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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】産業用リモートコントローラ
(51)【国際特許分類】
   G05G 9/047 20060101AFI20240723BHJP
   G05G 5/04 20060101ALI20240723BHJP
   B66C 13/56 20060101ALI20240723BHJP
   B66C 13/40 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G05G9/047
G05G5/04 B
B66C13/56
B66C13/40 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020191845
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080648
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渥美 雅士
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0217938(US,A1)
【文献】特開2013-065067(JP,A)
【文献】特開2003-202926(JP,A)
【文献】特開平10-097337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 9/047
G05G 5/04
B66C 13/56
B66C 13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中立位置と、前記中立位置から傾倒した傾倒位置との間を移動して、スイッチに対する操作を指で操作可能なジョイスティックを有する産業用リモートコントローラであって、
前記中立位置及び前記傾倒位置において、前記ジョイスティックが押圧される押圧方向と反対方向の弾性力により前記ジョイスティックを支持する弾性部材と、
前記中立位置及び前記傾倒位置において、筐体に固定して取り付けられているストッパ受部と前記押圧方向に間隔を空けて配置されている、前記ジョイスティックに設けられているストッパ部と、を備え、
前記ストッパ部及び前記ストッパ受部の少なくとも一方の、互いに対向する対向面は、球面で形成され、
前記ジョイスティックは、前記中立位置及び前記傾倒位置から軸方向に押圧されて、前記ストッパ受部と前記ストッパ部との間隔が、前記中立位置及び前記傾倒位置における前記間隔よりも小さい押圧位置に移動して、前記スイッチに対する操作を指で操作可能であり、
前記弾性部材は、前記ジョイスティックが前記押圧位置に移動した際に、前記スイッチに対して押圧操作可能な弾性変形範囲に設定され、
前記ジョイスティックは、前記押圧位置から前記軸方向に押圧されて、前記ストッパ受部と前記ストッパ部とが当接する押し過ぎ位置に移動し、前記押し過ぎ位置において、前記弾性部材の弾性力は、前記スイッチの許容荷重の範囲になるように設定されている
とを特徴とする、産業用リモートコントローラ。
【請求項2】
前記ジョイスティックは、スティック部と、前記スティック部の先端に接続されたノブとを備え、
前記ストッパ部は、前記スティック部の円筒状に形成された本体部の側面から外方に延在して形成され、
前記ストッパ部の下面が凹状の前記球面で形成され、
前記ストッパ受部は、前記ストッパ部の下方に配置され、かつ前記本体部が挿入される穴部が形成され、
前記ストッパ受部の上面が凸状の前記球面で形成され、
前記スイッチは、前記ストッパ受部の下方に配置されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の産業用リモートコントローラ。
【請求項3】
前記ジョイスティックは、前記傾倒位置を超えて傾倒しようとすると破壊されるように 設定されている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の産業用リモートコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指で操作可能なジョイスティックを有する産業用リモートコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クレーン車、高所作業車等の伸縮・起伏自在の伸縮ブームを備えた作業機を、作業機から離れた位置からオペレータが産業用リモートコントローラを用いて遠隔操作することが行われている。このような産業用リモートコントローラとして、ジョイスティック式のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、任意の方向に傾倒するジョイスティックを備える作業機の操作装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-097607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、産業用リモートコントローラは、工事現場や工場において使用されることが想定されている。このような場所で使用される産業用リモートコントローラは、地面に落下させてしまったり、工事現場にある資材等にぶつけてしまったりすることがある。そのため、産業用リモートコントローラは、ホビー用のコントローラと比較して、耐久性や堅牢性が求められる。
【0006】
しかし、特許文献1の発明は、ジョイスティックに強い力が加わった場合に、この力が直接スイッチや基板等に伝わってしまい、スイッチや基板等の損傷を回避することができない、という問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、ジョイスティックに強い力が加わった場合に、スイッチや基板の損傷を回避することができる産業用リモートコントローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
目的を達成するために、本発明の産業用リモートコントローラは、中立位置と、前記中立位置から傾倒した傾倒位置との間を移動して、スイッチに対する操作を指で操作可能なジョイスティックを有する産業用リモートコントローラであって、前記中立位置及び前記傾倒位置において、前記ジョイスティックが押圧される押圧方向と反対方向の弾性力により前記ジョイスティックを支持する弾性部材と、前記中立位置及び前記傾倒位置において、筐体に固定して取り付けられているストッパ受部と前記押圧方向に間隔を空けて配置されている、前記ジョイスティックに設けられているストッパ部と、を備え、前記ストッパ部及び前記ストッパ受部の少なくとも一方の、互いに対向する対向面は、球面で形成され、前記ジョイスティックは、前記中立位置及び前記傾倒位置から軸方向に押圧されて、前記ストッパ受部と前記ストッパ部との間隔が、前記中立位置及び前記傾倒位置における前記間隔よりも小さい押圧位置に移動して、前記スイッチに対する操作を指で操作可能であり、前記弾性部材は、前記ジョイスティックが前記押圧位置に移動した際に、前記スイッチに対して押圧操作可能な弾性変形範囲に設定され、前記ジョイスティックは、前記押圧位置から前記軸方向に押圧されて、前記ストッパ受部と前記ストッパ部とが当接する押し過ぎ位置に移動し、前記押し過ぎ位置において、前記弾性部材の弾性力は、前記スイッチの許容荷重の範囲になるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された本発明の産業用リモートコントローラは、ジョイスティックに強い力が加わった場合に、スイッチや基板の損傷を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のクレーンを示す側面図である。
図2】実施例1のリモートコントローラを示す斜視図である。
図3】実施例1のリモートコントローラのジョイスティックの周辺を示す断面図である。
図4】実施例1のスティック部を示す斜視図である。
図5】実施例1のジョイスティックの動作を説明する断面図であり、中立位置から押圧位置に移動した状態を示す図である。
図6】実施例1のジョイスティックの動作を説明する断面図であり、中立位置から押し過ぎ位置に移動した状態を示す図である。
図7】実施例1のジョイスティックの動作を説明する断面図であり、中立位置から傾倒位置に移動した状態を示す図である。
図8】実施例1のジョイスティックの動作を説明する断面図であり、傾倒位置から押圧位置に移動した状態を示す図である。
図9】実施例1のジョイスティックの動作を説明する断面図であり、傾倒位置から押し過ぎ位置に移動した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による産業用リモートコントローラを実現する実施形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
実施例1における産業用リモートコントローラ(以下、リモートコントローラという。)は、トラッククレーン(以下、クレーンという。)を遠隔操作する産業用リモートコントローラに適用される。
【0013】
[クレーンの構成]
図1は、実施例1のクレーンを示す側面図である。以下、実施例1のクレーンの構成を説明する。なお、クレーンの前後方向を前後方向Dとする。
【0014】
図1に示すように、クレーン10は、前後方向Dに延び、前輪11と後輪12,13を設けたメインフレーム14と、メインフレーム14の上に旋回可能に設けた旋回ポスト15と、旋回ポスト15の上部に起伏可能に設けた伸縮ブーム16と、メインフレーム14の両側であって旋回ポスト15の近傍に設けた一対のアウトリガ装置17と、旋回ポスト15の前側であってメインフレーム14上に設けたキャビン18と、キャビン18の後側に設けた荷台20と、等を備えている。
【0015】
旋回ポスト15は、伸縮ブーム16を起伏可能に保持する相対向した一対の保持部21を有している。伸縮ブーム16は、ベースブーム16aと中間ブーム16b,16cと先端ブーム16dとを有している。
【0016】
ベースブーム16aには、起伏シリンダ23が取り付けられたブラケット22が取り付けられている。起伏シリンダ23が伸縮することで、ベースブーム16aが旋回ポスト15に対して起伏するようになっている。旋回ポスト15が旋回することで、伸縮ブーム16が旋回するようになっている。
【0017】
クレーン10は、クレーン10の各部を駆動する複数のアクチュエータを備えている。アクチュエータとしては、旋回ポスト15を旋回させる油圧モータ(図示せず)、伸縮ブーム16を起伏させる起伏シリンダ23、伸縮ブーム16を伸縮させる伸縮シリンダ(図示せず)、吊荷を吊るワイヤ(図示せず)の巻き上げ及び繰り出しを行うウインチ及び減速機、等が挙げられる。
【0018】
クレーン10は、旋回ポスト15の基端部近傍に、上記各アクチュエータを制御する制御装置24を備えている。制御装置24は、CPU、メモリ等を備えたコンピュータから構成されている。
【0019】
クレーン10は、制御装置24に対して操作指示を与えるリモートコントローラ30を備えている。制御装置24及びリモートコントローラ30は、公知の無線通信によって、クレーン作業に必要な操作指示やデータを送受信可能となっている。
【0020】
[リモートコントローラの構成]
図2は、実施例1のリモートコントローラ30を示す斜視図である。以下、実施例1のリモートコントローラ30の構成を説明する。
【0021】
図2に示すように、リモートコントローラ30は、オペレータが把持する略円柱状の把持部31と、把持部31の一端に設けられた操作部本体32とを備えている。
【0022】
操作部本体32は、略箱型の筐体33を備えている。筐体33内には、図示しない制御部、各種センサ、バッテリ等が収容されている。筐体33の正面には、クレーン10の作業状態等を示す画像等を表示する液晶ディスプレイ等からなる表示部34、電源ボタンやモード切替ボタン等の各種操作ボタン35、アクチュエータの駆動を操作するための2つのジョイスティック40等が設けられている。2つのジョイスティック40は、操作部本体32の正面に、所定間隔を置いて左右に並んで設けられている。2つのジョイスティック40は、オペレータが親指で操作可能な大きさで形成されている。
【0023】
把持部31の後方には、アクセルレバー37が設けられている。アクセルレバー37は、クレーン10のアクチュエータの作動速度を調整するためのトリガ型のスイッチである。アクセルレバー37は、オペレータが人差し指で操作可能な大きさで形成されている。
【0024】
このように構成されたリモートコントローラ30は、オペレータがアクセルレバー37とジョイスティック40を操作すると、角度センサ等のセンサによりその操作量(角度)に応じた信号が制御部へ入力される。この信号を受け付けた制御部は、この信号に基づいて、クレーン10の各アクチュエータの動作速度や動作方向等を決定する。
【0025】
[ジョイスティックの構成]
図3は、実施例1のリモートコントローラ30のジョイスティック40の周辺を示す断面図である。図4は、実施例1のスティック部を示す斜視図である。以下、実施例1のジョイスティック40の構成を説明する。
【0026】
ジョイスティック40は、初期位置である中立位置P1(図3参照)と、中立位置P1から傾倒した傾倒位置P4(図7参照)と、中立位置P1又は傾倒位置P4から軸方向に押圧された押圧位置P2,P5(図5及び図8参照)の間を移動して、スイッチ45に対する操作を親指で操作できるようになっている。
【0027】
図3に示すように、筐体33の内部には、スイッチ45が設けられている。スイッチ45の上部には、レバー45aが上方に突出して設けられている。
【0028】
レバー45aは、初期姿勢(中立姿勢)から全方向に傾倒する傾倒姿勢に移動可能になっている。レバー45aへの傾倒操作力を解除すると、レバー45aは、初期姿勢に復帰するようになっている。レバー45aは、初期姿勢又は傾倒姿勢から、軸方向に押圧された押圧姿勢に移動可能になっている。レバー45aへの押圧操作力を解除すると、レバー45aは、初期姿勢又は傾倒姿勢に復帰するようになっている。
【0029】
スイッチ45は、レバー45aの初期姿勢と、傾倒姿勢と、押圧姿勢とを検知するセンサを備えている。なお、押圧姿勢を検知するセンサを備えるスイッチとしては、タクトスイッチとすることができる。このセンサでの検知結果に対応した信号は、操作部本体32の制御部へ出力されるようになっている。
【0030】
図3に示すように、ジョイスティック40は、レバー45aに傾倒可能に支持されるスティック部42と、スティック部42の先端に接続されたノブ41とを備えている。
【0031】
スティック部42は、円筒状に形成された本体部42aと、本体部42aの側面から外方に延在して形成された傘状のストッパ部42bとを備えている。
【0032】
本体部42aの上端には、ノブ41が取り付けられている。円筒状に形成されている本体部42aの下部には、レバー45aが軸方向にスライド可能に嵌合している。すなわち、ジョイスティック40は、レバー45aに対して、軸方向にスライド可能に構成されている。
【0033】
本体部42aの内部には、弾性部材43が配置されている。弾性部材43は、例えば、ゴムやバネ等とすることができる。
【0034】
弾性部材43は、ノブ41の下端面と、レバー45aの上端面との間に挟まって配置されている。言い換えると、弾性部材43は、ノブ41の下端面と、レバー45aの上端面との間に介在されている。これにより、弾性部材43は、中立位置P1(図3参照)及び傾倒位置P4(図7参照)において、ジョイスティック40が押圧される押圧方向と反対方向の弾性力によりジョイスティック40を支持するようになっている。
【0035】
図4に示すように、ストッパ部42bは、本体部42aの外周面から、外方に傘状に延在して形成されている。言い換えると、ストッパ部42bは、本体部42aの外周面から、外方に椀状に形成されている。ストッパ部42bの下面は、球面状に形成されている。
【0036】
図3に示すように、ストッパ部42bとスイッチ45との間には、ストッパ受部33aが配置されている。ストッパ受部33aは、スイッチ45の上部を覆うように、傘状に形成されて、筐体33に取り付けられている。言い換えると、ストッパ受部33aは、スイッチ45の上部を覆うように、椀状に形成されている。ストッパ受部33aの上面は、ストッパ部42bの下面と同心の球面で形成されている。すなわち、ストッパ部42b及びストッパ受部33aの、互いに対向する対向面は、球面で形成されている。
【0037】
ストッパ受部33aは、上方から見て中央部に、円形の穴部33bが形成されている。穴部33bには、スティック部42が挿入されている。
【0038】
ストッパ部42bは、中立位置P1(図3参照)及び傾倒位置P4(図7参照)において、ストッパ受部33aと、押圧方向に間隔を空けて配置されている。押圧方向とは、ジョイスティック40が軸方向に押圧される方向である。
【0039】
[ジョイスティックの動作]
図5は、実施例1のジョイスティック40の動作を説明する断面図であり、中立位置P1から押圧位置P2に移動した状態を示す図である。図6は、実施例1のジョイスティック40の動作を説明する断面図であり、中立位置P1から押し過ぎ位置P3に移動した状態を示す図である。図7は、実施例1のジョイスティック40の動作を説明する断面図であり、中立位置P1から傾倒位置P4に移動した状態を示す図である。図8は、実施例1のジョイスティック40の動作を説明する断面図であり、傾倒位置P4から押圧位置P5に移動した状態を示す図である。図9は、実施例1のジョイスティック40の動作を説明する断面図であり、傾倒位置P4から押し過ぎ位置P6に移動した状態を示す図である。以下、実施例1のジョイスティック40の動作を説明する。
【0040】
(中立位置)
図3に示すように、中立位置P1では、弾性部材43は、ジョイスティック40の重量によってわずかに弾性変形するが、ほとんど弾性変形していない状態となる。中立位置P1では、ストッパ部42bとストッパ受部33aとの間に隙間D1が形成される。
【0041】
(押圧位置)
図5に示すように、押圧位置P2では、親指Fによるジョイスティック40の押圧操作によって、弾性部材43は、多少弾性変形した状態となる。
【0042】
押圧操作は、例えば、1kgの押圧力を想定することができる。押圧操作によって、ジョイスティック40は、例えば、0.2~0.4mm程押し下げられる。押圧位置P2では、ストッパ部42bとストッパ受部33aとの間に隙間D1より小さな隙間D2が形成される。
【0043】
弾性部材43は、ジョイスティック40が押圧位置P2に移動した際に、スイッチ45に対して押圧操作可能な弾性力の弾性変形範囲に設定されている。これにより、親指Fによるジョイスティック40の押圧操作によって、スイッチ45に対して押圧操作を可能とする。
【0044】
(押し過ぎ位置)
図6に示すように、押し過ぎ位置P3は、例えば、リモートコントローラ30を落下させたりして、石Gがジョイスティック40に衝突し、ジョイスティック40に軸方向の強い力が加わって、押圧位置P2よりさらに軸方向に押し込まれた状態である。押し過ぎ位置P3では、例えば、ジョイスティック40への石Gの衝突によって、弾性部材43は、弾性変形した状態となる。
【0045】
ジョイスティック40への石Gの衝突による押圧力は、例えば、10kgを超えたものを想定することができる。石Gのジョイスティック40への衝突によって、ジョイスティック40は、例えば、1.0mm程押し下げられる。押し過ぎ位置P3では、ストッパ部42bはストッパ受部33aと当接するようになっている。
【0046】
弾性部材43の弾性力は、押し過ぎ位置P3において、スイッチ45の垂直許容荷重の範囲になるように設定されている。すなわち、押し過ぎ位置P3において、弾性部材43の弾性力によって損傷しないようになっている。
【0047】
(傾倒位置)
図7に示すように、傾倒位置P4は、親指Fによる操作で、ジョイスティック40を中立位置P1から傾倒させた状態である。傾倒位置P4では、弾性部材43は、ジョイスティック40の重量によってわずかに弾性変形するが、ほとんど弾性変形していない状態となる。傾倒位置P4では、ストッパ部42bとストッパ受部33aとの間に隙間D4が形成される。
【0048】
(押圧位置)
図8に示すように、押圧位置P5では、弾性部材43は、親指Fによるジョイスティック40の押圧操作によって、多少弾性変形した状態となる。
【0049】
押圧操作は、例えば、1kgの押圧力を想定することができる。押圧操作によって、ジョイスティック40は、例えば、0.2~0.4mm程押し下げられる。押圧位置P5では、ストッパ部42bとストッパ受部33aとの間に隙間D4より小さな隙間D5が形成される。
【0050】
弾性部材43は、ジョイスティック40が押圧位置P5に移動した際に、スイッチ45に対して押圧操作可能な弾性力の弾性変形範囲に設定されている。これにより、親指Fによるジョイスティック40の押圧操作によって、スイッチ45に対して押圧操作を可能とする。
【0051】
(押し過ぎ位置)、
図9に示すように、傾倒状態における押し過ぎ位置P6は、例えば、リモートコントローラ30を落下させたりして、石Gがジョイスティック40に衝突し、傾倒状態でジョイスティック40に軸方向の強い力が加わって、押圧位置P5よりさらに軸方向に押し込まれた状態である。押し過ぎ位置P6では、例えば、ジョイスティック40への石Gの衝突によって、弾性部材43は、弾性変形した状態となる。
【0052】
石Gのジョイスティック40への衝突による押圧力は、例えば、10kgを超えたものを想定することができる。石Gのジョイスティック40への衝突によって、ジョイスティック40は、例えば、1.0mm程押し下げられる。傾倒状態における押し過ぎ位置P6では、ストッパ部42bはストッパ受部33aと当接するようになっている。
【0053】
弾性部材43の弾性力は、傾倒状態における押し過ぎ位置P6において、スイッチ45の垂直許容荷重の範囲になるように設定されている。すなわち、傾倒状態における押し過ぎ位置P6において、弾性部材43の弾性力によって損傷しないようになっている。
【0054】
なお、ジョイスティック40は、傾倒位置P4を超えて傾倒しようとすると、曲がったり、砕けたりして破壊されるように設定されている。
【0055】
なお、弾性部材43は、ジョイスティック40が押圧位置P2,P5を超えて押し込まれた場合に、弾性変形し始めるように設定してもよい。
【0056】
[クレーンの作用]
以下、実施例1のリモートコントローラ30の作用を説明する。
【0057】
実施例1のリモートコントローラ30は、中立位置P1と、中立位置P1から傾倒した傾倒位置P4との間を移動して、スイッチ45に対する操作を親指Fで操作可能なジョイスティック40を有するリモートコントローラ30であって、中立位置P1及び傾倒位置P4において、ジョイスティック40が押圧される押圧方向と反対方向の弾性力によりジョイスティック40を支持する弾性部材43と、中立位置P1及び傾倒位置P4において、筐体33に固定して取り付けられているストッパ受部33aと押圧方向に間隔を空けて配置されている、ジョイスティック40に設けられているストッパ部42bと、を備え、ストッパ部42b及びストッパ受部33aの少なくとも一方の、互いに対向する対向面は、球面で形成されている(図3)。
【0058】
これにより、中立位置P1であっても傾倒位置P4であっても、リモートコントローラ30を落下させたりぶつけたりして軸方向に押圧する強い力がジョイスティック40に加わった際に、ストッパ部42bをストッパ受部33aに当接させることができる。そのため、軸方向に押圧する強い力がジョイスティック40に加わった際に、ジョイスティック40に入力された軸方向の力をストッパ部42bからストッパ受部33aに逃がして、スイッチ45や基板に伝わらないようにすることができる。その結果、ジョイスティック40の軸方向に強い力が加わった場合に、スイッチ45や基板の損傷を回避することができる。
【0059】
また、ジョイスティック40の軸方向に強い力が加わった際に、弾性部材43によって、この力を吸収して、スイッチ45や基板に伝わらないようにすることができる。そのため、ジョイスティック40の軸方向に強い力が加わった場合に、スイッチ45や基板の損傷を回避することができる。
【0060】
また、中立位置P1及び傾倒位置P4において、ストッパ部42bとストッパ受部33aとは、間隔を空けて配置されているため、ジョイスティック40の操作性に影響を及ぼすこともない。
【0061】
すなわち、ジョイスティック40の操作性を維持しつつ、ジョイスティック40の軸方向に強い力が加わった場合に、スイッチ45や基板の損傷を回避することができる。
【0062】
実施例1のリモートコントローラ30において、ジョイスティック40は、中立位置P1又は傾倒位置P4から軸方向に押圧された押圧位置P2,P5に移動して、スイッチ45に対する操作を親指Fで操作可能であり、弾性部材43は、ジョイスティック40が押圧位置P2,P5に移動した際に、スイッチ45に対して押圧操作可能な弾性変形範囲に設定されている(図5及び図8)。
【0063】
これにより、中立位置P1であっても傾倒位置P4であっても、ジョイスティック40の軸方向に所定の力が加わった際に、弾性部材43を介して、ジョイスティック40の押圧操作をすることができる。一方、ジョイスティック40が押圧位置P2,P5を超えて押し込まれ、軸方向に所定の力を超える力が加わった際に、弾性部材43によってこの力を吸収して、スイッチ45や基板に極力伝わらないようにすることができる。そのため、中立位置P1であっても傾倒位置P4であっても、押圧操作を可能としつつ、ジョイスティック40に強い力が加わった場合に、スイッチ45や基板の損傷を回避することができる。
【0064】
実施例1のリモートコントローラ30において、弾性部材43の弾性力は、押圧位置P2,P5を超えて押圧されてストッパ部42bとストッパ受部33aとが当接する押し過ぎ位置P3,P6において、スイッチ45の許容荷重の範囲になるように設定されている(図6及び図9)。
【0065】
これにより、押し過ぎ位置P3,P6では、スイッチ45に許容荷重を超える力を及ぼさないようにすることができる。そのため、ジョイスティック40に強い力が加わった場合に、スイッチ45や基板の損傷を回避することができる。
【0066】
実施例1のリモートコントローラ30において、ジョイスティック40は、傾倒位置P4を超えて傾倒しようとすると破壊されるように設定されている。
【0067】
これにより、ジョイスティック40を倒す方向に強い力がかかった場合、ジョイスティック40を破壊させることができる。そのため、スイッチ45や基板等に過大な力が加わる前に、ジョイスティック40によってこの力を吸収することができる。その結果、廉価なジョイスティック40によって倒す方向の大きな力を吸収して、高価なスイッチ45や基板の損傷を回避することができる。
【0068】
以上、本発明の産業用リモートコントローラを実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更等は許容される。
【0069】
実施例1では、ストッパ部42bの下面と、ストッパ受部33aの上面とを球面とする例を示した。しかし、ストッパ部42bの下面と、ストッパ受部33aの上面の少なくとも一方を球面としてもよい。この場合、球面でない方の部分を、リブ等の突起物で形成してもよい。
【0070】
実施例1では、ジョイスティック40は、リモートコントローラ30に2つ設けられる例を示した。しかし、ジョイスティックは、リモートコントローラに1つ設けられてもよいし、3つ以上設けられてもよい。
【0071】
実施例1では、本発明を、中立位置P1と、傾倒位置P4と、押圧位置P2,P5との間を移動して、スイッチ45に対する操作を親指Fで操作できるジョイスティック40を有するリモートコントローラ30に適用する例を示した。しかし、本発明の産業用リモートコントローラは、押圧位置には移動せずに、中立位置P1と、傾倒位置P4との間を移動して、スイッチ45に対する操作を親指Fで操作できるジョイスティック40を有するものに適用してもよい。すなわち、本発明の産業用リモートコントローラを押圧操作がされないものに適用することもできる。
【0072】
実施例1では、本発明を親指Fで操作できるジョイスティック40を有する産業用リモートコントローラに適用する例を示した。しかし、本発明は、親指に限定されず、指で操作できるジョイスティックを有する産業用リモートコントローラに適用することができる。
【0073】
実施例1では、本発明を、クレーン10を操作する産業用リモートコントローラに適用する例を示した。しかし、本発明は、高所作業車や油圧ショベル等の建設機械や産業用機械に適用することもできる。
【符号の説明】
【0074】
10 クレーン
30 リモートコントローラ
33 筐体
33a ストッパ受部
40 ジョイスティック
42b ストッパ部
43 弾性部材
45 スイッチ
F 親指
P1 中立位置
P4 傾倒位置
P2,P5 押圧位置
P3,P6 押し過ぎ位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9