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特許7524729車両停止判定装置、車両停止判定方法および車両停止判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】車両停止判定装置、車両停止判定方法および車両停止判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 3/02 20060101AFI20240723BHJP
   B61L 3/12 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
B61L3/02 A
B61L3/12 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020193446
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082088
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】杉立 好正
(72)【発明者】
【氏名】相澤 知禎
(72)【発明者】
【氏名】高田 義教
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-048562(JP,U)
【文献】特開2014-148300(JP,A)
【文献】特開2020-085735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 3/02
B61L 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置に停止する移動体が停止しているか否かの判定を行う車両停止判定装置であって、
所定の位置に停止した前記移動体の第1車両の車輪を検出する第1検出エリアと前記第1車両に連結され前記第1車両とは異なる第2車両の車輪を検出する第2検出エリアとを設定する検出エリア設定部と、
前記第1検出エリアにおいて前記第1車両の車輪、または、前記第2検出エリアにおいて前記第2車両の車輪の有無を検出する車輪検出部と、
前記第1検出エリアまたは前記第2検出エリアにおける前記車輪検出部の検出結果に基づいて、前記移動体が停止しているか否かを判定する判定部と、
を備えている車両停止判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第1検出エリアまたは前記第2検出エリアにおいて、前記車輪検出部が前記車輪を所定時間以上検出すると、前記移動体が停止していると判定する、
請求項1に記載の車両停止判定装置。
【請求項3】
前記検出エリア設定部は、前記所定の位置に停止する前記移動体の複数の車両に応じて複数の検出エリアを設定する、
請求項1または2に記載の車両停止判定装置。
【請求項4】
前記検出エリア設定部において設定された前記複数の検出エリアを保存する記憶部を、さらに備えている、
請求項3に記載の車両停止判定装置。
【請求項5】
前記第1車両または前記第2車両の所定の車両を検出する車両検出部を、さらに備えている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両停止判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記車輪検出部において前記車輪が検出され、かつ、前記車両検出部において前記第1車両または前記第2車両が検出されている場合に、前記車両が停止していると判定する、
請求項5に記載の車両停止判定装置。
【請求項7】
前記車両検出部は、前記車両に対して赤外線を照射する赤外線センサにおける検知結果を取得して、前記車両の有無を検出する、
請求項5または6に記載の車両停止判定装置。
【請求項8】
前記第1車両と前記第2車両とは、車両の長さが異なる、
請求項1から7のいずれか1項に記載の車両停止判定装置。
【請求項9】
前記第1車両と前記第2車両とは、停止する前記所定の位置が異なる、
請求項1から7のいずれか1項に記載の車両停止判定装置。
【請求項10】
前記車輪検出部は、所定の角度範囲の走査エリアをレーザ光によって走査する走査器ユニットにおける検知結果を取得して、前記車輪の有無を検出する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の車両停止判定装置。
【請求項11】
前記走査器ユニットは、略水平方向に沿って前記レーザ光を走査する、
請求項10に記載の車両停止判定装置。
【請求項12】
前記走査器ユニットは、駅のプラットホーム下に設置されている、
請求項10または11に記載の車両停止判定装置。
【請求項13】
前記走査器ユニットは、前記駅のプラットホームから転落した人または物を検出する、
請求項12に記載の車両停止判定装置。
【請求項14】
前記移動体は、駅に入線して所定の位置に停止する電車である、
請求項12または13に記載の車両停止判定装置。
【請求項15】
所定の位置に停止する移動体が停止しているか否かの判定を行う車両停止判定方法であって、
前記所定の位置に停止した前記移動体の第1車両の車輪を検出する第1検出エリアと前記第1車両に連結され前記第1車両とは異なる第2車両の車輪を検出する第2検出エリアとを設定する検出エリア設定ステップと、
前記第1検出エリアにおいて前記第1車両の車輪、または、前記第2検出エリアにおいて前記第2車両の車輪の有無を検出する車輪検出ステップと、
前記第1検出エリアまたは前記第2検出エリアにおける前記車輪検出ステップでの検出結果に基づいて、前記移動体が停止しているか否かを判定する判定ステップと、
を備えている車両停止判定方法。
【請求項16】
所定の位置に停止する移動体が停止しているか否かの判定を行う車両停止判定方法をコンピュータに実行させる車両停止判定プログラムであって、
前記所定の位置に停止した前記移動体の第1車両の車輪を検出する第1検出エリアと前記第1車両に連結され前記第1車両とは異なる第2車両の車輪を検出する第2検出エリアとを設定する検出エリア設定ステップと、
前記第1検出エリアにおいて前記第1車両の車輪、または、前記第2検出エリアにおいて前記第2車両の車輪の有無を検出する車輪検出ステップと、
前記第1検出エリアまたは前記第2検出エリアにおける前記車輪検出ステップでの検出結果に基づいて、前記移動体が停止しているか否かを判定する判定ステップと、
を備えている車両停止判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の位置に停止した車両の停止状態の判定を行う車両停止判定装置、車両停止判定方法および車両停止判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駅のプラットホームと鉄道車両との隙間に転落した転落者を検知する転落者検知装置が提案されている。
このような転落者検知装置では、電車が駅のプラットホームに停止していないとき、あるいは電車が駅のプラットホームに停止しているときにおいて、プラットホームから転落した転落者を検知する前段階として、電車が停止しているか否かを判定している。
【0003】
例えば、特許文献1には、駅に停止した電車を検出するために、車体に設けられた反射板あるいは車両の特定の車輪を、車両の検出対象物として設定する車両の定位置停止検出装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-127904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の車両の定位置停止検出装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された車両の定位置停止検出装置では、駅に設置されたセンサから一定の距離の位置に設けられた1つの検出エリアに、検出対象物(反射板、車輪)が位置していることを検出することで、車両の停止を判定していた。
【0006】
しかし、このような方式では、駅に停止する車両の種類、長さが異なる場合には、検出対象となる検出対象物の位置が異なるおそれがあるため、例えば、各車両に対応する複数の検出対象物の位置を包含する検出エリアを設定する必要がある。
ところが、検出エリアを広げた場合には、検出エリアが長くなるため、車両が動き出した際に車両は動いているにもかかわらず、車輪が検出エリアから出て行かないために発車したとみなすことができない等、検出精度が低下するおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、車両の種類、長さ、停止位置等が異なる場合でも、車両の停止判定を高精度で実施することが可能な車両停止判定装置、車両停止判定方法および車両停止判定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る車両停止判定装置は、所定の位置に停止する車両が停止しているか否かの判定を行う車両停止判定装置であって、検出エリア設定部と、車輪検出部と、判定部と、を備えている。検出エリア設定部は、所定の位置に停止した第1車両の車輪を検出する第1検出エリアと第1車両とは長さが異なる第2車両の車輪を検出する第2検出エリアとを設定する。車輪検出部は、第1検出エリアにおいて第1車両の車輪、または、第2検出エリアにおいて第2車両の車輪の有無を検出する。判定部は、第1検出エリアまたは第2検出エリアにおける車輪検出部の検出結果に基づいて、車両が停止しているか否かを判定する。
【0009】
ここでは、例えば、駅等に停車する異なる車両(第1車両および第2車両)の停止の有無を判定するために、それぞれの車両に対応する第1検出エリアと第2検出エリアとを設定し、各検出エリアにおける各車両の車輪の検出結果に基づいて、車両の停止判定を行う。
ここで、異なる車両とは、例えば、車両の長さ、停止位置等が異なる車両を意味している。
【0010】
停止判定の対象となる車両には、例えば、電車、汽車、バス、トラック、乗用車等、車輪を備えた各種車両が含まれる。
第1車両の車輪を検出する第1検出エリアと、第2車両の車輪を検出する第2検出エリアは、互いに離間した位置に設定されていてもよいし、その一部が重複する位置に設定されていてもよい。
これにより、例えば、長さや停止位置が異なる車両が所定の位置に停止した場合でも、互いに異なる位置にあると想定される車輪を適切に検出することができる。
よって、車両の種類、長さ、停止位置等が異なる場合でも、車両の停止判定を高精度で実施することができる。
【0011】
第2の発明に係る車両停止判定装置は、第1の発明に係る車両停止判定装置であって、判定部は、第1検出エリアまたは第2検出エリアにおいて、車輪検出部が車輪を所定時間以上検出すると、車両が停止していると判定する。
これにより、例えば、ゴミや動物等が車輪検出部の前を通過する等した場合でも、所定時間が経過するまでは車輪とはみなさないことができるため、車輪の誤検出を回避することができる。
【0012】
第3の発明に係る車両停止判定装置は、第1または第2の発明に係る車両停止判定装置であって、検出エリア設定部は、所定の位置に停止する複数の車両に応じて複数の検出エリアを設定する。
これにより、3種類以上の異なる車両の停止判定を行う場合でも、それぞれの車両に対応した複数の検出エリアが設定されるため、それぞれの車両の停止判定を高精度に実施することができる。
【0013】
第4の発明に係る車両停止判定装置は、第3の発明に係る車両停止判定装置であって、検出エリア設定部において設定された複数の検出エリアを保存する記憶部を、さらに備えている。
これにより、複数の車両ごとに対応する複数の検出エリアが、予め記憶部に保存されているため、例えば、特定の駅に停車する予定の車両に応じた適切な検出エリアを容易に設定することができる。
【0014】
第5の発明に係る車両停止判定装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る車両停止判定装置であって、第1車両または第2車両の所定の車両を検出する車両検出部を、さらに備えている。
これにより、車両の停止を検出するために、車輪検出部とは別の車両検出部が設けられているため、より高精度に車両の停止判定を実施することができる。
【0015】
第6の発明に係る車両停止判定装置は、第5の発明に係る車両停止判定装置であって、判定部は、車輪検出部において車輪が検出され、かつ、車両検出部において第1車両または第2車両が検出されている場合に、車両が停止していると判定する。
これにより、車輪検出部における車輪の検出および車両検出部における車両の検出の双方を車両停止と判定する際の条件とすることで、より高精度に車両の停止判定を実施することができる。
【0016】
第7の発明に係る車両停止判定装置は、第6の発明に係る車両停止判定装置であって、車両検出部は、車両に対して赤外線を照射する赤外線センサにおける検知結果を取得して、車両の有無を検出する。
これにより、赤外線センサを用いて車両の検出を行うことで、簡素な構成により、車両の停止判定を実施することができる。
【0017】
第8の発明に係る車両停止判定装置は、第1から第7の発明のいずれか1つに係る車両停止判定装置であって、第1車両と第2車両とは、長さが異なる。
これにより、車両の長さが異なる第1車両と第2車両において、第1車両の車輪の位置と第2車両の車輪の位置とが異なる場合でも、それぞれに対応するように第1検出エリアと第2検出エリアとが設定されているため、それぞれの車両の停止判定を精度良く実施することができる。
【0018】
第9の発明に係る車両停止判定装置は、第1から第7の発明のいずれか1つに係る車両停止判定装置であって、第1車両と第2車両とは、停止する所定の位置が異なる。
これにより、停止位置が異なる第1車両と第2車両において、第1車両の車輪の位置と第2車両の車輪の位置とが異なる場合でも、それぞれに対応するように第1検出エリアと第2検出エリアとが設定されているため、それぞれの車両の停止判定を精度良く実施することができる。
【0019】
第10の発明に係る車両停止判定装置は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る車両停止判定装置であって、車輪検出部は、所定の角度範囲の走査エリアをレーザ光によって走査する走査ユニットにおける検知結果を取得して、車輪の有無を検出する。
これにより、レーザ光を所定の角度範囲で走査するレーザセンサから取得した検知結果を用いて、車輪の有無を検出することができる。
【0020】
第11の発明に係る車両停止判定装置は、第10の発明に係る車両停止判定装置であって、走査ユニットは、略水平方向に沿ってレーザ光を走査する。
これにより、略水平方向に走査されるレーザ光を走査する走査ユニット用いて、車輪の有無を検出することができる。
【0021】
第12の発明に係る車両停止判定装置は、第1から第11の発明のいずれか1つに係る車両停止判定装置であって、走査ユニットは、駅のプラットホーム下に設置されている。
これにより、駅のプラットホーム下に設置されたレーザセンサ等の走査ユニットを用いて、駅に停車している車両の車輪を検出することで、車両の停止判定を実施することができる。
【0022】
第13の発明に係る車両停止判定装置は、第12の発明に係る車両停止判定装置であって、走査ユニットは、駅のホームから転落した人または物を検出する。
これにより、車輪の有無を検出する走査ユニットを、例えば、駅のホームから転落した人や物を検出する転落検知センサとして用いることができる。
【0023】
第14の発明に係る車両停止判定装置は、第11または第12の発明に係る車両停止判定装置であって、車両は、駅に入線して所定の位置に停止する電車である。
これにより、例えば、駅において先頭車両の位置を基準にして停止する車両の長さが異なる場合でも、長さが異なる車両の車輪の位置に応じた検出エリアをそれぞれ設定することで、車両ごとに異なる車輪の位置を適切に検出することができる。
【0024】
第15の発明に係る車両停止判定方法は、所定の位置に停止する車両が停止しているか否かの判定を行う車両停止判定方法であって、検出エリア設定ステップと、車輪検出ステップと、判定ステップと、を備えている。検出エリア設定ステップは、所定の位置に停止した第1車両の車輪を検出する第1検出エリアと第1車両とは異なる第2車両の車輪を検出する第2検出エリアとを設定する。車輪検出ステップは、第1検出エリアにおいて第1車両の車輪、または、第2検出エリアにおいて第2車両の車輪の有無を検出する。判定ステップは、第1検出エリアまたは第2検出エリアにおける車輪検出ステップでの検出結果に基づいて、車両が停止しているか否かを判定する。
ここでは、例えば、駅等に停車する異なる車両(第1車両および第2車両)の停止の有無を判定するために、それぞれの車両に対応する第1検出エリアと第2検出エリアとを設定し、各検出エリアにおける各車両の車輪の検出結果に基づいて、車両の停止判定を行う。
ここで、異なる車両とは、例えば、車両の長さ、停止位置等が異なる車両を意味している。
【0025】
停止判定の対象となる車両には、例えば、電車、汽車、バス、トラック、乗用車等、車輪を備えた各種車両が含まれる。
第1車両の車輪を検出する第1検出エリアと、第2車両の車輪を検出する第2検出エリアは、互いに離間した位置に設定されていてもよいし、その一部が重複する位置に設定されていてもよい。
これにより、例えば、長さや停止位置が異なる車両が所定の位置に停止した場合でも、互いに異なる位置にあると想定される車輪を適切に検出することができる。
よって、車両の種類、長さ、停止位置等が異なる場合でも、車両の停止判定を高精度で実施することができる。
【0026】
第16の発明に係る車両停止判定プログラムは、所定の位置に停止する車両が停止しているか否かの判定を行う車両停止判定方法をコンピュータに実行させる車両停止判定プログラムであって、検出エリア設定ステップと、車輪検出ステップと、判定ステップと、を備えている。検出エリア設定ステップは、所定の位置に停止した第1車両の車輪を検出する第1検出エリアと第1車両とは異なる第2車両の車輪を検出する第2検出エリアとを設定する。車輪検出ステップは、第1検出エリアにおいて第1車両の車輪、または、第2検出エリアにおいて第2車両の車輪の有無を検出する。判定ステップは、第1検出エリアまたは第2検出エリアにおける車輪検出ステップでの検出結果に基づいて、車両が停止しているか否かを判定する。
【0027】
ここでは、例えば、駅等に停車する異なる車両(第1車両および第2車両)の停止の有無を判定するために、それぞれの車両に対応する第1検出エリアと第2検出エリアとを設定し、各検出エリアにおける各車両の車輪の検出結果に基づいて、車両の停止判定を行う。
ここで、異なる車両とは、例えば、車両の長さ、停止位置等が異なる車両を意味している。
【0028】
停止判定の対象となる車両には、例えば、電車、汽車、バス、トラック、乗用車等、車輪を備えた各種車両が含まれる。
第1車両の車輪を検出する第1検出エリアと、第2車両の車輪を検出する第2検出エリアは、互いに離間した位置に設定されていてもよいし、その一部が重複する位置に設定されていてもよい。
【0029】
これにより、例えば、長さや停止位置が異なる車両が所定の位置に停止した場合でも、互いに異なる位置にあると想定される車輪を適切に検出することができる。
よって、車両の種類、長さ、停止位置等が異なる場合でも、車両の停止判定を高精度で実施することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る車両停止判定装置によれば、車両の種類、長さ、停止位置等が異なる場合でも、車両の停止判定を高精度で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る車両停止判定装置の構成を示す制御ブロック図。
図2】(a)は、電車の不在状態でのプラットホームおよび軌道の平面図。(b)は、電車の在線状態でのプラットホームおよび軌道の平面図である。
図3図2(a)のIII-III線矢視断面図。
図4】(a)は、電車の不在状態において走査器ユニットに設定される軌道監視領域を示す斜視図。(b)は、電車の在線状態において走査器ユニットに設定される隙間監視領域を示す斜視図。
図5】(a)は、プラットホームに沿って所定の停止位置に停車した車両によって編成される電車の先頭車両の停止位置を示す平面図。(b)は、(a)と同じ停止位置に停車した車両によって編成される電車の先頭車両の停止位置を示す平面図。
図6】(a)は、プラットホームに沿って所定の停止位置に停車した車両によって編成される電車の先頭車両の停止位置を示す平面図。(b)は、(a)とは異なる停止位置に停車した車両によって編成される電車の先頭車両の停止位置を示す平面図。
図7図5(a)または図6(a)に示す車両に対応するように設定されたエリアAと、図5(b)または図6(b)に示す車両に対応するように設定されたエリアBとを示す図。
図8】(a)は、比較例1としての検出エリアを示す図。(b)は、比較例2としての検出エリアを示す図。
図9】本発明の車両停止判定装置によって実行される車両停止判定方法の処理の流れを示すフローチャート。
図10】本発明の車両停止判定装置によって実行される転落検知方法の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態に係る車両停止判定装置について、図1図10を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下の説明において、「長手方向」は、鉄道駅のプラットホームPの長手方向である。長手方向は、プラットホームPに隣接した軌道Rの延在方向、および、軌道R上の車両Cの車長方向と略平行である。「幅方向」は、プラットホームPの幅方向である。幅方向は、プラットホームPに隣接した軌道Rの軌間方向、および、軌道R上の車両Cの車幅方向と略平行である。幅方向の「内側」または「内方」は、プラットホームPの幅中心に近づく側または方向である。幅方向の「外側」または「外方」は、プラットホームPの幅中心から遠ざかる側または方向である。
【0033】
軌道Rは、道床と、その上に設けられた一対のレールとを含む。電車Tは、レールに沿って軌道R上を走行する。電車Tは、例えば、連結器を介して連結された6両編成の車両Cによって構成される(図2(b)参照)。プラットホームPは、軌道Rと幅方向に隣接して設置されている。
軌道Rの状態には、図2(a)に示す「不在状態」と、図2(b)に示す「在線(停止)状態」とが含まれる。不在状態では、軌道R上に電車Tが存在せず、軌道Rの上方が広く開放される。不在状態において、鉄道利用者は、プラットホームPの上面で電車Tの到着を待つ。在線状態では、軌道R上で電車Tが停止している。在線状態において、鉄道利用者は、プラットホームPと電車Tとの間に形成される隙間Dを跨いで、プラットホームPの上面から電車Tに乗り、または、電車TからプラットホームPの上面へ降りる。
【0034】
(1)車両停止判定装置1
本実施形態に係る車両停止判定装置1は、例えば、プラットホームPを備えた鉄道駅に設置され、プラットホームPに入線してくる電車Tの停止判定を行い、電車Tの在線状態と不在状態とを検出する。さらに、車両停止判定装置1は、電車Tの在線状態と不在状態のそれぞれにおいて、プラットホームPから誤って転落した鉄道利用者(人)や落下物等を検知する。
【0035】
車両停止判定装置1は、図1に示すように、赤外線センサ2、走査装置3、制御装置4、および警報装置5を備えている。
赤外線センサ2は、例えば、鉄道駅の屋根等に設置されており、図2(b)に示すように、プラットホームPと隣接した軌道R上で停止している電車Tの先頭車両(1両目)の側面に赤外線IRを照射して車両の有無を検出する。
【0036】
走査装置3は、図2(a)および図2(b)に示すように、プラットホームPと隣接した軌道Rに沿って設けられている。走査装置3は、図1に示すように、複数の走査器ユニット3a,3b,3cを有している。
各走査器ユニット3a,3b,3cは、長手方向において所定の間隔ごとに2台の車両Cに対して1つずつ設置されている。走査器ユニット3a,3b,3cは、図1に示すように、それぞれ、走査器31を有している。
【0037】
走査器31は、例えば、2Dレーザスキャナであって、図1に示すように、発光部33、偏向部34、受光部35および検知部36を有している。
発光部33は、レーザ光のような走査光SLを発光する。偏向部34は、ガルバノミラーのような偏向器、および、偏向器を回転駆動するアクチュエータを有する。発光部33で発光された走査光SLは、偏向部34によって偏向されながら射出される。
【0038】
これにより、図2(a)および図2(b)に示すように、2次元的な走査範囲SRが形成される。走査範囲SR内に物体(車両Cの車輪W、落下物等)が存在すると、走査光SLがその物体で反射する。
受光部35は、走査光SLの反射光を受光する。
検知部36は、受光部35で受光された反射光に基づいて、走査範囲SR(走査範囲SR内に設定された監視領域)に物体が存在するか否かを検知する。
【0039】
また、走査器31は、図3に示すように、プラットホームPよりも下方かつ軌道Rよりもやや上方に設置されている。
走査器31は、主として、停車している電車Tの車両Cの車輪W、軌道転落者等を検知する。
走査器31は、図3に示すように、軌道Rよりも幅方向内方、更には、プラットホームPの端縁よりも幅方向内方に設置されている。プラットホームPの下方には、プラットホームPの端縁から見て幅方向内方に奥まった空間が形成されることがある。走査器ユニット3a,3b,3cの設置位置は、例えば、このような空間内に設定されており、当該空間内で走査器31の上下方向および幅方向における位置が調整される。
【0040】
走査器31は、走査光SLが幅方向外方へ略水平に射出されて略水平面内で偏向される姿勢で設置されている。これにより、走査器31は、プラットホームPよりも下方かつ走査器31から見て幅方向外方に、2つの略水平な走査範囲SRを形成する。
走査光SLの偏向範囲は、図2(a)および図2(b)に示すように、概略180度である。走査範囲SRは、平面視において、対応する走査器31から幅方向に延びる基準線RLに対して線対称の略半円形状に形成される。複数の走査範囲SRは、複数の走査器ユニット3a,3b,3cによって、長手方向に並べられ、かつ互いに部分的にオーバラップされるように形成される。
【0041】
各走査範囲SR内には、監視領域が設定される。各走査器31は、走査範囲SR内の物体の存否を検知することができる。そして、各走査器31は、設定された監視領域内の物体の存在を検知したときに、その旨を示す検出信号を出力することができる。
監視領域のサイズおよび場所は、軌道の状態に応じて変更される。本実施形態に係る走査器31においては、複数の監視領域を、同一の走査範囲SR内における互いに異なる領域に同時的に設定することが可能である。また、同時に設定される2以上の監視領域が、プラットホームPの長手方向に略平行な方向において、その端部において互いに部分的に重複するように、走査範囲SRが設定される。
【0042】
本実施形態では、走査器ユニット3a,3b,3cは、長手方向において車両2両分の長さに相当する間隔をあけて設置されている。各設置位置は、停車中の電車Tの車両連結部と幅方向に対向する位置である。
走査器ユニット3aは、長手方向一方側(図2(a)および図2(b)の紙面左側)の末端に設置された1両目および2両目の車両連結部と対向する位置に配置されている。また、走査器ユニット3aは、図2(b)に示すように、停車している電車Tの先頭の車両Cの後ろ側の車輪Wを検出する。
【0043】
さらに、走査器ユニット3aは、図2(a)および図4(a)に示す電車Tが不在状態では、軌道R上に設定された軌道監視領域ARaにおいて、軌道転落者、落下物等を検知するとともに、図2(b)および図4(b)に示す電車Tの在線状態では、停車している電車Tの車両CとプラットホームPとの間に設定された隙間監視領域ADaにおいて、軌道転落者、落下物等を検知する。
【0044】
走査器ユニット3bは、末端の走査器ユニット3aから車両2両分の長さだけ離されており、図2(b)に示すように、3両目および4両目の車両連結部と対向する位置に配置されている。
そして、走査器ユニット3bは、図2(a)に示す電車Tが不在状態では、軌道R上に設定された軌道監視領域ARbにおいて、軌道転落者、落下物等を検知するとともに、図2(b)に示す電車Tの在線状態では、停車している電車Tの車両CとプラットホームPとの間に設定された隙間監視領域ADbにおいて、軌道転落者、落下物等を検知する。
【0045】
走査器ユニット3cは、末端の走査器ユニット3bから車両2両分の長さだけ離されており、図2(b)に示すように、5両目および6両目の車両連結部と対向する位置に配置されている。
そして、走査器ユニット3cは、図2(a)に示す電車Tが不在状態では、軌道R上に設定された軌道監視領域ARcにおいて、軌道転落者、落下物等を検知するとともに、図2(b)に示す電車Tの在線状態では、停車している電車Tの車両CとプラットホームPとの間に設定された隙間監視領域ADcにおいて、軌道転落者、落下物等を検知する。
【0046】
各走査器ユニット3a~3cに設定される監視領域は、長手方向に車両2両分の長さを有している。監視領域は、設置位置から見て長手方向一方側の車両Cと他方側(図2(a)等の紙面右側)の車両Cとの2両が停止する領域と対応する。
走査器ユニット3a,3b,3cにそれぞれ設定される複数の監視領域は、長手方向に連なっているため、電車Tが停車する全領域が監視の対象となる。
【0047】
走査器ユニット3a,3b,3cの個数は、単数でも複数でもよく、特に限定されるものではない。なお、走査器ユニット3a,3b,3cは、監視領域の長手方向における寸法や、プラットホームPの有効長や、軌道R上で停止すると想定されている電車Tの最大長に応じて、適宜変更可能である。
制御装置4は、図1に示すように、赤外線センサ2および走査装置3から出力された検知結果に基づいて、電車Tが停止しているか否かの停止判定を行うとともに、プラットホームPからの転落者、落下物等を検出する。制御装置4は、電車Tが停止状態にあると判定すると、転落者や落下物等の検出処理を実行する。ここで、制御装置4は、転落者を検知すると、駅員等の関係者に知らせるために発報動作を行うように、警報装置5を制御する。
【0048】
警報装置5は、電車運行を管理する指令所に設けられて指令員に向けて警報を発する警報器、鉄道駅に設けられて駅係員に向けて警報を発する警報器、電車Tの制御車に設けられて運転士あるいは車掌に向けて警報を発する警報器を含む。警報器は、音声を出力するスピーカまたはブザーでもよく、文字情報を表示するディスプレイまたはランプでもよい。
これにより、駅員等の関係者は、警報に基づいて、転落への対処、および、転落に付随する二次事故を未然に防ぐための措置をとることができる。
【0049】
(2)制御装置4
制御装置4は、一例として、CPUと、ROM、RAMおよびEEPROM等のメモリと、入出力インタフェースとを備えるコンピュータによって構成される。コンピュータは、単体でもよいし、物理的に分散された複数のコンピュータの複合でもよい。
【0050】
メモリは、このようなコンピュータに、車両停止判定方法および転落検知方法(図9および図10を参照)を実行させるためのプログラムを記憶している。
CPUは、メモリに保存されたプログラムを読み込んで、車両停止判定方法および転落検知方法に係る情報処理を行う。メモリは、各種プログラムのほか、車両停止判定方法および転落検知方法の実行に際して必要な情報またはデータを一時的に記憶することもできる。
【0051】
制御装置4は、各種プログラムを実行することで、記憶部10、タイマ11、車両検出部12、検出エリア設定部13、車輪検出部14、走査データ取得部15、判定部16および出力部17を有している。記憶部10は、前述したメモリによって実現される。
記憶部10は、走査器31に含まれる走査器ユニット3a,3b,3cごとに、軌道Rの状態に応じて可変的に設定される監視領域のパターンを記憶している。
【0052】
また、記憶部10は、走査器31に含まれる走査器ユニット3aが車両Cごとに設定された車輪Wを検出するための複数の検出エリアA,B(図7参照)を記憶している。なお、車両Cごとに設定された複数の車輪Wの検出エリアA,Bのパターンについては、後述する。
タイマ11は、例えば、車両Cの車輪Wが検出エリアA内または検出エリアB内に留まっている滞留時間を計測する。より詳細には、タイマ11は、予め設定された検出エリアAまたはBにおいて車輪Wが検知されてから計測を開始し、検出エリアAまたはBにおいて車輪Wが検知されたまま所定時間が経過するか否かを判定するために用いられる。
【0053】
車両検出部12は、赤外線センサ2における検知結果に基づいて、軌道上における電車Tの車両の有無、すなわち、電車TがプラットホームPに入線して停車しているか否かを示す情報を取得する。本実施形態では、車両検出部12は、車両Cの有無を示す状態として、在線状態であるか、不在状態であるかを示す情報を取得する。
検出エリア設定部13は、走査器31が車輪Wを検出するための検出エリアA,B(図7参照)を、プラットホームPに入線してくる電車Tの車両Cの種類(長さ等)、停車位置に応じて設定する。
【0054】
例えば、電車Tの車両Cの長さが異なる場合には、先頭車両(1両目)の位置を基準にしてプラットホームPの所定の位置に停車すると、長さL1,L2が異なる車両Cによって1両目と2両目との連結部分付近に設置された走査器31によって検出される1両目の車輪Wの位置は変化する。
具体的には、例えば、図5(a)に示す車両C(第1車両)の長さL1(約20m)に対して、図5(b)に示す車両C(第2車両)の長さL2(約17m)とすると、先頭車両(1両目)の停止位置Aが同じである場合には、走査器ユニット3aによって検出される車輪Wの位置は、図5(b)に示すように、約17m長の車両Cでは、約20m長の車両Cよりも左寄りに移動する。
【0055】
また、例えば、電車Tの編成数や電車Tの行き先、種類に応じて、プラットホームPにおける停車位置が異なる場合も想定される。この場合にも、走査器31によって検出される車輪Wの位置は変化する。
具体的には、例えば、図6(a)に示す車両C(第1車両)の停止位置Aに対して、図6(b)に示す車両C(第2車両)の停止位置Bが図中右側(車両後ろ寄り)に移動すると、走査器ユニット3aによって検出される車輪Wの位置は、図6(b)に示すように、右寄りに移動する。
【0056】
本実施形態の車両停止判定装置1では、以上のように、走査器31によって検出される車輪Wの位置が変化する場合でも、入線予定の電車Tの車両Cに対応する個別の検出エリアA,B(図7参照)等を設定する。
なお、車両停止判定装置1による車両停止位置判定処理については、後段にて詳述する。
【0057】
車輪検出部14は、検出エリア設定部13において車両Cの種類、停車位置ごとに設定された検出エリアA,Bにおける車輪Wの有無を検出する。具体的には、車輪検出部14は、最も先頭車両(1両目)側に設置された走査器31の走査器ユニット3aから受信した検知結果を用いて、検出エリアAまたは検出エリアBにおいて車輪Wを検知したか否かを検出する。
【0058】
走査データ取得部15は、車両検出部12および車輪検出部14における検出結果に基づいて、後述する車両停止判定処理が実施された後、予め設定された走査器31による監視領域内において、各走査器31から出力された物体(転落者、落下物等)の存否についての検知結果を取得する。
なお、走査データ取得部15は、各走査器31に設定されるべき監視領域を記憶部10に記憶される複数の軌道監視領域(軌道/a~軌道/c)から1つ選択し、選択された監視領域を各走査器31に設定する。
【0059】
判定部16は、車両検出部12および車輪検出部14における検出結果に基づいて、車両Cが停止しているか否かを判定するとともに、走査データ取得部15において取得された監視領域内における物体(転落者、落下物等)の有無の判定を行う。
より詳細には、判定部16は、車両検出部12においてプラットホームPに入線した電車Tが停車していることを検出し、車輪検出部14において所定の検出エリアA,Bのいずれかにおいて車輪Wが検出され、タイマ11によって、その車輪Wの検出エリアAまたはBにおける滞留時間が所定時間以上に達したことが分かると、電車Tの車両Cが停止していると判定する。
出力部17は、判定部16において転落者または落下物アリと判定された場合に、警報装置5に警報動作を行わせる指令を出力する。
【0060】
(3)車輪検出エリア
車輪検出エリアは、走査器ユニット3aの走査範囲を複数に分割して設定され、図1に示すように、車両Cの種類(長さ等)、停車位置等に応じて移動する車輪Wを検出するための検出エリアA,Bとして、記憶部10内に保存されている。
【0061】
検出エリアA,Bは、鉄道駅のプラットホームPに入線してくる電車Tの種類(編成数等)、車両Cの種類(長さ等)、停止位置に応じて、例えば、約20m長、約17m長の車両Cに対して2mの幅でそれぞれ設定されている。
検出エリアAは、図5(a)に示す車両Cの車輪Wの位置に対応する位置に設定されており、図7に示す中心部分が走査器ユニット3aの位置とすると、走査器ユニット3aの近傍に設定されている。
【0062】
検出エリアBは、図5(b)に示す車両Cの車輪Wの位置に対応する位置に設定されており、図7に示す中心部分が走査器ユニット3aの位置とすると、検出エリアAよりも走査器ユニット3aから離間した位置に設定されている。
ここで、比較例1として、図8(a)に示すように、鉄道駅のプラットホームPに入線してくる電車Tの種類(編成数等)、車両Cの種類(長さ等)、停止位置に関わらず、1つの検出エリアAのみが設定されている場合には、検出エリアAの範囲外に移動した車輪Wを検出することはできない。
【0063】
一方、比較例2として、図8(b)に示すように、鉄道駅のプラットホームPに入線してくる電車Tの種類(編成数等)、車両Cの種類(長さ等)、停止位置に対応する車輪Wの位置を1つの検出エリアCでカバーするように、検出エリアAよりも電車Tの長手方向において長い検出エリアCが設定されている。この場合には、車両Cが停止状態から動き出した際に、検出エリアAよりも長い検出エリアCから車輪Wが出ていくまでに時間を要し、車両Cが動き出した際に車両Cは動いているにもかかわらず、車輪Wが検出エリアCから出て行かないために発車したとみなすことができない等、車両Cの発車を検出する精度が低下するおそれがある。
【0064】
このように、鉄道駅のプラットホームPに入線してくる電車Tの種類(編成数等)、車両Cの種類(長さ等)、停止位置に応じて、それぞれの車両Cに対応する検出エリアが予め個別に設定されていることで、各車両Cの停止状態を正確に検出することができる。
【0065】
(4)監視領域
記憶部10は、図1および図4に示すように、軌道の状態に応じて走査装置3に選択的に設定される監視領域のパターンとして、不在状態で設定されるパターンである軌道監視領域ARと、在線状態で設定されるパターンである隙間監視領域ADとを記憶している。
なお、図4では、走査器ユニット3b,3cの監視領域の図示を省略するが、他の走査器ユニット3aと同様に監視領域が設定される。
軌道監視領域ARは、図2(a)および図4(a)に示すように、軌道Rの上方を覆うように設定される。転落者は、転落の過程で軌道監視領域AR内に入る。よって、軌道監視領域AR内に物体が存在するとの検知結果に基づいて、軌道Rの幅方向全体にわたって、転落者を検知することができる。
【0066】
隙間監視領域ADは、図2(b)および図4(b)に示すように、軌道監視領域ARよりも幅方向に狭く、隙間D内に設定される。隙間転落者のうち軌道Rまで達した者は、転落の過程で隙間監視領域AD内に入る。よって、隙間監視領域AD内に物体が存在するとの検知結果に基づいて、隙間転落者を検知することができる。
【0067】
<車両停止判定方法>
本実施形態の車両停止判定装置1による車両停止判定方法について、図9のフローチャートを用いて説明すれば以下の通りである。
すなわち、ステップS1では、制御装置4の検出エリア設定部13が、予め、鉄道駅のプラットホームPに入線してくる予定の電車Tの車両Cごとに対応する検出エリア(エリアA,B)を設定する。
次に、ステップS2では、赤外線センサ2を用いて、車両検出部12が、プラットホームPに車両Cが停止しているか否かを検出する。ここで、車両Cを検出した場合には、ステップS3へ進み、検出できない場合には、不在状態であると判断し、ステップS6へ進む。
【0068】
次に、ステップS3では、赤外線センサ2を用いて検出された車両Cの車輪Wが、予め設定された検出エリアA,Bのいずれかにあるか否かを検出する。ここで、車輪Wを検出した場合には、ステップS4へ進み、車輪Wを検出できない場合には、ステップS6へ進む。
次に、ステップS4では、検出エリアAまたはBにおいて車輪Wが検出されてからタイマ11によって時間が計測され、所定時間経過するまで待機し、所定時間が経過するとステップS5へ進む。
【0069】
次に、ステップS5では、ステップS2において赤外線センサ2を用いて車両Cが検出され、ステップS3において検出エリアAまたはBにおいて車輪Wが検出され、ステップS4において車輪Wの検出から所定時間、車輪Wが検出エリアAまたはBに滞留していると判定された結果、判定部16が、車両Cが停止している状態であると判定する。
一方、ステップS6では、ステップS2において車両Cが検出されていない、あるいは、ステップS3において検出エリアAまたはBにおいて車輪Wが検出されていないため、車両Cが停止していないと判定して、処理を終了する。
【0070】
<転落検知方法>
本実施形態の車両停止判定装置1による転落検知方法について、図10のフローチャートを用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態の転落検知方法は、上述した車両停止判定方法による車両停止判定処理が実施され、車両Cが停止していると判定された場合に実施される。
【0071】
すなわち、ステップS11では、軌道状態、すなわち、電車Tの車両Cが在線状態にあるか不在状態にあるかに応じて、予め監視領域が設定される。
次に、ステップS12では、上述した車両停止判定処理において車両Cが停止状態にあると判定されたか否かを判定する。ここで、停止していると判定されている場合には、ステップS13へ進み、停止していないと判定されている場合には、ステップS14へ進む。
【0072】
次に、ステップS13では、ステップS12において車両Cが停止していると判定されているため、在線状態に対応するように設定された隙間監視領域ADにおいて、落下物(人または物)の検知を行う。
一方、ステップS14では、ステップS12において車両Cが停止していないと判定されているため、不在状態に対応するように設定された軌道監視領域ARにおいて、落下物(人または物)の検知を行う。
【0073】
次に、ステップS15では、ステップS13またはステップS14において落下物(人または物)を検知したか否かを判定し、落下物(人または物)を検知すると、ステップS16へ進む。
次に、ステップS16では、ステップS15において落下物(人または物)を検知しているため、制御装置4が出力部17から警報装置5に対して警報を行うための信号を出力する。
【0074】
これにより、軌道状態に応じて予め設定された、電車Tの車両Cの在線状態に対応する隙間監視領域ADと、電車Tの車両Cの不在状態に対応する軌道監視領域ARとにおいて、それぞれ落下物(人または物)を検知して、検知した場合には警報装置5によって駅員等へ警報を出力することができる。
【0075】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0076】
(A)
上記実施形態では、車両停止判定装置1、車両停止判定方法として、本発明を実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上述した車両停止判定装置による車両停止判定方法をコンピュータに実行させる車両停止判定プログラムとして本発明を実現してもよい。
この車両停止判定プログラムは、車両停止判定装置に搭載されたメモリ(記憶部)に保存されており、CPUがメモリに保存された車両停止判定プログラムを読み込んで、ハードウェアに各ステップを実行させる。
【0077】
より具体的には、CPUが車両停止判定プログラムを読み込んで、所定の位置に停止した第1車両の車輪を検出する第1検出エリアと第1車両とは長さが異なる第2車両の車輪を検出する第2検出エリアとを設定する検出エリア設定ステップと、第1検出エリアにおいて第1車両の車輪または第2検出エリアにおいて第2車両の車輪の有無を検出する車輪検出ステップと、第1検出エリアまたは第2検出エリアにおける車輪検出ステップでの検出結果に基づいて車両が停止しているか否かを判定する判定ステップと、を実行することで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は、車両停止判定装置による車両停止判定プログラムを保存した記録媒体として実現されてもよい。
【0078】
(B)
上記実施形態では、赤外線センサ2を用いて車両Cの有無を検出する車両検出部12における検出結果と、走査器ユニット3aを用いて所定の検出エリアA,Bにおける車輪Wの有無を検出する車輪検出部14における検出結果とを用いて、車両の停止判定を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、車両検出部における検出結果を用いることなく、車輪検出部における検出結果のみを用いて、車両の停止判定を行ってもよい。
【0079】
(C)
上記実施形態では、車両検出部12においてプラットホームPに入線した電車Tが停車していることを検出し、車輪検出部14において所定の検出エリアA,Bのいずれかにおいて車輪Wが検出され、タイマ11によって、その車輪Wの検出エリアAまたはBにおける滞留時間が所定時間以上に達したことが分かると、電車Tの車両Cが停止していると判定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、タイマによって計測される車輪の検出エリアにおける滞留時間を用いることなく、車両検出部および車輪検出部における検出結果を用いて、車両の停止判定を行ってもよい。
【0080】
(D)
上記実施形態では、車輪Wを検出するために予め設定される検出エリアA,Bが2つ設けられた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、プラットホームに入線してくる電車Tの車両Cの種類等に応じて、3つ以上の検出エリアが設定されていてもよい。
【0081】
(E)
上記実施形態では、軌道上における落下物(人または物)を検知する前段階として、車両Cの停止判定を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、軌道上における落下物の有無の検知とは別途独立して、車両Cの停止判定を実施してもよい。
【0082】
(F)
上記実施形態では、車両Cの停止位置が異なる例として、図6(a)に示す車両Cとは長さが異なる図6(b)に示す短い車両Cが停止している例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、長さが同じ車両であっても、行き先や編成数が異なる電車の車両について停止位置が異なる場合でも、本発明の停止判定処理は同様に適用可能である。
【0083】
(G)
上記実施形態では、車両Cの停止判定および落下物(人または物)の検知処理を行うために設置された走査器ユニット3a~3cが、それぞれ2両分に相当するエリアをカバーするようにレーザを走査する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、車両1両ごとに1つの走査器ユニットが設置された構成であってもよいし、1つの走査器ユニットが3両以上に相当するエリアをカバーする構成であってもよい。
【0084】
(H)
上記実施形態では、車両Cの車輪Wの検知および転落者等の検知を、レーザを走査する走査器ユニット3a~3cを用いて行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、車輪や転落者の検知を他のセンサを用いて行ってもよい。
【0085】
(I)
上記実施形態では、鉄道駅のプラットホームPに停車した車両Cの有無を、赤外線センサ2を用いて検知する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、停車している車両の有無を、赤外線センサ以外のセンサを用いて検出してもよい。
【0086】
(J)
上記実施形態では、鉄道駅のプラットホームPに停車した電車の車輪を検出して、車両の停止判定を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本車両停止判定装置によって、駐車位置に停車するバス、トラック、乗用車等の他の車両、汽車、リニアモーターカー等の車輪を備えた各種車両の停止判定を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の車両停止判定装置は、車両の種類、長さ、停止位置等が異なる場合でも、車両の停止判定を高精度で実施することができるという効果を奏することから、車輪を備えた各種車両の所定の位置における停止判定を行う装置、方法に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 車両停止判定装置
2 赤外線センサ
3 走査装置
3a,3b,3c 走査器ユニット
4 制御装置
5 警報装置
10 記憶部
11 タイマ
12 車両検出部
13 検出エリア設定部
14 車輪検出部
15 走査データ取得部
16 判定部
17 出力部
31 走査器
33 発光部
34 偏向部
35 受光部
36 検知部
A,B 検出エリア
C 車両
D 隙間
P プラットホーム
R 軌道
T 電車
W 車輪
AD 隙間監視領域
AR 軌道監視領域
DA 車輪検出エリア
IR 赤外線
L1,L2 長さ
RL 基準線
SL 走査光
SR 走査範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10