設定する際に使用されるパソコン等に内蔵されていてもよい。この場合には、地図作成部12により作成された地図データをパソコンに取り込む必要がある。
【0053】
また、上記実施形態では、新たな地図データの作成時に、走行経路Sの生成が行われているが、地図データの更新時にも、走行経路Sの生成を行ってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、レーザセンサ3によってフォークリフト2から物体50までの距離が検出されているが、距離センサとしては、特にレーザセンサ3に限られず、例えば赤外線センサや超音波センサ等であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、フォークリフト2の走行経路Sが生成されているが、本発明は、特にフォークリフト2には限られず、例えば搬送台車や搬送ロボット等といった移動体の走行経路Sの生成にも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
2…フォークリフト(移動体)、3…レーザセンサ、10…走行経路生成装置、12…地図作成部(地図取得部)、14…照合部、15…走行経路補正部、17…建物図面記憶部(建物図面取得部)、20…建物図面、21,21a~21f…特徴物、22…地図データ、23,23a~23f…特徴物、50…物体、L…レーザ、P…特徴点(端部)、R…制約領域、S…走行経路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6