(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】車両用の仕切装置
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20240723BHJP
B60R 21/213 20110101ALI20240723BHJP
B60R 21/12 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B60R5/04 Z
B60R21/213
B60R21/12
(21)【出願番号】P 2020198751
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 剛史
(72)【発明者】
【氏名】徳田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木原 邦夫
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0176450(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19946382(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0228756(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
B60R 21/213
B60R 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータの駆動により前席の側方から後席の側方に亘る領域に膨張展開するカーテンエアバッグがルーフサイドレールに取り付けられた車両の車室を、前席が配された領域と後席が配された領域との間で仕切る仕切装置であって、
前記前席が配された領域と前記後席が配された領域との間に設けられた、膜状または板状の仕切部材
と、
前記車両のルーフに沿って車幅方向に延びる中央固定部材と、前記中央固定部材よりも車幅方向外側に設けられる、前記中央固定部材とは別部材の端部固定部材と、を有するとともに、前記車両のルーフの車室内側を覆うように配されたルーフ内装部材に対して、前記仕切部材を固定し、且つ、車幅方向の外側端部が前記ルーフサイドレールに隣接するように配置されたルーフ固定部材と、
を備え、
前記仕切部材は、前記カーテンエアバッグの膨張展開の際に当該カーテンエアバッグの当接による力を受け、前記カーテンエアバッグの膨張展開を許容するように変形可能な変形部を、前記ルーフサイドレールに隣接する領域に有
し、
前記ルーフ固定部材は、前記カーテンエアバッグの膨張展開に伴って、前記外側端部が前記車室内側に向けて変位するよう変形可能に形成されており、
前記端部固定部材における車幅方向外側の端部は、前記ルーフ固定部材の前記外側端部であって、前記カーテンエアバッグの膨張展開に伴って前記車室内の下方に向けて変位する、
仕切装置。
【請求項2】
請求項1に記載の仕切装置において、
前記仕切部材の前記変形部は、前記カーテンエアバッグの膨張展開に伴って破断が進行する破断部である、
仕切装置。
【請求項3】
請求項2に記載の仕切装置において、
前記仕切部材の前記破断部は、前記カーテンエアバッグの膨張展開に伴って破断が車室の下方に向けて進行するように形成されている、
仕切装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の仕切装置において、
前記仕切部材の前記破断部は、前記仕切部材の外縁であって、前記ルーフサイドレールに隣接する位置を起点に形成されている、
仕切装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の仕切装置において、
前記車両の前記前席と前記後席との間における車幅方向外側に設けられたピラーの車室内側を覆うように配されたトリムに対して、前記仕切部材を固定する側部固定部材をさらに備え、
前記仕切部材の前記変形部は、前記仕切部材の外縁であって、前記ルーフ固定部材における前記外側端部と前記側部固定部材における上端部との間の箇所に隣接する位置を起点に形成されている、
仕切装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の仕切装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の中には、車室内の前席と後席との間を仕切る仕切装置が設けられた車両がある(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1には、車両に乗り合わせた乗員に対してプライベート空間を創出するために、スクリーンからなる仕切部材を有する仕切装置を設けることが開示されている。特許文献1に開示の仕切装置では、仕切部材の他にプロジェクターを有しており、プロジェクターから照射された画像を仕切部材に投影できるようになっている。
【0004】
特許文献2には、タクシーの前席と構成との間を仕切る仕切板を有する仕切装置が開示されている。仕切板は、刃物に抗する強度を有するものであって、後席に着座した乗客が刃物で襲撃した際にも、当該刃物から運転手を守るためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-203227号公報
【文献】特開2004-67051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年の車両では、側面衝突の際の衝撃から乗員を保護するためにカーテンエアバッグが搭載されたものがある。カーテンエアバッグは、車両のルーフサイドレールに設けられ、側方から衝撃が加わった際に窓と乗員との間に介挿するように膨張展開する。車両においては、前席用のカーテンエアバッグと後席用のカーテンエアバッグとを備えるのではなく、左右のサイド毎に前席から後席に亘るように単一のカーテンエアバッグが設けられている。
【0007】
しかしながら、上記のような従来技術に係る仕切装置を前席と後席との間を仕切るように設ける場合には、カーテンエアバッグがイビツに膨張展開してしまうことが考えられる。即ち、車両が側方からの衝撃を受けた場合にはカーテンエアバッグが膨張展開するが、前席と後席との間に従来技術に係る仕切装置が設けられている場合には、当該仕切装置によってカーテンエアバッグの膨張展開が一部妨げられイビツに膨張展開してしまうと考えられる。このため、側方からの衝撃に対して乗員を保護するというカーテンエアバッグの機能を十分に引き出すことができなくなることが考えられる。
【0008】
ここで、車両に対して、前席用のカーテンエアバッグと後席用のカーテンエアバッグとをそれぞれ別々に搭載することも考えることもできるが、その場合には既存のカーテンエアバッグを用いることができず、また部材点数が増加することにより車両の製造コストの上昇を招いてしまう。
【0009】
本発明は、上記のような課題の解決を図ろうとなされたものであって、前席から後席に亘るように単一のカーテンエアバッグが搭載された車両に設置した場合にも、カーテンエアバッグがイビツに膨張展開するのを抑制することができる仕切装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る仕切装置は、インフレータの駆動により前席の側方から後席の側方に亘る領域に膨張展開するカーテンエアバッグがルーフサイドレールに取り付けられた車両の車室を、前席が配された領域と後席が配された領域との間で仕切る仕切装置であって、前記前席が配された領域と前記後席が配された領域との間に設けられた、膜状または板状の仕切部材と、前記車両のルーフに沿って車幅方向に延びる中央固定部材と、前記中央固定部材よりも車幅方向外側に設けられる、前記中央固定部材とは別部材の端部固定部材と、を有するとともに、前記車両のルーフの車室内側を覆うように配されたルーフ内装部材に対して、前記仕切部材を固定し、且つ、車幅方向の外側端部が前記ルーフサイドレールに隣接するように配置されたルーフ固定部材と、を備え、前記仕切部材は、前記カーテンエアバッグの膨張展開の際に当該カーテンエアバッグの当接による力を受け、前記カーテンエアバッグの膨張展開を許容するように変形可能な変形部を、前記ルーフサイドレールに隣接する領域に有し、前記ルーフ固定部材は、前記カーテンエアバッグの膨張展開に伴って、前記外側端部が前記車室内側に向けて変位するよう変形可能に形成されており、前記端部固定部材における車幅方向外側の端部は、前記ルーフ固定部材の前記外側端部であって、前記カーテンエアバッグの膨張展開に伴って前記車室内の下方に向けて変位する。
【0011】
上記態様に係る仕切装置では、仕切部材が変形部を有している。仕切部材の変形部は、カーテンエアバッグの膨張展開の際に、カーテンエアバッグの当接によって当該カーテンエアバッグの膨張展開を許容するように変形可能に形成されている。このため、上記態様に係る仕切装置では、前席から後席に亘るように単一のカーテンエアバッグが搭載された車両の前席と後席との間を仕切りつつ、側方からの衝撃などによりカーテンエアバッグが膨張展開する場合には当該カーテンエアバッグが膨張展開するのを阻害しにくい。
また、上記態様に係る仕切装置では、カーテンエアバッグの膨張展開時において、ルーフ固定部材の外側端部が車室内側に向けて変位するように変形可能に形成されている。よって、上記態様に係る仕切装置では、カーテンエアバッグの膨張展開時にルーフ固定部材の外側端部が車室内側に向けて変位することで、当該カーテンエアバッグがイビツに膨張展開するのを抑制するのにさらに優位である。
さらに、上記態様に係る仕切装置では、互いに別部材で構成された中央固定部材と端部固定部材とでルーフ固定部材を構成している。よって、上記態様に係る仕切装置では、カーテンエアバッグの膨張展開時に端部固定部材の車幅方向の端部(ルーフ固定部材の外側端部)が車室内の下方に変位する場合に、別部材である中央固定部材によって変位が拘束され難い。
なお、中央固定部材と端部固定部材とは、互いの間が接合や連結されていないことが、カーテンエアバッグの膨張展開時に端部が変位しやすいので好ましいが、低剛性な部材(薄い金属板や樹脂やゴムなど)で連結等されていてもよい。
【0012】
従って、上記態様に係る仕切装置では、前席から後席に亘るように単一のカーテンエアバッグが搭載された車両に設置した場合にも、カーテンエアバッグがイビツに膨張展開するのを抑制することができる。
【0013】
また、上記態様に係る仕切装置では、前席から後席に亘るように膨張展開する既存のカーテンエアバッグを採用した場合にも、イビツに膨張展開するのが抑制される。よって、車両の製造コストを低減するのにも優位である。
【0014】
上記態様に係る仕切装置において、前記仕切部材の前記変形部は、前記カーテンエアバッグの膨張展開に伴って破断が進行する破断部である、との構成を採用してもよい。
【0015】
上記態様に係る仕切装置では、仕切部材の変形部として破断部を採用する。破断部は、カーテンエアバッグの膨張展開に伴って破断が進行して行く部分である。よって、カーテンエアバッグが膨張展開する際には、当該カーテンエアバッグの膨張展開に伴って破断が進行して行くので、カーテンエアバッグに対して膨張展開する方向とは逆向きの反力がかかるのを抑制することができる。これより、上記態様に係る仕切装置では、カーテンエアバッグの膨張展開時において、当該カーテンエアバッグがイビツに膨張展開するのを抑制するのにさらに優位である。
【0016】
上記態様に係る仕切装置において、前記仕切部材の前記破断部は、前記カーテンエアバッグの膨張展開に伴って破断が前記車室の下方に向けて進行するように形成されている、との構成を採用してもよい。
【0017】
上記態様に係る仕切装置では、仕切部材の破断部が、カーテンエアバッグの膨張展開に伴って車室の下方に向けて破断が進行するように形成されている。よって、カーテンエアバッグが膨張展開する際において、当該カーテンエアバッグが膨張展開する方向と合致するように破断部の破断が進行することとなる。これより、上記態様に係る仕切装置では、カーテンエアバッグの膨張展開時において、当該カーテンエアバッグがイビツに膨張展開するのを抑制するのにさらに優位である。
【0018】
なお、上記において「下方」とは、斜め下方も含む意味で用いている。
【0019】
上記態様に係る仕切装置において、前記仕切部材の前記破断部は、前記仕切部材の外縁であって、前記ルーフサイドレールに隣接する位置を起点に形成されている、との構成を採用してもよい。
【0020】
上記態様に係る仕切装置では、破断部の起点が仕切部材の外縁であって、且つ、ルーフサイドレールに隣接する位置に配されている。よって、上記態様に係る仕切装置では、カーテンエアバッグの膨張展開時において、膨張展開するカーテンエアバッグと破断が進行する破断部との間に仕切部材の一部が残って介挿されてしまうことを抑制できる。これより、上記態様に係る仕切装置では、カーテンエアバッグの膨張展開時において、当該カーテンエアバッグがイビツに膨張展開するのを抑制するのにさらに優位である。
【0026】
上記態様に係る仕切装置において、前記車両の前記前席と前記後席との間における車幅方向外側に設けられたピラーの車室内側を覆うように配されたトリムに対して、前記仕切部材を固定する側部固定部材をさらに備え、前記仕切部材の前記変形部は、前記仕切部材の外縁であって、前記ルーフ固定部材における前記外側端部と前記側部固定部材における上端部との間の箇所に隣接する位置を起点に形成されている、との構成を採用してもよい。
【0027】
上記態様に係る仕切装置では、仕切部材の変形部が、仕切部材の外縁であって、且つ、ルーフ固定部材と側部固定部材との間の箇所に隣接する位置を起点として形成されている。よって、上記態様に係る仕切装置では、カーテンエアバッグの膨張展開時において、ルーフ固定部材の外側端部が上記方向に変位することで、ルーフ固定部材の外側端部と側部固定部材の上端部(側部固定部材における車両上下方向における上端部分)との間の隙間が大きく広がる。これより、上記態様に係る仕切装置では、カーテンエアバッグの膨張展開時において、当該カーテンエアバッグがイビツに膨張展開するのを抑制するのにさらに優位である。
【発明の効果】
【0028】
上記の各態様に係る仕切装置は、前席から後席に亘るように単一のカーテンエアバッグが搭載された車両に設置した場合にも、カーテンエアバッグがイビツに膨張展開するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態に係る車両の一部構成を示す斜視図である。
【
図5】車体への仕切装置の取付形態を示す模式図である。
【
図6】カーテンエアバッグの膨張展開時における端部固定部材の変位形態を示す模式図である。
【
図7】仕切部材における破断部の構造を示す模式図である。
【
図8】仕切部材において、カーテンエアバッグの膨張展開に伴って裂け目が進行して行く様子を、(a)から(c)の順に示す模式図である。
【
図9】変形例1に係る仕切部材の構成を示す模式図である。
【
図10】変形例2に係る仕切部材の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0031】
また、以下においては、車両1の前方を「Fr」、車両1の後方を「Re」、車両1の上方を「Up」、車両1の下方を「Lo」、車両1の車幅方向左方を「Le」、車両1の車幅方向右方を「Ri」と記載する。
【0032】
[実施形態]
1.車両1における仕切装置14の配置形態
車両1における仕切装置14の配置形態について、
図1および
図2を用いて説明する。なお、
図1および
図2では、車両1の一部構成だけを抜き出して図示している。
【0033】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、車室1a内に複数人の乗員が乗車することができるように構成されている。車室1aは、前席10が配された領域(前部)1bと、前部1bよりも後方Reであって、後席11が配された領域(後部)1cとで構成されている。
【0034】
また、車両1の両側方部分には、前部1bと後部1cとの境界部分となる箇所にBピラー13が設けられている。Bピラー13は、上部がルーフ12まで延びるように形成されている。車室1a内には、仕切装置14が設けられている。
【0035】
仕切装置14は、車室1aの前部1bと後部1cとの間を仕切る装置である。詳細な構成については、後述する。
【0036】
図2に示すように、車両1におけるルーフサイドレール(
図2では、詳細な図示を省略。)には、カーテンエアバッグ15と、当該カーテンエアバッグ15を膨張展開させるためのインフレータ16とが設けられている。カーテンエアバッグ15は、車両1が側方からの衝撃を受けた際に、インフレータ16の駆動により車室1a内の側部を下方に向けて膨張展開する。
【0037】
ここで、車両1の左右(Le-Ri)の各サイドにおいて、車両1の前後方向(Fr-Re)において、前席10の側方から後席11の側方に亘る領域を1つのカーテンエアバッグ15が設けられている。
【0038】
2.仕切装置14の構成とカーテンエアバッグ15の配置
仕切装置14の構成とカーテンエアバッグ15の配置とについて、
図2から
図4を用いて説明する。なお、
図4では、車室1a内における右方Riの一部構成だけを図示している。
【0039】
図3に示すように、仕切装置14は、仕切部材140と窓部材141とを備える。仕切部材140は、膜状または板状の部材から形成されている。本実施形態において、仕切部材140は、前席10と後席11との間を車幅方向(Le-Ri)および上下方向(Up-Lo)の全域を仕切るように形成されている。ただし、
図2および
図3に示すように、仕切部材140は、センターコンソール17が後部1bにも延出できるように構成されている。
【0040】
窓部材141は、仕切部材140に接合されている。窓部材141は、光透過性を有する材料(例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂(PVC)など)を用いて形成されている。窓部材141は、仕切部材140に対して、車幅方向(Le-Ri)の中央領域であって、上下方向(Up-Lo)の中央よりも上方(Up)側の部分に設けられている。
【0041】
図3および
図4に示すように、仕切部材140は、上方(Up)の部分であって、車幅方向(Le-Ri)の両側部分のそれぞれに破断部140aを有する。破断部140aは、例えば、仕切部材140にミシン目が形成されてなる部分である。破断部140aは、仕切部材140の上縁(外縁)140cに起点140cを有し、車室1a内の下方(Lo)に向けて延びるように形成されている。
【0042】
図4に示すように、カーテンエアバッグ15は、ルーフサイドレール18に取り付けられている。より具体的には、カーテンエアバッグ15は、ルーフサイドレール18の車室1a内側の面に取り付けられている。なお、カーテンエアバッグ15における車室1a側の部分は、当該カーテンエアバッグ15が膨張展開していない状態において、天井の内装部材(ルーフ内装部材)により覆われている。
【0043】
なお、仕切部材140における破断部140aの起点140bは、ルーフサイドレール18に隣接する箇所(カーテンエアバッグ15に隣接する箇所)に配されている。
【0044】
3.車両1への仕切部材140の固定
車両1への仕切部材140の固定について、
図5を用いて説明する。なお、
図5では、仕切部材140を含む仕切装置14の構成を模式化して図示している。
【0045】
図5に示すように、仕切装置14は、中央固定部材142と、2つの端部固定部材143と、2つの側部固定部材144とをさらに備える。中央固定部材142および端部固定部材143は、拡大断面で示すように、ボルト145とナット146との螺合によって仕切部材140をルーフ内装部材19に固定する部材である。ルーフ内装部材19は、ルーフ12(
図1などを参照。)の車室1a内側を覆う部材であり、樹脂材料などから形成されている。
【0046】
側部固定部材144は、ボルト145とナット146との螺合によって仕切部材140をBビラー13の車室1a内側を覆うトリム20に固定する部材である。Bピラー13の車室1a内側を覆うトリム20についても、樹脂材料などから形成されている。
【0047】
ここで、中央固定部材142と端部固定部材143と側部固定部材144とは、互いに別部材で構成されている。また、中央固定部材142と端部固定部材143との間、および端部固定部材143と側部固定部材144との間は、仕切部材140を除く他の部材で連結されておらず、また、互いに接合もされていない。なお、中央固定部材142と端部固定部材143とは、ともにルーフ12の車室1a内側を覆うルーフ内装部材19に仕切部材140を固定する部材であるので、中央固定部材142と端部固定部材143とにより「ルーフ固定部材」が構成されるとすることができる。
【0048】
仕切部材140における破断部140aは、端部固定部材143の車幅方向(Le-Ri)外側の端部(外側端部)に隣接する箇所に起点140bを有する。
【0049】
4.カーテンエアバッグ15の膨張展開時における端部固定部材143の変位
カーテンエアバッグ15の膨張展開時における端部固定部材143の変位について、
図6を用いて説明する。
【0050】
車両1に側方から衝撃が加わった場合などには、カーテンエアバッグ15が膨張展開する。
図6に示すように、カーテンエアバッグ15の膨張展開が始めると、その膨張展開に係る力によって車幅方向(Le-Ri)の外側の端部(外側端部)143aが車室1a内の下方Loに向けて変位する。この場合に、中央固定部材142は殆ど変形等しないため、端部固定部材143は、中央固定部材142との境界箇所Pを中心に外側端部143aが矢印Aで示すように回動する。
【0051】
図6に示すように端部固定部材143が変形(外側端部143aが変位)する場合にも、ルーフ内装部材19への固定のためのボルト145およびナット146(
図6では図示を省略。)が外れることはなく、端部固定部材143とともにルーフ内装部材19も変形する。
【0052】
図6に示すように端部固定部材143の外側端部143aが下方Loへ変位すると、端部固定部材143の外側端部143aと側部固定部材144の上方Up側の端部(上端部)144aとの間に隙間SPが形成される。カーテンエアバッグ15は、矢印Bで示すように、隙間SPを通り車室1a内の下方Loに向けて膨張展開する。
【0053】
5.仕切部材140における破断部140aの構造
仕切部材140における破断部140aの構造について、
図7を用いて説明する。なお、
図7では、仕切部材140について、破断部140aが設けられた領域を抜き出して模式的に図示している。
【0054】
図7に示すように、破断部140aは、間欠的に並ぶ複数の切り込み140fによって形成されている。切り込み140fは、仕切部材140の表面140dから裏面140eを貫通するように空けられた貫通孔である。
【0055】
仕切部材140は、破断部140aに対して、当該破断部140aに沿う方向または破断部140aが伸びる方向に対して交差する方向に力を受けると、矢印Cで示すように隣り合う切り込み140fが繋がって行き、破断が進行する構造となっている。
【0056】
6.カーテンエアバッグ15の膨張展開時における破断部140aの破断の進行
カーテンエアバッグ15の膨張展開時における破断部140aの破断の進行について、
図6および
図8を用いて説明する。
【0057】
図6および
図8(a)に示すように、カーテンエアバッグ15の膨張展開が始まると、当該カーテンエアバッグ15の当接により端部固定部材143の外側端部143aが下方Loに向けて変位する。そして、端部固定部材143の外側端部143aが下方Loに変位することで生じた端部固定部材143の外側端部143aと側部固定部材144の上端部144aとの間の隙間SPからカーテンエアバッグ15が車室1a内の下方Loに向けて膨張展開する。
【0058】
図8(b)、(c)に示すように、カーテンエアバッグ15の膨張展開が進むと、破断部140aの破断が進行する。カーテンエアバッグ15は破断部140aの破断による裂け目140g同士の間を下方Loに向けてさらに膨張展開して行く。
【0059】
なお、本実施形態に係る仕切部材140aでは、上下方向(Up-Lo)の途中の部分までだけ破断部140aを形成することとしているが、カーテンエアバッグ15の膨張展開の範囲と合致する長さに設けることもできる。また、仕切部材140では、カーテンエアバッグ15の膨張展開時において、破断部140aが設けられた部分だけが破断するのではなく、仕切部材140の材料強度などによって破断部140aの破断に連続して破断が進行することもある。
【0060】
7.効果
本実施形態に係る仕切装置14では、仕切部材140が破断部140aを有している。仕切部材140の破断部140aは、カーテンエアバッグ15の膨張展開の際に、カーテンエアバッグ15の当接によって当該カーテンエアバッグ15の膨張展開を許容するように破断が進行して行くように形成されている(
図8を参照)。このため、仕切装置14では、前部1bの側方部分から後部1cの側方部分に亘るように、左右(Le-Ri)のサイド毎に単一のカーテンエアバッグ15が搭載された車両1の車室1aに対して、前部1bと後部1cとの間を仕切りつつ、側方からの衝撃などによりカーテンエアバッグ15が膨張展開する場合には当該カーテンエアバッグ15が膨張展開するのを阻害しにくい。
【0061】
従って、本実施形態に係る仕切装置15では、前部1bの側方部分から後部1cの側方部分に亘るように左右(Le-Ri)のサイド毎に単一のカーテンエアバッグ15が搭載された車両1の車室1aを仕切るように設置された場合にも、カーテンエアバッグ15がイビツに膨張展開するのを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る仕切装置では、前席10から後席11に亘るように膨張展開する既存のカーテンエアバッグ15を採用した場合にも、イビツに膨張展開するのが抑制される。よって、車両1の製造コストを低減するのにも優位である。
【0063】
上記態様に係る仕切装置において、前記仕切部材の前記変形部は、前記カーテンエアバッグの膨張展開に伴って破断が前記車室の下方に向けて進行する破断部である、との構成を採用してもよい。
【0064】
また、本実施形態に係る仕切装置14では、
図3の拡大部分に示したように、破断部140aの起点140bが仕切部材140の外縁140cであって、且つ、
図4に示したように、ルーフサイドレール18に隣接する位置に配されている。換言すると、破断部140aの起点140bは、仕切部材140の外縁140cであって、カーテンエアバッグ15が取り付けられたルーフサイドレール18に隣接する位置に配されている。よって、仕切装置14では、カーテンエアバッグ15の膨張展開時において、膨張展開するカーテンエアバッグ15と破断が進行する破断部140aとの間に仕切部材140の一部が介挿されるのを抑制することができる。これより、仕切装置14では、カーテンエアバッグ15の膨張展開時において、当該カーテンエアバッグ15がイビツに膨張展開するのを抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る仕切装置14では、
図6に示したように、カーテンエアバッグ15の膨張展開時において、端部固定部材143の外側端部143aが車室1a内における下方Loに向けて変位するように変形可能に形成されている。よって、仕切装置14では、カーテンエアバッグ15の膨張展開時に端部固定部材143の外側端部143aと側部固定部材144の上端部144aとの間に隙間SPが生じ、これによりカーテンエアバッグ15スムーズに膨張展開できる。従って、これによっても、本実施形態では、カーテンエアバッグ15がイビツに膨張展開するのを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る仕切装置14では、互いに別部材で構成された中央固定部材142と端部固定部材143とでルーフ固定部材を構成している。よって、仕切装置14では、カーテンエアバッグ15の膨張展開時に端部固定部材143の外側端部143aが車室1a内の下方Loに向けて変位する場合に、中央固定部材142によって変位が拘束され難い。
【0067】
なお、本実施形態では、中央固定部材142と端部固定部材143とは、仕切部材140が繋がっていることを除き、他の部材で互いの間が連結されていない。これより、本実施形態では、カーテンエアバッグ15の膨張展開時に端部固定部材143の外側端部143aが変位する際に拘束を受けない。
【0068】
さらに、本実施形態に係る仕切装置14では、仕切部材140の破断部140aが
図3に示したように、仕切部材140の外縁140bであって、且つ、
図5に示したように、端部固定部材と側部固定部材との間の箇所に隣接する位置を起点として形成されている。よって、上記態様に係る仕切装置では、カーテンエアバッグの膨張展開時において、ルーフ固定部材の外側端部が上記方向に変位することで、ルーフ固定部材の外側端部と側部固定部材の上端部との間の隙間が大きく広がる。これより、上記態様に係る仕切装置では、カーテンエアバッグの膨張展開時において、当該カーテンエアバッグがイビツに膨張展開するのを抑制するのにさらに優位である。
【0069】
[変形例1]
変形例1に係る仕切部材240の構成について、
図9を用いて説明する。なお、本変形例に係る仕切装置は、仕切部材240を除く他の部材の構成については上記実施形態に係る仕切装置14と同じである。
【0070】
図9に示すように、本変形例に係る仕切部材240も、破断部240aを有する。破断部240aの構造については、
図7を用いて説明した上記実施形態に係る破断部140aと同じである。ただし、本変形例に係る破断部240aは、上方Upに位置する起点240bが仕切部材240の外縁240cよりも下方Loに配されている。そして、破断部240aは、起点240aと下方Loの点240hとの間で形成されている。
【0071】
本変形例に係る仕切部材240に対して、カーテンエアバッグ15の膨張展開により力が作用した場合には、破断部240aが左右方向(Le-Ri)に開くように破断した後、矢印G1,G2で示すように破断が上下方向(Up-Lo)に進行して行く。よって、本変形例に係る仕切部材240を備える仕切装置においても、カーテンエアバッグ15の膨張展開時において、破断部240aの破断が進行することによりカーテンエアバッグ15がイビツに膨張展開するのが抑制される。
【0072】
[変形例2]
変形例2に係る仕切部材340の構成について、
図10を用いて説明する。なお、本変形例に係る仕切装置は、仕切部材340の構成を除く他の部材の構成については上記実施形態に係る仕切装置14と同じである。
【0073】
図10に示すように、本変形例に係る仕切部材340も、破断部340aを有する。本変形例に係る仕切部材340の破断部340aは、カーテンエアバッグ15の膨張展開の方向に沿って設けられた1条の切欠部340fにより構成されている。
【0074】
切欠部340fが形成された部分の厚みT2は、仕切部材340における他の部分の厚みT1よりも薄肉となっている。このため、カーテンエアバッグ15の膨張展開の際に、カーテンエアバッグ15の当接によって力が作用した場合に、矢印Hで示すように破断部340aの破断が進行する。よって、本変形例に係る仕切部材340を備える仕切装置においても、カーテンエアバッグ15の膨張展開時において、破断部340aの破断が進行することによりカーテンエアバッグ15がイビツに膨張展開するのが抑制される。
【0075】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例1,2では、カーテンエアバッグ15の膨張展開時に仕切部材140,240,340に形成された破断部140a,24a,340aの破断が進行することによって、カーテンエアバッグ15がイビツに膨張展開するのを抑制することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、仕切部材の一部領域を、他の領域よりも柔軟な材料(例えば、ゴムやエラストマーなど)で形成しておくことにより、カーテンエアバッグ15の膨張展開を許容するように仕切部材が変形するようにしておくことができる。換言すると、仕切部材の一部領域に変形部を設けておくことができる。このような仕切部材の一部に変形部を設けることによっても、カーテンエアバッグ15の膨張展開時に、当該カーテンエアバッグ15がイビツに膨張展開するのを抑制することができる。
【0076】
なお、仕切部材全体をゴムなどの柔軟で変形可能な材料で構成しておいてもよい。
【0077】
また、上記実施形態および上記変形例1,2における仕切部材140,240,340の破断部140a,240a,340aについても破断が進行するという点で変形部ということができる。
【0078】
上記実施形態および上記変形例1,2では、仕切部材140,240,340における左右(Le-Ri)の各々に、1条の破断部140a,240a,340aを設けることとしたが、本発明は、それぞれのサイドに2条以上の破断部を設けることも可能である。これにより、カーテンエアバッグ15の膨張展開時において、当該カーテンエアバッグ15がイビツに膨張展開するのをより抑制することができる。
【0079】
上記実施形態および上記変形例1,2では、仕切部材140,240,340の破断部140a,240a,340aが、カーテンエアバッグ15の膨張展開時において、車室1aの下方Loに向けて破断が進行することとしたが、本発明は、破断の進行方向に関してこれに限定を受けるものではない。例えば、車幅方向(Le-Ri)に破断が進行するように破断部を形成することも可能である。
【0080】
上記実施形態および上記変形例1,2では、仕切装置14が窓部材141を備えている構成としたが、本発明に係る仕切装置では窓部材141を必ずしも備えていなくてもよい。
【0081】
上記実施形態および上記変形例1,2では、中央固定部材142と端部固定部材143とを別部材で構成するとともに、仕切部材140が両部材142,143間で繋がっていることを除き、中央固定部材142と端部固定部材143とは連結等されていないこととした。
【0082】
しかしながら、本発明では、中央固定部材と端部固定部材とが一体に設けられたルーフ固定部材を用いて仕切部材140,240,340をルーフ内装部材19に固定することとしてもよい。このような構造を採用する場合には、カーテンエアバッグ15の膨張展開の際に、当該カーテンエアバッグ15の膨張展開を阻害しないようにルーフ固定部材における車幅方向(Le-Ri)の端部が車室1a内側に変形可能としておくことで、上記同様の効果を得ることができる。例えば、ルーフ固定部材における車幅方向(Le-Ri)の一部に脆弱部分(薄肉部分など)を設けておくことで、カーテンエアバッグ15の膨張展開時に、当該カーテンエアバッグ15からの力が作用することで外側端部が車室1a内の下方Loに向けて変位するようにできる。
【0083】
上記実施形態では、仕切装置14を1列目の座席が設けられた領域と2列目の座席が設けられた領域との間を仕切るように配置することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、2列目の座席が設けられた領域と3列目の座席が設けられた領域とを仕切るなど、車両の前後方向に並ぶように設けられた座席の各領域間を仕切るように仕切装置を配置してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 車両
1a 車室
1b 前部
1c 後部
10 前席
11 後席
14 仕切装置
15 カーテンエアバッグ
16 インフレータ
18 ルーフサイドレール
140,240,340 仕切部材
140a,240a,340a 破断部(変形部)
140b 起点
142 中央固定部材
143 端部固定部材
143a 外側端部
144 側部固定部材
144a 上端部