(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】電動車両の電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240723BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240723BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240723BHJP
B60L 58/22 20190101ALI20240723BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H02J7/00 K
H02J7/00 P
H02J7/00 B
H02J7/00 302B
H01M10/48 P
B60L58/12
B60L58/22
B60L1/00 L
(21)【出願番号】P 2020194562
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大路 潔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 嵩
(72)【発明者】
【氏名】富岡 沙絵子
(72)【発明者】
【氏名】梶本 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】吉原 久未
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-197606(JP,A)
【文献】特開平9-140007(JP,A)
【文献】特開2020-031471(JP,A)
【文献】特開2017-112734(JP,A)
【文献】特表2014-519803(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002120(WO,A1)
【文献】特開2009-284606(JP,A)
【文献】特開2006-304394(JP,A)
【文献】特開2018-033269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/48
B60L 58/12
B60L 58/22
B60L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の電源システムであって、
複数の電池モジュールと、
当該電動車両の補機に供給するための、第1電圧の電力を出力する低電圧出力端子と、
当該電動車両の電動機に供給するための、前記第1電圧よりも高い第2電圧の電力を出力する高電圧出力端子と、
接地端子と、
前記電源システム内の電源ラインに設けられた複数のリレーと、
前記複数のリレーの開閉状態を制御する制御部とを備え、
前記複数のリレーは、
前記各電池モジュールの正極と前記低電圧出力端子とを接続する電源ラインにそれぞれ設けられた、複数の第1リレーと、
前記各電池モジュールの負極と前記接地端子とを接続する電源ラインにそれぞれ設けられた、複数の第2リレーと、
前記複数の電池モジュールを直列かつ環状に接続する環状電源ラインにおいて、前記電池モジュール同士の間にそれぞれ設けられた、複数の第3リレーと、
前記各電池モジュールの正極と前記高電圧出力端子とを接続する電源ラインにそれぞれ設けられた、複数の第4リレーとを含む
ことを特徴とする電動車両の電源システム。
【請求項2】
請求項1記載の電動車両の電源システムにおいて、
前記制御部は、前記複数の電池モジュールのうちのいずれか1つである第1電池モジュールから、前記第1電圧の電力を出力させるとき、
前記複数の第1リレーのうち、前記第1電池モジュールに対応する第1リレーを閉状態にし、他の第1リレーを開状態にし、
前記複数の第2リレーのうち、前記第1電池モジュールに対応する第2リレーを閉状態にし、他の第2リレーを開状態にし、
前記複数の第3リレーのうち、前記第1電池モジュールと、前記環状電源ラインにおいて前記第1電池モジュールの負極側に位置する電池モジュールとの間の第3リレーを開状態にし、他の第3リレーを閉状態にし、
前記複数の第4リレーのうち、前記環状電源ラインにおいて前記第1電池モジュールの負極側に位置する電池モジュールに対応する第4リレーを閉状態にし、他の第4リレーを開状態にする
ことを特徴とする電動車両の電源システム。
【請求項3】
請求項2記載の電動車両の電源システムにおいて、
前記制御部は、前記複数の電池モジュールのSOC(State Of Charge)を取得可能であり、かつ、前記複数の電池モジュールのSOCにアンバランスがあると判定したとき、前記第1電圧の電力を出力させる電池モジュールを切り換える
ことを特徴とする電動車両の電源システム。
【請求項4】
請求項2記載の電動車両の電源システムにおいて、
前記制御部は、当該電動車両のイグニッションがオフのとき、所定の切替シーケンスを実行するものであり、
前記所定の切替シーケンスは、
前記複数の第3リレーと、前記複数の第4リレーとを、開状態にするステップと、
前記複数の第1リレーと、前記複数の第2リレーとを、閉状態にするステップとを有する
ことを特徴とする電動車両の電源システム。
【請求項5】
請求項2記載の電動車両の電源システムにおいて、
前記制御部は、前記第1電圧の電力を出力させる電池モジュールを、前記第1電池モジュールから、第2電池モジュールに切り換えるとき、所定の切替シーケンスを実行するものであり、
前記所定の切替シーケンスは、
前記複数の第3リレーと、前記複数の第4リレーとを、開状態にするステップと、
前記複数の第1リレーのうち、前記第2電池モジュールに対応する第1リレーを閉状態にするとともに、前記複数の第2リレーのうち、前記第2電池モジュールに対応する第2リレーを閉状態にするステップと、
前記複数の第1リレーのうち、前記第1電池モジュールに対応する第1リレーを開状態にするとともに、前記複数の第2リレーのうち、前記第1電池モジュールに対応する第2リレーを開状態にするステップと、
前記複数の第3リレーのうち、前記第2電池モジュールと、前記環状電源ラインにおいて前記第2電池モジュールの負極側に位置する電池モジュールとの間の第3リレー以外の、第3リレーを閉状態にするステップと、
前記複数の第4リレーのうち、前記環状電源ラインにおいて前記第2電池モジュールの負極側に位置する電池モジュールに対応する第4リレーを閉状態にするステップとを有する
ことを特徴とする電動車両の電源システム。
【請求項6】
請求項1記載の電動車両の電源システムにおいて、
前記複数の電池モジュールは、それぞれ、
複数のセルと、
前記複数のセルを直列接続して電力を出力する第1状態と、前記複数のセルを並列接続する第2状態とを切り換え可能に構成された出力機構とを備えており、
前記制御部は、前記各電池モジュールの前記出力機構の状態を制御するものであり、かつ、
電力を出力させる前記電池モジュールについて、前記出力機構を、前記第1状態に設定し、
電力を出力させない前記電池モジュールについて、前記出力機構を、前記第2状態に設定する
ことを特徴とする電動車両の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、複数の電池モジュールを備える、電動車両の電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、直列接続された複数の電池セルを含む車両用のバッテリモジュールを備えるバッテリ制御システムが開示されている。バッテリモジュールの一部の電池セルが、走行用回転電機と補機負荷との両方への電力供給に用いられている。そして、DC/DCコンバータのスイッチング素子の動作を制御することによって、補機共用セルのSOC(State Of Charge)の下限割れを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、バッテリモジュールの電池セルの中で、走行用回転電機と補機負荷との両方への電力供給に用いられる電池セルが、予め決まっている。このため、この補機共用セルと、その他の高電圧電源専用セルとの間で、SOCにばらつきが生じることが懸念される。
【0005】
ここに開示された技術は、複数の電池モジュールを備える、電動車両の電源システムについて、各電池モジュールのSOCのばらつきを抑制可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された技術では、電動車両の電源システムは、複数の電池モジュールと、当該電動車両の補機に供給するための、第1電圧の電力を出力する低電圧出力端子と、当該電動車両の電動機に供給するための、前記第1電圧よりも高い第2電圧の電力を出力する高電圧出力端子と、接地端子と、前記電源システム内の電源ラインに設けられた複数のリレーと、前記複数のリレーの開閉状態を制御する制御部とを備え、前記複数のリレーは、前記各電池モジュールの正極と前記低電圧出力端子とを接続する電源ラインにそれぞれ設けられた、複数の第1リレーと、前記各電池モジュールの負極と前記接地端子とを接続する電源ラインにそれぞれ設けられた、複数の第2リレーと、前記複数の電池モジュールを直列かつ環状に接続する環状電源ラインにおいて、前記電池モジュール同士の間にそれぞれ設けられた、複数の第3リレーと、前記各電池モジュールの正極と前記高電圧出力端子とを接続する電源ラインにそれぞれ設けられた、複数の第4リレーとを含む。
【0007】
この構成によると、複数の第1リレーおよび複数の第2リレーの開閉状態を制御することによって、複数の電池モジュールのうちのいずれかを選択して、低電圧出力端子と接地端子との間に接続することができる。また、複数の第3リレーおよび複数の第4リレーの開閉状態を制御することによって、複数の電池モジュールを直列接続して、高電圧出力端子と接地端子との間に接続することができる。これにより、電動機に供給するための第2電圧の電力を出力しつつ、補機に供給するための第1電圧の電力を出力することができ、かつ、第1電圧の電力を出力する電池モジュールを、複数の電池モジュールの中から選択することができる。したがって、第2電圧の電力を出力しつつ、第1電圧の電力を出力する電池モジュールを適宜切り換えることができるので、各電池モジュールのSOCのばらつきを抑制することが可能になる。
【0008】
また、前記制御部は、前記複数の電池モジュールのうちのいずれか1つである第1電池モジュールから、前記第1電圧の電力を出力させるとき、前記複数の第1リレーのうち、前記第1電池モジュールに対応する第1リレーを閉状態にし、他の第1リレーを開状態にし、前記複数の第2リレーのうち、前記第1電池モジュールに対応する第2リレーを閉状態にし、他の第2リレーを開状態にし、前記複数の第3リレーのうち、前記第1電池モジュールと、前記環状電源ラインにおいて前記第1電池モジュールの負極側に位置する電池モジュールとの間の第3リレーを開状態にし、他の第3リレーを閉状態にし、前記複数の第4リレーのうち、前記環状電源ラインにおいて前記第1電池モジュールの負極側に位置する電池モジュールに対応する第4リレーを閉状態にし、他の第4リレーを開状態にする、としてもよい。
【0009】
これにより、第1電池モジュールから補機に供給するための第1電圧の電力を出力させつつ、複数の電池モジュールを直列に接続して電動機に供給するための第2電圧の電力を出力させることができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記複数の電池モジュールのSOC(State Of Charge)を取得可能であり、かつ、前記複数の電池モジュールのSOCにアンバランスがあると判定したとき、前記第1電圧の電力を出力させる電池モジュールを切り換える、としてもよい。
【0011】
これにより、各電池モジュールのSOCのアンバランスを抑制することができる。
【0012】
また、前記制御部は、当該電動車両のイグニッションがオフのとき、所定の切替シーケンスを実行するものであり、前記所定の切替シーケンスは、前記複数の第3リレーと、前記複数の第4リレーとを、開状態にするステップと、前記複数の第1リレーと、前記複数の第2リレーとを、閉状態にするステップとを有する、としてもよい。
【0013】
これにより、イグニッションがオフのとき、複数の電池モジュールが並列に接続されるので、各電池モジュール間で充放電が行われ、SOCのアンバランスが修正される。
【0014】
また、前記制御部は、前記第1電圧の電力を出力させる電池モジュールを、前記第1電池モジュールから、第2電池モジュールに切り換えるとき、所定の切替シーケンスを実行するものであり、前記所定の切替シーケンスは、前記複数の第3リレーと、前記複数の第4リレーとを、開状態にするステップと、前記複数の第1リレーのうち、前記第2電池モジュールに対応する第1リレーを閉状態にするとともに、前記複数の第2リレーのうち、前記第2電池モジュールに対応する第2リレーを閉状態にするステップと、前記複数の第1リレーのうち、前記第1電池モジュールに対応する第1リレーを開状態にするとともに、前記複数の第2リレーのうち、前記第1電池モジュールに対応する第2リレーを開状態にするステップと、前記複数の第3リレーのうち、前記第2電池モジュールと、前記環状電源ラインにおいて前記第2電池モジュールの負極側に位置する電池モジュールとの間の第3リレー以外の、第3リレーを閉状態にするステップと、前記複数の第4リレーのうち、前記環状電源ラインにおいて前記第2電池モジュールの負極側に位置する電池モジュールに対応する第4リレーを閉状態にするステップとを有する、としてもよい。
【0015】
これにより、補機に供給するための第1電圧の電力を出力する電池モジュールを、確実に切り換えることができる。
【0016】
また、前記複数の電池モジュールは、それぞれ、複数のセルと、前記複数のセルを直列接続して電力を出力する第1状態と、前記複数のセルを並列接続する第2状態とを切り換え可能に構成された出力機構とを備えており、前記制御部は、前記各電池モジュールの前記出力機構の状態を制御するものであり、かつ、電力を出力させる前記電池モジュールについて、前記出力機構を、前記第1状態に設定し、電力を出力させない前記電池モジュールについて、前記出力機構を、前記第2状態に設定する、としてもよい。
【0017】
これにより、電力を出力させない電池モジュールについて、その内部の複数のセルの充電状態をバランスさせることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、複数の電池モジュールを備える電動車両の電源システムについて、補機に供給するための低電圧電力を出力する電池モジュールを切り換えることができるので、各電池モジュールのSOCのばらつきを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る電動車両の電源システムの回路構成例
【
図2】(a)~(b)は
図1の電源システムの動作例
【
図3】
図1の電源システムの制御の一例を示すフローチャート
【
図6】
図1の電源システムの制御の他の例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は実施形態に係る電動車両の電源システムの構成例である。
図1の電源システムは、4個の電池モジュール10(図では1~4の番号を付しており、以下、適宜、モジュール1~4と称する)を備える。各電池モジュール10は、電圧12Vの電力を出力するものとする。ただし、本開示において、電源システムが備える電池モジュール10の個数は4個に限られるものではなく、また、電池モジュール10の出力電圧は12Vに限られるものではない。
【0022】
図1の電源システムは、低電圧出力端子21と、高電圧出力端子22と、接地端子23とを備える。低電圧出力端子21は、主として車両の補機に電力を供給するための端子であり、高電圧出力端子22は、主として車両を駆動するモータに電力を供給するための端子である。本実施形態では、低電圧出力端子21は12V電力を出力し、高電圧出力端子22は48V電力を出力する。ただし、本開示において、電源システムの出力電圧は、12Vや48Vに限られるものではない。
【0023】
図1の電源システムにおける電源ラインには、合計16個のリレー30(図では1~16の丸数字を付しており、以下、適宜、リレー1~16と称する)が設けられている。各リレー30は、制御部15から送られる制御信号によって、オン(閉状態)とオフ(開状態)とが切り換え可能に構成されている。リレー30がオンのとき、その両端の電源ラインは接続状態になり、リレー30がオフのとき、その両端の電源ラインは非接続状態になる。
【0024】
図1の電源システムでは、各電池モジュール10の正極と低電圧出力端子21とを接続する電源ラインに、リレー1,3,5,7(複数の第1リレー)がそれぞれ設けられている。各電池モジュール10の負極と接地端子23とを接続する電源ラインに、リレー2,4,6,8(複数の第2リレー)がそれぞれ設けられている。複数の電池モジュール10を直列かつ環状に接続する環状電源ラインにおいて、電池モジュール10同士の間に、リレー9,10,11,12(複数の第3リレー)がそれぞれ設けられている。そして、各電池モジュール10の正極と高電圧出力端子22とを接続する電源ラインに、リレー13,14,15,16(複数の第4リレー)がそれぞれ設けられている。なお、リレー12の一端とモジュール1の負極とは接続されている(
図1では破線および黒太矢印で示している)が、以降の図では、図の煩雑さを避けるために、この破線は省略している。
【0025】
図1の電源システムは、4個の電池モジュール10を直列接続して高電圧出力端子22から48V電力を出力することができ、かつ、この状態で、いずれかの電池モジュール10から低電圧出力端子21を介して12V電力を出力することができる。
【0026】
図2(a)~(b)は
図1の電源システムの動作例を示している。
図2(a)~(b)では、オンであるリレー10と、オフであるリレー10とを区別して図示している。また、12V電力を出力する電気の流れを破線PLで示し、48V電力を出力する電気の流れを破線PHで示している。以降の図についても同様である。
【0027】
図2(a)では、リレー1,2,9,10,11,16がオンであり、他のリレーはオフである。この状態では、高電圧出力端子22と接地端子23との間に、順に、モジュール4,3,2,1が直列に接続されている。そして、モジュール1が、低電圧出力端子21と接地端子23との間に接続されている。
図2(b)では、リレー3,4,10,11,12,13がオンであり、他のリレーはオフである。この状態では、高電圧出力端子22と接地端子23との間に、順に、モジュール1,4,3,2が直列に接続されている。そして、モジュール2が、低電圧出力端子21と接地端子23との間に接続されている。
【0028】
図2(c)では、リレー5,6,9,11,12,14がオンであり、他のリレーはオフである。この状態では、高電圧出力端子22と接地端子23との間に、順に、モジュール2,1,4,3が直列に接続されている。そして、モジュール3が、低電圧出力端子21と接地端子23との間に接続されている。
図2(d)では、リレー7,8,9,10,12,15がオンであり、他のリレーはオフである。この状態では、高電圧出力端子22と接地端子23との間に、順に、モジュール3,2,1,4が直列に接続されている。そして、モジュール4が、低電圧出力端子21と接地端子23との間に接続されている。
【0029】
図1の電源システムを利用することによって、48V出力と12V出力を同時に行うことができる。加えて、12V出力を行う電池モジュール10を適宜切り換えることができる。これにより、例えば、各電池モジュール10のSOC(State Of Charge)のバランスを容易にとることができる。
【0030】
(第1制御例)
図3は
図1に示す電源システムの制御の一例を示すフローチャートである。
【0031】
まず、制御部15は、電源システムが備える各電池モジュール10について、SOCを取得する(S11)。そして、各電池モジュール10において、SOCのアンバランスが生じているか否かを判定する(S12)。ここでは例えば、各電池モジュール10のSOCの最大値と、現在12V電源を供給している電池モジュール10のSOCとの差が、所定値を超えているか否かを判断し、所定値を超えているとき、SOCのアンバランスが生じていると判定する。なお、各電池モジュール10のSOCのアンバランスの有無を判定する手法は、これに限られるものではない。例えば、現在12V電源を供給している電池モジュール10のSOCが、各電池モジュール10のSOCの平均値を下回っているか否かを判断してもかまわない。
【0032】
そして、制御部15は、車両のイグニッション(IG)がオンかオフかを判定する(S13)。そして、IGオフのときは、シーケンスSQ1を実行し、IGオンのときは、シーケンスSQ2を実行する。
【0033】
シーケンスSQ1では、高電圧ラインすなわち48V出力を実行するための電源ラインに設けられた、全てのリレー9~16をオフにする(S21)。そして、低電圧ラインすなわち12V出力を実行するために設けられた、全てのリレー1~8をオンにする(S22)。
【0034】
図4にシーケンスSQ1の例を示す。いま、
図4(a)に示すように、リレー1,2,9,10,11,16がオンになっており、モジュール1~4による48V出力と、モジュール1による12V出力とが実行されているものとする。
図4(b)に示すように、ステップS21において、リレー9,10,11をオフにする。そして
図4(c)に示すように、ステップS22において、リレー3~8をオンにする。この結果、48V出力は停止され、並列に接続されたモジュール1~4によって12V出力が行われる。これにより、モジュール1のみのSOCが低下することが回避されて、各電池モジュール10のSOCのアンバランスを解消することができる。
【0035】
シーケンスSQ2では、まず、高電圧ラインが未使用か否かを判定する(S31)。高電圧ラインが使用中のときは(S31でNO)、シーケンスSQ2を終了する。高電圧ラインが未使用であるときは(S31でYES)、高電圧ラインに設けられた全てのリレー9~16をオフにする(S32)。そして、12V出力のために新たに用いる電池モジュール10(新低電圧電源モジュール)の低電圧ラインに設けられたリレーをオンにし(S33)、12V出力のために用いていた電池モジュール10(旧低電圧電源モジュール)の低電圧ラインに設けられたリレーをオフにする(S34)。なお、本実施形態では、SOCが最大である電池モジュール10を、新低電圧電源モジュールとする。そして、48V出力が実行できるように、高電圧ラインに設けられた一部のリレーをオンにする(S35)。
【0036】
図5にシーケンスSQ2の例を示す。いま、
図5(a)に示すように、リレー1,2,9,10,11,16がオンになっており、モジュール1~4による48V出力と、モジュール1による12V出力とが実行されているものとする。
図5(b)に示すように、ステップS32において、リレー9,10,11をオフにする。そして、
図5(c)に示すように、ステップS33において、新低電圧電源モジュールとしてモジュール2を選択し、その低電圧ラインにあるリレー3,4をオンにする。
図5(d)に示すように、ステップS34において、旧低電圧電源モジュールであるモジュール1の低電圧ラインにあるリレー1,2をオフにする。そして
図5(e)に示すように、ステップS35において、48V出力が実行できるように、高電圧ラインに設けられたリレー10~13をオンにする。この結果、モジュール1~4による48V出力と、モジュール2による12V出力とが実行可能になる。これにより、48V出力を保ちつつ、12V出力のための電池モジュール10を切り換えることができる。
【0037】
(第2制御例)
図6は
図1に示す電源システムの制御の他の例を示すフローチャートである。
図6では、
図3と共通のステップには同じ符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する場合がある。
【0038】
本制御例では、各電池モジュール10は、
図7のような内部構成を有していることを前提とする。
図7に示すように、各電池モジュール10は、4個のセル40(図では1~4の番号を付しており、以下、適宜、セル1~4と称する)を備えている。各セル40は、3V電力を出力するものとする。ただし、電池モジュール10が備えるセル40の個数は4個に限られるものではなく、また、セル40の出力電圧は3Vに限られるものではない。
【0039】
また、
図7の電池モジュールは、合計9個の内部リレー50(図では1~9の数字を付しており、以下、適宜、内部リレー1~9と称する)が設けられている。各内部リレー50は、制御部15から送られる制御信号によって、オン(閉状態)とオフ(開状態)とが切り換え可能に構成されている。内部リレー50がオンのとき、その両端の電源ラインは接続状態になり、内部リレー50がオフのとき、その両端の電源ラインは非接続状態になる。
【0040】
内部リレー2,5,8がオンであり、内部リレー1,3,4,6,7,9がオフのとき、4個のセル40は直列接続される。このとき、電池モジュール10は12Vを出力することができる(第1状態)。一方、内部リレー1,3,4,6,7,9がオンであり、内部リレー2,5,8がオフのとき、4個のセル40は並列接続される。このとき、セル40の充電状態をバランスさせることができる(第2状態)。すなわち、第1状態と第2状態とを切り換え可能に構成された出力機構が、電源ラインと内部リレー50によって構成されている。
【0041】
図6に示すように、まず、制御部15は、電源システムが備える各電池モジュール10について、SOCを取得する(S11)。そして、各電池モジュール10において、SOCのアンバランスが生じているか否かを判定する(S12)。SOCのアンバランスの有無の判定方法は、第1制御例と同様である。また、制御部15は、車両のイグニッション(IG)がオンかオフかを判定する(S13)。そしてIGオンのときは、シーケンスSQ2を実行する。以上は、第1制御例と同様である。
【0042】
IGオフのときは、第1制御例で説明したステップS21,S22の間に、シーケンスSQ3を実行する。シーケンスSQ3では、まず、12V出力を行っている旧低電圧電源モジュール以外の電池モジュール10について、その内部リレー1,3,4,6,7,9をオンにする(S41)。この状態を、セル40の充電状態のバランスが均一になるまで保つ(S42)。
【0043】
例えば
図8の例では、リレー1,2がオンになっており、モジュール1が12V出力を行っている。S41では、モジュール2~4について、その内部リレー1,3,4,6,7,9をオンにする。これにより、12V出力を行っていないモジュール2~4において、内部のセル1~4が並列に接続され、互いに充放電を行うことによって、充電状態のバランスが均一になる。
【0044】
その後、新低電圧電源モジュールの低電圧ラインにあるリレーをオンにし、かつ、新低電圧電源モジュール内における、セルを直列に接続するための内部リレー2,5,8をオンにする(S43)。そして、旧低電圧電源モジュールの低電圧ラインにあるリレーをオフにし、かつ、旧低電圧電源モジュール内における、セルを直列に接続するための内部リレー2,5,8をオフにする(S44)。そして、旧低電圧電源モジュールについて、その内部リレー1,3,4,6,7,9をオンにする(S45)。この状態を、セル40の充電状態のバランスが均一になるまで保つ(S46)。
【0045】
例えば
図9の例では、新たに12V出力を行う新低電圧電源モジュールとして、モジュール2が選択されている。モジュール2の低電圧ラインにあるリレー3,4をオンにし、かつ、モジュール2内における、セルを直列に接続するための内部リレー2,5,8をオンにする。一方、12V出力を行わなくなった旧低電圧電源モジュールであるモジュール1内では、その内部リレー1,3,4,6,7,9をオンにする。これにより、セル1~4が並列に接続され、互いに充放電を行うことによって、充電状態のバランスが均一になる。
【0046】
以上のように本実施形態によると、電源システムにおいて、電源ラインに設けられた複数のリレー30は、各電池モジュール10の正極と低電圧出力端子21とを接続する電源ラインにそれぞれ設けられたリレー1,3,5,7と、各電池モジュール10の負極と接地端子23とを接続する電源ラインにそれぞれ設けられたリレー2,4,6,8と、複数の電池モジュール10を直列かつ環状に接続する環状電源ラインにおいて、電池モジュール10同士の間にそれぞれ設けられたリレー9-12と、各電池モジュール10の正極と高電圧出力端子22とを接続する電源ラインにそれぞれ設けられたリレー13-16とを含む。
【0047】
この構成により、リレー1,3,5,7およびリレー2,4,6,8の開閉状態を制御することによって、複数の電池モジュール10のうちのいずれかを選択して、低電圧出力端子21と接地端子23との間に接続することができる。また、リレー9-12およびリレー13-16の開閉状態を制御することによって、複数の電池モジュール10を直列接続して、高電圧出力端子22と接地端子23との間に接続することができる。これにより、電動機に供給するための48V電力を出力しつつ、補機に供給するための12V電力を出力することができ、かつ、12V電力を出力する電池モジュール10を、複数の電池モジュール10の中から選択することができる。したがって、48V電力を出力しつつ、12V電力を出力する電池モジュール10を適宜切り換えることができる。
【0048】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0049】
10 電池モジュール
15 制御部
21 低電圧出力端子
22 高電圧出力端子
23 接地端子
30 リレー
40 セル
50 内部リレー